説明

海水淡水化方法および海水淡水化装置

【課題】 生物処理水及び海水を用いて浄化水を得つつ、バイオファウリングを抑制し得る海水淡水化方法を提供する。
【解決手段】 有機性廃水が生物処理されて得られる生物処理水を第1逆浸透膜装置でろ過処理して濃縮水を得、該濃縮水を希釈水として海水に混合して混合水を得、該混合水を第2逆浸透膜装置でろ過処理する海水淡水化方法であって、
生物処理水を前記第1逆浸透膜装置でろ過処理して第1濃縮水を得、該第1濃縮水及び海水を混合して第1混合水を得、前記第2逆浸透膜装置で該第1混合水をろ過処理する第1工程と、前記第2逆浸透膜装置で生物処理水をろ過処理して第2濃縮水を得、該第2濃縮水及び海水を混合して第2混合水を得、前記第1逆浸透膜装置で該第2混合水をろ過処理する第2工程とを交互に実施することを特徴とする海水淡水化方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水淡水化方法および海水淡水化装置に関し、例えば、逆浸透膜(RO膜)を有する逆浸透膜装置によるろ過処理によって海水を淡水化する海水淡水化方法および海水淡水化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化等により雨が局所的に若しくは短時間に降ってしまい水資源が地理的若しくは時間的に偏在してしまうことや、林業衰退や森林伐採等により山間部の保水力が低下してしまうこと等により、水資源を安定的に確保することが難しいという問題がある。
【0003】
水資源を安定的に確保すべく、例えば、臨海地域では、逆浸透膜装置によるろ過処理によって海水から浄化水たる淡水を得る海水淡水化方法及び海水淡水化装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載の海水淡水化方法及び海水淡水化装置では、海水を逆浸透膜装置でろ過処理するのに海水をポンプ等で加圧して該逆浸透膜装置に圧送する必要があり、海水の塩濃度が高いほど海水を該逆浸透膜装置に圧送するために多大なエネルギー(動力)が必要となるという問題がある。
【0005】
そこで、有機物を含有する廃水(以下、「有機性廃水」とも言う。)が生物処理槽内で生物処理されて得られる生物処理水を第1逆浸透膜装置でろ過処理して第1濃縮水及び浄化水たる第1透過水を得、該第1濃縮水を希釈水として海水に混合して混合水を得、第2逆浸透膜装置で該混合水をろ過処理して浄化水たる第2透過水(淡水)を得る海水淡水化方法及び海水淡水化装置が提案されている(例えば、特許文献2)。
前記第1逆浸透膜装置で得られる第1濃縮水は、海水より塩濃度が低いことから、該第1濃縮水を希釈水として海水と混合することで得られる混合水も、海水より塩濃度が低い。よって、所定の量の浄化水たる淡水を得るべく逆浸透膜装置に混合水を圧送するのに必要なエネルギーは、逆浸透膜装置に海水を圧送するのに必要なエネルギーに比して小さいため、斯かる海水淡水化方法及び海水淡水化装置によれば、得られる浄化水の単位量当たりにおける圧送に必要なエネルギーを抑制することができるという利点がある。
また、斯かる海水淡水化方法及び海水淡水化装置によれば、生物処理水を前記第1逆浸透膜装置でろ過処理することにより、第1逆浸透膜装置から得られる第1透過水を浄化水として得ることができるという利点もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−55317号公報
【特許文献2】特開2010−149100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記生物処理水には、生物(細菌、原生動物、後生動物等)と、該生物による分解がされずに残った残留有機物と、該生物が分泌する分泌物とが含まれているため、上記特許文献2の海水淡水化方法及び海水淡水化装置では、前記生物、前記残留有機物、及び前記分泌物が第1逆浸透膜装置のRO膜(以下、「第1RO膜」ともいう。)に付着し堆積して、該第1RO膜の詰まり(「ファウリング」ともいい、特に生物由来の「ファウリング」を「バイオファウリング」ともいう。)が生じる場合がある。また、生物処理水は、通常、生物処理槽から第1逆浸透膜装置に移送される途中で生物処理水貯留槽に一旦貯留されるが、該生物処理水貯留槽に生物処理水が貯留されている際に、空気等を介して生物処理水に微生物が混入し、その結果、この微生物によってもバイオファウリングが生じる場合もある。そして、該RO膜に付着した生物が分泌物を分泌し増殖して、バイオファウリングが形成される場合がある。そして、該第1RO膜に付着した生物が分泌物を分泌して増殖し続ける結果、バイオファウリングが進行する場合がある。
バイオファウリングは、前記第1RO膜の膜面を通過する際の水の抵抗(流路抵抗)を増加させる要因となる。従って、前記第1RO膜でバイオファウリングが進行した状態において、バイオファウリングが生じる前と同じ流束で浄化水を得るには、生物処理水を前記第1RO膜に送水するための圧力を増加させる必要があり、その結果、多大なエネルギー(動力)が必要となる。さらには、該第1逆浸透膜装置の第1RO膜エレメントに多大な流路抵抗が生じた状態で第1逆浸透膜装置に生物処理水を送ると、該第1RO膜エレメントに負荷がかかり、該第1RO膜エレメントの第1RO膜が損傷するおそれがある。また、前記第1RO膜でバイオファウリングが進行した状態において、バイオファウリングが生じる前と同じ圧力で生物処理水を第1逆浸透膜装置に供給すると、得られる浄化水たる透過水の流束が小さくなるという問題がある。
斯かる問題を解消するには、前記第1RO膜を洗浄したり、バイオファウリングを抑制することが考えられるが、洗浄のために使用する薬品(アルカリ、酸、酸化剤、還元剤等)やバイオファウリング抑制剤(塩素系化合物等)の分のコストがかかり、また、洗浄等のために第1逆浸透膜装置を停止することとなって所望の量の浄化水を得ることができなくなるという問題がある。また、前記第1逆浸透膜装置を停止することで、海水を希釈するための第1濃縮水を得ることができなくなるため、海水から第2逆浸透膜装置を用いてエネルギー効率良く浄化水たる第2透過水を得ることができないという問題がある。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑み、生物処理水及び海水を用いて浄化水を得つつ、バイオファウリングを抑制し得る海水淡水化方法及び海水淡水化装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、有機性廃水が生物処理されて得られる生物処理水を第1逆浸透膜装置でろ過処理して濃縮水を得、該濃縮水を希釈水として海水に混合して混合水を得、該混合水を第2逆浸透膜装置でろ過処理する海水淡水化方法であって、
生物処理水を前記第1逆浸透膜装置でろ過処理して第1濃縮水を得、該第1濃縮水及び海水を混合して第1混合水を得、前記第2逆浸透膜装置で該第1混合水をろ過処理する第1工程と、前記第2逆浸透膜装置で生物処理水をろ過処理して第2濃縮水を得、該第2濃縮水及び海水を混合して第2混合水を得、前記第1逆浸透膜装置で該第2混合水をろ過処理する第2工程とを交互に実施することを特徴とする海水淡水化方法にある。
【0010】
斯かる海水淡水化方法によれば、前記第1工程では前記生物処理水に含まれていた生物等が前記第1逆浸透膜装置の第1RO膜に付着し得るが、前記第1工程後に前記第2工程を実施することにより、海水を含んでいる第2混合水が前記第1逆浸透膜装置でろ過処理されるので、前記第1RO膜に付着した生物が第2混合水中の塩等により生育し難くなり、前記第1RO膜のバイオファウリングを抑制することができるという利点がある。
また、斯かる海水淡水化方法によれば、前記第1RO膜のみならず、該第2逆浸透膜装置の逆浸透膜(以下、「第2RO膜」ともいう。)に対しても同様な利点がある。即ち、前記第2工程では前記生物等が前記第2逆浸透膜装置の第2RO膜に付着し得るが、前記第2工程後に前記第1工程を実施することにより、海水を含んでいる第1混合水が前記第2逆浸透膜装置でろ過処理されるので、前記第2RO膜に付着した生物が第1混合水中の塩等により生育し難くなり、前記第2RO膜のバイオファウリングを抑制することができるという利点がある。
さらに、斯かる海水淡水化方法によれば、海水が含有されている混合水と、生物処理水とを逆浸透膜装置でろ過処理することにより、浄化水たる透過水を得ることができる。
即ち、斯かる海水淡水化方法によれば、生物処理水及び海水を用いて浄化水を得つつ、バイオファウリングを抑制し得る。
【0011】
また、本発明は、有機性廃水が生物処理されて得られる生物処理水をろ過処理して濃縮水を得る第1逆浸透膜装置が備えられてなり、該濃縮水が希釈水として海水に混合されて混合水が得られるように構成されてなり、更に、該混合水をろ過処理する第2逆浸透膜装置が備えられてなる海水淡水化装置であって、
生物処理水を前記第1逆浸透膜装置でろ過処理して第1濃縮水を得、該第1濃縮水及び海水を混合して第1混合水を得、前記第2逆浸透膜装置で該第1混合水をろ過処理する第1工程と、前記第2逆浸透膜装置で生物処理水をろ過処理して第2濃縮水を得、該第2濃縮水及び海水を混合して第2混合水を得、前記第1逆浸透膜装置で該第2混合水をろ過処理する第2工程とを交互に実施しうるように構成されていることを特徴とする海水淡水化装置にある。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、生物処理水及び海水を用いて浄化水を得つつ、バイオファウリングを抑制し得る海水淡水化方法及び海水淡水化装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態における海水淡水化装置の概略図である。
【図2】同実施形態の一状態を示す概略図である。
【図3】同実施形態の一状態を示す概略図である。
【図4】本発明の実施の形態における海水淡水化装置の利点を説明するための図である。
【図5】本発明の他の実施形態における海水淡水化装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0015】
まず、本実施形態に係る海水淡水化装置について説明する。
【0016】
図1は、本実施形態の海水淡水化装置の概略図である。
図1に示すように、本実施形態の海水淡水化装置10は、有機性廃水Bを生物処理して生物処理水を得る生物処理槽11と、精密ろ過膜(MF膜)及び限外ろ過膜(UF膜)の少なくとも何れかを有し且つ生物処理水をろ過処理により除濁して第1除濁処理水を得る第1除濁装置12と、第1除濁処理水を加圧する第1加圧部13と、加圧された第1除濁処理水を生物処理水としてろ過処理して浄化水Cたる第1透過水及び第1濃縮水を得る第1逆浸透膜装置14と、精密ろ過膜(MF膜)及び限外ろ過膜(UF膜)の少なくとも何れかを有し且つ海水Aをろ過処理により除濁して第2除濁処理水を得る第2除濁装置15と、海水Aとしての第2除濁処理水及び第1濃縮水を混合して第1混合水を得る混合部16と、第1混合水を加圧する第2加圧部17と、加圧された第1混合水をろ過処理する第2逆浸透膜装置18とを備えている。
【0017】
前記海水Aは、塩を含む水であり、例えば、塩濃度が1.0質量%以上8.0質量%以下の水であり、より具体的には、塩濃度が例えば2.5質量%以上6.0質量%以下である。
本明細書において、海水Aは、海に存在する水に限定されず、塩濃度が1.0質量%以上の水であれば、湖(塩湖、汽水湖)の水、沼水、池水等の陸に存在する水も含む。
【0018】
前記有機性廃水Bは、有機物を含む廃水であり、例えば、有機物濃度の指標としてのBOD(生物化学的酸素要求量)が2000mg/L以下の廃水であり、より具体的には、100〜2000mg/Lの廃水である。また、有機性廃水Bは、海水よりも塩濃度が低い水である。有機性廃水Bは、例えば、海水Aの塩濃度に対する有機性廃水Bの塩濃度の比が0.1以下のもの、より具体的には、海水Aの塩濃度に対する有機性廃水Bの塩濃度の比が0.01以下のものである。
前記有機性廃水Bとしては、下水(生活廃水、雨水が下水道に流れた水等)、工業廃水(食品工場、化学工場、電子産業工場、パルプ工場等の工場から排出される廃水)等が挙げられる。
【0019】
前記生物処理は、細菌、原生動物、後生動物等の生物種によって水に含まれる有機物を分解する処理である。前記生物処理としては、例えば、活性汚泥を用いた曝気処理等を挙げることができる。
【0020】
本明細書において、除濁は、逆浸透膜装置でろ過処理する前に、逆浸透膜装置で分離するよりも粗い不純物(例えば、固形物質等)を除去することを意味し、例えば、逆浸透膜ろ過よりも粗いろ過をすることや沈降分離をすることなどを意味する。
【0021】
前記第1除濁装置12は、MF膜及びUF膜の少なくとも何れか1つを有するろ過膜を備えている。該ろ過膜は、前記生物処理槽11の液面下に浸漬膜として設置されている。
【0022】
前記加圧部13、17としては、例えばポンプ等が挙げられる。
【0023】
前記逆浸透膜装置14、18は、RO膜と、該RO膜を収容する圧力容器とを備えている。本明細書におけるRO膜は、ナノろ過膜(NF膜)を含む概念である。
【0024】
前記第2除濁装置15は、MF膜及びUF膜の少なくとも何れか1つを有するろ過膜と、このろ過膜を収容する圧力容器とを備えている。
【0025】
また、本実施形態の海水淡水化装置10は、図2に示すように、有機性廃水Bを生物処理槽11で生物処理して生物処理水を得、生物処理水を第1除濁装置12で除濁して第1除濁処理水を得、第1除濁処理水を第1加圧部13で加圧し、加圧された第1除濁処理水を第1逆浸透膜装置14でろ過処理して浄化水Cたる第1透過水及び第1濃縮水を得、海水Aを第2除濁装置15で除濁して第2除濁処理水を得、第2除濁処理水及び第1濃縮水を混合部16で混合して第1混合水を得、第1混合水を第2加圧部17で加圧し、加圧された第1混合水を第2逆浸透膜装置18でろ過処理して淡水たる第3透過水及び第3濃縮水Dを得る第1工程を実施しうるように構成されている。
また、本実施形態の海水淡水化装置10は、前記第1工程の実施時に、有機性廃水Bが生物処理槽11に移送され、第1除濁処理水が第1逆浸透膜装置14に移送され、第1透過水が浄化水Cとして浄化水貯留槽(図示せず)に移送され、第1濃縮水が混合部16に移送され、海水Aが第2除濁装置15に移送され、第2除濁処理水が混合部16に移送され、第1混合水が第2逆浸透膜装置18に移送され、淡水たる第3透過水が浄化水Eとして浄化水貯留槽(図示せず)に移送され、第3濃縮水Dが濃縮水貯留槽(図示せず)に移送されるように構成されている。
さらに、本実施形態の海水淡水化装置10は、複数の経路を備えており、例えば、第1除濁処理水を第1逆浸透膜装置14に移送する第1移送径路20aと、第1濃縮水を混合部16に移送する第2移送径路20bと、第1混合水を第2逆浸透膜装置18に移送する第3移送径路20cと、第3濃縮水Dを濃縮水貯留槽(図示せず)に移送する第4移送径路20dとを備えている。
【0026】
さらに、本実施形態の海水淡水化装置10は、図3に示すように、有機性廃水Bを生物処理槽11で生物処理して生物処理水を得、生物処理水を第1除濁装置12で除濁して第1除濁処理水を得、第1除濁処理水を第1加圧部13で加圧し、加圧された第1除濁処理水を第2逆浸透膜装置18でろ過処理して第2透過水及び第2濃縮水を得、海水Aを前記第2除濁装置15で除濁して第2除濁処理水を得、第2除濁処理水及び第2濃縮水を混合部16で混合して第2混合水を得、第2混合水を第2加圧部17で加圧し、加圧された第2混合水を前記第1逆浸透膜装置14でろ過処理して第4透過水及び第4濃縮水Fを得る第2工程を実施しうるように構成されている。
また、本実施形態の海水淡水化装置10は、前記第2工程の実施時に、有機性廃水Bが生物処理槽11に移送され、第1除濁処理水が第2逆浸透膜装置18に移送され、第2透過水が浄化水Eとして浄化水貯留槽(図示せず)に移送され、第2濃縮水が混合部16に移送され、海水Aが第2除濁装置15に移送され、第2除濁処理水が混合部16に移送され、第2混合水が第1逆浸透膜装置14に移送され、淡水たる第4透過水が浄化水Cとして浄化水貯留槽(図示せず)に移送され、第4濃縮水Fが濃縮水貯留槽(図示せず)に移送されるように構成されている。
さらに、本実施形態の海水淡水化装置10は、上述の経路の他に、例えば、第1除濁処理水を第2逆浸透膜装置18に移送する第5移送径路20eと、第3濃縮水を混合部16に移送する第6移送径路20fと、第2混合水を第1逆浸透膜装置14に移送する第7移送径路20gと、第4濃縮水Fを濃縮水貯留槽(図示せず)に移送する第8移送径路20hとを備えている。
【0027】
さらに、本実施形態の海水淡水化装置10は、各移送径路に介装されたバルブを備えている。具体的には、本実施形態の海水淡水化装置10は、前記バルブとして、前記第1移送経路20a、前記第2移送経路20b、前記第3移送経路20c、前記第4移送経路20d、前記第5移送経路20e、前記第6移送経路20f、前記第7移送経路20g、及び前記第8移送経路20hにそれぞれ介装された第1バルブ19a、第2バルブ19b、第3バルブ19c、第4バルブ19d、第5バルブ19e、第6バルブ19f、第7バルブ19g、及び第8バルブ19hを備えている。
【0028】
また、本実施形態の海水淡水化装置10は、各バルブの開閉操作によって流路を決定するバルブ機構を備えている。また、本実施形態の海水淡水化装置10は、前記バルブ機構により、前記第1〜4バルブが開状態とされ、前記第5〜8バルブが閉状態とされることで、前記第1工程が実施されるように構成されている。さらに、本実施形態の海水淡水化装置10は、前記バルブ機構により、前記第1〜4バルブが閉状態とされ、前記第5〜8バルブが開状態とされることで、前記第2工程が実施されるように構成されている。
このように、本実施形態の海水淡水化装置10は、前記バルブ機構によって各バルブを開閉するように構成されていることから、前記第1工程と前記第2工程とを交互に実施することができる。
【0029】
前記混合部16で得られる混合水の塩濃度は、前記生物処理水に非好塩性生物が含まれている場合には、0.2M(0.2mol/L)を超えることが好ましい。また、該塩濃度は、前記生物処理水に非好塩性生物及び低度好塩性生物が含まれている場合には、0.5Mを超えることがより好ましい。非好塩性生物の生育を十分に抑制する塩濃度は0.2Mであり、非好塩性生物及び低度好塩性生物の生育を十分に抑制する塩濃度は0.5Mであるからである。
また、前記混合水の塩濃度は、0.8M以下が好ましく、0.6M以下がより好ましい。
【0030】
以下に、図4を参照して、前記混合水の塩濃度が上記範囲であることが好ましい理由について詳しく説明する。
【0031】
図4に示すように、一の逆浸透膜装置に供給する水(以下、「供給水」ともいう。)における海水の体積比率(海水混合比)が低いほど、供給水の塩濃度(供給水塩濃度)が低くなる。このため、供給水を加圧するエネルギーが海水のみからなる場合に比べて小さいので、得られる浄化水たる淡水の量当たりにおける、海水を淡水化するのに必要なエネルギー量を抑制できる。このように、要するエネルギーを低減するためには、海水混合比が小さいことが好ましい。
【0032】
しかし、図4において、海水混合比が30%以下の場合、即ち、供給水の塩濃度が0.2M以下の場合には、非好塩性の雰囲気であるので、非好塩性生物が生育可能である。海水混合比が30%を超えて80%以下の場合、即ち、供給水の塩濃度が0.2Mを超えて0.5M以下の場合には、低度好塩性の雰囲気であるので、低度好塩性生物が生育可能である。
ここで、供給水中に存在する生物について説明する。生物を耐塩性で分類すると、高度好塩性生物と、中度好塩性生物と、低度好塩性生物と、非好塩性生物とに分かれる。高度好塩性生物は、至適増殖NaCl濃度が2.5Mを超える生物である。中度好塩性生物は、至適増殖NaCl濃度が0.5Mを超えて2.5M以下であり、様々な含塩試料から分離される細菌が該当する。低度好塩性生物は、至適増殖NaCl濃度が0.2Mを超えて0.5M以下であり、例えば、海洋性の高等生物や細菌が該当する。非好塩性生物は、至適増殖NaCl濃度が0Mを超えて0.2M以下であり、多くの高等生物や土壌細菌が該当する。
【0033】
仮に、海水の塩濃度が3.5質量%である場合、NaCl(MW:モル質量=58.44)換算で0.6Mになる。また、生物処理水の塩濃度が0.024質量%である場合、NaCl換算で0.004Mとなり、第1除濁装置12及び一の逆浸透膜装置によるろ過処理をして得られる濃縮水の塩濃度は0.02M程度である。
図4に示すように、海水混合比が0%の場合、即ち、供給水が生物処理水由来の濃縮水のみ(濃縮水100%)の場合、供給水の塩濃度は0.02Mである。海水混合比が20%の場合、即ち、供給水が海水20%で濃縮水80%の場合、供給水の塩濃度は0.12Mである。海水混合比が40%の場合、即ち、供給水が海水40%で濃縮水60%の場合、供給水の塩濃度は0.24Mである。海水混合比が60%の場合、即ち、供給水が海水60%で濃縮水40%の場合、供給水の塩濃度は0.36Mである。海水混合比が80%の場合、即ち、供給水が海水80%で濃縮水20%の場合、供給水の塩濃度は0.50Mである。海水混合比が100%の場合、即ち、供給水が海水のみ(海水100%)の場合、供給水の塩濃度は0.60Mである。
【0034】
生物の生育は、至適増殖NaCl濃度の範囲外で十分に抑制され、特に至適増殖NaCl濃度よりも高くなると効果的に抑制され、生物が死滅される場合もある。このため、図4に示すように、供給水の海水混合比が30%以下である場合には、供給水の塩濃度は0.2M以下であるので、非好塩性生物は生育可能である。また、供給水の海水混合比30%を超え80%以下である場合には、供給水の塩濃度は0.2Mを超え0.5M以下であるので、低度好塩性生物は生育可能である。しかし、供給水の塩濃度が0.5Mを超えるように海水の比率を高めると、非好塩性生物及び低度好塩性生物の生育が十分に抑制される。また、生物処理水には非好塩性生物及び低度好塩性生物が相対的に多く含まれている。よって、一の逆浸透膜装置で生物処理水をろ過処理することで該一の逆浸透膜装置のRO膜に非好塩性生物及び低度好塩性生物が付着した後に、塩濃度が0.5Mを超える混合水を該一の逆浸透膜装置でろ過処理することにより、該一の逆浸透膜装置に付着した非好塩性生物及び低度好塩性生物の生育を十分に抑制できる。
従って、前記混合水の塩濃度が上記好ましい範囲となることにより、海水淡水化に要するエネルギーを低減しつつ、バイオファウリングを十分に抑制することができる。
【0035】
本実施形態の海水淡水化方法は、本実施形態の海水淡水化装置を用いて、前記第1工程と前記第2工程とを交互に実施する方法である。
【0036】
尚、本実施形態の海水淡水化方法及び海水淡水化装置は、上記構成を有するものであるが、本発明の海水淡水化方法及び海水淡水化装置は、上記構成に限定されず、適宜設計変更可能である。
【0037】
例えば、本実施形態の海水淡水化装置では、前記第1除濁装置12のろ過膜が、前記生物処理槽11の液面下に浸漬膜として設置されているが、本発明の海水淡水化装置では、前記第1除濁装置12のろ過膜が、図5に示すように、槽外に設置されるタイプのものであってもよい。このような態様では、前記第1除濁装置12が、前記ろ過膜を収容する収容容器を備えてもよい。
【0038】
また、本実施形態の海水淡水化装置では、前記第1除濁装置12が、前記ろ過膜を備えているが、本発明の海水淡水化装置では、前記第1除濁装置12が、前記ろ過膜の代わりに、砂ろ過器を有する砂ろ過手段、及び被処理水を沈殿分離する沈殿分離槽の少なくとも何れかを備えてもよい。また、本発明の海水淡水化装置では、前記第1除濁装置12が、前記ろ過膜を備え、更に、前記砂ろ過手段及び沈殿分離槽の少なくとも何れかを備えてもよい。なお、砂ろ過器は固形物質等の不純物によって詰まりやすいことから、前記第1除濁装置12は、前記砂ろ過手段を備える場合には、更に沈殿分離槽を備え且つ生物処理水を沈殿分離槽で沈殿分離して上澄水を得、該上澄水を前記砂ろ過手段でろ過処理するように構成されていることが好ましい。
【0039】
さらに、本実施形態の海水淡水化装置では、前記第2除濁装置15が、前記ろ過膜を備えているが、本発明の海水淡水化装置では、前記第2除濁装置15が、前記ろ過膜の代わりに、砂ろ過器を有する砂ろ過手段、及び被処理水を沈殿分離する沈殿分離槽の少なくとも何れかを備えてもよい。また、本発明の海水淡水化装置では、前記第2除濁装置15が、前記ろ過膜を備え、更に、前記砂ろ過手段及び沈殿分離槽の少なくとも何れかを備えてもよい。なお、砂ろ過器は固形物質等の不純物によって詰まりやすいことから、前記第2除濁装置15は、前記砂ろ過手段を備える場合には、更に沈殿分離槽を備え且つ海水を沈殿分離槽で沈殿分離して上澄水を得、該上澄水を前記砂ろ過手段でろ過処理するように構成されていることが好ましい。
【符号の説明】
【0040】
10:海水淡水化装置、11:生物処理槽、12:第1除濁装置、13:第1加圧部、14:第1逆浸透膜装置、15:第2除濁装置、16:混合部、17:第2加圧部、18:第2逆浸透膜装置、A:海水、B:有機性廃水、C:浄化水、D:濃縮水、E:浄化水、F:濃縮水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃水が生物処理されて得られる生物処理水を第1逆浸透膜装置でろ過処理して濃縮水を得、該濃縮水を希釈水として海水に混合して混合水を得、該混合水を第2逆浸透膜装置でろ過処理する海水淡水化方法であって、
生物処理水を前記第1逆浸透膜装置でろ過処理して第1濃縮水を得、該第1濃縮水及び海水を混合して第1混合水を得、前記第2逆浸透膜装置で該第1混合水をろ過処理する第1工程と、前記第2逆浸透膜装置で生物処理水をろ過処理して第2濃縮水を得、該第2濃縮水及び海水を混合して第2混合水を得、前記第1逆浸透膜装置で該第2混合水をろ過処理する第2工程とを交互に実施することを特徴とする海水淡水化方法。
【請求項2】
有機性廃水が生物処理されて得られる生物処理水をろ過処理して濃縮水を得る第1逆浸透膜装置が備えられてなり、該濃縮水が希釈水として海水に混合されて混合水が得られるように構成されてなり、更に、該混合水をろ過処理する第2逆浸透膜装置が備えられてなる海水淡水化装置であって、
生物処理水を前記第1逆浸透膜装置でろ過処理して第1濃縮水を得、該第1濃縮水及び海水を混合して第1混合水を得、前記第2逆浸透膜装置で該第1混合水をろ過処理する第1工程と、前記第2逆浸透膜装置で生物処理水をろ過処理して第2濃縮水を得、該第2濃縮水及び海水を混合して第2混合水を得、前記第1逆浸透膜装置で該第2混合水をろ過処理する第2工程とを交互に実施しうるように構成されていることを特徴とする海水淡水化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−86019(P2013−86019A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228765(P2011−228765)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【特許番号】特許第4933679号(P4933679)
【特許公報発行日】平成24年5月16日(2012.5.16)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
【Fターム(参考)】