説明

海底鉱床掘削機

【課題】大深海の凹凸や傾斜地である海底であっても安定した状態で走行ならびに掘削作業を行うことができるばかりか水圧が高い深海であっても効率よく移動や海底鉱床の掘削を行うことが可能であり、殊に、船上に設置する巻上装置の負担を軽減することが可能な海底鉱床掘削機を提供する。
【解決手段】本発明である海底鉱床掘削機は、左右一対のクローラが備えられている本体フレームの先方に海底鉱床を掘削する掘削ドラムが掘削ブームを介して上下左右に揺動可能に備えられている海底および海底鉱床を走行可能とした海底鉱床掘削機において、本体フレームにカウンターウェイトを積み降し可能に搭載した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海底、特に深海に存在する鉱床を掘削するために用いられる海底鉱床掘削機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近頃、水深1000mを超える大深海の海底に金、銅、鉛、亜鉛、ニッケル、コバルト、白金その他レアメタル、レアアースなどのメタル資源を有する海底鉱床が多数存在することが各種の探査により確認されている。
【0003】
ところで、前記海底鉱床の資源を利用するには海底鉱床を破砕して採鉱する手段が必要であり、従来から例えば特開平7−217361号公報や特開2004−143741号公報に提示されているように船から掻き取り機を降下させたり岩盤破砕用爪を落下させたりする手段が知られているが、殆どが比較的浅い海域での使用を前提としたものやサンプリングに関するものであり、特に、1000mを越える深海に適用するには精度や破砕効果の面で問題がある。
【0004】
また、直接、海底に沈降させて鉱床を掘削する海底掘削機が特開昭63−130829号公報に提示されているが、この公報に提示されている海底掘削機は、平面が矩形状の枠体の四隅に伸縮脚を設けた本体フレームと同様な移動フレームとを長手方向に直交する方向に移動可能にスライダーにより支持するとともに、本体フレームの先方にロードヘッタと下方にドラムカッターを備えたものであり、前記本体フレームと移動フレームとをスライドさせて海底を歩行するように移動するものである。
【0005】
そのため、凹凸を有していたり傾斜している海底においては、移動が困難であるという問題があり、特に、水圧が著しく高い深海では浮力が生じるなどの理由で更に移動が困難になり、加えて、海底鉱床の掘削は本体フレームの先方に配置したロードヘッダにより行うものであり、掘削時のバランスも悪くなるという問題がある。
【0006】
そこで、例えば本体フレームなどにカウンターウェイトを搭載することにより海底鉱床掘削機の自重を増大させて前記深海での水圧による影響を軽減することにより作業効率の向上を図るという手段が考えられるが、一方、海底鉱床掘削機が故障したり整備をする場合には海底で行うことが困難であり、海底鉱床掘削機を海底から船上に引き上げて行うことになるが、カウンターウェイトを搭載すると自重が増加して船上への引き上げに大きな引き上げ力が必要となり、大型で容量のある巻上装置を船上に設置する必要があり、経済面で不利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−217361号公報
【特許文献2】特開2004−143741号公報
【特許文献3】特開昭63−130829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような問題を解決しようとするものであり、大深海の凹凸や傾斜地である海底であっても安定した状態で走行ならびに掘削作業を行うことができるばかりか水圧が高い深海であっても効率よく移動や海底鉱床の掘削を行うことが可能であり、殊に、
船上に設置する巻上装置の負担を軽減することが可能な海底鉱床掘削機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するためになされた本発明である海底鉱床掘削機は、左右一対のクローラが備えられている本体フレームの先方に海底鉱床を掘削する掘削ドラムが掘削ブームを介して上下左右に揺動可能に備えられている海底および海底鉱床を走行可能とした海底鉱床掘削機において、前記本体フレームにカウンターウェイトが積み降し可能に搭載されていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、左右一対のクローラにより走行することにより、海底や海底鉱床の上を確実に且つ迅速に走行可能であって、先方に配置した掘削ドラムによる海底鉱床の掘削作業が効率よく行えるとともに、本体フレームにカウンターウェイトを搭載したことにより大深海においても水圧による影響をなくして安走した状態で確実に走行ならびに掘削を可能にすることができる。
【0011】
また、カウンターウェイトを積み降ろし可能としたことにより、海底鉱床掘削機を船上に引き上げる際にカウンターウェイトを海底に降ろして軽量化を図って引き上げることにより船上に設置する巻上装置の負担を軽減することができる。
【0012】
更に、前記カウンターウェイトに海中で検知可能な位置センサーが設置されている場合には、一旦船上に引き上げた海底鉱床掘削機を再び海底に沈降させる際に、カウンターウェイトの近くに降ろすことができる。
【0013】
更にまた、前記海底鉱床掘削機に前記カウンターウェイトに設置されている位置センサーの検知装置が設置されている場合には、海底において海底鉱床掘削機とカウンターウェイトとの位置関係を船上において確認することができる。
【0014】
加えて、前記海底鉱床掘削機に前記本体フレームに搭載された前記カウンターウェイトを海底に降ろすとともに海底に載置された前記カウンターウェイトを前記本体フレームに引き上げて搭載するためのカウンターウェイト積み降ろし装置が設置されている場合には、海底においてカウンターウェイトの積み降ろし作業を船上から操作することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、大深海の凹凸や傾斜地である海底であっても安定した状態で走行ならびに掘削作業を行うことができるばかりか高水圧や潮流に対しても安定した状態で走行ならびに掘削作業ができる。また、カウンターウェイトを積み降ろし可能とすることにより作業中に海底鉱床掘削機を船上に引き上げる際に海底鉱床掘削機全体の重量を減らして船上に設置した巻き上げ機の負担の軽減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の好ましい実施の形態を示す側面図である。
【図2】図1に示した実施の形態のカウンターウェイトを降ろした状態を示す側面図である。
【図3】図1に示した実施の形態における正面図である。
【図4】図1に示した実施の形態における背面図である。
【図5】図1に示した実施の形態におけるカウンターウェイトの海底鉱床掘削機から降ろす行程を示す説明図である。
【図6】図1に示した実施の形態を船上から海底へ降ろす状態を示す説明図である。
【図7】図1に示した実施の形態におけるカウンターウェイトの海底鉱床掘削機への積み込み行程を示す説明図である。
【図8】本発明の異なる実施の形態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明を図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
【0018】
図面は本発明の好ましい実施の形態の側面図を示すものであり、海底鉱床掘削機1は、本体フレーム2に左右一対のクローラ3,3が備えられており、このクローラ3,3は陸上で使用されるものと変わりなく例えば後方の駆動輪31に配置したモータや減速機などの本体フレームに搭載される駆動手段(図示せず)により走行するものであり、本実施の形態では船上から例えば有線により運転される。
【0019】
また、前記本体フレーム2に前後方向へスライド可能なスライドブーム4が配置されているとともに、このスライドブーム4の先方に前記海底鉱床を掘削する掘削ドラム41が、伸縮シリンダにより駆動して掘削ドラム41を上下左右方向に揺動する掘削ブーム42を介して固着している。
【0020】
更に、本体フレーム2の後方には、カウンターウェイト51を後方に配置して本体フレーム2の前後方向および上下方向へ移動する板状のウェイトトブーム5が配置されている。
【0021】
特に、本実施の形態では、カウンターウェイト51は底面に前記ウェイトトブーム5の差し込み溝53が少なくとも1つの側面に貫通して形成されており、前記ウェイトトブーム5とともにカウンターウェイト51の積み降し装置6を形成している。
【0022】
また、前記カウンターウェイト51には海中で検知可能な位置センサー54,54が設置されている。このセンサー54,54は、海水中で検知可能な従来周知のものが用いられ、本実施の形態では海底鉱床掘削機1の後方および海底鉱床掘削機1を海海底9へ降ろしたり引き上げたりする船7に検知手段11,71が配置されている。
【0023】
以上の構成を有する本実施の形態は、船上からワイヤなどにより吊り下げて海底へ沈降させ、船上からの操作により海底9を走行させる。このとき、本実施の形態では走行手段としてクローラ3を用いているので海底に凹凸があったり傾斜面であっても支障なく迅速に且つ方向を問わずに走行可能であり、また所定の掘削箇所で確実に停止させることができる。
【0024】
特に、本実施の形態では、カウンターウェイト51を搭載しているので、深海における水圧や潮流の影響を少なくして走行ならびに停止することができる。
【0025】
そして、作業の途中で海底鉱床掘削機1を整備したり修理したりする場合には船上から降ろしたワイヤなどにより船上へ吊り上げて作業を行うが、このとき、海底鉱床掘削機1をカウンターウェイト51ごと引き上げるには船上に配置した巻き上げ機8の負担を軽減するためにカウンターウェイト51を海底鉱床掘削機1から海底9へ降ろして海底鉱床掘削機1だけを引き上げる。
【0026】
このとき、本実施の形態ではカウンターウェイト51の積み降し装置6を備えているので自動的にカウンターウェイト51を海底鉱床掘削機1から海底9へ降ろすことができる。
【0027】
図5は本実施の形態におけるカウンターウェイト51を海底鉱床掘削機1から降ろす行
程を示すものであり、図5(a)のカウンターウェイト51を搭載した状態でウェイトトブーム5を後方へ移動させて図5(b)に示すようにカウンターウェイト51を海底鉱床掘削機1から突出させ、次いで図5(c)に示すようにウェイトトブーム5を下げてカウンターウェイト51を海底9に降ろし、図5(d)に示すように、海底鉱床掘削機1を前進させてウェイトトブーム5をカウンターウェイト51の差し込み溝53から抜いて海底鉱床掘削機1とカウンターウェイト51との係合を解除し、ウェイトトブーム5を元の位置に復帰させてカウンターウェイト51の海底鉱床掘削機1から降ろす行程が終了するので、その状態で船上へ引き上げる。
【0028】
また、船上で海底鉱床掘削機1の整備や修理さらには部品の付け替え作業などが終了したときには、図6に示すように、海底鉱床掘削機1を船7上に設置した巻き上げ機8を用いて再度、海底9に降ろすことになる。
【0029】
この際、本実施の形態では海底9に掲置してあるカウンターウェイト51には位置センサー54,54が配置されているので、位置センサー54,54からの信号を船7上に配置した検知手段71により検知してカウンターウェイト51の海底9での位置が容易に確認することができるので、海底鉱床掘削機1をカウンターウェイト51の直近位置に降ろすことができる。
【0030】
更に、本実施の形態では、海底鉱床掘削機1の後方にも前記カウンターウェイト51に配置される位置センサー54,54の検知手段11,11が配置されているので図7(a)に示すように、海底鉱床掘削機1を自走させて海底鉱床掘削機1の後方位置にカウンターウェイト51が所定の位置に配置させウェイトトブーム5を下げた状態で後方へ移動させて、或いは所定の位置に移動させた状態で下降した状態のウェイトトブーム5を後方へ移動させて(図示せず)、図7(b)に示すようにウェイトトブーム5を海底9に掲置してあったカウンターウェイト51の差し込み溝53に差し込んで、図7(c)に示すように上昇させて、更に、図7(d)に示すように海底鉱床掘削機1の前方へと移動させてカウンターウェイト51を海底鉱床掘削機1に自動的に搭載することができる。
【0031】
尚、本発明におけるカウンターウェイト51の積み降し装置6は本実施の形態に限るものではなく、たとえば図8に示すように、吊り上げ式のものなど他の手段により構成してもよいが、特に直接的に操作が困難な深海で行うことから、カウンターウェイト51に位置センサー54,54を設置することはきわめて有効である。
【符号の説明】
【0032】
1 海底鉱床掘削機、2 本体フレーム、3 クローラ、4 スライドフレーム、5 ウェイトブーム、6 積み降ろし装置、9 海底、41 掘削ドラム、51 カウンターウェイト、54 位置センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対のクローラが備えられている本体フレームの先方に海底鉱床を掘削する掘削ドラムが掘削ブームを介して上下左右に揺動可能に備えられている海底および海底鉱床を走行可能とした海底鉱床掘削機において、前記本体フレームにカウンターウェイトが積み降し可能に搭載されていることを特徴とする海底鉱床掘削機。
【請求項2】
前記カウンターウェイトに海中で検知可能な位置センサーが設置されていることを特徴とする請求項1記載の海底鉱床掘削機。
【請求項3】
前記海底鉱床掘削機に前記カウンターウェイトに設置されている位置センサーの検知装置が設置されていることを特徴とする請求項1または2記載の海底鉱床掘削機。
【請求項4】
前記海底鉱床掘削機に前記本体フレームに搭載された前記カウンターウェイトを海底に降ろすとともに海底に載置された前記カウンターウェイトを前記本体フレームに引き上げて搭載するためのカウンターウェイトの積み降ろし装置が設置されていることを特徴とする請求項1,2または3記載の海底鉱床掘削機。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−77525(P2012−77525A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224258(P2010−224258)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000005924)株式会社三井三池製作所 (43)