説明

浮遊粒子状物質濃度測定装置

【課題】 電源供給のない場所など、屋内、屋外を問わずに任意の場所に設置することができて大気中のSPMの測定を容易に行うことができるとともに、持ち運びに好適な可及的に軽量な汎用性の高い浮遊粒子状物質濃度測定装置を提供すること。
【解決手段】 サンプリングポンプ22の吸引動作により分粒器49,50を介して大気をサンプルガスとして連続的にサンプリング管35内に吸引し、このサンプリング管35の下流側に設けられた測定部21において、前記サンプルガス中の浮遊粒子状物質をフィルタ26を用いて連続的に捕集し、この捕集した浮遊粒子状物質の濃度をβ線吸収方式で測定するように構成された浮遊粒子状物質濃度測定装置1において、防塵、防水構造の測定装置本体ケース2を備え、この測定装置本体ケース2内に、前記測定部21と前記サンプリングポンプ22とこれらを駆動する電源部23を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、大気中の浮遊粒子状物質を測定するための浮遊粒子状物質濃度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大気中の浮遊粒子状物質(Suspended Particulate Matter:以下、SPMという)を測定する手法の一つに、大気をサンプルガスとして連続的にサンプリング管内に吸引し、このサンプリング管の下流側に設けられたチャンバ内において前記サンプルガス中のSPMをダストとしてテープ状フィルタに連続的に捕集し、この捕集したダストに対してβ線源からβ線を照射し、そのときの透過β線を検出器によって検出し、この検出器の出力を用いるβ線吸収方式による、前記捕集したダストの質量を測定する手法がある。この手法によれば、大気中に含まれるSPMの総量の濃度を定量的に把握することができる。
【0003】
図4は捕集用フィルタを用いてSPMを捕集し、この捕集されたSPM全体の濃度(質量)を測定するための浮遊粒子状物質濃度測定装置(以下、濃度測定装置という)100を概略的に示している。図4において、101はSPMを捕集するためのテープ状フィルタで、供給リール102にロール状に巻回されている。103は供給リール102から送り出されたテープ状フィルタ101を巻き取る巻取リールで、これらの供給リール102と巻取リール103との間に、SPMを捕集しその濃度を測定するためのチャンバ104が設けられている。なお、105はテープ状フィルタ101を移動させるための搬送リールで、供給リール102からのテープ状フィルタ101の搬送量(移動量)を検出する搬送センサ105aを備え、テープ状フィルタ101を所定量だけ搬送するものである。
【0004】
前記チャンバ104は、その一端側にテープ状フィルタ101の導入口が形成され、他端側にテープ状フィルタ101の導出口が形成されており、その内部空間に、テープ状フィルタ101を水平状態に保持しガイドするためのフィルタ保持部106が設けられている。このフィルタ保持部106の水平保持面には、例えば、平面視正六角形状の通気孔を中心として複数の通気孔(図示していない)が開設されており、テープ状フィルタ101にSPMを捕集できるように構成されている。そして、前記SPMの捕集位置の下部側、前記フィルタ保持部106の下側(テープ状フィルタ101の下面側)には、テープ状フィルタ101に対してβ線を照射するβ線源107が設けられ、フィルタ保持部106の上側(テープ状フィルタ101の上面側)に、テープ状フィルタ101を透過してきたβ線を検出するβ線検出器108がβ線源107と対向するようにして設けられている。なお、β線検出器108の出力信号は図示していない演算制御部に入力される。
【0005】
そして、前記チャンバ104の一端側(上流側)には、空気導入管109を介して、一定量の大気をサンプリングすることのできる分粒器としての例えば、サイクロン式ボリュームサンプラ110が接続されるとともに、チャンバ104の他端側(下流側)には、真空ポンプなどのサンプリングポンプ(図示していない)を備えた大気導出管(図示していない)が接続されている。なお、ボリュームサンプラ110で吸引(サンプリング)される大気の量は、演算制御部に入力される。
【0006】
上記構成の濃度測定装置100を用いて、大気中のSPMを測定するには、図4に示すように、テープ状フィルタ101を、搬送リール105を経由しチャンバ104内を挿通して、供給リール102と巻取リール103との間にセットする。これによって、テープ状フィルタ101の一部分が測定部位に静止状態で位置する。この静止状態でチャンバ104の下流側のサンプリングポンプを吸引動作させることにより、大気がサンプリングされてボリュームサンプラ110内に導入され、このボリュームサンプラ110の働きによってSPMの濃度が高められた大気111がチャンバ104内に導入され、テープ状フィルタ101を通過し、フィルタ保持部106の通気孔を通過してチャンバ104外に排出される。このとき、チャンバ104内においては、前記サンプリングされた大気111がテープ状フィルタ101を通過する際、当該大気111に含まれるSPMがテープ状フィルタ101のSPM捕集部部分に捕集され、測定スポットが形成される。この測定スポットは、テープ状フィルタ101の静止状態で前記大気サンプリングを所定時間(例えば、1時間)行うことによって形成される。
【0007】
前記所定時間をかけて大気サンプリングを行うことによってテープ状フィルタ101に形成された測定スポットに対してβ線源107からβ線を照射し、そのときのテープ状フィルタ101を透過してきたβ線をβ線検出器108によって検出する。そして、このβ線検出器108から出力される強度信号を演算制御部において所定の演算式を用いて演算を行うことにより捕集されたSPMの総重量が求められ、さらに吸引した大気量と前記総重量を用いて所定の演算式によって演算を行うことにより、捕集されたSPMの濃度が得られる。
【0008】
前記測定後、搬送リール105を動作させてテープ状フィルタ101を所定量移動させることにより、前記測定スポットが巻取リール103方向に移動し、テープ状フィルタ101の新しい他の部分が測定部位に位置し、次の測定への待機状態となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、前記従来の濃度測定装置100においては、測定装置本体ケースにサンプリングポンプが外付けされるとともに、サイクロン式ボリュームサンプラ110やインパクターが大気に晒された状態で、電源供給のある大気測定局に設置されていたので、以下のような不都合があった。すなわち、
(1)測定装置本体ケースは防滴構造にはなっていなかったので、屋外での測定には不向きであった。
(2)大気中のSPMの測定が、AC100V〜200V仕様の電源供給のある大気測定局でしか行えなかった。
(3)大気測定局のある、限られた場所でしか測定が行えなかった。
(4)測定部、演算制御部およびこれらを収容する測定装置本体ケースの合計重量が例えば25kg、サンプリングポンプの重量が6kgというように濃度測定装置100全体が屋外設置のために持ち運ぶには重量的に不向きに構成されており、一般的に大気測定局において固定的に使用されていた。
【0010】
この発明は、上述の事柄に留意してなされたもので、その目的は、電源供給のない場所など、屋内、屋外を問わずに任意の場所に設置することができて大気中のSPMの測定を容易に行うことができるとともに、持ち運びに好適な可及的に軽量な汎用性の高い濃度測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、サンプリングポンプの吸引動作により分粒器を介して大気をサンプルガスとして連続的にサンプリング管内に吸引し、このサンプリング管の下流側に設けられた測定部において、前記サンプルガス中の浮遊粒子状物質をフィルタを用いて連続的に捕集し、この捕集した浮遊粒子状物質の濃度をβ線吸収方式で測定するように構成された濃度測定装置において、防塵、防水構造の測定装置本体ケースを備え、この測定装置本体ケース内に、前記測定部と前記サンプリングポンプとこれらを駆動する電源部を設けた点に特徴がある(請求項1)。
【0012】
そして、上記濃度測定装置は、測定装置本体ケース内には、装置の各部を制御するとともに濃度演算を行う演算制御部とサンプルガスの流量を測定するガス流量計とが内蔵されており、浮遊粒子状物質を分粒する分粒器が前記測定装置本体ケースに着脱自在に取り付けられ、さらに、前記測定装置本体ケースは、装置のオン、オフ、エラー状態等の装置の状態の確認、演算結果などのデータを中央データ管理装置に送る送信手段を備えるとともに、前記データを保存し、必要なときにパソコンによってデータを取り出すことが可能なメモリカードと、前記データを表示する表示部および測定開始・終了用のキーを有する操作パネルと、電源オン・オフ用キーとを備えている(請求項2)。
【0013】
さらに、上記濃度測定装置は、測定装置本体ケースに、持ち運び用の把手と着脱自在な三脚を備えている(請求項3)。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明では、測定装置本体ケース(以下、本体ケースという)を防塵、防水構造とし、本体ケース内に、測定部とサンプリングポンプとこれらを駆動する電源部を設けている。すなわち、本体ケースが防塵、防水構造となっているので、屋外の任意の場所に濃度測定装置を設けることができる。そして、本体ケース内に設けられた電源部によって、測定部やサンプリングポンプを稼働することができるので、濃度測定装置を屋外に持ち運ぶことができ、既設の大気測定局だけではなく、従来測定が行うことができなかった電源供給の不可能な場所、例えば、山間僻地や都市部においても大気測定局のない場所や災害地域は勿論のこと工場等必要な場所においても任意に測定を行うことができる。
【0015】
つまり、本体ケースが防塵、防水構造になっているので、本体ケース内に設けられる測定部、サンプリングポンプ、電源部が良好な環境(湿度および/または温度)の下に設置されるので、測定等所望の動作が確実に行われる。そして、電源部を本体ケースに内蔵していることにより、外部からの電源供給を考慮する必要はなくなり、測定箇所を任意に選ぶことができるとともに、画期的に増やすことができる。また、持ち運びできる程度に小型・コクパクト化することにより、必要な場所に容易に搬出することができ、必要に応じて任意の期間簡単に測定に供することもできる。さらに、本体ケース内に、測定部とサンプリングポンプとこれらを駆動する電源部をユニットとして着脱自在に設けた場合、それらの交換や点検などメンテナンスを容易に行うことができる。
【0016】
そして、請求項2に記載の発明では、浮遊粒子状物質を分粒する分粒器が本体ケースに着脱自在に取り付けられているので、分粒器を本体ケースと分離・分割して持ち運びすることができ、測定場所で分粒器を本体ケースに取り付けるだけで所望の状態にセットすることができる。また、装置のオン、オフやエラー状態等の装置の状態の確認(装置ステータスの確認)、測定時の演算結果などのデータを中央データ管理装置に送る送信手段を備えているので、データの分析・確認を迅速に行うことができる。さらに、データを保存し、必要なときにパソコン等によってデータを取り出すことが可能なメモリカードを備えているので、データ採取を任意に行うことができ、現在得られたデータを過去のデータや他の測定箇所のデータ等と比較・検討することができ、測定の効率化を図ることができる。
【0017】
請求項3に記載の発明では、三脚により、本体ケースを所望の測定姿勢(例えば水平状態)に安定的に保つことができ、所望の測定が確実に行われる。また、本体ケースに把手を設けたので、本体ケースを片手で容易に持ち運ぶことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態を、図を参照しながら説明する。なお、それによってこの発明は限定されるものではない。
【0019】
図1〜図3はこの発明の一つの実施の形態を示す。まず、図1はこの発明の濃度測定装置の主要部の構成を示すもので、この図1において、1は濃度測定装置で、その本体ケース2は、例えば直方体形状であって、上蓋3と前蓋4と左右両側面部5,6と背面部7と底面部8とで構成されている。この本体ケース2は、耐腐食性の例えばステンレスよりなり、堅牢構造となっており、例えば両側面部5,6、背面部7および底面部8は一体的に形成されている。そして、上蓋3と前蓋4は、開閉可能な構造になっており、上蓋3は、背面部7の上端において両矢印a方向に回転し、前蓋4は、底面部8の前端において両矢印b方向に回転するよう枢支されている。そして、これら上蓋3と前蓋4の内壁端にはパッキン等の枠状のシール部材9が設けられており、本体ケース2は防塵、防水構造となっている。本体ケース2のサイズは、例えば、幅Wが300mm、高さHが250mm、奥行Dが200mmである(図2参照)。
【0020】
また、前蓋4および上蓋3にはロック手段が設けられている。10および11はそれぞれ前蓋4および上蓋3の内面側において互いに対応する位置に設けられたロック金具である。そして、12は前蓋4におけるロック金具10に対応する位置に形成されるキー差し込み孔(図2参照)である。また、前蓋4は、矩形のガラス窓13と前蓋引出し用の引き出し口14(図3参照)とを有する。また、前蓋4は、内壁上端の左右の位置に爪15,16を有する一方、これらの爪15,16のうち、一方の爪15が左側面部5の内壁に設けた係止部17に係合するとともに、他方の爪16が右側面部6の内壁に設けた係止部18に係合する。そして、上蓋3の表面には把手19が設けられている。
【0021】
そして、本体ケース2の内部は、その幅方向において、一枚の仕切り板20によって前面側の室(前室)2Aと背面側の室(後室)2Bの2室に区画されており、この実施例では、仕切り板20は例えばアルミニウムよりなり、本体ケース2に対して着脱自在に設けられている。そして、この仕切り板20の前面側の壁(前壁)20a側には測定部21が設けられ、仕切り板20の後室2Bにサンプリングポンプ22や電源部23等が収容されている。
前記測定部21は、仕切り板20の前壁20aに適宜の間隔をおいて水平に立設される二つのリール24,25と、これらリール24,25間に懸け渡されたテープ状フィルタ26と、β線源27と、β線検出器28とからなり、前室2Aにおいて露出した状態で設けられている。また、仕切り板20の前壁20aには、表示操作部29が設けられている。この表示操作部29は、液晶からなるデータ表示部30(図3参照)と、測定開始・終了用のキーを含む入力キー31(図3参照)とを前面に備えている。データ表示部30は、装置のオン、オフ、エラー状態等の装置ステータスの確認、演算結果などのデータを表示する。また、表示操作部29の上面には、前記データを保存し、必要なときにパソコン32(図2参照)によって必要なデータを取り出すことが可能なメモリカード33を挿抜するための孔34が形成されている。
【0022】
前記サンプリングポンプ22は、その吸引動作により一定流量の大気をサンプルガスとして連続的にサンプリング管35内に吸引するもので、排気流路36の最下流に位置している(図3参照)。このサンプリングポンプ22としては、例えば1kg程度の軽量かつ本体ケース2内に収納可能な小型・コンパクトなもので、かつその性能が従来のサンプリングポンプに劣らないものが用いられる。そして、このサンプリングポンプ22と排気流路36に設けたガス流量調整器37、サンプルガスの流量を測定するよう排気流路36に設けたガス流量計38とが一つの取り付けプレート39に設けられてユニット化されており、本体ケース2から取り外し自在になっている。そして、取り付けプレート39が設置される後室2Bにおける底面部8には多数の排気孔40が形成されている。
【0023】
前記電源部23としては、例えば充電可能なバッテリーが用いられる。このバッテリー23は、その電源部本体ケース41が箱状に形成されているとともに、この電源部本体ケース41には把手42が設けられている。そして、この電源部23は、その本体ケース41に設けた+および−端子43,44を濃度測定装置1の本体ケース2の左側面部5に向けた状態で、左側面部5に形成された挿入口を介して仕切り板20の後室2Bの左側に挿入され、横置き状態で、後室2Bに設けた例えば箱状の第1の収容ケース45に収容された1または複数のプリント基板にバッテリー23の+および−端子43,44が電気的に接続されるように構成されている。なお、第1の収容ケース45は、例えば、後室2Bの中央左寄り、かつ前面側に設けられている。
【0024】
46は携帯電話で、無線取り付け用の配線47を介してアンテナ48に接続されており、携帯電話46と配線47とアンテナ48とで、濃度測定装置1の電源オン、オフ、エラー状態等装置ステータスの確認、演算結果などのデータを中央データ管理装置に送る送信手段が構成される。
【0025】
そして、前記測定部21、サンプリングポンプ22、バッテリー23およびこれら以外に本体ケース2に内蔵される上述した各種部材ならびに本体ケース2の総重量が、片手で容易に持ち運び可能なように例えば15kg以下の大きさに設定されている。
【0026】
次に、図2は上記本体ケース2の周辺に付設される部品を示したもので、この図2において、49および50はそれぞれ、目的に応じていずれか一方が選択されて取り付けられる分粒器である。すなわち、49は分粒器としてのインパクターで、サンプリング流路Rの最上流端に設けられる。このインパクター49は、本体ケース2の上蓋3に形成された、サンプリング流路Rの入口51(図1参照)に着脱自在に取り付けられる。この分粒器49は、サンプリング流路R内に吸引されたサンプルガス中に含まれるSPMを分級するもので、所定の粒径を超えるSPMを捕捉し、所定の粒径以下のSPMのみを測定部21側に通過させるものである。また、50は他の分粒器としてのサイクロン式ボリュームサンプラで、本体ケース2の背面部7に形成された、サンプリング流路の入口52(図1参照)に着脱自在に取り付けられる。なお、これらのインパクター49およびサイクロン式ボリュームサンプラ50は、測定場所までは備品として、本体ケース2とは分離した状態で搬送される。そして、例えばインパクター49が本体ケース2の入口51に取り付けられるとき、前記入口52は適宜の部材で封止され、逆にサイクロン式ボリュームサンプラ50が入口52に取り付けられるとき、前記入口51は適宜の部材で封止される。
【0027】
53は本体ケース2の水平性を安定的に保つ屋外設置用三脚で、本体ケース2の底面部8に例えばねじにより、取り付け、取り外し可能に設けられる。54はバッテリー23に代わる電源部としての太陽パネルで、取り付け部材55を介して本体ケース2に着脱自在に取り付けられる。56は電源供給のある測定場所で使用する電源ケーブルで、その途中にはACをDCに変換する変換器57が設けられている。
【0028】
図3は、主として濃度測定装置1における制御関係の構成を示すもので、この図3において、58は演算制御部で、1または複数のプリント基板から構成されており、前記測定部21を初めとして、濃度測定装置1の各部を制御し、測定部21等からの信号を処理するものであり、この実施例では、前述した第1の収容ケース45と後述する第2の収容ケース59の二つの収容ケースに跨がって収容されている。60は各種の演算を行うCPU、61はアナログ信号をディジタル信号に変換したり、ディジタル信号をアナログ信号に変換する信号変換器、62はβ線検出器28の出力が入力されるアンプ、63はガス流量計38や他のセンサ64からの検出出力が入力されるアナログI/O、65はディジタルI/O、66はRAM、67は電気的消去の可能なROMである。また、68,69は、外部引き出し端子である。
【0029】
前記第2の収容ケース59は、1または複数のプリント基板を収容するもので、仕切り板20の後室2Bの中央左寄り、かつ後面側に、第1の収容ケース45とは第1の収容ケース45のプリント基板と第2の収容ケース59のプリント基板同士が電気的に接続された状態で隣接して設けられている。そして、第1の収容ケース45の上面には無線取り付け用の配線47の一端、または、太陽パネル54の電池供給コード54aの一端が差し込まれる差込口70(図1参照)が形成される一方、第2の収容ケース59の上面には濃度測定装置1の電源オン・オフ用キー71が設けられ、前面にはサンプリングポンプ22の配線等の差し込み口72が設けられている。
【0030】
次に、上記構成の濃度測定装置2の動作について説明する。例えば電源供給のない屋外で大気中のSPMを測定する場合、備品として分粒器49,50を用意し、測定部21、サンプリングポンプ22、バッテリー23等が収容された本体ケース2を片手で測定スポットまで運んだ後、三脚53を地面に立て、この三脚53の載置台53aに本体ケース2を取り付ける。このとき、本体ケース2の水平性が安定的に保たれるように三脚53を調整する。続いて、例えばインパクター49を本体ケース2に取り付けるとともに、上蓋3を開けて電源オン・オフ用キー71をオンにセットし、前蓋4を開けて測定開始用のキー31をセットする。
【0031】
そして、測定部21においては、テープ状フィルタ26は、リール24,25間にセットされており、テープ状フィルタ26の一部分が測定部位に位置する状態で静止している。この静止状態でサンプリングポンプ22を吸引動作させることにより、インパクター49を介して大気が吸引され、この大気はテープ状フィルタ26を通過し、フィルタ保持部の通気孔を通過して排出される。このとき、前記サンプリングされた大気がテープ状フィルタ26を通過する際、当該大気に含まれるSPMがテープ状フィルタ26に捕集され、測定スポットが形成される。この測定スポットは、大気サンプリングを所定時間(例えば、1時間)行うことによって形成される。そして、前記測定スポットに対してβ線源27からβ線を照射し、そのときのテープ状フィルタ26を透過してきたβ線をβ線検出器28によって検出する。このβ線検出器28から出力される強度信号を演算制御部58において所定の演算式に基づいて処理することにより捕集されたSPMの総重量が求められ、さらに吸引した大気量と前記総重量を用いて所定の演算式によって演算を行うことにより、捕集されたSPMの濃度が得られる。
【0032】
前記測定後、リール24,25を動作させてテープ状フィルタ26を所定量移動させることにより、前記測定スポットがリール25方向に移動し、テープ状フィルタ26の新しい他の部分が測定部位に位置し、次の測定への待機状態となる。
【0033】
このようにして一連の測定を行うことができる。そして、当該測定が終了した後、測定者が例えば携帯電話46を操作することにより、演算結果などのデータを中央データ管理装置に送ることができる。また、予めメモリカード33を表示操作部29の上面に設けた挿入孔34に挿入しておくことにより、前記データを保存し、必要なときにパソコン32によって前記データを取り出すことが可能である。また、測定者が携帯電話46を操作することにより、濃度測定装置1の電源オン、オフ、エラー状態等装置ステータスの確認のデータを中央データ管理装置に送ることもできる。
【0034】
そして、上記濃度測定装置1においては、サンプリングポンプ22と、排気流路36に設けたガス流量調整器37と、サンプルガスの流量を測定するガス流量計38とが一つの取り付けプレート39に設けられてユニット化されており、本体ケース2から取り外し自在になっている。したがって、例えばサンプリングポンプ22のメンテナンスは、本体ケース2から取り付けプレート39を取り外すだけで容易に行うことができる。
【0035】
また、上記濃度測定装置1においては、バッテリー23は、本体ケース2内に設けた第1の収容ケース45に収容されるプリント基板に電気的に接続されるように構成されている。したがって、本体ケース2から使用済みのバッテリー23を取り出すだけでバッテリー23の交換を容易に行うことができる。
【0036】
さらに、上記濃度測定装置1においては、測定部21は、仕切り板20に設けられているとともに、仕切り板20が本体ケース2に着脱自在に設けられているので、測定部21のメンテナンスは、これを仕切り板20とともに本体ケース2から取り外すことができるので、いわゆるユニットとしての交換を行うことができる。勿論、測定部21の構成部材のみの交換を行うようにしてもよい。いずれにしても、測定部21の点検や部品交換などのメンテナンスを容易に行うことができる。
【0037】
なお、上記濃度測定装置1において、太陽パネル54を使用できる状態にあるときは、太陽パネル54を本体ケース2に取り付け、太陽パネル54の電池供給コード54aを例えば第1の収容ケース45に収容されるプリント基板に電気的に接続する。また、電源供給のある場所では電源ケーブル56を使用すればよい。
【0038】
なお、特開2004−333465号公報に記載されているように、浮遊粒子状物質を捕集するテープ状フィルタがフッ素樹脂製の多孔質フィルムを使用し、この多孔質フィルムに通気性の補強層を裏打ちし、この補強層に測定対象物質以外の物質を標識として所定量保持させるようにした場合、SPMをダストとして捕集した後、例えば、荷電粒子励起X線分析法を用いたPIXE装置によってそのまま測定するだけで、当該PIXE装置の感度補正を行うことができ、SPMを個々に精度よく定量分析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明の浮遊粒子状物質濃度測定装置の一例を示す分解斜視図である。
【図2】上記浮遊粒子状物質濃度測定装置の使用状態を示す分解斜視図である。
【図3】上記浮遊粒子状物質濃度測定装置の構成を概略的に示す図である。
【図4】従来例を示す構成説明図である。
【符号の説明】
【0040】
1 浮遊粒子状物質濃度測定装置
2 測定装置本体ケース
21 測定部
22 サンプリングポンプ
23 電源部
26 フィルタ
27 β線源
28 β線検出器
35 サンプリング管
38 ガス流量計
49,50 分粒器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプリングポンプの吸引動作により分粒器を介して大気をサンプルガスとして連続的にサンプリング管内に吸引し、このサンプリング管の下流側に設けられた測定部において、前記サンプルガス中の浮遊粒子状物質をフィルタを用いて連続的に捕集し、この捕集した浮遊粒子状物質の濃度をβ線吸収方式で測定するように構成された浮遊粒子状物質濃度測定装置において、防塵、防水構造の測定装置本体ケースを備え、この測定装置本体ケース内に、前記測定部と前記サンプリングポンプとこれらを駆動する電源部を設けたことを特徴とする浮遊粒子状物質濃度測定装置。
【請求項2】
測定装置本体ケース内には、装置の各部を制御するとともに濃度演算を行う演算制御部とサンプルガスの流量を測定するガス流量計とが内蔵されており、浮遊粒子状物質を分粒する分粒器が前記測定装置本体ケースに着脱自在に取り付けられ、さらに、前記測定装置本体ケースは、装置のオン、オフ、エラー状態等の装置の状態の確認、演算結果などのデータを中央データ管理装置に送る送信手段を備えるとともに、前記データを保存し、必要なときにパソコンによってデータを取り出すことが可能なメモリカードと、前記データを表示する表示部および測定開始・終了用のキーを有する操作パネルと、電源オン・オフ用キーとを備えている請求項1に記載の浮遊粒子状物質濃度測定装置。
【請求項3】
測定装置本体ケースは、持ち運び用の把手と着脱自在な三脚を備えている請求項1または2に記載の浮遊粒子状物質濃度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−226906(P2006−226906A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−42732(P2005−42732)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】