説明

浴室用敷物

【課題】環境性能を向上させることが可能な浴室用敷物を提供することである。
【解決手段】バスマット1は、合成樹脂を含む基材10と、基材10の外表面の周囲を被覆する被覆層20とを備え、被覆層20は、銀化合物と光触媒効果を有する酸化チタンとを含む。銀化合物はヨウ化銀錯体を含む。基材10は、ダンボール形状の合成樹脂製の芯材11と、芯材11の一方の表面の上に固着された軟質合成樹脂製の第1のクッション材12と、芯材11の他方の表面の上に固着された軟質合成樹脂製の第2のクッション材13と、第1のクッション材12の表面を少なくとも覆うように形成された合成樹脂製の畳表状の表材14と、第2のクッション材13の表面に固着され、外表面が凹凸形状の裏材15とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的にはバスマット等の浴室用敷物に関し、特定的には浴室用敷物の環境性能の改善に関するものである。
【背景技術】
【0002】
浴室や浴場の床面には、滑り防止等を考慮して浴室用敷物が配置されている。浴室内は、入浴時間とその前後の時間、少なくとも1日のうち数時間、湿度がほぼ100%の状態にある。このため、浴室用敷物の表面は、湿気を好むカビ(糸状菌)や細菌の繁殖場所になる。したがって、放置しておくと、浴室内は人体にとって最悪の環境が作り出されることになる。
【0003】
この問題を解決するために薬剤を用いて浴室用敷物に抗菌処理等を施すことが行われている。たとえば、特開2004−174089号公報(特許文献1)には、白癬菌の発生や繁殖を防止するためにバスマット等のマット類に薬剤として耐洗濯性抗菌剤をスプレーで吹き付けて抗菌処理を施すことが提案されている。
【特許文献1】特開2004−174089号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、永続性のある確実な抗菌性能をバスマットに付与することは困難であった。
【0005】
また、抗菌処理を施さない場合には、洗剤、カビ落とし剤等をバスマットに噴霧した後、清掃作業を行う必要があるので、非常に手間がかかるという問題があった。
【0006】
さらに、浴室用敷物の表面は、湿気を好むカビ(糸状菌)や細菌の繁殖場所になるだけでなく、塵芥等が付着することによって汚れるため、浴室内に臭気成分を放出し、悪臭が生じる。この場合、薬剤、洗剤等を用いてバスマット表面の付着物を除去した後、乾燥させる必要があるので、上記と同様に非常に手間がかかるという問題があった。
【0007】
したがって、従来のバスマットは、薬剤を用いて抗菌処理を施すという対策を図ることが提案されているとしても、浴室内の環境に悪影響を及ぼすという問題が充分に解決されていなかった。
【0008】
そこで、この発明の目的は、環境性能を向上させることが可能な浴室用敷物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、浴室用敷物の環境性能を改善するために鋭意研究を重ねた結果、浴室敷物を構成する合成樹脂製の基材の外表面に、銀化合物と光触媒効果を有する酸化チタンとを含む被覆層を形成することによって、上記の目的を達成できる浴室用敷物を得ることができることを見出した。このような発明者の知見に基づいて本発明はなされたものである。
【0010】
この発明に従った浴室用敷物は、合成樹脂を含む基材と、この基材の外表面の周囲を被覆する被覆層とを備え、被覆層は、銀化合物と光触媒効果を有する酸化チタンとを含む。
【0011】
この発明の浴室用敷物においては、被覆層に含まれている銀化合物中の銀イオンが細菌、糸状菌等を死滅させることができる。被覆層中の銀イオンは長期間にわたって存在するので、浴室用敷物の表面に発生する細菌、糸状菌等を死滅させるという効果を長期間にわたって維持することができる。
【0012】
また、この発明の浴室用敷物においては、被覆層に含まれている光触媒効果を有する酸化チタンが太陽光や蛍光灯等に含まれる紫外線を受けることによって、特に入浴時間外の昼間に太陽光に含まれる紫外線を受けることによって、室内に活性酸素を発生させ、浴室内の空気中に含まれている臭気成分、細菌、有害な汚染物質等や、浴室用敷物の表面に発生する臭気成分、細菌、有害な汚染物質等を分解または死滅させることができる。光触媒効果を有する酸化チタンは長期間にわたって被覆層に存在することができるので、浴室内に活性酸素を発生させ、上記の臭気成分、細菌、有害な汚染物質等を分解または死滅させるという、光触媒効果を有する酸化チタンによる効果を長期間にわたって維持することができる。
【0013】
したがって、本発明の浴室用敷物を用いることにより、長期間にわたって、浴室用敷物のある浴室内をより清浄化された快適な環境にすることができる。
【0014】
なお、浴室用敷物の表面に付着した塵芥等の付着物は水で洗い流せばよい。
【0015】
この発明に従った浴室用敷物において、銀化合物はヨウ化銀錯体を含むのが好ましい。この場合、ヨウ化銀錯体は、細菌、糸状菌に対して広い抗菌スペクトルを示し、酸やアルカリに対して安定であり、高温の環境下でも安定であり、太陽光や紫外線によってもほとんど分解しないので、長期間にわたって抗菌効果を保つことができる。
【0016】
また、この発明に従った浴室用敷物を構成する基材は、ダンボール形状の合成樹脂製の芯材と、この芯材の一方の表面の上に固着された軟質合成樹脂製の第1のクッション材と、芯材の他方の表面の上に固着された軟質合成樹脂製の第2のクッション材と、第1のクッション材の表面を少なくとも覆うように形成された合成樹脂製の畳表状の表材と、第2のクッション材の表面に固着され、外表面が凹凸形状の裏材とを含むのが好ましい。
【0017】
この場合、芯材は、ダンボール形状を有するので、所定の強度を保つとともに浴室用敷物の軽量化を図ることができる。また、第1と第2のクッション材は、浴室用敷物の上を裸足で歩く人に軟らかさを与える。さらに、凹凸形状の裏材は、浴室用敷物の上を裸足で歩く人が滑るのを防止する役割を果たす。なお、畳表状の表材は、檜風呂等の和風の浴室や浴場において趣のある空間を提供する。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、この発明によれば、浴室用敷物のある浴室内をより清浄化された快適な環境にすることができ、さらにその入浴環境を長期間にわたって維持することが可能な浴室用敷物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、この発明の一つの実施の形態に従った浴室用敷物としてバスマットを、一部断面を含んで示す斜視図である。
【0020】
図1に示すように、半畳程度の大きさのバスマット1は、合成樹脂を含む基材10と、基材10の外表面の周囲を被覆する、二点鎖線で示された被覆層20とから構成される。
【0021】
基材10は、多数の立壁によって区画された多数の筒状の空間を有するダンボール形状の合成樹脂製の芯材11を内部に含む。芯材11の一方の表面として表側の表面の上には、軟質合成樹脂製の第1のクッション材12がホットメルト系の接着剤によって固着されている。芯材11の他方の表面として裏側の表面、この実施形態では中央部表面の上には、軟質合成樹脂製の第2のクッション材13がホットメルト系の接着剤によって固着されている。合成樹脂製の畳表状の表材14は、第1のクッション材12を覆うとともに、芯材11の両側面を覆い、さらに第2のクッション材13によって覆われていない芯材11の裏側の表面の一部を覆うように配置されている。外表面が凹凸形状である合成樹脂製の裏材15が、芯材11の裏側の表面に配置された第2のクッション材13と表材14との上にホットメルト系の接着剤によって固着されている。
【0022】
被覆層20は、基材10の外表面の周囲を被覆するように、シリコーン変成水ガラス樹脂と、光触媒効果を有する酸化チタンと、銀化合物としてヨウ化銀錯体と、水とを含む変成水ガラス塗料をスプレー等で塗布した後、たとえば、3時間程度、乾燥させることによって形成されたものである。
【0023】
以上のようにして構成されたバスマット1を浴室や浴場の床面に配置することにより、被覆層20に含まれているヨウ化銀錯体中の銀イオンが細菌、糸状菌等を死滅させることができる。1ppmm程度の銀イオン濃度であれば、大腸菌、黄色ブドウ球菌、サルモネラ菌、緑膿菌、O157、MRSA等の種々の細菌を死滅させることができる。10ppm程度の銀イオン濃度であれば、カビを発生させる糸状菌を死滅させることができる。たとえば、浴室内を一日中閉め切った状態で放置しても、バスマット1の表面にカビが発生せず、この状態は1ヶ月経過しても変化がないという実験結果が得られた。
【0024】
このようにして、家庭用浴室だけでなく、不特定多数の人が出入する温泉等の浴場に本発明のバスマット1を床面に配置することにより、細菌、糸状菌等を死滅させることができ、抗菌性の敷物を提供することができる。
【0025】
また、被覆層20中の銀イオンは長期間にわたって存在するので、バスマット1の表面に発生する細菌、糸状菌等を死滅させるという効果を長期間にわたって維持することができる。
【0026】
さらに、バスマット1においては、被覆層20に含まれている光触媒効果を有する酸化チタンが太陽光や蛍光灯等に含まれる紫外線を受けることによって、特に入浴時間外の昼間に太陽光に含まれる紫外線を受けることによって、室内に活性酸素を発生させ、浴室内の空気中に含まれている臭気成分、細菌、有害な汚染物質等や、バスマット1の表面に発生する臭気成分、細菌、有害な汚染物質等、たとえば、アンモニアガス、アセトアルデヒドガス、トリメチルアミン等を分解または死滅させることができる。光触媒効果を有する酸化チタンは長期間にわたって被覆層20に存在することができるので、浴室内に活性酸素を発生させ、上記の臭気成分、細菌、有害な汚染物質等を分解または死滅させるという、光触媒効果を有する酸化チタンによる効果を長期間にわたって維持することができる。
【0027】
したがって、本発明のバスマット1を用いることにより、長期間にわたって、バスマット1のある浴室内や浴場内をより清浄化された快適な環境にすることができる。
【0028】
なお、バスマット1の表面に付着した塵芥等の付着物は水で洗い流せばよい。
【0029】
この実施の形態に従ったバスマット1において、被覆層20に含まれている銀化合物はヨウ化銀錯体を含む。ヨウ化銀錯体は、細菌、糸状菌に対して広い抗菌スペクトルを示し、酸やアルカリに対して安定であり、高温の環境下でも安定であり、太陽光や紫外線によってもほとんど分解しないので、長期間にわたって抗菌効果を保つことができる。
【0030】
また、この実施の形態に従ったバスマット1を構成する基材10は、ダンボール形状の合成樹脂製の芯材11と、芯材11の一方の表面の上に固着された軟質合成樹脂製の第1のクッション材12と、芯材11の他方の表面の上に固着された軟質合成樹脂製の第2のクッション材13と、第1のクッション材12の表面を少なくとも覆うように形成された合成樹脂製の畳表状の表材14と、第2のクッション材13の表面に固着され、外表面が凹凸形状の裏材15とを含むので、次のような作用効果を達成することができる。
【0031】
芯材11は、ダンボール形状を有するので、所定の強度を保つとともにバスマット1の軽量化を図ることができる。また、第1と第2のクッション材12、13は、バスマット1の上を裸足で歩く人に軟らかさを与える。さらに、凹凸形状の15は、バスマット1の上を裸足で歩く人が滑るのを防止する役割を果たす。なお、畳表状の表材14は、檜風呂等の和風の浴室や浴場において趣のある空間を提供する。
【0032】
以上のように、この発明のバスマット1を浴室や浴場の床面に配置することにより、浴室内や浴場内で発生する、人体に悪影響をもたらす環境上の問題を解決することができ、快適な入浴環境を長期間にわたって提供することができる。
【0033】
以上に開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正や変形を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明の一つの実施の形態に従った浴室用敷物としてバスマットを、一部断面を含んで示す斜視図である。
【符号の説明】
【0035】
1:バスマット、10:基材、11:芯材、12:第1のクッション材、13:第2のクッション材、14:表材、15:裏材、20:被覆層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂を含む基材と、
前記基材の外表面の周囲を被覆する被覆層とを備え、
前記被覆層は、銀化合物と光触媒効果を有する酸化チタンとを含む、浴室用敷物。
【請求項2】
前記銀化合物は、ヨウ化銀錯体を含む、請求項1に記載の浴室用敷物。
【請求項3】
前記基材は、
ダンボール形状の合成樹脂製の芯材と、
前記芯材の一方の表面の上に固着された軟質合成樹脂製の第1のクッション材と、
前記芯材の他方の表面の上に固着された軟質合成樹脂製の第2のクッション材と、
前記第1のクッション材の表面を少なくとも覆うように形成された合成樹脂製の畳表状の表材と、
前記第2のクッション材の表面に固着され、外表面が凹凸形状の裏材とを含む、請求項1または請求項2に記載の浴室用敷物。

【図1】
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【公開番号】特開2006−130106(P2006−130106A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−323121(P2004−323121)
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【出願人】(591017445)有限会社中川正人商店 (3)
【Fターム(参考)】