海水中金属の捕集材
【課題】 低コストで海水中金属であるウランを捕集する。
【解決手段】 セルロース(綿)の担体に塩化ナトリウムの反応助剤を用いて天然由来のタンニンを結合させ、タンニンを結合させた捕集材1にウランを吸着させ、低コストで海水中のウランを捕集する。
【解決手段】 セルロース(綿)の担体に塩化ナトリウムの反応助剤を用いて天然由来のタンニンを結合させ、タンニンを結合させた捕集材1にウランを吸着させ、低コストで海水中のウランを捕集する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水中の金属、例えば、ウランを捕集する海水中金属の捕集材に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力は主要なエネルギー源であり、原子力発電の燃料としてのウランの需要は高くなることが確実視されているのが実情である。しかし、ウラン資源は特定の国に集中しているため、安定供給に対するリスクが高く、電力の安定供給が妨げられる虞がある。
【0003】
一方、海水中には極微量であるが多くの希少金属が含まれており、海水中の希少金属としてウランが存在することが知られている。このため、原子力発電の燃料として、海水中のウランを活用することが種々研究されている。海水中からウランを回収することができれば、ウランの安定供給に対するリスクを大幅に低減することが可能になる。
【0004】
海水からウランを捕集する吸着材として、アミドキシム基を有する吸着材が従来から提案されている(特許文献1参照)。アミドキシム基を有する吸着材を用いることにより、吸着材の量に対するウランの吸着量をある程度の割合で確保することが確認されている。しかし、アミドキシム基を得るための原材料の費用が嵩み、アミドキシム基を有する吸着材を用いて海水からウランを捕集した場合のコストは、鉱山資源から得られるウランの数倍以上になってしまうのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−61936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、低コストで海水中の金属、特に、ウランを捕集することができる海水中金属の捕集材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の海水中金属の捕集材は、アルカリ塩からなる反応助剤を用いて有機高分子化合物の担体にタンニンを結合させ、海水中の金属を吸着させることを特徴とする。
【0008】
請求項1に係る本発明では、有機高分子化合物の担体に天然由来のタンニンを結合させて海水中の金属を吸着させることができる。この結果、低コストで海水中の金属、特に、ウランを捕集することが可能になる。
【0009】
アルカリ塩としては、塩化ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、塩化カリウム等を個別に用いたり、組み合わせて用いることが可能である。また、有機高分子化合物としては、セルロースをはじめ、ビニロン、ナイロン等を適用することが可能である。
【0010】
そして、請求項2に係る本発明の海水中金属の捕集材は、請求項1に記載の海水中金属の捕集材において、前記有機高分子化合物は、セルロースであり、前記アルカリ塩は、ナトリウム塩であることを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る本発明では、ナトリウム塩(塩化ナトリウム、硫酸水素ナトリウム等)を反応助剤としてセルロースにタンニンを結合させた捕集材となる。
【0012】
また、請求項3に係る本発明の海水中金属の捕集材は、請求項2に記載の海水中金属の捕集材において、前記セルロースとして綿を用いて担体とし、前記ナトリウム塩として塩化ナトリウムを用いて反応助剤とし、前記タンニンを前記綿に結合させたことを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る本発明では、塩化ナトリウムを反応助剤として綿にタンニンを結合させた捕集材となる。
【0014】
また、請求項4に係る本発明の海水中金属の捕集材は、請求項3に記載の海水中金属の捕集材において、前記担体は、前記綿の重量の10倍から100倍の量の水に、前記綿の重量の1.0倍から4.0倍の量のタンニンを溶解し、タンニンが溶解した水溶液に塩化ナトリウムを添加して溶液とし、加熱された溶液に前記綿が浸漬されると共に、浸漬後の前記綿が乾燥されて形成されることを特徴とする。
【0015】
請求項4に係る本発明では、綿の量に対するタンニンの量を適格に規定して最適な量の海水中金属を吸着させることができる。タンニンが添加される水の重量(綿の重量の10倍から100倍)は、タンニンの量(綿の重量の1.0倍から4.0倍)により適宜設定され、綿の重量の1.5倍から4.0倍の量のタンニンに対し、綿の重量の15倍から30倍の量の水を用いることが好ましい。
【0016】
また、請求項5に係る本発明の海水中金属の捕集材は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の海水中金属の捕集材において、吸着する前記金属は海水中のウランであることを特徴とする。
【0017】
請求項5に係る本発明では、低コストで海水中のウランを捕集することが可能になる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の海水中金属の捕集材は、低コストで海水中の金属、特に、ウランを捕集することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施例に係る海水中金属の捕集材の概念図。
【図2】捕集材の作成手順の状況説明図。
【図3】捕集材の作成手順の状況説明図。
【図4】タンニンの重量とウランの吸着量との関係を表すグラフ。
【図5】担体に対するタンニンの重量割合とウランの吸着量との関係を表すグラフ。
【図6】海水からウランを捕集している状態の概念図。
【図7】ウランの捕集量を検証する状態の概念図。
【図8】ウランの捕集状況の経時変化を表すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本実施例の海水中金属の捕集材は、担体として有機高分子化合物であるセルロース(脱脂綿)が用いられ、ナトリウム塩である塩化ナトリウムの反応助剤を用いて脱脂綿に天然由来のタンニンを結合させたものである。タンニンとしては、五倍子が適用される。そして、捕集材は海水中の金属であるウランを捕集する。
【0021】
反応助剤としては、塩化ナトリウム及び硫酸水素ナトリウムのナトリウム塩を用いたり、塩化カリウムを添加することが可能である。担体としては、他にガーゼ等を適用することが可能であり、タンニンとしては、五倍子の他に、渋柿、チェストナット、ミモザ、ケブラチョ等から抽出したものを適用することが可能である。
【0022】
図1から図8に基づいて本発明の捕集材の実施例を説明する。
【0023】
図1には本発明の一実施例に係る海水中金属の捕集材の概念、図2、図3には捕集材の作成手順の状況、図4にはタンニンの重量とウランの吸着量との関係、図5には担体に対するタンニンの重量割合とウランの吸着量との関係、図6には海水からウランを捕集している状態の概念、図7にはウランの捕集量を検証する状態の概念、図8にはウランの捕集状況の経時変化を示してある。
【0024】
図1に示すように、本実施例の捕集材1は、反応助剤として塩化ナトリウム(NaCl)を用い、綿(脱脂綿)2にタンニン(五倍子)を結合させたものである。反応助剤としては、塩化ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、塩化カリウムを適用することが可能である。また、タンニンとしては、渋柿、チェストナット、ミモザ、ケブラチョ等から抽出したものを適用することが可能である。
【0025】
図2から図5に基づいて捕集材1の作成手順を説明する。
【0026】
図2(a)に示すように、40℃の蒸留水に脱脂綿2を入れ、数時間から12時間程度浸漬して脱脂綿2を膨潤させる。尚、蒸留水の温度は室温から100℃までの範囲で適宜設定することができる。また、蒸留水に後述する反応助剤(塩化ナトリウム:NaCl)を添加することも可能である。
【0027】
図2(b)に示すように、脱脂綿2の重量の15倍から30倍の水に、脱脂綿2の重量の1.5倍から3.0倍の重量のタンニンを加えて溶解し、タンニンが溶解した水溶液に塩化ナトリウム(NaCl)を添加してNaClが10%の溶液5とする。タンニンを溶解させることにより、脱脂綿2をイオン化してタンニンの結合が促進される。
【0028】
尚、タンニンの重量は、脱脂綿2の重量の1.0倍から4.0倍の範囲で適宜設定することが可能である。そして、タンニンが添加される水の重量は、タンニンの量(脱脂綿2の重量の1.0倍から4.0倍)に対応して適宜設定され、脱脂綿2の重量の1.5倍から4.0倍の量のタンニンに対し、脱脂綿2の重量の10倍から100倍の量の範囲で適宜設定することができる。
【0029】
図3(a)に示すように、溶液5を90℃から95℃に加熱し、90℃から95℃の溶液5に脱脂綿2を1時間から2時間の間浸漬する。図3(b)に示すように、溶液5に浸漬した脱脂綿2を水洗いし、図3(c)に示すように、乾燥させてタンニンが脱脂綿に結合された捕集材1とする。
【0030】
図4に示すように、脱脂綿2の重量に対するタンニンの重量が増加するとウランの吸着量が増加する。タンニンの重量が2倍を超えて3倍以上になると、タンニンの量が増加してもウランの吸着量はほとんど増加しない。
【0031】
図5に示すように、脱脂綿2の重量に対するタンニンの重量の割合が1倍を超える倍率で、ウランの吸着量が急激に増加する。タンニンの重量の割合が2倍を超えると、ウランの吸着量は微増に留まり、4倍を超えて割合が高くなるとウランの吸着量が低下する可能性がある。
【0032】
タンニンの重量が多くなり割合が高くなると、タンニンが重なって結合されてウランの吸着量の増加が期待できないため、脱脂綿2の重量の1.5倍から3.0倍の重量のタンニンを水に溶解している。
【0033】
上述した手順で作製された捕集材1を係留等により海水中に所定期間の間保持し、海水中のウランを捕集する。尚、捕集する金属としては、ウランに限らず、希土類(レアアース)をはじめとするレアメタルと称されるその他の金属を捕集することができる。
【0034】
図6、図7に基づいて捕集材1から海水中のウランを捕集する際の実験状況を説明する。
【0035】
図6に示すように、25℃、1000cc(1L)の海水6中に100mgの捕集材1を入れ、スターラー7により24時間撹拌する。
【0036】
24時間経過した後、海水6から捕集材1を取り出し、図7(a)に示すように、0.1mol/LのHClを用いて捕集材1の溶離を行い、定容によりウランの量を分析した。また、図7(b)に示すように、捕集材1を取り出した後の海水6をイオン交換樹脂8に流通させて脱塩すると共に希釈し、定容によりウランの残量を分析した。
【0037】
定容の結果、捕集材1に所定量のウランが吸着していたことが確認された。また、海水6中にウランが検出されなかったことが確認された。これにより、1L中の海水6に含まれるウランが24時間で100mgの捕集材1に捕集されたことが判る。
【0038】
尚、捕集材1の溶離は、HClに代えて硝酸を用いることも可能である。またHCl(もしくは硝酸)の濃度を変更することにより、ウラン以外の希土類(レアアース)をはじめとするレアメタルと称されるその他の金属を選択的に溶離することが可能である。
【0039】
図8に基づいてウランの捕集量の経時変化を説明する。
【0040】
図に実線で示すように、1Lの海水6に100mgの捕集材1を入れてから6時間が経過するまでにほとんどのウランが捕集され、24時間が経過するまでに残りのウランが徐々に捕集される。24時間を経過すると、ウランの捕集量は増加しない。このことから、1L中の海水6から24時間で全てのウランを捕集材1で捕集できることが判る。
【0041】
図に点線で示すように、例えば、10Lの海水6に捕集材1を入れてウランを捕集した場合、十数時間から数十時間(捕集材1の量により変化する)でほとんどのウランが捕集され、T時間を経過するまで徐々にウランが捕集されることになる。このことから、海水の量と捕集材1の量を適宜設定することにより、所定の時間で所望量のウランを捕集することができることが判る。
【0042】
上述した捕集材1は、塩化ナトリウム(NaCl)からなる反応助剤を用いて綿(脱脂綿)2に天然由来のタンニン(五倍子)を結合させ、海水6中のウランを吸着させるので、低コストで海水6中のウランを捕集することが可能になる。
【0043】
そして、捕集材1は、綿2の重量の15倍から30倍の量の水に、綿2の重量の1.5倍から3.0倍の量のタンニンを溶解し、タンニンが溶解した水溶液に塩化ナトリウム(NaCl)を添加して溶液とし、加熱された溶液に綿2が浸漬されると共に、浸漬後の綿2が乾燥されて形成される。このため、綿2の量に対するタンニンの量を適格に規定して最適な量のウランを吸着させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、海水中の金属、例えば、ウランを捕集する海水中金属の捕集材の産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 捕集材
2 綿(脱脂綿)
5 溶液
6 海水
7 スターラー
8 イオン交換樹脂
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水中の金属、例えば、ウランを捕集する海水中金属の捕集材に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力は主要なエネルギー源であり、原子力発電の燃料としてのウランの需要は高くなることが確実視されているのが実情である。しかし、ウラン資源は特定の国に集中しているため、安定供給に対するリスクが高く、電力の安定供給が妨げられる虞がある。
【0003】
一方、海水中には極微量であるが多くの希少金属が含まれており、海水中の希少金属としてウランが存在することが知られている。このため、原子力発電の燃料として、海水中のウランを活用することが種々研究されている。海水中からウランを回収することができれば、ウランの安定供給に対するリスクを大幅に低減することが可能になる。
【0004】
海水からウランを捕集する吸着材として、アミドキシム基を有する吸着材が従来から提案されている(特許文献1参照)。アミドキシム基を有する吸着材を用いることにより、吸着材の量に対するウランの吸着量をある程度の割合で確保することが確認されている。しかし、アミドキシム基を得るための原材料の費用が嵩み、アミドキシム基を有する吸着材を用いて海水からウランを捕集した場合のコストは、鉱山資源から得られるウランの数倍以上になってしまうのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−61936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、低コストで海水中の金属、特に、ウランを捕集することができる海水中金属の捕集材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の海水中金属の捕集材は、アルカリ塩からなる反応助剤を用いて有機高分子化合物の担体にタンニンを結合させ、海水中の金属を吸着させることを特徴とする。
【0008】
請求項1に係る本発明では、有機高分子化合物の担体に天然由来のタンニンを結合させて海水中の金属を吸着させることができる。この結果、低コストで海水中の金属、特に、ウランを捕集することが可能になる。
【0009】
アルカリ塩としては、塩化ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、塩化カリウム等を個別に用いたり、組み合わせて用いることが可能である。また、有機高分子化合物としては、セルロースをはじめ、ビニロン、ナイロン等を適用することが可能である。
【0010】
そして、請求項2に係る本発明の海水中金属の捕集材は、請求項1に記載の海水中金属の捕集材において、前記有機高分子化合物は、セルロースであり、前記アルカリ塩は、ナトリウム塩であることを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る本発明では、ナトリウム塩(塩化ナトリウム、硫酸水素ナトリウム等)を反応助剤としてセルロースにタンニンを結合させた捕集材となる。
【0012】
また、請求項3に係る本発明の海水中金属の捕集材は、請求項2に記載の海水中金属の捕集材において、前記セルロースとして綿を用いて担体とし、前記ナトリウム塩として塩化ナトリウムを用いて反応助剤とし、前記タンニンを前記綿に結合させたことを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る本発明では、塩化ナトリウムを反応助剤として綿にタンニンを結合させた捕集材となる。
【0014】
また、請求項4に係る本発明の海水中金属の捕集材は、請求項3に記載の海水中金属の捕集材において、前記担体は、前記綿の重量の10倍から100倍の量の水に、前記綿の重量の1.0倍から4.0倍の量のタンニンを溶解し、タンニンが溶解した水溶液に塩化ナトリウムを添加して溶液とし、加熱された溶液に前記綿が浸漬されると共に、浸漬後の前記綿が乾燥されて形成されることを特徴とする。
【0015】
請求項4に係る本発明では、綿の量に対するタンニンの量を適格に規定して最適な量の海水中金属を吸着させることができる。タンニンが添加される水の重量(綿の重量の10倍から100倍)は、タンニンの量(綿の重量の1.0倍から4.0倍)により適宜設定され、綿の重量の1.5倍から4.0倍の量のタンニンに対し、綿の重量の15倍から30倍の量の水を用いることが好ましい。
【0016】
また、請求項5に係る本発明の海水中金属の捕集材は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の海水中金属の捕集材において、吸着する前記金属は海水中のウランであることを特徴とする。
【0017】
請求項5に係る本発明では、低コストで海水中のウランを捕集することが可能になる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の海水中金属の捕集材は、低コストで海水中の金属、特に、ウランを捕集することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施例に係る海水中金属の捕集材の概念図。
【図2】捕集材の作成手順の状況説明図。
【図3】捕集材の作成手順の状況説明図。
【図4】タンニンの重量とウランの吸着量との関係を表すグラフ。
【図5】担体に対するタンニンの重量割合とウランの吸着量との関係を表すグラフ。
【図6】海水からウランを捕集している状態の概念図。
【図7】ウランの捕集量を検証する状態の概念図。
【図8】ウランの捕集状況の経時変化を表すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本実施例の海水中金属の捕集材は、担体として有機高分子化合物であるセルロース(脱脂綿)が用いられ、ナトリウム塩である塩化ナトリウムの反応助剤を用いて脱脂綿に天然由来のタンニンを結合させたものである。タンニンとしては、五倍子が適用される。そして、捕集材は海水中の金属であるウランを捕集する。
【0021】
反応助剤としては、塩化ナトリウム及び硫酸水素ナトリウムのナトリウム塩を用いたり、塩化カリウムを添加することが可能である。担体としては、他にガーゼ等を適用することが可能であり、タンニンとしては、五倍子の他に、渋柿、チェストナット、ミモザ、ケブラチョ等から抽出したものを適用することが可能である。
【0022】
図1から図8に基づいて本発明の捕集材の実施例を説明する。
【0023】
図1には本発明の一実施例に係る海水中金属の捕集材の概念、図2、図3には捕集材の作成手順の状況、図4にはタンニンの重量とウランの吸着量との関係、図5には担体に対するタンニンの重量割合とウランの吸着量との関係、図6には海水からウランを捕集している状態の概念、図7にはウランの捕集量を検証する状態の概念、図8にはウランの捕集状況の経時変化を示してある。
【0024】
図1に示すように、本実施例の捕集材1は、反応助剤として塩化ナトリウム(NaCl)を用い、綿(脱脂綿)2にタンニン(五倍子)を結合させたものである。反応助剤としては、塩化ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、塩化カリウムを適用することが可能である。また、タンニンとしては、渋柿、チェストナット、ミモザ、ケブラチョ等から抽出したものを適用することが可能である。
【0025】
図2から図5に基づいて捕集材1の作成手順を説明する。
【0026】
図2(a)に示すように、40℃の蒸留水に脱脂綿2を入れ、数時間から12時間程度浸漬して脱脂綿2を膨潤させる。尚、蒸留水の温度は室温から100℃までの範囲で適宜設定することができる。また、蒸留水に後述する反応助剤(塩化ナトリウム:NaCl)を添加することも可能である。
【0027】
図2(b)に示すように、脱脂綿2の重量の15倍から30倍の水に、脱脂綿2の重量の1.5倍から3.0倍の重量のタンニンを加えて溶解し、タンニンが溶解した水溶液に塩化ナトリウム(NaCl)を添加してNaClが10%の溶液5とする。タンニンを溶解させることにより、脱脂綿2をイオン化してタンニンの結合が促進される。
【0028】
尚、タンニンの重量は、脱脂綿2の重量の1.0倍から4.0倍の範囲で適宜設定することが可能である。そして、タンニンが添加される水の重量は、タンニンの量(脱脂綿2の重量の1.0倍から4.0倍)に対応して適宜設定され、脱脂綿2の重量の1.5倍から4.0倍の量のタンニンに対し、脱脂綿2の重量の10倍から100倍の量の範囲で適宜設定することができる。
【0029】
図3(a)に示すように、溶液5を90℃から95℃に加熱し、90℃から95℃の溶液5に脱脂綿2を1時間から2時間の間浸漬する。図3(b)に示すように、溶液5に浸漬した脱脂綿2を水洗いし、図3(c)に示すように、乾燥させてタンニンが脱脂綿に結合された捕集材1とする。
【0030】
図4に示すように、脱脂綿2の重量に対するタンニンの重量が増加するとウランの吸着量が増加する。タンニンの重量が2倍を超えて3倍以上になると、タンニンの量が増加してもウランの吸着量はほとんど増加しない。
【0031】
図5に示すように、脱脂綿2の重量に対するタンニンの重量の割合が1倍を超える倍率で、ウランの吸着量が急激に増加する。タンニンの重量の割合が2倍を超えると、ウランの吸着量は微増に留まり、4倍を超えて割合が高くなるとウランの吸着量が低下する可能性がある。
【0032】
タンニンの重量が多くなり割合が高くなると、タンニンが重なって結合されてウランの吸着量の増加が期待できないため、脱脂綿2の重量の1.5倍から3.0倍の重量のタンニンを水に溶解している。
【0033】
上述した手順で作製された捕集材1を係留等により海水中に所定期間の間保持し、海水中のウランを捕集する。尚、捕集する金属としては、ウランに限らず、希土類(レアアース)をはじめとするレアメタルと称されるその他の金属を捕集することができる。
【0034】
図6、図7に基づいて捕集材1から海水中のウランを捕集する際の実験状況を説明する。
【0035】
図6に示すように、25℃、1000cc(1L)の海水6中に100mgの捕集材1を入れ、スターラー7により24時間撹拌する。
【0036】
24時間経過した後、海水6から捕集材1を取り出し、図7(a)に示すように、0.1mol/LのHClを用いて捕集材1の溶離を行い、定容によりウランの量を分析した。また、図7(b)に示すように、捕集材1を取り出した後の海水6をイオン交換樹脂8に流通させて脱塩すると共に希釈し、定容によりウランの残量を分析した。
【0037】
定容の結果、捕集材1に所定量のウランが吸着していたことが確認された。また、海水6中にウランが検出されなかったことが確認された。これにより、1L中の海水6に含まれるウランが24時間で100mgの捕集材1に捕集されたことが判る。
【0038】
尚、捕集材1の溶離は、HClに代えて硝酸を用いることも可能である。またHCl(もしくは硝酸)の濃度を変更することにより、ウラン以外の希土類(レアアース)をはじめとするレアメタルと称されるその他の金属を選択的に溶離することが可能である。
【0039】
図8に基づいてウランの捕集量の経時変化を説明する。
【0040】
図に実線で示すように、1Lの海水6に100mgの捕集材1を入れてから6時間が経過するまでにほとんどのウランが捕集され、24時間が経過するまでに残りのウランが徐々に捕集される。24時間を経過すると、ウランの捕集量は増加しない。このことから、1L中の海水6から24時間で全てのウランを捕集材1で捕集できることが判る。
【0041】
図に点線で示すように、例えば、10Lの海水6に捕集材1を入れてウランを捕集した場合、十数時間から数十時間(捕集材1の量により変化する)でほとんどのウランが捕集され、T時間を経過するまで徐々にウランが捕集されることになる。このことから、海水の量と捕集材1の量を適宜設定することにより、所定の時間で所望量のウランを捕集することができることが判る。
【0042】
上述した捕集材1は、塩化ナトリウム(NaCl)からなる反応助剤を用いて綿(脱脂綿)2に天然由来のタンニン(五倍子)を結合させ、海水6中のウランを吸着させるので、低コストで海水6中のウランを捕集することが可能になる。
【0043】
そして、捕集材1は、綿2の重量の15倍から30倍の量の水に、綿2の重量の1.5倍から3.0倍の量のタンニンを溶解し、タンニンが溶解した水溶液に塩化ナトリウム(NaCl)を添加して溶液とし、加熱された溶液に綿2が浸漬されると共に、浸漬後の綿2が乾燥されて形成される。このため、綿2の量に対するタンニンの量を適格に規定して最適な量のウランを吸着させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、海水中の金属、例えば、ウランを捕集する海水中金属の捕集材の産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 捕集材
2 綿(脱脂綿)
5 溶液
6 海水
7 スターラー
8 イオン交換樹脂
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ塩からなる反応助剤を用いて有機高分子化合物の担体にタンニンを結合させ、海水中の金属を吸着させる
ことを特徴とする海水中金属の捕集材。
【請求項2】
請求項1に記載の海水中金属の捕集材において、
前記有機高分子化合物は、セルロースであり、
前記アルカリ塩は、ナトリウム塩である
ことを特徴とする海水中金属の捕集材。
【請求項3】
請求項2に記載の海水中金属の捕集材において、
前記セルロースとして綿を用いて担体とし、
前記ナトリウム塩として塩化ナトリウムを用いて反応助剤とし、
前記タンニンを前記綿に結合させた
ことを特徴とする海水中金属の捕集材。
【請求項4】
請求項3に記載の海水中金属の捕集材において、
前記担体は、
前記綿の重量の10倍から100倍の量の水に、前記綿の重量の1.0倍から4.0倍の量のタンニンを溶解し、タンニンが溶解した水溶液に塩化ナトリウムを添加して溶液とし、加熱された溶液に前記綿が浸漬されると共に、浸漬後の前記綿が乾燥されて形成される
ことを特徴とする海水中金属の捕集材。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の海水中金属の捕集材において、
吸着する前記金属は海水中のウランである
ことを特徴とする海水中金属の捕集材。
【請求項1】
アルカリ塩からなる反応助剤を用いて有機高分子化合物の担体にタンニンを結合させ、海水中の金属を吸着させる
ことを特徴とする海水中金属の捕集材。
【請求項2】
請求項1に記載の海水中金属の捕集材において、
前記有機高分子化合物は、セルロースであり、
前記アルカリ塩は、ナトリウム塩である
ことを特徴とする海水中金属の捕集材。
【請求項3】
請求項2に記載の海水中金属の捕集材において、
前記セルロースとして綿を用いて担体とし、
前記ナトリウム塩として塩化ナトリウムを用いて反応助剤とし、
前記タンニンを前記綿に結合させた
ことを特徴とする海水中金属の捕集材。
【請求項4】
請求項3に記載の海水中金属の捕集材において、
前記担体は、
前記綿の重量の10倍から100倍の量の水に、前記綿の重量の1.0倍から4.0倍の量のタンニンを溶解し、タンニンが溶解した水溶液に塩化ナトリウムを添加して溶液とし、加熱された溶液に前記綿が浸漬されると共に、浸漬後の前記綿が乾燥されて形成される
ことを特徴とする海水中金属の捕集材。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の海水中金属の捕集材において、
吸着する前記金属は海水中のウランである
ことを特徴とする海水中金属の捕集材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2012−172163(P2012−172163A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32566(P2011−32566)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000173809)一般財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000173809)一般財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】
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