説明

海中沈設用ブロック

【課題】炭酸固化体からなる海中沈設用ブロックにおいて、ホンダワラ類の着生・繁殖を選択的に抑制し、コンブ類など着生・繁殖を促進させる。
【解決手段】粉粒状の未炭酸化Ca含有原料を炭酸化反応で固結させて得られた炭酸固化体であって、少なくとも上面に、少なくとも上面に、山谷が連続した断面形状であって、山の傾斜角度が30°以上、谷の深さが5mm以上である凹凸部を有する。凹凸部を利用してホンダワラ類の卵を着生できない状態で定着させることで、その着生・繁殖を選択的に抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラグなどの未炭酸化Ca原料の炭酸固化体からなる海中沈設用ブロックに関するもので、このブロックは主に海藻着生用基盤(人工藻礁)や魚礁などとして用いられる。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼製造プロセスで発生するスラグの利材化方法の一つとして、粉粒状のスラグをこれに含まれる未炭酸化Caを利用して炭酸固化させることにより、ブロック化された炭酸固化体を得る方法が知られている(例えば、特許文献1)。この方法では、例えば、水分を添加した粉粒状のスラグを型枠に充填し、このスラグ充填層に炭酸ガスを吹き込むことによってスラグに含まれる未炭酸化Caに炭酸化反応を生じさせ、この炭酸化反応で生成した炭酸カルシウムを主たるバインダーとしてスラグ充填層を固結させ、ブロック化された炭酸固化体を得るものである。
【0003】
このような炭酸固化体は、スラグやその他のCaO含有廃材を原料として利用できるため、資源のリサイクル化という観点から非常に有用なものであるだけでなく、特に海藻着生基盤(人工藻礁)用や魚礁用などの海中沈設用資材として用いた場合、コンクリート製品のように海水のpHを上昇させるおそれがないため、海藻類の生育や水中生物の棲息に好ましい環境を提供できる優れた性能を有しており、コンクリート製品に替わる新たな海中沈設用資材として注目を集めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−71160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、海藻類を有用水産資源という観点から捉えた場合、海藻類のなかで主たる有用水産資源となるのは、コンブやカジメなどのコンブ目(以下、コンブ類という)に属する海藻である。コンブ類はアワビやウニなどの主要な餌であり、また食用としても採取や養殖の対象となっている。これに対して、ホンダワラ類は有用水産資源としての価値はあまり高くない。
【0006】
しかし、上記炭酸固化体は海藻類の着生や生育性に優れているため、これを海藻着生基盤として海底に設置した場合、ホンダワラ類が優占して着生・繁殖し、コンブ類の着生・繁殖を阻害してしまうという問題がある。すなわち、コンブ類やホンダワラ類はともに大型海藻であるが、コンブ類は主に秋に着生・生育するのに対して、ホンダワラ類は主に春に着生し、夏場に成長する。そのため基盤にホンダワラ類が春−夏にかけて着生・繁殖すると、コンブ類の着生・繁殖が阻害されてしまう。このため従来では、成長したホンダワラ類を刈り取りなどによって駆除することも行われている。
【0007】
したがって本発明の目的は、このような従来の問題を解決し、未炭酸化Ca原料の炭酸固化体からなる海中沈設用ブロックであって、ホンダワラ類の着生・繁殖を効果的に抑制することができ、これによりコンブ類などの有用海藻類の着生・繁殖を促進させることができるブロックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ホンダワラ類は、胞子体(親個体)から直径約200〜300μm程度の卵が海中に放出されて海中で受精し、その受精卵が基盤(基質)に着生して幼体、胞子体へと成長する。本発明者らは、ホンダワラ類が基盤に着生し成長するための条件について調査、検討を行い、その結果、ホンダワラ類の卵が基盤に定着する際の定着の仕方(定着状態)によって、着生する確率が大きく異なってくることが判った。具体的には、ホンダワラ類の卵がうまく着生するためには、基盤面に十分に露出した状態で定着することが必要であり、例えば、基盤面に存在する凹部内に卵全体が嵌り込んでしまうような状態で定着すると、卵が腐って着生できなくなる確率が高くなることが判った。その理由としては、卵全体が基盤面の凹部内に嵌り込むと、その上に浮泥などが溜まるため、卵に当たる光量が不足するとともに、着生に必要な酸素や栄養塩等を供給する新鮮な海水と接触できなくなるためであると考えられる。
【0009】
そこで、本発明者らは、ホンダワラ類の卵の基盤面への定着を阻止するのではなく、ホンダワラ類の卵をうまく着生できないような状態に基盤面に対して定着させる、という着想の下に検討を行い、その結果、基盤面となる炭酸固化体表面に所定の形態の凹部を所定の密度で形成すること、若しくは所定の急峻度と深さの山谷が連続したような凹凸を形成することにより、海中を浮遊して基盤面に到達したホンダワラ類の卵の多くを着生できない状態で基盤面に定着させることができ、その結果として、炭酸固化体表面でのホンダワラ類の着生・繁殖を効果的に抑制できることを見出した。また、その一方において、炭酸固化体の上記のような表面形態は、コンブ類の着生・繁殖を何ら阻害しないことも判った。
【0010】
本発明は、以上のような知見に基づきなされたもので、その特徴は以下のとおりである。
[1]粉粒状の未炭酸化Ca含有原料を炭酸化反応で固結させて得られた炭酸固化体であって、少なくとも上面に、山谷が連続した断面形状であって、山の傾斜角度が30°以上、谷の深さが5mm以上である凹凸部を有することを特徴とする海中沈設用ブロック。
[2]上記[1]のブロックにおいて、少なくとも底面を除く外面に、山谷が連続した断面形状であって、山の傾斜角度が30°以上、谷の深さが5mm以上である凹凸部を有することを特徴とする海中沈設用ブロック。
【発明の効果】
【0011】
本発明の海中沈設用ブロックによれば、ホンダワラ類の卵の多くを着生できない状態で基盤に定着させることができ、このため海藻類のうちのホンダワラ類だけの着生・繁殖を選択的に抑制でき、コンブ類の着生・繁殖を促進させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本願の第1の発明の炭酸固化体ブロックの一実施形態を示すのもので、ブロック上面の部分拡大断面図
【図2】本願の第2の発明の炭酸固化体ブロックの一実施形態を示すのもので、ブロック上面の部分拡大断面図
【図3】実施例1において、海藻類の着生・繁殖状況を調べた結果を示すグラフ
【図4】実施例2において、海藻類の着生・繁殖状況を調べた結果を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の海中沈設用ブロックは、粉粒状の未炭酸化Ca含有原料を炭酸化反応で固結させて得られた炭酸固化体であり、この炭酸固化体の製造条件等は後に詳述する。
図1は、本願の第1の発明に係る海中沈設用ブロックの一実施形態を示すもので、ブロック(以下、「炭酸固化体ブロック」という)の表面(上面)の部分拡大断面図である。
この炭酸固化体ブロックは、その少なくとも上面に、直径Dが300〜700μm、深さdが300μm以上の微小凹部1を、25cm四方当たり200個以上の密度で有する。ここで、本発明において微小凹部1の直径Dとは、微小凹部1の平面形状が真円でない場合には矩径及び長径を指す。
【0014】
本発明は、ホンダワラ類の卵xを上記微小凹部1内に入り込ませることにより、卵xが着生できないような状態で基盤面に定着させることを狙いとするものである。ここで、卵xが着生できない状態とは、基盤に定着したホンダワラ類の卵が浮泥などに覆われることによって、卵に当たる光量が不足するとともに、着生に必要な酸素や栄養塩などを供給する新鮮な海水とも十分に接触できなくなる状態であり、したがって、上記微小凹部1は卵xをそのような状態に陥らせる条件を備えることが必要である。
【0015】
ホンダワラ類の卵の直径は約200〜300μmであり、したがって、上記微小凹部1の直径Dが300μm未満であると、卵がうまく微小凹部1に入り込むことができない。一方、上記微小凹部1の直径Dが700μmを超えたり、深さdが300μm未満であると、微小凹部1に卵が一旦入り込んでも、直ぐに離脱して他の着生に適した基盤面に定着しやすくなるとともに、海水の流れが微小凹部内1に及ぶため浮泥が溜まりにくく、このため入り込んだ卵を腐らせる作用が乏しくなる。
【0016】
また、海中を浮遊して基盤面に到達するホンダワラ類の卵は、一定の確率で基盤面に定着するものであるため、ホンダワラ類の着生・繁殖を抑制するためには微小凹部1の形成密度も重要である。種々の試験の結果、微小凹部1を25cm四方当たり200個以上形成すれば、炭酸固化体ブロックに到達して定着する卵の多くを微小凹部1で捕捉できることが判った。このため本発明では、微小凹部1を25cm四方当たり200個以上形成する。
本発明の炭酸固化体ブロックの形状は特に限定されないが、一般的な形状としては、上面、側面、底面を有する立方体である。海藻類は、炭酸固化体ブロックの特に上面に着生・繁殖しやすいため、少なくとも上面、好ましくは底面を除く外面に、上記条件で微小凹部1を形成する。
【0017】
炭酸固化体は、スラグなどの粉粒状の未炭酸化Ca含有原料から製造されるもので、一般には、水を含んだ未炭酸化Ca含有原料を型枠内に充填し、この原料充填層に炭酸ガス又は炭酸ガス含有ガスを吹き込むことにより、原料充填層を炭酸固化させ、炭酸固化体ブロックを得るものである。このような方法で製造される炭酸固化体ブロックでは、未炭酸化Ca含有原料の粒度を調整することにより、ブロック表面に上記条件の微小凹部1を形成することができる。すなわち、炭酸固化体ブロック表面の原料粒子間の隙間が微小凹部となるので、原料の粒度を適宜調整することにより、上記条件を満足する微小凹部1を形成することができる。また、他の方法として、(a)内面に微小な突起を設けた型枠を用いて炭酸固化体を製造する、(b)原料充填層上に、下面に微小な突起を有する押板を載せた状態で原料充填層を炭酸固化させることで、炭酸固化体を製造する、(c)上記(a),(b)を併用して炭酸固化体を製造する、などの方法によっても、それら型枠や押板の微小な突起によって上記条件を満足する微小凹部1を形成することができる。
【0018】
図2は、本願の第2の発明に係る海中沈設用ブロックの一実施形態を示すもので、ブロック(以下、「炭酸固化体ブロック」という)の表面(上面)の部分拡大断面図である。
この炭酸固化体ブロックは、その少なくとも上面に、山谷が連続した断面形状であって、山の傾斜角度θ(山の基底面に対する傾斜角度)が30°以上、好ましくは45°以上、谷の深さdが5mm以上である凹凸部を有する。図において、2は凹凸部の谷部である。
【0019】
本発明も、ホンダワラ類の卵xを上記凹凸部の谷部2内に入り込ませることにより、卵xが着生できないような状態で基盤面に定着させることを狙いとするものである。先に述べたように、卵xが着生できない状態とは、基盤に定着したホンダワラ類の卵が浮泥などに覆われることによって、卵に当たる光量が不足するとともに、着生に必要な酸素や栄養塩などを供給する新鮮な海水とも十分に接触できなくなる状態であり、したがって、上記凹凸部は卵xをそのような状態に陥らせる条件を備えることが必要である。
【0020】
本発明では、凹凸部の谷部2内に入り込んだ卵が離脱しないようにし、且つ谷部2内に海水の流れが及ばないようにするため、凹凸部は急峻で且つ谷の深さdが十分確保される必要がある。
凹凸部の山の傾斜角度θが30°未満であったり、谷部2の深さdが5mm未満であると凹凸の急峻性や谷部2の深さが不十分であるため、谷部2内に卵が一旦入り込んでも、直ぐに離脱して他の着生に適した基盤面に定着しやすくなるとともに、海水の流れが谷部2内に及ぶため浮泥が溜まりにくく、このため入り込んだ卵を腐らせる作用が乏しくなる。
【0021】
なお、凹凸部のピッチwは、ホンダワラ類の卵が谷部2内に入り込むことができ、且つ谷部2内の或る程度深い位置まで到達できるような大きさとすることが必要である。また、本発明の炭酸固化体ブロックの上記凹凸部は、型枠内面に微小な凹凸を付けることなどによって成形する必要があり、このためピッチwが過度に小さい凹凸部を形成することは難しい。以上の観点からして、凹凸部のピッチwは3mm以上とすることが好ましい。
【0022】
以上のような条件で炭酸固化体ブロックの少なくとも上面に凹凸部を形成すれば、海中を浮遊して基盤面に到達するホンダワラ類の卵の多くが、凹凸部のいずれかの谷部2に入り込むことになる。
本発明の炭酸固化体ブロックの形状は特に限定されないが、一般的な形状としては、上面、側面、底面を有する立方体である。海藻類は、炭酸固化体ブロックの特に上面に着生・繁殖しやすいため、少なくとも上面、好ましくは底面を除く外面に、上記条件で凹凸部を形成する。
【0023】
炭酸固化体ブロックは先に述べたようにして製造されるが、本発明の炭酸固化体ブロックは、例えば、(a)内面に凹凸部を有する型枠を用いて炭酸固化体を製造する、(b)原料充填層上に、下面に凹凸部を有する押板を載せた状態で原料充填層を炭酸固化させることで、炭酸固化体を製造する、(c)上記(a),(b)を併用して炭酸固化体を製造する、などの方法により、それらの型枠や押板の凹凸部によって上記条件を満足する凹凸部を形成することができる。
【0024】
上述したように、本願の第1及び第2の発明に係る炭酸固化体ブロックは、ホンダワラ類の卵を着生に不適な特定の凹部(微小凹部1または谷部2)内に捕捉することにより、ホンダワラ類の着生を抑制するものである。一方、アラメ、カジメ、コンブ等のコンブ類は、胞子体(親固体)から直径5μm程度の遊走子が海中に放出され、この遊走子が基盤(基質)に定着・着生して雌雄の配偶体へと成長し、その雌配偶体で作られた卵が基盤上で受精することにより幼体、胞子体へと成長する。つまり、コンブ類では約5μm程度の遊走子が基盤に定着・着生するものであり、本発明の炭酸固化体ブロックに定着・着生するに当たって上記凹部(微小凹部1または谷部2)は何の影響もない。したがって、本発明の炭酸固化体ブロックは、ホンダワラ類の着生・繁殖のみを選択的に抑制し、これによりコンブ類の着生・繁殖を促進させることができる。
【0025】
以下、炭酸固化体ブロックの基本的な製造条件について説明する。
炭酸固化体ブロックは、粉粒状の未炭酸化Ca含有原料を水の存在下で炭酸ガスと接触させ、水を介した未炭酸化Caと炭酸ガスとの反応(炭酸化反応)により炭酸カルシウムを生成させ、この炭酸カルシウムをバインダーとして原料を固化(固結)させることにより製造される。
未炭酸化Ca含有原料中に含まれる未炭酸化Ca、すなわちCaO及び/又はCa(OH)は、少なくとも固体粒子の組成の一部として含まれるものであればよく、したがって、鉱物としてのCaO、Ca(OH)の他に、2CaO・SiO、3CaO・SiO、ガラスなどのように組成の一部として固体粒子中に存在するものも含まれる。
【0026】
使用する粉粒状の未炭酸化Ca含有原料の種類に特別な制限はないが、例えば、鉄鋼製造プロセスで発生したスラグ(例えば、脱炭スラグ、脱燐スラグ、脱硫スラグ、脱珪スラグなどの製鋼スラグ)、コンクリート(例えば、コンクリート廃材など)、モルタル、ガラス、アルミナセメント、CaO含有耐火物などが挙げられ、これらの1種以上を単独でまたは混合して使用することができる。これらの材料は必要に応じて粉粒状に破砕処理され、原料として用いられる。
【0027】
未炭酸化Ca含有原料は、その全量が未炭酸化Caを含む固体粒子である必要はない。すなわち、未炭酸化Ca含有原料に含まれる未炭酸化Caの炭酸化によって炭酸固化体のバインダーとして十分な量のCaCOが生成されるのであれば、未炭酸化Ca含有原料に未炭酸化Caを含まない固体粒子が含まれていてもよい。このような固体粒子としては、例えば、天然石、砂、可溶性シリカ、金属(例えば、金属鉄、酸化鉄)などが挙げられる。
また、これらのうち金属鉄、酸化鉄、可溶性シリカなどは、海中の硫黄や燐の固定剤、海藻類などの水生植物の栄養源などとして有効に作用する。また、これら以外にも任意の成分(粒子)を適量、すなわち炭酸固化体の強度低下などを招かない限度で含むことができる。
【0028】
また、粉粒状の未炭酸化Ca含有原料の粒度にも特別な制限はないが、COとの接触面積を確保して反応性を高めるためには、ある程度粒度が細かい方が好ましい。また、未炭酸化Ca含有原料の粒度が大き過ぎると、原料粒子内部に炭酸化しきれないCaが残存するため、製造された炭酸固化体中の原料粒子が膨張崩壊し、亀裂などの原因となる場合もある。
炭酸固化体ブロックは、一般に型枠を用いて製造される。すなわち、型枠に水を適当に含有させた未炭酸化Ca含有原料を充填して原料充填層を形成し、この原料充填層内に炭酸ガス又は炭酸ガス含有ガスを吹き込むことにより原料充填層全体を固結させる。
【0029】
炭酸化反応を生じさせるために使用される炭酸ガス又は炭酸ガス含有ガスとしては、例えば、一貫製鉄所内で排出される石灰焼成工場排ガス(通常、CO:25%前後)や加熱炉排ガス(通常、CO:6.5%前後)などが好適であるが、これらに限定されるものではない。また、ガス中のCO濃度が低すぎると処理効率が低下するという問題を生じるが、それ以外の問題は格別ない。したがって、CO濃度は特に限定しないが、効率的な処理を行うには3%以上のCO濃度とすることが好ましい。
【0030】
また、炭酸ガスの供給量にも特別な制限はないが、一般的な目安としては0.004〜0.5m/min・t(原料ton)程度のガス供給量が確保できればよい。また、ガス供給時間(炭酸化処理時間)にも特別な制約はないが、目安としては炭酸ガスの供給量が未炭酸化Ca含有原料の重量の3%以上となる時点、すなわち、ガス量に換算すると原料1t当たり15m以上、好ましくは200m以上の炭酸ガスが供給されるまでガス供給を行うことが好ましい。
【実施例】
【0031】
[実施例1]
ホンダワラ類とコンブ類の母藻群落がある海底から約10m離れた水深5mの海底に、下記に示すような構成を有する本発明例と比較例の炭酸固化体ブロック(1m×1m×0.5m)をそれぞれ5個ずつ沈設し、1年後、2年後及び3年後における海藻類の着生・繁殖状況を調べた。
・本発明例:上面に直径300〜700μmの微小凹部が約250個/(25cm四方)の密度で形成された炭酸固化体ブロック
・比較例1:上面に直径300μm以上の微小凹部が殆どない炭酸固化体ブロック
・比較例2:上面に直径800〜1200μmの微小凹部が約200個/(25cm四方)の密度で形成された炭酸固化体ブロック
図3は、その調査結果を示している。これによれば、比較例1及び比較例2のブロックではホンダワラ類が優占し、コンブ類の着生・繁殖が抑止されている。これに対して、本発明例のブロックではホンダワラ類がほとんど着生せず、コンブ類が良好に着生している。
【0032】
[実施例2]
ホンダワラ類とコンブ類の母藻群落がある海底から約8m離れた水深5mの海底に、下記に示すような構成を有する本発明例と比較例の炭酸固化体ブロック(1m×1m×0.5m)をそれぞれ4個ずつ沈設し、1年後、2年後及び3年後における海藻類の着生・繁殖状況を調べた。
・本発明例:上面に山の傾斜角度θが45°、谷部の深さが10mmである凹凸部を形成した炭酸固化体ブロック
・比較例:上面に山の傾斜角度θが3°、谷部の深さが10mmである凹凸部を形成した炭酸固化体ブロック
図4は、その調査結果を示している。これによれば、比較例のブロックではホンダワラ類が優占し、コンブ類の稚着生が抑止されているが、本発明例のブロックではホンダワラ類がほとんど着生せず、コンブ類が良好に着生している。
【符号の説明】
【0033】
1 微小凹部
2 谷部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉粒状の未炭酸化Ca含有原料を炭酸化反応で固結させて得られた炭酸固化体であって、少なくとも上面に、山谷が連続した断面形状であって、山の傾斜角度が30°以上、谷の深さが5mm以上である凹凸部を有することを特徴とする海中沈設用ブロック。
【請求項2】
少なくとも底面を除く外面に、山谷が連続した断面形状であって、山の傾斜角度が30°以上、谷の深さが5mm以上である凹凸部を有することを特徴とする請求項1に記載の海中沈設用ブロック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−284906(P2009−284906A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−192636(P2009−192636)
【出願日】平成21年8月22日(2009.8.22)
【分割の表示】特願2004−101535(P2004−101535)の分割
【原出願日】平成16年3月30日(2004.3.30)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】