説明

海上ソーラー発電装置

【課題】太陽光を利用して発生させたクリーンなエネルギーを、海に隣接した都市部などに安定供給する海上ソーラー発電装置を提供する。
【解決手段】太陽光を電力に変換するソーラーパネルと、ソーラーパネルを海上に浮遊させるフロート20を備えたソーラーフロートユニット21a〜fと、ベース部14と、ベース部に設置される海水電気分解部11、貯蔵部12、燃料電池発電部13とを備え、海水電気分解部は、ソーラーパネルから供給される電力を利用して、海水を電気分解して水素を抽出し、貯蔵部は、海水電気分解部にて抽出した水素を貯蔵し、燃料電池発電部は、貯蔵部に貯蔵する水素を使用して電力を発生させ、陸上の供給対象に給電することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電を利用した海上ソーラー発電装置に関するものであり、特に、海に隣接する都市部などに対して、安定したエネルギー供給を行うことのできる海上ソーラー発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、大気中に排出する二酸化炭素の抑制が求められる中、石油などの化石燃料などから炭素排出量の少ないクリーンなエネルギーへの移行が進められつつある。特許文献1には、風力や太陽光の自然エネルギーと、自然の水あるいは水道水とを組み合わせ、高純度の水素を安定的に供給することのできる水素製造装置が提案されている。
【0003】
一方、特許文献2には、海上に設置される大型浮体構造物に、太陽光発電など海上で利用できる自然エネルギーを用いて電力の自給を試みる海上自給設備が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−298232号公報
【特許文献2】特開2002−255091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、特許文献2に開示される設備では、自然から得たクリーンなエネルギーを抽出することで環境に負担をかけることなく利用エネルギーを得ることができる。しかしながら、特許文献1における水素製造装置は、エネルギーとして水素を利用しているため、水素の貯蓄ならびに輸送には危険が伴うこととなる。
【0006】
また、特許文献2における自給設備は、大型浮体構造物での自給を目的とするものであって、都市部など他のエネルギー供給対象に対して供給することを目的としたものではない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、海上の豊かな敷設面積と海水の利用を図るとともに、臨海都市部などのエネルギー供給対象に対して効率的にエネルギーを供給することを目的とするものである。
【0008】
そのため、本発明に係る海上ソーラー発電装置は、複数のソーラーフロートユニットを有するソーラーフロートと、前記ソーラーフロートに隣接して海上に配置されたエネルギープラントを備え、前記ソーラーフロートユニットは、太陽光を電力に変換するソーラーパネルと、前記ソーラーパネルを海上に浮遊させるフロートを備え、前記エネルギープラントは、ベース部と、前記ベース部に設置される海水電気分解部、貯蔵部、燃料電池発電部とを備え、前記海水電気分解部は、前記ソーラーパネルから供給される電力を利用して、海水を電気分解して水素を抽出し、前記貯蔵部は、前記海水電気分解部にて抽出した水素を貯蔵し、前記燃料電池発電部は、前記貯蔵部に貯蔵する水素を使用して電力を発生させ、陸上の供給対象に給電することを特徴とするものである。
【0009】
さらに、本発明に係る海上ソーラー発電装置において、前記エネルギープラントは、第1の側を陸に向けて位置するとともに、前記ソーラーフロートは、前記エネルギープラントの第1の側とは異なる第2の側に隣接して位置することを特徴とするものである。
【0010】
さらに、本発明に係る海上ソーラー発電装置において、前記ベース部は、海上に浮遊して配置されることを特徴とするものである。
【0011】
さらに、本発明に係る海上ソーラー発電装置は、前記熱量電池発電部にて発生する熱量を熱媒体に移動させ、前記熱媒体を陸上の供給対象に供給することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
以上、本発明の海上ソーラー発電装置によれば、ソーラーフロートにて得られた太陽光電力を、海水電気分解部にて水素に変換して貯蔵するともに、貯蔵した水素を燃料電池発電部にて、電力に変換して陸上のエネルギー供給対象に供給することとしており、都市部などのエネルギー供給対象の需要に応じるとともに、安定した電力を供給することが可能となる。
【0013】
また、水素を貯蔵する貯蔵部は、海上に設置され、他の場所に輸送する必要もないため、事故が発生した場合においても被害を最小限に留めることが可能となる。さらに、ソーラーフロートは、複数のソーラーフロートユニットにて構成されているため、ソーラーフロートの拡張性、形状の変更などの自由度に優れたものとなる。さらにソーラーフロートユニットを交換することで、故障などに対処できるメンテナンス性能の優れたものとなる。
【0014】
また、ソーラーフロートは、海上に浮遊する施設であるため、設置位置にて製造する必要が無く、完成品を曳航して設置位置に設置することで簡易な設置が可能となっている。さらに、エネルギープラントについても、海上に浮遊する施設とすることで、海上ソーラー発電装置全体の設置、輸送も簡易に行うことが可能となる。
【0015】
さらに、熱量電池発電部にて発電を行う際に発生する熱量を熱媒体に移動させて、エネルギー供給対象に供給することで、エネルギーの有効利用を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る海上ソーラー発電装置の全体像を示す図。
【図2】本発明の実施形態に係る海上ソーラー発電装置の主要構成を示す図。
【図3】本発明の実施形態に係るソーラーフロートユニットの詳細を示す図。
【図4】本発明の実施形態に係る海上ソーラー発電装置の機能を示すブロック図。
【図5】本発明の実施形態に係る海上ソーラー発電装置による電力供給を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る海上ソーラー発電装置の全体像を示す図である。本実施形態の海上ソーラー発電装置は、エネルギープラント10と、ソーラーフロート20を含んで構成されている。また図示されるようにエネルギー供給対象となる臨界都市部の海岸線に近接して配置される。
【0018】
本実施形態では、ソーラーフロート20の太陽光発電にて得られた電力をエネルギープラント10に供給する。エネルギープラント10では、まず、ソーラーフロート20からの電力を利用して海水を電気分解し水素を抽出する。抽出された水素は、タンクなどの貯蔵部に一旦貯属される。この貯蔵部に貯蔵する水素を利用して、燃料電池発電部にて発電し、エネルギー供給対象となる都市部などに供給する。
【0019】
このように、本発明の実施形態に係る海上ソーラー発電装置では、ソーラーフロート20から得た電力を、水素に変換し貯蔵しておくことでエネルギー供給対象となる都市部などに安定した電力を供給することが可能となる。さらに、本実施形態では、燃料電池発電部にて発電行う際に発生する熱量についてもエネルギー供給対象に供給することとしている。熱量の搬送は、液体、気体などの熱媒体に熱量を移動させることで可能となる。搬送された熱媒体の熱量は、市水などに移動され給湯のために利用することが可能となる。
【0020】
さらに、本実施形態では、エネルギープラント10の第1の側を陸側に近接して配置するとともに、第1の側とは異なる第2の側(この場合、反対側)にソーラーフロート20を配置させている。このように、エネルギープラント10をエネルギー供給対象に近い位置に配置することで、距離によるエネルギー損失を抑えることが可能となる。また、ソーラーフロート20は、複数のソーラーフロートユニットにて構成されている。ソーラーフロートユニット20を第2の側(開けた海側)に配置することで、ソーラーフロート20の拡張性、並びに、海上の利用状況などに応じてソーラーフロート20の形状を変更できる自由度の優れたものとなる。
【0021】
図2は、本発明の実施形態に係る海上ソーラー発電装置の主要構成を示す図である。前述したようにソーラーフロート20は、複数のソーラーフロートユニット21にて構成されている。本実施形態では、海上に浮遊可能なソーラーフロートユニット21を互いに連結することでソーラーフロート20が構成されている。また、エネルギープラント10に隣接するソーラーフロートユニット(21fなど)は、エネルギープラント10のベース部14に連結される。ソーラーフロートユニットの位置固定については、このような形態に限らず、各ソーラーフロートユニット単体が、アンカーなどで海底などに固定されるものであってもよい。
【0022】
エネルギープラント10は、ベース部14と、ベース部14上に配置された海水電気分解部11、貯蔵部12、燃料電池発電部13を含んで構成され、燃料電池発電部13にて発生した電力、熱をエネルギー供給対象となる都市部などに供給する。なお、電力については送電線を用いて、また、熱については熱媒体を搬送可能な管(パイプ)を利用して搬送されることとなる。このように本実施形態では、水素を貯蔵する貯蔵部12を海上に設置しているため、万が一事故が発生した場合においても、被害の拡大を抑えることが可能となる。さらに、貯蔵部12にて貯蔵する水素は、燃料電池発電部13にて電力に変換されて供給されるため、水素自体を輸送する必要が無く、輸送上の危険を伴うこともない。
【0023】
エネルギープラント10のベース部14は、海底に基礎を有する建造物として設置してもよいし、ソーラーフロート20と同様、フロートを利用して海上に浮遊する施設として設置されるものであってもよい。海上に浮遊するように構成した場合には、ソーラーフロート20と同様、海上搬送が可能となり、エネルギープラント10とソーラーフロート20を曳航し、短時間の設置作業で供給対象にエネルギーを供給することが可能となる。災害などの緊急時に海上ソーラー発電装置を迅速に設置することも可能となる。
【0024】
図3は、本発明の実施形態に係るソーラーフロートユニット21の詳細を示す図である。本実施形態では上面からみたときの形状が矩形形状であるソーラーフロートユニット21を連結して構成されている。各ソーラーフロートユニット21は、4つのフロート23a〜d、ソーラーパネル22、ソーラーパネル22を支えるパネルスタンド24、ソーラーフロートユニット21を相互に連結する固定部25a〜dを備えて構成されている。
【0025】
ソーラーフロートユニット21は、図示するように、例えば、1辺が約20m、他辺が約15mの矩形形状であり、固定部25にて互いに連結されて構成されている。このようにソーラーフロート20を複数のソーラーフロートユニット21にて構成することで、ソ
ーラーフロートユニット21に支障が生じたときに迅速に交換することで、簡易なメンテナンスが可能となる。さらに、ソーラーフロート20の拡張性、形状の自由度を高めることが可能となる。
【0026】
太陽光発電を行うソーラーパネル22は、パネルスタンド24上に配置される。太陽光を効率よく取得するため、パネルスタンド24の角度、方向は調整可能とするとよい。さらには、太陽の方向を自動で追跡する稼働機構を設けることとしてもよい。
【0027】
固定部25a〜dは、各ソーラーフロートユニット21の位置決めを行う部材であって、本実施形態では隣接するソーラーフロートユニット21のフロート23を互いに連結する連結具が使用されている。図では、一方向についてソーラーフロートユニット23が連結する様子が示されているが、他の方向に隣接するソーラーフロートユニット23も図示しない固定部25にて連結されることとなる。
【0028】
ソーラーフロートユニット23を互いに連結可能とすることで、海上ソーラー発電装置2を移動させる際にも、連結した状態で曳航し、設置箇所に容易に設置することが可能となる。なお、固定部25は、このようにソーラーフロートユニット23同士を互いに連結する形態に限らず、各ソーラーフロートユニット21をアンカー等にて海底に固定する絶対的な位置決めを行うこととしてもよい。ソーラーフロートユニット21の相互の固定と、絶対的な位置決め、両者を採用するものであってもよい。
【0029】
図4は、本発明の実施形態に係る海上ソーラー発電装置の機能を示すブロック図である。ソーラーフロート20を構成する各ソーラーフロートユニット21のソーラーパネル22には、太陽光発電で得た電力をエネルギープラント10に対して供給する電力線が接続されている。
【0030】
エネルギープラント10の海水電気分解部11では、周囲に豊富に存在する海水を汲み上げ、各ソーラーパネル22から電力を使用して、電気分解し水素を抽出する。抽出された水素は、貯蔵部12内の水素貯蔵タンク12に貯蔵される。また、電気分解で同時に発生した酸素も酸素貯蔵タンクに貯蔵している。
【0031】
燃料電池発電部13では、必要となる電力需要に合わせて、水素貯蔵タンク12に貯蔵する水素を利用して発電が実行される。なお、本実施形態では、発電の際に同時に発生した熱量を液体、気体などの熱媒体に移動させ、エネルギー供給対象に対して熱供給することとしている。熱媒体は、管(パイプ)などにて搬送される。また、燃料電池発電部13にて得られた電力は、エネルギー供給対象のみならず、ポンプによる海水の汲み上げなど、エネルギープラント10あるいはソーラーフロート20にて利用する電力に供給することとしてもよい。海上ソーラー発電装置自身でエネルギーをまかなうことが可能となる。
【0032】
図5は、本発明の実施形態に係る海上ソーラー発電装置による電力供給を説明するための図である。図5(a)は、エネルギー供給対象となる都市部における電力需要の遷移を示した図である。この図に示されるように11時〜20時までの活動期において電力需要はピークを迎え、夜間、並びに深夜において電力需要は低下する。
【0033】
一方、図5(b)には、実線にて太陽光発電による電力供給が示されている。この実線にて示されるように太陽光発電による電力供給では、日照時間が限られると共に、電力供給にもばらつきが見られる。さらに天候変化も加味されるため、太陽光発電にて安定した電力供給を行うことは困難である。図5(b)には破線にて、本実施形態の海上ソーラー発電装置を利用した電力供給が示されている。海上ソーラー発電装置では、水素にて余剰電力を蓄積させることが可能となり、斜線にて示される水素による蓄積電力を不足する期
間にて補うことで、図5(a)に示される電力需要に即した電力供給を行うことが可能となる。
【0034】
なお、本発明はこれらの実施形態のみに限られるものではなく、それぞれの実施形態の構成を適宜組み合わせて構成した実施形態も本発明の範疇となるものである。
【符号の説明】
【0035】
10…エネルギープラント、11…海水電気分解部、12…貯蔵部、13…燃料電池発電部、14…ベース部、20…ソーラーフロート、21…ソーラーフロートユニット、22…ソーラーパネル、23…フロート、24…パネルスタンド、25…固定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のソーラーフロートユニットを有するソーラーフロートと、前記ソーラーフロートに隣接して海上に配置されたエネルギープラントを備え、
前記ソーラーフロートユニットは、太陽光を電力に変換するソーラーパネルと、前記ソーラーパネルを海上に浮遊させるフロートを備え、
前記エネルギープラントは、ベース部と、前記ベース部に設置される海水電気分解部、貯蔵部、燃料電池発電部とを備え、
前記海水電気分解部は、前記ソーラーパネルから供給される電力を利用して、海水を電気分解して水素を抽出し、
前記貯蔵部は、前記海水電気分解部にて抽出した水素を貯蔵し、
前記燃料電池発電部は、前記貯蔵部に貯蔵する水素を使用して電力を発生させ、陸上の供給対象に給電することを特徴とする
海上ソーラー発電装置。
【請求項2】
前記エネルギープラントは、第1の側を陸に向けて位置するとともに、
前記ソーラーフロートは、前記エネルギープラントの第1の側とは異なる第2の側に隣接して位置することを特徴とする
海上ソーラー発電装置。
【請求項3】
前記ベース部は、海上に浮遊して配置されることを特徴とする
請求項1または請求項2に記載の海上ソーラー発電装置。
【請求項4】
前記熱量電池発電部にて発生する熱量を熱媒体に移動させ、前記熱媒体を陸上の供給対象に供給することを特徴とする
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の海上ソーラー発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−94363(P2012−94363A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240244(P2010−240244)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】