説明

浴槽装置

【課題】入浴者に継続的に全身運動させることができる浴槽装置を提供する。
【解決手段】浴槽装置11において、浴槽12の足側面12aに水流を断続的に噴射する噴出部13を設け、また、上肢揺動手段16を設ける。噴出部3が噴射する水流の大きさは、入浴者Mが、背中m2を背側面2bに当接させ、足裏m1を噴出部3に対向させたときに、入浴者Mの足関節a1、膝関節a2及び股関節a3を屈曲させることが可能な大きさとする。また、上肢揺動手段16には、浴槽12の横側面12dに対して固定された一対の支持部17と、支持部17に対して揺動自在に連結された一対の把握部18とを設ける。把握部18は、入浴者Mが入浴姿勢をとったときに手で掴める位置に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽装置に関し、特に、入浴者に運動させる浴槽装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、社会的に健康志向が高まり、フィットネスやエクササイズなどの運動によって健康管理を行いたいという要求が高まっている。また、入浴中に手軽に運動したいという要望もある。
【0003】
例えば、特許文献1には、浴槽内に踏み込み可能な踏み台を設ける技術が開示されている。踏み台にはバネによって踏み込み負荷が与えられており、入浴者は座位姿勢のまま片足で踏み台を踏み込むことにより、運動することができる。しかしながら、普段から運動習慣の無い人が運動を行うには、相当な意志の力を要する。特に、入浴時はリラックスした精神状態になっているため、意志の力を発揮することは困難である。このため、浴槽内に運動器具を設置しても、運動が長続きしないことが予想される。また、特許文献1に記載された装置では、入浴者の下肢のみしか運動できないが、近年、全身運動、特に、下肢と上肢の協調運動によって、運動の効果が向上することが知られている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−236014号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、入浴者に継続的に全身運動させることができる浴槽装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、浴槽と、前記浴槽の第1の内側面に設けられ、前記浴槽の内部に向けて水流を断続的に噴射する噴出部と、上肢揺動手段と、を備え、前記水流の大きさは、入浴者が、背中を前記第1の内側面に対向する第2の内側面に当接させ、足裏を前記噴出部に対向させたときに、前記入浴者の足関節、膝関節及び股関節を屈曲させることが可能な大きさであり、前記上肢揺動手段は、前記浴槽に対して固定された支持部と、前記支持部に対して揺動自在に連結された把握部と、を有することを特徴とする浴槽装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、入浴者に継続的に全身運動させることができる浴槽装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
先ず、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る浴槽装置を例示する模式図であり、
図2は、本実施形態における上肢揺動手段を例示する側面図である。
【0009】
図1に示すように、本実施形態に係る浴槽装置11においては、浴槽12が設けられている。浴槽12の形状は例えば略直方体形状であり、長手方向の一端部の内側面は、入浴者Mが入浴姿勢をとったときにその足裏m1が対向する足側面12aとなっており、長手方向の他端部の内側面は、入浴者Mの背中m2が接触する背側面12bとなっている。第2の内側面である背側面12bは、第1の内側面である足側面12aに対向している。すなわち、足側面12aと背側面12bとは、底面12cを挟んで相互に対向している。また、浴槽12において、長手方向に直交する幅方向の両端部の内側面は、一対の横側面12dとなっている。すなわち、第3の内側面である一対の横側面12dは、足側面12aと背側面12bとの間に設けられており、相互に対向している。そして、浴槽12の内側面は、足側面12a、背側面12b及び一対の横側面12dから構成されている。
【0010】
浴槽12の足側面12aには、噴出部13が設けられている。噴出部13は、浴槽12の内部に向けて断続的に水流を噴射するものであり、この水流の方向は足側面12aから背側面12bに向かう方向である。噴出部13は例えば2個設けられており、水平方向に配列されている。噴出部13は例えばノズルであり、その間隔は人の両足の間隔程度である。
【0011】
また、浴槽装置11における浴槽12の外部には、ポンプ14が設けられている。ポンプ14の吸水側の配管は浴槽12の内部に連通されている。これにより、ポンプ14は浴槽12内から水を汲み上げ、水流を生成して吐出する。更に、浴槽装置11における浴槽12の外部には、ポンプ14によって生成された水流を噴出部13に対して断続的に供給する吐水制御手段15が設けられている。吐水制御手段15においては、ポンプ14と噴出部13との間の水路に介在し、水流を切替える機構部15aと、機構部15aの動作を制御する切替制御部15bとが設けられている。機構部15aは機械的な装置であり、切替制御部15bは電子的な装置である。
【0012】
噴出部13から噴射する水流の大きさは、入浴者Mが背中m2を背側面12bに当接させ、足裏m1を噴出部13に対向させたときに、入浴者Mの足関節a1、膝関節a2及び股関節a3を同時に屈曲させることが可能な大きさであり、例えば、80乃至300リットル/分である。なお、水流の大きさが80リットル/分未満であると、足関節a1、膝関節a2及び股関節a3を同時に屈曲させることが難しく、300リットル/分を超えると、浴槽12から水が飛び出すことがある。好ましい水流の大きさは120乃至270リットル/分であり、より好ましくは150乃至250リットル/分である。
【0013】
更にまた、浴槽装置11には、上肢揺動手段16が設けられている。上肢揺動手段16には、一対の支持部17と一対の把握部18とが設けられている。各支持部17は、浴槽12の各横側面12dにそれぞれ取り付けられており、これにより、浴槽12に対して固定されている。また、各把握部18は各支持部17に揺動自在に連結されている。なお、本明細書において「揺動」とは、位置、速度及び角度のうち少なくとも1つが一定の範囲内で変化する動きをいい、少なくとも、回転運動、往復直線運動及び球面の一部の領域内での自在運動を含むものとする。把握部18は、入浴者Mが入浴姿勢をとったときに両手で掴める位置に配置する。
【0014】
具体的には、図2に示すように、支持部17においては、浴槽12の横側面12d上に浴槽12の長手方向に延びるレール17aが敷設されている。また、各把握部18においては、架台18a及びレバー18bが設けられている。架台18aは、レール17aに沿って浴槽12の長手方向、すなわち、足側面12aと背側面12bとを結ぶ方向に移動可能なプレート状の部材である。また、レバー18bは、架台18aから浴槽12の幅方向に延出した棒状の部材である。本実施形態においては、左右の把握部18は相互に独立して移動可能である。
【0015】
また、把握部18の架台18aには、ストッパ19が設けられている。ストッパ19は架台18aに対して一定の範囲で移動可能とされている。そして、ストッパ19は、架台18aに対して押し込まれることにより、その先端がレール17aに当接し、架台18aをレール17aに対して固定する。一方、ストッパ19は、架台18aに対して引き出されることにより、レール17aから離隔し、架台18aの移動を妨害しなくなる。このように、ストッパ19は、把握部18を支持部17に対して固定するロック機構部として機能する。
【0016】
次に、本実施形態の動作について説明する。
本実施形態においては、入浴者の上肢がそれぞれ浴槽の長手方向に沿って併進運動する。
浴槽12内に水(湯)を入れた状態で、入浴者Mが浴槽12内に入り、入浴姿勢をとる。入浴姿勢とは、入浴者Mが、臀部を浴槽12の底面12cに接触させ、背中m2を浴槽12の背側面12bに接触させ、足裏m1を足側面12aに対向させた姿勢をいう。そして、入浴者Mは、左右の足裏を左右の噴出部13にそれぞれ対向させる。また、両手で把握部18のレバー18bを掴む。このとき、ストッパ19は架台18aから引き出された状態にあり、把握部18は支持部17に対して移動可能とされている。更に、入浴者Mはリラックスした状態にあり、足関節a1、膝関節a2及び股関節a3は脱力されているものとする。
【0017】
この状態で、ポンプ14が浴槽12内の水を汲み上げて水流を生成し、吐水制御手段15に対して供給する。また、吐水制御装置15の切替制御部15aが機構部15bを制御することにより、水流を噴出部13に対して断続的に供給する。例えば、吐水制御手段15は、左右の噴出部13に対して交互に水流を供給する。これにより、左右の噴出部13から交互に水流が噴射される。すなわち、各噴出部13からは水流が断続的に噴射されるが、その位相は左右の噴出部13の間で相互に逆位相となる。
【0018】
噴出部13から水流が噴射されると、この水流は入浴者Mの足裏m1を押圧する。これにより、入浴者Mの足関節a1、膝関節a2及び股関節a3が同時に屈曲し、足は背側面12bに向かって移動する。一方、噴出部13から水流が噴射されなくなると、足裏を押圧する圧力が消失するため、足関節a1、膝関節a2及び股関節a3が自然に伸び、足は足側面12aに向かって移動し、噴出部13の近傍に戻る。従って、噴出部13が水流を断続的に噴射することにより、入浴者の足が浴槽12の長手方向に沿って往復運動する。また、左右の噴出部13から交互に水流が噴射されることにより、左右の足が逆位相で往復運動し、歩行を模した運動が可能となる。なお、このとき、入浴者Mの足裏m1を押圧した水流は、足の周囲を回り込み、背側面12bに向かって流れていく。これにより、足は水流に包まれた状態となるため、水流の経路から外れにくく、水流に沿った軌跡をとる。
【0019】
そして、入浴者Mの一方の足裏が押圧されて、脚部が屈曲すると、腰が回転し、他方の腕が前方に移動しようとする。例えば、図1に示す例では、入浴者の右足の足裏が水流により押圧されると、右の足関節、膝関節、股関節が屈曲する。これにより、入浴者の腰が上方から見て時計回りに回転し、左脚及び左腕が自然に前に出ると共に、右腕が後ろに下がる。このとき、入浴者の両手は把握部18のレバー18bを掴んでいるが、レバー18bはレール17aに沿って移動可能とされているため、入浴者の両腕は拘束されない。このため、入浴者の左腕が前方に移動しようとしたときには、その移動は阻止されず、左腕は前方に移動する。また、右腕が後方に移動しようとしたときには、その移動は阻止されず、右腕は後方に移動する。一方、入浴者の左の足裏が水流により押圧されると、左の足関節、膝関節、股関節が屈曲すると共に、腰が上方から見て反時計回りに回転し、右脚及び右腕が前に出て、左腕は後ろに下がる。
【0020】
このようにして、左右の噴出部13から交互に水流が噴射されることにより、入浴者の左右の足が相互に逆位相で往復運動すると、これに伴って、入浴者の腰が往復回動運動し、左右の腕が相互に逆位相で往復運動する。この結果、入浴者Mに下肢(脚)と上肢(腕)とを協調させた全身運動を行わせることができる。
【0021】
一方、入浴者が下肢のみを運動させ、上肢を運動させたくないときには、ストッパ19を架台18aに押し込むことにより、把握部18を支持部17に対して固定することができる。これにより、上肢(腕)を浴槽に対して固定したまま、下肢(脚)のみを運動させることができる。
【0022】
次に、本実施形態の効果について説明する。
上述の如く、本実施形態によれば、噴出部13が水流を断続的に噴射することにより、入浴者Mの足関節a1、膝関節a2及び股関節a3を屈伸させる。また、このとき、入浴者の両手はレバー18bを掴んでおり、浴槽12の長手方向に自在に移動できるようになっているため、水流が入浴者の足裏を押圧することにより、腰を回動させ、腕を運動させることができる。これにより、入浴者Mに下肢と上肢とを協調させた全身運動をさせることができる。このとき、左右の噴出部3が交互に水流を噴射することにより、入浴者の左右の脚を交互に屈伸させ、腰を往復回動運動させ、左右の腕を交互に前後に往復運動させることができる。この結果、噴出部13から噴射された水流が入浴者の脚部を揺動させ、レバー18bは上肢、前腕部、上腕部に付随する筋群を活動させることができる。このように、上肢等の筋群を活動させることにより、脚部のみを運動させる場合と比較して活動する筋群を増やすことができ、エネルギー消費量が増大し、エクササイズの効果がより向上する。
【0023】
また、近年の研究において、腕をアクティブに動かすことで、腕の筋群と関係のない脚部の筋群の活動レベルが増大することが報告されている。よって、上肢と下肢を協調運動させることにより、単に活動する筋の量を増やすこと以上に、エクササイズの効果が向上する。更に、レバー18bを備えることで、上肢運動がよりリズミックになり、入浴者Mに歩行を模した運動を行わせることができる。更にまた、入浴者Mは、この運動によって姿勢のバランスを崩されるため、無意識に全身の筋肉を働かせて補償動作を行うが、これによっても運動することができる。
【0024】
このように、本実施形態によれば、入浴者Mに運動をさせることができる。この運動は外部から与えられる他力的な他動運動であり、入浴者の意志によって行われる自動運動ではないため、入浴者の意志力に依存する部分が少なく、長続きしやすい。また、この運動は入浴姿勢のまま行うことができるため、入浴者は、リラックスした状態で運動することができる。この結果、運動を継続しやすい。なお、「他動運動」とは、人が自分の筋力ではなく外力を利用して行う運動をいい、本明細書においては、上述の如く姿勢を崩された場合の補償動作も含むものとする。
【0025】
また、本実施形態によれば、水流による他動運動の可動範囲拡大という視点からも、上肢揺動手段16の動作により、入浴者に下肢と上肢とを協調させた全身運動を行わせることができる。この結果、単に下肢のみを運動させる場合と比較してダイナミックな運動を行わせることができ、より高い運動効果を得ることができる。
【0026】
更に、本実施形態においては、ロック機構部としてストッパ19が設けられていることにより、運動の目的又は入浴者の体調などにより、把握部18を移動可能とするか固定するかを入浴者が選択することができる。
【0027】
更にまた、入浴による温熱効果により、運動効果がより一層向上する。更にまた、水流により入浴者の周囲の温度境界層が常に破壊されるため、入浴者が温まり易く、運動効果が更に向上する。このように、上述の運動を浴槽内で行うことにより、浴槽外で行う場合と比較して、より高い運動効果を得ることができる。
【0028】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
本実施形態においては、入浴者の上肢が回転運動する。
図3は、本実施形態に係る浴槽装置を例示する模式図であり、
図4は、本実施形態における上肢揺動手段を例示する側面図である。
図3及び図4に示すように、本実施形態は、前述の第1の実施形態と比較して、上肢揺動手段の構成が異なっている。本実施形態に係る浴槽装置21においても、前述の第1の実施形態と同様に、上肢揺動手段26には、各1対の支持部27及び把握部28が設けられており、支持部27は浴槽12の横側面12dに取り付けられており、把握部28は支持部27に対して揺動自在に連結されている。
【0029】
以下、上肢揺動手段26の構成について説明する。図4に示すように、支持部27には浴槽12の横側面12dに取り付けられた基台27aが設けられており、基台27aからは軸27bが起立している。軸27bが延びる方向は、横側面12dに対して垂直な方向である。また、軸27bの先端部の外周面にはネジ山(図示せず)が形成されており、環状のストッパ29が軸27bの先端部を囲むようにネジ止めされている。
【0030】
一方、把握部28には、棒状の回転レバー28aが設けられており、回転レバー28aの一端部には環状部28bが設けられている。そして、支持部27の軸27bが環状部28bの開口部に嵌合されることにより、把握部28の一端は軸27bによって軸支されている。このとき、環状部28bは基台27aとストッパ29との間に配置されている。
【0031】
そして、ストッパ29を緩めて環状部28bとの間にクリアランスを設けると、把握部28は軸27bに対して回転自在となる。すなわち、回転レバー28aの先端部は軸27bを中心として円運動することが可能となり、浴槽12の長手方向及び上下方向に移動可能となる。一方、ストッパ29を締めて基台27aとの間で環状部28bを挟み込めば、把握部28は支持部27に対して固定される。このように、ストッパ29は、把握部28を支持部27に対して固定するロック機構部として機能する。また、把握部28は、一端部が軸27bに回転又は回動自在に軸支された回転レバー28aを有する。本実施形態における上記以外の構成は、前述の第1の実施形態と同様である。
【0032】
次に、本実施形態の動作について説明する。
入浴者Mは浴槽12内において入浴姿勢をとり、両手で把握部28の回転レバー28aを掴む。このとき、ストッパ29は緩めた状態にあり、回転レバー28aは軸27bに対して回転自在とされている。この状態で、ポンプ14及び吐水制御装置15を作動させ、左右の噴射部13から交互に水流を噴射することにより、入浴者Mの左右の足裏が交互に押圧されて、左右の脚が交互に屈伸する。このとき、入浴者の両手は回転レバー28aを掴んでいるが、回転レバー28aは軸27bを中心として回転自在とされているため、入浴者の両腕は拘束されず、脚の動きと同調して移動する。
【0033】
そして、左右の噴出部13から交互に水流が噴射されることにより、入浴者の左右の足が相互に逆位相で往復運動すると、これに伴って、入浴者の腰が往復回動運動し、左右の腕が相互に逆位相で往復運動する。この結果、入浴者Mに下肢(脚)と上肢(腕)とを協調させた全身運動を行わせることができる。一方、入浴者が下肢のみを運動させ、上肢を運動させたくないときには、ストッパ29を締めることにより、把握部28を支持部27に対して固定することができる。これにより、上肢(腕)を浴槽に対して固定したまま、下肢(脚)のみを運動させることができる。
【0034】
このように、本実施形態においても、前述の第1の実施形態と同様に、入浴者Mに全身運動をさせることができる。また、この運動は他動運動であるため、長続きしやすい。更に、本実施形態によれば、図3に示すように、回転レバー28bの回転軸27bが延びる方向と、入浴者の上肢における前腕部と上腕部をつなぐ関節の回転軸が延びる方向とは、同じとなる。そして、このような上肢の回転運動によって、前述の第1の実施形態のような浴槽長手方向に沿った上肢の併進運動よりも、上肢の筋群を効果的に活動させることができる。この結果、全体のエネルギー消費量を向上させることができ、エクササイズ効果を増加させることが可能となる。
【0035】
本実施形態における上記以外の動作及び効果は、前述の第1の実施形態と同様である。なお、本実施形態においては、把握部28が支持部27に対して回転自在である例を示したが、本発明はこれに限定されず、把握部28の可動角度に一定の制約を設けてもよい。この場合は、把握部28は支持部27に対して設定された一定の角度範囲内で回動自在となる。
【0036】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
本実施形態においては、入浴者の上肢に回転運動及び併進運動を同時に行わせる。
図5は、本実施形態に係る浴槽装置を例示する模式図であり、
図6は、本実施形態における上肢揺動手段を例示する断面図である。
図5及び図6に示すように、本実施形態は、前述の第1及び第2の実施形態と比較して、上肢揺動手段の構成が異なっている。本実施形態に係る浴槽装置31においても、前述の第1及び第2の実施形態と同様に、上肢揺動手段36には、各1対の支持部37及び把握部38が設けられており、支持部37は浴槽12の横側面12dに取り付けられており、把握部38は支持部37に対して、ボールジョイント35によって揺動自在に連結されている。
【0037】
以下、上肢揺動手段36の構成について説明する。図6に示すように、支持部37においては、基台37aが設けられており、浴槽12の横側面12dに取り付けられている。基台37aには、球形の空洞部37bが形成されている。空洞部37bは、基台37aに形成された開口部37cを介して、基台37aの外部、すなわち、浴槽12の内部に連通されている。一方、把握部38には、棒状のレバー38aが設けられており、レバー38aの一端部には球形の球状部38bが設けられている。球状部38bの直径は、空洞部37bの内径よりも一回り小さい。そして、把握部38の球状部38bは支持部37の空洞部37b内に嵌め込まれており、レバー38aは空洞部37bから開口部37cを介して基台37aの外部、すなわち、浴槽12の内部に引き出されている。そして、空洞部37b及び球状部38bにより、ボールジョイント35が構成されている。
【0038】
また、上肢揺動手段36にはストッパ39が設けられている。ストッパ39は基台37aの外面に対して摺動可能とされている。ストッパ39をその可動域の一端部に位置させたときは、先端部が開口部37c上に延出し、開口部37cの端縁との間でレバー38aを挟みこむ。これにより、レバー38aを支持部37に対して固定することができる。一方、ストッパ39をその可動域の他端部に位置させたときは、その先端部は開口部37cの外側に退避し、ストッパ39はレバー38aの移動域に介在しなくなる。これにより、レバー38aにおける球状部38bが取り付けられていない側の端部は、球の一部をなす曲面領域内を自在に移動できるようになる。本実施形態における上記以外の構成は、前述の第1の実施形態と同様である。
【0039】
本実施形態においては、レバー38aが球状部38bを中心として自在に運動するため、入浴者Mが入浴時に両手でレバー38aを掴むことにより、前述の第1の実施形態において実現される入浴者Mの上肢(上腕、前腕部)の併進運動と、前述の第2の実施形態において実現される入浴者Mの上肢(上腕、前腕部)の回転運動の両方を実現することができる。これにより、併進運動において積極的に働く筋群と回転運動によって積極的に働く筋群の双方を活動させることができる。この結果、エネルギー消費量が第1又は第2の実施形態よりも多くなり、入浴者Mはより効果的なエクササイズを行うことが可能となる。本実施形態における上記以外の動作及び効果は、前述の第1の実施形態と同様である。
【0040】
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
図7は、本実施形態に係る浴槽装置を例示する模式図である。
図7に示すように、本実施形態に係る浴槽装置41においては、前述の第1の実施形態に係る浴槽装置11(図1参照)の構成に加えて、左右の把握部18を連動させる連動手段が設けられている。このため、本実施形態においては、左右の把握部18は相互に独立には動作せず、連動する。
【0041】
連動手段においては、浴槽12の外部、例えば、背側面12b側の外周部を通過するように、チューブ(図示せず)が敷設されており、このチューブの内部にワイヤー42が挿通されている。ワイヤー42の両端部は、それぞれ左右の把握部18に連結されている。これにより、図7に示すように、左右の把握部18のうち一方の把握部18が後方(背側面12b側)に引かれて移動したときは、この把握部18がワイヤー42を押圧し、ワイヤー42が他方の把握部18を押圧し、他方の把握部18が前方(足側面12a側)に移動する。また、一方の把握部18が前方に押されて移動したときは、この把握部18がワイヤー42を引っ張り、ワイヤー42が他方の把握部18を引っ張り、他方の把握部18が後方に移動する。これにより、左右の把握部18が常に逆位相で移動することになり、入浴者Mに腰の回動を含むダイナミックな運動をさせることができる。すなわち、上肢揺動手段を一方の把握部18の動きを動力として他方の把握部18が動くレシプロ構造とすることにより、安定した揺動を入浴者の上肢に与え、ひいては全身に与えることが可能となる。本実施形態における上記以外の構成、動作及び効果は、前述の第1の実施形態と同様である。
【0042】
なお、ワイヤーの敷設位置は背側面12b側には限定されず、足側面12a側に敷設してもよく、ワイヤーを環状にして浴槽12の外周全体にわたって敷設してもよい。また、前述の第2及び第3の実施形態についても、本実施形態のように、連動手段を設けることができる。例えば、前述の第2の実施形態(図3、図4参照)においては、把握部28の回転角度を規制して把握部28が一定角度範囲内で回動するようにし、把握部28の回動に伴ってワイヤーが巻き取られ又は巻き出されるようにしてもよい。この場合、ワイヤーは浴槽12の下方を通過させてもよい。
【0043】
以上、実施形態を参照しつつ、本発明の特徴を説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。すなわち、前述の各実施形態を適宜組み合わせたもの、及び各実施形態のいずれかに係る浴槽装置に対して、当業者が構成要素の追加、省略又は設計変更を加えたものであっても、本発明の要旨を備えたものであれば、本発明の範囲に包含される。例えば、前述の各実施形態においては、上肢揺動手段にロック機構部としてのストッパを設ける例を示したが、本発明はこれに限定されず、ストッパは省略してもよい。また、上肢揺動手段には、把握部が動作する際の負荷及び動作範囲を調節する調節手段を設けてもよい。更に前述の各実施形態においては2個の噴出部が設けられている例を示したが、本発明はこれに限定されず、噴出部の数は1個又は3個以上であってもよい。更にまた、前述の各実施形態においては、上肢揺動手段の支持部が浴槽の横側面に取り付けられている例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、浴室の壁又は天井に取り付けられていてもよく、例えば、浴室の天井からロープ状の部材が吊り下げられていてもよい。この場合は、把握部の一部が、入浴者が入浴姿勢をとったときに手が届く位置に配置されていればよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る浴槽装置を例示する模式図である。
【図2】第1の実施形態における上肢揺動手段を例示する側面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る浴槽装置を例示する模式図である。
【図4】第2の実施形態における上肢揺動手段を例示する側面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る浴槽装置を例示する模式図である。
【図6】第3の実施形態における上肢揺動手段を例示する断面図である。
【図7】本発明の第4の実施形態に係る浴槽装置を例示する模式図である。
【符号の説明】
【0045】
11、21、31、41 浴槽装置、12 浴槽、12a 足側面、12b 背側面、12c 底面、12d 横側面、13 噴出部、14 ポンプ、15 吐水制御手段、15a 機構部、15b 切替制御部、16、26、36 上肢揺動手段、17、27、37 支持部、18、28、38 把握部、19、29、39 ストッパ、17a レール、18a 架台、18b レバー、27a 基台、27b 軸、28a 回転レバー、28b 環状部、35 ボールジョイント 37a 基台、37b 空洞部、37c 開口部、38a レバー、38b 球状部、42 ワイヤー、a1 足関節、a2 膝関節、a3 股関節、M 入浴者、m1 足裏、m2 背中

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽と、
前記浴槽の第1の内側面に設けられ、前記浴槽の内部に向けて水流を断続的に噴射する噴出部と、
上肢揺動手段と、
を備え、
前記水流の大きさは、入浴者が、背中を前記第1の内側面に対向する第2の内側面に当接させ、足裏を前記噴出部に対向させたときに、前記入浴者の足関節、膝関節及び股関節を屈曲させることが可能な大きさであり、
前記上肢揺動手段は、
前記浴槽に対して固定された支持部と、
前記支持部に対して揺動自在に連結された把握部と、
を有することを特徴とする浴槽装置。
【請求項2】
前記浴槽の内側面は、前記第1の内側面、前記第2の内側面、及び前記第1の内側面と前記第2の内側面との間に設けられ相互に対向する一対の第3の内側面を含み、
前記支持部及び前記把握部はそれぞれ一対設けられており、
前記支持部は、前記第3の内側面にそれぞれ取り付けられており、各前記把握部は各前記支持部にそれぞれ連結されていることを特徴とする請求項1記載の浴槽装置。
【請求項3】
前記把握部は、少なくとも前記第1の内側面と前記第2の内側面とを結ぶ方向に移動可能であることを特徴とする請求項2記載の浴槽装置。
【請求項4】
前記上肢揺動手段は、さらに、前記把握部を前記支持部に対して固定するロック機構部を有することを特徴とする請求項2または3に記載の浴槽装置。
【請求項5】
前記一対の把握部は、相互に連動することを特徴とする請求項2〜4のいずれか1つに記載の浴槽装置。
【請求項6】
前記支持部は、前記第3の内側面上に敷設されたレールを有し、
前記把握部は、前記レールに沿って移動可能であることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1つに記載の浴槽装置。
【請求項7】
前記支持部は、前記第3の内側面に対して垂直な方向に延びる軸を有し、
前記把握部は、一端が前記軸に回転又は回動自在に軸支された回転レバーを有することを特徴とする請求項3〜5のいずれか1つに記載の浴槽装置。
【請求項8】
前記支持部と前記把握部とは、ボールジョイントによって連結されていることを特徴とする請求項3または4に記載の浴槽装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−72517(P2009−72517A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−246583(P2007−246583)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】