説明

海水淡水化システムおよび海水淡水化方法

【課題】エネルギを有効に活用でき、エネルギコストが低廉な海水淡水化システムおよび海水淡水化方法を提供する。
【解決手段】第1の本発明の海水淡水化システムは、海水と下水とを淡水化する海水淡水化システムSであって、下水またはその処理水と海水とで熱交換する熱交換器6を具備する。
第2の本発明の海水淡水化システムは、海水と下水とを淡水化する海水淡水化システムSであって、下水を膜分離活性汚泥法により処理するMBR1と、MBR1を透過した透過水s5aから塩分を第1の濃縮水s6に含んで除去し、工業用水s1を生成する第1のRO膜2と、海水を透過させて当該海水中の粒子を除去するUF膜3と、UF膜3を透過した処理水s5bが送られ、処理水s5bの塩分が第2の濃縮水s7に含まれ除去されるとともに飲料水s2を生成する第2のRO膜5と、下水またはその処理水s5a、s6、s1と海水とで熱交換する熱交換器6とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水と下水とを淡水化する海水淡水化システムおよび海水淡水化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、世界的な人口増や新興国を含む広域な産業の進展から、砂漠地域などでの飲料水や工業用水の造水需要が顕在化している。
従来、海水、下水を淡水化するシステムとして、図6に示す海水淡水化システムS100がある。
海水淡水化システムS100における下水を用いた生産水s101(工業用水)の生産は、以下のように遂行される。なお、下水の塩分濃度は、0.1%程度である。
【0003】
下水は、ポンプp101により、膜分離活性汚泥法が適用されるMBR(Membrane Bioreactor)101に送水され、MBR101で活性汚泥などが除去され、MBR101を透過したMBR透過水が、ポンプp102により低圧RO膜(Reverse Osmosis Membrane:逆浸透膜)102に送水される。
なお、MBR101を透過したMBR透過水は、塩分濃度0.1%程度で低いので、低圧RO膜102は、低圧の約1〜2MPa(メガパスカル)のRO膜が使用される。
【0004】
ポンプp102により送水されたMBR透過水は、低圧RO膜102を透過することで淡水化され、ほぼ半分が生産水s101(工業用水)として生産され、残り半分が塩分などの不純物を含む濃縮水s104として分離、除去される。
【0005】
低圧RO膜102で除去された塩分などの不純物を含む塩分濃度0.2%程度に濃縮された下水の約1/2の容量の濃縮水s104は低圧RO膜102から攪拌槽104に送水される。
【0006】
海水淡水化システムS100における海水からの生産水s102である工業用水の生産は以下のように遂行される。なお、海水の塩分濃度は、3〜4%程度である。
海水は、ポンプp103により、UF膜(Ultrafiltration Membrane)103に送水され、UF膜103で粒子が除去され攪拌槽104に送水される。攪拌槽104では、このUF膜103を透過したUF膜透過海水と、前記した低圧RO膜102で下水から濃縮された下水の1/2程度の容量の濃縮水s104とが攪拌された後、ポンプp104により、中圧RO膜105に送水される。
【0007】
UF膜103を透過したUF膜透過海水は、3〜4%の塩分濃度であるが、塩分濃度0.2%程度の濃縮水s104で希釈されるため、中圧RO膜105は、中圧の約3〜5MPaのRO膜(逆浸透膜)が使用される。
攪拌槽104からポンプp104により中圧RO膜105に送水された混合水s103は、中圧RO膜105を透過することで淡水化され、1/2程度が淡水化された生産水s102(工業用水)として生産され、残り1/2程度が塩分などの不純物を含むブラインs105として分離、除去される。つまり、生産水s102(工業用水)は、海水の1/2プラス下水の1/4程度の容量をもって生産される。
【0008】
つまり、ブラインs105は、海水の1/2プラス下水の1/4程度の容量をもって除去され排水される。
なお、ブラインs105の圧力エネルギは、動力回収装置106で回転エネルギとして回収され、ポンプp104を迂回した一部の混合水s103の中圧RO膜105への送圧の動力源(エネルギ源)として用いられる。
【0009】
従来のその他の例として、図7に示す海水淡水化システムS200がある。
海水淡水化システムS200は、図6の海水淡水化システムS100における下水の濃縮水s104を、攪拌槽204に送水せず、下水の淡水化と海水の淡水化とを独立して構成したものである。
【0010】
海水淡水化システムS200においては、海水は、UF膜203で粒子が除去されるが、攪拌槽204で下水からの送水(図6の下水の濃縮水s104)で希釈されないため、塩分濃度が約3〜4%と高い。そのため、高圧の約6〜8MPaのRO膜(逆浸透膜)である高圧RO膜205を用いている。
海水淡水化システムS200は、下水が低圧RO膜202を透過して淡水化され、下水の約半分の生産水s201(工業用水)が得られる。一方、海水はUF膜203で粒子が除去され、高圧RO膜205を透過して淡水化され、海水の1/2の量の生産水s203(飲料水)が得られる。
その他の構成は、図6の海水淡水化システムS100と同様であるから、海水淡水化システムS100の構成要素に200番台の符号を付して示し、詳細な説明は省略する。
【0011】
従来の海水淡水化システムS100(図6参照)は、海水淡水化システムS200(図7参照)に比較し、次のメリットがある。
【0012】
第1に、図6の海水淡水化システムS100では、下水から生産水s101を造水する過程で分離し除去された排水(濃縮水s104)を、海水から生産水s102を造水する過程に用いるため、海水からの生産水の生産量が高められるメリットがある。
具体的には、下水からの排水(濃縮水s104)を用いない場合には、海水からの生産水は海水の1/2程度の容量であったものが、下水の1/2程度の容量増水した分、生産水s102の工業用水を多く取水できる。
【0013】
第2に、海水(塩分濃度3〜4%程度)が、下水の低圧RO膜102で分離された濃縮水s104(塩分濃度0.2%程度)が加えられるため、海水が希釈され塩分濃度が低下する。そのため、下水からの排水(濃縮水s104)を用いない場合には、海水は塩分濃度が高いため、高圧RO膜205が必要であったのが、濃縮水s104で希釈されるため、中圧RO膜105で済み、ポンプp104の動力を高圧RO膜205の場合に比較し低下させることができる。
【0014】
何故なら、中圧RO膜の透過圧力は、約3〜5MPaであるのに対し、高圧RO膜の透過圧力は約6〜8MPaであり、高圧RO膜を透過させるためには、中圧RO膜より大きな動力(エネルギ)を必要とする。
なお、本願に係る先行技術文献として特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特許第4481345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ところで、従来の海水淡水化システムS100、S200においては、以下の問題がある。
第1に、UF膜やRO膜の透過度は透過液体の温度依存性が高い。
海水淡水化システムS100、S200は海水を淡水化するが、国や地域によっては海水が低温である場合がある。この場合、海水淡水化システムS100において、低温の海水により、UF膜103や中圧RO膜105の海水の透過度が粘度の上昇などにより低下する。そのため、低温の海水をUF膜103や中圧RO膜105に透過させるのに、ポンプp103、p104の動力が余計に必要になり、動力が大きくなるという問題がある。
【0017】
同様に、海水淡水化システムS200において、低温の海水により、UF膜203や高圧RO膜205の海水の透過度が低下する。そのため、低温の海水をUF膜203や高圧RO膜205に透過させるのに、ポンプp203、p204の動力が余計に必要になり、動力が大きくなるという問題がある。
【0018】
第2に、海水淡水化システムS100の低圧RO膜102で分離される濃縮水s104は、ポンプp102により圧送されるが、濃縮水s104の圧力エネルギは利用されていない。同様に、海水淡水化システムS200の低圧RO膜202で分離されるブラインs202はポンプp202で加圧されるが、ブラインs202の圧力エネルギは利用されていない。
従って、エネルギが有効に利用されているとは言い難い。
【0019】
第3に、海水淡水化システムS100、S200とも、ポンプを4つ設けており、ポンプの製造コスト、設置コスト、維持管理コストなどが必要で、コスト増を招来する怖れがある。
【0020】
本発明は上記実状に鑑み、エネルギを有効に活用でき、エネルギコストが低廉な海水淡水化システムおよび海水淡水化方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成すべく、第1の本発明に関わる海水淡水化システムは、海水と下水とを淡水化する海水淡水化システムであって、前記下水またはその処理水と前記海水とで熱交換する熱交換器を具備している。
第3の本発明に関わる海水淡水化方法は、第1の本発明の海水淡水化システムを実現する方法である。
【0022】
第2の本発明に関わる海水淡水化システムは、海水と下水とを淡水化する海水淡水化システムであって、前記下水を膜分離活性汚泥法により処理するMBRと、前記MBRを透過した透過水を透過させ、その塩分が第1の濃縮水に含まれ除去されるとともに工業用水を生成する第1のRO膜と、前記海水を透過させて当該海水中の粒子を除去するUF膜と、前記UF膜を透過した処理水を透過させ、当該処理水の塩分が第2の濃縮水に含まれ除去されるとともに飲料水を生成する第2のRO膜と、前記下水またはその処理水と前記海水とで熱交換する熱交換器とを具備している。
第4の本発明に関わる海水淡水化方法は、第2の本発明の海水淡水化システムを実現する方法である。
【発明の効果】
【0023】
本発明の海水淡水化システムおよび海水淡水化方法によれば、エネルギを有効に活用でき、エネルギコストが低廉な海水淡水化システムおよび海水淡水化方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る実施形態1の海水淡水化システムの概念的構成図である。
【図2】実施形態1の海水淡水化システムにおける熱交換器のバリエーションを示す概念図であり、(a)は下水の流路に海水を送流し熱交換する熱交換器を示す概念図であり、(b)は海水の流路に下水を送流し熱交換する熱交換器を示す概念図であり、(c)は下水の流路と海水の流路とに熱媒体を送流して熱交換する熱交換器を示す概念図である。
【図3】実施形態1の海水淡水化システムにおいて下水を熱交換する位置を示す図である。
【図4】実施形態2の海水淡水化システムを示す概念的構成図である。
【図5】実施形態3の海水淡水化システムを示す概念的構成図である。
【図6】従来の海水淡水化システムを示す概念的構成図である。
【図7】従来のその他の海水淡水化システムを示す概念的構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
<<実施形態1>>
図1は、本発明に係る実施形態1の海水淡水化システムの概念的構成図である。
実施形態1の海水淡水化システムSは、下水から工業用水s1を造水するために、下水を膜分離活性汚泥法で処理するMBR(Membrane Bioreactor)1と、下水に含有される塩分やイオンなどの不純物を除去し淡水化する低圧RO膜(Reverse Osmosis Membrane)2とを具備している。
【0026】
MBR1は、固液分離を行い、下水から活性汚泥を分離し除去する。
RO膜(逆浸透膜)は、水は通すが塩分などの低分子物質やイオンを通しにくい半透膜である。低圧RO膜2は、下水の塩分濃度が0.1%程度と低いので、比較的低い透過圧約1〜2MPa(メガパスカル)で塩分などを除去する低圧のRO膜である。
【0027】
また、海水淡水化システムSは、海水から飲料水s2を造水するために、海水に含有される粒子を除去するUF膜(Ultrafiltration Membrane)3と、UF膜3を透過して粒子が除去された海水を撹拌して一様にする撹拌槽4と、粒子が除去され撹拌槽4で撹拌された海水に含有される塩分やイオンなどの不純物を除去し淡水化する高圧RO膜5とを具備している。なお、撹拌槽4は、ポンプp4に供給される海水を貯留して安定的なポンプp4の作動を可能とする役割も有する。
【0028】
UF膜(限外ろ過膜)3は、海水を透過させることで膜の孔径と海水中の除去対象物質の分子の大きさによって分子レベルのふるい分けを行い、海水中の粒子を除去する。
高圧RO膜5は、海水の塩分濃度が3〜4%程度であるので、比較的高い透過圧、約6〜8MPa(メガパスカル)で塩分などを除去する高圧なRO膜である。
【0029】
ところで、海水淡水化システムSに用いる下水は地中を流れるために、例えば、温帯の地域の場合、比較的温かく約15〜20℃の温度を有している。一方、海水淡水化システムSに用いる海水は大気に晒されているため、気候の変動の影響を受け易く、つまり気温の変動の影響を受け易く、秋口には10℃前後の低温になる場合がある。
前記したように、海水を淡水化するために使用するUF膜3、高圧RO膜5は、透過液体の温度依存性が高く、低温の場合には透過度が低い一方、高温の場合には透過度が高い傾向にある。
【0030】
そこで、海水淡水化システムSでは、下水のもつ熱を海水に与える熱交換を行う熱交換器6を備えている。具体的には、熱交換器6は下水を淡水化する経路のMBR1の上流の流路r11を流れる下水と、海水を淡水化する経路のUF膜3の上流の流路r2を流れる海水とを熱交換させ、下水の熱を熱交換により海水に付与する。
【0031】
熱交換器6は、次のように種々の実施態様で構成される。
図2は、海水淡水化システムにおける熱交換器のバリエーションを示す概念図である。図2(a)は下水の流路に海水を流し熱交換する熱交換器を示す概念図であり、図2(b)は海水の流路に下水を流し熱交換する熱交換器を示す概念図であり、図2(c)は下水の流路と海水の流路とに熱媒体を流して熱交換する熱交換器を示す概念図である。
図2(a)に示す熱交換器6Aは、MBR1の上流の下水の流路r11内に、UF膜3の上流の流路r2内の海水を流すことで、下水の熱を熱交換で海水に与える構成としたものである。
【0032】
図2(b)に示す熱交換器6Bは、MBR1の上流の流路r11の下水を、UF膜3の上流の海水の流路r2内に流すことで、下水の熱を熱交換で海水に与える構成としたものである。
図2(c)に示す熱交換器6Cは、MBR1の上流の下水の流路r11内とUF膜3の上流の海水の流路r2内とに、伝熱し易い液体の熱媒体nをポンプp9で循環させ、MBR1の上流の流路r11内の下水の熱を、熱媒体nで運んでUF膜3の上流の流路r2内の海水に与える構成としたものである。
これらは、シェル&コイル式やシェル&チューブ式と称される類の熱交換器6である。
【0033】
なお、図1では、熱交換器6を下水の流路r11のポンプp1の下流かつ海水の流路r2のポンプp3の下流に配置した場合を例示しているが、熱交換器6は、下水の流路r11のポンプp1の上下流に拘らず配置でき、また海水の流路r2のポンプp3の上下流に拘らず配置できる。
また、図2(a)の熱交換器6Aの場合、海水の流路r2(図1参照)のポンプp3の下流の方が、海水の下水の流路r11への圧送力(流路r11中におかれたコイルなどへの圧送力)が得られるのでより好ましい。この場合、熱交換器6Aは下水の流路r11のポンプp1の上下流何れに配置してもよい。
【0034】
同様に、図2(b)の熱交換器6Bの場合、下水の流路r11(図1参照)のポンプp1の下流の方が、下水の海水の流路r2への圧送力が得られるのでより好ましい。この場合、熱交換器6Bは、海水の流路r2のポンプp3の上下流何れに配置してもよい。
なお、熱交換器6は、対向流熱交換器、並行流熱交換器、直交流熱交換器など何れのタイプの熱交換器を選択して用いてもよいのは勿論である。
【0035】
図3は、海水淡水化システムにおいて下水を海水と熱交換する位置を示す図である。
海水淡水化システムSにおいて、下水を海水と熱交換する位置としては、MBR1の上流の下水の流路r11の位置A、MBR1を透過後の流路r12の位置B、低圧RO膜2で除去されるブラインs6の流路r13の位置C、低圧RO膜2を透過後の流路r14の位置Dの何れでもよい。
しかし、下水の流路の上流側の方が、下水が熱を多くもつので、熱的には、上流側の位置A、位置B、位置C、位置Dの順に好ましい。
【0036】
次に、図1に示す海水淡水化システムSにおいて、下水から工業用水s1を造水する過程について説明する。
下水は、ポンプp1により海水淡水化システムS内に圧送され、熱交換器6を経由して流路r2を流れる海水と熱交換され熱を海水に与え、MBR1に送水される。下水は、MBR1を透過することで活性汚泥フロックや細菌などが除去される。
【0037】
MBR1を透過した下水のMBR透過水s5aは、ポンプp2により、低圧RO膜2に送水され、低圧RO膜2を透過することで、塩分やイオンなどの不純物を含むブラインs6が除去され淡水化され、工業用水s1が生産される。
工業用水s1は、下水の1/2程度得られる一方、下水の残余の分、すなわち下水の1/2程度が塩分やイオンなどの不純物を含むブラインs6として除去される。
【0038】
次に、海水淡水化システムSにおいて、海水から生産水である飲料水s2を造水する過程について説明する。
海水は、ポンプp3により海水淡水化システムS内に圧送され、熱交換器6を経由して下水の熱で温められ、UF膜3に送水される。熱交換器6で温められた海水は、UF膜3を透過して海水中の粒子が除去される。UF膜3で粒子が除去された海水であるUF膜透過海水s5bは、撹拌槽4で攪拌され一様にされる。
【0039】
そして、攪拌されたUF膜透過海水s5bは、ポンプp4により、高圧RO膜5に送水される。UF膜透過海水s5bは、高圧RO膜5を透過することで、ほぼ半分が塩分やイオンなどの不純物を含むブラインs7として除去され、残り半分が淡水化された飲料水s2として生産される。
【0040】
実施形態1の海水淡水化システムSによれば、熱交換器6において、低温の海水が海水より高い温度の下水の熱を回収して温められるので、温められた海水は、UF膜3、高圧RO膜5をそれぞれ容易かつ良好に透過することができる。
これに伴い、海水を圧送させるためのポンプp3、p4のそれぞれの動力を削減することができる。そのため、海水淡水化システムSの省エネルギ化を実現できる。
【0041】
<<実施形態2>>
図4は、実施形態2の海水淡水化システムを示す概念的構成図である。
実施形態2の海水淡水化システム2Sは、実施形態1の海水淡水化システムSのブラインs6の圧力エネルギを回収するエネルギ回収装置21を設けたものである。
その他の構成は、実施形態1の海水淡水化システムSと同様であるから、同一の構成要素には実施形態1と同一の符号を付して示し、詳細な説明は省略する。
【0042】
海水淡水化システム2Sは、低圧RO膜2で除去されるブラインs6の圧力エネルギを電気エネルギまたは回転エネルギ(機械的エネルギ)として回収するエネルギ回収装置21を設けている。
エネルギ回収装置21は、例えば、ブラインs6の圧力エネルギを水車や歯車などで小水力発電して、機械的エネルギを電気的エネルギ(電力)として回収している。エネルギ回収装置21で回収した電力は、海水をUF膜3に圧送するポンプp3の電力として用いる (図4中、破線で示す)。なお、ポンプp3の電力として用いず、他の電力に流用してもよい。
【0043】
或いは、エネルギ回収装置21でブラインs6の圧力エネルギを回転エネルギ(機械的エネルギ)として回収してUF膜3に流れる海水に与え、ポンプp3を設けない構成とする。
或いは、エネルギ回収装置21で回収した回転エネルギ(機械的エネルギ)が大きくない場合には、ポンプp3を設けてポンプp3の動力を減らすように構成してもよい。
或いは、公知の圧力直接変換方式のエネルギ回収装置21として、ブラインs6の圧力を直接、UF膜3に流れる海水に与える構成としてもよい。
なお、エネルギ回収装置21で回収した回転エネルギ(機械的エネルギ)や圧力エネルギをUF膜3に流れる海水に与えることなく、他の箇所に適用することとしてもよい。
【0044】
実施形態2によれば、ブラインs6の圧力エネルギをエネルギ回収装置21で回収するので、省エネルギ化を実現できる。そのため、エネルギコストを削減できる。
なお、実施形態2の海水淡水化システム2Sでは、熱交換器6を設ける場合を例示しているが、海水の温度が高い地域では熱交換器6を設けないで構成してもよい。
【0045】
<<実施形態3>>
図5は、実施形態3の海水淡水化システムを示す概念的構成図である。
実施形態3の海水淡水化システム3Sは、実施形態1の海水淡水化システムSの低圧RO膜2で分離されるブラインs6を、海水の流路r2に合流させる構成したものである。
その他の構成は、実施形態1の海水淡水化システムSと同様であるから、同一の構成要素には実施形態1と同一の符号を付して示し、詳細な説明は省略する。
【0046】
海水淡水化システム3Sは、低圧RO膜2で分離されるブラインs6を、海水の流路r2に合流させ、ブラインs6の圧力エネルギを用いて、海水のUF膜3への圧送力を得ている。そのため、ポンプp3を設けない構成としている。
この場合、海水から得られる生産水s9は、工業用水となる。なお、生産水s9を飲料水として用いてもよい。
【0047】
実施形態3の海水淡水化システム3Sによれば、ポンプp3を設けがないので、ポンプp3の製造コスト、設置コスト、維持管理コストなどが解消し、低コスト化を図れる。
なお、ブラインs6の圧力エネルギが大きくなく海水のUF膜3への圧送力が不足する場合には、ポンプp3を設ける構成としてもよい。この場合、ポンプp3の動力を削減できるため、省エネルギ化を図ることが可能である。そのため、エネルギコストを削減できる。
なお、実施形態3の海水淡水化システム3Sでは、熱交換器6を設ける場合を例示したが、海水の温度が高い地域では熱交換器6を設けないで構成してもよい。
【0048】
<<その他の実施形態>>
なお、実施形態1〜3では、下水と海水をそれぞれ淡水化して、工業用水と飲料水とを造水する場合を例示したが、本発明は、下水と海水をそれぞれ淡水化して飲料水を造水することなく工業用水を造水する場合にも適用可能である。例えば、図7の下水の一部を、海水を淡水化する経路に流入させ、工業用水を造水する場合にも適用可能である。
このように、本発明は、下水と海水をそれぞれ淡水化するシステムであれば、幅広く適用可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 MBR
2 低圧RO膜(第1のRO膜)
3 UF膜
5 高圧RO膜(第2のO膜)
6、6A、6B、6C 熱交換器
21 エネルギ回収装置
S、2S、3S 海水淡水化システム
s1 工業用水(下水の処理水)
s2 飲料水
s5a MBR透過水(透過水、下水の処理水)
s5b UF膜透過海水(処理水)
s6 ブライン(第1の濃縮水、下水の処理水)
s7 ブライン (第2の濃縮水)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水と下水とを淡水化する海水淡水化システムであって、
前記下水またはその処理水と前記海水とで熱交換する熱交換器を
具備することを特徴とする海水淡水化システム。
【請求項2】
海水と下水とを淡水化する海水淡水化システムであって、
前記下水を膜分離活性汚泥法により処理するMBRと、
前記MBRを透過した透過水を透過させ、その塩分が第1の濃縮水に含まれ除去されるとともに工業用水を生成する第1のRO膜と、
前記海水を透過させて当該海水中の粒子を除去するUF膜と、
前記UF膜を透過した処理水を透過させ、当該処理水の塩分が第2の濃縮水に含まれ除去されるとともに飲料水を生成する第2のRO膜と、
前記下水またはその処理水と前記海水とで熱交換する熱交換器とを
具備することを特徴とする海水淡水化システム。
【請求項3】
前記熱交換器は、
前記UF膜より上流の前記海水と、前記MBRの上流の下水または前記MBRを透過した透過水または前記第1の濃縮水または前記生成された工業用水のうちの何れかとで、熱交換する
ことを特徴とする請求項2に記載の海水淡水化システム。
【請求項4】
前記第1の濃縮水の圧力エネルギを回収するエネルギ回収装置を
具備することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の海水淡水化システム。
【請求項5】
前記第1の濃縮水を、前記UF膜の上流の前記海水に合流させる
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の海水淡水化システム。
【請求項6】
海水と下水とを淡水化する海水淡水化方法であって、
前記下水またはそれを淡水化する過程での処理水と前記海水とで熱交換する
ことを特徴とする海水淡水化方法。
【請求項7】
海水と下水とを淡水化する海水淡水化方法であって、
前記下水またはそれを淡水化する過程での処理水と、前記海水とで熱交換し、
前記下水を、MBRと第1のRO膜とを透過させて工業用水を生成し、
前記海水を、UF膜と第2のRO膜とを透過させて飲料水を生成する
ことを特徴とする海水淡水化方法。
【請求項8】
前記第1のRO膜で除去された第1の濃縮水の圧力エネルギを回収する
ことを特徴とする請求項7に記載の海水淡水化方法。
【請求項9】
前記第1のRO膜で除去された第1の濃縮水を、前記UF膜の上流の前記海水に合流させる
ことを特徴とする請求項7に記載の海水淡水化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−43153(P2013−43153A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184562(P2011−184562)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】