説明

浴槽装置

【課題】入浴者に継続的に運動させることができる浴槽装置を提供する。
【解決手段】浴槽装置1において、浴槽2の足側面2aに一対のノズル3L及び3Rを設ける。また、浴槽2の外部であって、背側面2aと浴室ユニット60の壁パネル62との間の空間内に、水流を生成するポンプ4と、ポンプ4から噴出された水流をノズル3L及び3Rに対して交互に供給する切替部5とを設ける。浴槽2における足側面2aと背側面2bとの間の長さは、入浴者Mが、背中m2を背側面2bに当接させたときに、左右の足裏m1でそれぞれノズル3L及び3Rを覆うことができる長さとする。また、切替部5は、ノズル3L及び3Lとポンプ4との間に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽装置に関し、特に、入浴者に運動させる浴槽装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、社会的に健康志向が高まり、フィットネスやエクササイズなどの運動によって健康管理を行いたいという要求が高まっている。また、入浴中に手軽に運動したいという要望もある。
【0003】
例えば、特許文献1には、浴槽内に踏み込み可能な踏み台を設ける技術が開示されている。踏み台にはバネによって踏み込み負荷が与えられており、入浴者は座位姿勢のまま片足で踏み台を踏み込むことにより、運動することができる。しかしながら、普段から運動習慣の無い人が運動を行うには、相当な意志の力を要する。特に、入浴時はリラックスした精神状態になっているため、意志の力を発揮することは困難である。このため、浴槽内に運動器具を設置しても、運動が長続きしないことが予想される。
【0004】
一方、特許文献2には、内部に足置き部が設けられ、この足置き部に噴流を噴出する吐出口が設けられた循環式浴槽が開示されている。特許文献2には、入浴者が足置き部に足を載せた状態で、吐出口から噴流を噴出させることにより、入浴者の足裏を刺激して、マッサージを施すことができると記載されている。しかしながら、この循環式浴槽は、入浴者が足置き部に足を載せて使用するものであり、入浴者に運動させるものではない。
【0005】
【特許文献1】特開2003−236014号公報
【特許文献2】特開2005−287541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、入浴者に継続的に運動させることができる浴槽装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、浴槽と、前記浴槽の第1の内側面に設けられ、水平方向に配列された一対のノズルと、前記浴槽の外部に設けられ、水流を生成する駆動部と、前記浴槽の外部に設けられ、前記駆動部が生成した水流を前記一対のノズルに対して交互に供給する切替部と、を備え、前記浴槽における前記第1の内側面と前記第1の内側面に対向する第2の内側面との間の長さは、入浴者が、背中を前記第2の内側面に当接させたときに、左右の足裏で前記一対のノズルを覆うことができる長さであり、前記切替部は、前記一対のノズルと前記駆動部との間に配置されていることを特徴とする浴槽装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、入浴者に継続的に運動させることができる浴槽装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
先ず、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る浴槽装置を例示する模式的断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る浴槽装置1は、浴室ユニット60内に設けられている。浴室ユニット60は、防水パン61によって床が構成されており、壁パネル62によって壁が構成されており、天井パネル(図示せず)によって天井が構成された箱形の水密ユニットである。浴槽装置1は、防水パン61上に配置されている。
【0010】
浴槽装置1には、浴槽2が設けられている。浴槽2の形状は例えば略直方体形状であり、長手方向の一端部の内側面は、入浴者Mが入浴姿勢をとったときにその足裏m1が対向する足側面2aとなっており、長手方向の他端部の内側面は、入浴者Mの背中m2が接触する背側面2bとなっている。足側面2aと背側面2bとは、底面2cを挟んで相互に対向している。
【0011】
浴槽2の足側面2aには、左脚用のノズル3L及び右脚用のノズル3R(以下、総称して「ノズル3」ともいう)が設けられている。ノズル3は、浴槽2の内部に向けて水流を噴射するものであり、この水流の方向は足側面2aから背側面2bに向かう方向である。これらの一対のノズル3は水平方向に配列されており、例えば、足側面2aにおいて上下方向に延びる中心線に関して対称となる位置に配置されている。なお、図1においては、図示の便宜上、ノズル3L及び3Rを相互にずらして描いているが、実際にはノズル3L及び3Rは同じ高さに配置されている。後述する他の断面図においても同様である。
【0012】
浴槽2の長手方向の長さ、すなわち、浴槽2における足側面2aと背側面2bとの間の長さは、標準的な体格の入浴者Mが入浴姿勢をとったとき、すなわち、臀部を浴槽2の底面2cに接触させ、背中m2を浴槽2の背側面2bに当接させ、足裏m1を足側面2aに対向させたときに、足裏m1でノズル3を覆うことができる程度の長さである。
【0013】
また、浴槽装置1には、水流を生成する駆動部として、ポンプ4が設けられている。ポンプ4の吸入口4sは浴槽2の内部に連通されている。これにより、ポンプ4は浴槽2内から水を汲み上げ、水流を生成して吐出する。更に、浴槽装置1には、ポンプ4によって生成された水流の流路を切替えて、水流を一対のノズル3に対して交互に供給する切替部5が設けられている。
【0014】
ノズル3、ポンプ4及び切替部5は、浴槽2の外部であって、防水パン61と、浴槽2の足側面2aと、壁パネル62とによって囲まれた空間内に配置されている。そして、浴槽2から見て、ノズル3、切替部5及びポンプ4の順に配列されている。すなわち、切替部5は、一対のノズル3とポンプ4の間に配置されている。
【0015】
ノズル3から噴射する水流の大きさは、入浴者Mが背中m2を背側面2bに当接させ、足裏m1をノズル3に対向させたときに、入浴者Mの足関節、膝関節及び股関節を同時に屈曲させることが可能な大きさであり、例えば、80乃至300リットル/分である。なお、水流の大きさが80リットル/分未満であると、入浴者の足裏m1がノズル3から離れないことがあり、300リットル/分を超えると、浴槽2から水が溢れ出すことがある。好ましい水流の大きさは120乃至270リットル/分であり、より好ましくは150乃至250リットル/分である。なお、この水流の大きさは、特許文献2に示すような循環式浴槽において、マッサージ用に噴出される水流の大きさよりもかなり大きい。
【0016】
次に、本実施形態の動作について説明する。
図2(a)及び(b)は、本実施形態に係る浴槽装置の動作を例示する模式的平面図であり、(a)は左側のノズルから水流を噴出させる場合を示し、(b)は右側のノズルから水流を噴出させる場合を示す。
【0017】
図1に示すように、浴槽2内に水(湯)Wを入れた状態で、入浴者Mが浴槽2内に入り、入浴姿勢をとる。すなわち、入浴者Mは、臀部を浴槽2の底面2cに接触させ、背中m2を浴槽2の背側面2bに当接させ、足裏m1を足側面2aに対向させる。そして、入浴者Mは、左の足裏m1で左のノズル3Lを覆い、右の足裏m1で右のノズル3Rを覆うように、左右の足を配置し、ノズル3から噴出される水流を足裏で捉える初期姿勢をとる。このとき、入浴者Mはリラックスした状態にあり、足関節、膝関節及び股関節は脱力されているものとする。
【0018】
そして、図2(a)及び(b)に示すように、この状態で、ポンプ4及び切替部5を作動させる。これにより、ポンプ4が浴槽2内の水を吸入口4sから汲み上げて水流を生成し、切替部5に対して供給する。そして、切替部5は一定の周期で水路を切替えて、ノズル3L及び3Rに対して交互に水流を供給する。これにより、左右のノズル3から交互に水流が噴射される。
【0019】
ノズル3から水流が噴射されると、この水流は入浴者Mの足裏を押圧する。これにより、入浴者Mの足関節、膝関節及び股関節が同時に屈曲し、足は背側面2bに向かって移動する。一方、ノズル3から水流が噴射されなくなると、足裏を押圧する圧力が消失するため、足関節、膝関節及び股関節が自然に伸び、足は足側面2aに向かって移動する。このとき、入浴者が足裏でノズル3を覆うように足の位置を随意的に調節することにより、足はノズル3の近傍に戻る。従って、ノズル3が水流を断続的に噴射することにより、入浴者の足が浴槽2の長手方向に沿って往復運動する。この往復運動は、歩行時に起こるステッピング運動に近似した運動となる。そして、左右のノズル3が交互に水流を噴射することにより、入浴者の左右の足に逆位相で往復運動させ、入浴者に歩行を模したステッピング運動を行わせることができる。
【0020】
次に、本実施形態の効果について説明する。
上述の如く、本実施形態によれば、ノズル3が水流を断続的に噴射することにより、入浴者Mの足関節、膝関節及び股関節を屈伸させて、入浴者Mに運動させることができる。このとき、左右のノズル3が交互に水流を噴射することにより、入浴者Mに歩行を模したステッピング運動を行わせることができる。また、入浴者Mは、この運動によって姿勢のバランスを崩されるため、無意識に全身の筋肉を働かせて補償動作を行うが、これによっても運動することができる。
【0021】
このように、本実施形態によれば、入浴者Mに運動をさせることができる。この運動は外部から与えられる他力的な他動運動であり、入浴者の意志によって行われる自動運動ではないため、入浴者の意志力に依存する部分が少なく、長続きしやすい。また、この運動は入浴姿勢のまま行うことができるため、入浴者は、リラックスした状態で運動することができる。この結果、運動を継続しやすい。なお、「他動運動」とは、人が自分の筋力ではなく外力を利用して行う運動をいい、本明細書においては、上述の如く姿勢を崩された場合の補償動作も含むものとする。
【0022】
また、本実施形態によれば、浴槽2の長手方向の長さを、上述の如く、入浴者Mが背を背側面2bに当接させたときに足裏でノズル3を覆える程度の長さとしているため、通常の浴室ユニットと比較して、浴槽2と壁パネル62との間の距離を大きくとることができる。これにより、浴槽装置1のノズル3、ポンプ4及び切替部5を、防水パン61、足側面2a及び壁パネル62によって囲まれた空間内に収納することができる。この結果、これらの設備が洗い場等に進出して入浴の邪魔になることがなく、また浴室内の美感を損ねることがない。
【0023】
更に、本実施形態においては、ポンプ4、切替部5及びノズル3を、浴槽2に向かってこの順に配列しているが、この順は水流の経路と一致するため、これらの相互間の配管を、短く且つ直線的にレイアウトすることができる。この結果、ポンプ4からノズル3まで流れる水流の圧力損失を小さくすることができ、よりコンパクトな設備でより大きな水流を得ることができる。すなわち、本実施形態においては、水流によって入浴者の足を動かしているが、そのために必要とされる水流の流量は極めて大きい。また、ステッピング運動をリズミックに行うためには、左右のノズル3から噴射される水流がテンポよく切り替わる必要があり、各ノズル3から噴射される水流が目標の流量に素早く到達する必要がある。本実施形態においては、上述の如く、ポンプ4、切替部5及びノズル3が直線的に配置されているため、圧力損失が少なく、大きな流量を得ることができる。また、目標の流量に素早く到達することができ、噴射を開始してから目標流量に到達するまでの時間を短くできるため、タイムラグが少なくなり、リズミックなステッピング運動を実現できる。
【0024】
更にまた、本実施形態によれば、入浴による温熱効果により、運動効果がより一層向上する。更にまた、水流により入浴者の周囲の温度境界層が常に破壊されるため、入浴者が温まり易く、運動効果が更に向上する。このように、上述の運動を浴槽内で行うことにより、浴槽外で行う場合と比較して、より高い運動効果を得ることができる。
【0025】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
本変形例においては、切替部5とノズル3とが直近に配置されており、ポンプ4だけは少し離れた場所に配置されている。ポンプ4は、例えば浴室ユニット60の外部に設置されている。また、ポンプ4、切替部5及びノズル3は、厳密に直線状には配置されていない。
【0026】
ノズル3が水流の噴射を開始してから目標流量に到達するまでの時間は、ポンプ4、切替部5及びノズル3からなる流路のうち、切替部5からノズル3までの流路の状態に特に大きく依存する。すなわち、ポンプ4が切替部5から少し離れた位置であって、ノズル3から切替部5に延びる直線上から少し外れている位置に配置されている場合であっても、切替部5には十分に高い水圧が供給されるため、少なくとも切替部5からノズル3までの流路が短ければ、切替部5を切替えたときに、ノズル3に対して速やかに水流が供給され、目標の流量に素早く到達させることができる。このため、本変形例においても、左右のノズル3間で噴射を素早く切替えることができる。また、切替部5からノズル3までの流路を直線状とすることにより、より素早く目標の流量に到達させることができ、よりリズミックなステッピング運動を実現できる。
【0027】
なお、ノズルと切替部とは一体的に構成されていてもよい。これにより、切替部からノズルまでの流路を極めて短くすることができるため、圧力損失をより小さくして、よりリズミックな運動を実現できる。この場合、ポンプの配設位置の制約が少なくなるため、ユニットバスなどの比較的小型の浴室ユニットにおいても、本実施形態に係る浴槽装置を設置することが容易になる。
【0028】
次に、本第1の実施形態の第1の具体例について説明する。
図3は、本具体例に係る浴槽装置を例示する模式的断面図である。
図3に示すように、本具体例に係る浴槽装置11においては、前述の第1の実施形態に係る浴槽装置1(図1参照)の構成に加えて、調節器6、操作部7及びスピーカー8が設けられている。調節器6は、入浴者に与える運動負荷を調節するものであり、例えば、リレー回路、タイマー及びシーケンサーによって構成されている。具体的には調節器6は、ポンプ4及び切替部5の駆動時間、並びに切替部5の切替周期を調節する。
【0029】
また、操作部7は、入浴者が操作することにより、調節器6に対して情報及び命令を入力するものである。操作部7は、浴室ユニット60の壁パネル62に取り付けられており、例えば、浴槽2の長手方向に延びるリムに接する壁パネル62、又は浴槽2の足側面2aに接する壁パネル62に設置されており、例えば、入浴姿勢をとった入浴者の手が届く領域に配置されている。更に、スピーカー8は、入浴者が操作部7を操作した結果を確認的に音声で案内すると共に、運動時間の残り時間等を適宜音声案内する。
【0030】
本具体例においては、浴槽2内に水(湯)Wを溜めた状態で、入浴者Mが浴槽2内に入り、入浴姿勢をとる。そして、操作部7を操作することにより、浴槽装置11のスイッチを入れると共に、運動時間及び運動周期を任意に設定する。なお、予め複数の種類の運動モードが設定されており、入浴者が好みの運動モードを選択するようにしてもよい。例えば、入浴者が、運動負荷の高いモードを選択すると、調節器6が比較的短い周期を生成し、切替部5に対して出力する。又は、運動時間及び運動周期は調節器6が自動的に設定してもよい。例えば、湯の設定温度が41℃であるとき、調節器6は、1セットの運動時間を15分間に設定する。
【0031】
このようにして運動時間及び運動周期が設定されると、調節器6がポンプ4を作動させると共に、設定された運動周期の信号を生成し、設定された運動時間の間、切替部5に対して出力する。これにより、ポンプ4が浴槽2内の水を吸入口4sから汲み上げて水流を生成し、切替部5に対して供給する。そして、切替部5は一定の周期で水路を切替えて、左右のノズル3に対して交互に水流を供給する。この結果、左右のノズル3から交互に水流が噴射される。そして、運動時間が満了したときは、タイマーがポンプ4及び切替部5を自動的に停止させてもよく、スピーカー8が音声により入浴者に通知してもよい。
【0032】
このように、本具体例によれば、運動の負荷を入浴者の好みに応じて任意に設定することができる。本具体例における上記以外の構成、動作及び効果は、前述の第1の実施形態と同様である。
【0033】
次に、第1の実施形態の第2の具体例について説明する。
図4は、本具体例に係る浴槽装置を例示する模式的断面図である。
図4に示すように、本具体例に係る浴槽装置12においては、前述の第1の具体例に係る浴槽装置11(図3参照)の構成に加えて、浴槽2の背側面2bに心拍計9が設けられている。心拍計9は、入浴者Mが入浴姿勢をとったときに背中m2が接する領域に埋め込まれており、入浴者Mの心拍数を計測することができる。そして、心拍計9は、計測結果を調節器6及び操作部7に対して出力する。また、本具体例においては、スピーカー8は浴室ユニット60の外部、例えば、この浴室ユニット60が設置された住居における他の部屋に設置されていてもよい。
【0034】
本具体例によれば、心拍計9が入浴者Mの運動中の心拍数をリアルタイムに計測し、この計測結果に基づいて、調節器6が運動周期を調節する。これにより、入浴者の状態に応じて、運動負荷を最適に設定することができる。例えば、心拍数が一定値以上に増加したときには、切替部5の駆動周期を低下させ、これにより運動周期を低下させ、運動負荷を軽減する。又は、ポンプ4若しくは切替部5を停止させることにより、水流の噴射を停止させ、入浴者の運動を中止させる。また、このとき、スピーカー8から信号音を発信し、他の部屋にいる第三者に入浴者の状態を知らせてもよい。
【0035】
このように、本具体例によれば、浴槽2の背側面2bに心拍計9を取り付けることにより、入浴者により快適に安心して運動させることができる。本具体例における上記以外の構成、動作及び効果は、前述の第1の具体例と同様である。
【0036】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図5は、本実施形態に係る浴槽装置を例示する模式的平面図である。
図5に示すように、本実施形態に係る浴槽装置21においては、前述の第1の実施形態に係る浴槽装置1(図1参照)と比較して、ポンプ4及び切替部5がそれぞれ2つ設けられている点が異なっている。そして、各ポンプ4は、相互に異なる一の切替部5に対して水流を供給し、各切替部5は、一対のノズル23の双方に対して水流を供給する。また、各ノズル23は、2つの切替部5から供給された水流を合流させて噴射する集積ノズルである。
【0037】
具体的には、浴槽装置21においては、ポンプ4a及び4b並びに切替部5a及び5bが設けられている。ポンプ4a及び4bは、浴槽2の幅方向(短手方向)に沿って配置されており、切替部5a及び5bも、浴槽2の幅方向に沿って配置されている。そして、配水管により、ポンプ4aは切替部5aに接続されており、切替部5aは左脚用のノズル23L及び右脚用のノズル23Rの双方に接続されている。また、ポンプ4bは切替部5bに接続されており、切替部5bもノズル23L及び23Rの双方に接続されている。ノズル23Lは、切替部5aから供給された水流と切替部5bから供給された水流とを合流させて、浴槽2の内部に向けて噴射する。また、ノズル23Rも、切替部5aから供給された水流と切替部5bから供給された水流とを合流させて、浴槽2の内部に向けて噴射する。
【0038】
また、浴槽装置21においては、2つの切替部5a及び5bの動作を制御する制御部22が設けられている。制御部22は、例えば、シーケンサー、リレー回路及びタイマー等により形成されている。制御部22は、少なくとも切替部5a及び5bに電気的に接続されている。
【0039】
次に、本実施形態の動作について説明する。
本実施形態に係る浴槽装置21は、少なくとも2つの動作モードで動作することが可能である。すなわち、切替部5a及び5bを同時に切替える同期モードと、相互にタイミングをずらして切替える段階モードである。
【0040】
先ず、同期モードについて説明する。
図6(a)乃至(d)は、横軸に時間をとって本実施形態に係る浴槽装置の同期モードの動作を例示するグラフ図であり、(a)の縦軸は一方の切替部の切替状態を表し、(b)の縦軸は他方の切替部の切替状態を表し、(c)の縦軸は右脚用のノズルの噴出量の理論値を表し、(d)の縦軸はこの噴出量の実測値を表す。
なお、図6(a)及び(b)においては、左脚用のノズル23Lに水流を供給している切替状態を「L」で示し、右脚用のノズル23Rに水流を供給している切替状態を「R」で示す。後述する図7(a)及び(b)並びに図10(a)乃至(c)においても同様である。
【0041】
図6に示すように、同期モードにおいては、ポンプ4a及び4bを作動させた状態で、制御部22が切替部5a及び5bの水路を同時に切替える。以下、この動作を詳細に説明する。
先ず、ある時刻tにおいては、切替部5a及び5bの双方が、それぞれポンプ4a及び4bから供給された水流を、左脚用のノズル23Lに対して供給しているものとする。このとき、ポンプ4aから切替部5aに供給された水流及びポンプ4bから切替部5bに供給された水流はいずれもノズル23Lに供給され、ノズル23Lにおいて合流され、噴射される。一方、右脚用のノズル23Rからは水流は噴射されない。
【0042】
そして、時刻tにおいて、切替部5a及び5bの水路を、各ポンプ4とノズル23Rとが連通するように同時に切替える。これにより、時刻tより後の時刻tにおいては、ポンプ4aから切替部5aに供給された水流及びポンプ4bから切替部5bに供給された水流の双方がノズル23Rに供給され、ノズル23Rにおいて合流され、噴射される。
【0043】
その後、時刻tにおいて、切替部5a及び5bの水路を、再び各ポンプ4とノズル23Lとが連通するように同時に切替える。これにより、時刻tより後の時刻tにおいては、ポンプ4aから切替部5aに供給された水流及びポンプ4bから切替部5bに供給された水流の双方がノズル23Lに供給され、合流されて噴射される。
そして、上述の動作を繰り返すことにより、前述の第1の実施形態と同じように、左右のノズル23から交互に水流が噴射される。
【0044】
次に、段階モードについて説明する。
図7(a)乃至(d)は、横軸に時間をとって浴槽装置の段階モードの動作を例示するグラフ図であり、(a)の縦軸は一方の切替部の切替状態を表し、(b)の縦軸は他方の切替部の切替状態を表し、(c)の縦軸は右脚用のノズルの噴出量の理論値を表し、(d)の縦軸はこの噴出量の実測値を表す。
【0045】
図7に示すように、段階モードにおいては、ポンプ4a及び4bを作動させた状態で、制御部22が切替部5a及び5bの水路を相互にタイミングをずらして切替える。以下、この動作を詳細に説明する。先ず、時刻tにおける状態は、上述の同期モードにおける時刻tの状態と同じであるとする。
【0046】
そして、時刻tにおいて、切替部5aの水路を、ポンプ4aとノズル23Rとが連通するように切替える。このとき、切替部5bの水路は切替えない。これにより、切替部5aからはノズル23Rに水流が供給され、切替部5bからはノズル23Lに水流が供給され、各水流の噴出量は、最大噴出量の半分となる。すなわち、時刻tと比較すると、ノズル23Lの噴出量は減少し、ノズル23Rの噴出量は増加する。
【0047】
次に、時刻tから時間Tだけ経過した時刻tにおいて、切替部5bの水路を、ポンプ4bとノズル23Rとが連通するように切替える。このとき、切替部5aの水路は切替えない。これにより、時刻tより後の時刻tにおいて、切替部5a及び5bの双方からノズル23Rに水流が供給され、ノズル23Rの噴出量が最大噴出量に到達する。
【0048】
次に、時刻tにおいて、切替部5aの水路を、ポンプ4aとノズル23Lとが連通するように切替える。このとき、切替部5bの水路は切替えない。これにより、切替部5aからはノズル23Lに水流が供給され、切替部5bからはノズル23Rに水流が供給され、各水流の噴出量は、最大噴出量の半分となる。すなわち、時刻tと比較すると、ノズル23Lの噴出量は増加し、ノズル23Rの噴出量は減少する。
【0049】
次に、時刻tから時間Tだけ経過した時刻tにおいて、切替部5bの水路を、ポンプ4bとノズル23Lとが連通するように切替える。このとき、切替部5aの水路は切替えない。これにより、切替部5a及び5bの双方からノズル23Lに水流が供給され、ノズル23Lの噴出量が最大噴出量に到達する。一方、ノズル23Rの噴出量は0になる。すなわち、時刻tの状態に戻る。
【0050】
このように、切替部5aと切替部5bとの間で、各ポンプ4から供給された水流を各ノズル23に供給するタイミングを相互に異ならせることにより、各ノズル23の噴射量を段階的に変化させることができる。そして、実際には、各ノズルの噴射量は連続的に変化するため、図7(d)に示すように、一定の時間幅をもって連続的に増減する水圧を入浴者の足裏に印加することができる。この結果、入浴者の足裏に印加する水圧を、なだらかに変化させることができる。
【0051】
次に、本実施形態の効果について説明する。
本実施形態によれば、ポンプを2つ設けることにより、各ポンプのサイズを小さくすることができ、浴槽2の足側面2aと壁パネル62との間の距離を短縮することができる。これにより、防水パン61、足側面2a及び壁パネル62により囲まれ、ポンプ4等を収納する空間を小さくすることができ、浴槽ユニット内の限られた空間を有効に利用することができる。
【0052】
また、切替部5を2つ設け、制御部22を設けることにより、少なくとも2つの動作モードを選択することができる。このとき、2つの切替部5を同時に切替える同期モードとすれば、1つのポンプのみを設けた場合と同様な水流変化を実現することができる。
【0053】
以下、本実施形態において、動作モードを段階モードとしたときの効果について、詳細に説明する。
図8(a)は、人が歩行を行う際に、踵が着地してから爪先で地面を蹴り出すまでの脚部の動作を例示する図であり、(b)は、踵が着地した瞬間、身体の重心が足の直上に位した瞬間、及び爪先で地面を蹴り出す瞬間に足裏にかかる荷重を例示する図であり、(c)は、横軸に時間をとり、縦軸に垂直方向の踏込み力をとって、歩行に際して足裏に対して垂直方向に印加される踏込み力の変化を例示するグラフ図である。
【0054】
図8(a)に示すように、歩行者の脚71が地面72に踵から着地して、足裏の全面が地面72に接触した後、爪先から蹴り出す動作の過程においては、図8(b)に示すように、脚71に加わる荷重Fは、その方向と大きさが少しずつ変化する。この結果、図8(c)に示すように、荷重Fの垂直成分の経時プロファイルは、2つの極大値を持つ略台形の形状となる。すなわち、足裏にかかる荷重は、踵が着地し始めてから徐々に増加して第1の極大値をとり、その後一旦減少してから爪先で蹴り出すときに再び増加して第2の極大値をとり、その後徐々に減少する。なお、図8(c)の横軸に表す時間は、踵が着地してから爪先で蹴り出すまでの1サイクルを基準とした相対値である。
【0055】
本実施形態においては、動作モードを段階モードとすることにより、図7(d)に示すように、入浴者の足裏に印加する水圧をなだらかに変化させることができる。これにより、図8(c)に示す台形状の荷重プロファイルに近いプロファイルを実現することができる。この結果、入浴者に、歩行時に足裏にかかる荷重の変化に近い水圧の変化を加えることができ、より一層歩行に近い感覚を与えながら、運動させることができる。本実施形態における上記以外の構成、動作及び効果は、前述の第1の実施形態と同様である。
【0056】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
図9は、本実施形態に係る浴槽装置を例示する模式的平面図である。
図9に示すように、本実施形態に係る浴槽装置31においては、ポンプ4及び切替部5がそれぞれ3つ設けられている。そして、一の切替部5には一のポンプ4から水流が供給され、この水流を1対のノズル33の双方に対して供給する。各ノズル33は、3つの切替部5から供給された水流を合流させて噴射する集積ノズルである。
【0057】
具体的には、浴槽装置21においては、ポンプ4a〜4c及び切替部5a〜5cが設けられている。ポンプ4a〜4cは浴槽2の幅方向に沿って配置されており、切替部5a〜5cも浴槽2の幅方向に沿って配置されている。そして、配水管により、ポンプ4aは切替部5aに接続されており、ポンプ4bは切替部5bに接続されており、ポンプ4cは切替部5cに接続されている。また、切替部5a〜5cはそれぞれ、ノズル33L及び33Rの双方に接続されている。そして、ノズル33Lは、切替部5a〜5cからそれぞれ供給された水流を合流させて噴射する。また、ノズル33Rも、切替部5a〜5cからそれぞれ供給された水流を合流させて噴射する。
【0058】
更にまた、浴槽装置31においては、3つの切替部5a〜5cの動作を制御する制御部32が設けられている。制御部32は、例えば、シーケンサー、リレー回路及びタイマー等により形成されている。制御部32は、少なくとも切替部5a〜5cに電気的に接続されている。
【0059】
次に、本実施形態の動作について説明する。
図10(a)乃至(e)は、横軸に時間をとって浴槽装置の段階モードの動作を例示するグラフ図であり、(a)の縦軸は第1の切替部の切替状態を表し、(b)の縦軸は第2の切替部の切替状態を表し、(c)の縦軸は第3の切替部の切替状態を表し、(d)の縦軸は右脚用のノズルの噴出量の理論値を表し、(e)の縦軸はこの噴出量の実測値を表す。
【0060】
図10に示すように、浴槽装置31において、ポンプ4a〜4cを作動させた状態で、制御部32が切替部5a〜5cの水路を相互にタイミングをずらして切替える。例えば、図10(a)乃至(c)に示すように、切替部5aの水路をノズル33Lに接続した後、切替部5bの水路をノズル33Lに接続し、その後、切替部5cの水路をノズル33Lに接続する。そして、一定時間経過後、切替部5aの水路をノズル33Rに接続し、その後、切替部5bの水路をノズル33Rに接続し、次いで、切替部5cの水路をノズル33Rに接続する。これにより、前述の第2の実施形態と同様な動作により、各ノズル33に供給される水量が段階的に増減する。
【0061】
次に、本実施形態の効果について説明する。
本実施形態によれば、ポンプを3つ設けることにより、前述の第2の実施形態と比較して、各ポンプのサイズをより小さくすることができ、ポンプ4等を収納する空間をより小さくすることができる。これにより、浴槽ユニット内の限られた空間をより有効に利用することができる。
【0062】
また、3つの切替部5a〜5c間において、相互にタイミングをずらして水路を切替えることにより、前述の第2の実施形態と比較して、各ノズルから噴出される水流の噴出量をよりなだらかに変化させることができ、入浴者の足裏に、より歩行動作に近い圧力変化を与えることができる。なお、3つの切替部5を同時に切替えれば、前述の第1の実施形態と同様な水流変化を実現することが可能である。本実施形態における上記以外の構成、動作及び効果は、前述の第2の実施形態と同様である。なお、ポンプ4及び切替部5は、それぞれ4つ以上設けられていてもよい。また、ポンプ4の数と切替部5の数とは、必ずしも等しくなくてもよい。例えば、ポンプ4を1つだけ設け、切替部5を複数設けても、上述の如く、複数の動作モードを選択することができる。一方、ポンプ4を複数設け、切替部5を1つだけ設けても、省スペース化を図る効果を得ることができる。
【0063】
以上、実施形態及びその具体例を参照しつつ、本発明の特徴を説明したが、本発明はこれらの実施形態及び具体例に限定されるものではない。すなわち、前述の各実施形態及び各具体例を適宜組み合わせたもの、並びに各実施形態及び各具体例のいずれかに係る浴槽装置に対して、当業者が構成要素の追加、省略又は設計変更を加えたものであっても、本発明の要旨を備えたものであれば、本発明の範囲に包含される。例えば、前述の各実施形態及び具体例においては、一対のノズルが設けられている例を示したが、本発明はこれに限定されず、ノズルは複数対設けられていてもよい。例えば、各足の踵と爪先にそれぞれ水流を噴射してもよい。また、前述の各実施形態及び具体例においては、浴槽の形状が略直方体形状である例を示したが、本発明はこれに限定されず、入浴者が、ノズルを足裏で覆い、ノズルが設けられた内側面に対向する内側面に背中を当接させて、入浴姿勢をとれるものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る浴槽装置を例示する模式的断面図である。
【図2】(a)及び(b)は、第1の実施形態に係る浴槽装置の動作を例示する模式的平面図であり、(a)は左側のノズルから水流を噴出させる場合を示し、(b)は右側のノズルから水流を噴出させる場合を示す。
【図3】第1の実施形態の第1の具体例に係る浴槽装置を例示する模式的断面図である。
【図4】第1の実施形態の第2の具体例に係る浴槽装置を例示する模式的断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る浴槽装置を例示する模式的平面図である。
【図6】(a)乃至(d)は、横軸に時間をとって本実施形態に係る浴槽装置の同期モードの動作を例示するグラフ図であり、(a)の縦軸は一方の切替部の切替状態を表し、(b)の縦軸は他方の切替部の切替状態を表し、(c)の縦軸は右脚用のノズルの噴出量の理論値を表し、(d)の縦軸はこの噴出量の実測値を表す。
【図7】(a)乃至(d)は、横軸に時間をとって浴槽装置の段階モードの動作を例示するグラフ図であり、(a)の縦軸は一方の切替部の切替状態を表し、(b)の縦軸は他方の切替部の切替状態を表し、(c)の縦軸は右脚用のノズルの噴出量の理論値を表し、(d)の縦軸はこの噴出量の実測値を表す。
【図8】(a)は、人が歩行を行う際に、踵が着地してから爪先で地面を蹴り出すまでの脚部の動作を例示する図であり、(b)は、踵が着地した瞬間、身体の重心が足の直上に位した瞬間、及び爪先で地面を蹴り出す瞬間に足裏にかかる荷重を例示する図であり、(c)は、横軸に時間をとり、縦軸に垂直方向の踏込み力をとって、歩行に際して足裏に対して垂直方向に印加される踏込み力の変化を例示するグラフ図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る浴槽装置を例示する模式的平面図である。
【図10】(a)乃至(e)は、横軸に時間をとって浴槽装置の段階モードの動作を例示するグラフ図であり、(a)の縦軸は第1の切替部の切替状態を表し、(b)の縦軸は第2の切替部の切替状態を表し、(c)の縦軸は第3の切替部の切替状態を表し、(d)の縦軸は右脚用のノズルの噴出量の理論値を表し、(e)の縦軸はこの噴出量の実測値を表す。
【符号の説明】
【0065】
1、11、12、21、31 浴槽装置、2 浴槽、2a 足側面、2b 背側面、2c 底面、3、3L、3R、23、23L、23R ノズル、4、4a、4b、4c ポンプ、4s 吸入口、5、5a、5b、5c 切替部、6 調節器、7 操作部、8 スピーカー、9 心拍計、22、32 制御部、60 浴室ユニット、61 防水パン、62 壁パネル、F 荷重、M 入浴者、m1 足裏、m2 背中、W 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽と、
前記浴槽の第1の内側面に設けられ、水平方向に配列された一対のノズルと、
前記浴槽の外部に設けられ、水流を生成する駆動部と、
前記浴槽の外部に設けられ、前記駆動部が生成した水流を前記一対のノズルに対して交互に供給する切替部と、
を備え、
前記浴槽における前記第1の内側面と前記第1の内側面に対向する第2の内側面との間の長さは、入浴者が、背中を前記第2の内側面に当接させたときに、左右の足裏で前記一対のノズルを覆うことができる長さであり、
前記切替部は、前記一対のノズルと前記駆動部との間に配置されていることを特徴とする浴槽装置。
【請求項2】
前記駆動部は、複数設けられていることを特徴とする請求項1記載の浴槽装置。
【請求項3】
前記切替部は、複数設けられており、
各前記切替部は、前記一対のノズルの双方に対して水流を供給し、
各前記ノズルは、前記複数の切替部から供給された水流を合流させて噴射することを特徴とする請求項1または2に記載の浴槽装置。
【請求項4】
前記複数の切替部間で、水流を前記ノズルに供給するタイミングを相互に異ならせることを特徴とする請求項3記載の浴槽装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−82436(P2009−82436A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−255965(P2007−255965)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】