説明

海−島構造の二成分繊維をフィブリル化して製造される高強度で丈夫なマイクロおよびナノ繊維布

本明細書で開示される本発明は、概して、マイクロデニール繊維からなる布に関し、繊維は二成分フィブリル化繊維として形成されている。エネルギーは繊維をエンタングル(結合)するだけでなくフィブリル化するのにも十分である。これらの布は、織物か編物であり二成分の海と島の繊維およびフィラメントからでき得るか、または不織布でありスパンボンド法または複数の手段のいずれか1つにより二成分短繊維の使用を通じてウェブを形成してスパンボンドフィラメントウェブに用いられるものと同様に結合されるかのいずれかで形成され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[優先権]
本出願は2005年6月24日付けの米国仮出願第60/694,121号の優先権を主張する。
【0002】
[発明の分野]
本発明は、概して、マイクロデニール繊維の製造およびそのような繊維から製造された高強度の不織製品に関する。より詳細には、本発明は海と島構成からそのような繊維を製造することに関し、海の構成要素は島の構成要素をフィブリル化したものである。
【背景技術】
【0003】
スパンボンド式不織布は多くの用途で用いられており、北米で製造または使用される製品の大部分を占める。そのような用途のほとんどが軽量の使い捨て布を必要とする。したがって、たいていの不織布は使い捨てとして設計され、意図される用途にとって適した性質を有するように設計される。スパンボンド法とは、繊維(フィラメント)を押し出し、冷却し、引き寄せ、続けて移動ベルトに集めて布を形成するプロセスを指す。このようにして集められたウェブは、くっついていないので、フィラメントを互いに熱、機械、または化学的にくっつけて布を形成しなければならない。熱結合は、布を形成する手段として断然効果的で経済的である。ハイドロエンタングル法(hydroentangling)はそれほど効果的ではないが、熱結合した布と比較すると、それよりずっと柔軟で通常はそれより強い布をもたらす。
【0004】
マイクロデニール繊維とは1デニールより細い繊維である。代表的には、マイクロデニール繊維は、分裂する二成分繊維を用いて製造される。図1に、一般に「パイウェッジ」または「セグメントパイ」と呼ばれる最も有名なタイプの分裂可能な繊維を示す。米国特許第5783503号明細書は、機械的処理なしに分裂する代表的な溶融紡糸多成分熱可塑性長フィラメントを示す。記載される構成では、中空フィラメントを提供することが望ましい。中空の芯は、同種の構成要素のウェッジの先がフィラメントの中心で互いに接触するのを防いで、フィラメント構成要素の分離を促進する。
【0005】
これらの構成において、構成要素は、代表的にはナイロンおよびポリエステル製のセグメントである。そのような繊維は、16個のセグメントを有するのが普通である。そのような繊維の裏にある一般通念は、カーディングおよび/またはエアレイによりフィラメント繊維あたり代表的には2〜3デニールのウェブを形成し、続いてウェブに高圧水噴射をかけることにより1段階で繊維を分裂および結合して布にする。得られる布はマイクロデニール繊維で構成され、柔らかさ、ドレープ、カバー、および表面積に関してマイクロデニール布の特性の全てを有する。
【0006】
二成分繊維を分裂により製造する場合、長繊維が適切に製造され得ることを確実にすることを踏まえ、代表的に要求される繊維の特性がいくつかある。これらの特性として、構成要素の混和性、融点の違い、結晶の性質の違い、粘度の違い、および摩擦電気を発生させる能力が挙げられる。共重合体の選択は、代表的には、多成分繊維が紡績され得るように二成分繊維間のこれらの特性が協調的であることを確実にするように行われる。重合体の適した組合せとして、ポリエステルとポリプロピレン、ポリエステルとポリエチレン、ナイロンとポリプロピレン、ナイロンとポリエチレン、およびナイロンとポリエステルが挙げられる。これらの二成分繊維は仕切られた断面で紡績されるので、各構成要素は繊維の長さ方向に沿って露出する。したがって、選択された構成要素がよく似た性質を有していない場合、長繊維は製造途中で、壊れたりしわがよったりする欠陥を生じる可能性がある。そのような欠陥はフィラメントをさらに加工するのに適さないものにする。
【0007】
米国特許第6448462号明細書は、パイ構成を代表するオレンジ様マルチセグメント構造を有する別の多成分フィラメントを開示する。この特許は、サイドバイサイド構成も開示する。これらの構成では、ポリエステルとポリエチレンまたはポリアミドのような非相溶性の重合体2種を用いて多成分長フィラメントを形成する。これらのフィラメントは、溶融紡糸し、伸張し、そして直接重ね合わせて不織布を作る。ハイドロスプリット法と組み合わせたスパンボンド法のプロセスにこの技法を用いたものが、FreudenbergによりEvolon(登録商標)の商標で市場に投入された製品として現在市販されており、上記の同様な用途の多くに用いられている。
【0008】
セグメントパイは分裂可能な構成として可能な多くの構成のうちの1つにすぎない。中が詰まった形では紡績するほうがやさしいが、中空では分裂させるほうがやさしい。分裂を確実にするため、異種重合体を用いる。しかし、たとえ相互親和性の低い重合体を選択したとしても、繊維の断面は繊維がどのくらい分裂しやすいかに影響を及ぼす。最も分裂しやすい断面は、図2に示すようなセグメントリボンである。構造の「バランス」をとるよう同じ重合体が両端にあるようにセグメントの数は奇数でなければならない。この繊維は異方性であり短繊維として加工するのが難しい。しかしながら、フィラメントとしては問題ない。したがって、スパンボンド法のプロセスでは、この繊維は魅力的である。三方突出(tipped trilobal)型やセグメント十字(segmented cross)など繊維加工は改善されている。図3を参照。
【0009】
セグメントパイ構成を用いる別の不都合な点は、全体的な繊維が分裂でウェッジ形になることである。この構成は、小マイクロデニール繊維を製造するプロセスの直接の結果である。したがって、それらの意図する目的には適しているにもかかわらず、有利な応用結果をもたらすために他の形の繊維が望ましいかもしれない。そのような形は、標準的なセグメントプロセスの下では現在利用できない。
【0010】
したがって、セグメントパイフォーマットを用いてマイクロデニール繊維を製造する場合、利用可能で入手可能な材料の選択において確実に制限が存在する。構成要素間での付着を最小限にして分裂を促進するために、構成要素は十分に異なる材料のものでなければならないが、それにも関わらず、それらはまた、スパンボンドプロセスまたはメルトブロープロセスで繊維が製造されるのを可能にするために十分に特性が似ていなければならない。材料が十分に似ていない場合、繊維は加工途中で壊れる。
【0011】
マイクロデニール繊維を作る別の方法は、海と島構成の繊維を用いる。米国特許第6455156号明細書は、そのような構造の1つを開示する。海と島構成では、第一の繊維構成要素の「海」が、それより小さい内部繊維の「島」を取り囲むのに用いられる。そのような構造は、製造を簡単にするが、島に到達するために海を除去する必要がある。これは、島に影響を与えない溶液で海を溶かすことにより行われる。汚水処理を必要とするアルカリ溶液を用いるようなプロセスは環境にやさしくはない。さらに、島構成要素を抽出する必要があるため、この方法は、用いることのできるポリマーの種類を、海を除去する溶液により影響を受けないものに制限する。
【0012】
そのような海と島の繊維は、今日市販されている。それらは、合成皮革およびスエードを作るのにもっとも頻繁に用いられる。合成皮革の場合、その後に続く工程では、凝固ポリウレタンが布に導入され、上塗りまで行われてもよい。そのような繊維が非常に興味を持たれることになった別の最終用途は専門用ワイプにある。この場合、小繊維が多数の小毛細管をもたらし、液体の吸収性およびほこりの拭き取り性が良くなる。同様な理由で、そのような繊維は濾過において興味が持たれるかもしれない。
【0013】
まとめると、セグメント繊維の紡績しやすさおよび分離性を可能にするように重合体を選択することで制限がかかるため、これまでに達成されたものは用途が限られていた。重合体が両方とも表面で露出し、したがって伸張粘度、クエンチ挙動、および緩和における多様性が異方性を引き起こし、これが紡績の負荷を導くため、紡績には問題が多い。さらに、現在の分野の主な制約は、繊維がウェッジを形成し、得ることのできる繊維断面に関して柔軟性がないことである。
【0014】
海と島技法の利点は、スピンパックが適切に設計されている場合、紡績の負荷を減少させるように、海が保護物として作用して島を保護することができることである。しかしながら、海を除去する必要があるため、海および島の構成要素として適した重合体の利用可能性における制限もまた制限される。海と島を分離するのに必要なエネルギーが採算に合わないという一般認識のため、これまで、海と島技法は、海構成要素の除去を介して以外は、マイクロデニール繊維を作るのに用いられていない。
【0015】
したがって、スパンボンド加工に貢献し環境を損なわない様式でマイクロデニール繊維寸法を製造し得る製造プロセスに対する要求が存在する。
【発明の開示】
【0016】
本発明の実施形態の1つに従って、海と島の二成分の繊維/フィラメントがフィブリル化され、海島は島繊維と統合されたままで高い強度の不織布を形成する、マイクロデニール布の製造方法が開示される。
【0017】
したがって、本発明の目的は、高表面積のマイクロデニール布を製造する方法を提供することである。他の目的は、添付図面を参照して本明細書で以下に最もよく記載されるとおり、記載が進むにつれて明らかになる。
【0018】
本発明を実行するために計画された方法およびシステムを、それらの他の特徴と一緒に、以下に記載する。
【0019】
本発明は、以下の明細書を読みそれらの一部をなす添付の図面を参照することにより、より容易に理解できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
ここでより詳細に図面を参照して、本発明をここでより詳細に説明する。本明細書で開示される本発明は、長フィラメントおよびその結果生じる、柔軟性、耐摩耗性、および耐久性の改善された布の製造方法に関する。本発明の基礎は、内側繊維要素を取り囲む外側繊維要素を含む二成分フィラメントの形成である。好ましくは、内側繊維要素は複数の繊維からなり、このフィラメントは海と島構成のものである。本発明の重要な特徴の1つは、外側繊維が内側繊維を包んでいることである。そうすることにより、内側繊維は、外側繊維が凝固する前に結晶化して凝固することが可能になる。これにより通常ではない強い島繊維が促進される。そのような構成により、外側繊維要素が外部エネルギーによりフィブリル化されてそれにより自体を内側繊維要素から分裂させることが可能になる。本発明の別の重要な態様は、フィブリル化とともに、内側の海繊維は長繊維のままであると同時に外側の海要素も長繊維要素を形成し、これが海繊維と相互作用して各繊維間で結合を形成する。これにより、各繊維自体はマイクロおよびナノレベルにありながらも、本発明の高い強度の態様を促進する。
【0021】
好ましくは、外部エネルギーは、ハイドロエンタングルメントプロセスで水ジェットにより提供され、このプロセスは外側繊維をフィブリル化すると同時に外側繊維が他の外側繊維および内側繊維とも結合する構成に維持する。本発明のこの態様が実施される場合、内側島繊維も外側海繊維も水に溶けず、結果として不織物品において外側海繊維は内側海繊維と結合したままになる。
【0022】
好ましくは、不織布の製造方法は、外側繊維要素と内側繊維要素を含む1組の二成分繊維を形成(spin)することを含み、外側繊維はその長さ方向にそって内側繊維を完全に包んでいる。最も好ましい実施形態の外側繊維は、内側繊維よりも柔らかい材料のものであり、フィブリル化されて内側繊維要素と接触している。繊維は長く、本発明の経済的実行可能性を促進する。したがって、フィブリル化された場合、内側島繊維と外側海繊維の両方が、主に互いにより合わさった長繊維となり高い強度をもたらす。もっとも好ましくは、フィブリル化プロセスは、外側繊維要素をフィブリル化するのに水力エネルギーを用い、1組の二成分繊維をハイドロエンタングルするのに十分なエネルギーのものである。ハイドロエンタングルメントプロセスは、代表的に、二成分繊維がウェブ上に配置されてから生じる。このプロセスの結果、0.5ミクロン未満でもあり得るマイクロデニール繊維が製造される。
【0023】
さらに、海と島構成または1つの海である鞘/核構成を提供することにより、セグメントパイ技法を用いて通常可能なよりも異なる材料を海要素に対して用いることができる。融点、粘度、およびクエンチ特性において明らかに異なる任意の2種の重合体は、分裂可能なセグメントパイ繊維に形成することができない。例として、ポリオレフィン(PE、PP)とポリエステルまたはナイロン、ポリオレフィン(PE、PP)と熱可塑性ウレタン、ポリエステルまたはナイロンと熱可塑性ウレタンなどが挙げられる。これらの組合せのどれでも海と島構成が可能である。なぜなら海は島を包んでおり、海の材料が繊維形成プロセスの間伸張または引出し可能であるかぎり、繊維形成は負荷とはならないからである。また、海と島構成にとっては通常、海が除去され、必然的に外側構成要素に不活性な材料を用いることはあらかじめ不可能であった。なぜならこれらは溶媒から除去するのが困難だからである。外側構成要素を維持することにより、除去は必要なくなり、繊維の機械的結合に外側構成要素を利用するためにより強い繊維が維持される。
【0024】
本発明の別の重要な態様は、内側繊維要素がウェッジのない形の断面を有して製造されてもよいことである。そのような断面は、多突出(multi-lobal)または円形であってもよい。そのような構成は、布においてかさばりを増やし、繊維がウェッジ形繊維よりも大きい移動性を有することを可能にする。そのような構成は、裂けにくい繊維を製造する。
【0025】
さらに、無限の重合体構成要素または海をフィブリル化することにより、マイクロまたはナノ繊維でできた、非常に柔軟でより通気性のある不織布を製造することができ、これからフィルター、ワイプ、掃除用布、および耐久性があり耐摩擦性の良い繊維製品が製造される。より高い強度が必要とされる場合、外側繊維をフィブリル化した後、内側繊維および外側繊維を熱結合してもよい。二成分構成において、外部要素は、繊維全体の約5%〜95%を構成してもよい。
【0026】
繊維構成要素の材料の選択において、外側繊維要素が島構成要素と非相溶性であるかぎり、様々な種類を用いることができる。本明細書で、非相溶性は、2本の繊維要素が、一方が他方に拡散していないはっきりした界面を2本の間に形成することとして定義される。いい例の1つとして、2種の異なる構成要素にナイロンとポリエステルを使用することが挙げられる。ここで、そのような繊維は、先行技術の代表的なセグメントパイ構造ではその使用が限られていたかもしれないが、海と島構造を用いることで、2種の構成要素は共存して非常に望ましい高強度の不織布を形成することができる。内側繊維は、熱可塑性重合体の群から選択される熱可塑性樹脂からなってもよく、熱可塑性重合体は、エステル結合を介して頭尾結合した長鎖エーテルエステル単位と短鎖エステルユニットを有するコポリエーテルエステルエラストマーである。内側繊維は熱可塑性重合体の群から選択される重合体からなってもよく、熱可塑性重合体は、ナイロン6、ナイロン6/6、ナイロン6,6/6、ナイロン6/10、ナイロン6/11、ナイロン6/12ポリプロピレンもしくはポリエチレン、ポリエステル、コポリエステル、または他の類似の熱可塑性重合体から選択される。内側繊維は、ポリエステル、ポリアミド、熱可塑性コポリエーテルエステルエラストマー、ポリオレフィン、ポリアクリレート、および熱可塑性液晶重合体からなる熱可塑性重合体の群から選択される重合体からなってもよい。
【0027】
外側繊維も、熱可塑性重合体の群から選択される熱可塑性樹脂からなってもよく、熱可塑性重合体は、エステル結合を介して頭尾結合した長鎖エーテルエステル単位と短鎖エステルユニットを有するコポリエーテルエステルエラストマーである。外側繊維は、熱可塑性重合体の群から選択される重合体からなってもよく、熱可塑性重合体はナイロン6、ナイロン6/6、ナイロン6,6/6、ナイロン6/10、ナイロン6/11、ナイロン6/12ポリプロピレン、またはポリエチレンから選択される。外側繊維は、ポリエステル、ポリアミド、熱可塑性コポリエーテルエステルエラストマー、ポリオレフィン、ポリアクリレート、および熱可塑性液晶重合体からなる熱可塑性重合体の群から選択される重合体からなる。
【0028】
加工処理の間、繊維は好ましくは4対1の比で引き出される。また、繊維は非常に速く、場合によっては1分あたり3000〜4000メートルで紡績される。内側繊維は完全に包み込まれながら、外側繊維よりも早く凝固する。さらに、2者の間にはっきりしたしかも内側繊維と外側繊維の間に拡散がほとんどまたはまったくない界面ができると、繊維はすぐにフィブリル化される。フィブリル化は、機械的に、熱を介して、またはハイドロエンタングル法を介して行われてもよい。ハイドロエンタングル法を用いる場合、外側表面が露出した布は、外側表面の両方または片方だけがハイドロエンタングルメントプロセスにかけられてもよい。好ましくは、1つまたは複数のハイドロエンタングル分岐管からの水圧を用いて10bars〜1000barsの水圧で繊維要素をフィブリル化およびハイドロエンタングルする。本発明の別の特徴は、選択された繊維材料が樹脂によるコーティングに対して受容性があり不透過性材料を形成するか、外側構成要素がフィブリル化された後ジェット染色プロセスにかけられてもよいということである。好ましくは、布は布内で繊維を再配向させるため乾燥プロセスの間機械方向に伸張され、そして乾燥プロセスの間、乾燥プロセスの温度は、重合体のガラス転移よりも十分に高く溶融開始よりも低くて、完成した布で横方向の伸縮と回復を生み出すように、ヒートセットにより記憶を作る。
【0029】
本発明の重要な特徴は、海繊維がフィブリル化の際、島繊維と撚り合い絡み合うことである。その結果、島繊維をマイクロおよびナノレベルで製造することができながらも、海要素が各繊維を分断してマイクロおよびナノ繊維の海要素を形成する。このようにして、海繊維および島繊維は、1つの二成分繊維からマイクロおよびナノ長繊維を製造する。また、繊維はその構造の統合性を維持しながらも、自体の間で撚り合い絡み合うことができ、高強度の繊維を形成する。さらに、非相溶性要素を用いることが可能であるが、最終的な不織物品は、先行技術のセグメントパイ技術を用いて組み合わせることが不可能であるそのような要素を用いて製造され得る。
【0030】
さらに、先行技術の中には海と島の繊維構成を開示するものもあるが、そのような開示は一般的にPVAの使用を開示する。PVAは一般的に水溶性であるため、ハイドロエンタングル法には貢献せず、水環境にさらされ得る物品の形成にも適さない。
【0031】
本発明は二成分繊維の製造を検討してきたが、本発明は二成分長フィラメントの製造およびこのフィラメントの不織物品製造への組み込みにも関する。この製造を行って織物または編物の二成分海と島の繊維およびフィラメントでできた布を製造することができる。あるいは布は不織布で、スパンボンド法または複数の手段のいずれか1つにより二成分短繊維の使用を通じてウェブを形成してスパンボンドフィラメントウェブに用いられるものと同様に結合されるかのいずれかで形成され得る。
【0032】
本発明者らは、鞘/核または海と島の形の二成分繊維を用いると(図6)、鞘または海重合体が十分に弱く、特に2成分が互いに親和性をあまりまたはまったく有さない場合、繊維をハイドロエンタングル法で分裂させることができることを発見した。繊維の例を図7に示す。島は海(または鞘)により「保護」されており、したがって繊維の紡績が負荷とならないことが注記される。容易に機械的に分裂またはフィブリル化され得る重合体の使用は有利である。図7の繊維は、全て直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)でできており、核または島はナイロンでできている。これらの重合体の組合せは、繊維を機械的に分裂させる必要がある場合に上手くいくようである。ナイロンとポリエステル、およびPLAとナイロン、熱可塑性ウレタン、および他の熱可塑性樹脂などの他の重合体など他の組合せも可能である。最終構造は、非常に柔軟で柔らかく圧縮性がある。布に与えられるエネルギー量は、繊維が分裂する限界を定める。図8および図9は、それぞれ、低エネルギーレベルおよび高エネルギーレベルでハイドロエンタングルした200gsmの布の表面を示す。エネルギーレベルが低いと繊維を完全に分裂させるのに不適格であったことが明らかである。好ましい実施形態の中には、フィブリル化繊維からなる布をさらなる強度のために点結合したものがある。
【0033】
製造した繊維の強度についての実施例を、以下に説明する。
【実施例】
【0034】
いくつかの実施例を以下に示し、製造した布の性質を実証する。布は全て約180g/m2の重さであった。
【0035】
実施例1(2種のエネルギーレベルでハイドロエンタングルしたナイロン100%の試料)
【表1】

【0036】
実施例2(75/25%ナイロン島/PE海、島108個)
【表2】

【0037】
カレンダ加工は海が溶融して繊維を包み強度を付加することで性質を改善することが注記される。
【0038】
海と島試料が全て明らかに100%ナイロンよりも優れていることが注記される。
【0039】
高強度二成分不織布を用いて製造することができる物品として、テント、パラシュート、アウトドア用布、ハウスラップ、天幕などが挙げられる。いくつかの例として、デニールあたり6グラムより大きい引裂強度を有する不織物品および10ポンドの引裂力に耐える他のものが製造された。
【0040】
本発明者らは、適切に行われた場合、海と島がフィブリル化繊維を形成するのに非常に柔軟のある方法を提供し、等しい島全ての勘定の合計数により島繊維の大きさが制御できることを発見した。このことは実践、特にスパンボンド法に集約され、そのような丈夫な布を開発する簡潔でコスト削減に効果的な方法を提供する。
【0041】
また、図17、図18、および図19に示されるとおり、二成分繊維は、三方突出型であってもよい。この構成では、中央の島は、3つの丸い突出部で完全に囲まれている。結果として、フィブリル化した場合、4本の分裂した繊維が作り出され、それらは互いに包み合って高強度の布を形成する。そのような構造は、完全な海と島構造を製造することができないいくつかの状況において、より実現可能である。熱結合した二成分繊維とフィブリル化して結合した二成分繊維との間の差異も示す。図19も、繊維をフィブリル化するときに不十分なエネルギーが用いられた場合を示す。
【0042】
本発明は、柔軟性、耐摩耗性、および耐久性の改善された高強度のスパンボンド不織布の製造方法に関し、これが開示された。本発明の基礎は、化学構造の異なる2種の重合体からなる鞘−核(1つの島)または海の島型の二成分スパンボンドウェブの形成であり、海材料は鞘または島を保護し、島または核よりも柔らかい材料であり、かつそのようなウェブは、以下により結合される。
(a)ニードルパンチし、続いてどのような熱結合もなくハイドロエンタングルする、ハイドロエンタングル法のエネルギーは鞘核または海の島構造の部分的または完全な分裂をもたらす。
(b)どのようなニードルパンチも続く熱結合もなくウェブのみをハイドロエンタングルする、ハイドロエンタングル法のエネルギーは鞘核または海の島構造の部分的または完全な分裂をもたらす。
(c)上記(a)に記載のようにウェブをハイドロエンタングルし、続いてカレンダ加工で熱結合させる。
(d)上記(a)に記載のようにウェブをハイドロエンタングルし、続いて海または鞘が溶融する融点またはそれ以上の温度で、空気中オーブンで熱結合させて強い布を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】代表的な二成分セグメントパイ繊維の、中まで詰まったもの(左)と中空のもの(右)の模式図である。
【図2】代表的なセグメントリボン繊維の模式図である。
【図3】代表的なセグメント十字繊維および三方突出型繊維の模式図である。
【図4】代表的な二成分スパンボンド法プロセスを示す。
【図5】ドラムエンタングラーを用いるハイドロエンタングル法の代表的なプロセスを示す。
【図6】用いた二成分繊維を示す。左が海−島で、右が鞘−核である。
【図7】スパンボンド法プロセスで製造される二成分繊維の例を示す。
【図8】一部フィブリル化した繊維を用いたI−Sハイドロエンタングルスパンボンド布の表面のSEM顕微鏡写真を示す。
【図9】完全にフィブリル化した繊維を用いたI−Sハイドロエンタングルスパンボンド布の表面のSEM顕微鏡写真を示す。
【図10】完全にフィブリル化した繊維を用いたI−Sハイドロエンタングルスパンボンド布の表面のSEM顕微鏡写真を示す。
【図11】I−Sハイドロエンタングルスパンボンド布の表面のSEM顕微鏡写真を示す。
【図12】I−Sハイドロエンタングルスパンボンド布の断面のSEM顕微鏡写真を示す。
【図13】完全にフィブリル化した繊維を用いたI−Sハイドロエンタングルスパンボンド布の表面のSEM顕微鏡写真を示す。
【図14】フィブリル化前のI−Sスパンボンド布の断面のSEM顕微鏡写真を示す。
【図15】ハイドロエンタングルして点結合したスパンボンド布のSEM顕微鏡写真を示す。
【図16】2つのハイドロエンタングル法プロセスで処理したフィブリル化繊維のスパンボンド布のSEM顕微鏡写真を示す。
【図17】三方突出二成分繊維の様々な描写、および突端で囲まれた核を示すSEM顕微鏡写真を示す。
【図18】熱結合し、フィブリル化し、結合した三方突出二成分繊維を示す。
【図19】不十分なエネルギーでフィブリル化してある三方突出二成分繊維を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布を製造する方法であって、
外側繊維要素と、この外側繊維要素に包まれた内側繊維要素とを備えた1組の二成分繊維を形成するステップと、
前記外側繊維要素をフィブリル化して、前記内側繊維要素を露出するステップと
を含み、前記外側繊維が前記内側繊維と少なくとも部分的に絡み合っている不織布の製造方法。
【請求項2】
前記外側繊維要素をフィブリル化するために水力エネルギーを用いることを更に含む請求項1に記載の不織布の製造方法。
【請求項3】
前記1組の二成分繊維をハイドロエンタングル法に適用するために前記水力エネルギーを用いることを更に含む請求項2に記載の不織布の製造方法。
【請求項4】
前記1組の二成分繊維をウェブ上に配置することを更に含む請求項3に記載の不織布の製造方法。
【請求項5】
前記内側構成要素繊維が、ウェッジのない形の断面を有する請求項1に記載の不織布の製造方法。
【請求項6】
前記内側繊維および前記外側繊維は、前記外側繊維がフィブリル化された後に熱結合にかけられる請求項1に記載の不織布の製造方法。
【請求項7】
前記外側繊維要素が、前記二成分繊維の前記内側繊維要素よりも粘性で、海と島の繊維の形成を促進する請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記内側繊維が熱可塑性重合体の群から選択される熱可塑性樹脂を含み、この熱可塑性重合体が、エステル結合を介して頭尾結合した長鎖エーテルエステル単位と短鎖エステルユニットを有するコポリエーテルエステルエラストマーである請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記外側繊維が熱可塑性重合体の群から選択される熱可塑性樹脂を含み、この熱可塑性重合体が、エステル結合を介して頭尾結合した長鎖エーテルエステル単位と短鎖エステルユニットを有するコポリエーテルエステルエラストマーである請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記内側繊維が熱可塑性重合体の群から選択される重合体を含み、この熱可塑性重合体が、ナイロン6、ナイロン6/6、ナイロン6,6/6、ナイロン6/10、ナイロン6/11、ナイロン6/12ポリプロピレン、またはポリエチレンから選択される請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記外側繊維が熱可塑性重合体の群から選択される重合体を含み、この熱可塑性重合体が、ナイロン6、ナイロン6/6、ナイロン6,6/6、ナイロン6/10、ナイロン6/11、ナイロン6/12ポリプロピレン、またはポリエチレンから選択される請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記外側繊維が、ポリエステル、ポリアミド、熱可塑性コポリエーテルエステルエラストマー、ポリオレフィン、ポリアクリレート、および熱可塑性液晶重合体からなる熱可塑性重合体の群から選択される重合体を含む請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記内側繊維が、ポリエステル、ポリアミド、熱可塑性コポリエーテルエステルエラストマー、ポリオレフィン、ポリアクリレート、および熱可塑性液晶重合体からなる熱可塑性重合体の群から選択される重合体を含む請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記内側繊維要素が多突出型である請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記内側繊維要素が円形の断面を有する請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記外側構成要素が、繊維全体の約5%〜95%を含む請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記布が2つの外側表面を有し、前記布が両表面でハイドロエンタングルメントに曝される請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記布の1つの表面だけがハイドロエンタングルメント加工に曝される請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記布が、10bars〜1000barsの水圧で、1つまたは複数のハイドロエンタングル法分岐管からの水圧に曝される請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記布が樹脂でコーティングされて不透過材料を形成する請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記布は、前記外側構成要素がフィブリル化された後、ジェット染色プロセスにかけられる請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記布が、ハイドロエンタングル法の直後の乾燥プロセスの間、前記布内の繊維の再配向のために機械方向に伸ばされる請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記乾燥プロセスの温度が、重合体のガラス転移より十分に高くて、溶融の開始より低く、完成した布で横方向の伸縮と回復を生み出すように、ヒートセットにより記憶する請求項22に記載の方法。
【請求項24】
高強度で安定した繊維の不織布を製造する方法であって、
非水溶性である外側繊維要素と、この外側繊維要素に包まれた内側繊維要素とを備えた1組の二成分繊維を形成するステップと、
前記外側繊維要素をフィブリル化して、前記内側繊維要素を露出するステップと
を含む不織布の製造方法。
【請求項25】
前記外側繊維要素をフィブリル化するために水力エネルギーを用いることを更に含む請求項24に記載の不織布の製造方法。
【請求項26】
前記1組の二成分繊維をハイドロエンタングル法に適用するために前記水力エネルギーを用いることを更に含む請求項25に記載の不織布の製造方法。
【請求項27】
前記1組の二成分繊維をウェブ上に配置することを更に含む請求項26に記載の不織布の製造方法。
【請求項28】
前記内側構成要素繊維が、ウェッジのない形の断面を有する請求項24に記載の不織布の製造方法。
【請求項29】
前記内側繊維および前記外側繊維は、前記外側繊維がフィブリル化された後に熱結合にかけられる請求項24に記載の不織布の製造方法。
【請求項30】
前記外側繊維要素が、前記二成分繊維の前記内側繊維要素よりも粘性で、海と島の繊維の形成を促進する請求項24に記載の方法。
【請求項31】
前記内側繊維が熱可塑性重合体の群から選択される熱可塑性樹脂を含み、この熱可塑性重合体が、エステル結合を介して頭尾結合した長鎖エーテルエステル単位と短鎖エステルユニットを有するコポリエーテルエステルエラストマーである請求項24に記載の方法。
【請求項32】
前記外側繊維が熱可塑性重合体の群から選択される熱可塑性樹脂を含み、この熱可塑性重合体が、エステル結合を介して頭尾結合した長鎖エーテルエステル単位と短鎖エステルユニットを有するコポリエーテルエステルエラストマーである請求項24に記載の方法。
【請求項33】
前記内側繊維が熱可塑性重合体の群から選択される重合体を含み、この熱可塑性重合体は、ナイロン6、ナイロン6/6、ナイロン6,6/6、ナイロン6/10、ナイロン6/11、ナイロン6/12ポリプロピレン、またはポリエチレンから選択される請求項24に記載の方法。
【請求項34】
前記外側繊維が熱可塑性重合体の群から選択される重合体を含み、この熱可塑性重合体は、ナイロン6、ナイロン6/6、ナイロン6,6/6、ナイロン6/10、ナイロン6/11、ナイロン6/12ポリプロピレン、またはポリエチレンから選択される請求項24に記載の方法。
【請求項35】
前記外側繊維が、ポリエステル、ポリアミド、熱可塑性コポリエーテルエステルエラストマー、ポリオレフィン、ポリアクリレート、および熱可塑性液晶重合体からなる熱可塑性重合体の群から選択される重合体を含む請求項24に記載の方法。
【請求項36】
前記内側繊維が、ポリエステル、ポリアミド、熱可塑性コポリエーテルエステルエラストマー、ポリオレフィン、ポリアクリレート、および熱可塑性液晶重合体からなる熱可塑性重合体の群から選択される重合体を含む請求項24に記載の方法。
【請求項37】
前記内側繊維要素が多突出型である請求項24に記載の方法。
【請求項38】
前記内側繊維要素が円形の断面を有する請求項24に記載の方法。
【請求項39】
前記外側構成要素が、繊維全体の約5%〜95%を含む請求項24に記載の方法。
【請求項40】
前記布が2つの外側表面を有し、前記布が両表面でハイドロエンタングルメントに曝される請求項24に記載の方法。
【請求項41】
前記布の1つの表面だけがハイドロエンタングルメント加工に曝される請求項24に記載の方法。
【請求項42】
前記布が、10bars〜1000barsの水圧で、1つまたは複数のハイドロエンタングル法分岐管からの水圧に曝される請求項24に記載の方法。
【請求項43】
前記布が樹脂でコーティングされて不透過材料を形成する請求項24に記載の方法。
【請求項44】
前記布は、前記外側構成要素がフィブリル化された後、ジェット染色プロセスにかけられる請求項24に記載の方法。
【請求項45】
前記布が、乾燥プロセスの間、前記布内の繊維の再配向のために機械方向に伸ばされる請求項24に記載の方法。
【請求項46】
前記乾燥プロセスの温度が、重合体のガラス転移より十分に高くて、溶融の開始より低く、完成した布で横方向の伸縮と回復を生み出すように、ヒートセットにより記憶する請求項45に記載の方法。
【請求項47】
高強度の繊維を製造する方法であって、
外側繊維要素と、この外側繊維要素に包まれた複数の内側繊維要素とを備えた1組の海と島の二成分繊維を形成するステップであって、前記外側繊維は前記内側繊維よりも柔らかい材料でできているステップと、
前記外側繊維要素をフィブリル化して、前記内側繊維要素を露出するステップと
を含む方法。
【請求項48】
前記内側繊維要素が、弾性、湿り度、耐火性、破断までの伸び、および硬度からなる群より選択される機械的性質が異なる複数の内側繊維要素を含む請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記内側繊維要素は、断面が異なる複数の内側繊維要素を含む請求項47に記載の方法。
【請求項50】
不織ウェブであって、
外側繊維要素と、この外側繊維要素に包まれた少なくとも2つの内側繊維要素とを備えた熱可塑性二成分連続フィラメントを備えており、
前記外側繊維要素が前記内側繊維よりも柔らかい不織ウェブ。
【請求項51】
前記外側繊維がフィブリル化されて、前記内側繊維要素を露出している請求項50に記載の不織ウェブ。
【請求項52】
テントとして製造された請求項28に記載の不織ウェブ。
【請求項53】
天幕として製造された請求項28に記載の不織ウェブ。
【請求項54】
ハウスラップとして製造された請求項28に記載の不織ウェブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2008−544110(P2008−544110A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−518427(P2008−518427)
【出願日】平成18年6月23日(2006.6.23)
【国際出願番号】PCT/US2006/024465
【国際公開番号】WO2007/002387
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(507326836)ノース・キャロライナ・ステイト・ユニヴァーシティ (6)
【Fターム(参考)】