説明

浴槽およびこの浴槽を備える浴室ユニット

【課題】浴槽設置の際に、浴槽を高く吊り上げる必要がなく、設置作業が容易であるとともに、浴槽に設けられる機能部品が浴槽周囲に飛び出さない浴槽およびこの浴槽を備える浴室ユニットを提供する。
【解決手段】浴槽4を、浴槽部41aと、浴槽部41aの上端縁から外側に張り出すように設けられた框部41bと、框部41bから下方に浴槽部41aの底より少し高い位置まで延出し、浴槽部41aの周壁との間に浴槽に用いる機能部品43,44,45の配設空間Sを形成するエプロン部41cとを備える浴槽本体41と、浴槽パン12に設けられた床下作業用孔12aに下端部が水密にはまり込み、上端部が浴槽パン12の底面から上側に少し突出し、上端部でエプロン部41cの下端部を水密に支持する皿状をした浴槽下部部材42とを備え、エプロン部41cが、その一部に開口部41dを有するとともに、この開口部41dを水密かつ開閉自在に覆う蓋41eを備えている構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽およびこの浴槽を備える浴室ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、図7に示すような防水パン110と、浴槽120とを備えている浴室ユニット100が上市されている(特許文献1参照)。
図7に示すように、防水パン110は、洗い場部111と、立ち上がり壁112と、浴槽受部113とを備えている。
【0003】
立ち上がり壁112は、洗い場部111の浴槽受部113側の端縁から浴槽120の跨ぎ込み高さとほぼ同じ高さまで立ち上がるように設けられている。
浴槽受部113は、立ち上がり壁112の上端縁から洗い場部111に対して逆側に張り出すように設けられていて、浴槽120の浴槽部121が嵌り込む大きさの開口114を備え、開口114の周囲が浴槽120のフランジ部122を受けるようになっている。
【0004】
しかし、上記浴室ユニット100の場合、浴槽120を設置する場合、浴槽120の浴槽部121の底面が立ち上がり壁112の上まで吊り上げるあるいは持ち上げなければならず、組み立て作業性がわるい。
また、追い焚き配管などの機能部品の浴槽部121への接続部が床下にそのまま露出しているため、接続部での止水不良によって漏水がおきると、建物躯体側へ水漏れしてしまうことがある。
【0005】
一方、図8に示すような、浴室ユニット200が提案されている(特許文献2)。
この浴室ユニット200は、浴槽パン210に、浴槽220の底部の形状にならった形状を有する凹状の浴槽底部収容凹部211が設けられている。また、この浴槽底部収容凹部211の上端部の周りに、浴槽底部収容凹部211の底部よりも一段高い固定用段部212が形成されている。
【0006】
そして、浴槽220には、浴槽壁部の外壁の下方側がその全周に亘って内側にくぼんで、前記固定用段部212と相補形状をなす段部221が形成されている。
また、この浴槽ユニット200は、浴槽220の底部が浴槽底部収容凹部211に入り込んだ状態において、段部221が固定用段部212の上側に嵌合している。したがって、浴槽220は、その底部を除く、エプロンが設けられていない浴槽部の外壁が浴室内に露出した状態で浴槽パン210に取り付けられるようになっている。
【0007】
すなわち、この浴室ユニット200の場合、上記浴室ユニット100のように、浴槽設置の際に浴槽220を浴槽220の跨ぎ込み高さ以上の持ち上げるという必要がないので、設置作業性がよい。
さらに、この浴室ユニット200の場合、浴槽220は、その底部を除く大部分が、浴室内に突出しているので、追い焚き配管230を浴室内で浴槽壁面に接続するようになっている。したがって、追い焚き配管230の浴槽220との接続部において漏水が発生しても建物躯体側へ水漏れすることがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−250773号公報
【特許文献2】特許第4469323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記浴室ユニット200の場合、追い焚き配管230が浴室内に立ち上がっているので、見栄えがわるい。したがって、通常は、これらの配管230を覆い隠すボックス(図示ぜず)を浴槽220に沿う壁面との隙間を塞ぐように設けるようになっており、壁面の浴槽220の上端より下の部分に窓を設ける等ができない。すなわち、浴室の意匠に制約がある。
また、上記浴室ユニット200の場合、浴槽底部収容凹部211に浴槽220に底部を嵌合させて設置が完了したのちには、浴槽部の下側に手を入れることができず、浴槽部下側での浴槽220と浴槽底部収容凹部211とを隠蔽箇所でビス止め等強固な固定を行うことができない。
さらに、上記浴室ユニット200の浴槽220の場合、ポップアップ排水栓などの機能部品を取りつけができないという問題もある。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みて、浴槽設置の際に、浴槽を高く吊り上げる必要がなく、設置作業が容易であるとともに、浴槽に設けられる機能部品が浴槽周囲に飛び出さない浴槽およびこの浴槽を備える浴室ユニットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明にかかる浴槽は、浴槽部と、浴槽部の上端縁から外側に張り出すように設けられた框部と、框部から下方に前記浴槽部の底より少し高い位置まで延出し、前記浴槽部の周壁との間に浴槽に用いる機能部品の配設空間を形成するエプロン部とを備える浴槽本体と、浴槽パンに設けられた床下作業用孔に下端部が水密にはまり込み、上端部が浴槽パンの底面から上側に少し突出し、上端部で前記エプロン部の下端部を水密に支持する皿状をした浴槽下部部材とを備え、前記エプロン部が、その一部に開口部を有するとともに、この開口部を水密かつ開閉自在に覆う蓋を備えていることを特徴としている。
【0012】
本発明において機能部品とは、特に限定されないが、たとえば、浴槽部内に足し湯や足し水をする給湯給水配管、追い焚き配管、気泡供給配管、ポップアップ排水栓装置等が挙げられる。
【0013】
本発明にかかる浴室ユニットは、浴槽パンが、洗い場パン接続部を除く部分に、壁パネルの下端を下方から支持する壁パネル支持部を有するとともに、この壁パネル支持部と離れた位置に床下作業用孔を備え、上記本発明の浴槽が、浴槽下部部材を前記床下作業用孔に水密にはめ込んだ状態で設置されるとともに、機能部品が配設空間内に配管されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかる浴槽は、浴槽部と、浴槽部の上端縁から外側に張り出すように設けられた框部と、框部から下方に前記浴槽部の底より少し高い位置まで延出し、前記浴槽部の周壁との間に浴槽に用いる機能部品の配設空間を形成するエプロン部とを備える浴槽本体と、浴槽パンに設けられた床下作業用孔に下端部が水密にはまり込み、上端部が浴槽パンの底面から上側に少し突出し、上端部で前記エプロン部の下端部を水密に支持する皿状をした浴槽下部部材とを備え、前記エプロン部が、その一部に開口部を有するとともに、この開口部を水密かつ開閉自在に覆う蓋を備えているので、浴槽設置の際に、浴槽を高く吊り上げる必要がなく、設置作業が容易であるとともに、浴槽に設けられる機能部品が浴槽周囲に飛び出さない状態に施工できる。
【0015】
本発明にかかる浴室ユニットは、浴槽パンが、洗い場パン接続部を除く部分に、壁パネルの下端を下方から支持する壁パネル支持部を有するとともに、この壁パネル支持部と離れた位置に床下作業用孔を備え、本発明の浴槽が、浴槽下部部材を前記床下作業用孔に水密にはめ込んだ状態で設置されるとともに、機能部品が配設空間内に配管されているので、浴槽の周壁と周囲の壁パネルとの間に隙間が形成され、壁の浴槽の上端より下側にも窓を設けることができるなど、浴室内の意匠の選択性が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明にかかる浴室ユニットの1つの実施の形態をあらわす浴室内側の斜視図である。
【図2】図1の浴室ユニットの、浴槽の分解状態の斜視図である。
【図3】図1の浴室ユニットの、浴槽部分を浴槽長手方向に平行な面で切断した断面図である。
【図4】図1の浴室ユニットの、浴槽部分を浴槽長手方向に直交する面で切断した断面図である。
【図5】図3の左側部分の拡大図である。
【図6】図3の右側部分の拡大図である。
【図7】従来の浴室ユニットの分解斜視図である。
【図8】公知の浴室ユニットの浴槽設置部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1は、本発明にかかる浴室ユニットの1つの実施の形態をあらわしている。
【0018】
図1に示すように、この浴室ユニット1は、洗い場パン11と、浴槽パン12と、浴槽4と、を備えている。
浴槽パン12は、洗い場パン接続部を除く部分に、3方で壁パネル(ドア枠や窓枠を含む)13aの下端を下方から支持することによって浴室の壁面13を形成するともに、この壁パネル支持部と離れた位置に床下作業用孔12aを中央部に有する浴槽受部12bを備えている。
【0019】
床下作業用孔12aは、後述する浴槽下部部材42の部材本体42cが嵌り込む大きさをしている。
【0020】
浴槽4は、浴槽本体41と、浴槽下部部材42とを備えている。
浴槽下部部材42は、繊維強化不飽和ポリエステル等の繊維強化樹脂成形体であって、図3〜図6に示すように、皿状をした部材本体42cと、部材本体42cの上端縁から外側に延出するフランジ状の浴槽パン固定部42aを備えている。
【0021】
そして、浴槽下部部材42は、図3〜図6に示すように、部材本体42cを床下作業用孔12a内に臨ませるとともに、浴槽パン固定部42aを,パッキン48を介して浴槽受部12bに受けさせ、固定ビス49を浴槽パン固定部42a側から浴槽受部12bにねじ込むことによって、浴槽パン固定部42aにおいて浴槽パン12に水密に固定されている。
上記固定状態において、浴槽パン12の床面120から浴槽下部部材42の浴槽パン固定部42aの上端までの高さは5〜10cmである。
【0022】
また、浴槽下部部材42は、図3に示すように、その底に排水トラップ5に接続される排水孔42bを備えている。
排水孔42bには、中央に後述する排水管44が水密に接続される接続孔を有するキャップ51がはめ込まれている。
また、キャップ51は、排水トラップ5側の水位が上昇してきたときに閉鎖するフロート弁付きの小さな排水孔を備え、万一浴槽下部部材42内で水漏れが生じた場合でも浴槽下部部材42内の水を排水トラップ5側へ排水できるようになっている。
【0023】
浴槽本体41は、繊維強化不飽和ポリエステル等の繊維強化樹脂成形体であって、入浴部である浴槽部41aと、框部41bと、エプロン部41cとを備えている。
浴槽部41aは、その底に排水口411を備えている。
【0024】
框部41bは、浴槽部41aの上端縁から外側に張り出すように設けられている。
エプロン部41cは、図2〜図6に示すように、框部41bの外縁から下方に延出している。すなわち、浴槽部41aとエプロン部41cとの間には、機能部品の配設空間Sが形成されている。
【0025】
また、エプロン部41cは、浴槽4の長手方向の両側に他の部分より窪んだ開口部41dを備えるとともに、この開口部41dを覆う蓋41eを備え、下端部がパッキン47を介して浴槽パン固定部42aに水密状態で載置されている。
開口部41dは、その下端側に、後述する蓋41eの下側係止金具41hが弾性係合するステンレス鋼などから形成された係合金具41jが一体に設けられている。
【0026】
蓋41eは、開口部41dを覆うとともに、開口部41d周縁に圧接されるパッキン41g,41iを開口部41d周縁に対向するように備えている。
また、蓋41eは、その上端に開口部41dに上縁部に弾性係合するステンレス鋼などから形成された係止爪41fを備え、その下端にステンレス鋼などから形成された下側係止金具41hが設けられている。
【0027】
配設空間S内には、図3および図5に示すように、機能部品としての追い焚き配管45、排水管44、ポップアップ水栓装置43が配設されている。
排水管44は、一端が排水口411に接続され、他端がキャップ51を介して排水トラップ5内に臨んでいる。
追い焚き配管45は、追い焚き口45aに接続されている。
ポップアップ水栓装置43は、操作ボタン43aを操作することによって、水栓本体43bが排水口411を開閉するようになっている。
【0028】
洗い場パン11は、その床面が浴槽パン12の床面とほぼ段差のない状態で接続されている。
なお、浴槽パン12と洗い場パン11とは、洗い場パン11をまず設置部に設置したのち、浴槽4を設置していない状態で浴槽パン12を設置し、床下作業用孔12aから作業者が手や体の一部を床下に臨ませて固定ボルトナットを締めこむことによって連結される。
【0029】
また、この浴室ユニット1は、図1に示すように、浴槽4の、浴槽パン12の洗い場パン11との接続部と反対側面に対面する壁面13に、窓15が設けられているとともに、この窓15を挟むように壁面13の両側に間接照明装置2が設けられている。
窓15は、図1では、浴槽4で隠れて見えないが、その下端が浴槽4の上端より低い位置にある。
間接照明装置2は、図示していないが、LEDなどの光源の、浴槽4に向かう側が遮光性のカバーで覆われ、光源からの光がそれぞれ他方の間接照明装置2側に向かってライン状に照射される壁面13に固定されている。
【0030】
図1中、14は天井、11bは排水口11aの蓋である。
【0031】
この浴室ユニット1は、上記のように、浴槽4が、浴槽本体41と、浴槽下部部材42とからなり、まず、浴槽下部部材42を浴槽パン12に固定したのち、浴槽本体41を浴槽下部部材42上に設置するようになっているので、浴槽設置の際、浴槽本体41を跨ぎこみ高さより5〜10cm持ち上げるだけで浴槽4の設置作業を完了させることができるので、作業性がよい。
【0032】
また、機能部品の配設空間Sを浴槽部41aとエプロン部41cおよび浴槽下部部材42との間に備えているので、追い焚き配管45、排水管44やポップアップ水栓装置43が浴槽4の外壁から浴室内に露出することがない。
したがって、浴槽4と壁面13との間に隙間が確保でき、窓15等を壁面13の所望の位置に自由に取り付けることができる。
【0033】
また、追い焚き配管等から漏水があっても浴槽下部部材42によって受けられてキャップ51に設けられたフロート弁付き排水孔を介して排水トラップ5側に排水され、床下に排水がもれることがない。
さらに、浴槽パン12と洗い場パン11との間に段差がないため、ドアを浴槽パン12と洗い場パン11に設けるなど、ドアの取り付け位置を自由に選択することができる。
【0034】
また、エプロン部41cが蓋41eを備えた開口部41dを備え、蓋41eを開放すれば、浴室内から配設空間S内を臨めるので、浴槽4を設置したのちでも、追い焚き配管45、排水管44やポップアップ水栓装置43の設置作業および点検作業や浴槽本体41と浴槽下部部材42との接続部の点検作業等を行うことができる。
【0035】
本発明は、上記の実施の形態に限定されない。たとえば、ジェット噴流を起こさせる気泡を浴槽部内に供給するエアー配管等を機能部品配設空間に設けるようにしてよい。
上記の実施の形態では、開口部がエプロン部に2つ設けられていたが、1つでも構わないし、3つ以上設けるようにしても構わない。
上記の実施の形態では、浴槽パン12と洗い場パン11との接続部に段差がなかったが、少し段差を設けるようにしても構わない。
【符号の説明】
【0036】
1 浴室ユニット
11 洗い場パン
12 浴槽パン
13a 壁パネル
12a 床下作業用孔
4 浴槽
41 浴槽本体
41a 浴槽部
41b 框部
41c エプロン部
41d 開口部
41e 蓋
43 ポップアップ水栓装置(機能部品)
44 排水管(機能部品)
45 追い焚き配管(機能部品)
S 配設空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽部と、浴槽部の上端縁から外側に張り出すように設けられた框部と、框部から下方に前記浴槽部の底より少し高い位置まで延出し、前記浴槽部の周壁との間に浴槽に用いる機能部品の配設空間を形成するエプロン部とを備える浴槽本体と、
浴槽パンに設けられた床下作業用孔に下端部が水密にはまり込み、上端部が浴槽パンの底面から上側に少し突出し、上端部で前記エプロン部の下端部を水密に支持する皿状をした浴槽下部部材とを備え、
前記エプロン部が、その一部に開口部を有するとともに、この開口部を水密かつ開閉自在に覆う蓋を備えていることを特徴とする浴槽。
【請求項2】
浴槽パンが、洗い場パン接続部を除く部分に、壁パネルの下端を下方から支持する壁パネル支持部を有するとともに、この壁パネル支持部と離れた位置に床下作業用孔を備え、請求項1に記載の浴槽が、浴槽下部部材を前記床下作業用孔に水密にはめ込んだ状態で設置されるとともに、機能部品が配設空間内に配管されていることを特徴とする浴室ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−99452(P2013−99452A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245349(P2011−245349)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(501362906)積水ホームテクノ株式会社 (89)
【Fターム(参考)】