説明

浴室部材

【課題】親水・親油性の汚れが付き難く、かつ付着した汚れの除去が容易である撥水、撥油、防汚機能を有する浴室部材を提供すること。
【解決手段】エチレン性不飽和二重結合とパーフルオロアルキル基を有する含フッ素単量体(a)20〜80重量%、エチレン性不飽和二重結合と架橋性の官能基とを有する単量体(b)80〜20重量%、およびエチレン性不飽和二重結合を有する(a)、(b)以外の単量体(c)0〜50重量%からなる重合体(A)と、エチレン性不飽和二重結合と架橋性の官能基を有する単量体(b)20〜100重量%、およびエチレン性不飽和二重結合を有する(a)、(b)以外の単量体(c)0〜80重量%との重合体(B)とからなるコーティング剤から形成される防汚層を浴室部材の表面に形成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部材表面に防汚層を有し、例えば、浴室・シャワールーム等において好適に使用できる防汚浴室部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浴室・シャワールーム等における浴室部材の汚れを防止する方法として、基材表面に親水性を付与することが従来行われている。親水性を付与する方法として、部材表面に界面活性剤を塗布する方法、親水性モノマー・ポリマー等の親水性物質を塗布する方法、部材表面に光触媒を被覆する方法(特許文献1)、部材表面に凹凸構造を有する被膜を形成する方法(特許文献2)などが開示されている。
しかしながら界面活性剤および親水性モノマー・ポリマー等の親水性物質を塗布する方法では界面活性剤・親水性物質は水分によって流れ落ちやすく、特に浴室のように水が頻繁にかかる環境においては、効力の持続性に問題があり、さらに親水性モノマー・ポリマーなどの親水性物質は、吸水すると表面が柔らかくなり傷つきやすくなる。また、いずれも空気中の汚れなどを吸着しやすいという欠点があった。
また光触媒を被覆する方法では、例えば、室内照明に含まれる励起光の照度が低くかつ汚れ負荷の大きな浴室で使用する場合、励起光の照度が低いために光触媒の光励起による親水化に時間がかかり、そのため時間の経過とともに表面の水との接触角が上昇し、水をかけるだけでは汚れが充分に落とせなくなるという問題があった。凹凸構造を有する被膜を形成する方法では、凹凸構造を形成する孔は、くさび状などの様々な複雑で入り組んだ形状をしているために浴室等の汚染負荷が高い環境で使用した場合には、水洗浄では汚染物質を完全に落すことができずに防汚性も得られなくなる。
【0003】
また浴室は、水道水中の金属イオンに起因する汚れ、石鹸かすや皮脂などの他、洗髪・洗体時に使用する洗浄剤、さらさら感を得るためのカチオン性物質等、親水性・親油性等の様々な汚染物が非常に多い。浴室部材の表面が親水性であれば親水性の汚れを吸着しやすく、浴室部材の表面が親油性であれば親油性の汚れを吸着しやすいために、あらゆる汚れに対し防汚性を確保するには浴室部材の表面を撥水・撥油性にする必要があった。
【特許文献1】WO96/29375号公報
【特許文献2】特開平8−11631号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、親水・親油性の汚れが付き難く、かつ付着した汚れの除去が容易である撥水、撥油、防汚機能を有する浴室部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の防汚浴室部材は、表面エネルギーの低いフッ素原子を含む重合体が塗膜表面に局在化することを利用して、少ないフッ素含有量で浴室部材表面に高い防汚機能を付与し、さらに長期間にわたって防汚機能が保持されるものである。
【0006】
即ち、第1の発明は、エチレン性不飽和二重結合とパーフルオロアルキル基を有する含フッ素単量体(a)20〜80重量%、エチレン性不飽和二重結合と架橋性の官能基を有する単量体(b)80〜20重量%、およびエチレン性不飽和二重結合を有する(a)、(b)以外の単量体(c)0〜50重量%からなる重合体(A)と、エチレン性不飽和二重結合と架橋性の官能基を有する単量体(b)20〜100重量%、およびエチレン性不飽和二重結合を有する(a)、(b)以外の単量体(c)0〜80重量%との重合体(B)とからなるコーティング剤から形成される防汚層を浴室部材の表面に有する防汚浴室部材に関する。
【0007】
また、第2の発明は、エチレン性不飽和二重結合と架橋性の官能基を有する単量体(b)の架橋性の官能基が、加水分解性シリル基、カルボキシル基、イソシアノ基、エポキシ基、N−メチロール基、N−アルコキシメチル基、またはヒドロキシル基から選ばれる少なくとも1種の官能基であることを特徴とする第1の発明の防汚浴室部材に関する。
【0008】
また、第3の発明は、重合体(A)を構成する単量体(a)の量が、重合体(A)および重合体(B)を構成する単量体の合計100重量%中0.1〜10重量%であることを特徴とする第1または第2の発明の防汚浴室部材に関する。
【0009】
さらに、第4の発明は、架橋剤として、重合体(A)及び重合体(B)中の架橋性の官能基と反応可能な反応性官能基を有する化合物を1種類以上含む第1ないし第3いずれかの発明の防汚浴室部材に関する。
【0010】
また、第5の発明は、架橋触媒を含む第1ないし第4いずれかの発明の防汚浴室部材に関する。
【0011】
また、第6の発明は、エチレン性不飽和二重結合とパーフルオロアルキル基を有する含フッ素単量体(a)20〜80重量%、エチレン性不飽和二重結合と架橋性の官能基を有する単量体(b)80〜20重量%、およびエチレン性不飽和二重結合を有する(a)、(b)以外の単量体(c)0〜50重量%からなる重合体(A)と、エチレン性不飽和二重結合と架橋性の官能基を有する単量体(b)20〜100重量%、およびエチレン性不飽和二重結合を有する(a)、(b)以外の単量体(c)0〜80重量%との重合体(B)とからなるコーティング剤を浴室部材表面に被覆し、加熱架橋することで防汚層を形成させることを特徴とする防汚浴室部材の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、表面エネルギーの低いフッ素原子を含む重合体が塗膜表面に局在化することを利用して、少ないフッ素原子含有量で表面に撥水、撥油、防汚機能を有し、親水・親油性の汚れが付き難く、かつ付着した汚れの除去が容易で、さらに水が頻繁にかかる環境においても防汚機能が保持される浴室部材を提供できるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の防汚浴室部材は、重合体(A)、重合体(B)、及び必要に応じて架橋剤を含むコーティング剤を浴室部材表面に塗工し、加熱架橋することにより製造することができる。
【0014】
本発明の浴室部材表面に施される撥油、撥水コーティング剤は、フッ素原子含有重合体を含むコーティング剤であることが重要である。具体的には、本発明で用いるフッ素原子含有重合体を含むコーティング剤は、エチレン性不飽和二重結合とパーフルオロアルキル基を有する含フッ素単量体(a)20〜80重量%、エチレン性不飽和二重結合と架橋性の官能基を有する単量体(b)80〜20重量%、およびエチレン性不飽和二重結合を有する(a)、(b)以外の単量体(c)0〜50重量%からなる重合体(A)と、エチレン性不飽和二重結合と架橋性の官能基を有する単量体(b)20〜100重量%およびエチレン性不飽和二重結合を有する(a)、(b)以外の単量体(c)0〜80重量%との重合体(B)とからなるコーティング剤である。
【0015】
上記撥油、撥水コーティング剤を構成する重合体(A)を得るために用いられる、エチレン性不飽和二重結合とパーフルオロアルキル基を有する含フッ素単量体(a)の例として、
パーフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチルメチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロイソノニルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロノニルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロデシルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピルプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルアミル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルウンデシル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基を有するパーフルオロアルキルアルキル(メタ)アクリレート類;
【0016】
パーフルオロブチルエチレン、パーフルオロヘキシルエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、パーフルオロデシルエチレン等のパーフルオロアルキルアルキレン類が挙げられ、要求性能に応じてこれらの内から1種類、あるいは2種類以上を混合して使用でき、重合体(A)を構成する単量体の合計100重量%中20〜80重量%の共重合比率で用いられるが、十分な撥水、撥油性を得るためには40重量%以上共重合する事が望ましく、さらにハロゲン原子を含まない溶剤に溶解させるためには60重量%以下の共重合比率にすることが望ましい。
【0017】
重合体(A)および重合体(B)を得るために用いられる、エチレン性不飽和二重結合と架橋性の官能基を有する単量体(b)は、塗工後に架橋させて、塗膜と基材とを十分に密着させるために用いられる。架橋性の官能基としては、加水分解性シリル基、カルボキシル基、イソシアノ基、エポキシ基、N−メチロール基またはN−アルコキシメチル基、ヒドロキシ基等が挙げられ、特に加水分解性シリル基を有する単量体を用いた場合には、密着性に優れた塗膜が得られる。加水分解性シリル基を有する単量体(b)の例としては、γ−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリルオキシプロピルメチルジメトキシシランなどの(メタ)アクリルオキシアルキルアルコキシシランや、(メタ)アクリルオキシアルキルアルコキシアルキルシラン、トリメトキシビニルシラン、ジメトキシエチルシラン、トリエトキシビニルシラン、トリエトキシアリルシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シランなどが挙げられる。
【0018】
また、カルボキシル基を有する単量体(b)の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、スチレンスルホン酸などが挙げられる。
また、イソシアノ基を有する単量体(b)の例としては、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネートなどの他、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシ(メタ)アクリレートを、トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、コロネートLなどのポリイシアネートと反応させて得られるものが挙げられる。
【0019】
また、エポキシ基を有する単量体(b)の例としては、グリシジルメタクリレート、グリシジルシンナメート、グリシジルアリルエーテル、グリシジルビニルエーテル、ビニルシクロヘキセンモノエポキサイド、1、3−ブタジエンモノエポキサイドなどが挙げられる。
【0020】
また、N−メチロール基またはN−アルコキシメチル基を有する単量体(b)の例としては、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、およびN−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのN−モノアルコキシメチル基を有する(メタ)アクリルアミドや、N,N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、およびN,N−ジ(メトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(エトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(プロポキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(ブトキシメチル)(メタ)アクリルアミドなどのN,N−ジアルコキシメチル基を有する(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0021】
またヒドロキシル基を有する単量体(b)の例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシスチレン等が挙げられる。
【0022】
単量体(b)は、要求性能に応じてこれらの内から1種、または2種以上を混合して用いることができる。また、重合体(A)中で用いるものと、重合体(B)中で用いるものとは、必ずしも同一である必要はない。単量体(b)は、重合体(A)中では、80〜20重量%の共重合比率で用いられる。20重量%より小さい場合は、充分な基材との密着性が得られず、80重量%より大きい場合は、撥水、撥油性が低下する。また、重合体(B)中では、20〜100重量%の共重合比率で用いられる。20重量%より小さい場合は、充分な基材との密着性が得られない。
【0023】
上記撥油、撥水コーティング剤で用いられ得る、エチレン性不飽和二重結合を有する(a)、(b)以外の単量体(c)は、硬度、強靭性、耐擦傷性、光沢向上等の物性付与のために好ましく用いられる。この単量体(c)としては、
(i) (メタ)アクリル酸誘導体、(ii)芳香族ビニル単量体、(iii) オレフィン系炭化水素単量体、(iv)ビニルエステル単量体、(v) ビニルハライド単量体、(vi)ビニルエーテル単量体等があげられる。
(i) (メタ)アクリル酸誘導体の例として、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸塩や、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどの脂肪族系もしくは芳香族系(メタ)アクリレート類や、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニル(メタ)アクリレート、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレートなどの、一部水素がフッ素置換されたアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(ii)芳香族ビニル単量体の例として、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレンや、フルオロスチレン、モノフルオロメチルスチレン、ジフルオロメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレ等の一部の水素がフッ素置換されたスチレン類等が挙げられる。
(iii) オレフィン系炭化水素単量体の例として、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソブチレン、イソプレン、1、4−ペンタジエン等が挙げられる。
(iv)ビニルエステル単量体の例として、酢酸ビニル等が挙げられる。
(v) ビニルハライド単量体の例として、塩化ビニル、塩化ビニリデン、モノフルオロエチレン、ジフルオロエチレン、トリフルオロエチレン等が挙げられる。
(vi)ビニルエーテル単量体の例として、ビニルメチルエーテル等が挙げられる。
これらは、2種以上用いても良い。
【0024】
単量体(c)は、重合体(A)中においては、重合体(A)を構成する単量体の合計100重量%中50重量%以下の割合で用いられ得る。
また、重合体(B)中においては、重合体(B)を構成する単量体の合計100重量%中80重量%以下の割合で用いられ得る。80重量%より大きい場合は、基材との十分な密着性が得られない。また、重合体(A)との相溶性が低下し、均一かつ良好な塗膜が得られない。
なお、重合体(A)を得るにあたり単量体(c)を使用する場合には、その使用量は、重合体(A)を構成する単量体の合計100重量%中10重量%以上であることが好ましい。
また、重合体(B)を得るにあたり単量体(c)を使用する場合には、その使用量は、重合体(B)を構成する単量体の合計100重量%中20重量%以上であることが好ましい。
【0025】
重合体(A)および重合体(B)は、公知の方法、例えば、溶液重合で得られる。用いる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテルなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメンなどの芳香族類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類などの使用が可能である。溶媒は2種以上の混合物でもよい。合成時の単量体の仕込み濃度は、80重量%以下であることが好ましい。
【0026】
重合開始剤としては、通常の過酸化物またはアゾ化合物、例えば、過酸化ベンゾイル、アゾイソブチルバレノニトリル、アゾビスイソブチロニトリル、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルペルベンゾエート、t−ブチルペルオクトエート、クメンヒドロキシペルオキシドなどが用いられ、重合温度は、50〜140℃、好ましくは70〜140℃である。得られる重合体の好ましい重量平均分子量は、重合体(A)、重合体(B)共に、2,000〜100,000である。
【0027】
また、本発明で用いる撥油、撥水コーティング剤においては、重合体中の架橋性の官能基を架橋させるために、種々の架橋剤を必要に応じて用いることができる。
代表的な架橋剤としては、
ヘキサメチロール化メラミン、ヘキサメトキシメチル化メラミン、ヘキサブトキシメチル化メラミンなどのアルキロール基またはアルコキシ基を有するメラミン系化合物、
シアヌール酸、アンメリド、メラミン、ベンゾグアナミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジアミノピリジンなどのアミノ基含有化合物、
ベンゾグアナミン樹脂、メタノール変性メラミン樹脂、尿素樹脂などのアミノ樹脂、
ヒドラジン、ADHなどのヒドラジン系化合物、
エチレンジアミン、プロパンジアミン、ブタンジアミン、ペンタンジアミン、ヘキサンジアミン、ジアミノオクタン、ジアミノデカン、ジアミノドデカン、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサメチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなどの直鎖状ジアミン、
メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルジシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,4−ビス(2−アミノ−2−メチルプロピル)ピペラジン、m−キシレンジアミン、ポリシクロヘキシルポリアミン、ビス(アミノメチル)ビシクロ[2・2・1]ヘプタン、メチレンビス(フランメタンアミン)などの環状ジアミン、
1,6−ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチレントリアミンなどのポリアミン、
【0028】
トルイレンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、o−トルイレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、水添4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネートなどのジイソシアネート、あるいは、これらとグリコール類またはジアミン類との反応生成物である両末端イソシアネートアダクト体、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、コロネートLなどの多価イソシアネート、
シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ヘキサン二酸、クエン酸、マレイン酸、メチルナディク酸、ドデセニルコハク酸、セバシン酸、ピロメリット酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸などのジカルボン酸、及びこれらの酸無水物、
グリオキザル、テレフタルアルデヒドなどのジアルデヒド、
グリシン、アラニンなどのアミノ酸およびそのラクタム、
クエン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、6 −ヒドロキシペンタン酸などのヒドロキシカルボン酸およびそのラクトン、
【0029】
1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、などのジオール、
1,1,1−トリメチロールプロパンエチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、ズルシトール、マンニトール、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、グアヤコール、ヘキシルレゾルシン、ピロガロール、トリヒドロキシベンゼン、フロログルシン、ジメチロールフェノールなどの多価アルコールまたは多価フェノール系化合物、あるいはこれらのアルコキシ変性物、
エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1、6ーヘキサンジオールジグリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジルエステルなどのビスエポキシ化合物、
油化シェルエポキシ社製、商品名エピコート801、802,807,815,827,828,834,815X,815XA1、828EL,828XA、1001、1002、1003、1055、1004、1004AF、1007、1009、1010、1003F、1004F,1005F,1100L,834X90,1001B80,1001X70,1001X75,1001T75,5045B80,5046B80,5048B70,5049B70、5050T60、5050、5051、152、154、180S65,180H65,1031S,1032H60、604、157S70などのエポキシ樹脂、
ピロりん酸、亜りん酸エチル、ビスフェノールA変性ポリりん酸、亜りん酸トリフェニルなどのりん化合物、
りん酸ジクロリド化合物などが挙げられる。
【0030】
これらの架橋剤の中で、単量体(b)としてカルボキシル基を有する単量体を用いた場合は、フェノール樹脂、アミノ樹脂、ジアミン、ポリアミン、ジイソシアネート、ビスエポキシ化合物、エポキシ樹脂などの使用が好ましい。
また、単量体(b)としてイソシアノ基を有する単量体を用いた場合は、ヒドラジン系化合物、ジアミン類、ジカルボン酸およびその無水物、ジオール、多価アルコールまたは多価フェノール系化合物、ビスエポキシ化合物、エポキシ樹脂などの使用が好ましい。
また、単量体(b)としてエポキシ基を有する単量体を用いた場合は、ジカルボン酸およびその無水物、多価アルコールまたは多価フェノール系化合物あるいはこれらのアルコキシ変性物、アミノ樹脂、ジイソシアネート、多価イソシアネート、アミノ酸およびそのラクタム、ヒドロキシカルボン酸およびそのラクトン、またはジアミン、ポリアミンなどの使用が好ましい。
【0031】
また、単量体(b)としてN−メチロール基またはN−アルコキシメチル基を有する単量体を用いた場合は、ジカルボン酸、アルキロール基またはアルコキシ基を有するメラミン系化合物、アミノ樹脂系化合物などの使用が好ましい。
また、単量体(b)としてヒドロキシル基を有する単量体を用いた場合は、アミノ樹脂、ジアミン、ポリアミン、ジイソシアネート、ジアルデヒド、ビスエポキシ化合物、エポキシ樹脂、りん化合物、りん酸ジクロリド化合物などの使用が好ましい。
これらの架橋剤は2種類以上使用してもよく、その総使用量は重合体(A)と重合体(B)との合計100重量部に対して1〜500重量部、好ましくは10〜200重量部の範囲である。
【0032】
また、本発明で用いる撥油、撥水コーティング剤においては、重合体中の架橋性の官能基の架橋反応、もしくは重合体中の架橋性の官能基と架橋剤との架橋反応を促進させるために、それぞれの官能基に応じて、種々の架橋触媒を用いることができる。
代表的な架橋触媒としては、アルミニウムトリアセチルアセトネート、鉄トリアセチルアセトネート、マンガンテトラアセチルアセトネート、ニッケルテトラアセチルアセトネート、クロムヘキサアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、コバルトテトラアセチルアセトネートなどの金属錯化合物、
アルミニウムエトキシド、アルミニウムプロポキシド、アルミニウムブトキシド、チタンエトキシド、チタンプロポキシド、チタンブトキシドなどの金属アルコキシド、
酢酸ナトリウム、オクチル酸錫、オクチル酸鉛、オクチル酸コバルト、オクチル酸亜鉛、オクチル酸カルシウム、ナフテン酸鉛、ナフテン酸コバルト、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレートジブチル錫ジ(2−エチルヘキソエート)などの金属塩化合物、
ギ酸、酢酸、プロピオン酸、p−トルエンスルホン酸、トリクロロ酢酸、リン酸、モノアルキルリン酸、ジアルキルリン酸、β−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのリン酸エステル、モノアルキル亜リン酸、ジアルキル亜リン酸などの酸性化合物、
p−トルエンスルホン酸、無水フタル酸、安息香酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ギ酸、酢酸、イタコン酸、シュウ酸、マレイン酸などの酸及びそれらのアンモニウム塩や低級アミン塩あるいは多価金属塩、
水酸化ナトリウム、リチウムクロライド、
ジエチル亜鉛、テトラ(n−ブトキシ)チタンなどの有機金属化合物、
ジシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ブタンジアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルエチルアミンなどのアミン類などが挙げられる。
【0033】
これらの架橋触媒の中で、単量体(b)として加水分解性シリル基を有する単量体を用いた場合は、金属錯化合物、金属アルコキシド、金属塩化合物、酸性化合物などの使用が好ましい。特に、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレートなどの錫化合物およびp−トルエンスルホン酸などの使用が好ましい。
また、単量体(b)としてカルボキシル基を有する単量体を用いた場合は、酸及びそれらのアンモニウム塩や低級アミン塩あるいは多価金属塩などの使用が好ましい。
また、単量体(b)としてイソシアノ基を有する単量体を用いた場合は、アミン類、金属塩化合物などの使用が好ましい。
【0034】
また、単量体(b)としてエポキシ基を有する単量体を用いた場合は、有機金属化合物、アミン類などの使用が好ましい。
また、単量体(b)としてN−メチロール基またはN−アルコキシメチル基を有する単量体を用いた場合は、酸、およびそれらのアンモニウム塩や低級アミン塩あるいは多価金属塩などの使用が好ましい。
また、単量体(b)としてヒドロキシル基を有する単量体を用いた場合は、酸性化合物、酸及びそれらのアンモニウム塩や低級アミン塩あるいは多価金属塩などの使用が好ましい。
【0035】
これらの架橋触媒は2種類以上使用してもよく、その総使用量は重合体(A)と重合体(B)との合計100重量部に対して0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部の範囲である。
【0036】
本発明において用いる撥油、撥水コーティング剤を調製するうえで、必要に応じ本発明による効果を妨げない範囲で、充填剤、チクソトロピー付与剤、着色顔料、体質顔料、染料、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、熱伝導性改良剤、可塑剤、ダレ防止剤、防汚剤、防腐剤、殺菌剤、消泡剤、レベリング剤等の各種の添加剤を添加してもよい。
【0037】
本発明において用いる撥油、撥水コーティング剤は、重合体(A)および重合体(B)と、さらに必要に応じて架橋剤、架橋触媒および添加剤を溶剤に混合溶解して得られる。
溶剤は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテルなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメンなどの芳香族類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類などの内から樹脂の組成に応じて使用する。溶剤は2種以上を用いてもよい。
混合方法に特に限定はないが、通常は、重合して得られた重合体溶液をそのまま混合し、攪拌羽根、振とう攪拌機、回転攪拌機などで攪拌すればよい。塗工性などの向上のために、さらに溶媒を追加したり、濃縮してもよい。また、重合体(A)と重合体(B)との混合比率は、含フッ素単量体(a)の量が、重合体(A)および重合体(B)を構成する単量体の合計100重量%中0.1〜10重量%となるようにすることが好ましい。0.1重量%より小さい場合は、充分な撥水、撥油効果が得られにくく、10重量%より大きい場合はコストが高くなる。
【0038】
こうして得られたコーティング剤を、浴室部材である壁材、壁目地、床材、床目地、天井、水栓金具、シャワ−ホ−ス、シャワ−ヘッド、シャワ−吐水部、シャワ−フック、浴槽、浴槽ハンドグリップ、浴槽エプロン、浴槽排水栓、窓、窓枠、窓の桟、窓の床板、照明器具、すのこ、グレ−チング、排水目皿、排水ピット、排水籠、排水トラップ、トラップ封水筒、扉、扉枠、扉の桟、マット、石鹸置き、手桶、洗面器、風呂椅子、トランスファ−ボ−ド、収納棚、手すり、風呂蓋、タオル掛け、シャワ−チェア、洗面器置き台、換気扇、手すり、カウンター、洗面ボウル、タッチパネル、シ−ラント等の表面に塗工し、加熱架橋または室温架橋させることにより、本発明の防汚浴室部材を得ることができる。
コーティング剤の塗工方法には、特に限定はなく、ナイフコート、グラビアコート、ディップコート、スプレーコート、リップコート、刷毛塗りなど、各種の方法を用いることができる。
【0039】
塗工されたコーティング剤は、40〜300℃で数秒〜数週間、風乾または加熱し、架橋反応を促進することにより、浴室部材と密着した、強靱で耐候性の高い防汚層を有する防汚浴室部材を得ることができる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明する。
【0041】
(合成例A1)
2−(パーフルオロオクチル)エチルメタクリレート50g、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン50g、酢酸エチル200gを冷却管、攪拌装置、温度計を備えた4つ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら80℃まで昇温してアゾビスイソブチロニトリル1.6gを加えて2時間重合反応を行い、さらにアゾビスイソブチロニトリル0.4gを加えて2時間重合を行い重量平均分子量約15,000の重合体(A1)溶液を得た。
【0042】
(合成例A2)
2−(パーフルオロオクチル)エチルメタクリレート40g、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン40g、メチルメタクリレート20g、イソプロピルアルコール200gを冷却管、攪拌装置、温度計を備えた4つ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら80℃まで昇温してアゾビスイソブチロニトリル1.6gを加えて2時間重合反応を行い、さらにアゾビスイソブチロニトリル0.4gを加えて2時間重合を行い重量平均分子量約12,000の重合体(A2)溶液を得た。
【0043】
(合成例A3)
2−(パーフルオロオクチル)エチルメタクリレート50g、2−メタクリルオキシエチルイソシアネート50g、酢酸エチル200gを冷却管、攪拌装置、温度計を備えた4つ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら80℃まで昇温してアゾビスイソブチロニトリル1.6gを加えて2時間重合反応を行い、さらにアゾビスイソブチロニトリル0.4gを加えて2時間重合を行い重量平均分子量約15,000の重合体(A3)溶液を得た。
【0044】
(合成例A4)
2−(パーフルオロオクチル)エチルメタクリレート45g、グリシジルメタクリレート55g、酢酸エチル200gを冷却管、攪拌装置、温度計を備えた4つ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら80℃まで昇温してアゾビスイソブチロニトリル1.6gを加えて2時間重合反応を行い、さらにアゾビスイソブチロニトリル0.4gを加えて2時間重合を行い重量平均分子量約13,000の重合体(A4)溶液を得た。
【0045】
(合成例A5)
2−(パーフルオロオクチル)エチルメタクリレート50g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート20g、ノルマルブチルメタクリレート30g、酢酸エチル200gを冷却管、攪拌装置、温度計を備えた4つ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら80℃まで昇温してアゾビスイソブチロニトリル1.6gを加えて2時間重合反応を行い、さらにアゾビスイソブチロニトリル0.4gを加えて2時間重合を行い重量平均分子量約15,000の重合体(A5)溶液を得た。
【0046】
(合成例B1)
γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン100g、酢酸エチル200gを冷却管、攪拌装置、温度計を備えた4つ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら80℃まで昇温してアゾビスイソブチロニトリル1.6gを加えて2時間重合反応を行い、さらにアゾビスイソブチロニトリル0.4gを加えて2時間重合を行い重量平均分子量約10,000の重合体(B1)溶液を得た。
【0047】
(合成例B2)
γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン70g、メチルメタクリレート30g、イソプロピルアルコール200gを冷却管、攪拌装置、温度計を備えた4つ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら80℃まで昇温してアゾビスイソブチロニトリル1.6gを加えて2時間重合反応を行い、さらにアゾビスイソブチロニトリル0.4gを加えて2時間重合を行い重量平均分子量約14,000の重合体(B2)溶液を得た。
【0048】
(合成例B3)
γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン98g、アクリル酸2g、イソプロピルアルコール200gを冷却管、攪拌装置、温度計を備えた4つ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら80℃まで昇温してアゾビスイソブチロニトリル1.6gを加えて2時間重合反応を行い、さらにアゾビスイソブチロニトリル0.4gを加えて2時間重合を行い重量平均分子量約11,000の重合体(B3)溶液を得た。
【0049】
(合成例B4)
γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン100g、イソプロピルアルコール200gを冷却管、攪拌装置、温度計を備えた4つ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら80℃まで昇温してアゾビスイソブチロニトリル1.6gを加えて2時間重合反応を行い、さらにアゾビスイソブチロニトリル0.4gを加えて2時間重合を行い重量平均分子量約9,000の重合体(B4)溶液を得た。
【0050】
(合成例B5)
2−メタクリルオキシエチルイソシアネート50g、ブチルメタクリレート50g、酢酸エチル200gを冷却管、攪拌装置、温度計を備えた4つ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら80℃まで昇温してアゾビスイソブチロニトリル1.6gを加えて2時間重合反応を行い、さらにアゾビスイソブチロニトリル0.4gを加えて2時間重合を行い重量平均分子量約14,000の重合体(B5)溶液を得た。
【0051】
(合成例B6)
グリシジルメタクリレート50g、ブチルメタクリレート50g、酢酸エチル200gを冷却管、攪拌装置、温度計を備えた4つ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら80℃まで昇温してアゾビスイソブチロニトリル1.6gを加えて2時間重合反応を行い、さらにアゾビスイソブチロニトリル0.4gを加えて2時間重合を行い重量平均分子量約17,000の重合体(B6)溶液を得た。
【0052】
(合成例B7)
N,N−ジ(メトキシメチル)メタクリルアミド30g、メチルメタクリレート70g、イソプロピルアルコール200gを冷却管、攪拌装置、温度計を備えた4つ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら80℃まで昇温してアゾビスイソブチロニトリル1.6gを加えて2時間重合反応を行い、さらにアゾビスイソブチロニトリル0.4gを加えて2時間重合を行い重量平均分子量約20,000の重合体(B7)溶液を得た。
【0053】
(合成例B8)
2−ヒドロキシエチルメタクリレート25g、ノルマルブチルメタクリレート50g、メチルメタクリレート25g、酢酸エチル200gを冷却管、攪拌装置、温度計を備えた4つ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら80℃まで昇温してアゾビスイソブチロニトリル1.6gを加えて2時間重合反応を行い、さらにアゾビスイソブチロニトリル0.4gを加えて2時間重合を行い重量平均分子量約15,000の重合体(B8)溶液を得た。
【0054】
(実施例1〜8)
重合体(A)と重合体(B)のそれぞれの溶液を、固形分換算で表1に示した重量になるように混合し、回転振盪機で一晩攪拌した後、所定量の架橋触媒及び/または架橋剤を添加し、更に溶媒で固形分濃度20%に調整して、グラビアコーターにてポリエチレンテレフタレート(PET)製浴室壁材に乾燥膜厚20μmとなるように塗工し、100℃5分間熱風乾燥を行い、続いて50℃で7日間熱処理を行って防汚浴室壁材を得た。
【0055】
【表1】

【0056】
上記のようにして得られた防汚性浴室部材について、各種の試験を行った。試験方法は以下の通りである。
【0057】
得られた防汚浴室壁材について、初期撥水性・撥油性、1ヶ月浴室内で使用後の防汚性および撥水性・撥油性を下記の方法で評価した。結果を表2に示す。
[評価方法]
初期撥水性:熱処理して得られた防汚浴室壁材表面の水との接触角を測定し、撥水性を評価した。
(接触角が小さいほど撥水性が良好であることを示す。)
初期撥油性:熱処理して得られた防汚浴室壁材表面のn-オクタンとの接触角を測定し、撥油性を評価した。
(接触角が小さいほど撥油性が良好であることを示す。)
防汚性:浴室壁材としての防汚性を評価するために、得られた防汚浴室壁材を浴室内に設置し、1ヶ月使用後の表面状態を観察し、水垢などの汚れの付着状況と流水での水垢の落ちやすさを5段階で評価した。
5:水垢などの汚れの付着が全くない
4:水垢などの汚れの付着が目視で少量確認できるが、流水で容易に汚れを除去出来る。
3:水垢などの汚れの付着が目視で多量確認できるが、流水で容易に汚れを除去出来る。
2:水垢などの汚れの付着が目視で多量確認できるが、流水中スポンジでこすると汚れ が除去出来る。
1:水垢などの汚れの付着が目視で多量確認でき、流水中スポンジでこすっても汚れが 除去できない。
上記評価基準のうち、3以上が防汚性良好と判定できる。
経時後の撥水性:防汚性と同様に浴室内で1ヶ月使用後の浴室壁材を流水で洗浄してから水との接触角を測定し撥水性を評価した。
経時後の撥油性:防汚性と同様に浴室内で1ヶ月使用後の浴室壁材を流水で洗浄してからn-オクタンとの接触角を測定し撥油性を評価した。
【0058】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン性不飽和二重結合とパーフルオロアルキル基を有する含フッ素単量体(a)20〜80重量%、エチレン性不飽和二重結合と架橋性の官能基を有する単量体(b)80〜20重量%、およびエチレン性不飽和二重結合を有する(a)、(b)以外の単量体(c)0〜50重量%からなる重合体(A)と、エチレン性不飽和二重結合と架橋性の官能基を有する単量体(b)20〜100重量%、およびエチレン性不飽和二重結合を有する(a)、(b)以外の単量体(c)0〜80重量%との重合体(B)とからなるコーティング剤から形成される防汚層を浴室部材の表面に有する防汚浴室部材。
【請求項2】
エチレン性不飽和二重結合と架橋性の官能基を有する単量体(b)の架橋性の官能基が、加水分解性シリル基、カルボキシル基、イソシアノ基、エポキシ基、N−メチロール基、N−アルコキシメチル基、またはヒドロキシル基から選ばれる少なくとも1種の官能基であることを特徴とする請求項1記載の防汚浴室部材。
【請求項3】
重合体(A)を構成する単量体(a)の量が、重合体(A)および重合体(B)を構成する単量体の合計100重量%中0.1〜10重量%であることを特徴とする請求項1または2記載の防汚浴室部材。
【請求項4】
架橋剤として、重合体(A)及び重合体(B)中の架橋性の官能基と反応可能な反応性官能基を有する化合物を1種類以上含む請求項1ないし3いずれか記載の防汚浴室部材。
【請求項5】
架橋触媒を含む請求項1ないし4いずれか記載の防汚浴室部材。
【請求項6】
エチレン性不飽和二重結合とパーフルオロアルキル基を有する含フッ素単量体(a)20〜80重量%、エチレン性不飽和二重結合と架橋性の官能基を有する単量体(b)80〜20重量%、およびエチレン性不飽和二重結合を有する(a)、(b)以外の単量体(c)0〜50重量%からなる重合体(A)と、エチレン性不飽和二重結合と架橋性の官能基を有する単量体(b)20〜100重量%、およびエチレン性不飽和二重結合を有する(a)、(b)以外の単量体(c)0〜80重量%との重合体(B)とからなるコーティング剤を浴室部材表面に被覆し、加熱架橋することで防汚層を形成させることを特徴とする防汚浴室部材の製造方法。


【公開番号】特開2007−224190(P2007−224190A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−48085(P2006−48085)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】