説明

海水淡水化システムおよびエネルギー交換チャンバー

【課題】チャンバーの下方から濃縮海水を給排水し、上方から海水を給排水し、濃縮海水と海水との混合を抑制しながら、濃縮海水から海水へ圧力伝達を行うエネルギー交換チャンバーおよび該エネルギー交換チャンバーを備えた海水淡水化システムを提供する。
【解決手段】昇圧した海水を逆浸透膜分離装置4に通水して淡水と濃縮海水に分離する海水淡水化システムにおいて、濃縮海水および海水を収容するチャンバーCHと、チャンバーCHの下部に設けられ濃縮海水の給排水を行う濃縮海水ポートP1と、チャンバーCHの上部に設けられ海水の給排水を行う海水ポートP2と、濃縮海水ポートP1と連通し、濃縮海水を水平面全体に分散させる濃縮海水分散構造体26と、海水ポートP2と連通し、海水を水平面全体に分散させる海水分散構造体25とを備え、チャンバーCH内に導入された濃縮海水と海水とが直接接触して、濃縮海水と海水との圧力エネルギーが交換される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水から塩分を除去して海水を淡水化する海水淡水化システムおよび該海水淡水化システムに好適に用いられるエネルギー交換チャンバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、海水を淡水化するシステムとして、海水を逆浸透膜分離装置に通水して脱塩する海水淡水化システムが知られている。この海水淡水化システムにおいては、取水された海水は、前処理装置により一定水質の条件に整えられたのち、高圧ポンプにより加圧され、逆浸透膜分離装置へと圧送され、逆浸透膜分離装置内の高圧海水の一部は、逆浸透圧力に打ち勝って逆浸透膜を通過し、塩分が除去された淡水として取り出される。その他の海水は、塩分濃度が高くなり濃縮された状態で逆浸透膜分離装置から濃縮海水(リジェクト)として排出される。ここで、海水淡水化システムにおける最大の運用コスト(電力費)は、前処理後の海水を浸透圧に打ち勝てる圧力即ち逆浸透圧まで上昇させるためのエネルギー、つまり高圧ポンプによる加圧エネルギーに大きく影響される。
【0003】
すなわち、海水淡水化システムにおける最大の運用コストである電力費の半分以上は、高圧ポンプによる加圧に費やされることが多い。従って、逆浸透膜分離装置から排出される高塩分濃度で高圧の濃縮海水が保有する圧力エネルギーを、海水の一部を昇圧するエネルギーに利用することが行われている。そして、逆浸透膜分離装置から吐出される濃縮海水の圧力エネルギーを海水の一部を昇圧するエネルギーに利用する手段として、円筒の筒内に移動可能に嵌装されたピストンによって円筒の内部を二つの空間に分離し、2つの分離した空間の一方に濃縮海水の出入りを行う濃縮海水ポートを設け、もう一方に海水の出入りを行う海水ポートを設けたエネルギー交換チャンバーを利用することが行われている。
【0004】
図19は、従来の海水淡水化システムの構成例を示す模式図である。図19に示すように、取水ポンプ(図示しない)により取水された海水は、前処理装置により前処理されて所定の水質条件に整えられたのち、海水供給ライン1を介してモータMにより駆動される高圧ポンプ2へ供給される。高圧ポンプ2により昇圧された海水は吐出ライン3を介して逆浸透膜(RO膜)を備えた逆浸透膜分離装置4に供給される。逆浸透膜分離装置4は、海水を塩分濃度の高い濃縮海水と塩分濃度の低い淡水に分離し海水から淡水を得る。この時、塩分濃度の高い濃縮海水が逆浸透膜分離装置4から排出されるが、この濃縮海水は依然高い圧力を有している。逆浸透膜分離装置4から濃縮海水を排出する濃縮海水ライン5は、制御弁6を介してエネルギー交換チャンバー10の濃縮海水ポートP1へ接続している。前処理された低圧の海水を供給する海水供給ライン1は、高圧ポンプ2の上流で分岐してバルブ7を介してエネルギー交換チャンバー10の海水ポートP2へ接続している。エネルギー交換チャンバー10は、内部にピストン12を備え、ピストン12はエネルギー交換チャンバー10内を移動可能に嵌装されている。
【0005】
エネルギー交換チャンバー10において濃縮海水の圧力を利用して昇圧された海水は、バルブ7を介してブースターポンプ8に供給される。そして、ブースターポンプ8によって海水は高圧ポンプ2の吐出ライン3と同じレベルの圧力になるようにさらに昇圧され、昇圧された海水はバルブ9を介して高圧ポンプ2の吐出ライン3に合流して逆浸透膜分離装置4に供給される。
【0006】
上述した従来のエネルギー交換チャンバーにおいては、エネルギー交換チャンバー内のピストンはチャンバー内壁と摺動することになり、ピストンの摺動部材が摩耗するので定期的な交換が必要であり、また長尺のチャンバーの内径をピストンの外形に合わせて精度よく加工する必要があり、加工コストが非常に高価であった。
そのため、本件出願人は、特許文献1において円筒形長尺のチャンバーを圧力交換チャンバーとし、チャンバー内に複数の区画された流路を設けて逆浸透膜(RO膜)から排出される高圧の濃縮海水で直接海水を加圧する方式を採用することにより、ピストンの無い形態のエネルギー交換チャンバーを提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−284642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1で開示されているエネルギー交換チャンバーは、円筒形長尺のチャンバーを水平横置きに設置した場合には、濃縮海水と海水は水平方向において左右に分離され2流体の接触する境界部での混合を抑制しながら、高圧の濃縮海水から低圧の海水へ圧力伝達を行うというものである。
本発明者らは、特許文献1で開示されているような、濃縮海水と海水の界面が濃縮海水と海水の双方の圧力バランスによりチャンバー内を移動する方式のエネルギー交換チャンバーについて、濃縮海水と海水の比重差を考慮したコンピューターシミュレーションによる解析を行った結果、比重差がある場合にはチャンバーの長手方向を水平横置きにした場合に問題があるという知見を得たものである。
【0009】
本発明者らは、上記知見に基づいて、チャンバーの長手方向を水平横置きにした場合でも濃縮海水と海水の混合を抑制して濃縮海水と海水を分離する手段を着想し、本発明の創案に至ったものである。
すなわち、本発明は、チャンバーの容積室の下方から濃縮海水を給排水し、上方から海水を給排水することにより、濃縮海水と海水を上下に分離して2流体の接触する境界部での混合を抑制しながら、高圧の濃縮海水から海水へ圧力伝達を行うことができるエネルギー交換チャンバーおよび該エネルギー交換チャンバーを備えた海水淡水化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した目的を達成するために、本発明のエネルギー交換チャンバーは、ポンプによって昇圧した海水を逆浸透膜分離装置に通水して淡水と濃縮海水に分離して海水から淡水を生成する海水淡水化システムにおいて前記逆浸透膜分離装置から吐出される濃縮海水の圧力エネルギーを前記海水を昇圧するエネルギーに利用するエネルギー交換チャンバーであって、内部に濃縮海水および海水を収容する空間を有したチャンバーと、前記チャンバーの下部に設けられ濃縮海水の給排水を行う濃縮海水ポートと、前記チャンバーの上部に設けられ海水の給排水を行う海水ポートと、前記濃縮海水ポートと連通し、流入した濃縮海水を前記チャンバー内の水平方向に亘って分散させる濃縮海水分散構造体と、前記海水ポートと連通し、流入した海水を前記チャンバー内の水平方向に亘って分散させる海水分散構造体とを備え、前記チャンバー内に導入された濃縮海水と海水とが前記チャンバー内の水平方向に亘って直接接触して、濃縮海水と海水との圧力エネルギーが交換されることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、チャンバーの下部に設けられた濃縮海水ポートから濃縮海水をチャンバー内へ給排水し、チャンバーの上部に設けられた海水ポートから海水をチャンバー内へ給排水する。チャンバー内に流入した濃縮海水は濃縮海水分散構造体によってチャンバー内の水平面全体に分散し、またチャンバー内に流入した海水は海水分散構造体によってチャンバー内の水平面全体に分散する。濃縮海水は海水より比重が高いために比重の差から濃縮海水と海水の境界部が形成され、チャンバー内の水平面全体に分散した濃縮海水はチャンバー内の水平面全体に分散した海水を押し上げ、濃縮海水と海水を上下に分離しながら2流体の接触する境界部での混合を抑制しながら、高圧の濃縮海水から海水へ圧力伝達を行うことができる。
【0012】
本発明の好ましい態様によれば、前記チャンバーは、長手方向を水平に配置した円筒形状のチャンバーであることを特徴とする。
【0013】
本発明の好ましい態様によれば、前記濃縮海水分散構造体と前記海水分散構造体とは、水平に配置され、それぞれチャンバー内面の最下部と最上部に対向して配列された複数の孔を有するパイプ形状であることを特徴とする。
本発明によれば、濃縮海水ポートから濃縮海水を供給し、海水ポートから海水を排出する場合には、濃縮海水ポートに供給された濃縮海水は濃縮海水ポートと連通しているパイプ形状の濃縮海水分散構造体に流入し、濃縮海水分散構造体に形成された下向きの貫通孔を通ってチャンバー室に流入する。チャンバー室に流入した濃縮海水は海水より比重が高いため、下方から海水を上方に押し上げながら流入する。一方、押し上げられた比重が低い海水はパイプ形状の海水分散構造体に形成された上向きの貫通孔を通って海水分散構造体内に流入する。チャンバー室内には、比重の差から濃縮海水と海水の境界部が形成され、この境界部がチャンバー室を上昇・下降するようになる。海水ポートから海水を供給し、濃縮海水ポートから濃縮海水を排出する場合には、海水ポートに供給された海水は海水ポートと連通している海水分散構造体に流入し、海水分散構造体に形成された貫通孔からチャンバー室に流入し、濃縮海水が濃縮海水分散構造体に形成された貫通孔から濃縮海水分散構造体に連通している濃縮海水ポートへ排出される。
【0014】
本発明の好ましい態様によれば、前記パイプ形状は、円筒形状のパイプまたは角筒形状のパイプであることを特徴とする。
本発明によれば、濃縮海水分散構造体と海水分散構造体とをチャンバー室内に上下に配置された円筒形状または角筒形状のパイプで構成することができる。この場合、パイプを角筒形状にすることにより、濃縮海水と海水との境界部がパイプの下端より上方あるいはパイプの上端より下方になってもパイプとの接触による境界部の乱れを少なくすることができる。
【0015】
本発明の好ましい態様によれば、前記濃縮海水分散構造体と前記海水分散構造体とを連結する連結部材を備え、前記連結部材における前記濃縮海水分散構造体と前記海水分散構造体との連結部は、それぞれ、連結する分散構造体の外形形状に次第に近づくように略三角形状の断面形状をなしていることを特徴とする。
本発明によれば、連結部材における分散構造体と連結する部分は、漸近的に分散構造体の外径に近づくように断面積が広がっていく略三角形状の断面形状をなしている。これにより、境界部が海水分散構造体の下端より上方あるいは濃縮海水分散構造体の上端より下方になるときの境界部の変化が少なくなるので、境界部の乱れを抑制することができる。
【0016】
本発明の好ましい態様によれば、前記濃縮海水分散構造体と前記海水分散構造体とがそれぞれ前記チャンバー内面と対面する位置において、前記複数の孔をはさんで前記複数の孔の両側に2つの多孔板を配置し、該2つの多孔板によって前記チャンバー内面と前記濃縮海水分散構造体又は前記海水分散構造体とを接続したことを特徴とする。
本発明によれば、海水分散構造体の両側面とチャンバーの内面とを接続する2枚の多孔板を設け、濃縮海水分散構造体の両側面とチャンバーの内面とを接続する2枚の多孔板を設けている。これにより、濃縮海水分散構造体と2枚の多孔板で形成される第1の空間と、海水分散構造体と2枚の多孔板で形成される第3の空間と、その間の第2の空間が構成される。この構成により、濃縮海水分散構造体から流入する濃縮海水は第1の空間に入り、第1の空間から多孔板を通過する際に多孔板によって流速が均一化され、この流速が均一化された流れが第2の空間に流入する。この作用により、第2の空間での流れがより均一に上方に流れるようになるため、境界部の乱れを抑制し、濃縮海水と海水の混合を抑制しながら、高圧の濃縮海水から海水への圧力伝達を行うことが可能になる。一方、押し上げられた海水は第2の空間から多孔板を通過する際に多孔板によって流速が均一化される。そして、多孔板によって流速が均一化された海水の流れが第3の空間に流入し、海水分散構造体に形成された上向きの貫通孔から海水が流出する。
本発明において、多孔板は、板に複数の孔を形成したパンチングプレートと呼ばれる部材で構成され、孔の直径は3〜10mm程度で、板面積のうち孔の面積を表す空孔率が30〜60%とし、多孔板を通過することによる圧力損失が少なく、且つ流れの均一化効果を得るように構成されている。
【0017】
本発明の好ましい態様は、前記濃縮海水分散構造体と前記海水分散構造体とは、前記チャンバーの中央部に水平に配置されたパイプの外面と前記チャンバー内面とを放射状に仕切る4枚の多孔板からなることを特徴とする。
本発明によれば、パイプの外面とチャンバーの内面を放射状に仕切る多孔板が4枚配置されており、パイプ外面とチャンバー内面との間に第1の空間、第2の空間、第3の空間が形成される。そして、第1の空間には濃縮海水ポートが連通し、第3の空間には海水ポートが連通している。濃縮海水ポートから流入した濃縮海水は、第1の空間内に広がり、2枚の多孔板で均一な流れに整流されて第2の空間に流入する。多孔板により周方向に均一になった濃縮海水は、境界部を乱すことなく海水を均一に押し上げるようになり、チャンバー室内での濃縮海水と海水の混合を抑制する。一方、押し上げられた海水は第2の空間から多孔板を通過する際に多孔板によって流速が均一化される。そして、多孔板によって流速が均一化された海水の流れが第3の空間に流入し、海水ポート側へ海水を押し出す。
【0018】
本発明の好ましい態様によれば、前記濃縮海水分散構造体と前記海水分散構造体とは、前記チャンバー内で上下に間隔をおいて水平方向に配置された2枚の多孔板からなることを特徴とする。
本発明によれば、チャンバー内には、上下に間隔をおいて水平方向に延びる2枚の多孔板が配置されており、2枚の多孔板によってチャンバー室を下から上に向かって第1の空間、第2の空間、第3の空間に区画している。濃縮海水ポートから流入した濃縮海水は、第1の空間内に広がり、下方の多孔板によって均一な流れに整流されて第2の空間に流入する。第2の空間内において濃縮海水は上方の海水を押し出すように上方に流れる。このとき、下方の多孔板によって方向、流速ともに均一になった流れが形成されるため、第2の空間内の境界部において濃縮海水と海水の混合が抑制される。海水が上方の海水ポートから第3の空間に流入し、第3の空間から上方の多孔板を介して第2の空間に流入する場合も同様の整流効果を奏する。
【0019】
本発明の好ましい態様によれば、前記濃縮海水ポートおよび前記海水ポートは、円筒形状のチャンバーの外周面を貫通して設けられていることを特徴とする。
【0020】
本発明の好ましい態様によれば、前記チャンバーは、長手方向を鉛直に配置した円筒形状のチャンバーであることを特徴とする。
本発明によれば、長尺の円筒形状のチャンバーは、チャンバーの長手方向が垂直方向に配置されており、濃縮海水ポートはチャンバー室の下側で濃縮海水を給排水するようにチャンバーの下側に設けられ、海水ポートはチャンバー室の上側で海水を給排水するようにチャンバーの上側に設けられている。
【0021】
本発明の好ましい態様によれば、前記濃縮海水分散構造体と前記海水分散構造体とは、前記円筒形状のチャンバーの上下に配置された多孔板からなることを特徴とする。
本発明によれば、濃縮海水分散構造体および海水分散構造体を多孔板で構成することにより、濃縮海水ポートから流入する濃縮海水および海水ポートから流入する海水をチャンバー内の水平面全体に均一に分散させることができる。
【0022】
本発明の好ましい態様によれば、前記上下に配置された多孔板の間に、複数の区画された流路を配置したことを特徴とする。
本発明によれば、区画された流路内で濃縮海水と海水が接触するが、流路断面積が小さい流路内で生じる渦は管路内の小さな渦になるので、大きく拡散せずに濃縮海水と海水の境界部が乱れない。このように流路断面積の小さい流路が複数個集まって大きなチャンバーを構成しているため、各流路で濃縮海水と海水の境界部が維持され、全体として濃縮海水と海水の境界部を維持したまま、すなわち濃縮海水と海水の混合を抑制しながら、濃縮海水によって海水を加圧し吐出することができる。
【0023】
本発明の海水淡水化システムは、ポンプによって昇圧した海水を逆浸透膜分離装置に通水して淡水と濃縮海水に分離して海水から淡水を生成する海水淡水化システムにおいて、前記逆浸透膜分離装置から吐出される濃縮海水の圧力エネルギーを前記海水の一部を昇圧するエネルギーに利用する請求項1乃至12のいずれか1項に記載のエネルギー交換チャンバーを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、以下に列挙する効果を奏する。
1)チャンバーの下方から濃縮海水を給排水し、上方から海水を給排水することにより、濃縮海水と海水との比重差を利用して濃縮海水と海水を上下に分離しながら2流体の接触する境界部での混合を抑制しながら、高圧の濃縮海水から海水へ圧力伝達を行うことができる。
2)チャンバー内での乱流拡散による濃縮海水と海水の混合を抑制でき、濃度の高い海水を逆浸透膜分離装置に送ってしまうことがないので、逆浸透膜分離装置の性能を十分に発揮することができるとともに、逆浸透膜自体の交換周期を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明の海水淡水化システムの構成例を示す模式図である。
【図2】図2は、本発明のエネルギー交換チャンバーの構成例を示す断面図である。
【図3】図3は、チャンバー室内に配置された上パイプを示す斜視図である。
【図4】図4は図2のIV-IV線断面図である。
【図5】図5は、本発明のエネルギー交換チャンバーの作用を説明する図であり、図4に対応した模式図である。
【図6】図6は、本発明のエネルギー交換チャンバーの作用を説明する図であり、図4に対応した模式図である。
【図7】図7は、本発明のエネルギー交換チャンバーの変形例を示す断面図である。
【図8】図8は、本発明のエネルギー交換チャンバーの他の変形例を示す断面図である。
【図9】図9は本発明のエネルギー交換チャンバーの更に他の変形例を示す図であり、エネルギー交換チャンバーの断面図である。
【図10】図10は図9のX-X線断面図である。
【図11】図11は、本発明のエネルギー交換チャンバーの他の実施形態を示す図であり、エネルギー交換チャンバーの断面図である。
【図12】図12は図11のXII-XII線断面図である。
【図13】図13は、本発明のエネルギー交換チャンバーの更に他の実施形態を示す図であり、エネルギー交換チャンバーの断面図である。
【図14】図14は図13のXIV-XIV線断面図である。
【図15】図15はコンピューターシミュレーションの一例であり、図2乃至図6で示す構成で、濃縮海水および海水を導入し、境界部が上パイプ直前まで上昇したときの解析結果である。
【図16】図16は、本発明のエネルギー交換チャンバーの更に他の実施形態を示す断面図である。
【図17】図17は、図16のXVII−XVII線断面図である。
【図18】図18は、図16に示す本発明のエネルギー交換チャンバーの変形例を示す断面図である。
【図19】図19は、従来の海水淡水化システムの構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る海水淡水化システムの実施形態について図1乃至図18を参照して説明する。なお、図1乃至図18において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0027】
図1は、本発明の海水淡水化システムの構成例を示す模式図である。図1に示すように、取水ポンプ(図示しない)により取水された海水は、前処理装置により前処理されて所定の水質条件に整えられたのち、海水供給ライン1を介してモータMにより駆動される高圧ポンプ2へ供給される。高圧ポンプ2で昇圧された海水は吐出ライン3を介して逆浸透膜(RO膜)を備えた逆浸透膜分離装置4に供給される。逆浸透膜分離装置4は、海水を塩分濃度の高い濃縮海水と塩分濃度の低い淡水に分離し海水から淡水を得る。この時、塩分濃度の高い濃縮海水が逆浸透膜分離装置4から排出されるが、この濃縮海水は依然高い圧力を有している。逆浸透膜分離装置4から濃縮海水を排出する濃縮海水ライン5は、制御弁6を介してエネルギー交換チャンバー20の濃縮海水ポートP1へ接続している。前処理された低圧の海水を供給する海水供給ライン1は、高圧ポンプ2の上流で分岐してバルブ7を介してエネルギー交換チャンバー20の海水ポートP2へ接続している。エネルギー交換チャンバー20は、濃縮海水と海水の境界部によって二流体を分離しながら高圧の濃縮海水から低圧の海水へエネルギー伝達を行うものである。
【0028】
エネルギー交換チャンバー20において濃縮海水の圧力を利用して昇圧された海水は、ブースターポンプ8に供給される。そして、ブースターポンプ8によって海水は高圧ポンプ2の吐出ライン3と同じレベルの圧力になるようにさらに昇圧され、昇圧された海水はバルブ9を介して高圧ポンプ2の吐出ライン3に合流して逆浸透膜分離装置4に供給される。一方、海水を昇圧してエネルギーを失った濃縮海水は、エネルギー交換チャンバー20から制御弁6を介して濃縮海水排出ライン17に排出される。
【0029】
図2は、本発明のエネルギー交換チャンバー20の構成例を示す断面図である。図2に示すように、エネルギー交換チャンバー20は、長尺の円筒形状のチャンバー本体21と、チャンバー本体21の両開口端を閉塞するフランジ23を備えている。チャンバー本体21内にはチャンバー室(容積室)CHが形成され、一方のフランジ23に濃縮海水ポートP1が形成され、他方のフランジ23に海水ポートP2が形成されている。チャンバー本体21には両端部の外径が中央部より大きな大径部21aが形成されており、ここにスタッドボルト14が埋め込まれている。スタッドボルト14はフランジ23の端部から突出するように固定されており、このスタッドボルト14にナット15が締結されフランジ23がチャンバー本体21に固定されている。
【0030】
エネルギー交換チャンバー20は水平横置きに設置されており、濃縮海水ポートP1はチャンバー室CHの下側で濃縮海水を給排水するようにポートP1が下側に設けられ、海水ポートP2はチャンバー室CHの上側で海水を給排水するようにポートP2が上側に設けられている。
また、チャンバー室CH内には上下に2本のパイプ25,26が設けられており、上パイプ25には海水ポートP2が連通し、下パイプ26には濃縮海水ポートP1が連通するように構成されている。上下のパイプ25,26は、円筒形状のパイプからなり、フランジ23,23によってその位置が固定されている。
【0031】
図3は、チャンバー室内に配置された上パイプ25を示す斜視図である。図3に示すように、チャンバー室CHの上方に配置された上パイプ25には、上部に複数の孔25hが形成されており、複数の孔25hはパイプ25の中空部に貫通している。チャンバー室CHの下方に配置された下パイプ26は、上パイプ25と同様の構成であるが、図3に示す上パイプ25を上下反転した形態であり、下向きに貫通孔が形成されている。
【0032】
図4は図2のIV-IV線断面図である。図4に示すように、円筒形状のチャンバー本体21内に形成されたチャンバー室CHには、上パイプ25と下パイプ26とが上下に間隔をおいて配置されている。そして、上パイプ25の上部には複数の孔25hが形成され、下パイプ26の下部には複数の孔26hが形成されている。
【0033】
図5および図6は、本発明のエネルギー交換チャンバーの作用を説明する図であり、図4に対応した模式図である。図5は、濃縮海水ポートP1から濃縮海水を給水し、海水ポートP2から海水を排出している状態を示す図である。図5に示すように、濃縮海水ポートP1に供給された濃縮海水はポートP1と連通している下パイプ26に流入し、下パイプ26に形成された下向きの貫通孔26hを通ってチャンバー室CHに流入する。チャンバー室CHに流入した濃縮海水は海水より比重が高いため、下方から海水を上方に押し上げながら流入する。一方、押し上げられた比重が低い海水は上パイプ25に形成された上向きの貫通孔25hを通って上パイプ25内に流入する。チャンバー室CH内には、比重の差から濃縮海水と海水の境界部Iが形成され、この境界部Iがチャンバー室CHを上昇・下降するようになる。
【0034】
上述の動作はエネルギー交換チャンバー20の濃縮海水ポートP1の上流に設けた制御弁6(図1参照)により逆浸透膜(RO膜)からの高圧の濃縮海水を濃縮海水ポートP1へ連通することで、高圧の濃縮海水がエネルギー交換チャンバー20に供給される流れとなることによる。エネルギー交換チャンバー20のチャンバー室CH内は同圧になるため、逆浸透膜(RO膜)からエネルギー交換チャンバー20に供給される高圧の濃縮海水の圧力と海水の圧力が等しくなるので、この作用により高圧の海水が海水ポートP2から排出され、濃縮海水の圧力エネルギーが海水に伝達される。
【0035】
図6は、海水ポートP2から海水を供給し、濃縮海水ポートP1から濃縮海水を排出している状態を示す図である。図6に示すように、図5の作用とは逆に、海水ポートP2に供給された海水はポートP2と連通している上パイプ25に流入し、上パイプ25に形成された貫通孔25hからチャンバー室CHに流入し、濃縮海水が下パイプ26に形成された貫通孔26hから下パイプ26に連通している濃縮海水ポートP1へ排出される。このときも同様に、比重の低い海水がチャンバー室CHの上方から比重の高い濃縮海水を下方に押し出すようになる。この動作はエネルギー交換チャンバーの濃縮海水ポートP1の上流に設けた制御弁6により濃縮海水ポートP1を排水側へ連通することで、低圧の海水がエネルギー交換チャンバー20内に供給される流れとなることによる。
【0036】
上述した濃縮海水の給排水を制御弁6によって制御することで、低圧の海水を高圧の濃縮海水と等圧に昇圧し、昇圧された海水を海水ポートP2から逆浸透膜(RO膜)側に供給するエネルギー回収装置(エネルギー交換チャンバー)の作用となる。
なお、図示した濃縮海水と海水の境界部Iを二点鎖線の線として示しているが、実際には濃縮海水と海水とが接している境界では両者が混合して層状の混合層となっている。
【0037】
図7は、本発明のエネルギー交換チャンバーの変形例を示す断面図である。図7に示す実施形態は、図2乃至図6に示す実施形態における上パイプと下パイプを角型にしたものである。すなわち、図7に示すように、上パイプ35と下パイプ36は角筒形状のパイプからなっている。上パイプ35は、角部35aが下方に位置し、孔35hが上方に位置するように配置されている。また、下パイプ36は、角部36aが上方に位置し、孔36hが下方に位置するように配置されている。このように上パイプ35と下パイプ36とを角型にすることにより、濃縮海水と海水との境界部Iが上パイプ35の下端より上方あるいは下パイプ36の上端より下方になってもパイプとの接触による境界部Iの乱れを少なくすることができる。図7では境界部Iが上パイプ35の下端(角部35a)より上方にある状態を示している。
【0038】
図8は、本発明のエネルギー交換チャンバーの他の変形例を示す断面図である。図8に示す実施形態は、上パイプと下パイプを図2乃至図6に示す実施形態と同様の円筒形状とし、上パイプと下パイプを連結する連結部材を設けたものである。すなわち、図8に示すように、円筒形状の上パイプ25と下パイプ26とを連結する連結部材30が設けられている。連結部材30におけるパイプ25,26と連結する部分は、漸近的にパイプの外径に近づくように断面積が広がっていく略三角形状の断面形状をなしている。これにより、境界部Iが上パイプ25の下端より上方あるいは下パイプ26の上端より下方になるときの境界部Iの変化が少なくなるので、境界部Iの乱れを抑制することができる。なお、連結部材は、上パイプと下パイプとの長手方向のほぼ端から端まで連続した部材として構成されている。
【0039】
図9および図10は本発明のエネルギー交換チャンバーの更に他の変形例を示す図であり、図9はエネルギー交換チャンバーの断面図であり、図10は図9のX-X線断面図である。図9および図10に示す実施形態は、図2乃至図6に示す実施形態における円筒形状の上パイプ25および下パイプ26とチャンバー本体21とを連結する多孔板を設けたものである。すなわち、図10に示すように、上パイプ25の両側面とチャンバー本体21の内周面とを接続する2枚の多孔板31,31を設け、下パイプ26の両側面とチャンバー本体21の内周面とを接続する2枚の多孔板31,31を設けている。これにより、下パイプ26と2枚の多孔板31,31で形成される空間Bと、上パイプ25と2枚の多孔板31,31で形成される空間Dと、その間の空間Cが構成される。この構成により、下パイプ26から流入する濃縮海水は空間Bに入り、空間Bから多孔板31を通過する際に多孔板31によって流速が均一化され、この流速が均一化された流れが空間Cに流入する。この作用により、空間Cでの流れがより均一に上方に流れるようになるため、境界部Iの乱れを抑制し、濃縮海水と海水の混合を抑制しながら、高圧の濃縮海水から海水への圧力伝達を行うことが可能になる。一方、押し上げられた海水は空間Cから多孔板31を通過する際に多孔板31によって流速が均一化される。そして、多孔板31によって流速が均一化された海水の流れが空間Dに流入し、海水は上パイプ25から流出する。
【0040】
図11および図12は、本発明のエネルギー交換チャンバーの他の実施形態を示す図であり、図11はエネルギー交換チャンバーの断面図であり、図12は図11のXII-XII線断面図である。図11および図12に示すように、チャンバー室CHの中央に円筒形状のパイプ40が設置されており、パイプ40はフランジ23,23によってその位置が固定されている。図12に示すように、パイプ40の外周とチャンバー本体21の内周を放射状に仕切る多孔板41が4枚配置されている。図11に示すように、多孔板41は両フランジ23,23の間に延びている。このように4枚の多孔板41により、チャンバー本体21とパイプ40との間に空間B、空間C、空間Dが形成されている。そして、空間Bには濃縮海水ポートP1が連通し、空間Dには海水ポートP2が連通している。
【0041】
図11および図12に示すように構成されたエネルギー交換チャンバー20において、濃縮海水ポートP1から流入した濃縮海水は、空間B内に広がり、2枚の多孔板41で均一な流れに整流されて空間Cに流入する。多孔板41により周方向に均一になった濃縮海水は、境界部Iを乱すことなく海水を均一に押し上げるようになり、チャンバー室CH内での濃縮海水と海水の混合を抑制する。一方、押し上げられた海水は空間Cから上方の多孔板41を通過する際に多孔板41によって流速が均一化される。そして、多孔板41によって流速が均一化された海水の流れが空間Dに流入し、海水ポートP2側へ海水を押し出す。
【0042】
図13および図14は、本発明のエネルギー交換チャンバーの更に他の実施形態を示す図であり、図13はエネルギー交換チャンバーの断面図であり、図14は図13のXIV-XIV線断面図である。図13に示すように、本実施形態においては濃縮海水ポートP1および海水ポートP2はチャンバー本体21の側面を貫通して設けられている。図14に示すように、チャンバー本体21の内周には、上下に間隔をおいて水平方向に延びる2枚の多孔板51,51が配置されている。図13に示すように、多孔板51は両フランジ23,23の間に延びている。そして、図14に示すように、2枚の多孔板51,51によってチャンバー室CHを下から上に向かって3つの空間B、空間C、空間Dに区画している。
【0043】
図13および図14に示すように構成されたエネルギー交換チャンバー20において、濃縮海水ポートP1から流入した濃縮海水は、空間B内に広がり、下方の多孔板51によって均一な流れに整流されて空間Cに流入する。空間C内において濃縮海水は上方の海水を押し出すように上方に流れる。このとき、多孔板51によって方向、流速ともに均一になった流れが形成されるため、空間C内の境界部Iにおいて濃縮海水と海水の混合が抑制される。海水が上方の海水ポートP2から空間Dに流入し、空間Dから多孔板51を介して空間Cに流入する場合も同様の整流効果を奏する。
【0044】
図15はコンピューターシミュレーションの一例であり、図2乃至図6で示す構成のエネルギー交換チャンバー20において濃縮海水および海水を導入し、境界部Iが上パイプの直前まで上昇したときの解析結果である。
図15においてグレーで示される部分GRが濃縮海水を示し、白地で示される部分WHが海水を示す。黒で示される部分BLが2流体が混合している領域(混合部)である。なお、比重は濃縮海水がおおよそ1.06および海水が1.03とした。
【0045】
図16は、本発明のエネルギー交換チャンバー20の更に他の実施形態を示す断面図である。図16に示すように、本実施形態においてはエネルギー交換チャンバー20は、縦置きに設置されている。すなわち、長尺の円筒形状のチャンバー本体21は、チャンバーの長手方向が垂直方向に配置されており、濃縮海水ポートP1はチャンバー室CHの下側で濃縮海水を給排水するようにポートP1が下側に設けられ、海水ポートP2はチャンバー室CHの上側で海水を給排水するようにポートP2が上側に設けられている。チャンバー本体21内には、チャンバー本体21内に形成されたチャンバー室CHより小径の複数のチューブ45が濃縮海水ポートP1と海水ポートP2の間に配設され、チャンバー室CH内に固定された小径の複数のチューブ45によって複数の区画された流路Rが形成されている。そして、これら流路によって濃縮海水ポートP1と海水ポートP2が連通されている。各チューブ45は小径のチューブからなるため、チューブ内の円形の流路断面積は小さく設定されている。
【0046】
図17は、図16のXVII−XVII線断面図である。図17に示すように、チャンバー本体21内に形成されたチャンバー室に小径の複数のチューブ45が配設されている。そして、各チューブ45内に濃縮海水および海水が流入する流路Rが形成されている。
【0047】
濃縮海水ポートP1と流路Rの間の空間および海水ポートP2と流路Rの間の空間に、流体の整流を行う多孔板61をそれぞれ設けている。多孔板61はポートP1,P2から所定の距離離間して配置されている。そして、多孔板61は区画された流路Rの端部からも所定の距離離間するように配置されている。このように、多孔板61を配置することによって小径のポートP1,P2から流入する流れを大径のチャンバー室内に均一に分散させ複数の区画された流路Rに均一に流入する。
この時、区画された流路R内で濃縮海水と海水が接触するが、流路断面積が小さい流路R内で生じる渦は管路内の小さな渦になるので、大きく拡散せずに濃縮海水と海水の境界部Iが乱れない。このように流路断面積の小さい流路Rが複数個集まって大きなチャンバーを構成しているため、各流路Rで濃縮海水と海水の境界部Iが維持され、全体として濃縮海水と海水の境界部Iを維持したまま、すなわち濃縮海水と海水の混合を抑制しながら、濃縮海水によって海水を加圧し吐出することができる。海水が上方の海水ポートP2から多孔板61を通って区画された流路Rに流入する場合も同様の整流効果を奏する。
【0048】
図16および図17においては、円形断面を有した複数のチューブ45によってチャンバー室CH内に複数の区画された流路Rを形成する例を示したが、チャンバー室CH内にハニカム状や格子状の区画された複数の流路Rを形成してもよい。
【0049】
図18は、図16に示す本発明のエネルギー交換チャンバー20の変形例を示す断面図である。図18に示すように、本実施形態においてはエネルギー交換チャンバー20は、縦置きに設置されている。すなわち、長尺の円筒形状のチャンバー本体21は、チャンバーの長手方向が垂直方向に配置されており、濃縮海水ポートP1はチャンバー室CHの下側で濃縮海水を給排水するようにポートP1が下側に設けられ、海水ポートP2はチャンバー室CHの上側で海水を給排水するようにポートP2が上側に設けられている。チャンバー本体21内には、濃縮海水ポートP1および海水ポートP2の近傍に流体の整流を行う多孔板61が2枚配置されている。多孔板61はポートP1,P2から所定の距離離間して配置されている。そして、ポートP1側の多孔板61とポートP2側の多孔板61との間にチャンバー室CHが定義される。このように、多孔板61を配置することによって小径のポートP1,P2から流入する流れを大径のチャンバー室CH内に均一に流入させる。
【0050】
ここで、均一な流れとはチャンバー室CH内のある水平断面での流れ速度と方向が一様であることを意味する。すなわち、図18におけるチャンバー室CH内における縦方向の任意の水平断面(評価断面)での流れが図示した矢印の長さを流速、向きを流れ方向とすると、いずれの矢印も同じ長さで同じ向きであることを意味する。この流れはチャンバー室内に配置した多孔板の空孔率とポートP1,P2からのそれぞれの配置位置により調整可能であり、解析などにより最適な寸法、配置位置を決定した。
多孔板61でチャンバー室CH内に均一に流入した濃縮海水と海水は、比重の差により上下に分離しようとし、同時にチャンバー断面積で上下方向に一様な流れが形成されるので、境界部Iが維持され、全体として濃縮海水と海水の境界部Iを維持したまま、すなわち濃縮海水と海水の混合を抑制しながら、濃縮海水によって海水を加圧し吐出することができる。海水が上方の海水ポートP2から多孔板61を通ってチャンバー室CH内に流入する場合も同様の整流効果を奏する。
【0051】
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことはいうまでもなく、例えば、エネルギー交換チャンバーの形態等は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0052】
1 海水供給ライン
2 高圧ポンプ
3 吐出ライン
4 逆浸透膜分離装置
5 濃縮海水ライン
6 制御弁
7 バルブ
8 ブースターポンプ
9 バルブ
14 スタッドボルト
15 ナット
20 エネルギー交換チャンバー
21 チャンバー本体
21a 大径部
23 フランジ
25 上パイプ
25h 孔
26 下パイプ
26h 孔
30 連結部材
31 多孔板
35 上パイプ
35a 角部
35h 孔
36 下パイプ
36a 角部
36h 孔
40 パイプ
41 多孔板
45 チューブ
51 多孔板
61 多孔板
A〜D 空間
CH チャンバー室
I 境界部
M モータ
P1 濃縮海水ポート
P2 海水ポート
R 流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプによって昇圧した海水を逆浸透膜分離装置に通水して淡水と濃縮海水に分離して海水から淡水を生成する海水淡水化システムにおいて前記逆浸透膜分離装置から吐出される濃縮海水の圧力エネルギーを前記海水を昇圧するエネルギーに利用するエネルギー交換チャンバーであって、
内部に濃縮海水および海水を収容する空間を有したチャンバーと、
前記チャンバーの下部に設けられ濃縮海水の給排水を行う濃縮海水ポートと、
前記チャンバーの上部に設けられ海水の給排水を行う海水ポートと、
前記濃縮海水ポートと連通し、流入した濃縮海水を前記チャンバー内の水平面全体に分散させる濃縮海水分散構造体と、
前記海水ポートと連通し、流入した海水を前記チャンバー内の水平面全体に分散させる海水分散構造体とを備え、
前記チャンバー内に導入された濃縮海水と海水とが前記チャンバー内の水平面全体に直接接触して、濃縮海水と海水との圧力エネルギーが交換されることを特徴とするエネルギー交換チャンバー。
【請求項2】
前記チャンバーは、長手方向を水平に配置した円筒形状のチャンバーであることを特徴とする請求項1記載のエネルギー交換チャンバー。
【請求項3】
前記濃縮海水分散構造体と前記海水分散構造体とは、水平に配置され、それぞれチャンバー内面の最下部と最上部に対向して配列された複数の孔を有するパイプ形状であることを特徴とする請求項1記載のエネルギー交換チャンバー。
【請求項4】
前記パイプ形状は、円筒形状のパイプまたは角筒形状のパイプであることを特徴とする請求項3記載のエネルギー交換チャンバー。
【請求項5】
前記濃縮海水分散構造体と前記海水分散構造体とを連結する連結部材を備え、
前記連結部材における前記濃縮海水分散構造体と前記海水分散構造体との連結部は、それぞれ、連結する分散構造体の外形形状に次第に近づくように略三角形状の断面形状をなしていることを特徴とする請求項3記載のエネルギー交換チャンバー。
【請求項6】
前記濃縮海水分散構造体と前記海水分散構造体とがそれぞれ前記チャンバー内面と対面する位置において、前記複数の孔をはさんで前記複数の孔の両側に2つの多孔板を配置し、該2つの多孔板によって前記チャンバー内面と前記濃縮海水分散構造体又は前記海水分散構造体とを接続したことを特徴とする請求項3記載のエネルギー交換チャンバー。
【請求項7】
前記濃縮海水分散構造体と前記海水分散構造体とは、前記チャンバーの中央部に水平に配置されたパイプの外面と前記チャンバー内面とを放射状に仕切る4枚の多孔板からなることを特徴とする請求項1記載のエネルギー交換チャンバー。
【請求項8】
前記濃縮海水分散構造体と前記海水分散構造体とは、前記チャンバー内で上下に間隔をおいて水平方向に配置された2枚の多孔板からなることを特徴とする請求項1記載のエネルギー交換チャンバー。
【請求項9】
前記濃縮海水ポートおよび前記海水ポートは、円筒形状のチャンバーの外周面を貫通して設けられていることを特徴とする請求項8記載のエネルギー交換チャンバー。
【請求項10】
前記チャンバーは、長手方向を鉛直に配置した円筒形状のチャンバーであることを特徴とする請求項1記載のエネルギー交換チャンバー。
【請求項11】
前記濃縮海水分散構造体と前記海水分散構造体とは、前記円筒形状のチャンバーの上下に配置された多孔板からなることを特徴とする請求項10記載のエネルギー交換チャンバー。
【請求項12】
前記上下に配置された多孔板の間に、複数の区画された流路を配置したことを特徴とする請求項11記載のエネルギー交換チャンバー。
【請求項13】
ポンプによって昇圧した海水を逆浸透膜分離装置に通水して淡水と濃縮海水に分離して海水から淡水を生成する海水淡水化システムにおいて、
前記逆浸透膜分離装置から吐出される濃縮海水の圧力エネルギーを前記海水の一部を昇圧するエネルギーに利用する請求項1乃至12のいずれか1項に記載のエネルギー交換チャンバーを備えたことを特徴とする海水淡水化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−232291(P2012−232291A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−93560(P2012−93560)
【出願日】平成24年4月17日(2012.4.17)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成22年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 委託研究:最先端PG(Mega−ton Water System)高効率エネルギー回収、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】