説明

浴槽洗浄装置

【課題】 循環洗浄方式において、特別な部品追加等をすることなく、循環洗浄に用いる洗剤入りの洗浄水の洗剤濃度を迅速かつ確実に均一化させ得るようにした浴槽洗浄装置を提供する。
【解決手段】 循環洗浄による浴槽洗浄処理を実行する前に、循環ポンプを作動させて貯水タンク内の湯水に洗剤を供給しつつ、浴槽と貯水タンクとの間で循環させて洗剤混合処理を行う。その際、循環ポンプの作動制御量を、浴槽洗浄処理の際の設定大流量よりも小さい設定小流量に対応するものにする。例えば、洗剤供給が行われた湯水が、洗浄ノズルから浴槽内の空中に飛び出ることなく、洗浄ノズルから浴槽の底壁面上に流れ出る程度の流量値を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽の内壁面等に対し洗浄水を噴射させて内壁面等に付着したゴミや湯あか等を自動洗浄するための浴槽洗浄装置に関し、特に、浴槽内に噴射させた洗浄水を貯水タンクに回収し、これを浴槽洗浄用の洗浄水として用いて循環洗浄するものにおいて、洗浄水中の洗剤濃度を均一化させるための技術に係る。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1では、洗剤混入水を浴槽内に噴射させる洗剤噴射ノズルと、上水又は温水を浴槽内に噴射させるすすぎノズルとを併せ持った浴槽洗浄装置が提案されている。このものにおいては、バッファータンク内に貯留した水に洗剤タンクから洗剤を投入して洗剤混入水にし、この洗剤混入水をヒータ加熱した上で、浴槽に対し噴射ノズルから噴射することが提案されている。又、特許文献2では、バッファを浴槽底面に連通させて設置し、このバッファから浴槽上部の洗浄ノズルまで循環経路で接続し、この循環経路に循環ポンプを介装させた浴槽洗浄装置が提案されている。このものにおいては、循環経路に供給した洗剤タンクからの洗剤を洗浄ノズルから浴槽内に投入して浴槽底部からバッファ内に取り込んで溜めた後、次に、洗浄ノズルから水を浴槽内に噴射させ、この水をバッファ内に流入させて洗剤と混合させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3160373号公報
【特許文献2】特許第2831874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、浴槽洗浄のための使用水量や洗剤使用量の低減化を図るために、浴槽洗浄のために洗浄ノズルから浴槽内に噴射させた洗浄水を、そのまま排水させるのではなくて、貯水タンク内に回収し、以後、この貯水タンク内の洗浄水を循環ポンプにより前記洗浄ノズルに供給して浴槽洗浄を行うという循環洗浄方式の開発が進められている。このような循環洗浄方式のものにおいては、浴槽を洗浄するために循環される貯水タンク内の洗浄水に対し、その全体にわたり均一な洗剤濃度で、かつ、所定の洗剤濃度を有していることが、安定した洗浄効果を得るために求められる。しかしながら、洗剤を水中に投入したり、ベンチュリ効果により洗剤を水流に吸引させたりするだけでは、循環洗浄に用いる洗浄水の全体にわたり均一な洗剤濃度にすることは困難であったり、相当な時間経過を待つ必要があったりして、現実的ではないと考えられる。さらに、均一な洗剤濃度にするために、特別な機能部品を新たに追加することは製品のコスト増を招き好ましくはない。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、循環洗浄方式において、特別な部品追加等をすることなく、循環洗浄に用いる洗剤入りの洗浄水の洗剤濃度を迅速かつ確実に均一化させ得るようにした浴槽洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、浴槽内に噴射させた洗浄水を回収して貯水タンクに貯水し、循環ポンプの作動により、前記貯水タンク内の洗浄水を吸い込んで洗浄水供給路を通して洗浄ノズルに供給し、この洗浄ノズルから前記浴槽内に噴射させることで循環洗浄による浴槽洗浄処理を実行する循環洗浄制御手段を備えた浴槽洗浄装置を対象にして、次の特定事項を備えることとした。すなわち、前記循環洗浄制御手段として、前記浴槽洗浄処理を実行する前に洗剤を混合させるための洗剤混合処理部を備えることとし、前記洗剤混合処理部として、前記循環ポンプを作動させることにより貯水タンク内に貯水された湯水を浴槽内との間で循環させる一方、その湯水に対し循環途中あるいは循環前に洗剤タンクからの洗剤供給を実行する構成とした(請求項1)。
【0007】
本発明の場合、循環ポンプの作動により、貯水タンク内の湯水と、この湯水に対し循環途中又は循環前に供給された洗剤とが洗浄水供給路内を洗浄ノズルまで流されて浴槽に至り、浴槽から再び貯水タンクに回収されるという循環が繰り返されることになる。この循環により、前記湯水と洗剤との混合が繰り返され、洗剤濃度の均一化が図られることになる。
【0008】
本発明の浴槽洗浄装置において、前記循環洗浄制御手段による浴槽洗浄処理の際に洗浄ノズルに対し洗浄水が設定大流量で循環供給されるように前記循環ポンプを作動制御する一方、前記洗剤混合処理部として、前記設定大流量よりも小さく設定された設定小流量で前記循環ポンプを作動制御する構成とすることができる(請求項2)。このようにすることにより、湯水と洗剤とが貯水タンクと浴槽との間で循環される間に、洗浄ノズルから浴槽内の外部空間に一旦出ることにはなるものの、設定小流量で循環されているため泡立つこともなく、ほぼ液体状態のままの状態を維持しつつ、洗剤濃度の均一が実現されることになる。しかも、洗剤混合処理における流量が設定大流量よりも小さく設定されているため、浴槽洗浄処理時のように浴槽の内壁面から伝い落ちてくるのを待たずに済む分、洗剤濃度の均一化までの迅速化が図られることになる。
【0009】
この場合、前記設定小流量として、前記洗剤供給が行われた湯水が、洗浄ノズルから浴槽内の空中に飛び出ることなく、前記洗浄ノズルから浴槽の底壁面上に流れ出る程度の流量値を設定することができる(請求項3)。このようにすることにより、請求項2による作用を具体的かつ確実に得られることになる上に、前記の洗剤濃度の均一化までの迅速化をより確実に図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
以上、説明したように、本発明の浴槽洗浄装置によれば、循環ポンプの作動により、貯水タンク内の湯水と、この湯水に対し循環途中又は循環前に供給された洗剤とを、貯水タンクから洗浄水供給路内を通して洗浄ノズルまで流して浴槽に至らせ、浴槽から再び貯水タンクに回収されるというように、浴槽と貯水タンクとの間で繰り返し循環させることができ、この循環により、前記湯水と洗剤との混合を繰り返して洗剤濃度の均一化を図ることができることになる。
【0011】
特に、請求項2によれば、洗剤混合処理部として、浴槽洗浄処理の際の循環ポンプの作動制御量である設定大流量よりも小さく設定した設定小流量で、循環ポンプを作動制御する構成にすることにより、湯水と洗剤とが貯水タンクと浴槽との間で循環される間に、洗浄ノズルから浴槽内の外部空間に一旦出ることにはなるものの、設定小流量で循環させるため泡立つこともなく、ほぼ液体状態のままの状態を維持しつつ、洗剤濃度の均一化を実現させることができるようになる。しかも、洗剤混合処理の際の流量として設定大流量よりも小さく設定しているため、浴槽洗浄処理時のように浴槽の内壁面から伝い落ちてくるのを待たずに済む分、洗剤濃度の均一化までの迅速化を図ることができるようになる。
【0012】
請求項3によれば、設定小流量として、洗剤供給が行われた湯水が、洗浄ノズルから浴槽内の空中に飛び出ることなく、前記洗浄ノズルから浴槽の底壁面上に流れ出る程度の流量値を設定することで、請求項2による効果を具体的かつ確実に得ることができるようになる上に、前記の洗剤濃度の均一化までの迅速化をより確実に図ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係る浴槽洗浄装置を適用した風呂システムを示す模式図である。
【図2】図1の貯水タンク及び排水・回収部からなる回収セットの斜視図である。
【図3】回収セットを図2のA−A線断面で切った状態の斜視図で示す説明図である。
【図4】循環洗浄に係る制御を示すフローチャートである。
【図5】予備すすぎ洗浄時の流れの状況を示す図1対応図である。
【図6】図6(a)は図2のA−A線断面で切った状態の回収セットが浴槽の排水口に設置された状態であって自動排水栓を省略した状態において予備すすぎ洗浄時の流れの状況を示す断面説明図であり、図6(b)は洗剤混合及び浴槽洗浄からなる循環洗浄時の流れの状況を示す図6(a)対応図である。
【図7】洗剤混合及び浴槽洗浄からなる循環洗浄時の流れの状況を示す図1対応図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1に本発明の実施形態に係る浴槽洗浄装置を適用した風呂システムを示す。同図において、符号2は浴室に設置された浴槽、3は浴槽洗浄装置、4は熱源機(例えば追い焚き機能付き給湯器)、5は浴槽洗浄装置3や熱源機4の作動を制御するコントローラである。前記の熱源機4は、後述の如く浴槽洗浄装置3に対し湯又は水(以下、単に「湯水」という)を供給するようになっている。なお、図1は配管等のつながりを示すものであり、浴槽2や熱源機4等の上下関係を特定するものではない。又、以下において「洗浄水」という場合は、洗剤が混入された湯水の他に、洗剤を含まない予備洗浄用やすすぎ洗浄用の湯水も含むものである。まず、熱源機4の構成について簡単に説明した上で、浴槽2や浴槽洗浄装置3について説明する。
【0016】
熱源機4としては、図1には給湯機能及び追い焚き機能等を備えた複合熱源機を例示している。熱源機4は、水道水等の入水を受けて、熱交換器において燃焼バーナ41の燃焼熱との熱交換加熱により所定温度まで加熱した湯を台所等の種々の給湯栓42に給湯したり、追い焚き循環路を利用して浴槽2に湯張りのために注湯したり、あるいは、加熱した湯又は非加熱のままの水を湯水供給路43を通して浴槽洗浄装置3の洗浄水供給路32に供給したりするようになっている。湯水供給路43には上流側から順にフィルタ44、流量センサ45、供給電磁弁46及び縁切り弁セット47が介装され、湯水供給路43の下流端は浴槽洗浄装置3の三方接続継手(例えばチーズ配管継手)39に接続されて洗浄水供給路32に合流するようになっている。前記の縁切り弁セット47としては、例えば、湯水供給路43の上・下流両側位置に介装された一対の逆止弁に挟まれた状態で2つの縁切り弁を介装させて構成している。これらは、一次側である熱源機4側が停電や故障等の原因により低圧状態(負圧状態)に万一陥ったとしても、浴槽2側から熱源機4側に逆流しないように遮断するために介装されるものである。前記の湯水供給路43によって、後述の予備すすぎ洗浄やすすぎ洗浄の際にすすぎ用洗浄水を供給するすすぎ用洗浄水供給路が構成される。
【0017】
以上の熱源機4による給湯、追い焚き及び湯張り等の各運転が例えば台所リモコン51により入力設定される設定出湯温度や湯張り温度等の設定情報に基づいてコントローラ5による作動制御によって実現され、又、浴槽洗浄装置3による洗浄運転が洗浄リモコン52により入力操作される洗浄スイッチのON・OFFや自動洗浄処理に基づいて後述の循環ポンプ35や洗剤電磁弁38等の作動制御によって実現されるようになっている。
【0018】
浴槽2は浴室に設置された浴槽パン(図示省略)の内に載置され、その浴槽パンと浴槽2との間の隙間に後述の貯水タンク34が配設されるようになっている。浴槽2の側壁の最下端近傍位置には循環アダプタ20が設置され、底壁には排水口21を開閉するための自動開閉駆動制御式の排水栓22及び後述の洗浄ノズル31が設置され、上面側のフランジ壁には開閉駆動機構23及び後述の洗剤タンク37が設置されている。前記の循環アダプタ20には熱源機4の追い焚き循環路のふろ戻り路及びふろ往き路がそれぞれ接続されて、追い焚きが可能となっている。又、排水栓22は開閉駆動機構23から開閉駆動力の伝達を受けて排水口21を開閉作動(上下作動)されるようになっており、この開閉駆動機構23にはその作動状態(排水栓22が開状態か閉状態か)の如何を検出する排水栓状態検出センサ(図示省略)が設置され、これからの出力信号に基づき開閉駆動機構23がコントローラ5によって作動制御されるようになっている。入浴後に排水栓22が開かれると、浴槽2内の湯水が後述の排水・回収部33の排水部331から浴槽パンに排出され、続いて浴槽パンの排水孔から排水されることになる。
【0019】
浴槽洗浄装置3は、浴槽2の内壁面等を対象にして洗浄処理するために設置されるものである。浴槽洗浄装置3は、前記の浴槽2の底壁に設置された洗浄ノズル31と、この洗浄ノズル31に洗浄水を供給する洗浄水供給路32と、排水口21に連通して取り付けられた排水・回収部33と、導入端側が排水・回収部33の回収部332に連通された貯水タンク34と、洗浄水供給路32に介装された循環ポンプ35と、洗浄水供給路32の途中に洗剤を供給する洗剤供給路36と、この洗剤供給路36を通して供給するための洗剤を貯留する洗剤タンク37と、洗剤タンク37からの洗剤の供給・停止の切換を行う洗剤電磁弁38とを備えている。前記の洗浄水供給路32の上流端は貯水タンク34の導出端部342に接続され、下流端は前記の洗浄ノズル31に接続されている。貯水タンク34の導出端部342と循環ポンプ35との間の部位の洗浄水供給路32には、例えば三方接続継手39(例えばチーズ配管継手)を介して前記の湯水供給路43の下流端が合流するよう接続されて、熱源機4から洗浄水供給路32に対し湯水供給が可能とされている。又、洗浄ノズル31の上流側位置の洗浄水供給路32には、浴槽2側からの逆流を阻止するための逆止弁321が介装されている。
【0020】
前記洗浄ノズル31は浴槽2の底壁を貫通して設置され先端開口(上面開口)から浴槽2の内壁面等に向けて所定範囲の広がりをもって洗浄水を噴出するようになっている。なお、洗浄ノズル31として、図例では1つのみを図示しているが、浴槽2のサイズや洗浄対象の浴槽等に応じて2以上のものを底壁以外の部位にも設置することができ、その場合には洗浄水供給路32から他の洗浄ノズルに向けて第2・第3の洗浄水供給路を分岐させればよい。
【0021】
循環ポンプ35は、例えば非容積式の遠心ポンプにより構成され、停止状態では吸い込み側から吐出側までが連通して湯水の通過が可能となっている。この循環ポンプ5は、浴槽パンよりも上側位置であって、浴槽2のフランジ壁の下側位置に設置され、浴槽パン内の排水がかからないようにされている。そして、コントローラ5による作動制御を受けて、浴槽2の循環洗浄のために所定時間ずつON・OFFされて貯水タンク34内の洗浄水等を洗浄ノズル31に対し供給するようになっている。又、洗剤供給路36は、洗剤電磁弁38を例えば所定時間だけ開作動させることにより洗剤タンク37から所定量の洗剤が洗浄水供給路32の途中に供給されるようになっている。なお、前記洗剤タンク37には洗剤の液位を検知するフロートスイッチが設置されており、所定の液位まで低下したことを検知してコントローラ5に出力するようになっている。
【0022】
次に、図2及び図3を参照しつつ、排水・回収部33及び貯水タンク34からなる回収セットについて説明する。回収セットは、貯水タンク34の導入端部341に対し排水・回収部33が例えばビスやネジ等の手段を用いて着脱可能に連結されて一体化されたものである。この回収セットは、導出端部342の継手部343を除き、その全体が、浴槽2と浴槽パンとの間の隙間に配置し得るように例えば合成樹脂成形により扁平形状に形成されている。そして、平面視でLの字状(図2参照)の扁平な貯水タンク34に扁平な排水・回収部33が連結されて平面視でJの字状又はコの字状となっている。これにより、排水・回収部33が浴槽2(例えば図6参照)の排水口21に対し環状の止め具21aとの螺合により締結された状態で、少なくとも導出端部342が浴槽2(図2参照)の外側位置まで前方に突出することになって、この浴槽2の外側位置で洗浄水供給路32の上流端(循環ポンプ37の吸い込み側)が前記継手部343に対し接続されるようになっている。
【0023】
排水・回収部33(図3参照)は、全体が扁平な本体部334に対し、浴槽2内から主として浴槽水を外部に排水するための排水部331と、浴槽2内から主として洗浄水を回収するための回収部332との双方を具備したものである。本体部334は、上方に開口する受け口335と、前方に開口する排水開口333と、後方に開口する回収開口336とが形成される一方、内部空間から受け口335に向けて上方に突出して開口する小径筒337とを備えている。受け口335の内周面にはネジ部が形成され、このネジ部に対し排水口21(図6参照)の上から止め環21aがねじ込まれて締結されることで、受け口335を排水口21に連通させた状態で排水・回収部33が浴槽2に対し連結されることになる。
【0024】
小径筒337は受け口335(排水口21)に対し平面視で中心領域を含む所定の内周側領域に開口され、この小径筒337の開口内から前記の排水開口333までが連通するように隔壁により区画されることで排水部331が構成されている。一方、小径筒337の外周側と受け口335の内周側との間のドーナツ環状の外周側領域に排水口21の縁部から伝って流れ込んだ洗浄水が回収開口336に導かれるように小径筒337の外周側から回収開口336までが連通するように隔壁により区画されることで回収部332が構成されている。つまり、入浴後の排水等のように一定水位の浴槽水を対象とする場合であれば、その水圧により勢いよく排水口21に流れ込んで前記の内周側領域に開口する小径筒337内に入り込むため、排水部331からの排水が可能となる(図3の実線の矢印参照)。その一方、洗浄ノズル31から噴射されて浴槽2の内壁面から伝い落ちる洗浄後の洗浄水を対象とする場合であれば、排水口21の縁部を伝って小径筒337の外周側に入り込むため、回収部332による回収が可能となるのである(図3の一点鎖線の矢印参照)。これにより、同じ1つの排水口21を用いつつも、排水・回収部33によって、浴槽水の外部への排水と、洗浄水の貯水タンク34への回収との双方が可能となる。なお、符号338は案内筒であり、案内筒338は開閉駆動機構23から排水栓22に対し開閉駆動力を伝達するための作動ワイヤを通すために形成されている。
【0025】
以上の浴槽洗浄装置においては、洗浄リモコン52の洗浄スイッチのON操作等に基づく洗浄指令の入力を受けて、浴槽2内の浴槽水が排水された後、あるいは、入浴のために空の浴槽2内へ湯張りする前等の所定のタイミングで、コントローラ5により浴槽洗浄制御が実行されて浴槽洗浄運転が行われる。すなわち、コントローラ5は、予備すすぎ洗浄制御手段と、洗剤混合処理部及び浴槽洗浄処理部からなる循環洗浄制御手段と、すすぎ洗浄制御手段とを備え、これらの制御手段による予備すすぎ洗浄、循環洗浄及びすすぎ洗浄の各処理が実行されるようになっている。浴槽洗浄運転は排水栓22を開状態のままにして実行される。浴槽洗浄運転の概略を説明すると、図4に示すように、まず、湯水供給路43から洗浄水供給路32に対しすすぎ用の洗浄水として湯水の供給を開始し(ステップS1)、浴槽2内及び貯水タンク34内の双方を対象にして予備すすぎ洗浄を行う(ステップS2)。この予備すすぎ洗浄が終了すれば湯水供給路43からの湯水の供給を停止し(ステップS3)、次に、循環洗浄を実行する(ステップS4)。循環洗浄としては、まず洗剤電磁弁38を所定時間だけ開変換させて所定量の洗剤を洗浄水供給路32に供給しながら、循環ポンプ35を所定の低回転数で作動させて所定の設定小流量で所定時間循環させることで洗剤混合処理を行った上で、循環ポンプ35を所定の高回転数での作動に切り換えて貯水タンク34から洗浄ノズル31に対し洗剤混合後の洗浄水を設定大流量で供給することで洗浄ノズル31から洗浄水を浴槽2内に噴射させて浴槽洗浄処理を行う。そして、この循環洗浄が終了すれば、湯水供給路43から洗浄水供給路32に対し湯水を再度供給し(ステップS5)、前記と同様に浴槽2内及び貯水タンク34内の双方を対象にしてすすぎ洗浄を行う(ステップS6)。このすすぎ洗浄が終了すれば、湯水供給路43からの湯水供給を停止して(ステップS7)、終了する。
【0026】
前記の予備すすぎ洗浄(ステップS2)又はすすぎ洗浄(ステップS6)において、湯水供給路43からの湯水が図5に太線の矢印で示すように洗浄水供給路32の三方接続継手39に供給されると、三方接続継手39で分流されて、一部が循環ポンプ35及び逆止弁321を通過して洗浄ノズル31から浴槽2に噴射されることになり、他部が導出端部342から貯水タンク34を通過して排水・回収部33まで逆流して排水口21から浴槽2内に溢れ出ることになる。そして、いずれの経路を経て浴槽2の側に至ったすすぎ洗浄用の湯水は、図6(a)に太い実線の矢印で示すように、共に排水・回収部33の排水部331に流入して排水開口333から排水されることになる。すなわち、洗浄ノズル31から湯水が浴槽2の内壁面に向けて噴射された後、内壁面を伝って排水口21に至るものの(図5の太線の矢印参照)、同時に、貯水タンク34を通して回収部332の側から逆流してくる湯水も排水口21に至ることになるため、双方からの湯水は最も抵抗の低い排水部331の小径筒337内に流入し、排水開口333から排水されることになる。以上の予備すすぎ洗浄により、浴槽2内と貯水タンク34内との双方の予備すすぎを同時に行うことができ、浴槽2内と貯水タンク34内とを個別に行う場合よりも予備すすぎに要する時間の短縮化を図ることができる。この場合、循環ポンプ35を作動状態にするか、非作動状態にするかで、洗浄ノズル31を経て浴槽2に至る分流量と、貯水タンク34を経て浴槽に至る分流量との比率である分配比を変更することができ、好ましくは、予備すすぎ洗浄の最終処理として貯水タンク34側により多くの流量で分流させるようにすればよい。
【0027】
予備すすぎ洗浄を終了した段階では、貯水タンク34内が湯水で満たされており、この満水状態の貯水タンク34内の貯水量に基づいて所定洗剤濃度になるように予め設定された洗剤量が、洗剤混合処理部により洗剤タンク37から供給される。すなわち、その洗剤量に相当する供給時間だけ洗剤電磁弁38を開状態にすると共に、循環ポンプ35を予め定めた設定小流量の吐出流量になるように作動させて、洗剤混合処理を実行する。つまり、その吐出流量に対応する所定の小回転数で循環ポンプ35を作動させる。これにより、図7に一点鎖線の矢印で示すように、貯水タンク34内の湯水が洗浄水供給路32を通して洗浄ノズル31まで流される間に洗剤供給路36からの洗剤が合流され、洗剤が混入した状態の湯水(洗浄水)が洗浄ノズル31から浴槽2内に溢れ出ることになる。溢れ出た洗浄水は排水口21まで流れ(図6(b)も併せて参照)、この洗浄水が排水・回収部33の回収部332から貯水タンク34に回収される。この循環が前記設定小流量で繰り返されることにより、洗浄水の洗剤濃度を迅速に均一化することができるようになる。しかも、洗浄ノズル31から浴槽2内の外部空間に一旦出ることにはなるものの、設定小流量で循環させているため泡立つこともなく、ほぼ液体状態のままの状態を維持しつつ、洗剤濃度の均一を実現させることができる。
【0028】
次に、洗剤濃度が均一化された貯水タンク34内の洗浄水を用いて浴槽洗浄処理部による浴槽洗浄処理が実行される。すなわち、洗浄ノズル31からの噴射によって浴槽2の内壁面に到達し得るように予め設定された設定大流量の吐出流量になるように循環ポンプ35を作動させて、浴槽洗浄処理を実行する。これにより、図7に太破線の矢印で示すように、貯水タンク34内の洗浄水が洗浄水供給路32を通して洗浄ノズル31まで供給された後、洗浄ノズル31から浴槽2の内壁面に向けて噴射される。噴射された洗浄水により浴槽2の内壁面が洗浄されて湯あか等が洗い落とされ、内壁面を伝って流れた洗浄水が排水口21から排水・回収部33の回収部332に流入し(図6(b)の太破線参照)、貯水タンク34に回収される。この循環が所定時間継続されることで、循環洗浄における浴槽洗浄処理が完了する。
【0029】
前記の設定大流量としては、浴槽洗浄時には洗浄水が洗浄ノズル31から噴射されて浴槽2の内壁面(側壁面)まで到達する程度の大きい流量値(例えば5L/min程度)が設定されるのに対し、前記の設定小流量としては、前記設定大流量の例えば10〜20%程度以下の流量値(例えば1L/min以下)に設定される。これにより、洗剤混合処理時に前記設定小流量で洗浄ノズル31に供給される洗浄水は、洗浄ノズル31から流出しても浴槽2の前記内壁面まで到達することはなく、洗浄ノズル31から流出した洗浄水が洗浄ノズル31の周囲近傍の底壁面上に流れ出て排水口21に至るようになる。以上の設定によれば、洗剤混合処理として、循環ポンプ35を浴槽洗浄時と同様の例えば5L/minで作動させた状態で行った場合には洗剤濃度の均一混合まで約2.5分間要したのに対し、循環ポンプ35を前記の設定小流量の例えば1L/minで作動させた場合には洗剤混合処理の開始から約15秒間の経過で洗剤濃度の均一混合を図ることができた。これは、浴槽洗浄時の設定大流量で洗浄水を洗浄ノズル31に供給すると、浴槽2の内壁面に噴射された後、内壁面を伝い落ちて排水口21まで至るのに時間を要する上に、噴射と内壁面との衝突によって泡だってしまい、噴射された洗浄水の全量が連続的に排水口21まで至らずに一部に遅れを生じ、貯水タンク34への回収により長い時間を要することになるためと考えられる。
【0030】
そして、この循環洗浄が終了した後、最後にすすぎ洗浄(ステップS6,S7)を行って、全ての浴槽洗浄運転が完了する。このステップS6のすすぎ洗浄処理についても、予備すすぎ洗浄処理の場合と同様に、湯水供給路43から洗浄水供給路32への湯水の供給を、所定のすすぎ洗浄時間が経過するまで続ける。これにより、予備すすぎ洗浄処理の場合と同様に、貯水タンク34内と浴槽2内との双方のすすぎ洗浄を同時に行うことができる。
【0031】
<他の実施形態>
なお、本発明は前記の実施形態に限定されるものではなく、その他種々の実施形態を包含するものである。すなわち、洗剤の供給位置としては、洗浄水供給路32の途中に対してのみならず、これに代えて、洗剤供給路36の下流端を貯水タンク34内に連通させ、洗剤タンク37からの洗剤を貯水タンク34内に貯水された湯水に投入するようにしてもよいし、あるいは、洗剤供給路36の下流端を浴槽2に臨ませて配置し、洗剤を浴槽2内に投入するようにしてもよい。
【0032】
又、前記各実施形態では、排水・回収部33を用いているが、これに限らず、排水口21とは別に回収用の口(孔)を浴槽2に設けるのであれば、その回収用の口に貯水タンク34を連通させて接続するようにしてもよい。
【0033】
なお、洗剤混合処理時に設定小流量での供給にしたり、あるいは、浴槽洗浄処理時に設定大流量での供給にしたりというように供給流量を切換えるために、循環ポンプ35の作動量を変更切換する代わりに、循環ポンプ35はいずれの処理時においても一定作動量で作動させるとともに、洗浄水供給路32に追加介装した流量制御弁で供給流量を切換えるようにすることも可能である。
【符号の説明】
【0034】
2 浴槽
3 浴槽洗浄装置
5 コントローラ(循環洗浄制御手段,洗剤混合処理部)
31 洗浄ノズル
32 洗浄水供給路
34 貯水タンク
35 循環ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽内に噴射させた洗浄水を回収して貯水タンクに貯水し、循環ポンプの作動により、前記貯水タンク内の洗浄水を吸い込んで洗浄水供給路を通して洗浄ノズルに供給し、この洗浄ノズルから前記浴槽内に噴射させることで循環洗浄による浴槽洗浄処理を実行する循環洗浄制御手段を備えた浴槽洗浄装置であって、
前記循環洗浄制御手段は、前記浴槽洗浄処理を実行する前に洗剤を混合させるための洗剤混合処理部を備え、
前記洗剤混合処理部は、前記循環ポンプを作動させることにより貯水タンク内に貯水された湯水を浴槽内との間で循環させる一方、その湯水に対し循環途中あるいは循環前に洗剤タンクからの洗剤供給を実行するように構成されている
ことを特徴とする浴槽洗浄装置。
【請求項2】
請求項1に記載の浴槽洗浄装置であって、
前記循環洗浄制御手段は、前記浴槽洗浄処理の際に洗浄ノズルに対し洗浄水が設定大流量で循環供給されるように前記循環ポンプを作動制御する一方、前記洗剤混合処理部は、前記設定大流量よりも小さく設定された設定小流量で前記循環ポンプを作動制御するように構成されている、浴槽洗浄装置。
【請求項3】
請求項2に記載の浴槽洗浄装置であって、
前記設定小流量として、前記洗剤供給が行われた湯水が、洗浄ノズルから浴槽内の空中に飛び出ることなく、前記洗浄ノズルから浴槽の底壁面上に流れ出る程度の流量値が設定されている、浴槽洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−9854(P2013−9854A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144754(P2011−144754)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)