説明

海中に設ける設備を係留するため、ロケット推力を利用して海底に撃ち込む杭に関する発明

【課題】海流の運動エネルギーを利用する水力発電設備などの機器が海流により押し流されないよう、海底に固定した係留設備を設けてこれに水力発電設備などの機器を係留する。
【解決手段】ロケットの推力を備えたロケット杭を海上から海底に撃ち込んで、その杭に内蔵するスラリー状セメントをロケット杭の胴体の周囲に圧し出し、その胴体に装着した網状鉄筋4およびヒレ3,6と周囲の海底土砂をこのセメントで混合凝固せしめて強力な係留設備を作る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
海洋エネルギー利用のための基礎技術。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】 この発明が解決しようとする課題に取り組み、または特許請求の範囲と重複する従来技術の特許文献は見付からなかった。
【非特許文献1】 この発明が解決しようとする課題に取り組み、または特許請求の範囲と重複する従来技術の非特許文献は見付からなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
黒潮のような海流は巨大な運動エネルギーを内包し昼夜を分かたず年中流れるので、その運動エネルギーを発電に利用可能にすることは、今後のエネルギー枯渇と地球温暖化に対処する手段として極めて重要である。
しかし水力発電の発電能力は水の流速の3乗に比例するので、流速が大きい海域に発電プラントを固定して設置することが必要である。しかし現実の海流の流速はせいぜい毎秒1m〜2.5m程度でエネルギー密度が低いので水力発電の実用プラントは極めて巨大なサイズにならざるを得ない。
黒潮などの海流の急流域は概して千mないし数千mと水深が深いから、かかる水力発電の実用プラントを水深千m以上の海域で係留するためには通常の錨ではほとんど不可能と見られ、また巨大な把駐力をもつ係留設備を土木工事で海底に建設することは技術的、経済的に非現実的である。
以上の理由から、大きな把駐力をもつ係留設備を低コストで建設できる方法の発明が海流発電を実現するために不可欠の重要事である。
【課題を解決するための手段】
土木工事による係留設備の建設に代わる設備を低コストで深海底に建設する方法として、ロケットの推力を備えたロケット杭を海上から撃ち込み、この杭の胴体に貯蔵するスラリー状セメントをロケット杭の胴体外周に圧し出して、その胴体に取り付けた網状鉄筋4と周囲の海底土砂をこのセメントで混合凝固せしめることにより、海底土木工事で建設する係留設備に代わることができる。
【発明の効果】
セメント貯槽8,10から圧し出されたスラリー状セメントはヒレ3,6及び網状鉄筋4とロケット杭の周囲の土石と混合凝結して一体となり、その重量および周囲の海底との摩擦抵抗を増す。この結果、係留の対象である設備と係留ロープにかかる海流の圧力に耐える把駐力を、ロケット杭単体のみの場合よりも著しく強くするとともに、万一ロケット杭が海底から引き抜かれてもヒレ3,6が通常の錨における爪の役割を果たし、かつセメントで混合凝固して一体化した土砂とロケット杭の重量の効果で流錨を防ぐ。
【発明を実施するための最良の形態】
海底の地質はマリーンフレークが大量に蓄積した沼の底のような状態から海底山脈の尾根の硬い岩盤がむき出しの状態まで、様々な状態が予想される。従って、実際にはロケット杭の胴径、長さ、ヒレ3,6のサイズ、形状、着地センサーの性能などは海底の地質の状態に応じて仕様を変更し、ロケット杭を最適の形状にすることが必要と考える。このため、海底の地質探査機器が必要となるが、これは別途の考案による。
【実施例】
ロケット杭の実施例はない。しかし、海水中にスラリー状のポルトランドセメントを圧し出したとき土砂と混合凝固するか否かを実験したところ、十分実用に耐える凝固を確認できた。なお、海水中でセメントが長期間にわたり強固に耐用されるためには、高炉セメントC種が好適で(http://www.esment.jp/ko01/ko01.htmlなど)、ポルトランドセメントはこれに及ばないと報告される。上記の実験では高炉セメントC種は入手できないためポルトランドセメントを代用した。
【産業上の利用可能性】
この発明は潮流発電にも利用可能である。潮流発電は潮の干満に伴って生じる出潮、入り潮の急流を利用する発電であるが、この場合も何らかの係留設備が必要である。潮流の急流は我が国では津軽、鳴門、明石、関門など各海峡のほか、瀬戸内海の各地に見られるが、通常これらの急流域は船舶の通行が多く、また海底の構造が複雑なため潮流も複雑であるなど、海底や海上に係留施設を建設することが困難である。このような箇所に潮流発電プラントを設置、稼働するためにも本発明のロケット杭は好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ロケット杭の外形図と断面図
【符号の説明】
1 ロケット推進ガスの噴出口1。
2 海流発電プラントの係留索の末端を取り付ける環2。
3 後部フィン3。フィン3は3ヶ所以上取り付ける。側面方向からはたらく発電プラン トの引っ張り圧力に抵抗する機能と、もしロケット杭が引き抜かれた場合は海底に食 い込んで流錨を防ぐ役割を果たす。
4 ロケット杭の側面に熔接して取り付けた網目状鉄筋4。この直近にあるセメント圧出 孔5,11を通じてロケット内部から圧出するスラリ−状セメントと周囲の海底土石 が混合凝結し、一体となって発電プラントの把駐力を強化する。
5 セメント貯槽8,10のスラリー状セメントの圧出孔5,11。網目状鉄筋4および ロケット杭の胴体に沿って多数ある。
6 前部フィン6。ロケット杭が海底に撃ち込まれたとき硬い地層を破砕し、フィン3, 6の直後に続く網目状鉄筋4とセメント圧出孔5,11から圧し出されるスラリー状 セメントが周囲の土砂を混合し易くする。
7 ロケット燃料貯槽・燃焼室7。
8 スラリー状セメントの後部貯槽8。このセメントで後部フィン3と周囲の網目状鉄筋 4の周囲を固める。
9 スラリー状セメントの後部貯槽8のスラリー状セメントを圧し出す加圧室9。加圧方 法は液体のガス化と機械的圧出があり、状況に応じて使い分ける。
10 スラリー状セメントの前部貯槽10。
11 セメント貯槽8,10のセメント圧出孔5,11。
12 前部セメント貯槽10のスラリー状セメントをロケット杭の外周部に圧し出す加圧 室12。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロケットの推推力を備えた杭(以下ロケット杭と呼ぶ)を海上から海底に撃ち込み、海中に設置する設備をこの杭に係留する。
【請求項2】
杭の胴体内のロケット燃料貯槽・燃焼室7にロケット燃料を貯蔵し、杭を発射するとこれを燃焼、噴射させて杭に推進力を与える。
【請求項3】
ロケット杭の後部を前半部よりも太い円柱形にし、前半部、後部の内部をそれぞれスラリー状セメントの貯槽8,10とする。後部を太い円柱形にしているのはここにセメント貯槽8を設けるとともに、海底に撃ち込んだロケット杭が土中深く入り過ぎないよう、この段差でブレーキをかける機能を果たす。
【請求項4】
セメント貯槽8,10に隣接してセメント加圧室9,12を設け、ロケット杭が海底に撃ち込まれるとセメント貯槽8,10内のスラリー状セメントを加圧してセメント圧出孔5,11からロケット杭の外に圧し出す。
【請求項5】
ロケット杭の胴体に沿って、その先頭部及び後尾部にそれぞれ3枚以上のヒレ3,6とヒレに続いて網状鉄筋4を取り付ける。これらのヒレ3,6はロケット杭を海底に撃ち込んだとき、海底の土石を破砕し、網状鉄筋4と破砕された土石がスラリー状セメントで混合凝固されることを可能にする。
【請求項6】
ロケット杭の最後尾に環2を附け、この環2にシャックル、スイベル、重量の大きい鎖、係留ロープ結合器、係留ロープなどを順次つないで、最後に係留ロープで発電設備などの機器を係留する。
【請求項7】
ロケット杭の先端部及び/又は後部ヒレ3,6に地圧センサーを装備し、ロケット杭が海底に到達するとロケット燃料の燃焼を止めるとともに、セメント加圧室9,12からセメント貯槽8,10へ加圧を始める。
【請求項8】
ロケット杭の最後尾の環2の近くに犠牲電極を取り付ける。犠牲電極はロケット杭の帯電を防止する。
【請求項9】
セメントのスラリーにガラス繊維などの繊維の切断片を混合して、海底土石との混合凝固を強固にする。

【図1】
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【公開番号】特開2011−21453(P2011−21453A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185213(P2009−185213)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(509224549)
【Fターム(参考)】