説明

海上の燃料貯蔵施設

本発明の実施形態は、独立型の海上の燃料貯蔵施設であって、海底に支持されているスパイン構造体と、スパイン構造体に隣接して係留されており、それぞれが少なくとも1種類の石油化学製品を貯蔵できる複数の浮体式貯蔵モジュールと、を含んでいる燃料貯蔵施設、を提供する。この施設は、さまざまな支援設備を収容する固定されたプラットフォームと、一隻または複数隻の船舶が石油および石油化学製品の積み降ろしを行うための着桟空間を提供する少なくとも1つの桟橋と、をさらに含んでいることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、大量の燃料またはその他の石油化学製品を貯蔵するための独立型の海上の燃料貯蔵施設を提供する。
【背景技術】
【0002】
現在、石油および石油化学製品は、港湾施設の近くに位置する大規模な鋼製タンクに貯蔵されている。これらのタンクは、他の用途にさらに生産的に使用できる大きな土地を占有している。さらに、満載時のタンクの大重量を支えるために土地の地盤改良を行わなければならないため、これらのタンクは建設するまでに相当な時間がかかる。さらには、地質学的に活発な地域では、地震またはその他の地震性活動が発生した場合に最小限の安全性の余裕が提供されるように、タンクを堅牢化する、あるいは何らかの補強を行わなければならない。
【0003】
さまざまな種類の石油および石油化学製品が貯蔵されるため、タンクの支持構造部から有害な煙霧(noxious fumes)がしばしば発生し、施設に隣接する人口密集地域に流れ込むことがある。さらに、大量の石油および石油化学製品の貯蔵は、本質的に火災の危険を伴う。
【0004】
陸上の貯蔵施設に関連する別の問題として、陸上施設へのアクセスがしばしば制限される。船舶は、これらの施設において積載物の積み降ろしを行うために、数時間にわたり並んで待機しなければならないことがある。このことは、船舶事業者および施設管理者の両方にとって極めて非効率的であり費用もかかる。
【0005】
上述した問題の1つの解決策は、貯蔵施設を陸地に隣接する海上に位置させることである。そのためには、陸上から施設にアクセスするための桟橋またはその他の構造物の建設が要求される。しかしながら、施設は海岸線に近接しているため、煙霧および火災に関する問題が依然として存在する。さらには、このような施設も、船舶によるアクセスが制限される。あるいは、大型タンカー(喫水は25メートルにもなりうる)が施設に接岸できるようにするには、高コストの浚渫が要求される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、独立型の海上の燃料貯蔵施設であって、海底に支持されているスパイン構造体(spine structure)と、スパイン構造体に隣接して係留されており、それぞれが少なくとも1種類の液体を貯蔵できる複数の浮体式貯蔵モジュールと、を備えている燃料貯蔵施設、を提供する。この施設は、海底に支持されており複数の稼働設備を支えることのできるプラットフォーム、をさらに含んでいることができる。いくつかの実施形態においては、本施設は、複数の浮体式貯蔵モジュールを完全に囲む浮防波堤、をさらに含んでいることができる。
【0007】
代替実施形態においては、貯蔵施設は、海底に支持されておりスパイン構造体に隣接して位置している少なくとも1つの桟橋、をさらに含んでいることができる。スパイン構造体、プラットフォーム、および桟橋は、パイルジャケット(pile jackets)を使用して海底に支持することができる。スパイン構造体は、プレキャスト鉄筋コンクリートもしくはプレキャスト・プレストレスト・コンクリート、またはその両方から製造することができる。
【0008】
別の実施形態においては、複数の浮体式貯蔵モジュールのそれぞれを、複数の係留ドルフィンに隣接して位置させることができ、係留ドルフィンは、浮体式貯蔵モジュールが互いに対しておよびスパイン構造体に対して横方向に一定の位置に維持されるように、海底に取り付けられている。
【0009】
さらなる実施形態においては、複数の浮体式貯蔵モジュールの少なくとも1つは、プレストレストコンクリート製の外殻と、プレストレストコンクリート製の内殻と、内殻の中の少なくとも1基の鋼製タンクと、タンク内に液体を貯蔵するための複数の区画を画成している複数の隔壁と、を含んでいることができる。浮体式貯蔵モジュールは、外殻と内殻との間に配置されている複数のコンクリート格子梁、をさらに含んでいることができる。燃料を充填および排出しているときに浮体式貯蔵モジュールの積載状態が均一に維持されるように、区画を同心構造に配置することができる。
【0010】
いくつかの実施形態においては、隔壁は、鋼、コンクリート、鋼−コンクリート複合材から成る群から選択される材料から製造することができる。代替実施形態においては、浮体式貯蔵モジュールの少なくとも1つをタンカー船とすることができる。さらなる実施形態においては、海底から水面までの水深が100メートル未満である。液体は、燃料、石油製品、石油化学製品、液化天然ガス、水から成る群から選択される少なくとも1種類の液体とすることができる。
【0011】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参照しながら一例として説明する。この技術分野における通常の技能を有する者には、以下の説明から本発明の実施形態が明確かつ深く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態による海上の燃料貯蔵施設の斜視図を示している。
【図2】図1の海上の燃料貯蔵施設の上面図を示している。
【図3】図1の海上の燃料貯蔵施設を図2の線X1−X1に沿って切断した断面図を示している。
【図4】本発明の代替実施形態による海上の燃料貯蔵施設の斜視図を示している。
【図5】図4の海上の燃料貯蔵施設の上面図を示している。
【図6】図4の海上の燃料貯蔵施設を図5の線X−Xに沿って切断した断面図を示している。
【図7】図1〜図6の海上の燃料貯蔵施設の一部として使用できる浮体式貯蔵モジュールの一実施形態を示している。
【図8】本発明の別の実施形態による海上の燃料貯蔵施設の概略図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の一実施形態による海上の燃料貯蔵施設(全体を参照数字100として表してある)の斜視図を示している。図2は、この海上燃料貯蔵施設100の上面図を示しており、図3は、図2の海上の燃料貯蔵施設を線X1−X1に沿って切断した断面図を示している。
【0014】
これらの図1〜図3を参照し、施設100は、海底102に支持されており水面104より高い位置にあるスパイン構造体110を含んでいることができる。スパイン構造体110は、複数の設備・機器(全体を参照数字150として表してある)を支えているプラットフォーム112をさらに含んでいることができる。いくつかの実施形態においては、プラットフォーム112は、スパイン構造体110に取り付けて、海底102に支持することもできる。浮体式貯蔵モジュール400の周囲に、浮防波堤140を配置することができる。プラットフォーム112には、一隻または複数隻の船舶118の着桟を容易にする1基または複数基の桟橋114を接続することができる。さらに、施設100は、複数の浮体式貯蔵モジュール400を含んでいる。この実施形態においては、すべての浮体式モジュール400が、桟橋114に平行であるスパイン構造体110に対して垂直に整列している。別の整列構造も可能であることを理解されたい。
【0015】
スパイン構造体110、プラットフォーム112、および桟橋114は、一例として複数のパイルジャケット120(これに限定されない)を使用して海底102に支持することができる。浮体式貯蔵モジュール400および浮防波堤140は、複数の係留ドルフィン122を使用して、横方向に互いに所定の位置に保持することができる。係留ドルフィン122は、浮体式モジュール400が、潮汐の変動と、貯蔵される製品の重量に応じた異なる浮上高さのために、互いに垂直方向に自由に動くことができるようにしている。モジュール400を横方向に拘束するため、係留ドルフィン122の上の1つまたは複数のキャップ124に1本または複数本の係留アーム(mooring arm)126を取り付けることもできる。複数のフレキシブルホースタワー(flexible hose tower)106(燃料をモジュール400にポンプで充填する、およびモジュール400から排出するために使用される)を、スパイン構造体110に沿って配置することができる。モジュール400が風および波の作用によって水平方向に動くときの水平方向の力を吸収するため、複数のゴム防舷材128を係留ドルフィン122および係留アーム126に取り付けることができる。
【0016】
さらに、施設100は、通路136を介してプラットフォーム112に接続されているヘリポート134を含んでいることができる。ヘリポート134は、複数のパイルジャケット120を使用して海底102に支持することもできる。代替実施形態においては、ヘリポート134をプラットフォーム112またはスパイン構造体110の一部とすることができる。
【0017】
施設100の配置構成の1つの利点として、浮体式モジュール400を造船所まで曳航する、あるいは緊急の場合に別の場所に配備する必要が生じたときに、これらのモジュール400の取り外しおよび再設置を容易に行うことができる。
【0018】
図4は、本発明の代替実施形態による海上の燃料貯蔵施設(全体を参照数字200として表してある)の斜視図を示している。図5は、図4の海上の燃料貯蔵施設200の上面図を示しており、図6は、図4の海上燃料貯蔵施設200を線X1−X1に沿って切断した断面図を示している。
【0019】
これらの図4〜図6を参照し、施設200は、海底102に支持されており水面104より高い位置にあるスパイン構造体210を含んでいることができる。スパイン構造体210は、複数の設備・機器(全体を参照数字250として表してある)を支えているプラットフォーム212をさらに含んでいることができる。いくつかの実施形態においては、プラットフォーム212は、スパイン構造体210に取り付けて、海底102に支持することもできる。浮体式貯蔵モジュール400の周囲に、浮防波堤140を配置することができる。プラットフォーム212には、一隻または複数隻の船舶118の着桟を容易にする1基または複数基の桟橋214を接続することができる。さらに、施設200は、複数の浮体式貯蔵モジュール400を含んでいることができる。この実施形態においては、すべての浮体式モジュール400が、桟橋214に垂直であるスパイン構造体210に対して垂直に整列している。別の整列構造も可能であることを理解されたい。
【0020】
スパイン構造体210、プラットフォーム212、および桟橋214は、一例として複数のパイルジャケット220(これに限定されない)を使用して海底102に支持することができる。浮体式貯蔵モジュール400および浮防波堤140は、複数の係留ドルフィン222を使用して、横方向に互いに所定の位置に保持することができる。係留ドルフィン222は、浮体式モジュール400が、潮汐の変動と、貯蔵される製品の重量に応じた異なる浮上高さのために、互いに垂直方向に自由に動くことができるようにしている。モジュール400を横方向に拘束するため、係留ドルフィン222の上の1つまたは複数のキャップ224に1本または複数本の係留アーム226を取り付けることもできる。モジュール400が風および波の作用によって水平方向に動くときの水平方向の力を吸収するため、複数のゴム防舷材228を係留ドルフィン222および係留アーム226に取り付けることができる。燃料を浮体式モジュール400にポンプで充填する、およびモジュール400から排出するための複数のフレキシブルホースタワー206を、スパイン構造体210に沿って要件に応じて配置することができる。
【0021】
さらに、施設200は、通路236を介してプラットフォーム212に接続されているヘリポート234を含んでいることができる。ヘリポート234は、複数のパイルジャケット220を使用して海底102に支持することもできる。代替実施形態においては、ヘリポート234をプラットフォーム212またはスパイン構造体210の一部とすることができる。
【0022】
施設200の配置構成の1つの利点として、より短いスパイン構造体210を使用しているため、より高い費用対効果で建設することができる。さらに、施設200の配置構成においても、浮体式モジュール400を造船所まで曳航する、あるいは緊急の場合に別の場所に配備する必要が生じたときに、これらのモジュール400の取り外しおよび再設置を容易に行うことができる。
【0023】
いくつかの実施形態においては、スパイン構造体110,210およびプラットフォーム112,212は、それぞれ、パイルジャケット120,220によって支持されるプレキャスト鉄筋コンクリートによって建造することができる。代替実施形態においては、スパイン構造体110,210およびプラットフォーム112,212をプレキャスト・プレストレスト・コンクリートから建造することができる。他の材料を使用することもできる。スパイン構造体110,210は、十分な乾舷(通常の水面104からスパイン構造体110,210の上部までの垂直距離)が確保されるように設置されている。なお、乾舷の大きさは、潮汐変動に応じて変化させ得ることを理解されたい。例えば、乾舷の大きさは、1〜6メートルの範囲内の長さとすることができる。例えば、天候条件に応じて、より長い、またはより短い乾舷も使用できることを理解されたい。スパイン構造体110,210の全体的な寸法は、施設100,200を形成する貯蔵モジュール400の幅および数に依存する。車両および作業者は、スパイン構造体110,210によって浮体式モジュール400にアクセスすることができ、浮体式モジュール400は、図1に示したようにスパイン110のいずれか一方の側に、あるいは図4に示したようにスパイン210の両側に、ドルフィン122,222によって係留することができる。スパイン構造体110,210には、発電所からの電力線と、桟橋114,214および他の支援インフラ設備150,250からのパイプも組み込むことができる。
【0024】
浮防波堤140は、浮体式貯蔵モジュール400を囲む外周を形成している。この防波堤140は、高波および船舶の衝突から施設100,200を保護するように設計されている。いくつかの実施形態においては、防波堤140は、漏れた石油化学製品の流出を制限するためのオイルフェンスとしての役割を果たすこともできる。一実施形態においては、浮防波堤140は、プレキャスト・プレストレスト・コンクリートから建造することができる。あるいは、防波堤140を鋼から建造することができる。防波堤140に当たる高波によって生じうるロール運動を低減する目的で、浮防波堤140の底面にビルジキール(図示していない)を取り付けることができる。これらの浮防波堤140は、例えば、パイルジャケットおよびドルフィン係留122,222を使用して係留することができる。施設100,200の稼働中、保守を目的として、または燃料を供給するため他の場所に緊急配備するとき、浮体式貯蔵モジュール400を巻き上げたり曳航できるように、浮防波堤140の一部を取り外すことができる。
【0025】
パイルジャケットによって支持されているプラットフォーム112,212は、浮体式燃料貯蔵施設100,200を稼働させるために使用される支援設備・機器150,250のための空間を提供する。図1〜図6を参照し、支援設備・機器150,250は、一例として、以下に限定されないが、1つまたは複数のユーティリティ設備、例えば、パイプラインのパージを行うための窒素タンク152,252、海水を貯蔵するための1基または複数基の消火用水タンク154,254、海水をくみ上げるための1台または複数台の消化用水ポンプ、1台または複数台の携帯型水タンク158,258、1基または複数基の製品ポンプ設備160,260、1基または複数基の機械式油分離器162,262、浄化槽(図示していない)、浄水ユニット(図示していない)、バルブマニホールド164,264、ヒーター設備(図示していない)、1基または複数基の発電プラント166,266、ガス処理プラント(図示していない)、事務所、作業員詰所、およびバルク液体ターミナルの稼働に要求される任意の他のユーティリティ設備、を含んでいることができる。なお、図面に示した支援設備・機器150,250は、一例として記載したにすぎない。スパイン構造体110,210およびプラットフォーム112,212には、必要に応じてその他の数多くの設備を含めることができる。
【0026】
施設100,200は、コントロールビル170,270も有し、このビルには、施設100,200を完全自動モードで稼働させるため、相互稼働性適合規格(ICS:Interoperability Conformance Specification)に基づくシステムを設置することができる。ICSシステムによって、正しい製品が、それに割り当てられている桟橋114,214から正しい石油貯蔵モジュール400に移送されるように確保することができる。さらに、ICSシステムを使用することで、1基の石油貯蔵モジュール400からの製品が、それに互換性のある貯蔵モジュール400に移送されるように確保することができる。さらに、ICSシステムでは、石油化学製品の移送において、すべてのバルブが適切に切り替わった後にポンプを始動させることができる。ICSシステムは、フィールド機器に統合してこれらを制御することもでき、フィールド機器としては、例えば、レーダー式タンクゲージ(radar tank gauges)、ウェイトブリッジ機器(weighbridges equipment)、計量コントローラ(batching controller)、モータ、ポンプ、パッケージ型プログラマブルロジックコントローラ(PLC)、可変速度駆動システム(VSDS)、閉回路テレビ(CCTV)サーバ、遠隔データ入力パネル、遠隔表示パネル、さらなるインテリジェント機器(smart additive equipment)、その他のターミナル状フィールド機器が挙げられる。
【0027】
パイルによって支持されている桟橋114,214では、石油タンカー118が施設100,200に停泊して石油化学製品の荷役を行うことができる。なお、桟橋114,214は、船舶118の着桟および石油化学製品の荷役に対応するための任意の望ましい構造でよいことを理解されたい。
【0028】
図7は、図1〜図6の施設100,200の一部を形成している浮体式貯蔵モジュール400の一実施形態の分解図である。浮体式貯蔵モジュール400は、プレストレストコンクリート製の外殻402と、外殻402の中に配置されている複数のコンクリート格子梁404とを含んでいることができる。次いで、外殻402の中の格子梁404の上に、プレストレストコンクリート製の内殻406を形成することができる。格子梁404は、浮体式貯蔵モジュール400の内殻406および外殻402を補強し、これらを一体化している。代替実施形態においては、コンクリート格子梁404をコンクリートのハニカム構造に置き換えることができる。内殻406の中に1基または複数基の鋼製タンク408を組み込むことができる。鋼製タンク408の中に複数の隔壁410を組み込んで複数の貯蔵区画412を画成することができる。いくつかの実施形態においては、隔壁410は、鋼、コンクリート、鋼−コンクリート複合材、または、さまざまな液体を格納するうえで十分な構造強度を提供する他の任意の材料とすることができる。隔壁410の上にカバー414が設けられており、このカバー414は、例示的な一実施形態においてはコンクリートから形成することができるが、この材料に限定されない。
【0029】
貯蔵区画412は、1つの区画412の中の液体が、隣接する区画412の中の液体から隔離されるように、さまざまな液体(図示していない)を貯蔵するように設計されている。これらの液体としては、一例として、以下に限定されないが、バンカー燃料、ディーゼル燃料、ガソリン、さまざまな原料用石油化学製品(例:ベンゼン、エチレン)、真水、海水などが挙げられる。区画412の中には、施設100,200の事業者の特定のニーズに応じて、任意の種類の石油、石油化学製品、および燃料製品を貯蔵することができる。浮体式貯蔵モジュール400にバラストを提供するため、あるいは真水の海上貯蔵施設として、1つまたは複数の区画412に海水または真水を貯蔵することができる。さらには、液化天然ガス(LNG)、プロパン、または任意のその他の種類の圧縮ガス製品を貯蔵する目的に、貯蔵モジュール400を適合させることができる。
【0030】
図7に示した区画412の具体的な設計は、一例として示したにすぎない。タンク408内の区画412は、要求される貯蔵能力が提供されるようにさまざまな形で構成および配置することができる。いくつかの実施形態においては、区画412に充填および区画412から排出しているときに浮体式貯蔵モジュール400の積載状態が均一に維持されるように、貯蔵区画412を同心構造に配置することができる。
【0031】
コンクリート製の殻402,406は、鋼製の殻と比較していくつかの利点がある。コンクリート構造体は、より低いコストで建造することができる。コンクリート構造体は耐火性であり、良好な疲労抵抗を示す。コンクリートは腐食しない。コンクリート製の殻402,406は、波の運動と、機器によって発生する振動とに対する慣性が大きい。鋼よりも寿命が長く、保守費用が低い。
【0032】
図7に示した浮体式貯蔵モジュール400の実施形態においては、浮体式貯蔵モジュール400は、長さ約180メートル、幅約80メートル、深さ約14メートルとすることができる。代替実施形態においては、浮体式貯蔵モジュール400の長さを120〜180mの範囲内、幅を60〜80mの範囲内、深さを10〜15mの範囲内の別の長さとすることができる。なお、これらの寸法は単に一例として示したものであることを理解されたい。浮体式貯蔵モジュール400は、特定のニーズ、需要、または設計上の考慮事項に応じて、記載したより大きい、あるいは小さい任意の寸法を使用して建造することができる。
【0033】
これらのモジュール400をいくつか使用すると、施設100,200は、数百万立方メートルの燃料を貯蔵することができる。必要な場合、モジュール400の数およびサイズを大きくすることによって貯蔵能力を容易に拡大することができる。ロール運動を軽減するため、浮体式モジュール400の底面の長辺にビルジキール(図示していない)を取り付けることができる。個々の浮体式貯蔵モジュール400は、それぞれ自身のポンプ設備106,206と、上面に配置されたバルブマニホールドとを有することができる。さらに、各モジュール400には、廃油あるいは誤って汚染された雨水を受け入れるための廃液槽(slop sump)を設置することもできる。集まった廃油または汚染された雨水は、廃液ポンプ(ユーティリティ設備の廃液槽に設置することができる)を使用することによって、1つまたは複数の沈殿槽172,272に移送することができる。
【0034】
施設100,200の代替実施形態においては、浮体式貯蔵モジュール400の代わりに古い石油タンカーを使用して、大量の石油化学製品を貯蔵することができる。図8は、このような実施形態800の概略図を示しており、複数のタンカー802を使用している。さらには、古い石油タンカーと浮体式貯蔵モジュール400との組合せを使用して、施設100,200の貯蔵能力を提供できることを理解されたい。
【0035】
施設100,200は、開水域に建設して、独立した施設として機能することができる。好ましい実施形態においては、パイルジャケット支持体120,220の設置を容易にする目的で、水深を30〜100メートルとする。30メートル未満の水深では、大型タンカーに対応できないことがある。100メートルを超える水深では、パイルジャケット支持体の設置が大幅に難しくなる。
【0036】
施設100,200を建設する一方法として、最初に、パイルジャケット支持体120,220を設置する。次いで、スパイン構造体110,210と、プラットフォーム112,212と、桟橋114,214とを、それぞれ支持体120,220に固定する。次いで、モジュール400および防波堤140に横方向の支持を提供するために使用されるパイルジャケットおよびドルフィン係留システム122,222を設置する。次いで、浮体式モジュール400(例えば近くの造船所で並行して建造することができる)を、タグボートによって曳航して所定の位置に導く。次いで、係留アーム126,226と、浮防波堤140の端部分とを設置する。次いで、パイプ、マニホールド、およびフレキシブルホースタワーを設置する。次いで、プラットフォーム上に支えられる設備150,250を建設する。十分な稼働試験を実行した後、燃料貯蔵施設100,200の稼働を開始することができる。好ましい実施形態においては、施設100,200、防波堤140、およびモジュール400に作用する波の力が最小になるように、施設100,200を向かい波に向けることができる。
【0037】
本発明の実施形態は、現在の陸上ベースの貯蔵システムと比較していくつかの利点を提供する。本施設は、規模を拡大・縮小することができ、陸上施設に関連する土地利用問題を考慮することなく、任意の望ましい構造に配置することができる。海上の燃料貯蔵施設は、浮体式貯蔵モジュールを造船所で建造できるため、短期間のうちに容易に建設される。石油化学製品の重量を支持するための高コストの支持構造は要求されない。浮体式貯蔵モジュールの内側のタンクが区画化されているため、事業者は幅広い石油製品を扱うことができる。
【0038】
適度な水深の海に位置しているため、膨大な海洋空間と、海によって提供される浮力とを利用して、極めて大量の燃料を安価に貯蔵することができる。本発明の実施形態によると、数百万立方メートルの製品の貯蔵能力を提供する施設を建設することが可能である。海上に燃料を貯蔵することにより、可燃性の製品が人口密集区域から、孤立した海洋空間に移行し、貯蔵されている燃料および石油化学製品の煙霧が人の居住地および工場から離れる。
【0039】
具体的な実施形態に示した本発明には、広義に記載した本発明の概念または範囲から逸脱することなく、膨大な変更あるいは修正が可能であることが、当業者には理解されるであろう。したがって、記載した実施形態は、単に説明を目的とするものであり、本発明を制限しないことを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
独立型の海上の燃料貯蔵施設であって、
海底に支持されているスパイン構造体と、
前記スパイン構造体に隣接して係留されており、それぞれが少なくとも1種類の液体を貯蔵できる複数の浮体式貯蔵モジュールと、
を備えている、燃料貯蔵施設。
【請求項2】
海底に支持されており複数の稼働設備を支えることのできるプラットフォーム、
をさらに備えている、請求項1に記載の貯蔵施設。
【請求項3】
前記複数の浮体式貯蔵モジュールを完全に囲む浮防波堤、
をさらに備えている、請求項1または請求項2に記載の貯蔵施設。
【請求項4】
海底に支持されており前記スパイン構造体に隣接して位置している少なくとも1つの桟橋、
をさらに備えている、請求項1から請求項3のいずれかに記載の貯蔵施設。
【請求項5】
前記スパイン構造体と、前記プラットフォームと、前記桟橋とが、パイルジャケットを使用して海底に支持されている、
請求項4に記載の貯蔵施設。
【請求項6】
前記スパイン構造体が、プレキャスト鉄筋コンクリートおよびプレキャスト・プレストレスト・コンクリートのうちの少なくとも一方を備えている、
請求項1から請求項5のいずれかに記載の貯蔵施設。
【請求項7】
前記複数の浮体式貯蔵モジュールのそれぞれが、複数の係留ドルフィンに隣接して位置しており、前記係留ドルフィンが、前記浮体式貯蔵モジュールが互いに対しておよび前記スパイン構造体に対して横方向に一定の位置に維持されるように、海底に取り付けられている、
請求項1から請求項6のいずれかに記載の貯蔵施設。
【請求項8】
前記複数の浮体式貯蔵モジュールの少なくとも1つが、プレストレストコンクリート製の外殻と、プレストレストコンクリート製の内殻と、前記内殻の中の少なくとも1基の鋼製タンクと、前記タンク内に前記液体を貯蔵するための複数の区画を画成している複数の隔壁と、を備えている、
請求項1から請求項7のいずれかに記載の貯蔵施設。
【請求項9】
前記浮体式貯蔵モジュールが、前記外殻と前記内殻との間に配置されている複数のコンクリート格子梁、をさらに備えている、請求項8に記載の貯蔵施設。
【請求項10】
燃料を充填および排出しているときに前記浮体式貯蔵モジュールの積載状態が均一に維持されるように、前記区画が同心構造に配置されている、
請求項8または請求項9に記載の貯蔵施設。
【請求項11】
前記隔壁が、
鋼、コンクリート、鋼−コンクリート複合材、から成る群から選択される材料、
を備えている、
請求項8から請求項10のいずれかに記載の貯蔵施設。
【請求項12】
前記浮体式貯蔵モジュールの少なくとも1つがタンカー船を備えている、
請求項1から請求項11のいずれかに記載の貯蔵施設。
【請求項13】
海底から水面までの水深が100メートル未満である、
請求項1から請求項12のいずれかに記載の貯蔵施設。
【請求項14】
前記液体が、
燃料、石油製品、石油化学製品、液化天然ガス、水、から成る群から選択される少なくとも1種類の液体、
である、
請求項1から請求項13のいずれかに記載の貯蔵施設。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−521818(P2011−521818A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506234(P2011−506234)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【国際出願番号】PCT/SG2008/000138
【国際公開番号】WO2009/131543
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(509034605)ナショナル ユニバーシティ オブ シンガポール (4)
【出願人】(510284059)
【Fターム(参考)】