説明

浴槽装置

【課題】入浴者に継続的に運動させることができる浴槽装置を提供する。
【解決手段】浴槽と、前記浴槽に設けられ、前記浴槽に入浴している入浴者の身体に向けて噴流を吐出する吐水部と、前記噴流の状態を制御し、前記噴流の状態を、流量がゼロであるまたは相対的に流量の小さい第1の噴流状態と、相対的に流量の大きい第2の噴流状態と、に設定可能であり、且つ、前記第1の噴流状態と前記第2の噴流状態との間の移行時において前記入浴者の身体を動かせる強さの噴流を前記吐水部から間欠的に吐出させるように設定可能な制御部と、少なくとも前記吐水部の運転に関する情報を取得する情報取得部と、前記情報取得部が取得した情報を用いて前記入浴者の運動に関する情報を導出する導出部と、前記導出部が導出した情報を表示する表示部と、を備えたことを特徴とする浴槽装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽装置に関し、より詳細には、入浴者に運動させる浴槽装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、社会的に健康志向が高まり、フィットネスやエクササイズなどの運動によって健康管理を行いたいという要求が高まっている。また、入浴中に手軽に運動したいという要望もある。
【0003】
例えば、特許文献1には、浴槽と、前記浴槽の長手方向一端部の内側面において前記浴槽に対して揺動自在に設けられた揺動上体支持部、前記浴槽の底面において前記浴槽に対して揺動自在に設けられた揺動腰支持部、及び前記浴槽の長手方向他端部の内側面において前記浴槽に対して揺動自在に設けられた揺動足支持部からなる群から選択された1以上の支持部と、前記浴槽の内部に水流を発生させる水流発生装置と、を備えたことを特徴とする浴槽装置が開示されている。この技術では、入浴者は例えば上体、腰及び足をそれぞれ揺動上体支持部、揺動腰支持部及び揺動足支持部に預けているため、元々姿勢が不安定であり、入浴者はバランスをとりながら姿勢を維持する補償動作を行うこととなる。この補償動作により、入浴者に運動を行わせている。そして、かかる状態で入浴者に水流を当てて入浴者の姿勢がより不安定となる状態を作り出して、入浴者により機敏且つ強力に補償動作を行わせることにより、効果的に入浴者に運動を行わせることとしている。
【0004】
ここで、入浴者に自分の運動量などの情報を客観的に把握させることができれば、入浴者は計画的に運動を行うことができ、また健康管理をより適切に行うことができる。また、入浴者が受けている負荷に基づいて水流の吐出態様などを調節することができれば、入浴者はより快適に運動を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−200109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、入浴者に継続的に運動させることができる浴槽装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、浴槽と、前記浴槽に設けられ、前記浴槽に入浴している入浴者の身体に向けて噴流を吐出する吐水部と、前記噴流の状態を制御し、前記噴流の状態を、流量がゼロであるまたは相対的に流量の小さい第1の噴流状態と、相対的に流量の大きい第2の噴流状態と、に設定可能であり、且つ、前記第1の噴流状態と前記第2の噴流状態との間の移行時において前記入浴者の身体を動かせる強さの噴流を前記吐水部から間欠的に吐出させるように設定可能な制御部と、少なくとも前記吐水部の運転に関する情報を取得する情報取得部と、前記情報取得部が取得した情報を用いて前記入浴者の運動に関する情報を導出する導出部と、前記導出部が導出した情報を表示する表示部と、を備えたことを特徴とする浴槽装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、入浴者に継続的に運動させることができる浴槽装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る浴槽装置を例示する模式図である。
【図2】浴槽装置1の他の構成を例示する模式図である。
【図3】浴槽装置1の動作を例示する模式平面図である。
【図4】浴槽装置1の動作を例示する模式側面図である。
【図5】時間に対するノズルからの吐水流量の具体例を例示するグラフ図である。
【図6】浴槽装置1の動作を例示するブロック図である。
【図7】情報取得部8が取得する情報及び運動情報導出部6の動作を例示するブロック図である。
【図8】運動情報導出部6の動作を例示するブロック図である。
【図9】浴槽装置1の他の構成を例示するブロック図である。
【図10】浴槽装置1のさらに別の構成を例示するブロック図である。
【図11】表示部9の構成を例示する模式正面図である。
【図12】表示部9の他の構成を例示する模式正面図である。
【図13】使用者Mによる浴槽装置1の操作手順を例示する流れ図である。
【図14】浴槽装置1の他の構成を例示する模式断面図である。
【図15】心拍数と運動強度との関係を例示するグラフ図である。
【図16】運動時間及び湯温と心拍数との関係を例示するグラフ図である。
【図17】入浴ウォーキング実施時間と運動負荷との関係を例示するグラフ図である。
【図18】湯温と運動負荷の最適値(目標値)Bまでの到達時間との関係を例示するグラフ図である。
【図19】通常のウォーキング及び入浴ウォーキングにおける運動時間と呼吸商との関係を例示するグラフ図である。
【図20】通常のウォーキング、通常の入浴、及び入浴ウォーキングにおける運動時間と心拍数及び血圧との関係を例示するグラフ図である。
【図21】入浴ウォーキングを実施したときの筋群の使用部位を例示する表及び模式図である。
【図22】噴流状態の態様を例示する模式グラフ図である。
【図23】浴槽装置1の他の構成を例示する模式断面図である。
【図24】浴槽装置1の他の構成を例示する模式断面図である。
【図25】浴槽装置1の他の構成を例示する模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1の発明は、浴槽と、前記浴槽に設けられ、前記浴槽に入浴している入浴者の身体に向けて噴流を吐出する吐水部と、前記噴流の状態を制御し、前記噴流の状態を、流量がゼロであるまたは相対的に流量の小さい第1の噴流状態と、相対的に流量の大きい第2の噴流状態と、に設定可能であり、且つ、前記第1の噴流状態と前記第2の噴流状態との間の移行時において前記入浴者の身体を動かせる強さの噴流を前記吐水部から間欠的に吐出させるように設定可能な制御部と、少なくとも前記吐水部の運転に関する情報を取得する情報取得部と、前記情報取得部が取得した情報を用いて前記入浴者の運動に関する情報を導出する導出部と、前記導出部が導出した情報を表示する表示部と、を備えたことを特徴とする浴槽装置である。
この浴槽装置によれば、入浴者に継続的に運動させることができるとともに、入浴者に自分の運動量などの情報を客観的に把握させることができる浴槽装置が提供される。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、前記情報取得部は、前記入浴者が情報を入力する入力部を有することを特徴とする浴槽装置である。
この浴槽装置によれば、入浴者が入力した情報を運動量の算出などに反映させることができ、導出情報の精度が向上する。
【0012】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記制御部は、前記情報取得部が取得した情報に基づいて前記噴流の状態を制御することを特徴とする浴槽装置である。
この浴槽装置によれば、入浴者が入力した情報などに応じて、入浴者への運動負荷を適切に調節することができる。
【0013】
第4の発明は、第1〜第3のいずれか1つの発明において、前記吐水部の運転に関する情報は、前記噴流の流量、前記第1または第2の噴流状態の回数、前記噴流の状態の変化の周期、及び前記吐水部が前記噴流を吐出する時間の少なくともいずれかに関する情報を含むことを特徴とする浴槽装置である。
この浴槽装置によれば、導出部は噴流に関する情報を用いて運動情報を適切に導出することができる。
【0014】
第5の発明は、第1〜第4のいずれか1つの発明において、前記情報取得部は、前記浴槽内の水の温度に関する情報をさらに取得することを特徴とする浴槽装置である。
この浴槽装置によれば、導出部は水温に関する情報を用いて運動情報を適切に導出することができる。
【0015】
第6の発明は、第1〜第5のいずれか1つの発明において、前記情報取得部は、前記浴槽が設置された空間の温度及び前記浴槽内の水の量の少なくともいずれかに関する情報をさらに取得することを特徴とする浴槽装置である。
この浴槽装置によれば、導出部は入浴者の環境に関する情報を用いて運動情報を適切に導出することができる。
【0016】
第7の発明は、第1〜第6のいずれか1つの発明において、前記情報取得部は、前記入浴者の年齡、性別、身長、及び体重の少なくともいずれかに関する情報をさらに取得することを特徴とする浴槽装置である。
この浴槽装置によれば、導出部は入浴者に関する情報を用いて運動情報を適切に導出することができる。
【0017】
第8の発明は、第1〜第7のいずれか1つの発明において、前記情報取得部は、前記入浴者の血圧、心拍数、脈拍数、及び体温の少なくともいずれかに関する情報をさらに取得することを特徴とする浴槽装置である。
この浴槽装置によれば、導出部は入浴者の生体情報を用いて運動情報を適切に導出することができる。
【0018】
第9の発明は、第2〜第8のいずれか1つの発明において、前記導出部は、前記吐水部が運転する前に前記入浴者が入力した情報のみを用いて前記入浴者の運動に関する情報を導出することを特徴とする浴槽装置である。
この浴槽装置によれば、運動情報の導出過程を簡素化することができる。
【0019】
第10の発明は、第1〜第9のいずれか1つの発明において、前記導出部は、前記噴流の流量及び前記噴流の状態の変化の周期を導出することを特徴とする浴槽装置である。
この浴槽装置によれば、入浴者は吐水部の運動状況を把握することができ、適切に健康管理を行うことができる。
【0020】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施形態に係る浴槽装置を例示する模式図である。図1(a)及び(b)は、それぞれ本実施形態に係る浴槽装置1を例示する模式断面図及び模式平面図である。
図2は、浴槽装置1の他の構成を例示する模式図である。図2(a)及び(b)は、それぞれ浴槽2及びその周辺を例示する模式断面図及び模式平面図である。
【0021】
図1に表したように、本実施形態に係る浴槽装置1は、浴槽2と、浴槽2に設けられ、浴槽2に入浴している使用者(入浴者)Mの身体に向けて噴流を吐出する吐水部(ノズル)3と、ノズル3からの噴流の状態を制御する制御部5と、を備える。制御部5は、噴流の状態を、相対的に流量の小さい第1の噴流状態と、相対的に流量の大きい第2の噴流状態と、に設定可能であり、且つ、第1の噴流状態と第2の噴流状態との間の移行時において使用者Mの身体を動かせる強さの噴流をノズル3から間欠的に吐出させるように設定可能である。これにより、使用者Mは運動を行うことができる。
【0022】
また、浴槽装置1は、ノズル3の運転に関する情報などを取得する情報取得部8(入力部10など)と、情報取得部8が取得した情報を用いて使用者Mの運動に関する情報を導出する運動情報導出部6と、表示部9と、を備える。
【0023】
情報取得部8は、使用者Mが情報を入力する入力部10を有することができ、また、図示しないが浴槽2内の水の温度を検知する温度センサや使用者Mの心拍数を検知する心拍数センサなどを有してもよい。また、使用者Mの体温を検知するサーモパイルを設けてもよい。なお、センサについては、演算部6が入力部10からの情報のみを用いて情報を導出する構成にする場合は、このようなセンサを設ける必要はない。
【0024】
運動情報導出部6は、例えば使用者Mの運動量やノズル3の駆動態様などを算出したり決定したりすることができる。これにより、後述するように、入浴者に自分の運動量などの情報を客観的に把握させることができる浴槽装置が提供され、また、入浴者の運動量などの情報に基づいて駆動態様を調節することができる浴槽装置が提供される。
表示部9は、運動情報導出部6が導出した情報や、情報取得部8が取得した情報などを表示することができる。
【0025】
以下、各構成要素について詳細に説明する。
図1に表したように、浴槽装置1は、浴室ユニット60内に設けられている。浴室ユニット60は、防水パン61によって床が構成されており、壁パネル62によって壁が構成されており、天井パネル(図示せず)によって天井が構成された箱形の水密ユニットである。浴槽装置1は、防水パン61上に配置されている。
【0026】
浴槽装置1には、浴槽2が設けられている。浴槽2の形状は例えば略直方体形状であり、この場合浴槽2は、背もたれ可能な背側面(第1の壁面)2aと、背側面2aに対向する足側面(第2の壁面)2bと、背側面2aの左側から足側面2bの右側にかけて延在する右側面(第3の壁面)2dと、背側面2aの右側から足側面2bの左側にかけて延在する左側面(第4の壁面)2eと、底面2cと、を有する。使用者Mは、背側面2aに背を向け足側面2bに足を向けて浴槽2内に入浴することになる。
【0027】
(吐水部及び駆動部)
図1に表したように、浴槽2には、使用者Mの身体に向けて噴流を吐出するノズル(吐水部)3が設けられている。例えば、図1に表したように、足側面2bには、ノズル31R、31Lを設けることができる。ノズル31R及び31Lは、使用者Mが足側面2bに足裏を向けて入浴している場合において、それぞれ使用者Mの右足及び左足の足裏m6に向けて噴流を吐出する。これにより、使用者Mはウォーキング運動のような運動などを行うことができる。
【0028】
また、図2に表したように、ノズル3は他の箇所に設けてもよい。例えば、右側面2dには、使用者Mの右足の下腿部m5に向けて噴流を吐出するノズル32Rを設けることができ、左側面2eには、使用者Mの左足の下腿部m5に向けて噴流を吐出するノズル32Lを設けることができる。
【0029】
また、底面2cには、使用者Mの右足及び左足の大腿部m4に向けてそれぞれ噴流を吐出するノズル33R及び33Lを設けることができる。
また、背側面2aには、使用者Mの背中m2の右方及び左方に向けてそれぞれ噴流を吐出するノズル34R及び34Lを設けることができる。
【0030】
また、背側面2aと右側面2dとの境界部2fには、使用者Mの腰部m7の右方に向けて噴流を吐出するノズル35Rを設けることができ、背側面2aと左側面2eとの境界部2gには、使用者Mの腰部m7の左方に向けて噴流を吐出するノズル35Lを設けることができる。
【0031】
このように様々な場所にノズル3を設けることにより、使用者Mは体幹部m1や上肢m8から脚部m3に至るまでの広い範囲の部位において多様な運動を行うことができる。例えば、前述した入浴ウォーキング運動の他、脚部m3や体幹部m1の屈伸運動、下腿部m5のストレッチ運動、体幹部m1の旋回運動、上肢m8の屈曲運動、などを行うことができる。これにより、使用者Mは身体の部位をバランスよく運動させることができる。
【0032】
以下、主として図1に表したノズル31R、31Lから噴流が吐出される場合を例に取り上げて説明する。なお、以下において、ノズル31R及び31Lをまとめて「ノズル31」と呼ぶことがある。ノズル32R及び32L、ノズル33R及び33Lなどについても同様に「ノズル32」、「ノズル33」などと呼ぶことがある。
【0033】
一対のノズル31R、31Lは、水平方向に並列して配列されており、例えば、右側面2d及び左側面2eから等距離にある中心線T(図1(b)参照)に関して対称となる位置に配置されている。なお、図1(a)においては、図示の便宜上、ノズル31R及び31Lを相互にずらして描いているが、実際にはノズル31R及び31Lは同じ高さに配置されている。
【0034】
浴槽2の長手方向の長さ、すなわち、背側面2aから足側面2bまでの長さは、標準的な体格の使用者Mが入浴姿勢をとったとき、すなわち、臀部を底面2cに接触させ、背中m2を背側面2aに接触させ、足裏m6を足側面2bに対向させたときに、足裏m6でノズル31を覆うことができる程度の長さである。
【0035】
また、浴槽装置1には、噴流を生成する駆動部4(例えば、ポンプ)が設けられている。以下、駆動部4がポンプである場合を例に取り上げて説明する。このため、駆動部4を「ポンプ4」と呼ぶことがある。ポンプ4は、ノズル3に接続しており、右足用のノズル31Rに水を吐出するポンプ4Rと、左足用のノズル31Lに水を吐出するポンプ4Lと、を有する。つまり、ポンプ4Rはノズル31Rに接続しており、ポンプ4Lはノズル31Lに接続している。ポンプ4の吸入口7は、浴槽2の内部に連通している。これにより、ポンプ4は浴槽2内から水を汲み上げ、噴流を生成して吐出する。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加熱された温水や湯も含むものとする。また、本願明細書における「噴流」は、水の噴流のみならず、必要に応じ、空気を含んだ気泡水の噴流としてもよい。
【0036】
ポンプ4は、図示した2つのポンプ4R及び4Lを必ずしも有していなくともよく、1つのポンプであってもよい。この場合には、ポンプ4によって生成された噴流の流路を切り替えて、噴流をノズル31R及び31Lに対して交互に供給する切替部が、ノズル31とポンプ4との間に設けられる。これによれば、ポンプ4のサイズを小さくすることができ、足側面2bと壁パネル62との間の距離を短縮することができる。これにより、防水パン61、足側面2b、及び壁パネル62により囲まれ、ポンプ4等を収納する空間を小さくすることができ、浴槽ユニット内の限られた空間を有効に利用することができる。
【0037】
図1に表した浴槽装置1によれば、ポンプ4は、ノズル31R及び31Lにそれぞれ接続したポンプ4R及び4Lを有するため、ノズル31R及び31Lからそれぞれ独立した態様で噴流を吐出することができる。例えば、ノズル31R及び31Lからは、異なる吐水流量や吐水時間の噴流を吐出できる。
【0038】
また、図2に表したようにノズル32などがさらに設けられている場合には、ノズル32などにそれぞれ接続するポンプ4を別個に設けてもよく、あるいはノズル31、ノズル32等の全部または一部が1つのポンプ4を共有する構成にしてもよい。後者の場合は、ポンプ4によって生成された噴流の流路を切り替えて、噴流をノズル31やノズル32などに対して交互に供給する切替部を設けることができる。なお、図2では、簡略化のためノズル31に接続するポンプ4のみを描いたが、他のノズルが設けられている場合には、当該ノズルには同様にポンプ4が接続している。
【0039】
(制御部)
図1に表したように、浴槽装置1には、ポンプ4の動作を制御する制御部5が設けられている。制御部5は、ポンプ4に電気的に接続し、ポンプ4の動作を制御することによりノズル3からの噴流の状態を制御できる。そして、制御部5は、ノズル3からの噴流の状態を、流量がゼロであるまたは相対的に流量の小さい第1の噴流状態と、相対的に流量の大きい第2の噴流状態と、に設定できる。そして、第1の噴流状態と第2の噴流状態との間の移行時において、噴流の作用により使用者Mの身体が動くようにすることができる。すなわち、制御部5は、ポンプ4を制御して、第1の噴流状態と第2の噴流状態との間の移行時において使用者Mの身体を動かせる強さの噴流をノズル3から間欠的に吐出させることができる。
【0040】
例えば、使用者Mの身体の噴流が当たる部分は、第1の噴流状態では相対的に噴流の進行方向とは逆の側に存在し、第2の噴流状態では相対的に噴流の進行方向の側に存在するようにすることができる。図1に表したようにノズル3が足裏m6に向けて噴流を吐出するような構成にした場合は、ノズル31からの噴流の状態を、第1の噴流状態において使用者Mの足を屈曲させず、第2の噴流状態において使用者Mの足を屈曲させるように設定できる。すなわち、制御部5は、ポンプ4を制御して使用者Mの脚部m3を屈曲させる強さの噴流をノズル3から間欠的に吐出させることができる。これにより、使用者Mは、入浴ウォーキング運動をすることができる。
【0041】
第1の噴流状態のときのノズル3からの吐水流量Q1は、例えば約30リットル/分程度とすることができる。一方、第2の噴流状態のときのノズル3からの吐水流量Q2は、例えば約120〜130リットル/分程度とすることができる。このように、第2の噴流状態のときの吐水流量Q2は、マッサージ用として噴出される噴流の吐水流量よりもかなり大きい。そのため、第2の噴流状態のときのノズル3からの噴流は、噴流が当たる足裏m6などを浴槽2の中心側に押し出すことができる。これにより、使用者Mは足関節、膝関節、股関節等を屈曲させたり、体幹部(胴体)m1を旋回させたりすることができる。
【0042】
なお、前述したように、第1の噴流状態のときの吐水流量Q1は、例えば約30リットル/分程度とすることができる。すなわち、0(ゼロ)リットル/分でないようにすることができる。この場合、制御部5がノズル3からの噴流を第1の噴流状態から第2の噴流状態に切り替えた場合でも、ポンプ4に対して過負荷がかかるおそれは少ない。さらに、第1の噴流状態から第2の噴流状態に切り替わる時間、すなわち吐水流量Q1から吐水流量Q2の噴流が吐水されるまでの時間を短縮することができる。
【0043】
また、第1の噴流状態のときの吐水流量Q1は、0(ゼロ)リットル/分としてもよい。この場合、第1の噴流状態を実現するノズル3に接続している駆動部4は駆動させる必要がないため、消費電力の低減が図られる。特に、第1の噴流状態の持続時間が長くなるように設定する場合は、吐水流量Q1をゼロにすることにより節電効果を有効に得ることができる。
【0044】
以下、制御部5の制御態様について、入浴ウォーキング運動を例に取り上げ、図3〜図5を参照しつつ説明する。
図3は、浴槽装置1の動作を例示する模式平面図である。図3(a)は、使用者Mの右足が屈曲するときを表しており、図3(b)は、使用者Mの右足が伸展するときを表している。
図4は、浴槽装置1の動作を例示する模式側面図である。図4(a)は、使用者Mの右足が屈曲するときを表しており、図4(b)は、使用者Mの足の保持期を表しており、図4(c)は、使用者Mの右足が伸展するときを表している。
【0045】
図3及び図4に表したように、制御部5は、ノズル31Rから吐出される噴流の状態を、第1の噴流状態と、第2の噴流状態と、に交互に設定するとともに、ノズル31Lから吐出される噴流の状態を、第1の噴流状態と、第2の噴流状態と、に交互に設定する。また、制御部5は、ノズル31R及びノズル31Lからの噴流状態が逆位相となるように制御する。すなわち、ノズル31Lから吐出される噴流の状態は、ノズル31Rから吐出される噴流の状態が第1の噴流状態であるときの略全期間において第2の噴流状態となり、ノズル31Rから吐出される噴流の状態が第2の噴流状態であるときの略全期間において第1の噴流状態となる。以下、浴槽装置1の動作及び使用者Mの状態について詳細に説明する。
【0046】
まず、浴槽2内に水(湯)Wを入れた状態で、使用者Mが浴槽2内に入り、入浴姿勢をとる(図1参照)。すなわち、使用者Mは、臀部を底面2cに接触させ、背中m2を背側面2aに接触させ、足裏m6を足側面2bに対向させる。そして、使用者Mは、右の足裏m6で右のノズル31Rを覆い、左の足裏m6で左のノズル31Lを覆うように左右の足を配置し、ノズル31から噴出される噴流を足裏m6で捉える初期姿勢をとる。このとき、使用者Mはリラックスした状態にあり、足関節、膝関節、及び股関節は脱力しているものとする。
【0047】
この状態から、ポンプ4を作動させる。これにより、ポンプ4は、浴槽2内の水を吸入口7から汲み上げて噴流を生成し、ノズル31に対して供給する。このとき、ノズル31R及び31Lからそれぞれ吐出される噴流の時間に対する吐水流量は、例えば図5に表した如くである。
【0048】
図5は、時間に対するノズルからの吐水流量の具体例を例示するグラフ図である。
図5に表したグラフ図においては、周期に対する吐水流量Q2が持続する時間の割合(比率)を表すデューティ比は、「0.5」である。但し、このデューティ比(0.5)は、一例にすぎず、これだけに限定されるわけではない。なお、本願明細書において「周期」とは、第1の噴流状態(吐水流量Q1)が開始してから次の第1の噴流状態(吐水流量Q1)が開始するまでの時間、あるいは第2の噴流状態(吐水流量Q2)が開始してから次の第2の噴流状態(吐水流量Q2)が開始するまでの時間をいうものとする。
また、第1の噴流状態(吐水流量Q1)と、第2の噴流状態(吐水流量Q2)と、は交互に切り替えられ、ノズル31R及びノズル31Lからの噴流状態は逆位相である。
【0049】
図3(a)及び図4(a)の矢印A2で示すようにノズル31Rから吐水流量Q2の噴流が噴射されると、この噴流は使用者Mの右の足裏m6を押圧する。これにより、図3(a)及び図4(a)の矢印B1で示すように、使用者Mの右足の足関節、膝関節、及び股関節が同時に屈曲し、右足は背側面2aに向かって移動する。このとき、ノズル31Rからの噴流は、使用者Mの右足を包むように流れ場を生成するため、噴流から右足が外れないような力を右の足裏m6に与える。すなわち、水流で右足の周囲に水の壁を形成し、これにより右の足裏m6がノズル31Rからの噴流を受ける位置に安定して存在するようにする。これは、噴水の上にピンポン玉をのせたときに、そのピンポン玉が落ちずに噴水の略中心部で留まる現象と同じである。
【0050】
そして、図4(b)に表したように、これら関節が屈曲した状態が一定時間持続する。
一方、この間、図3(a)の矢印A1で示すように、使用者Mの左足の足裏m6にはノズル31Lから吐水流量Q1の噴流が噴射されている。このため、左足は伸展した状態を維持している。
【0051】
その後、図3(b)及び図4(c)の矢印A1で示すようにノズル31Rから吐水流量Q1の噴流が噴射されると、右の足裏m6を押圧する圧力が低下する。そのため、図3(b)及び図4(c)の矢印B3で示すように、使用者Mの右足の足関節、膝関節、及び股関節が自然に伸び、右足は足側面2bに向かって移動する。このとき、使用者Mが右の足裏m6でノズル31Rを覆うように右足の位置を意識的に調節することにより、右足はノズル31Rの近傍に戻る。
【0052】
一方、ノズル31Rから吐水流量Q1の噴流が噴射されている間、図3(b)の矢印A2で示すように、使用者Mの左足の足裏m6にはノズル31Lから吐水流量Q2の噴流が噴射されている。このため、左足は図3(a)及び図4(a)において右足に関して前述したように屈曲する。
【0053】
このように、ノズル31R及びノズル31Lが吐水流量Q1及びQ2の噴流を交互に逆位相で噴射することにより、使用者Mの足は浴槽2の長手方向に沿って逆位相で往復運動する。これにより、使用者Mは歩行運動のような運動を行うことが可能となる。
【0054】
噴流状態の周期は、目的や体調などに応じて適宜選択することができる。例えば、歩行(ウォーキング)運動のような運動を行うためには、周期は比較的短くして、噴流が左右足裏へリズムよく交互に吐出されるようにすることができる。具体的には、例えば周期を2秒程度とし、1秒おきに第1の噴流状態と第2の噴流状態とが実現するような構成にすることができる。この場合には、使用者Mの右足の足関節、膝関節、及び股関節が同時に屈曲して静止した状態、すなわち図4(b)に表した保持期の状態は、ほとんど存在しない。つまり、使用者Mの右足の状態は、図4(a)に表した屈曲期から図4(c)に表した伸展期へと略連続的に遷移し、逆に図4(c)に表した伸展期から図4(a)に表した屈曲期へと略連続的に遷移する。左足についても、同様に動く。これにより、使用者Mの左右の足はリズムよく逆位相で往復運動し、歩行運動のような運動が実現する。
【0055】
また、ストレッチ運動を行うためには、噴流状態の周期は比較的長くすることができる。この場合には、使用者Mの右足の足関節、膝関節、及び股関節が同時に屈曲して静止した状態、すなわち図4(b)に表した保持期の状態が、比較的長く続く。その後、使用者Mの右足の足関節、膝関節、及び股関節は、図4(c)に表した伸展期へ遷移する。そして、この伸展期がしばらく続いた後に、再び屈曲期へ遷移する。左足についても、同様に動く。これにより、使用者Mの左右の足は屈曲期と伸展期とを一定時間保持し、ストレッチ運動が実現する。
【0056】
このように、具体例1では、入浴姿勢における支持点(身体を支える箇所)の1つとなる足裏m6に噴流を交互に吐出し、これにより左右脚部m3の屈伸運動を実現して入浴ウォーキングのような運動などを実現することができる。噴流が左右足裏へリズムよく交互に吐出されるようにすれば、より大きな運動を誘発することができる。
【0057】
さらに、この足の運動は、図3の矢印B2で示すように、体幹部m1に波及して体幹部m1の旋回運動を引き起こすことができる。これにより、使用者Mは脚部m3から体幹部m1にかけての広い範囲の部位の運動を行うことができる。
【0058】
この制御態様では、噴流が使用者Mの運動を支援・助長しており、噴流の進行方向と当該噴流が当たる使用者Mの身体部位とは基本的には同じ方向に進行するが、本実施形態では使用者Mに補償動作による運動を行わせることもできる。すなわち、使用者Mに水流を当て、使用者Mの姿勢を不安定な状態とさせる。このときに、使用者Mはバランスをとりながら姿勢を維持する補償動作を行うこととなる。補償動作においては、使用者Mは、噴流が当たる身体部位を当該噴流の進行方向と逆の方向に動かせ、この動作により運動効果を得ている。補償動作は、制御部5の制御態様を適宜選択することにより実現することができる。
【0059】
例えば、図3〜図5に表した例では、噴流状態の周期を比較的長くすることにより、補償動作を実現することができる。この場合には、使用者Mの右足の足関節、膝関節、及び股関節が同時に屈曲して静止した状態、すなわち図4(b)に表した保持期の状態が、比較的長く続く。その後、使用者Mの右足の足関節、膝関節、及び股関節は、図4(c)に表した伸展期へ遷移する。そして、この伸展期がしばらく続いた後に、再び屈曲期へ遷移する。左足についても、同様である。この運動により、使用者Mは姿勢のバランスを崩され、不安定な姿勢となる。そのため、使用者Mは、無意識に全身の筋肉を働かせて姿勢を安定させようとする補償動作を行う。これにより、使用者Mは、バランストレーニングを行うことができる。
【0060】
このような入浴ウォーキング運動などの運動は、外部から与えられる他力的な他動運動であり、使用者の意志によって行われる自動運動ではないため、使用者Mの意志力に依存する部分が少なく、長続きしやすい。また、この運動は入浴姿勢のまま行うことができるため、使用者は、リラックスした状態で運動することができる。この結果、運動を継続しやすい。なお、「他動運動」とは、人が自分の筋力ではなく外力を利用して行う運動をいう。すなわち、本実施形態に係る浴槽装置は、使用者を座らせた状態にありながら、他動的に運動を行わせることができる運動浴槽装置であると言える。
【0061】
さらに、入浴による温熱効果により、運動効果がより一層向上する。また、噴流により使用者Mの周囲の温度境界層が常に破壊されるため、使用者Mが温まり易く、運動効果がさらに向上する。このように、前述した運動を浴槽内で行うことにより、浴槽外で行う場合と比較して、より高い運動効果を得ることができる。
【0062】
なお、制御部5は、ノズル3からの噴流の状態に加え、浴槽2の湯温や湯量、さらには浴室内の気温なども制御するようにしてもよい。これにより、制御部5は、運動情報導出部6からの情報などを基に使用者Mの体調などに応じて適切な湯温等に設定することができる。湯温は、例えば、吸入口7から浴槽2内の水を吸入し、吸入した水と湯とを用いて図示しないミキシングサーモ(冷水、温水、湯などを混合して所定の温度の温水を生成する装置)により所定の温度の温水を生成し、この温水をノズル3または図示しない吐水口から吐水することにより調節することができる。湯量は、例えば、図示しない吐水口から吐水することにより調節することができる。外気温は、例えば浴室内に設置された空気調節器(エアコン)により調節することができる。
【0063】
(情報取得部及び運動情報導出部、並びに浴槽装置1の動作)
次に、情報取得部8及び運動情報導出部6、並びに浴槽装置1の動作について、図1及び図6〜図10を参照しつつ説明する。
図6は、浴槽装置1の動作を例示するブロック図である。
図7は、情報取得部8が取得する情報及び運動情報導出部6の動作を例示するブロック図である。
図8は、運動情報導出部6の動作を例示するブロック図である。
【0064】
図1に表したように、浴槽装置1には、情報取得部8が設けられている。情報取得部8は、例えば浴室ユニット60の壁パネル62に取り付けられたリモコンなどの入力部10や、図示しない温度センサや心拍数センサなどを有することができる。温度センサは、浴槽2の壁面(右側面2d、左側面2eなど)、底面2cなどに設けることができる。また、心拍数センサは、例えば背側面2aに設けることができる。情報取得部8が取得した情報は、運動情報導出部6による運動情報の導出や制御部5によるノズル3の制御に用いることができる。また、情報取得部8が取得した情報は、そのまま表示部9に表示してもよい。例えば、ノズル3の運転モード、使用者Mの体温や心拍数などである。
【0065】
また、図1に表したように、浴槽装置1には、運動情報導出部6が設けられている。運動情報導出部6は、使用者Mの運動に関する情報を導出する。例えば、使用者Mに対する運動負荷を決定してノズル3の運転態様を決定したり、使用者Mの運動量や運動を行った部位(筋肉)などを導出したりする。以下、運動情報導出部6が、使用者Mの運動負荷や運動量などの運動状態を算出・決定する運動状態演算部(以下、「演算部6」という)である場合を例に取り上げて説明する。なお、運動情報導出部6は、制御部5と一体化した構成にしてもよい。
【0066】
図7及び図8に表したように、情報取得部8は様々な入力情報71を取得することができる。入力情報71には、ノズル3の運転に関する情報の他、例えば、使用者Mの年齢、性別、身長、体重などの「使用者情報」、使用者Mの血圧、心拍数、脈拍数、体温などの「生体情報」、浴槽2内の水の温度(湯温)、浴槽2が設置された空間の温度(外気温)、浴槽2内の水量(湯量)などの「環境情報」、などを含めることができる。ノズル3の運転に関する情報としては、例えば、噴流の流量(吐水量)、第1または第2の噴流状態の回数(切替回数)、噴流の状態の変化の周期(切替周期)、ノズル3が噴流を吐出する時間(運転時間)、などが挙げられる。
【0067】
使用者Mは、ノズル3の稼働前に入力情報71を入力部10に入力することができ、これにより入力部10は入力情報71を取得することができる。例えば、使用者Mはノズル3の運転前に、年齢、性別等の使用者情報や血圧、心拍数等の生体情報を入力するとともに、提供を受けたいと思う運動負荷に応じた環境情報(湯温など)や運転情報(運転時間等の運転態様)を入力することができる。また、入力情報71のいくつかは各種センサを用いて検知されるようにしてもよく、情報取得部8はこれによっても入力情報71を取得することができる。例えば、温度センサを用いて湯温に関する情報を取得したり、心拍数センサを用いて心拍数に関する情報を取得したりすることができる。
【0068】
そして、図6の矢印C、並びに図7及び図8の矢印C1、C2に示すように、情報取得部8は、取得した入力情報71を演算部6に伝送する。そして、演算部6は入力情報71に基づいて運動状態を算出・決定する。すなわち、噴流の流量や噴流状態の回数などを算出してノズル3の運転態様を決定したり、使用者Mの運動量などを算出したりする。
【0069】
図7及び図8の矢印C1に示すように、演算部6は、ノズル3が運転する前に情報取得部8が取得した初期情報を用いて運動状態を算出・決定することができる。すなわち、ノズル3の運転態様を決定したり、使用者Mの運動量を算出したりすることができる。特に、演算部6が、使用者Mが入力部10から入力した初期情報のみを用いて運動状態を算出・決定する構成にすることができる。これにより、各種センサを設ける必要がなくなり、構成が簡素化される。
【0070】
まず、使用者Mは、ノズル3の運転前に使用者情報、生体情報、環境情報、及び運転情報を入力することができる。そして、演算部6は使用者Mの年齢、性別等に応じた初期負荷や運転継続時間などを設定することができる。その後、制御部5は、演算部6が設定した内容に応じてノズル3を制御することができる。これにより、個々の使用者Mに対してそれぞれに適した運動負荷を与えることができ、安全で効果的な運動を提供することができる。また、制御部5が浴槽2の湯温などを制御する構成にした場合は、演算部6は初期情報に基づいて湯温などを設定し、その内容を制御部5に伝送することができる。また、演算部6は、使用者Mが入力した内容(年齢、ノズル3の運転態様等)から導き出される運動量を、表示部9を介して使用者Mに示すことができる。これにより、使用者Mは安全で効果的な運動を行うことができる。
【0071】
このようにして、初期の時刻tにおける運動状態を算出・決定することができる。以下、演算部6が算出・決定した運動状態に関する情報を「運動情報72」と呼ぶこととする。初期tにおける運動情報72は、その後においてもそのまま用いることができる。例えば、初期に設定したノズル3の運転態様をその後においても維持し続けることができる。また、使用者Mが初期に入力した内容から導き出される運動量をそのまま表示部9を介して表示し続けることができる。一方、次に説明するように、初期tにおける運動情報72は変更(更新)されるようにしてもよい。
【0072】
図7及び図8の矢印C2に示すように、情報取得部8は各種センサを用いるなどによりノズル3の稼働中に各種情報を取得でき、演算部6はこの情報を用いて運動状態を変更(更新)することができる。換言すれば、演算部6は、運転中の任意または特定の時刻(t0+Δt)における運動状態を算出・決定することができる。これにより、ノズル3の運転態様を変更したり、使用者Mの運動量を更新したりすることができる。
【0073】
例えば、ノズル3の稼働中に使用者Mの体温や心拍数などが急に上昇した場合には、流量を小さくしたり噴流状態の周期を長くするなどノズル3の運転態様を変更することができる。これにより、使用者Mに対する負荷が軽減される。また、浴槽2内の湯温を下げたり、外気の温度を下げてもよい。このようにして、個々の使用者Mの個々の時間帯・時期に対してそれぞれに適した運動負荷を与えることができ、より安全で効果的な運動を提供することができる。
【0074】
また、演算部6は、時刻(t+Δt)における心拍数等の生体情報、湯温等の環境情報、吐水量等の運転情報などを基に、使用者Mの運動量を更新することができる。これにより、使用者Mは個々の時間帯・時期における運動量を精度よく把握することができ、より安全で効果的に運動を行うことができる。
このようにして、運動情報72を変更(更新)することができる。
【0075】
なお、使用者Mが設定した運転態様や湯温など、あるいはノズル3の運転中の運転態様や湯温などが、使用者Mの年齢等に応じた適切な運動負荷に鑑みての上限を超える場合には、演算部6はこの上限の範囲内で運転態様や湯温などを決定することができる。また、演算部6は、初期設定に基づいて算出された運動量や時々刻々更新される運動量が、使用者Mの年齢等を踏まえ適切な範囲内にあるか否かを示してもよい。さらに、指導者や医師などが個々の使用者Mについて適切な運動負荷を提示している場合には、演算部6はこの情報をも参酌して運転態様等を決定したり運動量を表示したりすることができる。
これにより、使用者Mに最適な運動を提供することができる。この結果、使用者Mは、疲労や息苦しさを感じることなく、快適な状態で運動を続けることができる。
【0076】
また、図6及び図7の矢印Dに示すように、演算部6は、運動情報72をフィードバックしてもよい。すなわち、演算部6は、演算部6自身が算出・決定した運動情報72を用いて運動情報72を算出・決定してもよい。また、演算部6自身が算出・決定した運動情報72と、情報取得部8が新たに取得した入力情報71とを用いて運動情報72を算出・決定してもよい。
【0077】
例えば、演算部6は、時刻(t+Δt)において算出した使用者Mの運動量(運動情報72)が適切な範囲を超えると認めた場合には、このことを勘案して噴流の流量を小さくしたり噴流状態の周期を長くするなどしてノズル3の運転態様(運動情報72)を変更することができる。この場合、演算部6は情報取得部8が取得した心拍数に関する情報をさらに用いてもよい。また、演算部6は、例えば時刻(t+Δt)までに吐出された噴流に係る第1または第2の噴流状態の回数と、時刻(t+Δt)以降に取得した第1または第2の噴流状態の回数とを合計して、累積回数を算出することができる。そして、この累積回数を基に、その後の第1または第2の噴流状態の回数を決定することができる。また、演算部6は、時刻(t+Δt)における運動量と、その後に追加された運動量と、を合算してその後の時点における運動量を算出することができる。
【0078】
その後、演算部6は、最終時刻tにおける運動状態を算出・決定する。これにより、使用者Mの最終的な運動量などが算出される。
図6及び図7の矢印Eに示すように、演算部6は、運動情報72を基にした指示情報73を制御部5に伝送する。指示情報73は、例えばノズル3の運転態様に係る情報である。そして、図6の矢印Hで示すように、制御部5は演算部6からの指示情報73に基づいて指示情報74を駆動部4に伝送し、駆動部4を介してノズル3の噴流状態等を制御する。
【0079】
また、図6及び図7の矢印Fに示すように、演算部6は運動情報72を表示部9に伝送する。そして、表示部9は運動情報72を表示する。これにより、使用者Mはノズル3の運転態様や使用者Mの運動量などを把握することができる。
また、図6に表したように、情報取得部8が取得した入力情報71が表示部9に伝送される構成にしてもよい。この場合、矢印Gで示すように情報取得部8が入力情報71を直接表示部9に伝送するようにしてもよく、あるいは矢印C及びFで示すように、入力情報71が演算部6を介して運動情報72に含まれる形態でまたは運動情報72とともに表示部9に伝送されるようにしてもよい。
【0080】
このようにして、表示部9にはノズル3の運転態様や使用者Mの運動量など様々な情報を表示することができる。これにより、使用者Mは浴槽装置1を自身の体調等を踏まえ適切に運転させることができるとともに、運動量などを把握して適切に健康管理を行うことができる。
【0081】
以上、浴槽装置1の動作について説明した。なお、情報取得部8が取得した情報(入力情報71)や演算部6が算出・決定した運動状態に関する情報(運動情報72)は、指導者や医師等の外部に自動的に伝送される構成にしてもよい。これにより、指導者や医師等は使用者Mの血圧、心拍数、脈拍数やノズル3の運転態様などに関する情報を把握することができ、使用者Mの健康管理を適切に行うことができる。また、その後のノズル3の運転態様や浴槽2内の湯温を適切に決定することができる。
【0082】
また、図示しないが、情報取得部8を設けない構成にしてもよい。この場合、浴槽装置1は、情報を取得することなく予め決められた態様で稼働する。すなわち、予め決められた流量や切替周期などで運転する。そして、図6の矢印Jに示すように、制御部5は運転時間等の情報(制御情報75)を演算部6に伝送する。これにより、演算部6は、所定の流量、周期等と運転時間とを用いて使用者Mの運動情報を算出することができる。そして、表示部9は、演算部6からの運動情報を表示する。使用者Mは、浴槽装置1を一定時間稼働させて運動を行い、運動終了後に表示部9から実施運動量などを知ることができる。
【0083】
また、前述したように、演算部6は、ノズル3の運転態様や使用者Mの運動量の他、湯温や外気温、さらには使用者Mの運動部位などを算出・決定してもよい。また、使用者Mが、鍛えたい筋肉の部位や理想とする体形・体重などを入力すると、演算部6が自動的に単数または複数の運動プログラムを提示できる構成にしてもよい。逆に、演算部6は、継続的に所定のプログラムを実施した場合の、一定時期経過後の体形や体重などを導出してもよい。
【0084】
また、使用者Mが入力部10に個人識別番号を入力し、演算部6はこの識別番号をも用いて運動情報72を導出する構成にしてもよい。これにより、個々の使用者Mに適した稼働態様を決定したり、個々の使用者Mの累積運動量を算出したりすることができる。これにより、個々の使用者Mに応じて適切な運動や運動情報を提供することができる。また、使用者Mが浴槽装置1を使用する都度様々なデータを入力するという手間を省くことも可能となる。個人識別番号を用いた構成にする場合は、暗証番号や生体認識技術を取り入れるなどにより、個人情報を守ることができる。
【0085】
また、使用者Mは実際の運動効果を演算部6にフィードバックしてもよい。例えば、運動終了後の脚力、腹筋力、背筋力や体重などを入力部10を介して演算部6に入力してもよい。これにより、演算部6はその後において、より的確に使用者Mに適した運動プログラムを提示することができる。また、表示部9を介して使用者Mに提示される運動情報の精度の向上が図られる。
【0086】
さらに、演算部6が制御実績、使用者Mの運動量、使用者Mからのフィードバック情報などの各種情報を蓄積し、これらを複合的に用いる構成にしてもよい。これにより、情報導出能力を高度化することができる。さらに、音声対話型にしたり表示部9の画面に動画やホログラムなどの立体画像を用いたりしてもよい。このように、演算部6(運動情報導出部6)の構成を工夫することにより、浴槽装置1は、使用者Mの健康管理に係る指導者的な役割を担うことも可能と考えられる。
【0087】
次に、浴槽装置1の他の構成について、図9を参照しつつ説明する。
図9は、浴槽装置1の他の構成を例示するブロック図である。
これまで、制御部5が、演算部6が算出・決定した運動状態に関する情報に基づいて動作する構成について説明してきたが、本実施形態はかかる構成に限定されない。例えば、次に説明するように、制御部5は情報取得部8が取得した情報のみを基に動作する構成にしてもよい。
【0088】
まず、図9の矢印Iに示すように、情報取得部8は入力情報71を制御部5に伝送する。例えば、ノズル3の運転態様に関する情報を伝送する。その後、矢印Hで示すように、制御部5は入力情報71に基づいた指示情報74を駆動部4に伝送し、駆動部4を介してノズル3の動作を制御する。例えば、制御部5は、使用者Mが入力した運動強度やノズル3の運転態様に関する情報を基にして指示情報74を駆動部4に伝送する。
【0089】
一方、図9の矢印Jに示すように、制御部5は入力情報71に基づいた制御情報75、例えばノズル3の運転態様に関する情報など、を演算部6に伝送する。そして、演算部6は、制御情報75を基に運動情報72を算出し、矢印Fで示すように運動情報72を表示部9に伝送する。そして、表示部9は運動情報72を表示する。
【0090】
なお、図9の矢印Gに示すように、情報取得部8が入力情報71を表示部9に直接伝送する構成にしてもよい。あるいは、矢印J及びFで示すように、入力情報71は、制御部5及び演算部6を介して制御情報75や運動情報72に含まれる形態でまたはこれら情報とともに表示部9に伝送されるようにしてもよい。
【0091】
このように、入力情報71が直接制御部5に伝送され、制御部5が入力情報71のみを基に動作する構成にすることにより、制御が簡素化される。本具体例における上記以外の構成、動作及び効果は、図6〜図8に関して前述した実施形態と同様である。
【0092】
次に、浴槽装置1のさらに別の構成について、図10を参照しつつ説明する。
図10は、浴槽装置1のさらに別の構成を例示するブロック図である。
図10に表した例は図9に表した例と同様の構成を有するが、矢印Kで示すように、演算部6が、運動情報72に基づいて指示情報76を制御部5に伝送する構成となっている。すなわち、運動情報72は制御部5の動作に活用される。そして、制御部5は指示情報76に基づいて指示情報74を駆動部4に伝送し、駆動部4を介してノズル3を制御する。例えば、演算部6が、ノズル3の運転中に使用者Mの運動量が所定の基準を上回ると認めたときに、制御部5に対して、ノズル3からの噴流の流量を小さくしたり、噴流状態の周期を長くしたりする旨の指示情報76を伝送することができる。これにより、使用者Mに対する運動負荷を低減することができる。
【0093】
このように、演算部6が算出・決定した運動情報72を制御部5にフィードバックすることにより、使用者Mは安全で効果的な運動を行うことができる。本具体例における上記以外の構成、動作及び効果は、図9に関して前述した実施形態と同様である。
【0094】
(表示部及び運転操作)
次に、表示部9の構成及び動作、並びに使用者Mによる浴槽装置1の運転操作の手順について、図1及び図11〜図13を参照しつつ説明する。
図11は、表示部9の構成を例示する模式正面図である。図11(a)は、初期入力が完了した時点での表示部9を例示し、図11(b)は運転中または運転終了後における表示部9を例示している。
図12は、表示部9の他の構成を例示する模式正面図である。
図13は、使用者Mによる浴槽装置1の操作手順を例示する流れ図である。
【0095】
図1に表したように、浴槽装置1には、表示部9が設けられている。表示部9は、例えば浴室ユニット60の壁パネル62に設けることができる。また、表示部9と入力部10とを一体化した構成にしてもよい。表示部9の画面には、使用者Mが入力した情報や、制御部5による噴流の制御態様や、演算部6が算出・決定した運動状態に関する情報など様々な情報を表示することができる。
【0096】
図11に表した表示部9には、画面9aが設けられており、使用者Mが入力した情報や運動情報72などは画面9aに表示することができる。また、表示部9には電源ボタン9bが設けられており、使用者Mは電源ボタン9bを押すことにより浴槽装置1の電源を入れたり切ったりすることができる。また、表示部9には調節ボタン9cが設けられている。調節ボタン9cは、表示内容の切替えを行うためなどに用いることができる。また、入力部10の一部を構成してもよい。すなわち、使用者Mは調節ボタン9cを押して入力対象事項を選択したり、入力数値を変更したりすることができる。なお、表示部9の構成はこれに限られず、電源ボタン9bや調節ボタン9cは別の場所に設けてもよい。あるいは、逆にこれら以外の機能を併有する構成でもよい。
【0097】
一方、図12に表した表示部9の画面9aには、生体信号(バイタルサイン)を表示する生体信号表示領域92、湯温を表示する湯温表示領域93、湯量を表示する湯量表示領域94、並びに運動量を設定及び表示する運動量設定表示領域95が設けられている。生体信号は例えば脳波、心拍数、逆上せ(のぼせ)度などである。また、湯温は温熱効果に影響し、湯量は入浴者に加わる静水圧に関連する。さらに、運動量には運動時間及び運動強度が含まれる。なお、画面9aは、運動量が分かる情報を少なくとも1つ提示できればよい。
【0098】
以下、使用者Mによる浴槽装置1の操作について、図11に表した表示部9を用いて図13を参照しつつ説明する。
まず、図13のステップS1に示すように、使用者Mは、図11に表した電源ボタン9bを押して浴槽装置1の電源を入れる。そして、ステップS2に示すように、使用者Mは入力情報71を入力する。すなわち、調節ボタン9cを押して年齢、身長等の入力対象事項を選択し、その後決定ボタン(図示せず)を押す。その後、選択した入力対象事項について、調節ボタン9cを押して数値を選択し決定ボタンを押す。その後、別の入力対象事項を選択し、同様の操作を繰り返す。このようにして、使用者Mは入力情報71を入力部10に入力することができる。また、前述したように入力情報71の一部はセンサなどによって取得することもできる。
【0099】
かかる操作により、図11に表したように画面9aには様々な情報を表示することができる。ここで、図6などに関して前述したように、入力情報71は情報取得部8(入力部10やセンサなど)から直接表示部9に伝送されるようにしてもよく、あるいは演算部6や制御部5を介して表示部9に伝送されるようにしてもよい。演算部6を介した場合は、ノズル3の運転態様の設定は、使用者Mの年齢などに応じた運動負荷に調節されるため、効果的で安全な運動を行うことが可能となる。
【0100】
画面9aには、例えば図11に表したように使用者Mの年齢、身長、体重、性別等の使用者情報や、湯量、湯温、季節などの環境情報を表示することができる。環境情報については、センサなどにより自動的に取得されるようにしてもよい。また、画面9aには、残余の運転時間などの運転情報を表示することができる。運転情報は、使用者Mが入力した運転態様に関する情報をそのまま表示する構成にしてもよく、あるいは、演算部6が使用者Mによる入力情報71と予め取得した基準値等とを用いてノズル3の運転態様を決定し、この運転態様に関する情報を表示する構成にしてもよい。
【0101】
なお、図18に関して後述するように、使用者Mが湯温及び運転時間を入力し、演算部6はこの入力情報を基にノズル3の運転態様を決定する構成にしてもよい。この場合、使用者Mは入力部10にノズル3の運転態様について入力する必要はない。
【0102】
また、図示しないが、画面9aは、使用者Mの体温や心拍数などの生体情報をさらに表示してもよい。生体情報は、使用者Mによる入力やセンサにより取得することができる。このような使用者情報、生体情報、環境情報、及び運転情報は、図11(a)及び(b)に表したように運転開始前から運転終了後に至るまで継続的に表示することができる。
【0103】
次に、図13のステップS3に示すように、使用者Mは図示しない「開始」ボタンを押して、ノズル3などの運転を開始させる。そして、ステップS4に示すように、噴流の作用を用いて図3〜図5に関して前述した入浴ウォーキング運動などの運動を行う。
【0104】
図11(b)に表したように、運転中または運転終了後においては、指定した運転態様及び運転時間から使用者Mの代謝量や運動量などを算出し、これを表示することができる。使用者Mの代謝状況等を使用者M自身が把握することで、運動へのモチベーション(意欲)を高めることができる。また、湯温や残余運転時間などは、運転中に更新されるようにすることができる。運転中に演算部6により自動的に適切な運動負荷となるように調節可能な構成にすれば、さらに効果的で安全な運動を行うことができる。
【0105】
なお、演算部6を専ら制御部5の制御態様を決定するためにのみ用いる場合は、演算部6が算出した運動量などの情報は表示されないようにしてもよい。この場合、表示部9は必ずしも設ける必要はない。
また、図13のステップS5に示すように、運転中において、使用者Mの意思により運動負荷などを調節可能な構成にしてもよい。この場合使用者Mは、図11に表した調節ボタン9cを押してノズル3の運転態様や浴槽2の湯温などを調節することができる。これにより、例えば使用者Mは体調を勘案してノズル3の運転態様を調節し、運動の強度を適切に調節することができる。
【0106】
次に、図13のステップS6に示すように、所定の運動プログラムが終了したら、浴槽装置1の運転が終了する。これに伴い、ステップS7に示すように使用者Mは運動を停止する。そして、使用者Mは浴槽2から出て、ステップS8に示すように画面9aに表示された内容から実施運動内容や実施運動量などの運動状態を確認し、必要に応じ記録する。この情報は蓄積することができ、運動履歴や健康状態を把握するために活用することができ、また次回の運動の参考データとして活用してもよい。
【0107】
このように、本実施形態によれば、使用者Mは簡単な操作を行うことにより安全で効果的な運動を行うことができる。
なお、表示部9や入力部10に図示しないスピーカを設け、操作に関して音声案内を行ったり、異常時の音声による警告を行う構成にしてもよい。また、浴室の外部にも浴槽装置1に接続したスピーカを設け、異常時に外部に対しても警告を行う構成にしてもよい。また、表示部9を設けず音声のみにより使用者Mに運動情報72を知らせる構成にしてもよい。さらに、前述したように音声対話型にしたり、画面9aに動画や立体画像を用いてもよい。これにより、浴槽装置1の操作の更なる円滑化が図られる。
【0108】
(運動状態(運動負荷)の決定方法)
次に、演算部6による運動状態(運動負荷)の決定方法の一例について、図14〜図18を参照しつつ説明する。
図14は、浴槽装置1の他の構成を例示する模式断面図である。
図15は、心拍数と運動強度との関係を例示するグラフ図である。横軸は心拍数を表し、縦軸は運動強度を表している。
図15に表したように、心拍数と運動強度との間には一定の相関関係がある。以下、心拍数の取得方法について、図14を参照しつつ説明する。
【0109】
図14(a)に表した浴槽装置1においては、心拍数センサ22(情報取得部8)が設けられている。心拍数センサ22は、背側面2aなどに設けることができる。心拍数センサ22は、浴槽2内にいる使用者Mの心拍数を測定し、その測定結果を演算部6に対して出力する。
【0110】
また、図14(b)に表した浴槽装置1においては、浴槽2の背側面2aに感圧センサ32が取り付けられている。感圧センサ32は、例えば、背側面2aの裏側に取り付けられている。また、浴槽2は、FRP(Fiber Reinforced Plastics:繊維強化プラスチック)などの振動が部材全体に伝達しやすい素材で作られている。
本具体例においては、使用者Mが入浴姿勢をとり、背中m2を背側面2aに接触させると、感圧センサ32が使用者Mの心臓の鼓動または脈拍に起因する微細な振動を検出し、これに基づいて心拍数を計測する。すなわち、感圧センサ32は心拍数センサ(情報取得部8)として機能する。なお、入浴者の頚椎または首部に接するように感圧センサ32を設置しても、心臓の鼓動及び脈拍による振動を計測することが可能である。そして、感圧センサ32は、計測した心拍数に関する情報を演算部6に対して出力する。
【0111】
次に、図15を参照しつつ、年齢別の至適運動強度と心拍数との関係について説明する。ここで、運動強度は運動負荷とほぼ等価であると考えてもよい。
図15の破線Lは、陸上(浴槽外)において通常の運動を行ったときの心拍数と運動強度との関係を表している。破線Lに示すように、心拍数と運動強度との間には直線的な相関関係があり、心拍数が多いほど運動強度が高くなる。このため、運動強度は心拍数から算出することができる。一定時間において、心拍数が多いほど運動量は多くなる。
【0112】
また、区間Y1〜Y3に示すように、年齢によって適切な心拍数及び運動強度の範囲が異なる。図示したように、高齢になるにつれて心拍数及び運動強度の上限は低くなる。例えば、20代の最高負荷強度(心拍数)は、200bpm程度とされている。そして、30代以上では最高負荷強度はこの値よりも低くなり、高齢になるにつれて最高負荷強度は低く設定される。より詳細には、最高負荷強度とほぼ等価と見なせる推定最高心拍数は、「220−年齢」という式により算出することができる。
【0113】
このことを踏まえ、区間L1〜L4に示すように運動の強度を区分し、年齢毎に設けられた運動負荷の範囲内で運動負荷の上限値及び下限値を設定することができる。例えば、20代の使用者Mは区間L1〜L4に対応した運動を行うことができ、30代〜40代の使用者Mは区間L1及びL2に対応した運動を行うことができ、50代以上の使用者Mは区間L1に対応した運動(ストレッチ運動)のみを行うことができる。これにより、使用者Mは年齢等に応じた適切な運動を行うことができる。
【0114】
また、図示しないが、運動強度は呼吸商で数値化することもできる。「呼吸商」とは、一定時間において使用者が吸入した酸素の体積を当該時間において使用者が吐出した二酸化炭素の体積で除した値をいう。一定時間において、呼吸商が小さいほど運動量は多くなる。
このように、演算部6は心拍数や呼吸商などの情報を用い、且つ使用者Mが入力した年齢等の情報を基に、適切な運動強度及び運動負荷を算出・決定することができる。
【0115】
次に、図16は、運動時間及び湯温と心拍数との関係を例示するグラフ図である。横軸は運動時間を表し、縦軸は心拍数を表している。また、図16(a)、(b)及び(c)は、それぞれ湯温37℃、39℃及び41℃の場合の運動時間と心拍数との関係を例示している。いずれの場合も、噴流の流量及び周期は同じ値である。
【0116】
図16に表したように、運動時間と心拍数との間には直線的な相関関係があり、運動時間が長いほど心拍数が多くなる。また、図16(a)〜(c)に表したように、湯温が異なると心拍数が異なる。すなわち、湯温が高いほど心拍数は多くなる。
【0117】
このように、噴流の流量及び周期を一定とした場合は、演算部6は心拍数を用いる代わりに湯温及び運転時間を用い、且つ使用者Mが入力した年齢等の情報を基に、適切な運動強度及び運動負荷を算出・決定することができる。すなわち、使用者Mが入力した年齢等を基に適切な心拍数を導き出し、当該心拍数に対応した湯温及び運転時間の組合せを複数提示することができる。さらに、使用者Mが湯温及び運転時間の一方を設定した場合には、他方を決定することができる。
【0118】
次に、図17は、入浴ウォーキング実施時間と運動負荷との関係を例示するグラフ図である。
図17に表したように、運動時間と運動負荷との間には直線的な相関関係があり、運動時間が長いほど運動負荷が大きくなる。また、湯温が高いほど運動負荷は大きくなる。
【0119】
ここで、縦軸の運動負荷の適切値は、使用者Mが入力した年齢等の情報を基に、図15に関して前述した要領で決定することができる。そして、運動負荷の最適値(目標値)Bまで到達する時間は湯温によって異なり、湯温が高いほど目標値Bに早く達する。例えば、一般的な入浴ウォーキング運動の場合は、湯温が39℃では10〜15分程度で目標値Bに到達するが、37℃では30分程度必要となる。
【0120】
このため、噴流の流量及び周期が一定の場合は、演算部6は、使用者Mが入力した年齢等の情報を基に図15に関して前述した要領で運動負荷を決定し、図17に表したグラフ図を用いて当該運動負荷に対応した湯温及び運転時間(到達時間)の組合せを複数提示することができる。例えば、図17では、運動負荷が「B」である場合には、湯温及び運転時間の組合せは、「41℃、t1」、「39℃、t2」、及び「37℃、t3」の3つを提示することができる。さらに、使用者Mが湯温及び運転時間の一方を設定した場合には、他方を決定することができる。
【0121】
次に、図18は、湯温と運動負荷の最適値(目標値)Bまでの到達時間との関係を例示するグラフ図である。横軸は湯温を表しており、縦軸は運動負荷の最適値(目標値)Bまでの到達時間(以下、単に「到達時間」という)を表している。
【0122】
図18に表したように、湯温と到達時間との間には相関関係があり、湯温を「x」、到達時間を「y」とすれば、「y=1E+18x−10.58」、すなわち、yは10の「18x−10.58」乗、という式で近似できる。この式により、噴流の流量及び周期が一定で、運動負荷の値が決定された場合は、任意の湯温に対して運転時間(到達時間)を導くことができる。逆に、運転時間を設定すれば湯温を決めることができる。すなわち、図17では、到達時間Bについて湯温及び運転時間の組合せが3つ示されているが、図18に表した近似曲線を用いれば、他の組合せを提示することが可能となる。
【0123】
次に、設定した運動負荷の値が変わると、図18のグラフ曲線は変動する。例えば、同じ湯温であっても、設定した運動負荷が大きくなると到達時間は長くなる(図17参照)。このため、運動負荷ごとに図18に表したグラフ曲線(近似曲線)を作成することができる。とりわけ、2つの運動負荷について図18に表した近似曲線を作成することができれば、図17に表した相関関係が直線的であるため、任意の温度について図17に表した直線グラフ図を作成することができる。
【0124】
このように、噴流の流量及び周期が一定の場合は、演算部6は、使用者Mが入力した年齢等の情報を基に図15に関して前述した要領で運動負荷を決定し、図18または図18から導かれる図17に表したグラフ図を用いて当該運動負荷に対応した様々な湯温及び運転時間(到達時間)の組合せを提示することができる。さらに、使用者Mが湯温及び運転時間の一方を設定した場合には、他方を決定することができる。
【0125】
次に、噴流の流量や周期が変化する構成を用いた場合について説明する。
噴流の流量や周期が変わると、図18のグラフ曲線は変動する。例えば、同じ湯温であっても、噴流の流量が大きくなったり周期が短くなったりすると到達時間は短くなる。このため、噴流の流量や周期も変動させる場合には、これら変数も加味して図18に表したグラフ曲線(近似曲線)を作成することができる。
【0126】
このように、噴流の流量及び周期が変化する場合は、演算部6は、使用者Mが入力した年齢等の情報を基に図15に関して前述した要領で運動負荷を決定し、この運動負荷に対応した図18に表したグラフ図を噴流の流量及び周期の組合せごとに作成し、これら複数のグラフ図を用いて当該運動負荷に対応した湯温、運転時間(到達時間)、並びに噴流の流量及び周期の組合せを複数提示することができる。
【0127】
ここで、使用者Mが湯温及び運転時間の組合せを決定した場合は、演算部6は噴流の流量及び周期の組合せを複数提示することができる。逆に、使用者Mが噴流の流量及び周期の組合せを決定した場合は、演算部6は湯温及び運転時間の組合せを複数提示することができる。更に、使用者Mがこれら4つのパラメータのうち3つを決定した場合は、演算部6は残りの1つのパラメータを一義的に決定することができる。
このようにして、演算部6は浴槽装置1の稼働態様を決定することができる。
【0128】
以上説明したように、噴流の流量及び周期が一定である場合は、演算部6は使用者Mが入力した年齢等の情報を基に、図15に関して前述した要領で適切な運動強度及び運動負荷(心拍数で表してもよい)を算出・決定し、さらに図16〜図18に関して前述した要領で浴槽2内の湯温や目標値までの到達時間(ノズル3の運転時間)を複数提示したり設定したりすることができる。
【0129】
また、噴流の流量や周期が変動可能な構成にした場合は、演算部6は使用者Mが入力した年齢等の情報を基に、図15に関して前述した要領で適切な運動強度及び運動負荷(心拍数で表してもよい)を算出・決定し、さらに図18に関して前述した要領で、使用者Mが入力した情報に応じて浴槽装置1の稼働態様(湯温及び運転時間の組合せ、または噴流の流量及び周期の組合せ)を複数提示したり設定したりすることができる。
【0130】
(本実施形態の効果)
次に、本実施形態の効果について説明する。
これまで説明したように、本実施形態によれば、他動運動を実現し、これにより入浴者に継続的に運動させることができる浴槽装置が提供される。また、身体の部位をバランスよく運動させることができる浴槽装置が提供される。さらに、演算部6及び表示部9により、入浴者に自分の運動量などの情報を客観的に把握させることができる。また、演算部6及び制御部5により、入浴者の運動量などの情報に基づいてノズル3の駆動態様などを調節することができる。これにより、使用者は安全で効果的な運動を行うことができる。その他各実施形態の効果については、当該実施形態の説明において前述した通りである。
【0131】
次に、入浴ウォーキングの効果について、通常のウォーキングと比較して図19及び図20を参照しつつ説明する。本発明者は、被驗者の協力を得て通常のウォーキング及び入浴ウォーキングを15分間行ってもらい、それぞれの場合における呼吸商、心拍数、及び最高血圧を測定した。なお、心拍数及び最高血圧については、参考のため通常の入浴の場合についても測定を行った。
【0132】
本実施例では、図1に表した浴槽2及びノズル3を用いた。
吐水部3(ノズル3)から吐水される第2の噴流状態の流量は、例えば110リットル/分以上とすることができる。また、より脚部を動かすためには、第2の噴流状態の流量は、好ましくは150リットル/分、さらに好ましくは180リットル/分とすることができる。一方、第1の噴流状態の流量は、例えば50リットル/分とすることができる。また、駆動部4に対する負荷をさらに軽減し、第1の噴流状態から第2の噴流状態に切り替わる時間をさらに短縮するためには、第1の噴流状態の流量は、好ましくは80リットル/分、さらに好ましくは90リットル/分とすることができる。なお、第1の噴流状態の流量は、0(ゼロ)リットル/分としてもよい。この場合、前述したように第1の噴流状態を実現するノズル3に接続している駆動部4を駆動させる必要がないため、消費電力の低減が図られる。
【0133】
そして、第1の噴流状態の開始から第2の噴流状態の終了に至るまでの周期を1〜2秒とすると、5分間の運動においては、第1及び第2の噴流状態の合計回数は、300〜600回となる。
【0134】
この時、浴槽2内で利用する水(湯)の水温は、常温あるいはそれよりも高い温度とすることができる。特に、水温は、36〜41℃帯域とするのが好ましい。例えば、水温を体温に近く且つ温熱の負荷が低い36〜38℃に設定し、吐水の水量を多くすることで屈伸運動の回動量を増やしたり、あるいは吐水の周期を早くすることで屈伸運動の回数を増やしたりすることにより、運動強度を高めることができる。これにより、使用者Mに効果的な運動を提供することが可能となる。
【0135】
一方、比較的短い時間で十分な運動を行うためには、湯温は高め(例えば、39〜41℃)に設定することができる。この場合、温熱と運動の効果の相乗効果によって、湯の温度を低く設定した場合に比べ、短い時間で十分なエネルギー消費を起こすことができる。これにより、使用者Mは効果的な運動を短い時間で行うことができる。
【0136】
図19は、通常のウォーキング及び入浴ウォーキングにおける運動時間と呼吸商との関係を例示するグラフ図である。横軸は経過時間を表しており、縦軸は呼吸商を表している。
図19から、通常のウォーキングに比べ、入浴ウォーキングでは呼吸商が低いことがわかる。すなわち、運動量が多く、脂肪がより燃焼している。入浴ウォーキングでは、運動を始めてから15分程度で脂肪燃焼を起こす有酸素運動が実現していることが、実験により示された。このように、入浴ウォーキングにより、効果的に運動効果を得ることができる。
【0137】
次に、図20は、通常のウォーキング、通常の入浴、及び入浴ウォーキングにおける運動時間と心拍数及び血圧との関係を例示するグラフ図である。図20(a)は運動時間と心拍数との関係を例示しており、横軸は運動時間を、縦軸は心拍数をそれぞれ表している。また、図20(b)は運動時間と最高血圧との関係を例示しており、横軸は運動時間を、縦軸は最高血圧をそれぞれ表している。
【0138】
図20(a)に表したように、この事例では、心拍数については通常のウォーキングと入浴ウォーキングとであまり差はない。すなわち、同等の運動量であるといえる。また、通常の入浴では心拍数は低い。日常生活や仕事を営む際に、心拍数が100bpmを超えて体脂肪を燃やすような運動レベルに達することは少ないと考えられるが、本実施形態による入浴ウォーキングでは、心拍数が100bpm程度となる。
【0139】
一方、図20(b)に表したように、血圧については、通常のウォーキングに比べ入浴ウォーキングでは血圧が低く、通常の入浴とほぼ同等の値を示している。これは、使用者Mが入浴姿勢を保持することで心臓と四肢の高低差が小さく抑えられることに加えて、入浴ウォーキングを実施しているときの脚部の屈伸運動が血流のポンプ的な役割を果たし、血液の流れを補助することに起因すると考えられる。これにより、血圧がウォーキングの場合に比べて低くなると考えられる。このように、入浴ウォーキングでは心臓に負担をかけずに安全且つ効果的に運動を行うことができる。
【0140】
次に、入浴ウォーキングの効果を検証するための別の実験について、図21を参照しつつ説明する。本実施例では、図1に表した浴槽2及びノズル3を用いた。
図21は、入浴ウォーキングを実施したときの筋群の使用部位を例示する表及び模式図である。ここでは、噴流状態のデューティ比、すなわち「第2の噴流状態の継続時間/周期」を変更して実験を行った。図21(a)は、被験者が本実施形態に係る噴流を受けて運動を行ったことにより使用したと感じた筋群の部位を例示した表であり、図21(b)は、図21(a)に表した筋群の部位を表す模式図である。
【0141】
本発明者は、本実施形態に係る浴槽2及びノズル3を7人の被験者に使用してもらい、デューティ比を変更したときに使用感のあった筋群の部位をヒアリング調査している。このヒアリング調査の結果によれば、図21(a)に表したように、被験者は、噴流状態のデューティ比が約0.3〜0.4程度と比較的小さい場合には、腹部・体幹部m11、股関節m10、大腿部m4、下腿部m5、及び足部m9の少なくともいずれかの筋群を使用したと感じていることが分かった。つまり、比較的広い範囲の筋群を使用したと感じていることが分かった。
【0142】
腹部・体幹部m11の筋群は、脊柱起立筋、腹直筋、及び腹斜筋を有する。また、下腿部m5及び足部m9の筋群は、前頸骨筋を有し、この前頸骨筋の働きは、歩行時に、地面と足部m9とのクリアランスをとるために働く筋として知られている。そのため、前頸骨筋を活動させる運動とは、転倒予防に貢献する運動を意味する。これにより、噴流状態のデューティ比が約0.3〜0.4程度と比較的小さい場合には、被験者は、ストレッチ運動に近似した運動を感じていることが分かった。
【0143】
また、被験者は、噴流状態のデューティ比が約0.5〜0.6程度である場合には、股関節m10、大腿部m4、及び下腿部m5の少なくともいずれかの筋群を使用したと感じていることが分かった。また、被験者は、噴流状態のデューティ比が約0.7〜0.8程度と比較的大きい場合には、股関節m10または大腿部m4の筋群を使用したと感じていることが分かった。つまり、噴流状態のデューティ比が約0.5〜0.6程度、及びデューティ比が約0.7〜0.8程度と比較的大きい場合には、比較的狭い範囲の筋群を使用したと感じていることが分かった。
【0144】
大腿部m4の筋群は、大腿二頭筋を有し、この大腿二頭筋の働きは、主として歩行時における蹴り出す力、推進力を生成する筋として知られている。そのため、大腿部m4のハムストリングスを刺激する運動とは、歩行速度の維持と、歩行機能の向上と、に貢献できる運動であることを意味する。これにより、噴流状態のデューティ比が約0.5〜0.6程度、及びデューティ比が約0.7〜0.8程度と比較的大きい場合には、歩行運動のように、脚部における屈曲運動と伸展運動とを連続して行う。さらに、それらの運動は湯水内に浮いている状態で行われるため、歩行時に働く主要な筋以外にも働くこととなり、バランストレーニングの要素を含んだ運動として、使用者に運動感を与えていることが分かった。
【0145】
このように、本実施形態に係る浴槽装置1を用いることにより、体幹部m1から脚部m3に至るまでの広い範囲でバランスよく運動させることができるということが確認された。
【0146】
(その他の実施形態)
次に、本実施形態のさらに別の変形例について説明する。
本実施形態では、制御部5は、図22に表したように第1及び第2の噴流状態の少なくともいずれかを変化させてもよい。
図22は、噴流状態の態様を例示する模式グラフ図である。
図22に表したように、制御部5は、第1及び第2の噴流状態の少なくともいずれかにおいて、ノズル3から吐出される噴流の流量Qを変化させてもよい。図では、第2の噴流状態における吐水流量Q2は、Q21〜Q24の4つの値をとる。
【0147】
また、図22に表したように、制御部5は、第1及び第2の噴流状態の少なくともいずれかの継続時間を変化させてもよい。図では、第1の噴流状態の継続時間は、b1〜b4の4つの値をとる。また、第2の噴流状態の継続時間は、a1〜a4の4つの値をとる。
また、図22に表したように、制御部5は、ノズル3から吐出される噴流の状態の変化の周期を変化させてもよい。図では、周期は、T1〜T4の4つの値をとる。
【0148】
また、図22に表したように、制御部5は、ノズル3から吐出される噴流の状態の変化の周期に対する第1及び第2の噴流状態の継続時間の割合(デューティ比)を変化させてもよい。図では、周期に対する第2の噴流状態の継続時間「a/T」は、a1/T1〜a4/T4の4つの値をとる。
【0149】
周期T1〜T4の噴流状態が終了した後においては、このような周期T1〜T4の噴流状態を規則的に繰り返してもよく、あるいはさらに別の噴流状態としてランダムに噴流を吐出させてもよい。
【0150】
このような構成によれば、ノズル3からの噴流の状態が規則的または不規則的に変更されるため、使用者Mの運動は、規則的または不規則的に変化する。すなわち、同じリズムの運動が長期に亘り継続することはない。そのため、使用者Mは、運動に慣れたり、飽きたりするおそれは少ない。したがって、使用者Mに継続的に運動させることができる。
【0151】
さらに、使用者Mの身体は、規則的または不規則的に変化する運動をするため、その運動の際に使用される身体の部位や筋群は、変化する。これにより、使用者Mの身体の部位や筋群を広範囲に亘ってバランスよく運動させることができる。
【0152】
次に、本実施形態において、心拍数を計測する方法としては、図14に関して前述した方法の他、次に説明する方法も挙げられる。
図23〜図25は、浴槽装置1の他の構成を例示する模式断面図である。
【0153】
図23に表した浴槽装置1においては、浴槽2の幅方向両側の内側面に電極25が取り付けられており、この電極25によって使用者Mの心電を検出し、心拍数を計測する。すなわち、電極25は、心拍数センサ(情報取得部8)の一部として機能する。このような電極を含む心拍数センサには公知のものを使用することができる。
【0154】
また、図24に表した浴槽装置1においては、浴槽2の内部における幅方向両側に、浴槽手すり27が設けられており、この浴槽手すり27に電極(図示せず)が取り付けられている。この電極は、図23に表した例と同様に心拍数センサ(情報取得部8)の一部として機能する。本具体例においては、使用者Mが浴槽手すり27を握ることにより、使用者Mの両手が電極に接触し、心電を採取することができる。
【0155】
また、図25に表した浴槽装置1においては、浴槽2の内部における幅方向両側に、手置きリム29が形成されており、この手置きリム29に電極(図示せず)が取り付けられている。この電極は、図23及び図24に表した例と同様に心拍数センサ(情報取得部8)の一部として機能する。本具体例においては、使用者Mが両腕を手置きリム29に置くことにより、使用者Mの両腕が電極(図示せず)に接触し、心電を採取することができる。
【0156】
以上説明したように、本実施形態によれば、他動運動を実現し、これにより入浴者に継続的に運動させることができる浴槽装置が提供される。また、身体の部位をバランスよく運動させることができる浴槽装置が提供される。さらに、演算部6及び表示部9により、入浴者に自分の運動量などの情報を客観的に把握させることができる。また、演算部6及び制御部5により、入浴者の運動量などの情報に基づいてノズル3の駆動態様などを調節することができる。これにより、使用者は安全で効果的な運動を行うことができる。
【0157】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズ、動作などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
例えば、各種のノズル3は、図示した場所の他、本実施形態の趣旨の範囲内で他の場所に設けることができる。また、ノズル3からの噴流の噴射方向が変化するようにしてもよい。
【0158】
さらに、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0159】
1 浴槽装置、2 浴槽、2a 背側面、2b 足側面、2c 底面、2d 右側面、2e 左側面、2f 境界部、2g 境界部、3 吐水部、ノズル、4 駆動部、ポンプ、4L、4R ポンプ、5 制御部、6 運動状態演算部、運動情報導出部、7 吸入口、8 情報取得部、9 表示部、9a 画面、9b 電源ボタン、9c 調節ボタン、10 入力部、22 心拍数センサ、23 感圧センサ、25 電極、27 浴槽手すり、29 手置きリム、31L、31R、32L、32R、33L、33R、34L、34R、35L、35R ノズル、 60 浴室ユニット、61 防水パン、62 壁パネル、71 入力情報、72 運動情報、73、74 指示情報、75 制御情報、76 指示情報、92 生体信号表示領域、93 湯温表示領域、94 湯量表示領域、95 運動量設定表示領域、A1、A2、B1、B2、B3、C、C1、C2、D、E、F、G、H、I、J、K 矢印、L 破線、L1、L2、L3、L4 区間、M 使用者、m1 体幹部、m2 背中、m3 脚部、m4 大腿部、m5 下腿部、m6 足裏、m7 腰部、m8 上肢、m9 足部、m10 股関節、m11 腹部・体幹部、T 中心線、W 水(湯)、Y1、Y2、Y3 区間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽と、
前記浴槽に設けられ、前記浴槽に入浴している入浴者の身体に向けて噴流を吐出する吐水部と、
前記噴流の状態を制御し、前記噴流の状態を、流量がゼロであるまたは相対的に流量の小さい第1の噴流状態と、相対的に流量の大きい第2の噴流状態と、に設定可能であり、且つ、前記第1の噴流状態と前記第2の噴流状態との間の移行時において前記入浴者の身体を動かせる強さの噴流を前記吐水部から間欠的に吐出させるように設定可能な制御部と、
少なくとも前記吐水部の運転に関する情報を取得する情報取得部と、
前記情報取得部が取得した情報を用いて前記入浴者の運動に関する情報を導出する導出部と、
前記導出部が導出した情報を表示する表示部と、
を備えたことを特徴とする浴槽装置。
【請求項2】
前記情報取得部は、前記入浴者が情報を入力する入力部を有することを特徴とする請求項1記載の浴槽装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記情報取得部が取得した情報に基づいて前記噴流の状態を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の浴槽装置。
【請求項4】
前記吐水部の運転に関する情報は、前記噴流の流量、前記第1または第2の噴流状態の回数、前記噴流の状態の変化の周期、及び前記吐水部が前記噴流を吐出する時間の少なくともいずれかに関する情報を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の浴槽装置。
【請求項5】
前記情報取得部は、前記浴槽内の水の温度に関する情報をさらに取得することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の浴槽装置。
【請求項6】
前記情報取得部は、前記浴槽が設置された空間の温度及び前記浴槽内の水の量の少なくともいずれかに関する情報をさらに取得することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の浴槽装置。
【請求項7】
前記情報取得部は、前記入浴者の年齡、性別、身長、及び体重の少なくともいずれかに関する情報をさらに取得することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の浴槽装置。
【請求項8】
前記情報取得部は、前記入浴者の血圧、心拍数、脈拍数、及び体温の少なくともいずれかに関する情報をさらに取得することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の浴槽装置。
【請求項9】
前記導出部は、前記吐水部が運転する前に前記入浴者が入力した情報のみを用いて前記入浴者の運動に関する情報を導出することを特徴とする請求項2〜8のいずれか1つに記載の浴槽装置。
【請求項10】
前記導出部は、前記噴流の流量及び前記噴流の状態の変化の周期を導出することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の浴槽装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−220722(P2010−220722A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69654(P2009−69654)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】