説明

浴室用電子機器

【課題】浴室の壁面に取り付けられる浴室テレビでは、内部に水等が侵入しないようにケーシングは水密構造にする必要がある。但し、完全にケーシングを外部に対して密閉すると、ケーシング内の温度変化により内部圧力が高低したり、ケーシングを密閉する際に混入した水分が抜けず、画像表示部と窓部との間が曇る場合がある。そのため、ケーシングの背面に通気孔を設ける必要があるが、ケーシングの設計上、通気孔の設置場所が制限される場合があり、また防水が不完全であると通気孔の位置まで水が侵入するおそれがある。
【解決手段】ケーシング内部の電子基板と外部とを接続するハーネス内に通気チューブを組み込み、この通気チューブを介してケーシング内と外部との通気を行うようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室テレビや風呂リモコンのように、水密なケーシングを備え、浴室内に取り付けられる浴室用電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の浴室用電子機器は浴室内で使用されるため、ケーシング内に水や水蒸気が侵入しないように水密構造のケーシングが採用されている。但し、ケーシング内には画像表示部やその他の電子基板やその他の電子部材が内蔵されており、通電されるとケーシング内部で発熱し内部の空気が膨張する。逆に通電が停止するとケーシング内部の空気が冷却され収縮する。膨張時に内部空気が徐々に漏出すると、冷却時に内部の圧力が不圧になり、水分をケーシング内部に吸引するおそれが生じる。また、浴室テレビのようにスピーカを備えるものでは、ケーシング内の圧力によって振動板が撓み音質が低下し、もしくはスピーカが破損するおそれが生じる。
【0003】
また、ケーシングを密閉する際に水分が封入されると、浴室テレビでは画像表示部を鑑賞するために設けたれた透明部分の内部が曇り、画像表示部の観賞性が損なわれるという不具合が生じる。
【0004】
そこで、浴室内の水分がかからない位置に対してケーシングを積極的に開口して通気を可能とし、ケーシング内の圧力が変化しないようにすると共に、内部に封入された水蒸気が外部へと排出されるようにケーシング自体に通気孔が形成されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−208046号公報(図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記通気孔をケーシングに設けただけでは、ケーブル類を通すために壁面に形成した穴を通ってケーシング内へと小昆虫が侵入するおそれが生じる。また通気孔からホコリが侵入すると画像表示部と透明部分との間にホコリが入り、見づらくなるという不具合が生じる。そこで、通気孔として小さな穴をケーシングの裏面に形成し、その通気孔をケーシング内部から通気シールで蓋をすることが行われている。
【0006】
この通気シールは空気や水蒸気といった気体は通すが固形物を遮断するものであり、微細な穴が多数形成されたシールである。この通気シールを貼るためには通気孔の周囲に通気シールを貼着するための糊代を確保する必要があるが、ケーシングをコンパクト化すると通気シール用の糊代が確保できない場合が生じる。また、ケーシングの裏面に通気孔を形成したのでは浴室内と通気孔の位置とが極めて近いので、壁面とケーシングとの間の防水施工が不十分であると通気孔の位置まで水が侵入するおそれが生じる。
【0007】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、ケーシングの設計の如何に関わらず、確実に水分の侵入を防止してケーシング内と外部との通気を確保することのできる浴室用電子機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明による浴室用電子機器は、水密に密閉されたケーシング内に電子基板その他の電子部材を備え、浴室内に設置される浴室用電子機器において、ケーシングの裏面に、ケーシング内の回路基板その他の電子部材に接続されるケーブル類が一体にまとめられたハーネスを取り付けると共に、このハーネス内にケーブル類と共に通気チューブを組み込み、通気チューブの一端をケーシング内に開放し、他端を浴室外の大気中に開放したことを特徴とする。
【0009】
ケーシング内と外部との通気は通気チューブを介して行われる。通気チューブの他端の位置は自由に設定することができ、例えば浴室から離して水などがかからない位置に通気チューブの他端を位置させることが可能となる。
【0010】
なお、通気チューブの一端に通気シールを貼着することが望ましいが、そのままでは通気チューブの一体には糊代が確保しづらい。そこで、そのような場合には、通気チューブの上記一端に、通気シールを貼着し得るフランジ部を設け、そのフランジ部に通気シールを貼着して、通気チューブを通ってケーシング内へ固形物が侵入することを防止すればよい。
【0011】
ところで、上記フランジ部をケーシングに一体に成型すれば、部品点数を増加させることがない。
【発明の効果】
【0012】
以上の説明から明らかなように、本発明は、通気チューブを介してケーシング内と外部との通気を行うので、通気チューブの外部への開口である他端の位置を自由に設定することができ、かつ、通気チューブをハーネス内に組み込んだので、ケーシングのデザインに左右されることなく通気チューブを設置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1を参照して、1は本発明にかかる浴室用電子機器の一例である浴室テレビであり、浴室BRの壁部Wに固定されている。この浴室テレビ1は、図2に示すように、前カバー2と後カバー3とが水密に接合されたケーシングを備えている。そして、前方から着脱自在の化粧カバー11が取り付けられている。なお、この化粧カバー11は必須のものではなく、前カバー2のデザインにより、化粧カバー11を廃止してもよい。
【0014】
前カバー2には内部の画像表示部に表示されるテレビ画像を前方から鑑賞するための透明な窓部21が設けられている。また、後カバー3が浴室BRの壁部Wに密着するように固定される。
【0015】
図3を参照して、前カバー2と後カバー3とで形成されるケーシング内には、液晶表示ユニットからなる画像表示部22と、画像表示部22のドライバ回路や外部との通信を行う通信回路、その他の電子回路が形成された電子基板23とが内蔵される。この電子基板23と外部のチューナユニット(図示せず)とは複数のケーブル類を介して接続されている。これらケーブル類は1本のハーネスとして纏められ、後カバー3に形成された挿入口31に取り付けられる。
【0016】
図4を参照して、浴室テレビ1を壁部Wに取り付ける際には予め壁部Wにハーネス4が通される開口WHが形成されている。そして後カバー3にハーネス4が取り付けられた状態で前カバー2等と後カバー3とが接合される。このハーネス4には挿入口31を液密に閉塞する栓部41が形成されているので、ハーネス4が取り付けられた状態では挿入口31から水などがケーシング内に侵入することはない。
【0017】
このハーネス4内には上述の通り、各種のケーブル42が纏められているが、本発明では更に、通気チューブ5をケーブル42と共にハーネス4内に組み込んだ。この通気チューブ5の他端51は浴室BRから十分に離れた位置まで引き出され、図示しない固定バンド等により固定される。一方、通気チューブ5の一端52はケーシング内に位置してケーシング内の空間に開口する。
【0018】
本実施の形態ではその通気チューブ5の一端52にフランジ部材6を取り付けた。図5に示すように、このフランジ部材6は脚部61が一端52に挿入され、通気チューブ5の内部通路がフランジ部材6の開口62に連通するように構成されている。そして、フランジ部材6には開口62の周囲に糊代部63が形成されており、その糊代部63に通気シール7を貼着して、通気シール7で開口62を閉塞した。
【0019】
この通気シール7は上述の通り、気体は通過させるが、固体物は通過させないものであり、他端51から小昆虫が通気チューブ5内に入り込んでも、この通気シール7によって小昆虫がケーシング内に侵入することが防止される。
【0020】
ところで、図6に示すように、フランジ部材6を用いずに後ケース3にフランジ部32を一体に形成して、そのフランジ部32に通気チューブ5の一端52を接続すると共に、通気シール7を貼り付けるようにしてもよい。
【0021】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。例えば、上記実施の形態では、浴室テレビ1の背面全体を浴室BRの壁部Wに固定し、浴室テレビ1の周囲をコーキングしたが、浴室テレビ1を壁部Wから若干浮かせて取り付け、更に浴室テレビ1の角度を調節できるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施の形態の構成を示す図
【図2】浴室テレビの外観図
【図3】浴室テレビの分解斜視図
【図4】ハーネスの構造を示す図
【図5】通気チューブの一端近傍を示す図
【図6】通気チューブの一端近傍の他の形態を示す図
【符号の説明】
【0023】
1 浴室テレビ
2 前カバー
3 後カバー
4 ハーネス
5 通気チューブ
6 フランジ部材
7 通気シール
21 窓部
22 画像表示部
23 電子基板
42 ケーブル
51 他端
52 一端
63 糊代部
BR 浴室
W 壁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水密に密閉されたケーシング内に電子基板その他の電子部材を備え、浴室内に設置される浴室用電子機器において、ケーシングの裏面に、ケーシング内の回路基板その他の電子部材に接続されるケーブル類が一体にまとめられたハーネスを取り付けると共に、このハーネス内にケーブル類と共に通気チューブを組み込み、通気チューブの一端をケーシング内に開放し、他端を浴室外の大気中に開放したことを特徴とする浴室用電子機器。
【請求項2】
通気チューブの上記一端に、通気シールを貼着し得るフランジ部を設け、そのフランジ部に通気シールを貼着して、通気チューブを通ってケーシング内へ固形物が侵入することを防止することを特徴とする請求項1に記載の浴室用電子機器。
【請求項3】
上記フランジ部はケーシングに一体に成型されたことを特徴とする請求項2に記載の浴室用電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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