説明

浴槽の脚構造

【課題】 補強用リブと脚とをバランスを良く接続して成形性を良くし、また湯や入浴者の荷重を安定的に支持できるようにすると共に、底に衝撃が加わった場合にも、脚に応力が集中することを防止し、強度が高くなるよう形成した浴槽の脚構造を提供する。
【解決手段】 底1の裏面に補強用リブ2を下方から見て枠形に形成する。この補強用リブ2の外側の底1の裏面に、補強用リブ2に接して脚3を補強用リブ2と共に底1に一体成形する。上記の脚3を、底1の隅の補強用リブ2のコーナー部2aに、下方から見てコーナー部2aの斜め外側方に延ばして形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽の脚構造に関し、更に詳しくは脚が浴槽本体に一体成形されている浴槽の脚構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種の脚構造としては、例えば特許文献1に記載されているものがある。
この従来構造は、浴槽本体の底部裏面に、矩形に補助補強リブが形成され、このリブのコーナー部から位置がずらされて脚が形成されると共に、各脚の外側面に、下方から見て向きが異なるよう2枚の補強リブが形成されているものである。
【0003】
而して、この従来構造は、上記の通り、脚がリブのコーナー部からずらされて形成され、また2枚の補強リブが向きを違えて脚に接続されていた。
従ってこの従来構造の場合は、成形不良が起き易く、またリブと脚とのバランスが悪いため、例えば浴槽の底部に前後左右から強い衝撃が加わると、脚に応力が集中し易いものであった。その結果、これによると、脚が損壊したり、底部にひび割れなどが起きることがあり、荷重を長期間にわたって安定的に支持できない、という問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−328064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来の問題点に鑑み、提案されたものである。
従って本発明の解決しようとする技術的課題は、リブと脚とをバランスを良く接続して成形性を良くし、また湯や入浴者の荷重を安定的に支持できるようにすると共に、底に衝撃が加わった場合にも、脚に応力が集中することを防止できるようにし、強度が高くなるよう形成した浴槽の脚構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するため、次のような技術的手段を採る。
即ち本発明は、図1等に示されるように、底1の裏面に補強用リブ2が下方から見て枠形に形成され、この補強用リブ2の外側の底1の裏面に、補強用リブ2に接して脚3が補強用リブ2と共に底1に一体成形されている浴槽の脚構造であって、上記の脚3が、底1の隅の補強用リブ2のコーナー部2aに、下方から見てコーナー部2aの斜め外側方に延ばされて形成されていることを特徴とする(請求項1)。
【0007】
ここで、斜め外側方に延ばされ、とは、脚3は下方から見て補強用リブ2に対して斜めになるよう外側方に延ばされている、ということを意味する。本発明は、具体的には、例えば脚3が、底1の隅の補強用リブ2のコーナー部2aに、下方から見てコーナー部2aの角度を略二等分する線L上において、補強用リブ2に対して斜め外側方に延ばされることで実現される。この場合、補強用リブ2の形状が下方から見て、例えば長方形や正方形のときは、コーナー部2aの角度が90度になるから、線Lは下方から見て45度の位置に引かれることになる。
而して、ここで、略二等分とは、本発明の課題を実現できる範囲であれば、完全に二等分される場合には限られない、ということを意味する。
【0008】
また本発明の場合、補強用リブ2は、四角形の枠形に形成され、コーナー部2aが湾曲されているのが好ましい(請求項2)。
なぜならこれによると、成形用の金型を複雑にすることなく、且つ一定の強度を有する状態で補強用リブ2を効率良く形成できるからである。またこの場合は、コーナー部2aが湾曲されているから、これによると底1に衝撃が加わったときの応力集中を緩和でき、しかも成形時にコーナー部2aにおいて樹脂5(図5参照)の流れを円滑化でき、一層、成形不良を回避できるからである。
【0009】
また本発明は、補強用リブ2が、コーナー部2aにおいて脚3と略同じ高さに形成されているのが好ましい(請求項3)。
なぜならこれによると、補強用リブ2が脚3と協働して荷重を支持でき、従って支持機能、耐荷機能が高まり、またコーナー部2aの機械的強度を向上できるからである。ここで、略同じ高さ、とは、補強用リブ2が脚3と協働して荷重を支持可能であれば、高さが全く同一の場合には限られない、ということを意味する。
【0010】
また本発明は、脚3が略平行で対になった板片3aで形成されているのが好ましい(請求項4)。
なぜならこれによると、成形材料を節減でき、また重量を軽減できるからである。ここで、略平行とは、完全な平行状の場合には限られない、ということを意味する。また本発明の場合、脚3は、例えば対になった板片3aを、例えば二組備えて形成されているのでも良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、このように底の裏面に補強用リブを下方から見て枠形に形成し、この補強用リブの外側に補強用リブに接して脚を補強用リブと共に底の裏面に一体成形している浴槽の脚構造であって、上記の脚を、底の隅の補強用リブのコーナー部に、下方から見てコーナー部の斜め外側方に延ばして形成しているものである。
従って本発明の場合は、補強用リブのコーナー部において成形性が良くなり、補強用リブと脚の位置のバランスが良くなる。それ故、本発明によると、その分、強度が高まり、脚に応力が集中することを防止でき、湯や入浴者の荷重を安定的に支持できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の脚構造の好適な一実施形態を示す浴槽の底面図である。
【図2】同上脚構造を示す浴槽の正面図である。
【図3】同上脚構造を示す浴槽の斜視図である。
【図4】同上脚構造を示す浴槽の要部斜視図である。
【図5】成形時の樹脂の流れを説明するための浴槽の底面図である。
【図6】同上脚構造の他の実施形態を示す要部正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための好適な一実施形態を説明する。
本発明は、図1等に示されるように、底1の裏面に補強用リブ2が下方から見て枠形に形成されている。この実施形態の場合、補強用リブ2は、四角形の枠形に形成され、コーナー部2aが、半径30mmの曲率で湾曲されている。
【0014】
また本発明は、補強用リブ2の外側の底1の裏面に、補強用リブ2に接して脚3が補強用リブ2と共に底1に一体成形されている。なお、補強用リブ2の内側には底1の強度を高めるための補助リブ4が補強用リブ2と一体化されて平行状に形成されている。
【0015】
また本発明の場合、上記の脚3は、底1の隅の補強用リブ2のコーナー部2aに、下方から見てコーナー部2aの斜め外側方に延ばされて形成されている。而して、この実施形態の場合、脚3は、コーナー部2aの角度を略二等分する線L上において、補強用リブ2に対し斜めになるよう外側方に延ばされて形成されている。なお、この実施形態では、コーナー部2aの角度は90度であるため、線Lは45度の位置に引かれ、従って脚3は45度の向きで延ばされている。
【0016】
また補強用リブ2は、図2〜図4に示されるように、この実施形態ではコーナー部2aにおいて脚3と同じ高さに形成されている。即ち、補強用リブ2は、コーナー部2a以外の箇所では高さが低い状態で長く形成され、コーナー部2aに近づくのに連れて波形に徐々に高く形成され、コーナー部2aにおいては脚3と同じ高さに形成されている。
【0017】
またこの実施形態の本発明の場合、脚3は平行一対の板片3aで形成されている。この板片3aの突き出し側の開放状の側端3bは、脚3の接地辺部3cから底1に向かって徐々に立ち上げられて傾斜状に形成されている。なお、板片3a同士は、板片3aと同じ高さの連結片3dで連結され、補強されている。
【0018】
而して、この実施形態の本発明品は、図5に矢示されるように、成形時に補強用リブ2の中央部から樹脂5が金型内に注入加圧されて形成されるものである。
この場合、この実施形態の本発明は、上記の通り、脚3がコーナー部2aの角度を略二等分する線L上において、補強用リブ2に対し斜めになるよう外側方に延ばされているから、樹脂5は、補強用リブ2のコーナー部2aと脚3を形作る金型キャビティ内を、コーナー部2aから脚3に向かって円滑に且つバランス良く流れ、従って成形不良(充填不足)を生じることがない。
【0019】
以上の処において、本発明の場合、脚3の形成角度は、樹脂5の充填位置と脚3を設ける位置との関係で適宜決定されるものである。
また上記の補強用リブ2は、図6に示されるように、コーナー部2aの位置で矩形波状に立ち下げられ、コーナー部2aにおいて脚3と略同じ高さに形成されているのでも良い。この場合は、補強用リブ2と脚3との接続が、コーナー部2aにおいて直線的であるため、その分、金型の加工コストを低廉化できるものである。
また本発明の場合、補強用リブ2は、成形性が損なわれない範囲であれば、枠形の一部が切り欠かれ、全周がつながっていない状態でも良い。
更に、上記の脚3は、対になった板片3aの間に、追加片が平行状に介装されて形成されているのでも良い。
【符号の説明】
【0020】
1 底
2 補強用リブ
2a コーナー部
3 脚
L 線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底の裏面に補強用リブが下方から見て枠形に形成され、この補強用リブの外側の底の裏面に、補強用リブに接して脚が補強用リブと共に底に一体成形されている浴槽の脚構造であって、上記の脚が、底の隅の補強用リブのコーナー部に、下方から見てコーナー部の斜め外側方に延ばされて形成されていることを特徴とする浴槽の脚構造。
【請求項2】
請求項1記載の浴槽の脚構造であって、補強用リブが、四角形の枠形に形成され、コーナー部が湾曲されていることを特徴とする浴槽の脚構造。
【請求項3】
請求項1又は2記載の浴槽の脚構造であって、補強用リブが、コーナー部において脚と略同じ高さに形成されていることを特徴とする浴槽の脚構造。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の浴槽の脚構造であって、脚が略平行で対になった板片で形成されていることを特徴とする浴槽の脚構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−45601(P2011−45601A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−197593(P2009−197593)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】