説明

浴槽の配管接続部の水受構造

【課題】配管接続部から飛散する水の建築躯体への落下を防止することができる上に、配管接続部の取り付け作業、及びメンテナンス作業の容易化を図ることのできる浴槽の配管接続部の水受構造を提供すること。
【解決手段】配管接続部108の側部領域をカバーするように水受パン12に取り付けられた水受カバー14を備え、水受カバー14の水受パン12への取り付けを、水受カバー14が浴槽側壁106に対して近接又は離間するようにスライド移動可能に行なった。これにより、水受カバー14をスライドさせることで、この水受けカバー14を浴槽側壁106に対して近接又は離間させて、配管接続部108から飛散する水の受け止め作用を向上させる状態と、水受カバー14を取外すことなく配管接続部106の取り付けやメンテナンス作業を行うためのスペースを確保できる状態を切り替えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽の配管接続部の水受構造に関し、特に、浴槽の側壁に設けられた配管接続部から漏れ出した水が建築躯体に落下することを防止する水受構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浴槽と建築躯体との間に防水パン等の防水構造体を備えない、いわゆる洗い場一体型浴槽のユニットバスにおいて、追い焚き用の配管を浴槽側壁に設けられた孔に通して浴槽側壁に設置することがあった。このように追い焚き用の配管をユニットバスの浴槽側壁に設ける場合、配管接続部からの漏水が発生する恐れがあった。このように漏水が発生し建築躯体に流れ落ちると、建築躯体に損傷を与える恐れがある。このような状況を防止する技術として、配管接続部からの漏水を受ける水受パンや配管接続部を覆う水受ボックスが開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、浴槽の側壁を貫通して設けられた配管の接続部の下方に水受パンを配設して、配管接続部から漏れて落下する水を受け止め、更に、配管接続部の両側で浴槽の側壁の外面に水飛散防止壁を設け、配管接続部の両側から飛散する水をこの水飛散防止壁で止めて、水受パンで受けるようにする水受構造が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、配管接続部から飛散する水や配管接続部から配管を伝う水の建築躯体への落下を防止するために、排水管を通すための開口と追い焚き管を通すための開口を設けた水受ボックスを配管接続部に被せた例が記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開平10−148403
【特許文献2】特開平1−75853
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の技術では、配管接続部から漏れて直接落下する水を止めて、水受パンで受けることができるものの、配管接続部から飛散するような水、特に浴槽と反対方向に飛散するような水を受けることができないという問題があった。
【0007】
これに対して、特許文献2の技術では、水受ボックスで配管接続部を全体的に覆っているため、配管接続部から飛散する水に対応することができる。しかし、特許文献2の水受ボックスは、配管接続部を全体的に覆ってしまっているため、配管接続部の取り付け作業や漏水状況の確認のためには、この水受ボックスを浴槽側壁から一旦取り外し、再装着する必要があった。ところが、この配管が取り付けられる浴槽側壁は、一般的に、ユニット型バスのユニット構造体の壁に覆われている上に、建築躯体と配管接続部との間のスペースが、極めて狭い。従って、このような設置状態にある水受ボックスの取外し作業、及びその再装着作業を行うことは容易ではない。また、特に、配管接続部の漏水状況の確認時には、水受ボックスを取外して確認しなければならないが、水受ボックス内部の目視が困難であることから、水受ボックスを取外す際に溜まった漏水を建築躯体に落下させてしまう恐れもある。すなわち、この特許文献2の水受ボックスでは、配管接続部のメンテナンス作業における困難性があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、配管接続部から飛散する水の建築躯体への落下を防止することができる上に、配管接続部の取り付け作業及びメンテナンス作業用のスペースを支障なく確保することのできる浴槽の配管接続部の水受構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために請求項1に記載の配管接続部の水受構造は、浴槽の側壁に設けられた配管接続部からの漏水を受け止める水受構造において、前記配管接続部の下方領域をカバーするように前記浴槽の側壁に固定された水受パンと、前記配管接続部の側部領域をカバーするように前記水受パンに取り付けられた水受カバーと、を備え、前記水受カバーの前記水受パンへの取り付けは、該水受カバーが前記浴槽の側壁に対して近接又は離間するようにスライド移動可能に行なわれたことを特徴とする。
【0010】
これによれば、水受カバーをスライドさせることで、この水受けカバーを浴槽の側壁に対して近接又は離間させることが可能であり、この水受けカバーの浴槽側壁に対する近接又は離間によって、配管接続部から飛散する水の受け止め作用を向上させる状態と、水受カバーを取外すことなく配管接続部の取り付けやメンテナンス作業を行うためのスペースを確保できる状態を切り替えることができる。これにより、水の落下防止機能の確保と作業スペースの容易な確保の双方を同時に達成することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の配管接続部の水受構造において、前記水受カバーは、その上部が、前記浴槽の側壁側に傾斜する傾斜壁部とされたことを特徴とする。
【0012】
これによれば、水受カバーの傾斜壁部が浴槽の側壁側に傾斜していることから、浴槽の側壁に対して近接した際の水受けカバーによる配管接続部のカバー領域を大きくすることができる。従って、上述な作業用のスペースの容易な確保を達成しつつ、配管接続部を全体的にカバーした場合に近い水受け止め効果を得ることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の配管接続部の水受構造において、前記水受カバーの傾斜壁部は、該水受カバーが前記浴槽の側壁に対して最も近接した状態で、前記配管接続部の上方領域をカバーし、前記水受カバーが前記浴槽の側壁から最も離れた状態で、前記配管接続部の上方領域を開放する状態となることを特徴とする。
【0014】
これによれば、水受けカバーが浴槽側壁に最も近接した位置でこの水受けカバーの傾斜壁部が配管接続部の上方領域をカバーすることで、配管接続部の周辺領域を全体的に覆った場合とほぼ同様の水の受け止め作用を得ることができる。また、水受けカバーが浴槽の側壁から最も離れた位置で配管接続部の上方領域が開放されるので、上述の配管接続部の取り付けやメンテナンス作業のスペースのより確実に確保することができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載の配管接続部の水受構造において、前記水受カバーは、該カバーの外側から前記配管接続部を視認可能な略透明部材で形成されたことを特徴とする。
【0016】
これによれば、水受カバーの外側から内側を視認することができるので、配管接続部の取り付け作業時における取り付け位置の確認、及びメンテナンス作業時において水受パンの内部に水が貯留されているかどうかの判断を容易に行うことができる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか1項に記載の配管接続部の水受構造において、前記水受カバーの前記水受パンへの取り付けは、前記浴槽の側壁に固定された前記水受パンの両外側面に設けられた突起部を、前記水受カバーの下端部両側壁に前記浴槽の側壁に略垂直な方向に伸長するように設けられたスリットに挿入することにより行なわれることを特徴とする。
【0018】
これによれば、上述の水受パン側に設けられる突起部を水受カバー側のスリットに挿入するという容易な構成で、水受カバーの水受パンへの取り付けを行なうことができるとともに、同時に、水受カバーが水受パンに対してスライドも達成することができる。また、水受けカバーの交換を行う等の理由で、この水受けカバーを水受けパンから取外す必要がある場合でも、上記突起部をスリットから引き抜くことで水受けカバーを水受けパンから容易に取外すことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明にかかる配管接続部の水受構造によれば、水受カバーのスライドによる浴槽側壁に対する近接又は離間によって、配管接続部から飛散する水の受け止め作用を向上させる状態と、水受カバーを取外すことなく配管接続部の取り付けやメンテナンス作業を行うためのスペースを確保できる状態を切り替えることができる。従って、水の落下防止機能の確保と作業スペースの容易な確保の双方を同時に達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明にかかる実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施の形態に係る浴槽の配管接続部用の水受構造が設けられた洗い場一体型浴槽のユニットバス(ハーフパンタイプのユニットバス)の概略的な構成を示す説明図である。図示のように、ユニットバス100は、浴槽102と洗い場104と建築躯体107との間に防水構造が設けられていないいわゆる洗い場一体型浴槽として構成されており、浴槽102の浴槽側壁106には、配管接続部が構成されている。本例ではこの配管接続部として追い焚き用アダプタ108が配設されている。追い炊き用アダプタ108は、吸い込み用の配管110と吐き出し用の配管112とを介して、浴室外部に設置された図示しない追い焚き釜に接続されている。
【0021】
また、浴槽102の洗い場側壁114を覆うエプロン116には、追い焚き用アダプタ108のメンテナンスや後述する水受カバーの設置を行なうための開放口118が設けられている。この開放口118は、通常時には図示しないカバーで覆われており、追い焚き用アダプタ108の設置時や点検時等に開放される。
【0022】
なお、本実施の形態では、追い焚き用アダプタ108から吸い込み用配管110や吐き出し用配管120を伝って追い焚き釜側に向かう水を制止するために、これら吸い込み用配管110、吐き出し用配管120にそれぞれ水制止リング15が設けられている。
【0023】
そして、浴槽102の浴槽側壁106の追い焚き用アダプタ108の部分には、本実施の形態に係る水受構造10が設けられており、この水受構造10は、この追い焚き用アダプタ108から落下する水を受けるために、追い焚き用アダプタ108の下方領域をカバーするように浴槽側壁106に固定された水受パン12と、この水受パン12に設けられた状態で浴槽側壁106側に傾斜する水受カバー14を有している。
【0024】
図2は、水受パン12の構造を示す図であり、図2(A)は、水受パン12の平面図、図2(B)は、同正面図、図2(C)は、同側面図をそれぞれ示している。
【0025】
図示のように、この水受パン12は、側面視でやや放物線状に湾曲した底部12aと、底部12aから四方に立設された側壁部12b、12c、12d、12を有する上部が開口したトレイ形状に形成されている。本実施の形態では、上述の側壁部12b、12dがそれぞれ長辺部分であり、側壁部12c、12eが短辺部分として形成されている。そして、この水受パン12は、側壁部12bが接着剤等の接着手段により浴槽側壁106に沿うように固定されることで、浴槽側壁106に取り付けられる。すなわち、水受パン12の浴槽側壁16に固定された状態では、側壁部12b及び12dが、浴槽側壁16と略平行に伸長し、側壁部12c及び12eが浴槽側壁106と略直交するように伸長する。
【0026】
また、側壁部12c、12eには、それらの外側面に突起部16が設けられており、本実施の形態では、この突起部16は、側壁部12c、12eの略中央位置に配置され略矩形状に形成されている。更に、側壁部12c、12eの外側面の上部領域の両端部には、小突起18a、18bがそれぞれ設けられている。この突起部16、及び小突起18a、18bは、後述する水受けカバー14の水受けパン12に対するスライド機構を構成する要素として機能する。
【0027】
なお、両側壁部12c、12eの一方、例えば、側壁部12eには、排水管122を挿通させる貫通孔12fが設けられている。
【0028】
図3は、水受カバー14の構造を説明する図であり、図3(A)は、水受カバー14の正面図、図3(B)は、同平面図、図3(C)は、同側面図をそれぞれ示している。
【0029】
この水受カバー14は、全体的に略透明な部材で形成され、図示のように、略鉛直方向に伸長する垂直壁部14aを有している。そして、この垂直壁部14aの上部が折曲されることによって、水受カバー14が水受パン12に取り付けられた状態で浴槽側壁106側に向かって傾斜する傾斜壁部14bが形成されている。
【0030】
更に、垂直壁部14aは、水受カバー14が水受パン12に取り付けられた状態で浴槽側壁106側に向かうように垂直壁部14aの両端部を屈曲することで形成された鍔部14cを有している。なお、本実施の形態では、この鍔部14は、垂直壁部14aに対して略直交するように形成されている。
【0031】
そして、このそれぞれの鍔部14cの下端部には、水受カバー14の水受パン12への取り付け状態で、水受パン12と係合する略矩形の係合プレート14dが設けられている。
【0032】
この係合プレート14dの下部位置には、このプレートの長手方向に沿って伸長するガイドスリット20が設けられており、この係合プレート14dは、水受カバー14が水受パン12に取り付けられた状態で、浴槽側壁106と略直交する。従って、この状態で、ガイドスリット20は、浴槽側壁106に対して略直交する方向に伸長する。
【0033】
本実施の形態では、ガイドスリット20の幅は、上述の水受パン12に設けられた突起部16が挿入可能な程度の大きさに形成されている。そして、この突起部16がガイドスリット20に移動可能に挿入されることで、水受けカバー14の水受けパン12への取り付け、及び上述の水受けカバー14の水受けパン12に対するスライド機構が達成される。すなわち、上述の水受パン12に設けられている突起部16を水受カバー16側のガイドスリット20に挿入するという容易な構成で、水受カバーの水受パンへの取り付けとともに、水受カバーが水受パンに対するスライド機構も得ることができる。なお、水受けカバー14の交換を行う等の理由で、この水受けカバー14を水受けパン12から取外す必要がある場合でも、突起部16をガイドスリット20から引き抜くことで水受けカバー12を水受けパン14から容易に取外すことができる。
【0034】
また、この係合プレート14dの上部位置における前方側の端部、すなわち、垂直壁部14aと連続していない方の端部には、凹部22aが形成されている。本実施の形態においては、この凹部22aは、水受パン12の小突起18bが嵌入可能な程度の大きさに形成されている。
【0035】
一方、係合プレート14dの上部位置における後方側の端部、すなわち、垂直壁部14aと連続している方の端部には、凹部22bが形成されている。この凹部22bは、水受パン12の小突起18aが嵌入可能な程度の大きさに形成されている。
【0036】
図4は、水受けカバー14が水受けパン12に取り付けられている状態を説明する説明図である。同図により、水受カバー14の水受けパン12への取り付けが、係合プレート14dのガイドスリット20に水受パン12の突起部16を挿入するだけで行なわれていることが容易に理解される。なお、図には、水受カバー14の水受パン12への取付けにおける側壁部12c側の取り付け構造のみを示しているが、側壁部12e側の取り付け構造もこれと同様である。
【0037】
そして、同図においては、水受カバー14が、浴槽側壁106から最も離れた位置にある状態が示されている。この状態においては、水受パン12の突起部16が水受カバー14のガイドスリット20の浴槽側の端部20aに当接し、水受カバー14の凹部22bが小突起18bに当接することで水受カバー14の位置が固定されている。
【0038】
図5は、水受カバー14の水受パン12に対するスライドの状態を説明するそのスライドの態様を概略的に示した概念図である。図において浴槽側壁106から最も離れた位置にある水受カバー14を実線で表す。水受カバー14がこのような浴槽側壁106から最も離れた位置にある場合に、追い焚き用アダプタ108の上部領域Rが開放されている。このように、追い焚き用アダプタ108の上部領域Rが開放されていることで、追い焚き用アダプタ108の取り付け作業やメンテナンス作業のためにこの上部領域Rから手などを挿入することができる。すなわち、作業者は、例えば、図1に示した点検口118から手を入れ、上部領域Rから手を通して追い焚き用アダプタ108の取り付け作業やメンテナンス作業を行うことができる。
【0039】
また、本実施の形態では、傾斜壁部14bが浴槽側壁106と離れる方向(図の矢印Aで示す)に可倒となるように、傾斜壁部14bと垂直壁部14aの接合部分に切り込み19が設けられている。これにより、傾斜壁部14bを矢印A方向に倒すことによって、追い焚き用アダプタ108の取り付け作業やメンテナンス作業のために手等を挿入するスペースをより大きくすることができる。すなわち、この場合、上部領域Rだけでなく、追い焚き用アダプタ108の正面(垂直壁部14aの部分)も開放されるので、上記メンテナンス作業をより円滑に行うことができる。なお、この切り込み19は、本発明の必須の要素ではなく、これを設けることなく水受カバー14を形成しても良い。
【0040】
そして、本実施の形態においては、上述のような追い焚き用アダプタ108の取り付け作業やメンテナンス作業が終了した後に、手などで水受カバー14を浴槽側壁106の方向に押してスライドさせることで、この水受カバー14を浴槽側壁106に近接させることができる。
【0041】
図の二点鎖線において、浴槽側壁106から最も離れた位置から浴槽側壁106に最も近接した位置に移行した水受カバー14を示す。
【0042】
図6は、水受カバー14が浴槽側壁106に最も近接した際の水受構造10の状態を説明する図である。この状態において、図示のように、水受パン12の突起部16が水受カバー14のガイドスリット20の浴槽と反対側の端部20bに当接し、水受カバー14の凹部22aが小突起18aに当接することで水受カバー14の位置が固定されている。
【0043】
このように、水受カバー14が浴槽側壁106に最も近接した状態では、垂直壁部14a及び鍔部14cが追い焚き用アダプタ108に近づき、傾斜壁部14により上部領域Rがカバーされる状態となる(図5参照)。従って、水受カバー14が、追い焚き用アダプタ108から飛散する水を受け、その水が建築躯体107へ落下することを防止するように機能する状態となる。本実施の形態では、水受けカバー14の傾斜壁部14aが浴槽側壁106側に傾斜しており、この傾斜壁部14aが上部領域Rをカバーすることから、浴槽側壁106に対して近接した際の水受けカバー14による上部領域Rにおけるカバー領域を大きくすることができる。
【0044】
なお、本実施の形態では上述のように、吸い込み用配管110、吐き出し用配管112に設けられた水制止リング15により、これらの配管110、112を伝う水も止めて水受パン12に落下させることができる。
【0045】
また、追い焚き用アダプタ108の定期的なメンテナンス作業や水受パン12に貯留した水を抜く等の理由で、再び、水受カバー14を浴槽側壁106から離間させる必要がある場合には、点検口118から手を挿入して、水受カバー14を浴槽側壁106と反対方向に押す、或いは引くことによって、水受カバー14をスライドさせて浴槽側壁106から離間させ、再び、上部領域Rを開放することができる。
【0046】
上述のように、本実施の形態に係る水受構造10によれば、水受カバー14を水受けパン12上でスライドさせることで、この水受カバー14を浴槽側壁106に対して近接又は離間させることが可能である。従って、追い焚き用アダプタ108から飛散する水の受け止め作用を向上させる状態と、水受けカバー14を取り外すことなく追い焚き用アダプタ108の取り付けやメンテナンス作業を行うためのスペースを確保することができる状態を切り替えることができる。すなわち、水の落下防止機能の確保と作業スペースの容易な確保の双方を同時に達成することができる。特に、本実施の形態では、水受けカバー14が浴槽側壁106に最も近接した位置でこの水受けカバー14の傾斜壁部14aが上方領域Rをカバーすることで、追い焚き用アダプタ108の周辺領域を全体的に覆った場合とほぼ同様の水の受け止め作用を得ることができる。また、水受けカバー14が浴槽の側壁から最も離れた位置で配管接続部の上方領域が開放されるので、上述の追い焚き用アダプタ108の取り付けやメンテナンス作業等のスペースのより確実に確保することができる。
【0047】
また、上述のように、水受カバー14の傾斜壁部14aが浴槽側壁106側に傾斜していることから、浴槽側壁106に対して近接した際の水受けカバー14による上部領域Rのカバー領域を大きくすることができ、従って、上述のメンテナンス等の作業用のスペースの容易な確保を達成しつつ、追い焚き用配管108を全体的にカバーした場合に近い水受け止め効果を得ることができる。
【0048】
更に、本実施の形態では、水受カバー14は、その外側から内側を視認可能な略透明部材で形成されているので、水受カバー14の外部から追い焚き用アダプタ108を視認することができる。従って、追い焚き用アダプタ108の取り付け作業を行う際の取り付け位置の確認、及び追い焚き用アダプタ108のメンテナンス作業時において水受パン12内部に水が貯留されているかどうかの判断を容易に行うことができる。
【0049】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本実施の形態にかかる水受構造が適用されたユニットバスを説明する図である。
【図2】水受パンの詳細な構造を説明する図である。
【図3】水受カバーの詳細な構造を説明する図である。
【図4】水受カバーが浴槽側壁から最も離れた状態を示す説明図である。
【図5】水受カバーのスライド状態を説明する説明図である。
【図6】水受カバーが浴槽側壁に最も近づいた状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0051】
10 水受構造
12 水受パン
14 水受カバー
14a 垂直壁部
14b 傾斜壁部
16 突起部
20 ガイドスリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽の側壁に設けられた配管接続部からの漏水を受け止める水受構造において、
前記配管接続部の下方領域をカバーするように前記浴槽の側壁に固定された水受パンと、
前記配管接続部の側部領域をカバーするように前記水受パンに取り付けられた水受カバーと、
を備え、
前記水受カバーの前記水受パンへの取り付けは、
該水受カバーが前記浴槽の側壁に対して近接又は離間するようにスライド移動可能に行なわれたことを特徴とする浴槽の配管接続部の水受構造。
【請求項2】
前記水受カバーは、
その上部が、前記浴槽の側壁側に傾斜する傾斜壁部とされたことを特徴とする請求項1に記載の水受構造。
【請求項3】
前記水受カバーの傾斜壁部は、
該水受カバーが前記浴槽の側壁に対して最も近接した状態で、前記配管接続部の上方領域をカバーし、前記水受カバーが前記浴槽の側壁から最も離れた状態で、前記配管接続部の上方領域を開放する状態となることを特徴とする請求項2に記載の水受構造。
【請求項4】
前記水受カバーは、
該カバーの外側から前記配管接続部を視認可能な略透明部材で形成されたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の配管接続部の水受構造。
【請求項5】
前記水受カバーの前記水受パンへの取り付けは、
前記浴槽の側壁に固定された前記水受パンの両外側面に設けられた突起部を、前記水受カバーの下端部両側壁に前記浴槽の側壁に略垂直な方向に伸長するように設けられたスリットに挿入することにより行なわれることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の水受構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−12072(P2010−12072A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−175405(P2008−175405)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】