説明

浴槽用手摺り

【課題】浴槽の側壁を挟んだ押圧板と、対向する第2の押圧板との間の距離を予め調整した後、押圧板を1回の操作で浴槽の側壁へ押し付け、手摺りを固定することができる取付け機構を有する浴槽用手摺りを提供することを目的とする。
【解決手段】略L字型の固定フレームへ取付け機構を介して取り付けられた第1の押圧板と、固定フレームへスライド可能に取り付けられた略L字型の可動フレームへ取り付けられた第2の押圧板を備え、前記取付け機構は、一の端が固定フレームへ回動可能に取り付けられた可動部材と、回動軸に対して偏心したカムを備えたレバーから構成されていることを特徴とする浴槽用手摺りを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワンタッチ操作によって浴槽の側壁へしっかりと固定することができる浴槽用手摺りに関し、特に浴槽の側壁へ着脱自在に取り付けられる浴槽用手摺りの押圧板の取付け機構に関するものである。より詳細に述べれば、浴槽の側壁を挟んだ第1の押圧板と第2の押圧板との間の距離を予め調整した後、第1の押圧板を1回の操作により浴槽の側壁へ押し付け、手摺りを固定することができる取付け機構を有する浴槽用手摺りに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば特開平11−299673号公報(特許文献1)および特開2000−336882号公報(特許文献2)等に記載されているように、高齢者等が浴槽に出入りする際に身体を容易に支持することができるように、浴槽の側壁へ着脱自在に装着できるグリップを備えた浴槽用手摺りが知られている。
【0003】
しかしながら、これらの浴槽用手摺りは、使用者がハンドル又はノブを回転させて押圧板を螺進させることにより、押圧板と、対向する第2の押圧板の間に浴槽の側壁をクランプして取り付けるものである。このため、使用者は、浴槽用手摺りを取り付けるためにハンドル又はノブを多数回にわたって回転しなければならず、浴槽用手摺りの取り付けが極めて煩雑であるという問題があった。
【0004】
また、上述の問題を解決する目的で、特開2010−246691号公報(特許文献3)に記載されているように、押圧板を固定フレームへ螺進退可能に取り付け、そして押圧板と対向する第2の押圧板を固定フレームに対し前後スライド可能な可動フレームへ取り付けた構成を有する浴槽用手摺りが開発されている。すなわち、このタイプの浴槽用手摺りでは、可動フレームと固定フレームを事前に近づけることにより、浴槽の側壁を挟んだ押圧板と、対向する第2の押圧板の間の距離をできるだけ縮めておき、最終的に螺進させなければならない押圧板の移動距離を極力短くすることにより、ハンドル又はノブの操作による浴槽用手摺りの取り付け作業の負荷を軽減しようとしたものである。
【0005】
しかしながら、このような浴槽用手摺りの取付け機構においても、特に握力の弱った高齢者にとっては、ハンドル又はノブの操作による浴槽用手摺りの取り付け作業は負担であり、多くの場合、手摺りを浴槽の側壁に取り付けるためには補助者による手助けを必要としているという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−299673号公報
【特許文献2】特開2000−336882号公報
【特許文献3】特開2010−246691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、従来のような押圧板を螺進退させることにより浴槽用手摺りを固定する構造に拠らず、浴槽の側壁を挟んだ押圧板と、対向する第2の押圧板との間の距離を予め調整した後、押圧板を1回の操作で浴槽の側壁へ押し付け、手摺りを固定することができる取付け機構を有する浴槽用手摺りを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、浴槽の側壁を挟んだ押圧板と、対向する第2の押圧板との間の距離を予め調整した後、押圧板を1回の操作で浴槽の側壁へ押し付け、手摺りを固定することができる取付け機構について鋭意検討を重ねた結果、回動軸に対して偏心したカム面を有するレバーを利用した押圧板の取付け機構が最も効果的であり有効であるとの結論に達した。ただし、カム構造の場合、現実的に回動軸に対するカム面の偏心量をあまり大きく取れないので、本発明では、偏心カムと押圧板との間に可動部材を配置し、テコの原理を応用することにより、押圧板が浴槽の側壁を押し付けるために前進できる移動量を拡大し、この問題を解決した。
【0009】
すなわち、本発明によれば、浴槽の側壁へ取り付けられる水平部と垂直部を備えた略L字型の固定フレームと、前記固定フレームへ取り付けられた取付け機構と、前記取付け機構により回動又は首振り自在に支持された第1の押圧板と、前記固定フレームの水平部へスライド可能に取り付けられた水平部分と垂直部分を備えた略L字型の可動フレームと、そして前記第1の押圧板と対向するように配置され且つ前記可動フレームへ取り付けられた第2の押圧板を備え、さらに前記取付け機構は、一の端が前記固定フレームへ回動可能に取り付けられており、他の端は前記第1の押圧板へ連結されている可動部材と、回動軸に対して偏心し且つ前記可動部材の背面に当接するカム面を有する偏心カムを備え、そしてそこから延びており且つ前記固定フレームへ回動操作可能に取り付けられたレバーから構成されており、そして前記第1の押圧板は、前記レバーを回動することによって前記可動部材を介して浴槽の側壁へ押し付けられ係止されることを特徴とする浴槽用手摺りが提供される。
【0010】
また、第1の押圧板は、必ずしも固定フレームへ取り付けた取付け機構により支持させる必要はないので、取付け機構からは分離して、固定フレームによって支持させる他のタイプの浴槽用手摺りとして、本発明によれば、浴槽の側壁へ取り付けられる水平部と垂直部を備えた略L字型の固定フレームと、前記固定フレームにより前進及び後退可能に支持された第1の押圧板と、前記第1の押圧板を浴槽の側壁へ押圧するための前記固定フレームへ取り付けられた取付け機構と、前記固定フレームの水平部へスライド可能に取り付けられた水平部分と垂直部分を備えた略L字型の可動フレームと、そして前記第1の押圧板と対向するように配置され且つ前記垂直部分へ取り付けられた第2の押圧板を備え、さらに前記取付け機構は、一の端が前記固定フレームへ回動可能に取り付けられており、他の端は回動自在な自由端である可動部材と、回動軸に対して偏心し且つ前記可動部材の背面に当接するカム面を有する偏心カムを備え、そしてそこから延びており且つ前記固定フレームへ回動操作可能に取り付けられたレバーとから構成されており、そして前記第1の押圧板は、前記レバーを回動することによって前記可動部材を介して浴槽の側壁へ押し付けられ係止されることを特徴とする浴槽用手摺りが提供される。
【0011】
本発明の浴槽用手摺りでは、固定フレームへ直接または間接的に取り付けられた第1の押圧板を浴槽の側壁へ軽く当接するように仮セットした後、固定フレームに対し可動フレームをスライドさせて近づけると、可動フレームに取り付けられた第2の押圧板が、第1の押圧板とは反対側の浴槽の側壁に当接する。この状態で、固定フレームへ回動可能に取り付けられているレバーを所定の方向へ回動させると、レバーの回動軸の周りに形成されているカム面が可動部材の背面に当接した状態で回転し、これに伴って可動部材は、回転に応じて増加したカム面の偏心量の分だけ浴槽の側壁側へ押し込まれ、その回動軸の廻りに回転して傾斜する。そして、第1の押圧板は可動部材の先端により浴槽の側壁へ押し付けられ、その反力により、第2の押圧板は反対側から浴槽の側壁へ押し付けられる。その結果、第1の押圧板と第2の押圧板はそれらの間に浴槽の側壁を強力にクランプし、浴槽用手摺りを浴槽の側壁へ強固に固定する。
【0012】
このように、本発明の取付け機構は、固定フレームに対し可動フレームをスライド移動させることにより、浴槽の側壁を挟んで第1の押圧板と第2の押圧板の間の距離をできるだけ縮めるように調整した後、1回のレバー操作を行うことによって第1の押圧板を第2の押圧板と協働させて浴槽の側壁へ強力に押し付けることができるので、浴槽用手摺りを単純なワンタッチ操作によって浴槽の側壁へしっかりと固定することができる。
【0013】
なお、第1の押圧板を固定フレームへ前進及び後退可能に取り付けた場合、第1の押圧板は、浴槽側壁との密着性を向上させるために固定フレームに対し回動又は首振り自在に取り付けることが好ましい。
【0014】
また、本発明の取付け機構において、レバーの取り付け方向は押し上げ方向及び押し下げ方向のどちらでもよいが、手摺りを固定する時のレバーの回動方向が押し下げ方向となるように取り付けると、回動操作時、使用者はレバーへ自己の体重を預けることによってレバーを回動させることができるようになるので、特に腕力等に劣る高齢者であっても、補助者の助けを借りることなく容易にレバーを回動させて浴槽用手摺りを取り付けることができる。
【0015】
このため、レバーの形状は、使用者が手の甲を用いて自己の体重を容易に預けることができるように、細い棒の形状ではなく、より幅の広い平板の形状であることが好ましい。また、レバーのカム面により当接される可動部材の形状も、レバーと同様に細い棒の形状ではなく、より幅の広い平板の形状であることが好ましい。
【0016】
本発明では、第1の押圧板の移動は、レバーのカム面によって直接に伝達されるのではなく、第1の押圧板とカム面との間に片持ちに支持した可動部材を配置したので、該可動部材を介して間接的に伝達される。このため、可動部材の先端位置を可動部材がカム面と当接する位置より下方へ延ばすと、テコの原理により、偏心カムが回転することによる可動部材がカム面と当接する位置での移動量は、可動部材の先端位置においてより大きな移動量へと増幅される。
【0017】
このため、本発明によれば、偏心カム構造を利用した押圧機構であっても、1回のレバー操作を行うことにより、カム面の偏心量より大きな移動量を伴って第1の押圧板を浴槽の側壁へ押し付けることができるので、浴槽用手摺りを浴槽の側壁へ固定する時、第1の押圧板の押し込み量および浴槽側壁に対する押圧力の調節幅が拡大され、手摺りの取り付けが容易となる。
【0018】
本発明では、可動部材の固定フレーム側の回動軸は、レバーの回動軸に対し上方に軸支されていることが好ましい。可動部材の固定フレーム側の回動軸をレバーの回動軸より上方に軸支すると、片持ち支持の可動部材は、カム面と接するために可動部材の回動軸から下方向へ延びた配置となり、レバーの回動操作により、偏心カムを可動部材へ押し付けずに開放した状態としても、重力により下向きの安定した姿勢を保持することができるからである。
【0019】
また、本発明では、可動部材の固定フレーム側の回動軸は、レバーの回動軸に対し平行に軸支されていることが好ましい。可動部材の固定フレーム側の回動軸をレバーの回動軸と平行に軸支すると、レバーのカム面の回転方向とこれと接触する可動部材の回動方向が一致するので、両者の当接面における片当たりやそれが原因で生ずる片減り、偏磨耗を防止することができ、両者のスムーズな回動を保証することができるからである。
【0020】
さらに、本発明の浴槽用手摺りでは、レバーの回動軸または可動部材の固定フレーム側の回動軸を固定フレームに対し上下方向及び/又は水平(前後)方向へ移動可能に軸支することによって、可動部材に対するカム面の当接位置を調節できるようにし、第1の押圧板を係止した時の可動部材の傾斜角度を変更できるようにすることも可能である。
【0021】
カムの原理を利用した取付け機構においては、レバーの回動操作によって偏心カムが可動部材を押し付けた状態で係止させるためには、可動部材からの反力により、レバーの操作方向と逆向きの回転モーメントが生じなくなる所定の回転角までレバーを回動しなければならず、その時の回転角に対応するカム面の偏心量も一義的に決まる。また、テコの原理を応用した片持ち支持の可動部材において、回動軸の位置(支点)、カム面との当接位置(力点)及び第1の押圧板との当接又は連結位置(作用点)の各位置間の距離は一定であるので、カム面との当接位置(力点)において、偏心カムにより押圧された可動部材が第1の押圧板との当接又は連結位置(作用点)において第1の押圧板を浴槽の側壁へ押し付ける移動量も一定となる。
【0022】
このため、単にカムの原理およびテコの原理を利用したに過ぎない取付け機構では、レバーの回動操作によって、第1の押圧板を浴槽の側壁へ押し付けるために動かすことができる移動量を可変とすることができず、第1の押圧板を適当な押圧力で浴槽の側壁へ圧接できるように調節することができないという問題がある。
【0023】
しかしながら、本発明の浴槽用手摺りでは、レバーの回動軸または可動部材の固定フレーム側の回動軸を固定フレームに対し上下方向及び/又は水平(前後)方向へ移動可能に軸支することができるので、可動部材に対するカム面の当接位置を調節することによって、第1の押圧板を係止した時の可動部材の傾斜角度を変更し、その結果、第1の押圧板を適当な押圧力で浴槽の側壁へ圧接できるように調節することができる。なお、移動可能に軸支すべき回動対象を“レバー”または“可動部材”としたのは、それら中のいずれか一方の回動軸を動かせば、可動部材におけるカム面との当接位置(力点)を動かしたのと同様の効果が得られるからである。
【0024】
レバーの回動軸または可動部材の固定フレーム側の回動軸を、固定フレームに対し上下方向及び/又は水平(前後)方向へ移動可能に軸支するためには、例えば回動軸を固定する軸穴を上下方向及び/又は水平(前後)方向へ延びた長穴とすればよい。ただし、軸穴を水平(前後)方向へ延ばした場合、第1の押圧板を係止した時に可動部材から偏心カムへ伝わる水平方向の反力に抗する必要があるため、回動軸をネジ等を用いて長穴の途中の位置に係止できるようにしなければならない。この点、軸穴を上下方向へ延ばした場合は、第1の押圧板を係止した時に可動部材から偏心カムへ伝わる水平方向の反力は長穴の縁で受けることが可能であり、その時回動軸も長穴の途中の位置にしっかりと係止されるので有利である。
【0025】
また、可動部材のカム面と当接する背面は平面形状であってもよいが、レバーを回動することによって第1の押圧板を浴槽の側壁へ押し付けそして係止させた時、当接面からの反力により、偏心カムへ、少なくともレバーの回動方向とは逆向きの回転モーメントを発生させないように曲面形状としてもよい。
【0026】
上述のように、レバーの回動軸または可動部材の固定フレーム側の回動軸を移動可能に軸支した場合、可動部材に対するカム面の当接位置を調節することによって、第1の押圧板を係止した時の可動部材の傾斜角度が大きく変化する。しかしながら、可動部材の傾斜角度が水平に近くなればなるほど、偏心カムは、可動部材の当接面から、レバーを係止させるための回動方向とは逆向きの回転モーメントを生じさせる反力を受け易くなるので、この問題に対処するためである。
【0027】
なお、レバーの偏心カムにおいて、どちら向きの回転モーメントを生じるかは、可動部材との当接面から受ける反力のベクトルの方向が偏心カムの回動軸に対し例えば上側又は下側のどちら側を通るかにより決まり、例えば反力のベクトルが回動軸の上側を通れば、偏心カムにはその上側がベクトル方向へ回転するように回転モーメントが生じ、例えば反力のベクトルが回動軸の下側を通れば、偏心カムはその下側がベクトル方向へ回転するように回転モーメントが生じる。また、そのベクトルの方向は、カム面と当接する可動部材の角度を変えることにより調節することができる。
【0028】
したがって、本発明では、カム面と当接する可動部材の背面の形状を調節することにより、レバーの回転角が小さな段階においても、レバーの回動操作が開放されることがない方向へ回転モーメントを生じさせることもできる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、固定フレームに対し可動フレームをスライド移動させることにより、浴槽の側壁を挟んで第1の押圧板と第2の押圧板の間の距離をできるだけ縮めるように調整した後、1回のレバー操作を行うことによって第1の押圧板を第2の押圧板と協働させて浴槽の側壁へ強力に押し付けることができるので、浴槽用手摺りを単純なワンタッチ操作によって浴槽の側壁へしっかりと固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の浴槽用手摺りの取付け機構を背後から見た斜視図である。
【図2】本発明の浴槽用手摺りの断面図である。
【図3】図1に示される取付け機構を示す一部分の側面図である。
【図4】回動軸を軸支するための軸穴を示す一部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の一実施形態に係る浴槽用手摺りの取付け機構について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示される実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。
【実施例】
【0032】
図1及び図2を用いて、本発明の浴槽用手摺りの主な構成を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る浴槽用手摺り1を固定フレームの背後から見た概要を示しており、図2は、図1に示される浴槽用手摺り1の断面を示している。
【0033】
図1,2を参照して理解されるように、本発明の浴槽用手摺り本体は、浴槽の側壁へ取り付けられる水平部20と垂直部21を備えた略L字型の固定フレーム2と、固定フレーム2の水平部20へスライド可能に取り付けられた水平部分30と垂直部分31を備えた略L字型の可動フレーム3から構成されている。本実施例では、人の身体を支持するための上部グリップ22が固定フレーム2へ昇降可能に取り付けられており、また側部グリップ32は可動フレーム3へ取り付けられている。
【0034】
第1の押圧板23は、浴槽の側壁(一点鎖線で表示)を洗い場側からクランプするために、後述する取付け機構4の可動部材5へ首振り自在に取り付けられており、そして第1の押圧板23と対向する位置に配置される第2の押圧板33は、浴槽側壁を浴槽側からクランプするために可動フレーム3へ首振り自在に取り付けられている。このため、本実施例の浴槽用手摺り1では、浴槽の側壁を第1の押圧板23と第2の押圧板33の間にクランプした時、第1の押圧板23および第2の押圧板33は浴槽の側壁の形状、傾斜に馴染むように当接面の圧接角度を変えるので、複雑な形状の側壁を有する浴槽においても手摺りを強固に固定することができる。また、本実施例の第1の押圧板23の押圧面および第2の押圧板33の押圧面には、浴槽側壁との滑り防止を強化するために樹脂製の弾性ラバーが装着されている(図1参照)。
【0035】
第1の押圧板23を浴槽の側壁へ押し付け固定するための取付け機構4は固定フレーム3へ取りけられており、取付け機構4は、一の端が固定フレーム3へ回動可能に取り付けられており他の端は第1の押圧板23へ連結されている可動部材5と、回動軸60に対して偏心し且つ可動部材5の背面51に当接するカム面61を有する偏心カム62を備え、そしてそこから延びており且つ固定フレーム3へ回動操作可能に取り付けられたレバー6を含んでいる。
【0036】
また、本実施例の取付け機構4では、レバー6は手摺り1を固定する時のレバー6の回動方向が押し下げ方向となるように取り付けられている(図1参照)。このため、レバー6を回動操作する時、使用者はレバー6へ自己の体重を預けることによってレバー6を容易に回動させることができる。また、使用者が手の甲を用いて自己の体重を容易に預けることができるように、本実施例のレバー6の形状は細い棒の形状ではなく、より幅の広い平板の形状となっている。また、レバー6のカム面61により当接される可動部材5の形状も、レバーと同様に細い棒の形状ではなく、より幅の広い平板の形状となっている。
【0037】
本発明では、第1の押圧板23の移動は、レバー6のカム面61によって直接に伝達されるのではなく、第1の押圧板23とカム面61との間に片持ちで支持された可動部材5を介して間接的に伝達される。このため、可動部材5の先端位置52を可動部材5がカム面61と当接する位置53より下方へ延ばすと、テコの原理により、偏心カム62が回転することによる可動部材5がカム面61と当接する位置53での移動量は、可動部材5の先端位置52においてより大きな移動量へと増幅される。
【0038】
このため、本実施例の偏心カム構造を利用した押圧機構では、1回のレバー操作を行うことにより、カム面61の偏心量より大きな移動量を伴って第1の押圧板23を浴槽の側壁へ押し付けることができるので、浴槽用手摺り1を浴槽の側壁へ固定する時、第1の押圧板23の押し込み量および浴槽側壁に対する押圧力の調節幅が拡大され、手摺り1の取り付けが容易となる。
【0039】
本実施例の可動部材5の回動軸50は、レバーの回動軸60に対し上方に軸支されている。このように、可動部材5の固定フレーム側の回動軸50をレバーの回動軸60より上方に軸支すると、片持ち支持の可動部材5は、カム面61と接するために回動軸50から下方向へ延びた配置となり、レバー6の回動操作により、偏心カム62を可動部材5へ押し付けずに開放した状態としても、重力により下向きの安定した姿勢を保持することができるからである。
【0040】
また、本実施例の可動部材5の回動軸50は、レバーの回動軸60に対し平行に軸支されている。可動部材5の固定フレーム側の回動軸50をレバーの回動軸60と平行に軸支すると、レバー6のカム面61の回転方向とこれと接触する可動部材5の回動方向が一致するので、両者の当接面51,61における片当たりやそれが原因で生ずる片減り、偏磨耗を防止することができ、両者のスムーズな回動を保証することができるからである。
【0041】
図3は、本実施例の浴槽用手摺り1において、取付け機構4のレバー6の回動軸60および可動部材5の回動軸50を軸支する構造を部分的に示した側面図および正面図である。
【0042】
図3に示されているように、レバー6の回動軸60および可動部材5の回動軸50は、いずれも固定フレームから延びたリブ24,25により軸支されている。また、リブ24,25のそれぞれには、レバー6の回動軸60の軸端および可動部材5の回動軸50の軸端を軸支するための上下方向に延びた軸穴240および円形の軸穴250が設けられている。
【0043】
本実施例の浴槽用手摺り1では、レバー6の回動軸60を固定フレーム2に対し上下方向へ移動可能に軸支することによって、可動部材5に対するカム面61の当接位置53を調節できるようにし、第1の押圧板23を係止した時の可動部材5の傾斜角度を変更できるようにしている。また、図示しないが、可動部材5に対するカム面61の当接位置53は、可動部材5の回動軸50を固定フレーム2に対し移動可能に軸支することによっても達成できるので、回動軸50,60の移動可能化はそれらのどちらを選択してもよい。
【0044】
この結果、本実施例の浴槽用手摺り1では、レバー6の回動軸60を固定フレーム2に対し上下方向へ動かして、可動部材5に対するカム面61の当接位置53を調節することにより、第1の押圧板23を係止した時の可動部材5の傾斜角度αを変更し、第1の押圧板23の浴槽の側壁に対する押圧力を適度に調節することができる。
【0045】
図4には、可動部材5又はレバー6の回動軸50,60を軸支する他の具体的な軸穴の形状を示すために、リブ24又は25を側面及び正面から見た部分的拡大図が示されている。
【0046】
軸穴240,250の長穴化による、第1の押圧板23を係止した時の可動部材5の傾斜角度αの変更可能化は、本実施例のように長穴を上下方向へ配設する場合に限らず、水平方向(図4a参照)若しくはそれらを組み合わせた方向(図4b参照)へ配設することによっても達成される。
【0047】
ただし、長穴240,250を水平方向へ配設する場合、第1の押圧板23を係止した時に可動部材5から偏心カム62へ伝わる水平方向の反力に抗する必要があるため、回動軸50,60をネジ26などを用いて長穴の途中の位置に係止できるようにしなければならない(図4a,4b参照)。回動軸のネジ止めは、回動軸50,60の端部にネジ26と螺合するネジ山を設けることにより達成できる。この点、長穴240を上下方向へ配設した本実施例の場合は、第1の押圧板23を係止した時に可動部材5から偏心カム62へ伝わる水平方向の反力は長穴240の縁で受けることができるので、レバー6の回動軸60は長穴240の途中の位置にしっかりと係止され有利である。
【0048】
本実施例の浴槽用手摺り1では、可動部材5のカム面61との当接面51は、レバー6を回動することによって第1の押圧板23を浴槽の側壁へ押し付けそして係止させた時、当接面51からの反力により、偏心カム62へ、少なくともレバー6の回動方向とは逆向きの回転モーメントを発生させないように、一部が平面であって一部が曲面からなる形状を有している。可動部材5に対するカム面61の当接位置53を調節することによって、第1の押圧板23を係止した時の可動部材5の傾斜角度αを水平に近づけた時、レバー6を係止させるための回動方向とは逆向きの回転モーメントが生じるのを防止するためである。
【0049】
再び、図2を参照しながら、本実施例の浴槽手摺り1を浴槽の側壁へ取り付けるための手順について説明する。図2の中で、破線は第1の押圧板23と第2の押圧板33を開放した位置で、浴槽手摺り1が浴槽の側壁(一点鎖線で表示)へ仮セットされている状態を示し、実線は、第1の押圧板23と第2の押圧板33の間に浴槽の側壁をクランプし、浴槽手摺り1が浴槽の側壁へ固定されている状態を示している。
【0050】
本実施例の浴槽用手摺り1では、固定フレーム2へ取り付けられた第1の押圧板23を洗い場側から浴槽の側壁へ軽く当接するように仮セットした後、可動フレーム3を固定フレーム2に対しスライドさせて近づけると、可動フレーム3へ取り付けられた第2の押圧板33は、浴槽の側壁を浴槽側から軽くクランプする。この状態で、固定フレーム2へ回動可能に取り付けられているレバー6を押し下げ方向へ回動させると、レバー6の回動軸60の周りに形成されているカム面61が可動部材5の背面51に当接した状態で回転し、これに伴って可動部材5は、回転に応じて増加したカム面61の偏心量の分だけ浴槽の側壁側へ押し込まれ、その回動軸50の廻りに回転して傾斜する。そして、第1の押圧板23は可動部材5の先端52により浴槽の側壁へ押し付けられ、その反力により、第2の押圧板33は反対側から浴槽の側壁へ押し付けられる。その結果、第1の押圧板23と第2の押圧板33はそれらの間に浴槽の側壁を強力にクランプし、本実施例1の浴槽用手摺り1を浴槽の側壁へ強固に固定する。
【0051】
したがって、本発明では、可動部材5がレバー6の偏心カム62と第1の押圧板23との間に配置されていればよい。それ故、第1の押圧板23は必ずしも可動部材6の先端52へ連結されている必要はなく、例えば、可動部材6から分離して、固定フレーム3から延びたリブ等により前進及び後退可能に取り付けられていてもよい。
【0052】
このように、本発明の浴槽用手摺り1は、その取付け機構4によって、固定フレーム2に対し可動フレーム3をスライド移動させることにより、浴槽の側壁を挟んで第1の押圧板23と第2の押圧板33の間の距離をできるだけ縮めるように調整した後、1回のレバー操作を行うことによって第1の押圧板23を第2の押圧板33と協働させて浴槽の側壁へ強力に押し付けることができるので、浴槽用手摺り1を単純なワンタッチ操作によって浴槽の側壁へしっかりと固定することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 ・・・・・・・・・・・・・・・ 浴槽用手摺り
2 ・・・・・・・・・・・・・・・ 固定フレーム
20 ・・・・・・・・・・・・・ 水平部
21 ・・・・・・・・・・・・・ 垂直部
22 ・・・・・・・・・・・・・ 上部グリップ
23 ・・・・・・・・・・・・・ 第1の押圧板
24,25 ・・・・・・・ リブ
26 ・・・・・・・・・・・・・ ネジ
240,250 ・・・ 軸穴
3 ・・・・・・・・・・・・・・・ 可動フレーム
30 ・・・・・・・・・・・・・ 水平部分
31 ・・・・・・・・・・・・・ 垂直部分
32 ・・・・・・・・・・・・・ 側部グリップ
33 ・・・・・・・・・・・・・ 第2の押圧板
4 ・・・・・・・・・・・・・・・ 取付け機構
5 ・・・・・・・・・・・・・・・ 可動部材
50 ・・・・・・・・・・・・・ 回動軸
51 ・・・・・・・・・・・・・ 当接面(背面)
6 ・・・・・・・・・・・・・・・ レバー
60 ・・・・・・・・・・・・・ 回動軸
61 ・・・・・・・・・・・・・ カム面
62 ・・・・・・・・・・・・・ 偏心カム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽の側壁へ取り付けられる水平部と垂直部を備えた略L字型の固定フレームと、
前記固定フレームへ取り付けられた取付け機構と、
前記取付け機構により回動又は首振り自在に支持された第1の押圧板と、
前記固定フレームの水平部へスライド可能に取り付けられた水平部分と垂直部分を備えた略L字型の可動フレームと、そして
前記第1の押圧板と対向するように配置され且つ前記可動フレームへ取り付けられた第2の押圧板を備え、さらに
前記取付け機構は、一の端が前記固定フレームへ回動可能に取り付けられており、他の端は前記第1の押圧板へ連結されている可動部材と、回動軸に対して偏心し且つ前記可動部材の背面に当接するカム面を有する偏心カムを備え、そしてそこから延びており且つ前記固定フレームへ回動操作可能に取り付けられたレバーから構成されており、そして前記第1の押圧板は、前記レバーを回動することによって前記可動部材を介して浴槽の側壁へ押し付けられ係止されることを特徴とする浴槽用手摺り。
【請求項2】
浴槽の側壁へ取り付けられる水平部と垂直部を備えた略L字型の固定フレームと、
前記固定フレームにより前進及び後退可能に支持された第1の押圧板と、
前記第1の押圧板を浴槽の側壁へ押圧するための前記固定フレームへ取り付けられた取付け機構と、
前記固定フレームの水平部へスライド可能に取り付けられた水平部分と垂直部分を備えた略L字型の可動フレームと、そして
前記第1の押圧板と対向するように配置され且つ前記垂直部分へ取り付けられた第2の押圧板を備え、さらに
前記取付け機構は、一の端が前記固定フレームへ回動可能に取り付けられており、他の端は回動自在な自由端である可動部材と、回動軸に対して偏心し且つ前記可動部材の背面に当接するカム面を有する偏心カムを備え、そしてそこから延びており且つ前記固定フレームへ回動操作可能に取り付けられたレバーとから構成されており、そして前記第1の押圧板は、前記レバーを回動することによって前記可動部材を介して浴槽の側壁へ押し付けられ係止されることを特徴とする浴槽用手摺り。
【請求項3】
前記第1の押圧板は、前記固定フレームに対し回動又は首振り自在に支持されていることを特徴とする請求項2に記載の浴槽用手摺り。
【請求項4】
前記レバーの回動軸または前記可動部材の固定フレーム側の回動軸は、前記可動部材に対する前記カム面の当接位置を調節することによって、前記第1の押圧板を係止した時の前記可動部材の傾斜角度を変更できるように、前記固定フレームに対し少なくとも上下方向へ移動可能に軸支されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の浴槽用手摺り。
【請求項5】
前記可動部材のカム面との当接面には、前記レバーを回動することによって前記第1の押圧板を浴槽の側壁へ押し付けそして係止させた時、前記当接面からの反力により、前記偏心カムへ前記レバーの回動方向とは逆向きの回転モーメントを発生させない曲面が形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の浴槽用手摺り。
【請求項6】
前記偏心カムが回転することによる前記可動部材の下端の移動量は、前記可動部材が前記カム面と当接する位置における移動量より増幅されるように、前記可動部材の下端は前記カム面と前記可動部材の当接する位置より下方へ延びていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の浴槽用手摺り。
【請求項7】
前記可動部材の前記固定フレーム側の回動軸は、前記レバーの回動軸に対し上方に軸支されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の浴槽用手摺り。
【請求項8】
前記可動部材の前記固定フレーム側の回動軸は、前記レバーの回動軸に対し平行に軸支されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の浴槽用手摺り。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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