説明

海水浄化システム

【課題】作業員が安全に作業を行なうことが出来て、且つ、海水を浄化する作業効率を向上することが出来る海水浄化システムの提案。
【解決手段】船上に、汚染物質(例えば、放射性物質)を含有する海水を供給して吸着材又は置換反応剤と混合する攪拌装置(1)と、海水と吸着材又は置換反応剤とを分離する分離装置(4)と、能力が低下した吸着材又は置換反応剤を貯蔵する貯蔵装置(5)と、貯蔵装置(5)内で海水を濾過して吸着材又は置換反応剤を分離する濾過装置(5f)を備え、攪拌装置(1)は、その内部で回転する攪拌用パドル(12p)を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染物質(例えば、放射性物質であるセシウム等)を包含する海水から汚染物質を除去して、浄化する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
海水から汚染物質を除去して浄化する技術は、従来から数多く提案されている。例えば、重金属に汚染された海水にケイ酸塩を添加して不溶性の塩を生成し、凝集剤を添加して、凝集物を海水から分離することにより、海水を清浄化する技術が存在する(特許文献1参照)。
しかし、近年、汚染物質の種類が非常に多岐に亘っており、非常に毒性の強い汚染物質や各種放射性物質等が海水を汚染する事例が発生している。その様な非常に毒性の強い汚染物質や各種放射性物質等が海水を汚染している場合には、浄化作業に当たる作業員が海水に接触すると、作業員の身体に毒性の強い汚染物質が付着してしまう恐れがある。
また、海水が放射性物質により汚染されている場合には、海水に接触した作業員が被爆してしまう危険が高まる。
【0003】
さらに、従来の技術においては、海水浄化作業により生じた廃棄物(例えば、汚染物質を吸着した吸着材や、凝集された汚染物質等)を処理するのは、作業員による手作業で行なわれる場合が多い。
毒性の強い汚染物質(放射性物質等も含む)の場合には、係る廃棄物中に高純度の汚染物質が存在するため、作業員が手作業で処理することは極めて危険である。特に、汚染物質がセシウム等の放射性物質である場合には、作業員が被爆する可能性が高い。
【0004】
これに加えて、海水を浄化する場合には、浄化処理するべき液体(海水)の量が膨大であるため、海水から汚染物質を除去する効率を高くしないと、海水浄化の実効性を図ることが出来ない。
しかし、上述した従来技術(特許文献1参照)では、ケイ酸塩或いは凝集剤を海水と効率的に反応させるための手法について、明示はされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−31229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、作業員が安全に作業を行なうことが出来て、且つ、海水を浄化する作業効率を向上することが出来る海水浄化システムの提案を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の海水浄化システムは、船上に、汚染物質(例えば、放射性物質)を含有する海水を汲み上げて吸着材(例えば、ゼオライト)又は置換反応剤(例えば、フェロシアン化鉄)と混合する攪拌装置(攪拌ミキサー1)と、海水と吸着材又は置換反応剤とを分離する分離装置(サイクロン分級機4)と、能力(吸着材であれば汚染物質を吸着する能力、置換反応剤であれば汚染物質を吸着して無害化せつめる反応を起こす能力)が低下した吸着材又は置換反応剤を貯蔵する貯蔵装置(ゼオライト回収槽5)と、貯蔵装置(5)内で海水を濾過して吸着材又は置換反応剤を分離する濾過装置(ゼオライト回収槽5に内蔵された微粒子用フィルター5f)を備え、
攪拌装置(1)は、その内部で回転する攪拌用パドル(1c)を有し、攪拌用パドル(1c)の回転方向(例えば、平面図における時計方向)は攪拌装置(1)内に供給された汚染物質を含有する海水が攪拌装置(1)内を旋回する方向(例えば、平面図における反時計方向)と逆方向であることを特徴としている。
【0008】
本発明において、前記攪拌装置(1)と、分離装置(4)と、貯蔵装置(5)と、貯蔵装置(5)内の濾過装置(ゼオライト回収槽5に内蔵された微粒子用フィルター5f)から構成されるシステム(100)を、船上で複数配置して、複数のシステム(100A、100B)間で運転切換可能に構成することが好ましい。
【0009】
また本発明において、分離装置(4)で分離された海水中に残存する汚染物質を除去する凝集沈殿機構(攪拌反応槽10及び凝集沈殿槽12)と、分離装置(サイクロン分級機4)で分離された海水を凝集沈殿機構(10、12)に供給する配管(L10)と、当該配管(L10)に介装されて当該管路を流過する海水に包含される汚染物質(例えば、放射性物質)の濃度を計測する濃度計測装置(濃度センサ、ガイガー=ミュラー計数管:いわゆるガイガーカウンターGC)を備えているのが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
上述する構成を具備する本発明によれば、攪拌装置(1)によって、浄化する対象である海水(例えば放射性物質等の汚染物質を含有する海水)と吸着材(例えば、ゼオライト)又は置換反応剤(例えば、フェロシアン化鉄等のフェロシアン化金属)を混合、攪拌することにより、海水中に包含される放射性物質等の汚染物質がゼオライトの様な吸着材に吸着されて除去される。
発明者の研究によれば、特にゼオライトは、セシウムの様な放射性物質を良好に吸着して、海水中から分離、除去する性質が優れている。また、置換反応剤は放射性物質を吸着して、無害化する能力を有している。ここで、置換反応剤としては、フェロシアン化鉄、フェロシアン化カリウム、フェロシアン化ニッケル、フェロシアン化コバルトの様なフェロシアン化物が、海水中の放射性物質を吸着して、無害化する性質が優れているので好適である。
そのため、放射性物質等の汚染物質を含有する海水から、効率的に、汚染物質を除去することが出来る。
なお、上述したフェロシアン化鉄等としては、粒子状に形成されたものが望ましいが、攪拌装置(1)内で海水と混合、攪拌することが出来る形状であれば、粒子状に形成されていなくても良い。
【0011】
ここで、本発明では攪拌装置(1)内で回転する攪拌用パドル(1c)の回転方向(例えば、平面図における時計方向Fp)は攪拌装置(1)内に供給された汚染物質を含有する海水が攪拌装置(1)内を旋回する方向(例えば、平面図における反時計方向Fw)と逆方向である様に構成すれば、攪拌用パドル(1c)の回転方向下流側に乱流が発生し、或いは、渦(Fr)が発生するので、攪拌装置(1)内に供給された海水(汚染物質を包含する海水)と吸着材又は置換反応剤とが均一に且つ良好に混合される。その結果、海水中の汚染物質が吸着材又は置換反応剤の表面に接触する可能性が極めて高くなり、吸着材の吸着効率又は置換反応剤による吸着・反応効率が向上する。
そのため、本発明によれば、処理するべき海水量が膨大であっても、効率良く汚染物質を除去することができるので、海水処理の実効性を高めることが出来る。
【0012】
本発明によれば、攪拌装置(1)と、分離装置(4)と、吸着能力が低下した吸着材を貯蔵する貯蔵装置(5)と、貯蔵装置(5)内部に設けられた濾過装置(フィルター5f)は、全て船(200)上に配置されている。
そのため、例えば、汚染された海水をオイルフェンスその他の遮蔽手段により海中で分離し、遮蔽手段で分離された汚染された海水の領域周辺部に本発明の構成(100A、100B)を配置した船(200)を係留し、ポンプ(200P)その他の公知手段により、遮蔽手段で分離された領域から汚染された海水を攪拌装置(1)に供給することが可能である。
その様にすれば、汚染された海水の拡散の防止と、汚染物質の除去を同時に行うことが出来る。
【0013】
また、本発明によれば、海水と吸着材を分離する分離装置(4)と、吸着能力が低下した吸着材を貯蔵する貯蔵装置(5)と、吸着材貯蔵装置(5)内部に設けられた濾過装置(フィルター5f)を備えているので、放射性物質等の汚染物質を除去される以前の海水や、海水から除去された汚染物質は、大気中に開放されること無く、閉鎖されたシステム内で処理される。
そのため、放射性物質等の汚染物質を除去される以前の海水や、海水から除去された汚染物質に、作業員が接触する恐れがなく、海水が放射性物質により汚染されていても作業員が被爆してしまうことを防止することが出来る。
特に、放射性物質等の汚染物質を十分に吸着して吸着能力が低下した吸着材(ゼオライト等)や、放射性物質等の汚染物質と十分に反応して吸着・反応する能力が低下した置換反応剤は貯蔵装置(5)に貯留されるので、例えば遠隔操作により作業用ロボットで貯蔵装置(5)内の吸着材又は置換反応剤を処理することにより、浄化作業に当たる作業員の身体に毒性の強い汚染物質が付着してしまうことが防止される。そして、海水が放射性物質により汚染されている場合に、作業員が被爆してしまう恐れがない。
【0014】
本発明において、前記攪拌装置(1)と、分離装置(4)と、貯蔵装置(5)と、吸着材貯蔵装置(5)内の濾過装置(ゼオライト回収槽5に内蔵された微粒子用フィルター5f)から構成されるシステム(100A、100B)を、船(200)上で複数配置して、複数のシステム(100A、100B)間で運転切換可能に構成すれば、例えば、貯蔵装置(5)の容量の限界まで吸着材又は置換反応剤が貯留された場合等に、それまで稼動されていたシステムを停止して、それまで稼動していなかったシステムを稼動させて、停止したシステムにおいて、貯蔵装置(5)に貯留された吸着材又は置換反応剤(汚染物質を十分に吸着した吸着材、又は、放射性物質等の汚染物質と十分に反応した置換反応剤)の処理を行うことが出来る。
それにより、貯蔵装置(5)に貯留された吸着材(汚染物質を十分に吸着した吸着材、又は、放射性物質等の汚染物質と十分に反応した置換反応剤)を処理する間も、汚染された海水の浄化を連続して行うことが出来る。
【0015】
また本発明において、分離装置(サイクロン分級機4)で分離された海水を凝集沈殿機構(10、12)に供給する配管(L10)に、汚染物質(例えば、放射性物質)の濃度を計測する濃度計測装置(濃度センサ、ガイガーカウンターの様な放射線量計測器GC)を介装すれば、濃度計測装置(GC)の測定値が基準値(しきい値)よりも低ければ、吸着材又は置換反応剤の能力が低下しておらず、吸着材又は置換反応剤の能力が十分に汚染物質を吸着又は反応していると判断することが出来る。例えば、吸着材又は置換反応剤がゼオライト(吸着材)であれば、濃度計測装置(GC)の測定値が基準値(しきい値)よりも低ければ、ゼオライトの吸着能力は低下しておらず、ゼオライトが十分に汚染物質を吸着していると判断出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態の概要を示す説明図である。
【図2】実施形態のブロック図である。
【図3】実施形態で用いられる攪拌装置の平面図である。
【図4】実施形態の作動手順を示すフローチャートである。
【図5】実施形態で用いられる凝集沈殿槽の断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。最初に図1を参照して、本発明の実施形態の概要について説明する。
図1において、海水が汚染されている海域を含む海洋Sの洋上に、浄化処理船200が係留されている。ここで、海洋Sにおいて、汚染された海域は、オイルフェンスOFによって、清浄な海域と分離・区画されている。
図1で示す様に、浄化処理船200には、本発明の実施形態に係る海水浄化システム100A、100Bが搭載されている。そして浄化処理船200は、クレーン200Kと、揚水ポンプ200Pを装備している。
揚水ポンプ200Pはクレーン200Kの先端から、ケーブル200Cによって海中に吊り下ろされている。揚水ポンプ200Pには、搬送ライン200Lの一端が接続されており、搬送ライン200Lには浄化処理するべき海水が流れる。搬送ライン200Lは2本に分岐して、それぞれが海水浄化システム100A、100Bに接続しており、海水浄化システム100Aに連通する分岐ラインには開閉弁20AVが介装され、海水浄化システム100Bに連通する分岐ラインには開閉弁20BVが介装されている。
【0018】
後述するように、海水浄化システム100A、100Bは、吸着材(ゼオライト)の吸着能力が低下すると、揚水ポンプ200Pで汲み上げられた浄化処理するべき海水を連続的に処理することが出来なくなる。
そのため、海水浄化システム100A、100Bの交互に稼動して、揚水ポンプ200Pで汲み上げられた浄化処理するべき海水が、海水浄化システム100A、100Bの何れか一方で浄化される様に構成されている。
海水浄化システム100Aを稼動する場合には、開閉弁20AVが開放され、開閉弁20BVが閉鎖され、浄化処理するべき海水は海水浄化システム100Aに供給される。その場合、海水浄化システム100Bでは、吸着能力が低下した吸着材を回収する。
海水浄化システム100Bを稼動する場合には、開閉弁20BVが開放され、開閉弁20AVが閉鎖され、浄化処理するべき海水は海水浄化システム100Bに供給される。そして海水浄化システム100Aでは、吸着能力が低下した吸着材を回収する。
【0019】
次に、図2〜図4を参照して、図1で示す海水浄化システム100A、100Bについて説明する。
ここで、図1における海水浄化システム100A、100Bは、その稼動時期が異なるだけで、構成、作用効果は同一である。
図2〜図4において、図1における海水浄化システム100A、100Bは、説明の簡略化のため、符号100で表現する。
図2において、全体を符号100で示す海水浄化システムは、攪拌ミキサー1と、サイクロン分級機4と、ゼオライト回収槽5と、真空タンク6と、ブロワ7と、冷却用補給水タンク8と、攪拌反応槽10と、凝集沈殿槽12と、上澄み水槽14を備えている。
また海水浄化システム100は、スラリーポンプ3、9と、チューブポンプ13を備えている。
【0020】
攪拌ミキサー1は、攪拌槽本体1aと、吸入口1iと、攪拌機1bと、攪拌機に設けた攪拌用パドル1cと、排出口1oとを有している。そして攪拌ミキサー1には、ゼオライト供給機2が設けられている。
浄化処理するべき海水(図1における揚水ポンプ200Pで汲み上げられた海水)は、攪拌ミキサー1の吸入口1iから攪拌ミキサー1内に投入される。攪拌ミキサー1内には、ゼオライト供給機2から定量的に、吸着材であるゼオライトが供給される様に構成されている。
ここで、吸着材であるゼオライトのみならず、置換反応剤をミキサー1内に投入することも好適である。置換反応剤は放射性物質を吸着して、無害化する能力を有しているからである。置換反応剤としては、フェロシアン化鉄、フェロシアン化カリウム、フェロシアン化ニッケル、フェロシアン化コバルトの様なフェロシアン化物が、海水中の放射性物質を吸着して、無害化する性質が優れている。
また、ミキサー1内に投入される吸着材(例えばゼオライト)や置換反応剤(フェロシアン化鉄等)としては、粒子状に形成されたものが望ましい。ただし、ミキサー1内で海水と混合、攪拌することが出来る形状であれば、粒子状でなくても良い。
【0021】
攪拌ミキサー1の平面構造が図3で示されている。
図3において、攪拌ミキサー1の吸入口1iは攪拌槽本体1a外周に設けられており、吸入口1iの右端が攪拌槽本体1aの外周面に接続されている。そして、全体が円形の攪拌槽本体1aの接線方向に、吸入口1iは延在している。
吸入口1iが係る態様で攪拌槽本体1aの外周面に接続されているため、吸入口1iを介して攪拌槽本体1a内に流入した海水Fwi(浄化処理されるべき海水)は、攪拌槽本体1a内で、反時計回りに旋回する(矢印Fw方向)。
【0022】
図3において、攪拌機1bに設けた3本の攪拌用パドル1cは、時計回り(矢印Fp:海水Fwiの旋回方向とは逆方向)に回転する様に構成されている。攪拌用パドル1cの回転方向(時計回り:矢印Fp方向)と、海水Fwiの旋回方向(反時計回り:矢印Fw方向)とが逆方向であるため、攪拌槽本体1a内では、渦流(或いは乱流)Frが発生する。係る渦流(或いは乱流)Frが攪拌槽本体1a内で発生する結果、浄化処理するべき海水とゼオライトとが良好に混合され、接触する頻度が高くなる。そして、海水に含まれる放射性汚染物質(例えばセシウム)は、攪拌槽本体1a内で、良好にゼオライトへ吸着される。
ゼオライト供給機2(図2参照)から攪拌槽本体1a内に所定量のゼオライトが供給されるのは、海水Fwiが攪拌槽本体1a内に流入するのと同時である。
【0023】
図2において、攪拌ミキサー1の上部にサイクロン分級機4が据え付けられている。サイクロン分級機4の下方は開放されており、攪拌ミキサー1内部の攪拌槽本体1aに連通している。
攪拌ミキサー1の排出口1oは、開閉弁V1を介装したラインL1が接続されている。ラインL1は、スラリーポンプ3の吸入側に連通している。スラリーポンプ3の吐出側は、ラインL3を介して、サイクロン分級機4の吸入口4iと接続されている。
ここでラインL1は、攪拌ミキサー1の排出口1oと開閉弁V1の間の領域で分岐しており、分岐ラインL2は開閉弁V2を介装しており、ゼオライト回収槽5の吸入口5iと連通している。
【0024】
ゼオライト回収槽5の内部にはフィルター5fが設けられ、フィルター5fは円筒状で下端が閉塞している。
ゼオライト回収槽5にはゼオライト及び海水が投入される。ここで、ゼオライト回収槽5に投入されるゼオライトは、海水に含まれていた放射性汚染物質(例えばセシウム)を十分に吸着して、吸着能力が低下した状態となっている。そして、ゼオライト回収槽5に投入される海水は、セシウムの様な放射性汚染物質が大部分除去された状態になっている。
フィルター5fは、当該海水を透過して、放射性汚染物質(セシウム)を吸着させたゼオライトを濾し摂り、以って、海水とゼオライトとを分離する。
【0025】
ゼオライト回収槽5の排出口5oは、ラインL4を介して、真空タンク6の吸入口6iに連通している。ゼオライト回収槽5の下流側に真空タンク6を配置することにより、円筒状のフィルター5fを下流側から真空引きをするためである。
真空タンク6の上端に設けられた第1の排出口6o1と、ブロワ7の吸入側は、ラインL5により接続されている。ブロワ7を稼動することにより、真空タンク6内を真空状態に保つことが出来る。
ここで、ブロワ7は水冷式であり冷却用補給水タンク8の水によって冷却されている。ブロワ7を水冷式にすることにより、ブロワ7の容量を大きくして、長時間稼動することが出来る様に構成されている。以って、真空タンク6を真空に保つことが出来る。なお、ブロワ7の排気は大気に放出される。
ブロワ7にはラインL6が接続しており、ラインL6は冷却用補給水タンク8の吸入口8iに接続している。そして、ラインL6には、ブロワ7からの冷却水が流過する。冷却用補給水タンク8の排出口8oは、ラインL7を介してブロワ7の冷却水の吸入側に連通している。
【0026】
真空タンク6の下端に設けられた第2の排出口6o2は、ラインL8を介して、スラリーポンプ9の吸入口9iに連通している。スラリーポンプ9の吐出口9oは、ラインL9を介して、攪拌反応槽10の吸入口10iに連通しており、ラインL9には開閉弁V3が介装されている。
これにより、真空タンク6に貯留された海水(概略浄化された海水)は、ラインL8、スラリーポンプ9、ラインL9を経由して、攪拌反応槽10に搬送される。
【0027】
図2において、攪拌ミキサー1の上部に据え付けられたサイクロン分級機4は、その排出口4oが、ラインL10を介して、攪拌反応槽10の吸入口10iに連通している。ラインL10には、ガイガー計測器GCが介装されており、ガイガー計測器GCは、放射性汚染物質(例えばセシウム)の濃度を計測する機能を有している。
攪拌ミキサー1内でゼオライトと共に攪拌された海水は、汚染物質である放射性物質がゼオライトに吸着されるため、概略浄化された状態となる。概略浄化された海水は、サイクロン分級機4でゼオライトと分離して、ラインL10を経由して攪拌反応槽10に移送される。
図示はされていないが、ラインL10に移送用のスラリーポンプを介装しても良い。
【0028】
攪拌反応槽10は凝集沈殿槽12に隣接しており、攪拌反応槽10の近傍には吸着凝集剤定量供給機11が配置され、吸着凝集剤定量供給機11から攪拌反応槽10に定量の吸着凝集剤が供給される様に構成されている。
攪拌反応槽10の排出口10oは、凝集沈殿槽12の投入口12iに連通している。
攪拌反応槽10において、サイクロン分級機4から移送された海水に、吸着凝集剤定量供給機11から吸着凝集剤が供給され、攪拌機10mによって攪拌される。攪拌反応槽10に供給された吸着凝集剤には、海水に残存する放射性汚染物質が吸着して、凝集する。
放射性汚染物質が吸着して凝集した吸着凝集剤と海水の混合物は、所定のサイクルで凝集沈殿槽12に移される。
【0029】
凝集沈殿槽12において、放射性汚染物質が吸着して凝集した吸着凝集剤と海水の混合物が所定時間滞留し、上澄みと沈殿物(スラリー)とに分離する。
凝集沈殿槽12は、沈殿物押出し用のスクリュー12Sと、第1の排出口12o1と、第2の排出口12o2を備えている。
沈殿物押出し用のスクリュー12Sは、凝集沈殿槽12の底部近傍の全長に亘って設けられている。第1の排出口12o1は、凝集沈殿槽12の比較的上方の領域に配置され、上澄液を排出する様に構成されている。第2の排出口12o2は凝集沈殿槽12の底部に配置されており、沈殿物押出し用のスクリュー12Sで押し出された沈殿物は、第2の排出口12o2を介して凝集沈殿槽12から排出される。
凝集沈殿槽12の第2の排出口12o2は、ラインL11を介してチューブポンプ13の吸入側に連通しており、ラインL11には開閉弁V4が介装されている。そしてチューブポンプ13の吐出側は、ラインL12を介して、ゼオライト回収槽5の吸入口5iに接続されている。
【0030】
凝集沈殿槽12の第1の排出口12o1は、ラインL13を介して上澄み水槽14に連通している。
上澄み水槽14の底部にはポンプPが配置され、上澄み水槽14内に貯留している上澄液(浄化された海水)が所定量以上になったなら、ラインL14を介して、上澄液(浄化された海水)を海洋Sに戻すように構成されている。
ここで、攪拌反応槽10でゼオライトにより放射性汚染物質が吸着され、残存する汚染物質も攪拌反応槽10で供給される吸着凝集剤によって吸着され、凝集する。そのため、ラインL14を介して海洋Sに戻される海水は、十分に浄化されており、汚染物質濃度は各種基準を下回る程度まで低下している。
【0031】
図2を参照して、海水の浄化処理について、処理工程順に説明する。
図2において、汚染された海水は、海水浄化システム100の攪拌ミキサー1の攪拌槽1a内に汲み上げられる。攪拌ミキサー1に継続的に汲み上げられた所定量の海水に、ゼオライト供給機2から定量のゼオライトが供給され、攪拌機1bが回転する。
攪拌槽本体1aに海水が流入するのと同時に攪拌機1bを回転すれば、攪拌槽本体1aに流入した海水の旋回方向と攪拌機1bの回転方向が逆方向であるため(図3参照)、攪拌槽本体1aの海水の旋回流において、攪拌用パドル1cの下流側に乱流或いは渦Frが発生し、海水とゼオライトが効率的に混合、攪拌され、海水中の汚染物質がゼオライトに吸着する効率が向上する。
この際に、ラインL1、ラインL2に介装された開閉バルブV1、V2は、共に閉鎖している。
【0032】
攪拌機1bによる海水とゼオライトの攪拌が所定時間行なわれると、ラインL1の開閉バルブV1が開放され、スラリーポンプ3が稼動する。ラインL2の開閉バルブV2は閉鎖している。
攪拌槽1a内において、攪拌が進むにつれて、海水中の放射性汚染物質(例えばセシウム)はゼオライトに吸着する。
スラリーポンプ3が稼動し、バルブV1が開放されていると、汚染物質を吸着したゼオライトと海水は、ラインL3を経由して、サイクロン分級機4に移送される。(汚染物質を吸着させた)ゼオライトと海水は、サイクロン分級機4で分離される。
サイクロン分級機4で分離された海水は概ね浄化されており、ラインL10を経由して攪拌反応槽10に移送される。一方、汚染物質を吸着させたゼオライトは、サイクロン分級機4から攪拌槽本体1a内に戻される。
上述のサイクル(開閉バルブV1が開放され、開閉バルブV2は閉鎖している場合のサイクル)は、ゼオライトの吸着能力が低下していない間は継続する。
【0033】
概ね浄化された状態で攪拌反応槽10に移送された海水には、吸着凝集剤定量供給機11から吸着凝集剤が供給されて、所定時間、攪拌機10mにより攪拌される。これにより、攪拌反応槽10内の海水に残存する放射性汚染物質は、吸着凝集剤により吸着・凝集される。すなわち、海水は更に浄化される。
攪拌終了後(所定時間が経過したならば)、放射性汚染物質を吸着・凝集した吸着凝集剤と海水の混合物は、凝集沈殿槽12に移される。
凝集沈殿槽12に移された処理液、すなわち、放射性汚染物質を吸着・凝集した吸着凝集剤と海水の混合物は、所定時間、凝集沈殿槽12内に滞留する。内に滞留している間に、放射性汚染物質を吸着・凝集した吸着凝集剤は沈殿して沈殿物(スラリー)となり、上澄液(浄化された海水)とは分離される。
【0034】
凝集沈殿槽12の沈殿物(スラリー:放射性汚染物質を吸着・凝集した吸着凝集剤)は、第2の排出口12o2から、ラインL11、チューブポンプ13、ラインL12を経由して、ゼオライト回収槽5に戻される。
ゼオライト回収槽5内における放射性汚染物質を十分に吸着したゼオライトと、放射性汚染物質を吸着・凝集した吸着凝集剤は、例えば、マニュピレータ等を遠隔操作して、作業員が放射線で被爆しないような態様にて、格納エリア(図示せず)に格納処理される。
凝集沈殿槽12で放射性汚染物質を吸着・凝集した吸着凝集剤から分離された上澄液、すなわち浄化の完了した海水(浄化海水)は、上澄み水槽14内に貯留される。そして、上澄み水槽14内の浄化された海水の容量がしきい値(所定量)を超えると、ポンプPが稼動してラインL14経由で海洋Sに戻される。
上述した様に、ラインL14経由で海洋Sに戻される海水は、攪拌反応槽10でゼオライトにより放射性汚染物質が吸着され、残存する汚染物質も攪拌反応槽10で供給される吸着凝集剤によって吸着され、凝集しているので、汚染物質濃度は各種基準を下回る程度まで低下している。
【0035】
次に、ゼオライトの吸着能力が低下したか否かの判断と、吸着能力が低下したゼオライトを処理する作業の手順について、図4に基づいて、図1、図2をも参照して説明する。
図4のステップS1では、海水浄化システム100を稼動する。図1において、例えば海水浄化システム100Aを稼動する。その際には、海水浄化システム100Bは停止する。
図4のステップS2では、ラインL1(図2)に介装した開閉弁V1を開放し、ラインL2に介装した開閉弁V2を閉鎖する。
【0036】
図4において、ステップS3では、ラインL10(図2)に介装されたガイガー計測器GCで、ラインL10内を移送される海水における放射性汚染物質濃度を計測する。そしてステップS4において、放射性汚染物質濃度が所定値以下であるか否かを判断する。
放射性汚染物質濃度が所定値以下であれば(ステップS4がYES)、ステップS5に進む。一方、放射性汚染物質濃度が所定量を越えていれば(ステップS4がNO)、ステップS7まで進む。
【0037】
放射性汚染物質濃度が所定値以下であれば(ステップS4がYES)、ゼオライトが放射性汚染物質を吸着する能力が未だに維持されている(ゼオライトの吸着能力が低下していない)と判断して、ラインL1に介装した開閉弁V1を開放し、ラインL2に介装した開閉弁V2を閉鎖した状態を続行する(ステップS5)。
ラインL1に介装した開閉弁V1を開放し、ラインL2に介装した開閉弁V2を閉鎖した状態(ステップS5の状態)では、攪拌ミキサー1から海水及びゼオライトがサイクロン分級機4に移送され、サイクロン分級機4内で放射性汚染物質(セシウム)を吸着させたゼオライトと、概ね浄化された海水が分離される。そして、概ね浄化された海水は攪拌反応槽10に移送され、放射性汚染物質(例えばセシウム)を吸着させたゼオライトは攪拌ミキサー1へ戻される。
そして、ステップS6に進み、ゼオライトの吸着能力が低下したか否かの判断と、吸着能力が低下したゼオライトを処理する作業の手順を終了するか否かを判断する。ゼオライトの吸着能力が低下したか否かの判断と、吸着能力が低下したゼオライトを処理する作業の手順を続行するのであれば(ステップS6がNO)、ステップS3まで戻り、ステップS3以降を繰り返す。
【0038】
ラインL10内を移送される海水における放射性汚染物質濃度が所定量を越えている場合(ステップS4がNO)には、ゼオライトの吸着能力が低下したと判断して、ステップS7に進む。
ステップS7では、ラインL1の開閉弁V1を閉鎖して、ラインL2の開閉弁V2を開放する。その結果、図2において、攪拌ミキサー1から排出された海水及び放射性汚染物質を吸着させたゼオライトは、ラインL2経由でゼオライト回収槽5に移送される。そして、ゼオライト回収槽5内に流入した海水は、真空タンク6によって真空引きされ、ラインL4、真空タンク6、ラインL8、スラリーポンプ9、ラインL9を経由して、攪拌反応槽10に送られる。
一方、放射性汚染物質を十分に吸着して吸着性能が低減したゼオライトは、ゼオライト回収槽5内に貯留される。
【0039】
ステップS8では、ゼオライト回収槽5が、その容量の限界まで、放射性汚染物質を十分に吸着して吸着性能が低減したゼオライトが貯留しているか否かを判断する(ゼオライト回収槽5が一杯か?)。
ゼオライト回収槽5が一杯になっていなければ(ステップS8がNO)ステップS9に進み、放射性汚染物質を十分に吸着して吸着性能が低減したゼオライトが、全量、ゼオライト回収槽5に貯留されたか否かを判断する。
放射性汚染物質を十分に吸着して吸着性能が低減したゼオライトが、全量、ゼオライト回収槽5内に貯留するまで、開閉弁V1を閉鎖し、開閉弁V2を開放して、海水及びゼオライトをゼオライト回収槽5に移送し続ける(ステップS9がNOのループ)。
放射性汚染物質を十分に吸着して吸着性能が低減したゼオライトが、全量、ゼオライト回収槽5内に貯留されたならば(ステップS9がYES)、ゼオライト供給機2から攪拌ミキサー1に、新たなゼオライト(吸着性能が高いゼオライト)を供給する(ステップS10)。そして、ステップS2に戻る。
【0040】
ゼオライト回収槽5が、その容量の限界まで、放射性汚染物質を十分に吸着して吸着性能が低減したゼオライトを貯留したならば(ステップS8がYES)、海水浄化システム100の運転を切り換える(ステップS11)。すなわち、ステップS1において稼動していた海水浄化システム100A(図1参照)を停止して、停止していた海水浄化システム100B(図1参照)を稼動する。
そして、ゼオライト回収槽5に貯留しているゼオライト(放射性汚染物質を十分に吸着して吸着性能が低減したゼオライト)を、例えば、マニュピレータ等のロボットハンドを遠隔操作して、作業員が放射線で被爆しないような格納エリアに格納処理する(ステップS12)。
ゼオライト回収槽5に貯留しているゼオライトの全量を、格納エリアに格納処理したならば(ステップS13がYES)、ステップS6に進む。
なお、ゼオライト回収槽5に貯留しているゼオライトを格納処理した後(ステップS13の後)、ゼオライト回収槽5内のフィルター5fを交換することが出来る。
【0041】
図4では示されていないが、ステップS11を省略し、ステップS12の際に、開閉弁V1を開放して、開閉弁V2を閉鎖しても良い。
その様に構成すれば、ゼオライト回収槽5が、その容量の限界まで、放射性汚染物質を十分に吸着して吸着性能が低減したゼオライトを貯留した際に(ステップS8がYES)、ステップS1で作動している海水浄化システム100Aを停止せず、稼動し続ける。そして、ゼオライト回収槽5に貯留しているゼオライト(放射性汚染物質を十分に吸着して吸着性能が低減したゼオライト)を、格納エリアに格納処理している間には、海水及びゼオライトがゼオライト回収槽5には移送されずに、サイクロン分級機4に送られ、ゼオライトは攪拌ミキサー1へ戻される。
【0042】
図5は、凝集沈殿槽12の詳細を示している。図5において、凝集沈殿槽12は、図2を参照して上述した様に、投入口12iと、沈殿物押出し用のスクリュー12Sと、第1の排出口12o1と、第2の排出口12o2を備えている。
投入口12iの近傍には、仕切板122が配置されており、仕切板122近傍で投入口12i側の領域にはレベルセンサ124が配置されている。仕切板122よりも排出口12o1、12o2に近い側は分離スペース12UWとなっており、凝集沈殿槽12に流入した水を上澄水と沈殿物或いはスラリーDSに分離している。すなわち、分離スペース12UWの上方の領域には上澄水が貯留し、下方の領域には、放射性物質のような汚染物を吸着して凝集した吸着凝集剤が沈殿する。
【0043】
凝集沈殿槽12で上澄水が貯留している箇所には上澄水取水部126−1〜126−4が設けられており、上澄水取水部126−1〜126−4は第1の排出口12o1に連通している。
図5において、符号12ISは投入スペースであり、上澄水と沈殿物DSに分離する以前の段階で、投入口12iから凝集沈殿槽12に投入された水が貯留している。また、符号122eは仕切板122の下端部を示している。
【0044】
明確には図示されてはいないが、スクリュー12Sの駆動源(例えば電動モータ)と、レベルセンサ124は制御ユニット(図示せず)に接続されており、図示しない制御ユニットには図示しない計時装置(タイマ)を有している。
図5で示す凝集沈殿槽12によれば、レベルセンサ124で投入スペース12ISの液位(レベル)を計測し、投入スペース12ISの液位が上限を上回った場合には、スクリュー12Sを駆動して、凝集沈殿槽12に沈殿した沈殿物DSを、第2の排出口12o2から排出している。そして、図示しない計時装置(タイマ)により、スクリュー12Sの駆動を開始してから予め設定された時間が経過したことが計時されたならば、スクリュー12Sを停止して、第2の排出口12o2から沈殿物DSを排出することを停止している。
【0045】
図5で示すように、凝集沈殿槽12に沈殿した沈殿物DSが、仕切板122の下端部122eを越える程度まで堆積してしまうと、投入スペース12ISに貯留した水が分離スペース12UWに移動するための間隔がなくなってしまい、上澄水と沈殿物或いはスラリーDSに分離することが困難になる。
ここで、投入スペース12ISには、攪拌反応槽10から凝集沈殿剤と水の混合物が流入し続けるので、沈殿物DSが仕切板122の下端部122eを越える程度まで堆積すると、投入スペース12ISの液位が上昇する。
沈殿物DSが仕切板122の下端部122eを越える程度まで堆積した場合における投入スペース12ISの液位を「上限」と設定すれば、沈殿物DSが仕切板122の下端部122eを超えると、投入スペース12ISの液位が「上限」よりも上昇し、レベルセンサ124の検知信号により、スクリュー12Sが駆動する。
【0046】
スクリュー12Sが駆動すると、沈殿物DSは第2の排出口12o2から排出される。そして、沈殿物DSがスクリュー12Sにより凝集沈殿槽12外に排出されると、仕切板122の下端部122eの下方の領域に、投入スペース12ISに貯留した水が分離スペース12UWに移動するための間隔が確保され、上澄水と沈殿物或いはスラリーDSに分離することが出来る。
スクリュー12Sを駆動してから停止するまでの「予め設定された時間」は、投入スペース12ISに貯留した水が分離スペース12UWに移動するのに十分な間隔が仕切板122下方に確保される程度まで、沈殿物DSがスクリュー12Sにより凝集沈殿槽12外に排出されるのに十分な時間として設定される。
【0047】
図5において、沈殿物DSをスクリュー12Sにより凝集沈殿槽12外に排出するタイミングを、レベルセンサ124で投入スペース12ISの液位に基づいて判断すれば、上述した様に、凝集沈殿槽12において上澄水と沈殿物或いはスラリーDSに分離することが保証される。そして、凝集沈殿槽12の連続運転が保証される。
これに対して、凝集沈殿槽12に濁度センサを設けて、沈殿物DSが一定以上沈殿した旨を濁度センサで検知する場合には、濁度センサの感知部にはレンズが用いられているため、沈殿物が当該レンズに付着する等の原因により、使用不能になってしまう場合が多い。図5で示す凝集沈殿槽12であれば、その様な不都合は生じない。
【0048】
図示の実施形態によれば、攪拌ミキサー1によって、浄化する対象である海水(例えば放射性物質等の汚染物質を含有する海水)と吸着材(例えば、ゼオライト)を混合、攪拌することにより、海水中に包含される放射性物質(例えばセシウム)等の汚染物質がゼオライトに吸着されて除去される。
そのため、放射性物質等の汚染物質を含有する海水から、効率的に、汚染物質を除去することが出来る。
これに加えて、海水に残留した放射性物質等も、凝集沈殿槽12で吸着凝集剤により吸着・凝集するので、海水から放射性物質(例えばセシウム)等の汚染物質が十分に除去される。
【0049】
また、図示の実施形態では、攪拌ミキサー1内で回転する拡販用攪拌用パドル1cの回転方向(例えば、平面図における時計方向Fp)は攪拌ミキサー1内に供給された汚染物質を含有する海水が攪拌ミキサー1内を旋回する方向(例えば、平面図における反時計方向Fw)と逆方向である様に構成してある。そのため、攪拌用パドル1cの回転方向下流側に乱流が発生し、或いは、渦Frが発生し、攪拌ミキサー1内に供給された海水(汚染物質を包含する海水)とゼオライトとが均一に且つ良好に混合される。その結果、海水中の汚染物質がゼオライト表面に接触して吸着される可能性が極めて高くなり、ゼオライトによる汚染物質の除去効率が向上する。
そのため、図示の実施形態によれば、処理するべき海水量が膨大であっても、効率良く汚染物質を吸着、除去することができるので、海水処理の実効性を高めることが出来る。
【0050】
さらに図示の実施形態によれば、攪拌ミキサー1と、サイクロン分級機4と、吸着能力が低下した吸着材を貯蔵するゼオライト回収槽5と、ゼオライト回収槽5内部に設けられたフィルター5fは、全て処理船200上に配置されている。
そのため、例えば、汚染された海水をオイルフェンスその他の遮蔽手段により海中で分離し、遮蔽手段で分離された汚染された海水の領域周辺部に、海水処理システム100A、100Bを搭載した処理船200を係留し、揚水ポンプ200Pその他の公知手段により、遮蔽手段で分離された領域から汚染された海水を攪拌ミキサー1に汲み上げることが可能である。
その様にすれば、汚染された海水の拡散の防止と、汚染物質の除去を同時に行うことが出来る。
【0051】
図示の実施形態によれば、サイクロン分級機4と、吸着能力が低下した吸着材を貯蔵するゼオライト回収槽5と、ゼオライト回収槽5内部に設けられたフィルター5fを備えているので、放射性物質等の汚染物質を除去される以前の海水や、海水から除去された汚染物質は、大気中に開放されることなく、閉鎖されたシステム100内で処理される。
そのため、放射性物質等の汚染物質を除去される以前の海水や、海水から除去された汚染物質に、作業員が接触する恐れがなく、海水が放射性物質により汚染されていても作業員が被爆してしまうことを防止することが出来る。
特に、放射性物質等の汚染物質を十分に吸着して吸着能力が低下したゼオライトはゼオライト回収槽5のフィルター5fに貯留されるので、例えば遠隔操作により作業用ロボットでゼオライト回収槽5内のゼオライト及びフィルター5fを処理することにより、浄化作業に当たる作業員の身体に毒性の強い汚染物質が付着してしまうことが防止される。そして、海水が放射性物質により汚染されている場合に、作業員が被爆してしまう恐れがない。
【0052】
そして図示の実施形態において、攪拌ミキサー1と、サイクロン分級機4と、ゼオライト回収槽5と、ゼオライト回収槽5内のフィルター5fから構成されるシステムを、浄化処理船200上で複数配置して、複数のシステム100A、100B間で運転切換可能に構成しているので、例えば、ゼオライト回収槽5の容量の限界まで、汚染物質を吸着したゼオライトが貯留された場合等に、それまで稼動されていた海水浄化システム(例えば100A)を停止して、それまで稼動していなかった海水浄化システム(例えば100B)を稼動させて、停止したシステムにおいて、ゼオライト回収槽5に貯留されたゼオライト(汚染物質を十分に吸着したゼオライト)を処理することが出来る。
そのため、ゼオライト回収槽5に貯留されたゼオライト(汚染物質を十分に吸着したゼオライト)を処理する間も、汚染された海水の浄化を連続して行うことが出来る
【0053】
これに加えて図示の実施形態では、サイクロン分級機4で分離された海水を攪拌反応槽10に供給する配管L10に、汚染物質(例えば、放射性物質)の濃度を計測する放射線量計測器(ガイガーカウンター)GCを介装している。
そのため、ガイガーカウンターGCの測定値が基準値(しきい値)よりも低ければ、ゼオライトの吸着能力は低下しておらず、ゼオライトが十分に汚染物質を吸着していると判断することが出来る。
【0054】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではない。
例えば、図示の実施形態では、汚染物質として放射性物質(セシウム)を例示したが、それ以外の汚染物質により海洋が汚染された場合についても、本発明を適用することが可能である。
また、図示の実施形態では、ミキサー1に吸着材であるゼオライトを投入しているが、置換反応剤であるフェロシアン化鉄、フェロシアン化カリウム、フェロシアン化ニッケル、フェロシアン化コバルトの様なフェロシアン化物を投入しても良い。その場合、ゼオライト供給機2、ゼオライト回収槽5は、それぞれ、フェロシアン化物の供給機、フェロシアン化物の回収槽として機能することになる。
【符号の説明】
【0055】
1・・・攪拌ミキサー
1c・・・攪拌用パドル
2・・・ゼオライト供給機
3・・・スラリーポンプ
4・・・サイクロン分級機
5・・・ゼオライト回収槽
6・・・真空タンク
7・・・ブロワ
8・・・冷却用歩給水タンク
9・・・スラリーポンプ
10・・・攪拌反応槽
11・・・吸着凝集剤定量供給機
12・・・凝集沈殿槽
13・・・チューブポンプ
14・・・上澄み槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船上に、汚染物質を含有する海水を汲み上げて吸着材又は置換反応剤と混合する攪拌装置と、海水と吸着材又は置換反応剤とを分離する分離装置と、能力が低下した吸着材又は置換反応剤を貯蔵する貯蔵装置と、貯蔵装置内で海水を濾過して吸着材又は置換反応剤を分離する濾過装置を備え、攪拌装置は、その内部で回転する攪拌用パドルを有し、攪拌用パドルの回転方向は攪拌装置内に供給された汚染物質を含有する海水が攪拌装置内を旋回する方向と逆方向であることを特徴とする海水浄化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−250214(P2012−250214A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126892(P2011−126892)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(500148330)
【出願人】(510207678)株式会社バイオメルト (2)
【出願人】(501465850)株式会社パワーりめいく (9)
【Fターム(参考)】