説明

浴用剤組成物

【課題】保湿効果が高く、べたつきもない浴用剤組成物を提供する。
【解決手段】非イオン界面活性剤を、8.0〜21.0質量%、油性成分を70〜90質量%、および水を2.0〜4.0質量%含有する浴用剤組成物において、前記非イオン界面活性剤が、以下の(A)〜(C)の各群からそれぞれ一つ以上選択され、浴水と混合した状態でメジアン径が3.0μm超〜30μmである乳化粒子を形成する浴用剤組成物:ここで、(A)は、イソステアリン酸PEG−10グリセリル、ジイソステアリン酸PEG−20グリセリルおよびトリイソステアリン酸PEG−30グリセリルからなる群であり、(B)は、オレイン酸プロピレングリコール、ジイソステアリン酸プロピレングリコールおよびステアリン酸プロピレングリコールからなる群であり、(C)は、オレイン酸ポリグリセリル−6、ラウリン酸ポリグリセリル−5、カプリン酸ポリグリセリル−2、ペンタオレイン酸ポリグリセリル−10、トリオレイン酸ポリグリセリル−5、モノステアリン酸ポリグリセリル−6およびペンタステアリン酸ポリグリセリル−10からなる群である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明な液体で、浴水と混合した状態で水中油型エマルションの分散体である浴用剤組成物に関し、特に保湿効果が高いにも関わらず、べたつきがない自己乳化型の浴用剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油性成分を配合した液体浴用剤は、浴水に投入した際に乳化する自己乳化型の浴用剤と予め乳化しているエマルション型の浴用剤がある。
自己乳化型の浴用剤は、種々の油性成分と界面活性剤とを組み合わせた組成物が提案されている。例えば特許文献1では、特定の油性成分に、「成分(B)の乳化剤として、HLBが11.5以上の乳化剤とHLBが11.5未満の乳化剤の混合物からなるHLBの加重平均が8〜12のものである、自己乳化型浴用剤組成物。(請求項1)。」が記載されている。
【0003】
特許文献2では、特定の化学式で示されるポリオキシエチレンソルビット誘導体2〜30質量%と特定のエステル化合物20〜95質量%とを含有し、前記特定のソルビット誘導体中のアシル基の総和の85質量%以上がオレイル基である自己乳化型油性化粧料が、オレイル基の含有量が高く水への分散性に優れることが記載されている。
【0004】
一方、乳化粒子の平均粒子径と入浴剤の特性について記載した従来技術はあまり知られていない。特許文献3には、特に技術的理由は記載されていないが、「40℃の浴湯に溶解した時、乳化粒子の平均粒子径が3μm以下、更に2μm以下となるのが好ましい。」との記載がある。
特許文献4では、「浴水へ投入した際にすばやく転相し浴水中に乳化分散し、更にその乳化粒子の平均粒子径(メジアン径)も1μm以下と極めて微細であるため安定的に浴水を白濁させ、油浮き等の問題も生じず非常に好ましい(段落0008)。」また、同文献は表2で、乳化分散性が○と△である場合にそれぞれ乳化粒子径(メジアン径)「0.24μm、0.28μm」の測定結果の記載があるが、入浴剤の特性との関係は具体的には記載されていない。
【0005】
【特許文献1】特開平10‐36250号公報
【特許文献2】WO2003/101408号
【特許文献3】特許第3905249号公報
【特許文献4】特開2011−16764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、自己乳化型浴用剤について、浴水中の粒子径と保湿効果を検討した結果、浴水中の粒子径を特定範囲となるように組成を制御することで優れた特性を示す浴用剤が得られることを知見し本発明に至った。本発明は、保湿効果が高いにもかかわらず、べたつきもない浴用剤組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(9)を提供する。
(1)非イオン界面活性剤を、8.0〜21.0質量%、油性成分を70〜90質量%、および水を2.0〜4.0質量%含有する浴用剤組成物において、
前記非イオン界面活性剤が、以下の(A)〜(C)の各群からそれぞれ一つ以上選択され、浴水と混合した状態でメジアン径が3.0μm超〜30μmである乳化粒子を形成する浴用剤組成物:ここで、(A)は、イソステアリン酸PEG−10グリセリル、ジイソステアリン酸PEG−20グリセリルおよびトリイソステアリン酸PEG−30グリセリルからなる群であり、(B)は、オレイン酸プロピレングリコール、ジイソステアリン酸プロピレングリコールおよびステアリン酸プロピレングリコールからなる群であり、(C)は、オレイン酸ポリグリセリル−6、ラウリン酸ポリグリセリル−5、カプリン酸ポリグリセリル−2、ペンタオレイン酸ポリグリセリル−10、トリオレイン酸ポリグリセリル−5、モノステアリン酸ポリグリセリル−6およびペンタステアリン酸ポリグリセリル−10からなる群である。
(2)前記(A)が、5.2〜6.5質量%、前記(B)が、1.0〜4.0質量%、前記(C)が、1.5〜5.5質量%、で含有される(1)に記載の浴用剤組成物。
(3)前記非イオン界面活性剤が、前記(C)群から2種以上選択され、選択された各種の配合量は、2.8質量%以下である(1)または(2)に記載の浴用剤組成物。
(4)前記非イオン界面活性剤の加重平均HLBが7.0〜10.0である(1)〜(3)のいずれかに記載の浴用剤組成物。
(5)前記油性成分が、少なくとも1種の炭化水素系油を含む(1)〜(4)のいずれかに記載の浴用剤組成物。
(6)前記炭化水素系油が、スクワランおよび流動パラフィンからなる群から選択される少なくとも1つである(1)〜(5)のいずれかに記載の浴用剤組成物。
(7)前記油性成分が、前記炭化水素系油と、さらにエステル油を、5.0質量%以上含む(1)〜(6)のいずれかに記載の浴用剤組成物。
(8)前記油性成分70〜90質量%に対して、スクワラン15.0質量%以下、流動パラフィン65〜80質量%、エステル油5.0〜10.0質量%含有する(1)〜(7)のいずれかに記載の浴用剤組成物。
(9)前記浴水が30℃〜50℃である(1)〜(8)のいずれかに記載の浴用剤組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、保湿効果が高く、べたつきもない浴用剤組成物およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例2の組成物を、浴水中に混合し、レーザー回折粒度分布測定装置で粒子径に対する相対粒子量と積算粒子量とを測定した結果を示すグラフである。
【図2】市販入浴剤(1)を、浴水中に混合し、レーザー回折粒度分布測定装置で粒子径に対する相対粒子量と積算粒子量とを測定した結果を示すグラフである。
【図3】市販入浴剤(2)を、浴水中に混合し、レーザー回折粒度分布測定装置で粒子径に対する相対粒子量と積算粒子量とを測定した結果を示すグラフである。
【図4】市販入浴剤(3)を、浴水中に混合し、レーザー回折粒度分布測定装置で粒子径に対する相対粒子量と積算粒子量とを測定した結果を示すグラフである。
【図5】市販入浴剤(4)を、浴水中に混合し、レーザー回折粒度分布測定装置で粒子径に対する相対粒子量と積算粒子量とを測定した結果を示すグラフである。
【図6】市販入浴剤(5)を、浴水中に混合し、レーザー回折粒度分布測定装置で粒子径に対する相対粒子量と積算粒子量とを測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明者らの検討結果によれば、自己乳化型浴用剤は、浴水と混合した際に乳化するという性質上、油性成分を多く配合できるため保湿効果を高められる。エマルション型と異なり熱力学的に安定なため長期間分離しない利点がある。
しかし油性成分の物理的状態によっては乾燥肌等に使用する場合に保湿効果が十分ではない問題があることがわかった。保湿効果を高めようとするとべたつきがおこるという欠点がある。
本発明者等は、従来の入浴剤より保湿効果が高く、べたつきもない自己乳化型浴用剤が得られればより有用であるとの課題を知見し、研究を行った。
【0011】
その結果、浴水への混合の際に得られる乳化粒子の粒径の違いに着目し、保湿効果やべたつき等との関係を検討した結果、従来多くの市販例で見られる乳化後の浴水中での平均粒子径(以下、メジアン径という)が、1μm以下である自己乳化型浴用剤は、べたつきがなくある程度のしっとり感も実感でき浴槽を汚すことも少ないが、その半面、皮膚への付着が少ないため、乾燥皮膚ではしっとり感が不十分であることがわかった。
乳化後のメジアン径が、30μm超になると皮膚への付着は多くなり保湿効果は高まるが、べたつき感が強くなり、浴槽が汚れる等の問題があることがわかった。
【0012】
下記表1に示す成分および量で浴用剤組成物を調整し、40℃の浴水1L中に0.10mLの割合で混合し、水中油型のエマルションとし、メジアン径をレーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所、SALD-7100)で測定した。
得られた乳化粒子の大きさとその特性をヒトによる官能試験で評価した。結果を表1に示す。
【0013】
【表1】

【0014】
上記で得られた結果をさらに詳細に検討して、浴水中で保湿効果が高いにもかかわらずべたつきのない範囲で、特定の油性成分と特定の非イオン界面活性剤を特定の量範囲で組み合わせることで、浴水中へ混合した際にメジアン径が3.0μm超〜30μmの粒子を形成し、優れた保湿効果、べたつきのなさ、浴槽が汚れにくく、製品保存中に白濁や分離が起こらない、自己乳化型の浴用剤組成物を得た。
【0015】
本発明の浴用剤組成物は、
(1)非イオン界面活性剤を8.0〜21.0質量%、
(2)油性成分を70〜90質量%、および
(3)水を2.0〜4.0質量%含有する組成物である。
(4)非イオン界面活性剤が、以下の(A)〜(C)からなる3つの群の各群からそれぞれ一つ以上選択される。
ここで、
(A)は、イソステアリン酸PEG−10グリセリル、ジイソステアリン酸PEG−20グリセリルおよびトリイソステアリン酸PEG−30グリセリルからなる群であり、
(B)は、オレイン酸プロピレングリコール、ジイソステアリン酸プロピレングリコールおよびステアリン酸プロピレングリコールからなる群であり、
(C)は、オレイン酸ポリグリセリル−6、ラウリン酸ポリグリセリル−5、カプリン酸ポリグリセリル−2、ペンタオレイン酸ポリグリセリル−10、トリオレイン酸ポリグリセリル−5、モノステアリン酸ポリグリセリル−6およびペンタステアリン酸ポリグリセリル−10からなる群である。
(5)さらに、本発明の浴用剤組成物は、浴水と混合した状態で水中油型エマルションの分散体を形成し、乳化粒子のメジアン径が3.0μm超〜30μmである。
【0016】
前記非イオン界面活性剤の量は、合計、8.0〜21.0質量%あればよいが、前記(A)が、5.2〜6.5質量%、前記(B)が、1.0〜4.0質量%、前記(C)が、1.5〜5.5質量%の割合で含有されるのが好ましい。前記(A)が、5.5〜6.0質量%、前記(B)が、1.0〜2.8質量%、前記(C)が、1.7〜 5.0質量%であるのがより好ましい。前記(A)が、5.6〜6.0質量%、前記(B)が、1.5〜2.5質量%、前記(C)が、3.2〜4.5質量%の割合で含有されるのがさらに好ましい。
【0017】
前記非イオン界面活性剤は、(C)群から2種以上選択され、選択される各種の配合量は、質量比で、2.8質量%以下であるのが好ましい。
【0018】
本発明の浴用剤の特徴の一つは、浴水と混合した状態でメジアン径が3.0μm超〜30μmである乳化粒子を形成する水中油型エマルションの分散体である。メジアン径が好ましくは3.5μm〜25μm、より好ましくは4.0μm〜20μm、さらに好ましくは4.0μm〜12μmである。乳化粒子のメジアン径がこの範囲であると、保湿効果が高くべたつきもない入浴効果が得られる。
【0019】
油性成分は、炭化水素系油としては、流動パラフィン、スクワラン、スクワレン、ワセリン、パラフィン、α-オレフィンオリゴマー、マイクロクリスタンワックス、オゾケライト、セレシン、プリスタン等が挙げられる。炭化水素系油以外の油性成分としては、オクタン酸セチル、アジピン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸グリセリド、ステアリン酸ブチル、イソステアリン酸コレステリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリカプリン酸グリセリル、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、ジ2−エチルヘキサン酸ネオペンチレングリコール、トリ2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール等のエステル系油剤;コメ胚芽油、糠油、オリーブ油、ホホバ油、大豆油、アーモンド油、オリーブ油、ヒノキ油、桂皮油、ひまし油、ヤシ油、ラベンダー油、ユーカリ油、ローズ油、セージ油等の植物油;オレンジラフィー油等の液体油性成分;セラミド、ステロール、ステロールエステル、脂肪酸、ミツロウ、カルナウバロウ等の固体油性成分;ラノリン等が挙げられる。流動パラフィン、スクワランが好ましく、エステル油は、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリカプリン酸グリセリルが好ましい。スクワラン、ステロール、ステロールエステルは、皮脂に近い成分であるため好ましく、エステル油は、皮脂との親和性が高いため好ましく、コメ胚芽油は皮脂分泌を促進する作用があるため好ましい。
炭化水素系油以外の油性成分は、5.0質量%以上含有してもよい。好ましくは、5.0〜10.0質量%含有してもよい。流動パラフィン、スクワラン、エステル油をそれぞれ好ましくは、65〜80質量%、15.0質量%以下、5.0〜10.0質量%含有してもよい。
【0020】
本発明の浴用剤組成物は、油性成分は、70〜90質量%含まれるが、好ましくは、75〜90質量%、より好ましくは80〜90質量%含有する。油性成分と非イオン界面活性剤との配合比率は、油性成分:界面活性剤の質量比で、3.5:1〜12:1が好ましく、5:1〜11:1がより好ましく、6:1〜9:1がさらに好ましい。配合比率がこの範囲であると、浴水と混合して、水中油型エマルションの分散体となった際に乳化粒子の大きさが適切な範囲となる。
【0021】
水分は、2.0〜4.0質量%含まれる。好ましくは、2.2〜3.8質量%、より好ましくは2.5〜3.5質量%含まれる。この範囲であると浴用剤組成物の透明性が得られる。
【0022】
前記非イオン界面活性剤の加重平均HLBは、7.0〜10.0であるのが好ましく、7.5〜9.5であるのがより好ましい。HLBの値は、親油基と親水基の間のバランスを示す値であり、特開2001-327854号公報、特開2005-281151号公報の記載に準じてGriffinの式を用いて求める。
【0023】
本発明の浴用剤組成物の調製方法は、組成物の原液が透明な液体で、浴水と混合した状態で水中油型エマルションの分散体となりメジアン径が3.0μm超〜30μmである乳化粒子を形成するよう、非イオン界面活性剤を、8.0〜21.0質量%、油性成分を70〜90質量%、および水を2.0〜4.0質量%の割合で混合して調製する。特に、上記の非イオン界面活性剤として、ポリオキシエチレングリセリルエーテル脂肪酸エステル類、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類からそれぞれ1種以上選択して、3種以上、好ましくは4種の非イオン界面活性剤を組み合わせて、浴水中のメジアン径が前記範囲となるように調製する方法が好ましい。
【0024】
本発明の入浴剤には、上記成分以外に、前記(A)〜(C)以外の界面活性剤、無機又は有機酸類、生薬/植物エキス/ビタミン類等の薬効成分、多糖/蛋白/アミノ酸/酵素類、アルコール類又は多価アルコール類、水溶性高分子類、香料、染料/色素/顔料等を配合することができる。
【0025】
生薬/植物エキス/ビタミン類としては、ソウジュツ、ビャクジュツ、カノコソウ、ケイガイ、コクボク、センキュウ、橙皮、トウキ、ショウキョウ末、ニンジン、ケイヒ、シャクヤク、ハッカ葉、オウゴン、サンシン、ブクリョウ、ドクカツ、ショウブ、ガイヨウ、マツブサ、ビャクシ、ジュウヤク、リュウノウ、サフラン、オウバクエキス、チンピ、ウイキョウ、カンピ末、カミツレ、アロエ、アロエベラ、メリッサ、ローズマリー、マロニエ、西洋ノコギリ草、米糠エキス、オニオンエキスやガーリックエキス、アルニカ、ビタミンA、B、C、D、E、F、K等が挙げられる。
【0026】
多糖/蛋白/アミノ酸/酵素類としては、以下が例示できる。
澱粉、カラギーナン、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、キチン、キトサン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸等の多糖類、コラーゲン、エラスチン、ケラチン、フィブロイン、カゼイン等の蛋白質やその誘導体、ベタインやその誘導体、アラニン、グリシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、スレオニン等のアミノ酸類、セラミド類、これらを含有すると保湿効果がより高められる。セルラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ等の酵素類、グリチルリチン酸やその塩、核酸(DNA、RNA)等が挙げられる。
【0027】
アルコール類としては、エタノール、イソプロピルアルコール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、(イソ)ステアリルアルコール、オレイルアルコール、コレステロール等が挙げられる。また、多価アルコールとしては、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール等が挙げられる。
【0028】
本発明の浴用剤組成物の製造方法は、初めに油性成分と非イオン界面活性剤およびその他の油相を構成する成分を混合しておき、50℃〜90℃の温度に加熱して溶解し、一方で水相を構成する成分を適切な温度範囲に加熱して、油相を攪拌しながら水相を添加し、充分攪拌した後に冷却する。香料等の熱変性が懸念される成分は適切に冷却されたタイミングで添加するのが好ましい。必要な場合は水分量を補正して製造する。得られた組成物は液体で透明であるのが好ましい。
【0029】
本発明の浴用剤組成物の使用方法は、特に限定されず、30℃〜50℃の適切な温度の浴中1L中に0.10mLの割合で混合して使用される。浴水の温度は33〜48℃が好ましく35〜45℃がより好ましい。浴水中への本発明の浴用剤組成物の配合濃度は、0.035質量%以下が好ましく、0.0005〜0.03質量%がさらに好ましく、0.001〜0.02質量%がさらに好ましい。本発明の浴用剤組成物は、使用に際して保湿効果が高く、べたつきもない。また、浴槽を汚すこともなく、追い炊き、沸かし直しの後も浴槽を汚すことなく使用できる。
【実施例】
【0030】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。本発明はこれらに限定されない。
(実施例1〜10、比較例1〜5)
スクワラン 15.0質量%以下
流動パラフィン 65〜80質量%
エステル油 5.0〜10.0質量%
水 2.5〜3.5質量%
に対して、表2に示す非イオン界面活性剤を表2に示す質量比で用いて、油性成分と非イオン界面活性剤およびその他の油相を構成する成分を初めに油性成分と非イオン界面活性剤およびその他の油相を構成する成分を混合しておき、50℃〜90℃の温度に加熱して混合し、水相を構成する成分を同様な温度範囲に加熱して、油相を攪拌しながら水相を構成する成分を添加し冷却して実施例および比較例の組成物を得た。
【0031】
得られた組成物を以下の評価方法で評価した。結果を表2に示す。
評価方法
【0032】
[浴用組成物の透明性]
○:高さ20cmの所にメモリの付いたガラス管に20cmまで対象溶液を入れたものを上方から観察するとき、濁りを認めない。
×:高さ20cmの所にメモリの付いたガラス管に20cmまで対象溶液を入れたものを上方から観察するとき、濁りを認めた。
ここでいう濁りは、濾紙に線を引き、ガラス容器の下に敷いて上方から観察するときに、線が鮮明に見えるものを「濁りを認めない」とする。
[浴用組成物の安定性]
○:0℃、10℃、室温、および40℃で湿度75%の状態の全てで、6ヶ月以上変化がみられないもの。
△:0℃、10℃、室温、および40℃で湿度75%の状態のうちいずれか1つの状態で、6ヶ月以上変化がみられないもの。
×:0℃、10℃、室温、および40℃で湿度75%の状態のうちいずれか2つ以上の状態で、6ヶ月以内に変化がみられたもの。
[保湿効果]
40℃のお湯1L中に0.10mLの割合で実施例または比較例の組成物を添加し十分攪拌した。これに、ヒト女性健常肌10人の左右片方の前腕部を5分間湯浸し、残り片方の前腕部をさら湯に同時間浸し、湯から出した後、10分経過後に保湿効果の評価を行った。
各人が以下の評価を行った。
◎:さら湯と比較して保湿効果の実感があった。
○:さら湯と比較してやや保湿効果の実感があった。
△:さら湯と比較して同程度の保湿効果の実感であった。
上記の各人の評価を総合して以下の評価とした。
◎:◎と判断した人数が6人以上。
○:◎と判断した人数が3〜5人。
△:◎と判断した人数が2人以下。
【0033】
また、40℃のお湯1L中に0.10mLの割合で実施例または比較例の組成物を添加し十分攪拌した。これに、ヒト女性健常肌10人の左右片方の前腕部を5分間湯浸し、残り片方の前腕部をさら湯に同時間浸し、湯から出した後、10分経過後に「べたつき」の評価を行った。
各人が以下の評価を行った。
◎:さら湯と同程度であった。
○:さら湯と比較してややべたつきがあった。
△:さら湯と比較してべたつきがあった。
上記の各人の評価を総合して以下の評価とした。
○:◎と判断した人数が6人以上。
△:◎と判断した人数が3〜5人。
×:◎と判断した人数が2人以下。
[メジアン径]
浴用剤組成物を調整し、40℃の浴水中1L中に0.10mLの割合で混合し、水中油型のエマルションとし、メジアン径をレーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所、SALD-7100)で測定した。
【0034】
【表2】

【0035】
(実施例11)
上記で得られた実施例2の自己乳化型入浴剤を、40℃の浴水中1L中に0.10mLの割合で混合し、水中油型のエマルションとし、メジアン径をレーザー回折粒度分布測定装置(島津製作所、SALD-7100)で測定し、また、図1に粒子径に対する相対粒子量と積算粒子量とをグラフで示した。
メジアン径は、5.3μmであった。
(比較例6〜10)
次に市販の浴用剤5種を、同様に浴水中に混合し、メジアン径をレーザー回折粒度分布測定装置(島津製作所、SALD-7100)で測定し、また、図2〜6に粒子径に対する相対粒子量と積算粒子量とをグラフで示した。
メジアン径は、以下の通りであった。
市販入浴剤(1):浴水中で均一に白濁した。メジアン径0.35μm:エマルション型、図2
市販入浴剤(2):浴水中で均一に白濁した。メジアン径0.43μm:自己乳化型、図3
市販入浴剤(3):浴水中で白濁せず液面に油滴状に浮遊した。メジアン径34.5μm:自己乳化型、図4、現在は販売中止されている。
市販入浴剤(4):浴水中で均一に白濁した。メジアン径0.33μm:エマルション型、図5
市販入浴剤(5):浴水中で均一に白濁した。メジアン径0.29μm:自己乳化型、図6
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の浴用剤組成物は、従来の入浴剤より保湿効果が高く、べたつきもないので、入浴剤として有用である。また、浴槽を汚すこともない。特に乾燥肌の女性や幼児、乳幼児の入浴時に用いれば、保湿効果が高く、べたつきもないので長期の使用に有用である。アトピー体質等の乾燥肌にも浴用に用いることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
非イオン界面活性剤を、8.0〜21.0質量%、油性成分を70〜90質量%、および水を2.0〜4.0質量%含有する浴用剤組成物において、
前記非イオン界面活性剤が、以下の(A)〜(C)の各群からそれぞれ一つ以上選択され、浴水と混合した状態でメジアン径が3.0μm超〜30μmである乳化粒子を形成する浴用剤組成物:ここで、
(A)は、イソステアリン酸PEG−10グリセリル、ジイソステアリン酸PEG−20グリセリルおよびトリイソステアリン酸PEG−30グリセリルからなる群であり、(B)は、オレイン酸プロピレングリコール、ジイソステアリン酸プロピレングリコールおよびステアリン酸プロピレングリコールからなる群であり、(C)は、オレイン酸ポリグリセリル−6、ラウリン酸ポリグリセリル−5、カプリン酸ポリグリセリル−2、ペンタオレイン酸ポリグリセリル−10、トリオレイン酸ポリグリセリル−5、モノステアリン酸ポリグリセリル−6およびペンタステアリン酸ポリグリセリル−10からなる群である。
【請求項2】
前記(A)が、5.2〜6.5質量%、前記(B)が、1.0〜4.0質量%、前記(C)が、1.5〜5.5質量%、で含有される請求項1に記載の浴用剤組成物。
【請求項3】
前記非イオン界面活性剤が、前記(C)群から2種以上選択され、選択される各種の配合量は、2.8質量%以下である請求項1または2に記載の浴用剤組成物。
【請求項4】
前記非イオン界面活性剤の加重平均HLBが7.0〜10.0である請求項1〜3のいずれかに記載の浴用剤組成物。
【請求項5】
前記油性成分が、少なくとも1種の炭化水素系油を含む請求項1〜4のいずれかに記載の浴用剤組成物。
【請求項6】
前記炭化水素系油が、スクワランおよび流動パラフィンからなる群から選択される少なくとも1つである請求項1〜5のいずれかに記載の浴用剤組成物。
【請求項7】
前記油性成分が、前記炭化水素系油と、さらにエステル油を、5.0質量%以上含む請求項1〜6のいずれかに記載の浴用剤組成物。
【請求項8】
前記油性成分70〜90質量%に対して、スクワラン15.0質量%以下、流動パラフィン65〜80質量%、エステル油5.0〜10.0質量%含有する請求項1〜7のいずれかに記載の浴用剤組成物。
【請求項9】
前記浴水が30℃〜50℃である請求項1〜8のいずれかに記載の浴用剤組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−1671(P2013−1671A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133514(P2011−133514)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000181147)持田製薬株式会社 (62)
【Fターム(参考)】