浴槽装置
【課題】 入浴者に継続的に運動させることができる浴槽装置を提供する
【解決手段】
本発明の一様態によれば、浴槽と、前記浴槽に設けられ背もたれ可能な第一の浴槽壁面と、それに対向して設けられた第二の浴槽壁面と、前記第二の浴槽壁面に設けられ、足裏に噴流を吐水する吐水開口を有する吐水部と、前記吐水部から吐水する噴流を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記噴流を足裏に吐水することにより足を屈曲させることを可能とし、前記吐水部は、前記吐水開口から所定距離噴出方向に離間した領域で噴出方向と垂直な方向に母指球サイズ所定流速以上で噴流される様に工夫され、前記吐水開口は、前記領域に足裏を置いた時に母指球サイズ以上の面積で足を屈曲させるのに十分な流量が噴流されるサイズを有し、前記吐水部からの吐水は、足裏に対して略水平に吐水される事を特徴とする浴槽装置が提供される。
【解決手段】
本発明の一様態によれば、浴槽と、前記浴槽に設けられ背もたれ可能な第一の浴槽壁面と、それに対向して設けられた第二の浴槽壁面と、前記第二の浴槽壁面に設けられ、足裏に噴流を吐水する吐水開口を有する吐水部と、前記吐水部から吐水する噴流を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記噴流を足裏に吐水することにより足を屈曲させることを可能とし、前記吐水部は、前記吐水開口から所定距離噴出方向に離間した領域で噴出方向と垂直な方向に母指球サイズ所定流速以上で噴流される様に工夫され、前記吐水開口は、前記領域に足裏を置いた時に母指球サイズ以上の面積で足を屈曲させるのに十分な流量が噴流されるサイズを有し、前記吐水部からの吐水は、足裏に対して略水平に吐水される事を特徴とする浴槽装置が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の様態は、一般に浴槽装置に関し、特に、入浴者に運動させる浴槽装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康やリラクゼーションへの関心が高まり求められている。そして、一般家庭浴槽において、水流浴機能を備える商品が広く展開されている。水流浴商品の主目的は、水流による入浴者へのマッサージ、疲労回復、そして、癒しとなっている。
【0003】
例えば、特許文献1には、一方向に流れる直接的かつ連続的にあたる一様流を生成し、完全に脱力できる状態の入浴者へ一様流をあて、体表面を刺激する技術が開示されている。そのなかで、体表面を刺激するだけの流量を維持するために吐水開口を格子状にするといった技術も開示されている。
【0004】
また、部分的なマッサージとして、特許文献2に、浴槽内部に足置き部が設けられ、この足置き部に噴流を噴出する吐出口が設けられた循環式浴槽が開示されている。
【0005】
一方、浴槽内での運動を行う提案もある。特許文献3には、浴槽内に踏み込み可能な踏み台を設ける技術が開示されている。踏み台にはバネによって踏み込み負荷が与えられており、入浴者は座位姿勢のまま片足で踏み台を踏み込むことにより、運動することができる。
【特許文献1】特開平2−1272号公報
【特許文献2】特開2005−287541号公報
【特許文献3】特開2003−236014号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、一般家庭浴槽での水流浴では水流による入浴者へのマッサージが主流となっており、筋力強化を目的としているものが少ない。また、浴槽内に踏み込み可能な踏み台を設ける技術は普段から運動習慣の無い人が運動を行うには、自ら運動しようという相当な意志の力を要する。特に、入浴時はリラックスした精神状態になっているため、意志の力を発揮することは困難である。このため、浴槽内に運動器具を設置しても、運動が長続きしないことが予想される。また、運動器具の取付・取り外しが面倒という問題もある。
本発明の目的は、入浴者に継続的に運動させることができる浴槽装置を提供することで
ある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一様態によれば、浴槽と、前記浴槽に設けられ背もたれ可能な第一の浴槽壁面と、前記第一の浴槽壁面に対向して設けられた第二の浴槽壁面と、前記第二の浴槽壁面に設けられ、足裏に噴流を吐水する吐水開口を有する吐水部と、前記吐水部から吐水する噴流を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記噴流を足裏に吐水することにより足を屈曲させることを可能とし、前記吐水部は、前記吐水開口から所定距離噴出方向に離間した領域で噴出方向と垂直な方向に母指球サイズ所定流速以上で噴流される様に工夫され前記吐水開口は、前記領域に足裏を置いた時に母指球サイズ以上の面積で足を屈曲させるのに十分な流量が噴流されるサイズを有し、前記吐水部からの吐水は、足裏に対して略水平に吐水される事を特徴とする浴槽装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、入浴者に継続的に運動させることができる浴槽装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る浴槽装置を例示する模式的断面図である。
【0010】
浴槽装置1には、浴槽2が設けられている。浴槽2の形状は例えば略直方体形状となる。そして、長手方向の一端部の内側面は、入浴者Mが入浴姿勢を保持し、入浴者の背面m1で背もたれ可能な第一の浴槽壁面2aとなっている。また、浴槽長手方向において、第一の浴槽壁面2aと対向して第二の浴槽壁面2bが設けられており、入浴者Mの足裏m2が接触する壁面となっている。第一の浴槽壁面2aと第二の浴槽壁面2bとは、底面2cと接している。
【0011】
浴槽2の長手方向の長さ、すなわち、浴槽2における第二の浴槽壁面2bと第一の浴槽壁面2aとの間の長さは、標準的な体格の入浴者Mが入浴姿勢をとったとき、背中m1を浴槽2の第一の浴槽壁面2aに当てて、足裏m2を第二の浴槽壁面2bに対向させたときに、足裏m2で吐水部3を覆うことができる程度の長さである。また、臀部においては、浴槽2の底面2cに接触させるようにする。
【0012】
浴槽2の第二の浴槽壁面2bには、入浴者Mの左足裏へ向かって噴流を吐水する左脚用の吐水部3Lと、右足裏に向かって噴流を吐水する右脚用の吐水部3R(以下総称して「吐水部3」とも言う)が含まれている。
【0013】
浴槽2の第二の浴槽壁面2bに取付けられた吐水部3は、入浴者Mの足裏m2の母指球へ噴流を積極的に吐水することを行うため、噴射力維持手段3aと吐水開口3b、そして、流水導入部3cを備えている。また、吐水部3と噴射力維持手段3aは配置さている
【0014】
この吐水部3は、入浴者Mの足裏m2を中心とした両脚部へ噴流を交互に吐水することを可能にする駆動部4と接続されている。この噴流の方向は、第二の浴槽壁面2bから第一の浴槽壁面2aに向かう方向である。これらの一対の吐水部3は、水平方向に配列されており、例えば、第二の浴槽壁面2bにおいて上下方向に延びる中心線に関して対象となる位置に配置されている。
【0015】
尚、図1においては、図示の便宜上、吐水部3L及び3Rを相互にずらして描いているが、実際には吐水部3L及び3Rは同じ高さに配置されている。後述するほかの断面図においても同様である。
【0016】
また、浴槽装置1には、水流を生成する駆動部4が設けられている。駆動部4は、図示しないポンプと切替弁によって構成される装置である。駆動部4の吸入口4sは浴槽2の内部に連通されている。これにより、駆動部4は浴槽2内から水を汲み上げ、水流を生成する。
【0017】
更に、浴槽装置1に備わる駆動部4は、吐水部3より足を屈曲させない“第一の噴流状態”から足を屈曲させる“第二の噴流状態”に水流の水量を調節することが出来る。その際、駆動部4による水流の水量調節は、駆動部4に接続される制御部5からの制御によって行われる。
【0018】
次に、本実施形態の動作について図1から図7を用いて説明する。
【0019】
図1に示すように、浴槽2内に水(湯)Wを入れた状態で、入浴者Mが浴槽2内に入り、入浴姿勢をとる。すなわち、入浴者Mは、臀部を浴槽2の底面2cに接触させ、背中m1を浴槽2の第一の浴槽壁面2aに当接させ、足裏m2を第二の浴槽壁面2bに対向させる。そして、入浴者Mは、両足裏m2で吐水部3L及び3Rを覆うように、足裏m2を当接させる。そのとき、吐水部3から吐水される水流を足裏m2で捉える初期姿勢をとる。
【0020】
図2(a)(b)は、吐水部3の正面図と断面図になる。図3は吐水部3に流れる水流の様子を示す。図2、図3に示されるように吐水部3に水流が流れ込むと、吐水部3に備わる噴流維持手段3aによって縮流される。噴流維持手段3aに縮流された噴流は、吐水部開口3bよりいきよい良く噴出される。その際、吐水開口3bより噴出された噴流は、浴槽に溜められた湯水を巻き込み、あたかも流量が増えたような状態を作るジェットポンプ効果を起こす。さらに、この噴流状態を吐水開口3bは、入浴者Mの足裏m2の母指球m3面積域で噴出し母指球m3面積域に足を屈曲するだけの押し圧力を与える。
【0021】
また、図3に示されるように、噴流維持手段3aによって縮流された噴流が、吐水開口3bより噴出された後、浴槽内に滞留する湯水を巻き込む。その際、導入部3cを伝って噴流の内部へ湯水を送り込むことで、湯水を巻き込むジェットポンプ効果がより高まることとなる。そして出力された噴流は、入浴者Mの足裏m2の母指球m3の吐水面積を足を九曲させる押圧力を持って刺激する。
【0022】
図4(A)、(B)、(C)は、吐水部3が足を屈曲させる“第二の噴流状態”で入浴者Mの足裏m2の母指球m3の面積域を吐水している状態を例示している。図4(A)は、流量Qが流入し流速v1で吐水された状態。そして、吐水面積が入浴者Mの足裏m2の母指球m3の面積域となることを示している。そして、その噴流がF1ニュートンの力を入浴者Mの足裏m2へ印加することを示している。
【0023】
図4(B)は、流量Qが流入し噴射力維持手段3aによって吐水開口3bから流速v2で噴流が吐水された状態。そして、吐水面積が入浴者Mの足裏m2の母指球m3の面積域となることを示している。また、足を屈曲させる“第二の噴流状態”で、入浴者Mの足裏m2へF2ニュートンの力が噴流によって印加されていることを示している。
【0024】
図4(C)は、吐水部3の吐水開口3bを狭くすることで、流量Qを受けて足を屈曲させる“第二の噴流状態”を吐水している状態を示している。この時、“第二の噴流状態”は、流量Q、流速V2であるが、入浴者Mが足裏m2に受ける力は、図4(B)と同じF2ニュートンとなる。
【0025】
噴流を入浴者Mが、足裏m2で受け止める初期姿勢を保持するとき、入浴者Mはリラックスした状態にあるが、浮力の働きによって身体が湯水内に水没しないよう、脚部(足裏)、臀部、体幹部(背中)で浮力に抗じるため、各支持点周りの筋群は微小な筋の活動を行うこととなる。しかしながら、これら筋群の活動は微小であり、無意識に行われているため入浴者は、上述した入浴の姿勢を普段入浴する時と同様に楽に保持することが可能となる。さらに、入浴者Mは、入浴者自身に加わる浮力の働きが入浴姿勢のバランスを乱し、それに対して、入浴者は、無意識に全身の筋肉を働かせて姿勢を安定させようとする補償動作を行う際に筋が活動する。
【0026】
図6は、本実施形態に係る浴槽装置1の動作を例示する模式的平面図であり、左脚用の吐水部3L及び右脚用の吐水部3Rから水流を交互に吐水させる場合を示す。
まず、駆動部4及び制御部5を作動させる。これにより、駆動部4が浴槽2内の水を吸入口4sから汲み上げて水流を生成する。そして、駆動部4が生成する噴流の水量は、制御部5からの指令を受けて駆動部4によって調節される。制御部5は、吐水部3から“足を屈曲させない第一の噴流状態”から“足を屈曲させる第二の噴流状態”へと制御し駆動部4からの水量を調節していることを示す。
【0027】
そして、制御部5は、吐水部3L及び3Rより左右に噴流を吐水するように駆動部4を制御する。左右交互の吐水は、ある時間t1においては、吐水部3Lより第二の噴流状態で吐水され、時間t2において、吐水部3Lは第一の噴流状態で吐水し、時間t3において時間t1同様に第二の噴流状態で吐水する。一方、吐水部3Rにおいては、時間t1においては、第一の噴流状態で吐水し、時間t2においては、第二の噴流状態となる。
【0028】
そして、時間t1において吐水部3Lが噴流を第二の噴流状態になったとき、入浴者Mの左脚の足関節、膝関節及び股関節は屈曲するとともに、左足部が、第二の浴槽壁面2bから離間し第一の浴槽壁面2aに向かって移動する。
【0029】
例えば、噴流の吐水時間t1〜t4は、2秒程度にする。ただし、バランス能力をトレーニングする場合、t1〜t4をゆっくりとした3〜6秒程度にすると良い。また、よりウォーキング動作に近づける場合は、t1〜t4を1〜2秒程度にするとよい。
【0030】
また、図4に示す時間t2の際、吐水部3Lは噴流の水量が低下し、一方、吐水部3Rは噴流の水量が増えている。水量の変動を以下に駆動部4に含まれる切替弁を例として説明する。吐水部3Lに接続される切替弁の流路開口面積が閉じると共に吐水の水量が減少し、一方吐水部3Rに接続される切替弁の流路開口面積が開くと共に水量が増して行く。これらは制御部から駆動部への切替指令によって切替弁が切り替わることで、吐水部3L及び3Rより、交互の吐水を行うことが出来る。ただし、駆動部4にポンプを配置し、制御部5からの制御指令によっても実現できる。
【0031】
図6で示す、時間t4において、制御部5の指令を受けた駆動部4が、右足用の吐水部3Rより噴流を吐水することで、入浴者の脚部が屈曲し、右足部が、第二の浴槽壁面2bから離間し第一の浴槽壁面2aに向かって移動する。以上、上述の吐水状態を左右の吐水部3L及び3Rにおいて繰り返すことにより、入浴者は、吐水部3L及び3Rから交互に吐水される噴流状態によって、左右脚部を交互に屈伸運動を行う。
【0032】
図4(A)、(B)、(C)で示す吐水部3に応じて左右脚部における交互屈伸運動は、入浴者Mに異なる使用感を与えることがモニター結果より示された。左右脚部における交互屈伸運動におけるやり易さについてのモニター結果を図5に示している。図5は、図4(A)、(B)、(C)で示す吐水部3を用いて、水流による左右脚部の交互屈伸運動を体感した後、運動しやすいと感じたものに対して票を入れてもらった。その集計結果を示している。
【0033】
主観評価の結果、脚部を動かし、運動し易いと感じた吐水部3は、図4(B)であった。他の吐水部3の感想を記述する。図4(A)は、噴流によって足を押す力が、弱い。図4(C)の吐水部3は、流量、流速が図4(B)と異なっていても入浴者Mの足裏m2へ伝える力F2ニュートンと同量であるにも関わらず、脚部の伸展屈曲運動が上手く出来なかったなどの意見が抽出されている。
【0034】
図5で示す結果は、陸上歩行で地面を蹴りだす際、蹴りだす力を地面に伝達する部位“母指球”を適切な力で押していないことが反映されたものである。図4(B)のみだけが、母指球面積域を保持し、かつ、足を屈曲させる“第二の噴流状態”すなわち入浴者Mの足裏m2へF2ニュートンの力を印加していることを示している。母指球直径をモニター参加者より計測した。結果、母指球の直径は31.2mm程度であった。
【0035】
図7(a)、(b)は、上述してきた吐水状態によって、入浴者Mがとりうる動作・状態を示す。図7(a)に図示するように、入浴者Mの脚部は、第一の噴流状態では、脚部を伸展する状態となる。そして、図7(b)のように吐水部3が噴流を第二の噴流状態になったとき、入浴者Mの足関節、膝関節及び股関節は屈曲し、足部が、第一の浴槽壁面2aに向かって移動する。
【0036】
さらに、屈曲する状態を作る噴流は、足部を包むように流れ場を生成するため、噴流から足部が外れないように力が働く。これと同じ現象は、噴水の上にピンポン玉を載せた時にピンポン玉が噴流の中心で留まる現象である。これによって効率よく噴流によって入浴者は脚部の屈伸運動ができる。
【0037】
従って、第一の吐水部31及び第二の吐水部32は、それぞれから吐水される噴流を第一の噴流状態と第二の噴流状態と交互に変化させ、入浴者Mの左右脚部を屈曲伸展させる。そして、入浴者Mの足部は、第二の浴槽壁面2bと第一の浴槽壁面2a間において並進方向に交互に往復することとなる。結果、左右脚部の交互屈伸運動は、歩行動作のような左右脚部の動きに近い運動となる。よって、本発明の一実施形態における装置は、お風呂の中で入浴者に歩行動作を模した入浴ウォーキングの運動を行わせることとなる。
【0038】
ここで、図8の(a)と(b)より、具体的に、他動的な屈伸運動によって起こる筋の活動を説明する。図8の(a)は、水流によってもたらされる他動運動によって活動する筋群を例示した図であり、図8(b)で示されている筋群の位置を示す。図8(b)は、縦軸に筋の活動量を示し、横軸に時間をとり、吐水状態に応じて脚部の異なる筋が活動していることを示す。なお、M4はハムストリングスを、M5は前脛骨筋を示す。S1時間において第二の噴流状態で吐水すると、脚部の屈曲より前脛骨筋M5が活動し始める。この結果は、足部が第二の浴槽壁面2bより離れ、第一の浴槽壁面2a側へ移動している状態で筋の活動が起こっている事を意味する。
【0039】
そして、次にS2時間で第二の噴流状態から第一の噴流状態と移る。それによって、入浴者Mの足部が第二の浴槽壁面2b側へ移動し、S3時間において、足部が吐水部3と第二の浴槽壁面2bに当接する。入浴者Mの足部が第二の浴槽壁面2bに当接すると、ハムストリングス(大腿二頭筋他)M4が活動することを図8の(b)より示している。このように、噴流に伴って起こる脚部の屈伸運動は、異なる筋群を働かせることで運動効果を高める。
【0040】
図8に図示される前脛骨筋M5は、ヒトの身体セグメントにおける下腿部に備わった筋である。前脛骨筋M5の働きは、歩行時、地面と足部とのクリアランスをとるために働く筋肉として知られている。よって、前脛骨筋M5を活動させる運動とは、転倒予防に貢献する運動を意味する。
【0041】
同じく、図8に図示されるハムストリングスM4は、ヒトの身体セグメントにおける大腿部に備わった筋群である。ハムストリングスM4は、大腿二頭筋、半膜様筋、半腱様筋、そして大内転筋によってなる筋群である。大腿二頭筋の働きは、主として歩行時における蹴りだす力、推進力を生成する筋として知られている。よって、ハムストリングスM4を刺激する運動とは、歩行速度の維持と歩行機能の向上に貢献できる運動を意味する。
【0042】
入浴者Mの足を屈曲させるために吐水部3から吐水される水量は、入浴者Mが背中m1を第一の浴槽壁面2aに当接させ、足裏m2を吐水部3に対向させたときに、入浴者Mの足関節、膝関節及び股関節を同時に屈曲させることが可能な量であり、例えば、80〜300リットル/分である。尚、水流の大きさが80リットル/分未満であると、入浴者の足裏m2が吐水部3から離れないことがあり、300リットル/分を超えると、浴槽2から水が溢れ出すことがある。
【0043】
入浴者Mの足を屈曲させるために吐水部3から吐水される水量は、入浴者Mが背中m1を第一の浴槽壁面2aに当接させ、足裏m2を吐水部3に対向させたときに、入浴者Mの足関節、膝関節及び股関節を同時に屈曲させることが可能な量であり、例えば、80〜300リットル/分である。尚、水流の大きさが80リットル/分未満であると、入浴者の足裏m2が吐水部3から離れないことがあり、300リットル/分を超えると、浴槽2から水が溢れ出すことがある。
【0044】
吐水される水量が110リットル/分を超えると吐水される噴流の押圧によって脚部移動距離が140mm以上になり、この条件を境に使用者が、水流による屈伸運動で運動感を感じることが確認されている。尚、モニター人数35名において、110リットル/分を超えると吐水で足部が140mm以上移動し、運動感を感じることを確認している。
【0045】
さらに屈伸運動において効果的で高い運動効果を得るには、150リットル/分程度の水流で運動を行うことが良く。さら好ましくは、180リットル/分程度の水流による運動が効果的である。なお、この水流の大きさは、一般家庭用浴槽を対象とした循環式浴槽において、マッサージ用に噴出される水流の大きさよりもかなり大きい。一般的なマッサージ用ブローにおいて、一つの吐水口から吐水される水量は、20リットル/分程度である。またマッサージブローの強い強度においても、水量は多くて40リットル/分程度である。
【0046】
上述した通り、噴流の流量を増やすことで足裏を押圧する力を増加させるとともに屈伸運動の可動範囲を広くする。この噴流の増加に伴って、足裏に備わる感覚器と脚部に備わる腱器官をより効果的に刺激する事となり、歩行に働く機能を効果的促進させることが可能となる。
【0047】
また、吐水される湯温は、36〜41℃帯域で使用するのが好ましい。例えば、温度が体温に近く、温熱の負荷が低い場合の36〜38℃では、吐水の水量を多くし屈伸運動の回動量を増やす、もしくは、吐水の周期を早くすることで屈伸運動の回数を増やすことにより運動強度を高め、効果的な運動を入浴者へ提供することが可能となる。
【0048】
一方、比較的短い時間で十分な運動を求める場合は、湯温度を高めに設定し(例えば39〜41℃)、温熱と運動の効果の相乗効果によって、湯の温度を低く設定した時に比べ、短い時間でエネルギー消費を起こし、効果的な運動を短い時間で行うことができる。
【0049】
温熱の効果と運動効果について、図9において説明する。
図9は、縦軸に脂肪の燃焼効率を示す呼吸商を示し、横軸に経過の時間を図示し、歩行と水流による他動運動を行った際の呼吸商を比較した値を示している。
条件は、陸上での時速4.3キロ程の歩行と湯温39度で吐水量が180リットル/分程度の水流を選択した本発明による入浴ウォーキングの場合を呼吸商より比較した。結果、高い脂肪燃焼効果が得られる領域に本発明の実施例による装置を用いた入浴ウォーキングが、陸上のウォーキングより速い時間帯で突入したことを示している。上記結果は、本装置が温熱と運動の相乗効果によって高い運動効果を生成することを示すものである。
【0050】
本実施形態の効果について説明する。
このように、本実施形態によれば、入浴者Mに運動をさせることができる。この運動は外部から与えられる他力的な他動運動となる。一般的な浴槽内で入浴姿勢をとると、実は、使用者の取り得る入浴姿勢は、浮力に抗じるように姿勢を保持するために無意識のうちに微小な筋の活動を起こす。この微小な筋活動を誘発した状態で、入浴者は、噴流を第一の吐水部31及び第二の吐水部32より交互に受ける。その結果、入浴者Mが噴流によって他動的に入浴ウォーキング運動を行う。そして、脚部筋群や脚部を支える体幹部に備わる筋を活動させることができる。
【0051】
さらに、吐水部3より吐水される噴流と、入浴者自身に加わる浮力の働きによって、入浴者Mの入浴姿勢のバランスが乱される。それに対して、入浴者は、無意識に全身の筋肉を働かせて姿勢を安定させようとする補償動作を行う。これによっても全身の運動をすることができる。このため、入浴者の意志力に依存する部分が少なく、長続きしやすい運動を本実施例における装置によって提供することが可能となる。また、この運動は入浴姿勢のまま行うことができるため、通常の入浴から運動へと移行がし易く、生活習慣の中で無理なく行える運動となる。この結果、運動を継続しやすい。
【0052】
上述の運動を35名が体験した。その結果、入浴中の入浴ウォーキングが入浴姿勢から、水流によって無理なく行われること。そして、継続して入浴ウォーキングを行うと運動感、筋の使用感を感じる。また風呂から出たあと、足が温かい。ジョギングよりも運動感を感じる、といった運動の効果を体験者が体感していることを確認している。さらに、5分を経たずに、発汗作用が促進されることなども体感しており、ダイエット効果にも適しておりメタボリック対策になるなどの所感も得た。
【0053】
更に本実施形態によれば、左脚用の吐水部3Lと右脚用の吐水部3Rから左右交互に入浴者の足裏へ噴流を吐水するため、入浴者は、脚部の屈伸運動に加え骨盤を中心とした旋回運動を起こすこととなる。その結果、脚部周りの筋群への運動効果に加えて、腹直筋、腹斜筋そして背筋群などへの運動効果が得られることを確認している。このように、上述の運動を浴槽内で行うことにより、脚部のみならず身体の広い範囲に対しての運動となり、効果的な運動を入浴者が得られることができる。
【0054】
更に本実施形態によれば、入浴者は、両足の吐水部3L及び3Rから吐水される水量に応じて屈伸運動より得る運動感が異なる。図10に示す実線Lは、吐水部3からの噴流によって入浴者が屈伸運動を起こった時の脚部が噴流によって第二の浴槽壁面から離れて移動する距離と吐水の流量との関係を表している。
【0055】
実線Lに示すように、足部の移動距離と吐水の流量には相関関係があり、吐水量が多くなると脚部移動量が増える。足部の異動距離が第二の浴槽壁面より離れるのは80リットル/分程度より、足部の移動開始し屈伸運動を行える。より効果的な運動を入浴者が行うには、吐水量を110リットル/分程度とするとよい。
【0056】
本実施例では、足部の移動距離は140mm程度となっていた。さらにより効果的な運動を得ようとすると、入浴者は吐水量が、180リットル/分程度を選択し、さらに高い効果的な運動を得ようとすると、200リットル/分程度となるように水量を調節してもよい。その際の脚部の移動距離は250mm〜300mm程度となっていることが実験より分かっている。
【0057】
尚、吐水部3の吐水開口3bは、図3に例示するよう、吐水部3は、入浴者Mの足裏m2の母指球へ噴流を積極的に吐水することを行うため、噴射力維持手段3aと吐水開口3b、そして、流水導入部3cを備えている。また、吐水部3と噴射力維持手段3aは同心円状に配置さている。吐水開口3bの外径は、入浴者Mの母指球面積域を捉えるためΦ31mm程度となり、噴射力維持手段3aの径によって定まる吐水開口3bの内径は、20mm程度が好ましい。より好ましくは、噴射力維持手段3aの径を、23mm程度とする。さらに好ましくは、24mm程度とする。例えば、吐水開口3bの外径が31mmで内径が23mmによって吐水部3を構成するとき、吐水部3より吐水される噴流は、流速8.0メータ/秒、流量は、160リットル/分となる。
【0058】
例えば、図11(a)、(b)、(c)、(d)に例示される吐水開口を用いて、入浴者Mは足裏母指球面積域に吐水することが可能となる。なお、吐水開口に使用する形状は、図11に表記されるものに限定されず、吐水開口によって吐水される噴流が足を屈曲させる“第二の噴流状態”、すなわち、足裏に伝える力が24ニュートン程度で、噴流の幅が母指球面積域になるものであれば良い。
【0059】
図11(a)、(b)に示すように、流水導入部3cを2本にすることで、吐水開口3bを広くし、吐水部3より噴出される水量を多くとることが可能となり、結果、ジェットポンプ効果が増加し、入浴者Mの足裏m2の母指球面積域に効果的な噴流を吐水することが可能となる。さらには、図11(b)、(c)に示すように母指球面積域となるように、複数の吐水開口を設けることで実現することも可能である。図3、11に示すように、入浴者Mの足裏母指球面積域で吐水することで伸展屈曲動作をより快適行わせることが可能となる。
【0060】
本具体例においては、浴槽2内に水(湯)Wを溜めた状態で、入浴者Mが浴槽2内に入り、入浴姿勢をとる。そして、制御部4の操作ボタンを操作することにより、浴槽装置1の運動の実行時間及び屈伸運動の周期を任意に設定する。なお、制御部5の中に予め複数の種類の運動モードが設定されており、入浴者が好みの運動モードを選択するようにしてもよい。
【0061】
例えば、入浴者が、運動負荷の高いモードを選択すると、タイマーが比較的短い周期で吐水する状態、吐水しない状態へと水量を切替える制御を、制御部5から駆動部4に対して出力する。又は、運動時間及び運動周期はタイマーが自動的に設定してもよい。例えば、湯の設定温度が39℃であるとき、タイマーは、1セットの運動時間を10分間に設定する。このように、本具体例によれば、運動の負荷を入浴者の好みに応じて任意に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施形態に係る浴槽装置を例示する模式的断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る浴槽装置における、吐水部を拡大し、吐水開口、流水導入部、噴射力維持手段を例示する模式的断面図と正面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る吐水部から吐水される噴流の流れを例示する模式的平面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る吐水部、異なる吐水開口を有する吐水部から吐水される噴流が入浴者の足裏母指球面積域に噴射され力を伝達している状態を例示する模式的断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る吐水部から吐水される噴流の流れに応じた感応試験結果を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る浴槽装置の動作を例示する模式的平面図である。
【図7】本発明の本実施形態に係る使用者の脚部の伸展および屈曲している状態を例示する図である。
【図8】本発明の本浴槽装置によって起こされる筋の活動を説明する図である。
【図9】本発明の浴槽装置によって起こされる運動効果を説明する図である。
【図10】本発明の浴槽装置によって起こされる噴流の流量と脚部の移動量との関係を例示する図である。
【図11】本発明の実施形態に係る吐水部における各種例を示す正面図である
【符号の説明】
【0063】
1 11 21 31 浴槽装置、2 浴槽、2a 第一の浴槽壁面、2b 第二の浴槽壁面、2c 底面、3 3L 3R 吐水部、3a 噴射力維持手段、3b 吐水開口、 3c 流水導入部、 4 駆動部、4s 吸入口、5 制御部、60 浴室ユニット、61 防水パン、62 壁パネル、M 入浴者、m1 背中、m2 足、m3 母指球 W 水
【技術分野】
【0001】
本発明の様態は、一般に浴槽装置に関し、特に、入浴者に運動させる浴槽装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康やリラクゼーションへの関心が高まり求められている。そして、一般家庭浴槽において、水流浴機能を備える商品が広く展開されている。水流浴商品の主目的は、水流による入浴者へのマッサージ、疲労回復、そして、癒しとなっている。
【0003】
例えば、特許文献1には、一方向に流れる直接的かつ連続的にあたる一様流を生成し、完全に脱力できる状態の入浴者へ一様流をあて、体表面を刺激する技術が開示されている。そのなかで、体表面を刺激するだけの流量を維持するために吐水開口を格子状にするといった技術も開示されている。
【0004】
また、部分的なマッサージとして、特許文献2に、浴槽内部に足置き部が設けられ、この足置き部に噴流を噴出する吐出口が設けられた循環式浴槽が開示されている。
【0005】
一方、浴槽内での運動を行う提案もある。特許文献3には、浴槽内に踏み込み可能な踏み台を設ける技術が開示されている。踏み台にはバネによって踏み込み負荷が与えられており、入浴者は座位姿勢のまま片足で踏み台を踏み込むことにより、運動することができる。
【特許文献1】特開平2−1272号公報
【特許文献2】特開2005−287541号公報
【特許文献3】特開2003−236014号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、一般家庭浴槽での水流浴では水流による入浴者へのマッサージが主流となっており、筋力強化を目的としているものが少ない。また、浴槽内に踏み込み可能な踏み台を設ける技術は普段から運動習慣の無い人が運動を行うには、自ら運動しようという相当な意志の力を要する。特に、入浴時はリラックスした精神状態になっているため、意志の力を発揮することは困難である。このため、浴槽内に運動器具を設置しても、運動が長続きしないことが予想される。また、運動器具の取付・取り外しが面倒という問題もある。
本発明の目的は、入浴者に継続的に運動させることができる浴槽装置を提供することで
ある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一様態によれば、浴槽と、前記浴槽に設けられ背もたれ可能な第一の浴槽壁面と、前記第一の浴槽壁面に対向して設けられた第二の浴槽壁面と、前記第二の浴槽壁面に設けられ、足裏に噴流を吐水する吐水開口を有する吐水部と、前記吐水部から吐水する噴流を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記噴流を足裏に吐水することにより足を屈曲させることを可能とし、前記吐水部は、前記吐水開口から所定距離噴出方向に離間した領域で噴出方向と垂直な方向に母指球サイズ所定流速以上で噴流される様に工夫され前記吐水開口は、前記領域に足裏を置いた時に母指球サイズ以上の面積で足を屈曲させるのに十分な流量が噴流されるサイズを有し、前記吐水部からの吐水は、足裏に対して略水平に吐水される事を特徴とする浴槽装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、入浴者に継続的に運動させることができる浴槽装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る浴槽装置を例示する模式的断面図である。
【0010】
浴槽装置1には、浴槽2が設けられている。浴槽2の形状は例えば略直方体形状となる。そして、長手方向の一端部の内側面は、入浴者Mが入浴姿勢を保持し、入浴者の背面m1で背もたれ可能な第一の浴槽壁面2aとなっている。また、浴槽長手方向において、第一の浴槽壁面2aと対向して第二の浴槽壁面2bが設けられており、入浴者Mの足裏m2が接触する壁面となっている。第一の浴槽壁面2aと第二の浴槽壁面2bとは、底面2cと接している。
【0011】
浴槽2の長手方向の長さ、すなわち、浴槽2における第二の浴槽壁面2bと第一の浴槽壁面2aとの間の長さは、標準的な体格の入浴者Mが入浴姿勢をとったとき、背中m1を浴槽2の第一の浴槽壁面2aに当てて、足裏m2を第二の浴槽壁面2bに対向させたときに、足裏m2で吐水部3を覆うことができる程度の長さである。また、臀部においては、浴槽2の底面2cに接触させるようにする。
【0012】
浴槽2の第二の浴槽壁面2bには、入浴者Mの左足裏へ向かって噴流を吐水する左脚用の吐水部3Lと、右足裏に向かって噴流を吐水する右脚用の吐水部3R(以下総称して「吐水部3」とも言う)が含まれている。
【0013】
浴槽2の第二の浴槽壁面2bに取付けられた吐水部3は、入浴者Mの足裏m2の母指球へ噴流を積極的に吐水することを行うため、噴射力維持手段3aと吐水開口3b、そして、流水導入部3cを備えている。また、吐水部3と噴射力維持手段3aは配置さている
【0014】
この吐水部3は、入浴者Mの足裏m2を中心とした両脚部へ噴流を交互に吐水することを可能にする駆動部4と接続されている。この噴流の方向は、第二の浴槽壁面2bから第一の浴槽壁面2aに向かう方向である。これらの一対の吐水部3は、水平方向に配列されており、例えば、第二の浴槽壁面2bにおいて上下方向に延びる中心線に関して対象となる位置に配置されている。
【0015】
尚、図1においては、図示の便宜上、吐水部3L及び3Rを相互にずらして描いているが、実際には吐水部3L及び3Rは同じ高さに配置されている。後述するほかの断面図においても同様である。
【0016】
また、浴槽装置1には、水流を生成する駆動部4が設けられている。駆動部4は、図示しないポンプと切替弁によって構成される装置である。駆動部4の吸入口4sは浴槽2の内部に連通されている。これにより、駆動部4は浴槽2内から水を汲み上げ、水流を生成する。
【0017】
更に、浴槽装置1に備わる駆動部4は、吐水部3より足を屈曲させない“第一の噴流状態”から足を屈曲させる“第二の噴流状態”に水流の水量を調節することが出来る。その際、駆動部4による水流の水量調節は、駆動部4に接続される制御部5からの制御によって行われる。
【0018】
次に、本実施形態の動作について図1から図7を用いて説明する。
【0019】
図1に示すように、浴槽2内に水(湯)Wを入れた状態で、入浴者Mが浴槽2内に入り、入浴姿勢をとる。すなわち、入浴者Mは、臀部を浴槽2の底面2cに接触させ、背中m1を浴槽2の第一の浴槽壁面2aに当接させ、足裏m2を第二の浴槽壁面2bに対向させる。そして、入浴者Mは、両足裏m2で吐水部3L及び3Rを覆うように、足裏m2を当接させる。そのとき、吐水部3から吐水される水流を足裏m2で捉える初期姿勢をとる。
【0020】
図2(a)(b)は、吐水部3の正面図と断面図になる。図3は吐水部3に流れる水流の様子を示す。図2、図3に示されるように吐水部3に水流が流れ込むと、吐水部3に備わる噴流維持手段3aによって縮流される。噴流維持手段3aに縮流された噴流は、吐水部開口3bよりいきよい良く噴出される。その際、吐水開口3bより噴出された噴流は、浴槽に溜められた湯水を巻き込み、あたかも流量が増えたような状態を作るジェットポンプ効果を起こす。さらに、この噴流状態を吐水開口3bは、入浴者Mの足裏m2の母指球m3面積域で噴出し母指球m3面積域に足を屈曲するだけの押し圧力を与える。
【0021】
また、図3に示されるように、噴流維持手段3aによって縮流された噴流が、吐水開口3bより噴出された後、浴槽内に滞留する湯水を巻き込む。その際、導入部3cを伝って噴流の内部へ湯水を送り込むことで、湯水を巻き込むジェットポンプ効果がより高まることとなる。そして出力された噴流は、入浴者Mの足裏m2の母指球m3の吐水面積を足を九曲させる押圧力を持って刺激する。
【0022】
図4(A)、(B)、(C)は、吐水部3が足を屈曲させる“第二の噴流状態”で入浴者Mの足裏m2の母指球m3の面積域を吐水している状態を例示している。図4(A)は、流量Qが流入し流速v1で吐水された状態。そして、吐水面積が入浴者Mの足裏m2の母指球m3の面積域となることを示している。そして、その噴流がF1ニュートンの力を入浴者Mの足裏m2へ印加することを示している。
【0023】
図4(B)は、流量Qが流入し噴射力維持手段3aによって吐水開口3bから流速v2で噴流が吐水された状態。そして、吐水面積が入浴者Mの足裏m2の母指球m3の面積域となることを示している。また、足を屈曲させる“第二の噴流状態”で、入浴者Mの足裏m2へF2ニュートンの力が噴流によって印加されていることを示している。
【0024】
図4(C)は、吐水部3の吐水開口3bを狭くすることで、流量Qを受けて足を屈曲させる“第二の噴流状態”を吐水している状態を示している。この時、“第二の噴流状態”は、流量Q、流速V2であるが、入浴者Mが足裏m2に受ける力は、図4(B)と同じF2ニュートンとなる。
【0025】
噴流を入浴者Mが、足裏m2で受け止める初期姿勢を保持するとき、入浴者Mはリラックスした状態にあるが、浮力の働きによって身体が湯水内に水没しないよう、脚部(足裏)、臀部、体幹部(背中)で浮力に抗じるため、各支持点周りの筋群は微小な筋の活動を行うこととなる。しかしながら、これら筋群の活動は微小であり、無意識に行われているため入浴者は、上述した入浴の姿勢を普段入浴する時と同様に楽に保持することが可能となる。さらに、入浴者Mは、入浴者自身に加わる浮力の働きが入浴姿勢のバランスを乱し、それに対して、入浴者は、無意識に全身の筋肉を働かせて姿勢を安定させようとする補償動作を行う際に筋が活動する。
【0026】
図6は、本実施形態に係る浴槽装置1の動作を例示する模式的平面図であり、左脚用の吐水部3L及び右脚用の吐水部3Rから水流を交互に吐水させる場合を示す。
まず、駆動部4及び制御部5を作動させる。これにより、駆動部4が浴槽2内の水を吸入口4sから汲み上げて水流を生成する。そして、駆動部4が生成する噴流の水量は、制御部5からの指令を受けて駆動部4によって調節される。制御部5は、吐水部3から“足を屈曲させない第一の噴流状態”から“足を屈曲させる第二の噴流状態”へと制御し駆動部4からの水量を調節していることを示す。
【0027】
そして、制御部5は、吐水部3L及び3Rより左右に噴流を吐水するように駆動部4を制御する。左右交互の吐水は、ある時間t1においては、吐水部3Lより第二の噴流状態で吐水され、時間t2において、吐水部3Lは第一の噴流状態で吐水し、時間t3において時間t1同様に第二の噴流状態で吐水する。一方、吐水部3Rにおいては、時間t1においては、第一の噴流状態で吐水し、時間t2においては、第二の噴流状態となる。
【0028】
そして、時間t1において吐水部3Lが噴流を第二の噴流状態になったとき、入浴者Mの左脚の足関節、膝関節及び股関節は屈曲するとともに、左足部が、第二の浴槽壁面2bから離間し第一の浴槽壁面2aに向かって移動する。
【0029】
例えば、噴流の吐水時間t1〜t4は、2秒程度にする。ただし、バランス能力をトレーニングする場合、t1〜t4をゆっくりとした3〜6秒程度にすると良い。また、よりウォーキング動作に近づける場合は、t1〜t4を1〜2秒程度にするとよい。
【0030】
また、図4に示す時間t2の際、吐水部3Lは噴流の水量が低下し、一方、吐水部3Rは噴流の水量が増えている。水量の変動を以下に駆動部4に含まれる切替弁を例として説明する。吐水部3Lに接続される切替弁の流路開口面積が閉じると共に吐水の水量が減少し、一方吐水部3Rに接続される切替弁の流路開口面積が開くと共に水量が増して行く。これらは制御部から駆動部への切替指令によって切替弁が切り替わることで、吐水部3L及び3Rより、交互の吐水を行うことが出来る。ただし、駆動部4にポンプを配置し、制御部5からの制御指令によっても実現できる。
【0031】
図6で示す、時間t4において、制御部5の指令を受けた駆動部4が、右足用の吐水部3Rより噴流を吐水することで、入浴者の脚部が屈曲し、右足部が、第二の浴槽壁面2bから離間し第一の浴槽壁面2aに向かって移動する。以上、上述の吐水状態を左右の吐水部3L及び3Rにおいて繰り返すことにより、入浴者は、吐水部3L及び3Rから交互に吐水される噴流状態によって、左右脚部を交互に屈伸運動を行う。
【0032】
図4(A)、(B)、(C)で示す吐水部3に応じて左右脚部における交互屈伸運動は、入浴者Mに異なる使用感を与えることがモニター結果より示された。左右脚部における交互屈伸運動におけるやり易さについてのモニター結果を図5に示している。図5は、図4(A)、(B)、(C)で示す吐水部3を用いて、水流による左右脚部の交互屈伸運動を体感した後、運動しやすいと感じたものに対して票を入れてもらった。その集計結果を示している。
【0033】
主観評価の結果、脚部を動かし、運動し易いと感じた吐水部3は、図4(B)であった。他の吐水部3の感想を記述する。図4(A)は、噴流によって足を押す力が、弱い。図4(C)の吐水部3は、流量、流速が図4(B)と異なっていても入浴者Mの足裏m2へ伝える力F2ニュートンと同量であるにも関わらず、脚部の伸展屈曲運動が上手く出来なかったなどの意見が抽出されている。
【0034】
図5で示す結果は、陸上歩行で地面を蹴りだす際、蹴りだす力を地面に伝達する部位“母指球”を適切な力で押していないことが反映されたものである。図4(B)のみだけが、母指球面積域を保持し、かつ、足を屈曲させる“第二の噴流状態”すなわち入浴者Mの足裏m2へF2ニュートンの力を印加していることを示している。母指球直径をモニター参加者より計測した。結果、母指球の直径は31.2mm程度であった。
【0035】
図7(a)、(b)は、上述してきた吐水状態によって、入浴者Mがとりうる動作・状態を示す。図7(a)に図示するように、入浴者Mの脚部は、第一の噴流状態では、脚部を伸展する状態となる。そして、図7(b)のように吐水部3が噴流を第二の噴流状態になったとき、入浴者Mの足関節、膝関節及び股関節は屈曲し、足部が、第一の浴槽壁面2aに向かって移動する。
【0036】
さらに、屈曲する状態を作る噴流は、足部を包むように流れ場を生成するため、噴流から足部が外れないように力が働く。これと同じ現象は、噴水の上にピンポン玉を載せた時にピンポン玉が噴流の中心で留まる現象である。これによって効率よく噴流によって入浴者は脚部の屈伸運動ができる。
【0037】
従って、第一の吐水部31及び第二の吐水部32は、それぞれから吐水される噴流を第一の噴流状態と第二の噴流状態と交互に変化させ、入浴者Mの左右脚部を屈曲伸展させる。そして、入浴者Mの足部は、第二の浴槽壁面2bと第一の浴槽壁面2a間において並進方向に交互に往復することとなる。結果、左右脚部の交互屈伸運動は、歩行動作のような左右脚部の動きに近い運動となる。よって、本発明の一実施形態における装置は、お風呂の中で入浴者に歩行動作を模した入浴ウォーキングの運動を行わせることとなる。
【0038】
ここで、図8の(a)と(b)より、具体的に、他動的な屈伸運動によって起こる筋の活動を説明する。図8の(a)は、水流によってもたらされる他動運動によって活動する筋群を例示した図であり、図8(b)で示されている筋群の位置を示す。図8(b)は、縦軸に筋の活動量を示し、横軸に時間をとり、吐水状態に応じて脚部の異なる筋が活動していることを示す。なお、M4はハムストリングスを、M5は前脛骨筋を示す。S1時間において第二の噴流状態で吐水すると、脚部の屈曲より前脛骨筋M5が活動し始める。この結果は、足部が第二の浴槽壁面2bより離れ、第一の浴槽壁面2a側へ移動している状態で筋の活動が起こっている事を意味する。
【0039】
そして、次にS2時間で第二の噴流状態から第一の噴流状態と移る。それによって、入浴者Mの足部が第二の浴槽壁面2b側へ移動し、S3時間において、足部が吐水部3と第二の浴槽壁面2bに当接する。入浴者Mの足部が第二の浴槽壁面2bに当接すると、ハムストリングス(大腿二頭筋他)M4が活動することを図8の(b)より示している。このように、噴流に伴って起こる脚部の屈伸運動は、異なる筋群を働かせることで運動効果を高める。
【0040】
図8に図示される前脛骨筋M5は、ヒトの身体セグメントにおける下腿部に備わった筋である。前脛骨筋M5の働きは、歩行時、地面と足部とのクリアランスをとるために働く筋肉として知られている。よって、前脛骨筋M5を活動させる運動とは、転倒予防に貢献する運動を意味する。
【0041】
同じく、図8に図示されるハムストリングスM4は、ヒトの身体セグメントにおける大腿部に備わった筋群である。ハムストリングスM4は、大腿二頭筋、半膜様筋、半腱様筋、そして大内転筋によってなる筋群である。大腿二頭筋の働きは、主として歩行時における蹴りだす力、推進力を生成する筋として知られている。よって、ハムストリングスM4を刺激する運動とは、歩行速度の維持と歩行機能の向上に貢献できる運動を意味する。
【0042】
入浴者Mの足を屈曲させるために吐水部3から吐水される水量は、入浴者Mが背中m1を第一の浴槽壁面2aに当接させ、足裏m2を吐水部3に対向させたときに、入浴者Mの足関節、膝関節及び股関節を同時に屈曲させることが可能な量であり、例えば、80〜300リットル/分である。尚、水流の大きさが80リットル/分未満であると、入浴者の足裏m2が吐水部3から離れないことがあり、300リットル/分を超えると、浴槽2から水が溢れ出すことがある。
【0043】
入浴者Mの足を屈曲させるために吐水部3から吐水される水量は、入浴者Mが背中m1を第一の浴槽壁面2aに当接させ、足裏m2を吐水部3に対向させたときに、入浴者Mの足関節、膝関節及び股関節を同時に屈曲させることが可能な量であり、例えば、80〜300リットル/分である。尚、水流の大きさが80リットル/分未満であると、入浴者の足裏m2が吐水部3から離れないことがあり、300リットル/分を超えると、浴槽2から水が溢れ出すことがある。
【0044】
吐水される水量が110リットル/分を超えると吐水される噴流の押圧によって脚部移動距離が140mm以上になり、この条件を境に使用者が、水流による屈伸運動で運動感を感じることが確認されている。尚、モニター人数35名において、110リットル/分を超えると吐水で足部が140mm以上移動し、運動感を感じることを確認している。
【0045】
さらに屈伸運動において効果的で高い運動効果を得るには、150リットル/分程度の水流で運動を行うことが良く。さら好ましくは、180リットル/分程度の水流による運動が効果的である。なお、この水流の大きさは、一般家庭用浴槽を対象とした循環式浴槽において、マッサージ用に噴出される水流の大きさよりもかなり大きい。一般的なマッサージ用ブローにおいて、一つの吐水口から吐水される水量は、20リットル/分程度である。またマッサージブローの強い強度においても、水量は多くて40リットル/分程度である。
【0046】
上述した通り、噴流の流量を増やすことで足裏を押圧する力を増加させるとともに屈伸運動の可動範囲を広くする。この噴流の増加に伴って、足裏に備わる感覚器と脚部に備わる腱器官をより効果的に刺激する事となり、歩行に働く機能を効果的促進させることが可能となる。
【0047】
また、吐水される湯温は、36〜41℃帯域で使用するのが好ましい。例えば、温度が体温に近く、温熱の負荷が低い場合の36〜38℃では、吐水の水量を多くし屈伸運動の回動量を増やす、もしくは、吐水の周期を早くすることで屈伸運動の回数を増やすことにより運動強度を高め、効果的な運動を入浴者へ提供することが可能となる。
【0048】
一方、比較的短い時間で十分な運動を求める場合は、湯温度を高めに設定し(例えば39〜41℃)、温熱と運動の効果の相乗効果によって、湯の温度を低く設定した時に比べ、短い時間でエネルギー消費を起こし、効果的な運動を短い時間で行うことができる。
【0049】
温熱の効果と運動効果について、図9において説明する。
図9は、縦軸に脂肪の燃焼効率を示す呼吸商を示し、横軸に経過の時間を図示し、歩行と水流による他動運動を行った際の呼吸商を比較した値を示している。
条件は、陸上での時速4.3キロ程の歩行と湯温39度で吐水量が180リットル/分程度の水流を選択した本発明による入浴ウォーキングの場合を呼吸商より比較した。結果、高い脂肪燃焼効果が得られる領域に本発明の実施例による装置を用いた入浴ウォーキングが、陸上のウォーキングより速い時間帯で突入したことを示している。上記結果は、本装置が温熱と運動の相乗効果によって高い運動効果を生成することを示すものである。
【0050】
本実施形態の効果について説明する。
このように、本実施形態によれば、入浴者Mに運動をさせることができる。この運動は外部から与えられる他力的な他動運動となる。一般的な浴槽内で入浴姿勢をとると、実は、使用者の取り得る入浴姿勢は、浮力に抗じるように姿勢を保持するために無意識のうちに微小な筋の活動を起こす。この微小な筋活動を誘発した状態で、入浴者は、噴流を第一の吐水部31及び第二の吐水部32より交互に受ける。その結果、入浴者Mが噴流によって他動的に入浴ウォーキング運動を行う。そして、脚部筋群や脚部を支える体幹部に備わる筋を活動させることができる。
【0051】
さらに、吐水部3より吐水される噴流と、入浴者自身に加わる浮力の働きによって、入浴者Mの入浴姿勢のバランスが乱される。それに対して、入浴者は、無意識に全身の筋肉を働かせて姿勢を安定させようとする補償動作を行う。これによっても全身の運動をすることができる。このため、入浴者の意志力に依存する部分が少なく、長続きしやすい運動を本実施例における装置によって提供することが可能となる。また、この運動は入浴姿勢のまま行うことができるため、通常の入浴から運動へと移行がし易く、生活習慣の中で無理なく行える運動となる。この結果、運動を継続しやすい。
【0052】
上述の運動を35名が体験した。その結果、入浴中の入浴ウォーキングが入浴姿勢から、水流によって無理なく行われること。そして、継続して入浴ウォーキングを行うと運動感、筋の使用感を感じる。また風呂から出たあと、足が温かい。ジョギングよりも運動感を感じる、といった運動の効果を体験者が体感していることを確認している。さらに、5分を経たずに、発汗作用が促進されることなども体感しており、ダイエット効果にも適しておりメタボリック対策になるなどの所感も得た。
【0053】
更に本実施形態によれば、左脚用の吐水部3Lと右脚用の吐水部3Rから左右交互に入浴者の足裏へ噴流を吐水するため、入浴者は、脚部の屈伸運動に加え骨盤を中心とした旋回運動を起こすこととなる。その結果、脚部周りの筋群への運動効果に加えて、腹直筋、腹斜筋そして背筋群などへの運動効果が得られることを確認している。このように、上述の運動を浴槽内で行うことにより、脚部のみならず身体の広い範囲に対しての運動となり、効果的な運動を入浴者が得られることができる。
【0054】
更に本実施形態によれば、入浴者は、両足の吐水部3L及び3Rから吐水される水量に応じて屈伸運動より得る運動感が異なる。図10に示す実線Lは、吐水部3からの噴流によって入浴者が屈伸運動を起こった時の脚部が噴流によって第二の浴槽壁面から離れて移動する距離と吐水の流量との関係を表している。
【0055】
実線Lに示すように、足部の移動距離と吐水の流量には相関関係があり、吐水量が多くなると脚部移動量が増える。足部の異動距離が第二の浴槽壁面より離れるのは80リットル/分程度より、足部の移動開始し屈伸運動を行える。より効果的な運動を入浴者が行うには、吐水量を110リットル/分程度とするとよい。
【0056】
本実施例では、足部の移動距離は140mm程度となっていた。さらにより効果的な運動を得ようとすると、入浴者は吐水量が、180リットル/分程度を選択し、さらに高い効果的な運動を得ようとすると、200リットル/分程度となるように水量を調節してもよい。その際の脚部の移動距離は250mm〜300mm程度となっていることが実験より分かっている。
【0057】
尚、吐水部3の吐水開口3bは、図3に例示するよう、吐水部3は、入浴者Mの足裏m2の母指球へ噴流を積極的に吐水することを行うため、噴射力維持手段3aと吐水開口3b、そして、流水導入部3cを備えている。また、吐水部3と噴射力維持手段3aは同心円状に配置さている。吐水開口3bの外径は、入浴者Mの母指球面積域を捉えるためΦ31mm程度となり、噴射力維持手段3aの径によって定まる吐水開口3bの内径は、20mm程度が好ましい。より好ましくは、噴射力維持手段3aの径を、23mm程度とする。さらに好ましくは、24mm程度とする。例えば、吐水開口3bの外径が31mmで内径が23mmによって吐水部3を構成するとき、吐水部3より吐水される噴流は、流速8.0メータ/秒、流量は、160リットル/分となる。
【0058】
例えば、図11(a)、(b)、(c)、(d)に例示される吐水開口を用いて、入浴者Mは足裏母指球面積域に吐水することが可能となる。なお、吐水開口に使用する形状は、図11に表記されるものに限定されず、吐水開口によって吐水される噴流が足を屈曲させる“第二の噴流状態”、すなわち、足裏に伝える力が24ニュートン程度で、噴流の幅が母指球面積域になるものであれば良い。
【0059】
図11(a)、(b)に示すように、流水導入部3cを2本にすることで、吐水開口3bを広くし、吐水部3より噴出される水量を多くとることが可能となり、結果、ジェットポンプ効果が増加し、入浴者Mの足裏m2の母指球面積域に効果的な噴流を吐水することが可能となる。さらには、図11(b)、(c)に示すように母指球面積域となるように、複数の吐水開口を設けることで実現することも可能である。図3、11に示すように、入浴者Mの足裏母指球面積域で吐水することで伸展屈曲動作をより快適行わせることが可能となる。
【0060】
本具体例においては、浴槽2内に水(湯)Wを溜めた状態で、入浴者Mが浴槽2内に入り、入浴姿勢をとる。そして、制御部4の操作ボタンを操作することにより、浴槽装置1の運動の実行時間及び屈伸運動の周期を任意に設定する。なお、制御部5の中に予め複数の種類の運動モードが設定されており、入浴者が好みの運動モードを選択するようにしてもよい。
【0061】
例えば、入浴者が、運動負荷の高いモードを選択すると、タイマーが比較的短い周期で吐水する状態、吐水しない状態へと水量を切替える制御を、制御部5から駆動部4に対して出力する。又は、運動時間及び運動周期はタイマーが自動的に設定してもよい。例えば、湯の設定温度が39℃であるとき、タイマーは、1セットの運動時間を10分間に設定する。このように、本具体例によれば、運動の負荷を入浴者の好みに応じて任意に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施形態に係る浴槽装置を例示する模式的断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る浴槽装置における、吐水部を拡大し、吐水開口、流水導入部、噴射力維持手段を例示する模式的断面図と正面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る吐水部から吐水される噴流の流れを例示する模式的平面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る吐水部、異なる吐水開口を有する吐水部から吐水される噴流が入浴者の足裏母指球面積域に噴射され力を伝達している状態を例示する模式的断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る吐水部から吐水される噴流の流れに応じた感応試験結果を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る浴槽装置の動作を例示する模式的平面図である。
【図7】本発明の本実施形態に係る使用者の脚部の伸展および屈曲している状態を例示する図である。
【図8】本発明の本浴槽装置によって起こされる筋の活動を説明する図である。
【図9】本発明の浴槽装置によって起こされる運動効果を説明する図である。
【図10】本発明の浴槽装置によって起こされる噴流の流量と脚部の移動量との関係を例示する図である。
【図11】本発明の実施形態に係る吐水部における各種例を示す正面図である
【符号の説明】
【0063】
1 11 21 31 浴槽装置、2 浴槽、2a 第一の浴槽壁面、2b 第二の浴槽壁面、2c 底面、3 3L 3R 吐水部、3a 噴射力維持手段、3b 吐水開口、 3c 流水導入部、 4 駆動部、4s 吸入口、5 制御部、60 浴室ユニット、61 防水パン、62 壁パネル、M 入浴者、m1 背中、m2 足、m3 母指球 W 水
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽と、
前記浴槽に設けられ
背もたれ可能な第一の浴槽壁面と、
前記第一の浴槽壁面に対向して設けられた第二の浴槽壁面と、
前記第二の浴槽壁面に設けられ、足裏に噴流を吐水する吐水開口を有する吐水部と、
前記吐水部から吐水する噴流を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記噴流を足裏に吐水することにより足を屈曲させることを可能とし、
前記吐水部は、前記吐水開口から所定距離噴出方向に離間した領域で噴出方向と垂直な方向に母指球サイズ所定流速以上で噴流される様に工夫され、
前記吐水開口は、前記領域に足裏を置いた時に母指球サイズ以上の面積で足を屈曲させるのに十分な流量が噴流されるサイズを有し、
前記吐水部からの吐水は、足裏に対して略水平に吐水される事を特徴とする浴槽装置。
【請求項2】
前記吐水部が、複数の吐水開口を有することを特徴とする請求項1に記載の浴槽装置。
【請求項3】
前記吐水部が、母指球サイズで噴流を吐水するための噴射力維持手段を前記吐水開口内部に備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の浴槽装置。
【請求項4】
前記吐水部が、母指球サイズで噴流を吐水するための噴射力維持手段を前記吐水開口内部に同心円状に備えたことを特徴とする請求項1乃至3に記載の浴槽装置。
【請求項5】
前記吐水部の、前記吐水開口と前記噴射力維持手段を接続し、前記噴射力維持手段に向けて流水を導入する導入部を設けたことを特徴とする請求項1乃至4に記載の浴槽装置。
【請求項1】
浴槽と、
前記浴槽に設けられ
背もたれ可能な第一の浴槽壁面と、
前記第一の浴槽壁面に対向して設けられた第二の浴槽壁面と、
前記第二の浴槽壁面に設けられ、足裏に噴流を吐水する吐水開口を有する吐水部と、
前記吐水部から吐水する噴流を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記噴流を足裏に吐水することにより足を屈曲させることを可能とし、
前記吐水部は、前記吐水開口から所定距離噴出方向に離間した領域で噴出方向と垂直な方向に母指球サイズ所定流速以上で噴流される様に工夫され、
前記吐水開口は、前記領域に足裏を置いた時に母指球サイズ以上の面積で足を屈曲させるのに十分な流量が噴流されるサイズを有し、
前記吐水部からの吐水は、足裏に対して略水平に吐水される事を特徴とする浴槽装置。
【請求項2】
前記吐水部が、複数の吐水開口を有することを特徴とする請求項1に記載の浴槽装置。
【請求項3】
前記吐水部が、母指球サイズで噴流を吐水するための噴射力維持手段を前記吐水開口内部に備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の浴槽装置。
【請求項4】
前記吐水部が、母指球サイズで噴流を吐水するための噴射力維持手段を前記吐水開口内部に同心円状に備えたことを特徴とする請求項1乃至3に記載の浴槽装置。
【請求項5】
前記吐水部の、前記吐水開口と前記噴射力維持手段を接続し、前記噴射力維持手段に向けて流水を導入する導入部を設けたことを特徴とする請求項1乃至4に記載の浴槽装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−99216(P2010−99216A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−272730(P2008−272730)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
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