説明

海水浄化システム

【課題】海水から、市場の床などの清掃水と、製氷用水及び魚体の洗浄水を得る。
【解決手段】電解塩素発生装置6により海水から高濃度(100ppm程度)の塩素を含んだ消毒水を製造する。清浄対象の海水を消毒槽8に貯留する。高濃度の塩素を含む消毒水を消毒槽8に供給して、清浄対象の海水を消毒する。消毒された海水の一部を脱塩素装置9に供給し、塩素濃度を0.1ppm程度以下の浄化水を得る。脱塩素装置9によって塩素を除去した浄化水を、製氷施設へ供給して製氷用水として使用する。脱塩素装置9によって塩素を除去した浄化水を、市場や水産加工施設に供給し、魚体の洗浄水として使用する。海水を電解塩素発生装置14に供給して、高濃度の塩素を含んだ海水を作製する。この高濃度の塩素を含んだ海水を、圧力式濾過器4を通した海水に混合して、市場の床などの清掃水として使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水浄化システムに関するものであって、特に、水産市場・水産加工施設の床面その他を清掃するための殺菌作用を有する清掃用水と、製氷用水や魚体の洗浄用水のように滅菌された浄化水とを得ることのできるシステムに係る。
【背景技術】
【0002】
水産市場においては、市場の床面その他の施設の清掃のために、多量の清掃用水が使用される。この清掃用水を得る方法の一つに、特許文献1に記載されるように、海水を電解槽で電気分解することによって生成される次亜塩素酸などの活性塩素種を使用して、海水を消毒殺菌するものがある。
【0003】
一方、水産市場においては、多量の氷が使用されている。また、魚体その他水産加工製品(本発明においては、魚体と総称する)を清浄するために、滅菌された洗浄水も多量に使用されている。これらの製氷用水や魚体の洗浄水を得るための方法の一つとして、特許文献2,3に示すように、紫外線殺菌装置によって海水を滅菌するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−112996号公報
【特許文献2】特開2004−261698号公報
【特許文献3】特開2004−160437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1の発明は、高濃度の塩素によって強い殺菌力を持った清掃用水を得ることができるが、殺菌用の塩素を除去した製氷用水や魚体の洗浄水(総称して精製水という)を得ることはできなかった。すなわち、氷や魚体のように、鮮度が重要なものについては、特許文献1の発明のような高濃度の塩素が残留した水を使用することはできない。
【0006】
一方、紫外線殺菌装置を使用する特許文献2,3の発明は、紫外線照射のために必要な電力が大きく、また、有効に殺菌するには長い照射時間も必要とすることから、大量の精製水を得るには不適当であった。また、紫外線殺菌装置と脱塩素装置の両者が必要で、システムの構成が複雑であった。
【0007】
本発明は、前記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものである。本発明の目的は、塩素濃度の高い清掃用水と、滅菌されしかも塩素が除去された精製水を得ることができ、しかも簡単な構成で、省エネルギー効果も得られる海水浄化システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明の海水浄化システムは、次の構成を有することを特徴とする。
(1) 海水から高濃度の次亜塩素酸ナトリウムを含んだ消毒水を製造する電解塩素発生装置を有する。
(2) 清浄対象の海水を貯留する消毒槽を有する。
(3) 消毒された海水中の塩素濃度を低下させる脱塩素装置を有する。
(4) 前記電解塩素発生装置で得られた高濃度の次亜塩素酸ナトリウムを含む消毒水を、前記消毒槽に供給し、この消毒槽において清浄対象の海水を消毒し、清掃水を得る。
(5) 消毒された海水の一部を脱塩素装置に供給し、塩素濃度を低下させて精製水を得る。
【0009】
本発明において、消毒水を海水の取水口に供給し、導水管内への貝類等の付着防止目的に使用することも可能である。
【発明の効果】
【0010】
前記のような構成を有する本発明の海水浄化システムでは、従来海水の浄化のために使用していた紫外線殺菌装置が不要となり、市場床清掃用の電解塩素発生装置を利用して、滅菌された製氷用水あるいは魚体洗浄水を得ることが可能になる。その結果、海水の浄化システムの構成を簡略化することができると共に、紫外線殺菌装置などに比較して、少ないエネルギーで多量の製氷用水や魚体洗浄水などの精製水を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態の構成を示す配管図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図1に従って具体的に説明する。
【0013】
1.実施形態の構成
図1において、符号1は海中に設けられた取水口、2は取水口1から陸上に続く導水管、3は陸上に設けられた取水ポンプである。
【0014】
取水ポンプ3は、配管を通じて圧力式濾過器4に接続されており、この圧力式濾過器4によって、海中から取水された海水が濾過される。圧力式濾過器4の処理水は、分水器5を介して、本システムの各部に送られる。
【0015】
分水器5から分岐した第1の配管aは、電解塩素発生装置6に接続されている。この電解塩素発生装置6は、海水を電解槽で電気分解することによって次亜塩素酸などの活性塩素種を生成させることにより、一例として、塩素濃度が100ppm程度の消毒水を作製する。この消毒水は、電解塩素発生装置6の出口側に接続された定量ポンプ7によって、消毒槽8に送り出される。
【0016】
消毒槽8は、仕切りによって区切られた流路を有するタンクであって、その上部から消毒水が供給される。また、前記分水器5から分岐した第2の配管bから、消毒対象の海水が、消毒槽8の上部に供給される。その結果、消毒槽8内部では、濾過された海水と消毒水とが混合、接触して、海水の消毒が行われる。この場合、消毒槽内部は図示のように仕切りによって区切られた流路が設けられているので、この流路を流れながらあらかじめ定メーター時間をかけて、海水の消毒が行われる。
【0017】
消毒された海水は、塩素濃度が1ppm程度となって、消毒槽8の下部に設けられた配管から脱塩素装置9に送り出される。この脱塩素装置は、その内部にセラミックボールなどの塩素吸着用の充填材を封入したものである。消毒された海水は、その塩素濃度が0.1ppm以下となるまで、脱塩素装置9により塩素を除去される。
【0018】
脱塩素装置9により塩素が除去された海水、すなわち、精製水は、脱塩素装置9の下部から取り出され、給水ポンプ10により、製氷施設及び魚体の洗浄用水として送出される。なお、符号11aは製氷施設へ送出する精氷水量を計測するメーター、11bは魚体の洗浄用水のメーターである。
【0019】
前記分水器5から分岐した配管cは、給水ポンプ12及びメーター13を通って、市場の床などの清掃用水として使用される。この場合、分水器5から分岐した配管dの海水を電解塩素発生装置14に供給し、定量ポンプ15を介して清掃用水の配管に送り込む。これにより、清掃用水中の塩素濃度を向上させ、市場の床などの施設を効果的に殺菌することができる。
【0020】
前記分水器5から分岐した配管eの海水を電解塩素発生装置16に供給し、塩素水ポンプ17を介して海水の取水口1から導水管2に送り込む。これにより、導水管2内への貝類などの付着を防止することができる。
【0021】
前記分水器5から分岐した配管fの海水を逆洗水用水槽18に供給する。この逆洗水用水槽18に貯留された海水を、前記圧力式濾過器4のフィルタの洗浄時において、逆洗ポンプ19によって圧力式濾過器4内に送り込み、濾過時とは逆方向からフィルタに逆洗水を通過させる。フィルタを洗浄した後の排水は、配管gを介して浄化設備に排水する。
【0022】
2.実施形態の作用効果
以上のような構成を有する本実施の形態においては、電解塩素発生装置6によって海水中の塩素濃度が高い消毒水を作製し、この消毒水によって処理対象の海水を消毒する。そのため、海水消毒用の紫外線殺菌装置を用いることなく、滅菌された海水を得ることができる。その後、滅菌された海水中の塩素を、脱塩素装置9によって0.1ppm以下にまで除去することで、製氷用水や魚体の洗浄水として適した精製水を得ることができる。
【0023】
その結果、本実施の形態によれば、電力使用量の大きな紫外線殺菌装置を使用することなく、滅菌されかつ塩素濃度が低い製氷用水や魚体の洗浄水を簡単に得ることができ、省エネルギー効果に優れている。また、電解塩素発生装置は、市場の床の清掃用水を作製する場合に広く使用されており、新たに紫外線殺菌装置を設けることなく、電解塩素発生装置をそのまま精製水の滅菌用として利用できる点も、システムを構成する上で有利である。
【0024】
また、消毒槽8内で、高濃度の塩素が含まれた消毒水と、処理対象の海水とを時間をかけて接触させることができるので、少ないエネルギーで優れた滅菌効果を得ることができる。
【0025】
3.他の実施形態
本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、次のような他の実施形態も包含する。
(1) 前記実施形態は、電解塩素発生装置を消毒水、清掃用水、貝類等の付着防止用の用途ごとに別々に設けたが、その代わりに、消毒水用の電解塩素発生装置6を1台のみ設け、その電解塩素発生装置6からの消毒水を、清掃用水などの配管に供給する。
【0026】
(2) 使用する精製水の用途に合わせて、消毒槽8に複数の脱塩素装置9を接続する。
【0027】
(3) 前記の実施形態は、本明細書において一例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図するものではない。すなわち、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことが可能である。これらの実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0028】
1…取水口
4…圧力式濾過器
5…分水器
6,14,16…電解塩素発生装置
8…消毒槽
9…脱塩素装置
10…給水ポンプ
11a,11b…メーター
18…逆洗水用水槽


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の構成を有することを特徴とする海水浄化システム。
(1) 海水から高濃度の次亜塩素酸ナトリウムを含んだ消毒水を製造する電解塩素発生装置を有する。
(2) 清浄対象の海水を貯留する消毒槽を有する。
(3) 消毒された海水中の塩素濃度を低下させる脱塩素装置を有する。
(4) 前記電解塩素発生装置で得られた高濃度の次亜塩素酸ナトリウムを含む消毒水を、前記消毒槽に供給し、この消毒槽において清浄対象の海水を消毒し、清掃水を得る。
(5) 消毒された海水の一部を脱塩素装置に供給し、塩素濃度を低下させて精製水を得る。
【請求項2】
前記精製水が、製氷用水あるいは魚体の洗浄水として使用されるものであることを特徴とする請求項1に記載の海水浄化システム。

【図1】
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【公開番号】特開2013−27840(P2013−27840A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167179(P2011−167179)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(396014119)共和化工株式会社 (3)
【Fターム(参考)】