海底資源探査システム及び海底資源探査方法
【課題】信頼性が高く、安価に海底資源を探査することができる海底資源探査システムを提供する。
【解決手段】海底資源探査システムは、海中へ音波を送信し、音波が海水中に存在する、海水と密度の異なる物体の境界面で反射した散乱波を受信する振動子1と、送信した音波及び受信した散乱波から散乱強度を計算し、所定の散乱強度である場合、物体の直下の海底に資源があると判断する解析部17とを備える。
【解決手段】海底資源探査システムは、海中へ音波を送信し、音波が海水中に存在する、海水と密度の異なる物体の境界面で反射した散乱波を受信する振動子1と、送信した音波及び受信した散乱波から散乱強度を計算し、所定の散乱強度である場合、物体の直下の海底に資源があると判断する解析部17とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音波を用いて海底資源が起源のガスや固体が混合した物体を探知し、海底資源を探査する海底資源探査システム及び海底資源探査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスハイドレードなどの海底資源探査は、海底地質探査用の低周波音源の音響機器を用いて、海底下の地質データのみをサーチすることにより、行っていた。
【0003】
このような海底資源探査法としては、例えば、地震探査法が用いられる(例えば、非特許文献1参照。)。これは、石油・天然ガス探鉱で、石油・天然ガスを含む地層の分布を調べることに利用され、地震のような振動を人工的に発生させ、その振動を利用して地質探査を行い、その結果によって、資源を探査する方法である。
【0004】
又、海面付近である振動を与えると、音波が発生し海中を伝わる。海底面で反射した音波を利用して、探査を行う反射地震探査法も用いられる。
【0005】
更に、戻ってきた音波を受信するために、ストリーマーと呼ばれるケーブルを用いるが、最近は、複数本のストリーマーケーブルを用いる調査も珍しくなくなってきた。最近の石油探鉱地心探査では、6000m以上のストリーマーケーブルを10本以上、一度に船で曳航して調査する場合もある。このように、ストリーマーケーブルを複数本用いると、立体的な地震探査記録が得られるため、3D(3次元)地震探査法と呼ばれる。
【非特許文献1】http://www.mh21japan.gr.jp/(メタンハイドレード資源開発研究コンソーシアムのホームページ)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、地震探査法は、直接石油・天然ガスなどの資源を確認するわけではなく、地質探査の結果から資源の存在を推測して掘るため、実際に掘っても資源が出ない場合も多い。
【0007】
又、上述した反射地震探査法や3D地震探査法は、大規模で、多くの費用と時間がかかる。
【0008】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑み、信頼性が高く、安価に海底資源を探査することができる海底資源探査システム及び海底資源探査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明者らは、海底資源を探査する際に、従来観測されていなかった、船底と海底間の海水中のデータに着目し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明の第1の特徴は、(a)海中へ音波を送信する送信手段と、(b)音波が海水中に存在する、海水と密度の異なる物体の境界面で反射した散乱波を受信する受信手段と、(c)送信した音波及び受信した散乱波から散乱強度を計算し、所定の散乱強度である場合、物体の直下の海底に資源があると判断する解析手段とを備える海底資源探査システムであることを要旨とする。
【0011】
ここで、「物体」とは、固体に限らず、液体、気体であっても構わない。又、これらの混合物であっても構わない。例えば、熱水、ガスバブル、ハイドレードなど固体を含む混合水などが挙げられる。
【0012】
第1の特徴に係る海底資源探査システムによると、海中のデータを解析することにより、信頼性が高く、安価に海底資源を探査することができる。
【0013】
又、第1の特徴に係る海底資源探査システムは、所定の散乱強度を有する物体の輪郭を可視化して表示する表示手段を更に備えてもよい。
【0014】
この海底資源探査システムによると、海底資源が存在する場所、海底資源を起源とする物体を視覚的に捉えることができ、多くの費用と時間をかけずに効率的に海底資源を探査することができる。
【0015】
又、第1の特徴に係る海底資源探査システムにおいて、解析手段は、物体における散乱強度の最大値が、−60〜−30dBであり、物体における散乱強度の平均値が、−70〜−50dBである場合、物体の直下の海底に資源があると判断することが好ましい。
【0016】
又、解析手段は、海底直上から100m以内に、物体が−45〜−30dBの散乱強度を有する場合、物体の直下の海底に資源があると判断することが更に好ましい。
【0017】
又、第1の特徴に係る海底資源探査システムにおいて、物体は、ガスを含み、資源は、ガスハイドレードであってもよい。ガスハイドレードとしては、例えば、メタンハイドレードがあり、これは、メタンガスを含んだ氷状の固体である。
【0018】
本発明の第2の特徴は、(a)海中へ音波を送信するステップと、(b)音波が海水中に存在する、海水と密度の異なる物体の境界面で反射した散乱波を受信するステップと、(c)送信した音波及び受信した散乱波から散乱強度を計算するステップと、(d)所定の散乱強度である場合、物体の直下の海底に資源があると判断するステップとを含む海底資源探査方法であることを要旨とする。
【0019】
第2の特徴に係る海底資源探査方法によると、海中のデータを解析することにより、信頼性が高く、安価に海底資源を探査することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、信頼性が高く、安価に海底資源を探査することができる海底資源探査システム及び海底資源探査方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであることに留意すべきである。
【0022】
(海底資源探査システム)
本実施形態では、海底資源であるメタンハイドレードを探査する。本発明者らは、メタンハイドレードが存在する海底から、メタンガスとメタンハイドレードとが混合した物体が涌き上がることを発見し、この物体を探査することにより、メタンハイドレードの存在場所を推測する。
【0023】
本実施形態に係る海底資源探査システムは、図1に示すように、正弦波発生部11と、パルス幅切り替え部12と、送信信号増幅部13と、送受切り替え部14と、振動子1(受信手段及び送信手段)と、受信信号増幅部16と、解析部17(解析手段)と、表示部18(表示手段)とを備える。このような海底資源探査システムとして、魚群探知機を使用することができる。
【0024】
又、振動子1は、図2に示すように、船5の底に取り付けられる。船5は、0〜3ノットの速度で前進する。海底には、メタンハイドレード4が存在し、ここからメタンガスとメタンハイドレードとが混合した物体3が発生する。
【0025】
正弦波発生部11は、正弦波を発生させる。このときの周波数は、できるだけ低い周波数である必要がある。例えば1〜50kHzであり、40kHz以下にすることが好ましい。
【0026】
パルス幅切り替え部12は、正弦波を送信する際のパルス幅を指定する。
【0027】
又、物体3が存在する水深が深いため、繰り返し周波数は、例えば、水深1000mで4秒と指定する。
【0028】
送信信号増幅部13は、正弦波発生部11から入力された信号を増幅する。
【0029】
送受切り替え部14は、送信及び受信の切り替えを行う。
【0030】
振動子1は、図2に示すように、送受切り替え部14から入力された電圧を音圧に変換し、音波として、所定の等価ビーム幅Ψ(「水槽の水面反射を利用した計量魚群探知機の較正」日本水産学会、63(4)、570−577(1997)参照)で海中へ送信する。この等価ビーム幅Ψは、(振動子1の振動面の直径)/(正弦波の波長)にほぼ比例する。又、海底資源は水深の深い海域に多く産出するので、水平方向の分解能を高くするために、ビーム幅はシャープにする。例えば、−19.1dB程度とする。
【0031】
又、振動子1は、音波が、海水中に存在する、海水と密度の異なる物体の境界面で反射した散乱波を受信する。ここでは、メタンガスとメタンハイドレードとが混合した物体3の境界面で反射した散乱波を受信する。そして、振動子1は、散乱波の音圧から電圧信号に変換する
送受切り替え部14は、送信及び受信の切り替えを行う。
【0032】
受信信号増幅部16は、送受切り替え部14から出力された電圧信号を増幅する。
【0033】
解析部17は、送信した音波及び受信した散乱波から散乱強度を計算し、所定の散乱強度である場合、物体3の直下の海底にメタンハイドレード4があると判断する。ここで、「散乱強度」とは、海水とは異なる密度の物体の単位体積あたりの散乱波の強さをいう。散乱強度Sv(dB)は、式(1)、式(2)によって与えられる(例えば、海洋音響 基礎と応用 海洋音響研究会 1984年 P80〜85参照)。
【0034】
sv=Is/Ii ・・・式(1)
Sv=10logsv ・・・式(2)
ここで、Iiは入射する平面波音波の強さ、Isは単位体積の物体の音響中心から単位距離における散乱波の強さを示す。
【0035】
物体3は、図2に示すように、柱状であり、この柱状物体を深さ方向に何点か測定し、一つの物体3における、散乱強度SVの最大値、平均値、最小値を計算する。
【0036】
解析部17は、物体3における散乱強度SVの最大値が、−60〜−30dBであり、平均値が、−70〜−50dBであり、最小値が、−90dB以上である場合に、その直下の海底にメタンハイドレード4が存在すると判断する。
【0037】
又、解析部17は、物体3において、海底直上から100m以内に、−45〜−30dBの大きい散乱強度SVを有する場合、特にメタンハイドレード4が存在する可能性が高いと判断する。これは、密度の濃いメタンガス、あるいは、メタンハイドレードの結晶で、超音波が散乱するためである。
【0038】
表示部18は、図4に示すように、所定の散乱強度を有する物体3の輪郭を可視化して表示する。表示部18とは、例えば、モニタなどの画面を指し、液晶表示装置(LCD)、発光ダイオード(LED)パネル、エレクトロルミネッセンス(EL)パネル等が使用可能である。又、表示部18はプリンターなどでも構わない。
【0039】
又、表示部18は、図3に示すように、海底面の輪郭を表示することも可能である。
【0040】
尚、図示してはいないが、本実施の形態に係る海底資源探査システムは、解析処理をさせるためのプログラムを保存するプログラム保持部を備えていても良い。プログラム保持部は、RAM等の内部記憶装置を用いても良く、HDやFD等の外部記憶装置を用いても良い。
【0041】
(海底資源探査方法)
次に、本実施形態に係る海底資源探査方法について、説明する。
【0042】
まず、正弦波発生部11は、正弦波を発生させる。
【0043】
次に、パルス幅切り替え部12は、正弦波を送信する際のパルス幅を指定する。
【0044】
次に、送信信号増幅部13は、正弦波発生部11から入力された信号を増幅し、送受切り替え部14は、送信へ切り替える。
【0045】
次に、振動子1は、増幅された電圧信号を音圧に変換し、音波として、所定の等価ビーム幅Ψで海中へ送信する。そして、振動子1は、音波が、海水中に存在する、海水と密度の異なる物体の境界面で反射した散乱波を受信する。振動子1は、散乱波の音圧から電圧信号に変換する。
【0046】
次に、送受切り替え部14は、受信へ切り替える。
【0047】
次に、受信信号増幅部16は、送受切り替え部14から出力された電圧信号を増幅する。
【0048】
次に、解析部17は、送信した音波及び受信した散乱波から散乱強度を計算し、所定の散乱強度である場合、物体3の直下の海底にメタンハイドレード4があると判断する。
【0049】
次に、表示部18は、散乱強度を可視化して表示する。
【0050】
(作用及び効果)
本実施形態に係る海底資源探査システム及び海底資源探査方法によると、解析部17が海中のデータを解析することにより、信頼性が高く、安価に海底資源を探査することができる。
【0051】
又、散乱強度を可視化して表示する表示部18を更に備えることにより、海底資源が存在する場所、海底資源を起源とする物体を視覚的に捉えることができ、多くの費用と時間をかけずに効率的に海底資源を探査することができる。
【0052】
又、解析部17は、物体における散乱強度の最大値が、−60〜−30dBであり、物体における散乱強度の平均値が、−70〜−50dBである場合、物体の直下の海底に資源があると判断することができる。これは、メタンハイドレードからガスが湧き出る場合、その組成から、このような散乱強度を有すると考えられる。
【0053】
更に、解析部17は、海底直上から100m以内に、物体が−45〜−30dBの散乱強度を有する場合、物体の直下の海底に資源があると判断することができる。これは、密度の濃いガス、あるいは、ガスハイドレードの結晶で超音波が散乱するためであると考えられる。
【0054】
(その他の実施形態)
本発明は上記の実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0055】
例えば、本実施形態において、海底資源としてメタンハイドレードを例にとり説明したが、その他の海底資源に適用してもよい。
【0056】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【実施例】
【0057】
以下に、本発明を実施例により更に詳しく説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0058】
本発明者らは、本発明に係る海底資源探査システムを用いて、日本海において、メタンハイドレードの探査を行った。この探査は、1886tの船によって行い、既存の魚群探知機を用いて行った。
【0059】
図5は、観察エリアの3次元マップである。船のインターバルは、0.05nmi.であり、そのスピードは、3ktであった。観測の航行路を図6に示す。
【0060】
海底資源探査システムとしては、図1に示すものを用いた。具体的には、計量魚群探知機、KFC3000(カイジョー製)を用いた。周波数は、38kHzであり、等価ビーム幅Ψは、−19.1dBであった。
【0061】
図7は、GPSからの位置データと共に、計量魚群探知機を使用して、柱状に広がるメタンガス(以下において、「メタンプルーム」という。)をマッピングしたものである。
【0062】
発明者らは、エコーグラムにおいて、直径約100m、高さが200m〜700m、海面下600〜300mに届く、36プルームを測定した。そして、GPSからの位置データと共に、計量魚群探知機を使用して、所定の速力で航走しながら4秒おきにメタンプルームを測定した(図7〜11)。
【0063】
図8〜11は、メタンプルームのエコーグラムである。縦軸は、振動子1の表面、言い換えると、船底からのからの距離である。横軸は、船の航海距離である。
【0064】
図8〜11において、下の茶色いラインが海底面を表す。図10は、図13に示すこぶし大のメタンハイドレードが発見された場所に対応するメタンプルームを示す。図11は、CTD測定を行ったメタンプルームを示す。
【0065】
図8は、潮の流れによって、水深600m付近で北方向に傾斜するプルームを示す。このときの船の速度は、3ノットであった。
【0066】
図9は、水深300〜350m地点にあるプルーム(左側から2番目)を示す。この先端は、膨らんでいるが、これは、この深さ付近で水温が急に高くなるからである。
【0067】
図10は、メタンハイドレードの固まりを発見した場所のプルームを示す。このときの船の速度は、0.3ノットであった。
【0068】
図11は、ここで、CTDの観察を行ったプルームを示す。このとき、船はエンジンを停止していた。
【0069】
図12は、図11のプルーム1、2、3を観察する間の航跡である。中央の太線は、プルーム1の超音波データを測定したとき、上部の太線は、プルーム2の超音波データを測定したとき、下部の太線は、プルーム3の超音波データを測定したときの航跡である。図12のグリッドは、30m×30mである。
【0070】
図11において、3つのプルームのエコーグラムを比較すると、これらは、1つのプルームの異なる場所を表現していることが分かる。
【0071】
海底の水の温度は、異常に低い温度、CTDを用いて測定した際、0.25℃であった。
【0072】
本発明者らは、それぞれのメタンプルームからの散乱強度SVを計算した。プルームの散乱強度SVは、積分層幅を100m、積分間隔を1分として、計量魚群探知機の一部である積分機能を用いて計算した。具体的には、柱状のプルームを100m毎に一定幅で輪切りにし(この輪切りにした部分を「グリッド」という。)、グリッド毎に散乱強度SVを計算した。プルームの散乱強度SVの値は、表1に示すとおりである。
【表1】
【0073】
図14において、縦軸は、散乱強度SV(dB)を示し、横軸は、船底からの距離(m)を示す。緑の細線は、図11の左側から2番目のプルーム1の平均散乱強度SVを示し、青の細線は、図11に右側から2番目のプルーム2の平均散乱強度SVを示し、赤の細線は、図11の右側から2番目のプルーム3の平均散乱強度SVを示す。黒の細線は、すべての平均値を示す。
【0074】
図14に示すように、平均散乱強度SVは、プルームの下部から中間にかけて最も高い値を示すのに対し、プルームの上部では比較的低い値を示す。又、平均散乱強度SVは、海底から海面下700mの範囲ではバラツキが少ないのに対し、海面下700m以上の範囲では、それぞれのプルームに対して異なる値をとる。このことは、海底から海面下700mの範囲では、メタンガスの密度が比較的一定であり、海面に向かってだんだんとガスが減っていくことが分かる。
【0075】
図14において、プルーム2の平均散乱強度SVは、プルーム1はプルーム3に比べ高い。上述したように、これらの3つのプルームは、1つのプルームを表している。プルーム2を測定した航跡は、このプルームの中央を航行し、プルーム1及びプルーム3を測定した航跡は、このプルームの端を航行しているものと考えられる。
【0076】
(結果)
本発明者らは、メタンプルームをマッピングし、エコーグラムにおいて、直径約100m、高さが200m〜700m、海面下600〜300mに届く、36プルームを測定した。
【0077】
又、本発明者らは、それぞれのプルームの散乱強度SVを測定した。その散乱強度SVは、表1に示すとおりであった。即ち、散乱強度の最大値が、−54〜−35dBであり、散乱強度の平均値が、−65〜−63dBである場合、このプルームの直下の海底に資源があることが分かった。
【0078】
更に、当該プルームの測定結果を詳細に解析すると、表2に示す結果が得られた。
【表2】
【0079】
即ち、海底から100m以内の積分層の中に、−44〜−36dBの強い散乱強度を有していた。よって、このようなプルームの直下の海底に資源があることが分かった。
【0080】
又、平均散乱強度SVは、プルームの下部から中間にかけて最も高い値を示すのに対し、プルームの上部では比較的低い値を示した。
【0081】
又、本発明者らがメタンプルームを観察した場所から、メタンハイドレードが発見された。
【0082】
これらの結果から、本実施形態に係る海底資源探査システム及び海底資源探査方法は、メタンハイドレードの埋蔵場所を知るのに効果的であることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本実施の形態に係る海底資源探査システムの構成ブロック図である。
【図2】本実施の形態に係る海底資源の探査を説明するための図である。
【図3】本実施の形態に係る海底資源探査システムの表示部が表示する画面の一例である(その1)。
【図4】本実施の形態に係る海底資源探査システムの表示部が表示する画面の一例である(その2)。
【図5】本実施例に係る観測エリアの3次元マップである。
【図6】本実施例に係る観測の航行路である。
【図7】本実施例に係るメタンプルームのマップである。
【図8】本実施例に係るメタンプルームのエコーグラムである(その1)。
【図9】本実施例に係るメタンプルームのエコーグラムである(その2)。
【図10】本実施例に係るメタンプルームのエコーグラムである(その3)。
【図11】本実施例に係るメタンプルームのエコーグラムである(その4)。
【図12】図11のプルーム1、2、3を観察する間の航跡である。
【図13】本実施例において発見されたこぶし大のメタンハイドレードである。
【図14】本実施例に係る3つのプルームの平均散乱強度SVである。
【符号の説明】
【0084】
1…振動子
3…物体
4…メタンハイドレード(海底資源)
5…船
11…正弦波発生部
12…パルス幅切り替え部
13…送信信号増幅部
14…送受切り替え部
16…受信信号増幅部
17…解析部
18…表示部
【技術分野】
【0001】
本発明は、音波を用いて海底資源が起源のガスや固体が混合した物体を探知し、海底資源を探査する海底資源探査システム及び海底資源探査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスハイドレードなどの海底資源探査は、海底地質探査用の低周波音源の音響機器を用いて、海底下の地質データのみをサーチすることにより、行っていた。
【0003】
このような海底資源探査法としては、例えば、地震探査法が用いられる(例えば、非特許文献1参照。)。これは、石油・天然ガス探鉱で、石油・天然ガスを含む地層の分布を調べることに利用され、地震のような振動を人工的に発生させ、その振動を利用して地質探査を行い、その結果によって、資源を探査する方法である。
【0004】
又、海面付近である振動を与えると、音波が発生し海中を伝わる。海底面で反射した音波を利用して、探査を行う反射地震探査法も用いられる。
【0005】
更に、戻ってきた音波を受信するために、ストリーマーと呼ばれるケーブルを用いるが、最近は、複数本のストリーマーケーブルを用いる調査も珍しくなくなってきた。最近の石油探鉱地心探査では、6000m以上のストリーマーケーブルを10本以上、一度に船で曳航して調査する場合もある。このように、ストリーマーケーブルを複数本用いると、立体的な地震探査記録が得られるため、3D(3次元)地震探査法と呼ばれる。
【非特許文献1】http://www.mh21japan.gr.jp/(メタンハイドレード資源開発研究コンソーシアムのホームページ)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、地震探査法は、直接石油・天然ガスなどの資源を確認するわけではなく、地質探査の結果から資源の存在を推測して掘るため、実際に掘っても資源が出ない場合も多い。
【0007】
又、上述した反射地震探査法や3D地震探査法は、大規模で、多くの費用と時間がかかる。
【0008】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑み、信頼性が高く、安価に海底資源を探査することができる海底資源探査システム及び海底資源探査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明者らは、海底資源を探査する際に、従来観測されていなかった、船底と海底間の海水中のデータに着目し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明の第1の特徴は、(a)海中へ音波を送信する送信手段と、(b)音波が海水中に存在する、海水と密度の異なる物体の境界面で反射した散乱波を受信する受信手段と、(c)送信した音波及び受信した散乱波から散乱強度を計算し、所定の散乱強度である場合、物体の直下の海底に資源があると判断する解析手段とを備える海底資源探査システムであることを要旨とする。
【0011】
ここで、「物体」とは、固体に限らず、液体、気体であっても構わない。又、これらの混合物であっても構わない。例えば、熱水、ガスバブル、ハイドレードなど固体を含む混合水などが挙げられる。
【0012】
第1の特徴に係る海底資源探査システムによると、海中のデータを解析することにより、信頼性が高く、安価に海底資源を探査することができる。
【0013】
又、第1の特徴に係る海底資源探査システムは、所定の散乱強度を有する物体の輪郭を可視化して表示する表示手段を更に備えてもよい。
【0014】
この海底資源探査システムによると、海底資源が存在する場所、海底資源を起源とする物体を視覚的に捉えることができ、多くの費用と時間をかけずに効率的に海底資源を探査することができる。
【0015】
又、第1の特徴に係る海底資源探査システムにおいて、解析手段は、物体における散乱強度の最大値が、−60〜−30dBであり、物体における散乱強度の平均値が、−70〜−50dBである場合、物体の直下の海底に資源があると判断することが好ましい。
【0016】
又、解析手段は、海底直上から100m以内に、物体が−45〜−30dBの散乱強度を有する場合、物体の直下の海底に資源があると判断することが更に好ましい。
【0017】
又、第1の特徴に係る海底資源探査システムにおいて、物体は、ガスを含み、資源は、ガスハイドレードであってもよい。ガスハイドレードとしては、例えば、メタンハイドレードがあり、これは、メタンガスを含んだ氷状の固体である。
【0018】
本発明の第2の特徴は、(a)海中へ音波を送信するステップと、(b)音波が海水中に存在する、海水と密度の異なる物体の境界面で反射した散乱波を受信するステップと、(c)送信した音波及び受信した散乱波から散乱強度を計算するステップと、(d)所定の散乱強度である場合、物体の直下の海底に資源があると判断するステップとを含む海底資源探査方法であることを要旨とする。
【0019】
第2の特徴に係る海底資源探査方法によると、海中のデータを解析することにより、信頼性が高く、安価に海底資源を探査することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、信頼性が高く、安価に海底資源を探査することができる海底資源探査システム及び海底資源探査方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであることに留意すべきである。
【0022】
(海底資源探査システム)
本実施形態では、海底資源であるメタンハイドレードを探査する。本発明者らは、メタンハイドレードが存在する海底から、メタンガスとメタンハイドレードとが混合した物体が涌き上がることを発見し、この物体を探査することにより、メタンハイドレードの存在場所を推測する。
【0023】
本実施形態に係る海底資源探査システムは、図1に示すように、正弦波発生部11と、パルス幅切り替え部12と、送信信号増幅部13と、送受切り替え部14と、振動子1(受信手段及び送信手段)と、受信信号増幅部16と、解析部17(解析手段)と、表示部18(表示手段)とを備える。このような海底資源探査システムとして、魚群探知機を使用することができる。
【0024】
又、振動子1は、図2に示すように、船5の底に取り付けられる。船5は、0〜3ノットの速度で前進する。海底には、メタンハイドレード4が存在し、ここからメタンガスとメタンハイドレードとが混合した物体3が発生する。
【0025】
正弦波発生部11は、正弦波を発生させる。このときの周波数は、できるだけ低い周波数である必要がある。例えば1〜50kHzであり、40kHz以下にすることが好ましい。
【0026】
パルス幅切り替え部12は、正弦波を送信する際のパルス幅を指定する。
【0027】
又、物体3が存在する水深が深いため、繰り返し周波数は、例えば、水深1000mで4秒と指定する。
【0028】
送信信号増幅部13は、正弦波発生部11から入力された信号を増幅する。
【0029】
送受切り替え部14は、送信及び受信の切り替えを行う。
【0030】
振動子1は、図2に示すように、送受切り替え部14から入力された電圧を音圧に変換し、音波として、所定の等価ビーム幅Ψ(「水槽の水面反射を利用した計量魚群探知機の較正」日本水産学会、63(4)、570−577(1997)参照)で海中へ送信する。この等価ビーム幅Ψは、(振動子1の振動面の直径)/(正弦波の波長)にほぼ比例する。又、海底資源は水深の深い海域に多く産出するので、水平方向の分解能を高くするために、ビーム幅はシャープにする。例えば、−19.1dB程度とする。
【0031】
又、振動子1は、音波が、海水中に存在する、海水と密度の異なる物体の境界面で反射した散乱波を受信する。ここでは、メタンガスとメタンハイドレードとが混合した物体3の境界面で反射した散乱波を受信する。そして、振動子1は、散乱波の音圧から電圧信号に変換する
送受切り替え部14は、送信及び受信の切り替えを行う。
【0032】
受信信号増幅部16は、送受切り替え部14から出力された電圧信号を増幅する。
【0033】
解析部17は、送信した音波及び受信した散乱波から散乱強度を計算し、所定の散乱強度である場合、物体3の直下の海底にメタンハイドレード4があると判断する。ここで、「散乱強度」とは、海水とは異なる密度の物体の単位体積あたりの散乱波の強さをいう。散乱強度Sv(dB)は、式(1)、式(2)によって与えられる(例えば、海洋音響 基礎と応用 海洋音響研究会 1984年 P80〜85参照)。
【0034】
sv=Is/Ii ・・・式(1)
Sv=10logsv ・・・式(2)
ここで、Iiは入射する平面波音波の強さ、Isは単位体積の物体の音響中心から単位距離における散乱波の強さを示す。
【0035】
物体3は、図2に示すように、柱状であり、この柱状物体を深さ方向に何点か測定し、一つの物体3における、散乱強度SVの最大値、平均値、最小値を計算する。
【0036】
解析部17は、物体3における散乱強度SVの最大値が、−60〜−30dBであり、平均値が、−70〜−50dBであり、最小値が、−90dB以上である場合に、その直下の海底にメタンハイドレード4が存在すると判断する。
【0037】
又、解析部17は、物体3において、海底直上から100m以内に、−45〜−30dBの大きい散乱強度SVを有する場合、特にメタンハイドレード4が存在する可能性が高いと判断する。これは、密度の濃いメタンガス、あるいは、メタンハイドレードの結晶で、超音波が散乱するためである。
【0038】
表示部18は、図4に示すように、所定の散乱強度を有する物体3の輪郭を可視化して表示する。表示部18とは、例えば、モニタなどの画面を指し、液晶表示装置(LCD)、発光ダイオード(LED)パネル、エレクトロルミネッセンス(EL)パネル等が使用可能である。又、表示部18はプリンターなどでも構わない。
【0039】
又、表示部18は、図3に示すように、海底面の輪郭を表示することも可能である。
【0040】
尚、図示してはいないが、本実施の形態に係る海底資源探査システムは、解析処理をさせるためのプログラムを保存するプログラム保持部を備えていても良い。プログラム保持部は、RAM等の内部記憶装置を用いても良く、HDやFD等の外部記憶装置を用いても良い。
【0041】
(海底資源探査方法)
次に、本実施形態に係る海底資源探査方法について、説明する。
【0042】
まず、正弦波発生部11は、正弦波を発生させる。
【0043】
次に、パルス幅切り替え部12は、正弦波を送信する際のパルス幅を指定する。
【0044】
次に、送信信号増幅部13は、正弦波発生部11から入力された信号を増幅し、送受切り替え部14は、送信へ切り替える。
【0045】
次に、振動子1は、増幅された電圧信号を音圧に変換し、音波として、所定の等価ビーム幅Ψで海中へ送信する。そして、振動子1は、音波が、海水中に存在する、海水と密度の異なる物体の境界面で反射した散乱波を受信する。振動子1は、散乱波の音圧から電圧信号に変換する。
【0046】
次に、送受切り替え部14は、受信へ切り替える。
【0047】
次に、受信信号増幅部16は、送受切り替え部14から出力された電圧信号を増幅する。
【0048】
次に、解析部17は、送信した音波及び受信した散乱波から散乱強度を計算し、所定の散乱強度である場合、物体3の直下の海底にメタンハイドレード4があると判断する。
【0049】
次に、表示部18は、散乱強度を可視化して表示する。
【0050】
(作用及び効果)
本実施形態に係る海底資源探査システム及び海底資源探査方法によると、解析部17が海中のデータを解析することにより、信頼性が高く、安価に海底資源を探査することができる。
【0051】
又、散乱強度を可視化して表示する表示部18を更に備えることにより、海底資源が存在する場所、海底資源を起源とする物体を視覚的に捉えることができ、多くの費用と時間をかけずに効率的に海底資源を探査することができる。
【0052】
又、解析部17は、物体における散乱強度の最大値が、−60〜−30dBであり、物体における散乱強度の平均値が、−70〜−50dBである場合、物体の直下の海底に資源があると判断することができる。これは、メタンハイドレードからガスが湧き出る場合、その組成から、このような散乱強度を有すると考えられる。
【0053】
更に、解析部17は、海底直上から100m以内に、物体が−45〜−30dBの散乱強度を有する場合、物体の直下の海底に資源があると判断することができる。これは、密度の濃いガス、あるいは、ガスハイドレードの結晶で超音波が散乱するためであると考えられる。
【0054】
(その他の実施形態)
本発明は上記の実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0055】
例えば、本実施形態において、海底資源としてメタンハイドレードを例にとり説明したが、その他の海底資源に適用してもよい。
【0056】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【実施例】
【0057】
以下に、本発明を実施例により更に詳しく説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0058】
本発明者らは、本発明に係る海底資源探査システムを用いて、日本海において、メタンハイドレードの探査を行った。この探査は、1886tの船によって行い、既存の魚群探知機を用いて行った。
【0059】
図5は、観察エリアの3次元マップである。船のインターバルは、0.05nmi.であり、そのスピードは、3ktであった。観測の航行路を図6に示す。
【0060】
海底資源探査システムとしては、図1に示すものを用いた。具体的には、計量魚群探知機、KFC3000(カイジョー製)を用いた。周波数は、38kHzであり、等価ビーム幅Ψは、−19.1dBであった。
【0061】
図7は、GPSからの位置データと共に、計量魚群探知機を使用して、柱状に広がるメタンガス(以下において、「メタンプルーム」という。)をマッピングしたものである。
【0062】
発明者らは、エコーグラムにおいて、直径約100m、高さが200m〜700m、海面下600〜300mに届く、36プルームを測定した。そして、GPSからの位置データと共に、計量魚群探知機を使用して、所定の速力で航走しながら4秒おきにメタンプルームを測定した(図7〜11)。
【0063】
図8〜11は、メタンプルームのエコーグラムである。縦軸は、振動子1の表面、言い換えると、船底からのからの距離である。横軸は、船の航海距離である。
【0064】
図8〜11において、下の茶色いラインが海底面を表す。図10は、図13に示すこぶし大のメタンハイドレードが発見された場所に対応するメタンプルームを示す。図11は、CTD測定を行ったメタンプルームを示す。
【0065】
図8は、潮の流れによって、水深600m付近で北方向に傾斜するプルームを示す。このときの船の速度は、3ノットであった。
【0066】
図9は、水深300〜350m地点にあるプルーム(左側から2番目)を示す。この先端は、膨らんでいるが、これは、この深さ付近で水温が急に高くなるからである。
【0067】
図10は、メタンハイドレードの固まりを発見した場所のプルームを示す。このときの船の速度は、0.3ノットであった。
【0068】
図11は、ここで、CTDの観察を行ったプルームを示す。このとき、船はエンジンを停止していた。
【0069】
図12は、図11のプルーム1、2、3を観察する間の航跡である。中央の太線は、プルーム1の超音波データを測定したとき、上部の太線は、プルーム2の超音波データを測定したとき、下部の太線は、プルーム3の超音波データを測定したときの航跡である。図12のグリッドは、30m×30mである。
【0070】
図11において、3つのプルームのエコーグラムを比較すると、これらは、1つのプルームの異なる場所を表現していることが分かる。
【0071】
海底の水の温度は、異常に低い温度、CTDを用いて測定した際、0.25℃であった。
【0072】
本発明者らは、それぞれのメタンプルームからの散乱強度SVを計算した。プルームの散乱強度SVは、積分層幅を100m、積分間隔を1分として、計量魚群探知機の一部である積分機能を用いて計算した。具体的には、柱状のプルームを100m毎に一定幅で輪切りにし(この輪切りにした部分を「グリッド」という。)、グリッド毎に散乱強度SVを計算した。プルームの散乱強度SVの値は、表1に示すとおりである。
【表1】
【0073】
図14において、縦軸は、散乱強度SV(dB)を示し、横軸は、船底からの距離(m)を示す。緑の細線は、図11の左側から2番目のプルーム1の平均散乱強度SVを示し、青の細線は、図11に右側から2番目のプルーム2の平均散乱強度SVを示し、赤の細線は、図11の右側から2番目のプルーム3の平均散乱強度SVを示す。黒の細線は、すべての平均値を示す。
【0074】
図14に示すように、平均散乱強度SVは、プルームの下部から中間にかけて最も高い値を示すのに対し、プルームの上部では比較的低い値を示す。又、平均散乱強度SVは、海底から海面下700mの範囲ではバラツキが少ないのに対し、海面下700m以上の範囲では、それぞれのプルームに対して異なる値をとる。このことは、海底から海面下700mの範囲では、メタンガスの密度が比較的一定であり、海面に向かってだんだんとガスが減っていくことが分かる。
【0075】
図14において、プルーム2の平均散乱強度SVは、プルーム1はプルーム3に比べ高い。上述したように、これらの3つのプルームは、1つのプルームを表している。プルーム2を測定した航跡は、このプルームの中央を航行し、プルーム1及びプルーム3を測定した航跡は、このプルームの端を航行しているものと考えられる。
【0076】
(結果)
本発明者らは、メタンプルームをマッピングし、エコーグラムにおいて、直径約100m、高さが200m〜700m、海面下600〜300mに届く、36プルームを測定した。
【0077】
又、本発明者らは、それぞれのプルームの散乱強度SVを測定した。その散乱強度SVは、表1に示すとおりであった。即ち、散乱強度の最大値が、−54〜−35dBであり、散乱強度の平均値が、−65〜−63dBである場合、このプルームの直下の海底に資源があることが分かった。
【0078】
更に、当該プルームの測定結果を詳細に解析すると、表2に示す結果が得られた。
【表2】
【0079】
即ち、海底から100m以内の積分層の中に、−44〜−36dBの強い散乱強度を有していた。よって、このようなプルームの直下の海底に資源があることが分かった。
【0080】
又、平均散乱強度SVは、プルームの下部から中間にかけて最も高い値を示すのに対し、プルームの上部では比較的低い値を示した。
【0081】
又、本発明者らがメタンプルームを観察した場所から、メタンハイドレードが発見された。
【0082】
これらの結果から、本実施形態に係る海底資源探査システム及び海底資源探査方法は、メタンハイドレードの埋蔵場所を知るのに効果的であることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本実施の形態に係る海底資源探査システムの構成ブロック図である。
【図2】本実施の形態に係る海底資源の探査を説明するための図である。
【図3】本実施の形態に係る海底資源探査システムの表示部が表示する画面の一例である(その1)。
【図4】本実施の形態に係る海底資源探査システムの表示部が表示する画面の一例である(その2)。
【図5】本実施例に係る観測エリアの3次元マップである。
【図6】本実施例に係る観測の航行路である。
【図7】本実施例に係るメタンプルームのマップである。
【図8】本実施例に係るメタンプルームのエコーグラムである(その1)。
【図9】本実施例に係るメタンプルームのエコーグラムである(その2)。
【図10】本実施例に係るメタンプルームのエコーグラムである(その3)。
【図11】本実施例に係るメタンプルームのエコーグラムである(その4)。
【図12】図11のプルーム1、2、3を観察する間の航跡である。
【図13】本実施例において発見されたこぶし大のメタンハイドレードである。
【図14】本実施例に係る3つのプルームの平均散乱強度SVである。
【符号の説明】
【0084】
1…振動子
3…物体
4…メタンハイドレード(海底資源)
5…船
11…正弦波発生部
12…パルス幅切り替え部
13…送信信号増幅部
14…送受切り替え部
16…受信信号増幅部
17…解析部
18…表示部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海中へ音波を送信する送信手段と、
前記音波が海水中に存在する、海水と密度の異なる物体の境界面で反射した散乱波を受信する受信手段と、
前記送信した音波及び前記受信した散乱波から散乱強度を計算し、所定の散乱強度である場合、前記物体の直下の海底に資源があると判断する解析手段と
を備えることを特徴とする海底資源探査システム。
【請求項2】
前記所定の散乱強度を有する物体の輪郭を可視化して表示する表示手段を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の海底資源探査システム。
【請求項3】
前記解析手段は、前記物体における散乱強度の最大値が、−60〜−30dBであり、前記物体における散乱強度の平均値が、−70〜−50dBである場合、前記物体の直下の海底に資源があると判断することを特徴とする請求項1又は2に記載の海底資源探査システム。
【請求項4】
前記解析手段は、海底直上から100m以内に、前記物体が−45〜−30dBの散乱強度を有する場合、前記物体の直下の海底に資源があると判断することを特徴とする請求項3に記載の海底資源探査システム。
【請求項5】
前記物体は、ガスを含み、前記資源は、ガスハイドレードであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の海底資源探査システム。
【請求項6】
海中へ音波を送信するステップと、
前記音波が海水中に存在する、海水と密度の異なる物体の境界面で反射した散乱波を受信するステップと、
前記送信した音波及び前記受信した散乱波から散乱強度を計算するステップと、
所定の散乱強度である場合、前記物体の直下の海底に資源があると判断するステップと
を含むことを特徴とする海底資源探査方法。
【請求項1】
海中へ音波を送信する送信手段と、
前記音波が海水中に存在する、海水と密度の異なる物体の境界面で反射した散乱波を受信する受信手段と、
前記送信した音波及び前記受信した散乱波から散乱強度を計算し、所定の散乱強度である場合、前記物体の直下の海底に資源があると判断する解析手段と
を備えることを特徴とする海底資源探査システム。
【請求項2】
前記所定の散乱強度を有する物体の輪郭を可視化して表示する表示手段を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の海底資源探査システム。
【請求項3】
前記解析手段は、前記物体における散乱強度の最大値が、−60〜−30dBであり、前記物体における散乱強度の平均値が、−70〜−50dBである場合、前記物体の直下の海底に資源があると判断することを特徴とする請求項1又は2に記載の海底資源探査システム。
【請求項4】
前記解析手段は、海底直上から100m以内に、前記物体が−45〜−30dBの散乱強度を有する場合、前記物体の直下の海底に資源があると判断することを特徴とする請求項3に記載の海底資源探査システム。
【請求項5】
前記物体は、ガスを含み、前記資源は、ガスハイドレードであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の海底資源探査システム。
【請求項6】
海中へ音波を送信するステップと、
前記音波が海水中に存在する、海水と密度の異なる物体の境界面で反射した散乱波を受信するステップと、
前記送信した音波及び前記受信した散乱波から散乱強度を計算するステップと、
所定の散乱強度である場合、前記物体の直下の海底に資源があると判断するステップと
を含むことを特徴とする海底資源探査方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−20191(P2008−20191A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−308815(P2004−308815)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【特許番号】特許第3662921号(P3662921)
【特許公報発行日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【出願人】(504395202)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【特許番号】特許第3662921号(P3662921)
【特許公報発行日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【出願人】(504395202)
【Fターム(参考)】
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