海水淡水化装置の濃縮海水放流方法
【課題】海水淡水化装置から放流される濃縮海水は塩分濃度が高いため、この濃縮海水を海域に放流すると、海域の塩分濃度が通常海水の塩分濃度よりも高くなり、海洋生態系の影響が懸念される。対応策として海水で濃縮海水を希釈する方法が採られるが、通常海水まで塩分濃度を低下させることが困難であるという課題があった。
【解決手段】取水した海水を加圧して逆浸透膜を透過させて透過水を得て、逆浸透膜を透過しない濃縮海水を系外に放流する海水淡水化装置3からの、濃縮海水を下水処理場から排出される処理水と混合し記処理水が混合された混合濃縮海水を海域に放流する。
【解決手段】取水した海水を加圧して逆浸透膜を透過させて透過水を得て、逆浸透膜を透過しない濃縮海水を系外に放流する海水淡水化装置3からの、濃縮海水を下水処理場から排出される処理水と混合し記処理水が混合された混合濃縮海水を海域に放流する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は海水淡水化装置から排出される濃縮海水放流方法に係り、特に、濃縮海水の放流域への生態系への影響を軽減するのに好適な海水淡水化装置の濃縮海水放流方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海水を原水とした海水淡水化装置には、逆浸透膜モジュールを備えた逆浸透膜造水装置が用いられ、一般に、取水する海水中の濁質分を凝集処理後、砂ろ過器またはMF膜等を用いた膜ろ過により凝集処理後の濁質分を除去し、供給水として逆浸透膜装置に加圧供給して透過水を得る手段が採られる。また、海水中には微生物また藻類等が存在するが、これらが逆浸透膜面に付着して増殖するとバイオファウリングの要因となるため、必要に応じて取水海水には、凝集処理前の段階で殺菌を目的として残留性を有する塩素水または次亜塩素酸ナトリウム等の塩素系殺菌剤を注入する塩素注入処理が採られる。
【0003】
このような海水淡水化装置において、逆浸透膜を通過した透過水が淡水として得られる一方、逆浸透膜を通過しなかった塩分が濃縮された濃縮海水が排出される。この海水淡水化装置から排出される濃縮海水の塩分濃度は、透過水の回収率が大きくするに従い高くなる。透過水回収率40%〜60%では、濃縮海水の塩分濃度は約6%から8%となり、通常海水(溶解性NaCl、約3.5%)の約1.7倍〜2.5倍に達するが、現状では直接取水海域に放流されている。
【0004】
この場合、高濃度の濃縮海水の海域への放流に伴い、海洋生態系への影響が懸念される。このため、例えば、〔特許文献1〕で知られているように、濃縮海水の放流に際して、濃縮海水よりも塩分濃度の低い海水と混合して濃縮海水の塩分濃度を低くして放流する方法が提案されている。しかし、海水で濃縮海水を希釈するため、図13に海水混合比と海水混合後の濃縮海水塩分濃度の関係を示すように、放流する濃縮海水量に対して十数倍以上の海水量を混合しないと、通常海水の塩分濃度付近に達しない。このため、海水で通常海水の塩分濃度近くまで濃縮海水を希釈しようとすると、取水海水量以上の希釈海水を必要とし、これに要するポンプ設備と多大な動力は対応策を実質的に困難とする。一方、海水混合比を低くすれば、希釈海水を得る設備と動力は減少するが、海域に放流される濃縮海水の塩分濃度が高くなる。この結果、放流濃縮海水による海洋生態系への影響を回避することが困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−132017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように海水淡水化装置にあっては、淡水として得られる透過水とは別に、必然的に濃縮海水が発生するため、この濃縮海水の海域への放流に伴い海洋生態系への影響が常に懸念される。
【0007】
本発明の目的は、海水淡水化装置から濃縮海水を海域に放流するに際して、放流海域における塩分濃度上昇を抑制して海洋生態系への影響が低減可能な海水淡水化装置の濃縮海水放流方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の海水淡水化装置の濃縮海水放流方法は、取水した海水を加圧して逆浸透膜を透過させて透過水を得て、逆浸透膜を透過しない濃縮海水を系外に放流する海水淡水化装置からの、濃縮海水を下水処理場から排出される処理水と混合し、処理水が混合された混合濃縮海水を海域に放流することを特徴とする。
【0009】
又、混合濃縮海水の放流管である濃縮海水放流管に設置された塩分濃度計及び濃縮海水流量計で計測された濃縮海水の塩分濃度及び濃縮海水流量と、混合濃縮海水の塩分濃度の設定目標値に基づいて下水処理場からの処理水の流量である必要処理水流量を求めて、必要処理水流量と濃縮海水流量との混合比を調整することを特徴とする。
【0010】
又、下水処理場からの処理水流量のうち、濃縮海水に混合する必要処理水流量を除いた余分の処理水流量が存在する場合、余分の処理水流量を処理水放流分岐管から放流することを特徴とする。
【0011】
又、混合濃縮海水の塩分濃度を塩分濃度計により測定して、混合濃縮海水の塩分濃度設定目標値と塩分濃度測定値との偏差に応じて濃縮海水と下水処理水との混合比を調整することを特徴とする。
【0012】
又、混合濃縮海水の放流海域に海水の塩分濃度を測定する塩分濃度計を配置し、塩分濃度計で測定された塩分濃度と予め設定した前記放流海域における塩分濃度規準値との偏差に応じて、濃縮海水流量と処理水流量との混合比を調整することを特徴とする。
【0013】
又、混合濃縮海水の放流海域の複数の箇所で塩分濃度を測定し、測定された塩分濃度の内、最大値の塩分濃度を選定して、選定された塩分濃度と塩分濃度目標値との偏差を求めることを特徴とする。
【0014】
又、取水した海水を加圧して逆浸透膜を透過させて透過水を得て、逆浸透膜を透過しない濃縮海水を系外に放流する海水淡水化装置から、濃縮海水が放流される海域に塩分濃度を測定する塩分濃度計を配置して、塩分濃度計の測定値が予め設定された塩分濃度目標値よりも高いとき、下水処理場からの処理水を前記海域に放流前の濃縮海水に混合し、混合した後の混合濃縮海水を海域に放流することを特徴とする。
【0015】
又、下水処理場から系外に放流される処理水の全流量を海水淡水化装置から放流される濃縮海水に混合することを特徴とする。
【0016】
又、取水した海水を加圧して逆浸透膜を透過させて透過水を得て、逆浸透膜を透過しない濃縮海水を系外に放流する海水淡水化装置と、流入下水を処理して処理水を系外に放流する下水処理場とを備え、濃縮海水が放流される濃縮海水放流管と前記処理水が放流される処理水放流管とを合流させ、濃縮海水と処理水の合流後の下流側を濃縮海水が放流される海域内に臨ませたことを特徴とする。
【0017】
又、海水淡水化装置の設置位置が下水処理場の設置位置よりも低位置にあり高低差を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、海水淡水化装置から放流される塩分濃度の高い濃縮海水に下水処理場から放流される処理水を混合して放流することによって、海水淡水化装置からの濃縮海水を海域に放流するに際して、放流海域における塩分濃度の上昇が抑制されて、海洋生態系への影響が低減可能な海水淡水化装置の濃縮海水放流方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例1に係る海水淡水化装置の濃縮海水放流方法を説明するシステム構成図である。
【図2】本実施例の海水淡水化装置のシステム構成図である。
【図3】本実施例の下水処理場の活性汚泥法による処理システムの一例を示す構成図である。
【図4】本実施例の混合比と混合後の塩分濃度の関係図である。
【図5】本発明の実施例2に係る海水淡水化装置の濃縮海水放流方法を説明するシステム構成図である。
【図6】本実施例の海水淡水化装置の濃縮海水放流方法のシステムフローの詳細図である。
【図7】本実施例の混合比と塩分濃度目標値との関係図である。
【図8】本発明の実施例3に係る海水淡水化装置の濃縮海水放流方法を説明するシステム構成図である。
【図9】本発明の実施例4に係る海水淡水化装置の濃縮海水放流方法を説明するシステム構成図である。
【図10】本発明の実施例5に係る海水淡水化装置の濃縮海水放流方法を説明するシステム構成図である。
【図11】本発明の実施例6に係る海水淡水化装置の濃縮海水放流方法を説明するシステム構成図である。
【図12】本発明の実施例7に係る海水淡水化装置の濃縮海水放流方法を説明する部分システム構成図である。
【図13】混合比と海水混合後の塩分濃度の関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明者らは上述した目的を達成するため、海水淡水化装置から濃縮海水を海域に放流するに際して、放流海域における塩分濃度の上昇の抑制方法を検討した。この結果、濃縮海水を海域に放流するに際して、流入下水が下水処理場で処理されて系外に放流される塩分含有の少ない処理水を濃縮海水に混合したもの(以下、混合濃縮海水という)を海域に放流すれば、塩分濃度を低下させた混合濃縮海水を海域に放流するので、放流する海域における塩分濃度上昇を抑制できることを究明した。
【0021】
このように、取水海水を供給水として逆浸透膜に加圧供給して透過水を得て、逆浸透膜の被透過水側から濃縮海水が系外に放流される海水淡水化装置において、濃縮海水を下水処理場から排出される処理水と混合して、処理水が混合された混合濃縮海水を海域に放流することを特徴とする。
【0022】
濃縮海水を下水処理場から流出される処理水と混合することによって、処理水が混合された混合濃縮海水中の塩分濃度は低下し、塩分濃度の低い混合濃縮海水を海域に放流することができるので、海水淡水化装置から排出される濃縮海水を海域に直接放流する場合に比較して放流海域における塩分濃度の上昇が抑制される。
【0023】
この結果、海水淡水化装置から濃縮海水を海域に放流するに際して、放流海域における塩分濃度上昇が抑制されるので、海洋生態系への影響が低減可能な海水淡水化装置の濃縮海水放流方法を提供することができる。
【0024】
又、濃縮海水の塩分濃度と濃縮海水流量及び混合濃縮海水の塩分濃度の設定目標値に基づいて必要処理水流量を求めて、必要処理水流量と濃縮海水流量との混合比を調整することを特徴とする。
【0025】
海水淡水化装置から放流される濃縮海水と下水処理場からの処理水と混合して、混合濃縮海水として海域に放流する場合、濃縮海水流量に混合する下水処理水流量が少なく、濃縮海水流量と下水処理水流量との混合比が適正値でないと、混合濃縮海水の塩分濃度が充分に希釈されずに高くなる。この状態では、塩分濃度が高い混合濃縮海水が海域に放流されることになり、海域における海洋生態系への影響が懸念される。
【0026】
そこで、予め求めた濃縮海水の塩分濃度に基づいて、下水処理水を混合した後の混合濃縮海水の塩分濃度が設定目標値になるように、濃縮海水の塩分濃度と濃縮海水流量及び処理水を混合した後の混合濃縮海水の設定目標値に基づいて、濃縮海水に混合する必要処理水流量を求めて、混合比を調整するようにしたものである。このようにすると、下水処理水を混合した後の混合濃縮海水の塩分濃度は設定目標値となるように維持され、混合濃縮海水の海域放流に伴う海洋生態系への影響を解消することが可能となる。
【0027】
又、上述したように、海水淡水化装置から放流される濃縮海水に下水処理水を混合する場合、濃縮海水流量と下水処理水流量との混合比を必要処理水流量で調整することを特徴とする。
【0028】
海水淡水化装置において、供給水(海水)は高圧ポンプにて5〜8MPa程度まで加圧されて逆浸透膜に供給され、供給海水の30〜60%が透過水(淡水)として回収される。この場合、選定した逆浸透膜に応じて回収率(供給海水量に対する淡水造水量)を設定した一定の回収率に維持することが求められる。そして、海水淡水化装置の運転条件は回収率を優先することを前提とした条件で運転され、高圧ポンプによる加圧圧力を制御して一定回収率としている。
【0029】
このため、回収率を一定とすると逆浸透膜から淡水として取出される透過水流量も一定となる。一方、逆浸透膜の被透過水側から放流される濃縮海水の流量も一定となり、海水淡水化装置からは略一定流量の濃縮海水が放流されることになる。このため、濃縮海水流量を増減して混合比を調整することは困難で、むしろ、一定流量の特性を生かして必要処理水流量を増減して混合比を調整することが容易である。
【0030】
このように、海水淡水化装置から放流される濃縮海水と下水処理水との混合比を調整して、混合濃縮海水の塩分濃度を設定値に維持するに際して、混合比の調整を混合下水処理水流量で行えば容易に調整することができる。
【0031】
又、濃縮海水と下水処理水とを混合した後の混合濃縮海水の塩分濃度を測定して、混合濃縮海水の塩分濃度設定目標値と塩分濃度測定値との偏差に応じて濃縮海水と下水処理水との混合比を調整することを特徴とする。
【0032】
海水淡水化装置からの濃縮海水に下水処理水を混合して混合後の混合濃縮海水の塩分濃度を設定目標値に維持する場合、混合濃縮海水の塩分濃度が目標値よりも高くなるようなことがあると、放流海域に塩分濃度の高い混合濃縮海水が放流されることになる。この結果、放流海域における海洋生態系への影響が懸念される。
【0033】
そこで、混合濃縮海水を放流海域に放流するに際して、混合濃縮海水の塩分濃度を測定して、この塩分濃度と塩分濃度設定目標値との偏差に応じて混合比を調整するようにしたものである。このようにした場合、混合濃縮海水の塩分濃度が高いと、目標値との偏差に応じて混合比を高く調整して下水処理水量を増加させ、混合濃縮海水の塩分濃度を目標値に維持させることになる。これにより、混合濃縮海水は設定した塩分濃度に維持されて海域に放流されることになるので、高塩分濃度濃縮海水放流に伴う海洋生態系への影響は抑制される。
【0034】
又、混合濃縮海水の放流海域に海水の塩分濃度を測定する塩分濃度計を配置し、この塩分濃度計で測定された塩分濃度と予め設定した前記放流海域における塩分濃度規準値との差分に応じて、濃縮海水流量と処理水流量との混合比を調整することを特徴とする。
【0035】
海水淡水化装置から放流される濃縮海水と下水処理水とを混合して、混合濃縮海水として海域に放流する場合、放流海域において混合濃縮海水の分散が充分に進行しないと、塩分濃度が高くなる恐れがある。一方、濃縮海水量に対する下水処理水量が少なく混合比の調整に不具合があると、放流される混合濃縮海水の塩分濃度が高くなる。結果的に、この影響を海洋生態系が受けることになり、放流海域における塩分濃度の情報に基づいた混合濃縮海水の放流操作が必要となる。
【0036】
そこで、混合濃縮海水の放流海域における塩分濃度の情報をベースに、海水淡水化装置から放流される濃縮海水流量と下水処理場からの処理水流量との混合比を調整するため、放流海域に配置した塩分濃度計で測定された塩分濃度と予め設定した放流海域における塩分濃度目標値との偏差に応じて混合比を調整するようにしたものである。
【0037】
このようにした場合、混合濃縮海水の放流領域における測定された塩分濃度が高い場合、同海域における塩分濃度目標値との偏差に応じて下水処理流量を増加させて混合比を高く調整し、放流する海域における塩分濃度を目標値に維持させることになる。これにより、混合濃縮海水の放流海域における塩分濃度は設定された塩分濃度目標値に維持され、放流する海域における塩分濃度が高くなるのが抑制されて、高塩分濃度による海洋生態系への影響を解消することが可能となる。
【0038】
又、海水淡水化装置から放流される濃縮海水と下水処理場からの処理水との混合比を放流海域に配置した塩分濃度計での測定値と放流海域における塩分濃度目標値との偏差に応じて調整する場合、放流海域の複数の箇所で塩分濃度を測定して、測定された塩分濃度の内、最大値の塩分濃度を選定して、この塩分濃度と塩分濃度目標値との偏差を求めるようにしたことを特徴とする。
【0039】
海水淡水化装置から放流される濃縮海水と下水処理場からの処理水を混合して混合濃縮海水として海域に放流した場合、放流後の混合濃縮海水は海域に拡散していくが、その拡散状態は、放流海域における海底地形,水深,潮流流速,放流流量及び放流流速等の諸条件の影響を受けて異なる。この場合、混合濃縮海水が良好に海域に拡散されないで、局所的な領域において塩分濃度が高くなると、この影響により海洋生態系への影響が懸念される。
【0040】
そこで、放流海域における局所的に高塩分濃度の海域を把握するため、放流海域の複数の箇所で塩分濃度を測定して、測定値の内、最大値を示す塩分濃度を選定し、この測定値と放流海域における塩分濃度目標値との偏差に応じて混合比を調整するようにしたものである。
【0041】
これにより、局所的な高塩分濃度の海域に合わせて、放流する海域における塩分濃度を低減するように、目標値との偏差に応じて下水処理流量を増加させて混合比を高く調整し、放流する海域における塩分濃度を目標値に維持させることになる。この結果、放流海域における局所的な高塩分濃度海域の発生を抑制することができ、海洋生態系への影響も低減可能となる。
【0042】
又、濃縮海水が放流される海域に塩分濃度を測定する塩分濃度計を配置して、前記塩分濃度計の測定値が予め設定された塩分濃度目標値よりも高いとき、下水処理場からの処理水を海域放流前の濃縮海水に混合して、混合した後の混合濃縮海水を海域に放流することを特徴とする。
【0043】
海水淡水化装置からは常時濃縮海水が海域に放流されるため、放流する海域における塩分濃度は他の海域よりも高くなる。このため、放流海域の塩分濃度を通常海水の塩分濃度程度まで低下させないと、海洋生態系へ及ぼす影響が大きくなる。
【0044】
そこで、濃縮海水放流海域の塩分濃度を低下させるために、濃縮海水の放流海域に塩分濃度計を配置して塩分濃度を測定し、この塩分濃度の測定値が予め設定された塩分濃度目標値よりも高いとき、希釈用の下水処理場からの処理水を海域放流前の濃縮海水に混合して、塩分濃度を低下させた混合濃縮海水を海域に放流するようにしたものである。
【0045】
このようにすると、放流海域の塩分濃度が目標値よりも高くなった場合は、放流される濃縮海水は初期の塩分濃度よりも低い状態で海域に放流されることになる。この結果、塩分濃度が目標値よりも高くなった放流海域の塩分濃度は低下し、同海域における海洋生態系への影響を抑制することができる。
【0046】
また、上述したように、放流海域の塩分濃度が塩分濃度目標値よりも高くなって、海水淡水化装置から放流される濃縮海水に下水処理場の処理水を混合する場合、下水処理場からの処理水の全流量を海水淡水化装置から放流される濃縮海水に混合することを特徴とする。
【0047】
海水淡水化装置からの濃縮海水の放流に伴い海域の塩分濃度が目標値よりも高くなった場合、早急に海域の塩分濃度を低下させる必要があり、対応時間が遅れると海洋生態系へ及ぼす影響が甚大となる恐れがある。
【0048】
そこで、早急に海域の塩分濃度を低下させるために、濃縮海水の塩分濃度を希釈する下水処理場から処理水の全流量を濃縮海水に混合して処理水の混合比を高くするようにしたものである。このようにすると、濃縮海水の塩分濃度は最大まで希釈されて海域に放流されることになるので、塩分濃度が目標値よりも高くなった海域の塩分濃度を早急に低下させることができる。この結果、放流海域の塩分濃度上昇に伴う生態系への対応が早急にできる。
【0049】
又、海水淡水化装置からの濃縮海水が放流される濃縮海水放流管と下水処理場から処理水が放流される処理水放流管を合流させて、合流後の下流側を濃縮海水が放流される海域内に臨ませたことにある。
【0050】
このような構成とすると、海水淡水化装置から放流される塩分濃度の高い濃縮海水を下水処理場から放流される処理水と混合することができ、処理水によって塩分濃度を希釈した濃縮海水を海域に放流することが可能となる。これによって、初期の塩分濃度の高い濃縮海水を直接放流するよりも、海域における海洋生態系への影響を抑制することができる。
【0051】
又、海水淡水化装置からの濃縮海水が放流される濃縮海水放流管と下水処理場から処理水が放流される処理水放流管を合流させる場合、海水淡水化装置の設置位置を下水処理場の設置位置よりも低位置にして、両者に高低差を有するようにしたことにある。
【0052】
このような位置構成とすると、海水淡水化装置から放流される濃縮海水に下水処理場から放流される処理水を混合する場合、高低差の位置エネルギーの利用が可能なり、処理水を混合するに際して例えば送水ポンプ等の設備と動力を使用しなくとも、処理水を自然流下で混合することが可能となる。この結果、濃縮海水を下水処理場からの処理水と混合して海域に放流する場合、混合に要する動力等のコスト削減が可能となる。
【実施例1】
【0053】
本発明の実施例1を図1から図4を用いて説明する。図1は実施例1に係る海水淡水化装置の濃縮海水放流方法を説明するシステム構成図である。
【0054】
海水Wは、取水管1を介して取水ポンプ2によって海域Szから取水されて逆浸透膜を使用する海水淡水化装置3に送られ、海水淡水化装置3で、後述するプロセスを得て海水から淡水の透過水Fwが得られ、送水ポンプ4によって配水管5及び配水管網7を介して需要端6に供給される。需要端6にて使用された水や雨水の水Rwは、下水Wwとして下水管網8及び幹線管渠9を介して下水処理場10に流入する。下水処理場10では、後述する処理プロセスを得て流入下水が処理され、処理水Twとして系外に排出される。
【0055】
海水淡水化装置3からの濃縮海水Cwを系外に放流する濃縮海水放流管11と、下水処理場10からの処理水Twが放流される処理水放流管12とが合流する。合流後の合流管13の下流側は混合濃縮海水Cwが放流される海域Sz内に臨んでいる。
【0056】
図2は、海水淡水化装置のシステム構成図である。図2に示すように、逆浸透膜処理の対象となる海水Wは、取水ポンプ1によって海域Szから取水され、原水タンク21に貯留された後、海水ポンプ22にて流量計25を介して砂ろ過器23及びMF膜装置24に供給される。
【0057】
流量計25は砂ろ過器23及びMF膜装置24への海水供給流量Qを測定する。流量計25の測定値Qは演算器26に入力される。演算器26では、測定値Qに別途入力される塩素系殺菌剤注入率CLが乗じられて塩素系殺菌剤注入量CQが求められ、塩素系殺菌剤注入ポンプ27によって塩素系殺菌剤Cが海水に注入される。
【0058】
ここで、塩素系殺菌剤Cは海水ポンプ22の吸込側で注入してもよく、後述する凝集剤注入前に注入すればよい。塩素系殺菌剤Cとしては、塩素ガスを水に注入して調製した塩素水または次亜塩素酸ナトリウム等が用いられ、殺菌剤の注入に伴い海水中の微生物等は殺菌または不活化される。
【0059】
演算器28には流量計25から測定値Qが入力されて海水供給流量に換算され、凝集剤注入量PQを求める。演算器28には、予め設定された凝集剤注入率Pが入力され、海水供給流量と凝集剤注入率が乗じられて凝集剤注入量PQが求められ、この凝集剤注入量PQに応じた凝集剤Gが凝集剤注入ポンプ29によって海水に注入される。
【0060】
凝集剤Gとしては、ポリ塩化アルミニウムまたはポリシリカ鉄(SiO2)n・Fe2O3)等が用いられ、海水に注入された凝集剤Gは混合器(図示せず)にて撹拌混合されて、海水中の濁質分をマイクロフロック化し、このフロックは砂ろ過器23にてろ過される。砂ろ過器23にてろ過されなかった成分は下流側のMF膜24にてろ過され、その後、処理水タンク30に導入される。
【0061】
なお、本実施例では、凝集剤Gの注入後、砂ろ過器23及びMF膜24を用いて濁質分を除去しているが、MF膜,NF膜等を用いてもよく、凝集処理後の濁質分の除去手段が特に限定されるものではない。
【0062】
処理水タンク30は保安フィルター32に接続され、保安フィルター32に接続された高圧ポンプ31で、処理水タンク30の処理水を加圧して逆浸透膜装置60に供給水PWとして送出する。保安フィルター32は、高圧ポンプ31及び逆浸透膜装置60内の逆浸透膜33への異物の侵入を阻止するため、高圧ポンプ31の吸込側に配設されている。
【0063】
高圧ポンプ31にて逆浸透膜装置31に供給される供給水PWは5〜8MPa程度まで加圧されて逆浸透膜33に供給され、この逆浸透膜33を介して透過水FWが淡水として取出される。透過水FWは透過水タンク34に貯留され、殺菌処理及びミネラル分添加が施された後、送水ポンプ4によって需要端6に供給される。
【0064】
一方、逆浸透膜33を透過しないは濃縮海水Cwは被透過水側から排出され、その後、圧力回収タービン35にてエネルギーが回収された後、系外に放流される。
【0065】
図3は下水処理場の活性汚泥法による処理システムの一例を示す構成図である。図3に示すように、下水管網8及び幹線管渠9を介して下水処理場10に流入した下水Isは、最初沈殿池36を経て曝気槽37に流入し、ブロワー38にて一定時間、空気で曝気された後、最終沈殿池39に流入する。最終沈殿池39で、上澄水と沈殿した活性汚泥Asに固液分離され、上澄水は越流して処理水Twとして系外に放流される。最終沈殿池39で沈殿した活性汚泥Asの一部は返送汚泥Raとして曝気槽37に返送され、再度、生物処理に使用される。
【0066】
一方、一部の活性汚泥Asは余剰汚泥として系外に抜き出され、その後、脱水処理される。なお、前記した下水処理場の流入下水処理において、最初沈殿池,曝気槽及び最終沈殿池からなるプロセスの活性汚泥法による下水処理法としたが、例えば、最終沈殿池を必要としない膜分離活性汚泥法であってもよく、下水処理場における流入下水の処理法が特に限定されるものでない。
【0067】
上述したように海水淡水化装置3の濃縮海水放流プロセスが構成されている場合、海水淡水化装置3から濃縮海水Cwが放流される濃縮海水放流管11は、下水処理場10から処理水Twが放流される処理水放流管12と合流されているので、下水処理場10から放流される処理水Twと濃縮海水Cwが混合され、混合された混合濃縮海水Ctとして海域Szに放流される。
【0068】
海水淡水化装置3から放流される濃縮海水Cwは、通常は海水の塩分濃度より高い塩分濃度であるが、濃縮海水Cwに下水処理場10から放流される処理水と濃縮海水Cwとを混合することによって、混合後の混合濃縮海水Ctの塩分濃度は低下し、塩分濃度の低い混合濃縮海水Ctを海域に放流することができる。
【0069】
図4に混合比Mと塩分濃度Sとの関係を示すように、下水処理場10からの処理水Twを用いて、この処理水Twと濃縮海水Cwを混合した場合、海水Wを用いた場合の同じ混合比と比較して、混合後の塩分濃度Sは低下する。ここで、濃縮海水Cwの塩分濃度(6%を想定)を通常の海水塩分濃度(3.5%)まで低下させる混合比Mを求めると、下水処理水を濃縮海水Cwに混合した場合、混合比Wは約0.7と低く、濃縮海水量Cfに対して少ない処理水量Tfで塩分濃度を低下させることができる。これに対して、海水Wを用いて濃縮海水Cwの塩分濃度を低下させようとした場合、図14に示したように、混合比Mは約100と高く、多大な海水量を必要とする。
【0070】
なお、処理水Twまたは海水Wと濃縮海水Cwとの混合後の混合濃縮海水Ctの塩分濃度Sは数1,数2に基づいて求めた。
(数1)
S={(Wo×Mb}+Ns/(1+Mb)} …(1)
(数2)
S={Ns/(1+Mb)} …(2)
【0071】
ここで、Sは混合濃縮海水塩分濃度(%)、Woは海水塩分濃(3.5%)、Mbは海水混合倍率、Nsは濃縮海水塩分濃度(6%)である。
【0072】
一方、混合比Mは数3で表したが、濃縮海水量Cfを混合量Tfで除して、混合比Mとして表してよい。また、数4で示すように、混合率Mrとしてもよく、混合比または混合率は同じ概念で表現され、特に限定されるものではない。
(数3)
混合比M=(混合量Mf/濃縮海水量Cf) …(3)
(数4)
混合率Mr=(混合量Mf/(混合量Mf+濃縮海水量Cf) …(4)
【0073】
ここで、混合量Mf=(処理水量Tfまたは海水量Wf)である。
【0074】
このように、海水淡水化装置3から放流される濃縮海水を海域Szに直接放流する場合と比較して放流海域における塩分濃度の上昇が抑制されることになる。
【0075】
以上説明したように、海水淡水化装置3からの濃縮海水Cwを下水処理場10からの処理水Twと混合した後に海域Szに放流することによって、放流海域における塩分濃度上昇が抑制されるので、海洋生態系への影響が低減可能な海水淡水化装置の濃縮海水放流方法とすることができる。
【実施例2】
【0076】
本発明の実施例2を図5から図7を用いて説明する。図5は、実施例2に係る海水淡水化装置の濃縮海水放流方法を説明するシステム構成図であり、実施例1と同様に構成されている。
【0077】
海水淡水化装置3から放流される濃縮海水Cwの濃縮海水放流管11には、濃縮海水Cwの濃縮海水流量Fcを測定する濃縮海水流量計40が設置され、濃縮海水流量計40の両側には、海水淡水化装置3から放流される濃縮海水Cwの塩分濃度Scを測定する塩分濃度計42が設置されている。塩分濃度計42は、濃縮海水Cwをサンプリングして塩分濃度Scを測定する。
【0078】
濃縮海水流量計40と塩分濃度計42との間には、下水処理場10から放流される処理水Twの処理水放流管12が接続され、処理水放流管12には下水処理場10から放流される処理水Twの処理水流量Ftを測定する処理水流量計41が取付けられ、処理水流量計41の上流側には処理水流量調節手段43が配設されている。すなわち、処理水流量調節手段43は、濃縮海水放流管11と合流する付近の処理水放流管12の下流側に配設されている。又、処理水流量計41は、流量制御器46を介して処理水流量調節手段43に接続されている。
【0079】
処理水放流管12から分岐した処理水放流分岐管12Aが設置されており、下水処理場10からの処理水流量Ftの内、濃縮海水CWに混合する必要処理水流量Nwを除いた余分の処理水量が存在する場合、処理水放流分岐管12Aから処理水Twを放流域(例えば、海域)に放流するようになっている。
【0080】
このように構成されている場合、海水淡水化装置の濃縮海水放流方法のシステムフローの詳細図である図6に示すように動作する。
【0081】
濃縮海水流量計40で測定された濃縮海水流量Fcと塩分濃度計42で測定された濃縮海水の塩分濃度Scは、処理水流量制御器44に入力される。処理水流量制御器44の演算器45では入力された濃縮海水流量Fcと濃縮海水塩分濃度Sc及び混合濃縮海水の塩分濃度の設定目標値Soに基づいて、濃縮海水に混合する必要処理水流量Nwを数5により演算する。
(数5)
Nw={Fc−(Sc/So)×Fc} …(5)
【0082】
演算器45で求められた必要処理水流量Nwは流量制御器46に入力され、流量制御器46からの信号により、処理水流量調節手段43は処理水流量計41の流量信号を入力して必要処理水流量Nwとなるように開度を調節する。
【0083】
演算器47には濃縮海水流量Fcと前記演算器45で求められた必要処理水流量Nwが入力されて、数6により混合比Mを演算する。
(数6)
M=Nw/Fc …(6)
【0084】
なお、濃縮海水流量Fc及び濃縮海水塩分濃度Scの変動が少ない場合等は、図7に示すように、予め塩分濃度設定目標値Soと混合比Mの関係が入力された演算器48に、処理水を混合した後の混合濃縮海水の塩分濃度設定目標値Soを入力して、混合比Mを求める。そして、求めた混合比Mwと濃縮海水流量Fcを演算器49に入力して、数7に従い必要処理流量Nwを求めてもよい。
(数7)
Nw=Fc×M …(7)
【0085】
上述したように、濃縮海水流量Fcとこれに混合する処理水流量Nwの混合比Mが適正に調整されて混合濃縮海水の塩分濃度が設定目標値に維持される場合、混合濃縮海水の塩分濃度を任意に低くすることができるので、塩分濃度が高くなることがない。この結果、高濃度塩分の混合濃縮海水の海域放流に伴う海洋生態系への影響が解消可能となる。
【0086】
また、濃縮海水Cwに処理水TWw混合するに際、濃縮海水流量を調節しないで、濃縮海水Cwに混合する必要処理水流量を調節して、この必要処理水流量の増減にて混合比を設定値に維持することにより混合比の調整設定が容易に行える。
【実施例3】
【0087】
本発明の実施例3を図8を用いて説明する。図8は、実施例3に係る海水淡水化装置の濃縮海水放流方法を説明するシステム構成図であり、実施例2と同様に構成されている。
【0088】
実施例3では、合流管13から分岐した配管に塩分濃度計61が設置され、塩分濃度計61は海水淡水化装置3から放流された濃縮海水Cwと下水処理場10から放流された処理水Twとを混合した後の混合濃縮海水Ctの塩分濃度Csを測定する。すなわち、塩分濃度計61は合流管13から混合濃縮海水Ctをサンプリングして塩分濃度Csを測定する。
【0089】
補正処理水制御器51の演算器52には、塩分濃度計42で測定された塩分濃度Cs及び混合濃縮海水Ctの塩分濃度の設定目標値Soが入力され、演算器52では設定目標値Soと塩分濃度Scの偏差±ΔSが求められる。
【0090】
必要補正処理水流量Nhを求める演算器53には、演算器52で求められた偏差±ΔS、海水淡水化装置3から放流される濃縮海水流量Fc、及び混合濃縮海水の設定目標値Soが入力され、数8に従い必要補正処理水流量Nhが求められる。
(数8)
Nh={Fc−(±ΔS/So)×Fc} …(8)
【0091】
演算器53で求められた必要補正処理水流量Nhと、実施例2で説明した演算器45又は演算器49で求められた必要処理水流量Nwが演算器54に入力される。ここで、必要処理水流量Nwが増減されて混合比Mが調整される。
【0092】
一方、調整補正後の必要処理水流量Nw及び処理水流量計41の流量信号は流量制御器46に入力される。この流量制御器46により、処理水流量調節手段43は処理水流量計41の流量信号に従い開度を調節して調整補正後の必要処理水流量Nwに調節し、混合濃縮海水Ctの塩分濃度Csを設定目標値Soに維持する。
【0093】
このように、混合濃縮海水の塩分濃度を測定して、この塩分濃度と塩分濃度設定目標値との偏差に応じて混合比を調整するようにした場合、混合濃縮海水の塩分濃度が高くとも、目標値との偏差に応じて混合比を高く調整して混合する処理水流量を増加させ、混合濃縮海水の塩分濃度が目標値に維持される。これにより、混合濃縮海水は設定した塩分濃度に維持されて海域に放流されることになるので、高塩分濃度濃縮海水放流に伴う海洋生態系への影響は抑制される。
【実施例4】
【0094】
本発明の実施例4を図9を用いて説明する。図9は、実施例4に係る海水淡水化装置の濃縮海水放流方法を説明するシステム構成図であり、実施例3と同様に構成されている。
【0095】
塩分濃度計62は混合濃縮海水Ctの放流海域Szに配置され、この海域Szの塩分濃度Czを測定する。塩分濃度計62は、蓄電部(図示せず)と発振部(図示せず)を備えて係留ブイを有して海面に浮上し、内蔵する採取ポンプ(図示せず)にて海水Wをサンプリングし、海水の塩分濃度Czを測定する。
【0096】
塩分濃度計62からは塩分濃度Szの測定値が送信され、地上に配置された受信機63にて測定値が受信される。なお、塩分濃度計62からの出力をケーブルを介して地上に伝送するようにしてもよい。
【0097】
海域Szに配置された塩分濃度計62で測定された塩分濃度Czの測定値は、補正処理水制御器51に入力されて必要補正処理水流量Nhが求められ、実施例2で説明した演算器45又は演算器49で求められた必要処理水流量Nwと必要補正処理水流量Nhが演算器54に入力され、必要処理水流量Nwは増減されて混合比Mが調整される。一方、調整補正後の必要処理水流量Nw及び処理水流量計41の流量信号が流量制御器46に入力される。この流量制御器46により、処理水流量調節手段43は、処理水流量計41の流量信号に従い開度を調節して調整補正後の必要処理水流量Nwに調節し、混合濃縮海水Ctの塩分濃度Csを設定目標値Soに維持する。
【0098】
このように、放流海域に配置した塩分濃度計で測定された塩分濃度と予め設定した放流海域における塩分濃度目標値との偏差に応じて混合比を調整することができる。
【0099】
以上説明したように、混合濃縮海水の放流領域における測定された塩分濃度が高い場合、放流海域における塩分濃度規準値との偏差に応じて下水処理流量を増加させて混合比を高く調整し、放流海域における塩分濃度を目標値に維持することができる。これにより、混合濃縮海水の放流海域における塩分濃度が目標値よりも高くなるのが抑制されて、高塩分濃度による海洋生態系への影響を解消することが可能となる。
【実施例5】
【0100】
本発明の実施例5を図10を用いて説明する。図10は、実施例5に係る海水淡水化装置の濃縮海水放流方法を説明するシステム構成図であり、実施例4と同様に構成されている。
【0101】
塩分濃度計62a,62b及び62cは、混合濃縮海水Ctの放流海域Szに複数配置され、この海域Szの塩分濃度Czを複数箇所で測定する。塩分濃度計62a,62b及び62cからは塩分濃度Szの測定値が送信され、地上に配置された受信機63にて測定値が受信される。
【0102】
判定器71は、複数の塩分濃度計62a,62b及び62cで測定された塩分濃度Cs1,Cs2及びCs3の内、最大値を示す塩分濃度を選定する。選定された塩分濃度Csの測定値は、補正処理水制御器51の演算器52に入力される。ここで、必要補正処理水流量Nhが求められ、必要補正処理水流量Nhと、実施例2で説明した演算器45又は演算器49で求められた必要処理水流量Nwが演算器54に入力され、必要処理水流量Nwは増減されて混合比Mが調整される。
【0103】
調整補正後の必要処理水流量Nw及び処理水流量計41の流量信号は、流量制御器46に入力される。この流量制御器46により、処理水流量調節手段43は処理水流量計41の流量信号に従い開度を調節して調整補正後の必要処理水流量Nwに調節し、混合濃縮海水Ctの塩分濃度Csを設定目標値Soに維持する。
【0104】
このように、本実施例は、放流海域における局所的に高塩分濃度の海域を把握するため、放流海域の数の箇所で塩分濃度を測定して、測定値の内、最大値を示す塩分濃度を選定し、この測定値と放流海域における塩分濃度目標値との偏差に応じて混合比を調整するようにしたものである。このため、局所的な高塩分濃度の海域に合わせて、放流海域における塩分濃度を低減するように、目標値との偏差に応じて処理水流量を増加させて混合比を高く調整し、放流海域における塩分濃度を目標値に維持させることになる。この結果、放流海域における局所的な高塩分濃度海域の発生を抑制することができ、海洋生態系への影響も低減可能となる。
【実施例6】
【0105】
本発明の実施例6を図11を用いて説明する。図11は、実施例6に係る海水淡水化装置の濃縮海水放流方法を説明するシステム構成図であり、実施例1と同様に構成されている。
【0106】
海水淡水化装置3から放流される濃縮海水Cwの濃縮海水放流管11には、下水処理場10から放流される処理水Twの処理水放流管12が接続され、処理水放流管12には処理水流量調節手段43が配設されている。処理水放流管12から分岐された処理水放流管12bにも処理水流量調節手段43が配設されている。
【0107】
塩分濃度計62は混合濃縮海水Ctの放流海域Szに配置され、この海域Szの塩分濃度Czを測定する。塩分濃度計62からは塩分濃度Szの測定値が送信され、地上に配置された受信機63にて測定値が受信される。
【0108】
塩分濃度計42で測定された塩分濃度Csの測定値は、受信機63を介して演算器52に入力される。演算器52には、放流海域における塩分濃度設定目標値So入力され、目標値Soと測定された塩分濃度の測定値Csの偏差±Δが求められる。偏差+Δが目標値Soを上回る場合、演算器52からの出力に基づいて流量制御器46は処理水流量調節手段43aを開放し、処理水流量調節手段43bを閉じる。また、放流海域の塩分濃度Csが設定目標値Soよりも高い場合、必要に応じて全処理水流量を濃縮海水Cwに混合する。
【0109】
このように処理水流量調節弁43aが開放された場合、海水淡水化装置3からの濃縮海水Cwには下水処理場10からの処理水Twが混合され、この混合された混合濃縮海水Ctが海域Szに放流されることになる。
【0110】
本実施例では、濃縮海水放流海域の塩分濃度を低下させるために、濃縮海水の放流海域に塩分濃度計を配置して塩分濃度を測定し、この塩分濃度の測定値が予め設定された塩分濃度目標値よりも高いとき、処理水を海域放流前の濃縮海水に混合して、塩分濃度を低下させた混合濃縮海水を海域に放流するようにしたものである。このようにすると、放流海域の塩分濃度が規準値よりも高くなった場合は、放流される濃縮海水は初期の塩分濃度よりも低い状態で海域に放流されることになる。この結果、塩分濃度が規準値よりも高くなった放流海域の塩分濃度は低下し、同海域における海洋生態系への影響を抑制することができる。
【0111】
また、本実施例では、放流海域の塩分濃度が塩分濃度目標値よりも高くなって、濃縮海水に処理水を混合する場合、下水処理場からの処理水の全流量を濃縮海水に混合するようにしている。このようにすると、濃縮海水の塩分濃度は最大まで希釈されて海域に放流されることになるので、塩分濃度が目標値よりも高くなった海域の塩分濃度を早急に低下させることができる。この結果、放流海域の塩分濃度上昇に伴う生態系への対応が早急にできる。
【実施例7】
【0112】
本発明の実施例7を図12を用いて説明する。図12は、実施例7に係る海水淡水化装置の濃縮海水放流方法を説明するシステム構成図であり、実施例1と同様に構成されている。
【0113】
海水淡水化装置3からの濃縮海水Cwが放流される濃縮海水放流管11と、下水処理場10から処理水が放流される処理水放流管12は合流するように接続されている。そして、合流後の下流側は濃縮海水Cwが放流される海域Sz内に臨ませてある。
【0114】
本実施例では、海水淡水化装置3の設置位置を下水処理場10の設置位置よりも低位置に配置して、両者に高低差hを有するように設定してある。
【0115】
このようにすると、海水淡水化装置3から放流される塩分濃度の高い濃縮海水を下水処理場10から放流される処理水と混合することができ、処理水によって塩分濃度を希釈した濃縮海水を海域に放流することが可能となる。これによって、初期の塩分濃度の高い濃縮海水を直接放流するよりも、海域における海洋生態系への影響を抑制することができる。
【0116】
又、海水淡水化装置3の設置位置を下水処理場10の設置位置よりも低位置にして設定しているので、海水淡水化装置から放流される濃縮海水に下水処理場から放流される処理水を混合する場合、処理水を自然流下で混合することが可能となる。この結果、濃縮海水を下水処理場からの処理水と混合して海域に放流する場合、混合に要する動力等のコスト削減が可能となる。
【符号の説明】
【0117】
3 海水淡水化装置
4 送水ポンプ
7 配水管網
10 下水処理場
11 濃縮海水放流管
12 処理水放流管
33 逆浸透膜
42,62 塩分濃度計
【技術分野】
【0001】
本発明は海水淡水化装置から排出される濃縮海水放流方法に係り、特に、濃縮海水の放流域への生態系への影響を軽減するのに好適な海水淡水化装置の濃縮海水放流方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海水を原水とした海水淡水化装置には、逆浸透膜モジュールを備えた逆浸透膜造水装置が用いられ、一般に、取水する海水中の濁質分を凝集処理後、砂ろ過器またはMF膜等を用いた膜ろ過により凝集処理後の濁質分を除去し、供給水として逆浸透膜装置に加圧供給して透過水を得る手段が採られる。また、海水中には微生物また藻類等が存在するが、これらが逆浸透膜面に付着して増殖するとバイオファウリングの要因となるため、必要に応じて取水海水には、凝集処理前の段階で殺菌を目的として残留性を有する塩素水または次亜塩素酸ナトリウム等の塩素系殺菌剤を注入する塩素注入処理が採られる。
【0003】
このような海水淡水化装置において、逆浸透膜を通過した透過水が淡水として得られる一方、逆浸透膜を通過しなかった塩分が濃縮された濃縮海水が排出される。この海水淡水化装置から排出される濃縮海水の塩分濃度は、透過水の回収率が大きくするに従い高くなる。透過水回収率40%〜60%では、濃縮海水の塩分濃度は約6%から8%となり、通常海水(溶解性NaCl、約3.5%)の約1.7倍〜2.5倍に達するが、現状では直接取水海域に放流されている。
【0004】
この場合、高濃度の濃縮海水の海域への放流に伴い、海洋生態系への影響が懸念される。このため、例えば、〔特許文献1〕で知られているように、濃縮海水の放流に際して、濃縮海水よりも塩分濃度の低い海水と混合して濃縮海水の塩分濃度を低くして放流する方法が提案されている。しかし、海水で濃縮海水を希釈するため、図13に海水混合比と海水混合後の濃縮海水塩分濃度の関係を示すように、放流する濃縮海水量に対して十数倍以上の海水量を混合しないと、通常海水の塩分濃度付近に達しない。このため、海水で通常海水の塩分濃度近くまで濃縮海水を希釈しようとすると、取水海水量以上の希釈海水を必要とし、これに要するポンプ設備と多大な動力は対応策を実質的に困難とする。一方、海水混合比を低くすれば、希釈海水を得る設備と動力は減少するが、海域に放流される濃縮海水の塩分濃度が高くなる。この結果、放流濃縮海水による海洋生態系への影響を回避することが困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−132017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように海水淡水化装置にあっては、淡水として得られる透過水とは別に、必然的に濃縮海水が発生するため、この濃縮海水の海域への放流に伴い海洋生態系への影響が常に懸念される。
【0007】
本発明の目的は、海水淡水化装置から濃縮海水を海域に放流するに際して、放流海域における塩分濃度上昇を抑制して海洋生態系への影響が低減可能な海水淡水化装置の濃縮海水放流方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の海水淡水化装置の濃縮海水放流方法は、取水した海水を加圧して逆浸透膜を透過させて透過水を得て、逆浸透膜を透過しない濃縮海水を系外に放流する海水淡水化装置からの、濃縮海水を下水処理場から排出される処理水と混合し、処理水が混合された混合濃縮海水を海域に放流することを特徴とする。
【0009】
又、混合濃縮海水の放流管である濃縮海水放流管に設置された塩分濃度計及び濃縮海水流量計で計測された濃縮海水の塩分濃度及び濃縮海水流量と、混合濃縮海水の塩分濃度の設定目標値に基づいて下水処理場からの処理水の流量である必要処理水流量を求めて、必要処理水流量と濃縮海水流量との混合比を調整することを特徴とする。
【0010】
又、下水処理場からの処理水流量のうち、濃縮海水に混合する必要処理水流量を除いた余分の処理水流量が存在する場合、余分の処理水流量を処理水放流分岐管から放流することを特徴とする。
【0011】
又、混合濃縮海水の塩分濃度を塩分濃度計により測定して、混合濃縮海水の塩分濃度設定目標値と塩分濃度測定値との偏差に応じて濃縮海水と下水処理水との混合比を調整することを特徴とする。
【0012】
又、混合濃縮海水の放流海域に海水の塩分濃度を測定する塩分濃度計を配置し、塩分濃度計で測定された塩分濃度と予め設定した前記放流海域における塩分濃度規準値との偏差に応じて、濃縮海水流量と処理水流量との混合比を調整することを特徴とする。
【0013】
又、混合濃縮海水の放流海域の複数の箇所で塩分濃度を測定し、測定された塩分濃度の内、最大値の塩分濃度を選定して、選定された塩分濃度と塩分濃度目標値との偏差を求めることを特徴とする。
【0014】
又、取水した海水を加圧して逆浸透膜を透過させて透過水を得て、逆浸透膜を透過しない濃縮海水を系外に放流する海水淡水化装置から、濃縮海水が放流される海域に塩分濃度を測定する塩分濃度計を配置して、塩分濃度計の測定値が予め設定された塩分濃度目標値よりも高いとき、下水処理場からの処理水を前記海域に放流前の濃縮海水に混合し、混合した後の混合濃縮海水を海域に放流することを特徴とする。
【0015】
又、下水処理場から系外に放流される処理水の全流量を海水淡水化装置から放流される濃縮海水に混合することを特徴とする。
【0016】
又、取水した海水を加圧して逆浸透膜を透過させて透過水を得て、逆浸透膜を透過しない濃縮海水を系外に放流する海水淡水化装置と、流入下水を処理して処理水を系外に放流する下水処理場とを備え、濃縮海水が放流される濃縮海水放流管と前記処理水が放流される処理水放流管とを合流させ、濃縮海水と処理水の合流後の下流側を濃縮海水が放流される海域内に臨ませたことを特徴とする。
【0017】
又、海水淡水化装置の設置位置が下水処理場の設置位置よりも低位置にあり高低差を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、海水淡水化装置から放流される塩分濃度の高い濃縮海水に下水処理場から放流される処理水を混合して放流することによって、海水淡水化装置からの濃縮海水を海域に放流するに際して、放流海域における塩分濃度の上昇が抑制されて、海洋生態系への影響が低減可能な海水淡水化装置の濃縮海水放流方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例1に係る海水淡水化装置の濃縮海水放流方法を説明するシステム構成図である。
【図2】本実施例の海水淡水化装置のシステム構成図である。
【図3】本実施例の下水処理場の活性汚泥法による処理システムの一例を示す構成図である。
【図4】本実施例の混合比と混合後の塩分濃度の関係図である。
【図5】本発明の実施例2に係る海水淡水化装置の濃縮海水放流方法を説明するシステム構成図である。
【図6】本実施例の海水淡水化装置の濃縮海水放流方法のシステムフローの詳細図である。
【図7】本実施例の混合比と塩分濃度目標値との関係図である。
【図8】本発明の実施例3に係る海水淡水化装置の濃縮海水放流方法を説明するシステム構成図である。
【図9】本発明の実施例4に係る海水淡水化装置の濃縮海水放流方法を説明するシステム構成図である。
【図10】本発明の実施例5に係る海水淡水化装置の濃縮海水放流方法を説明するシステム構成図である。
【図11】本発明の実施例6に係る海水淡水化装置の濃縮海水放流方法を説明するシステム構成図である。
【図12】本発明の実施例7に係る海水淡水化装置の濃縮海水放流方法を説明する部分システム構成図である。
【図13】混合比と海水混合後の塩分濃度の関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明者らは上述した目的を達成するため、海水淡水化装置から濃縮海水を海域に放流するに際して、放流海域における塩分濃度の上昇の抑制方法を検討した。この結果、濃縮海水を海域に放流するに際して、流入下水が下水処理場で処理されて系外に放流される塩分含有の少ない処理水を濃縮海水に混合したもの(以下、混合濃縮海水という)を海域に放流すれば、塩分濃度を低下させた混合濃縮海水を海域に放流するので、放流する海域における塩分濃度上昇を抑制できることを究明した。
【0021】
このように、取水海水を供給水として逆浸透膜に加圧供給して透過水を得て、逆浸透膜の被透過水側から濃縮海水が系外に放流される海水淡水化装置において、濃縮海水を下水処理場から排出される処理水と混合して、処理水が混合された混合濃縮海水を海域に放流することを特徴とする。
【0022】
濃縮海水を下水処理場から流出される処理水と混合することによって、処理水が混合された混合濃縮海水中の塩分濃度は低下し、塩分濃度の低い混合濃縮海水を海域に放流することができるので、海水淡水化装置から排出される濃縮海水を海域に直接放流する場合に比較して放流海域における塩分濃度の上昇が抑制される。
【0023】
この結果、海水淡水化装置から濃縮海水を海域に放流するに際して、放流海域における塩分濃度上昇が抑制されるので、海洋生態系への影響が低減可能な海水淡水化装置の濃縮海水放流方法を提供することができる。
【0024】
又、濃縮海水の塩分濃度と濃縮海水流量及び混合濃縮海水の塩分濃度の設定目標値に基づいて必要処理水流量を求めて、必要処理水流量と濃縮海水流量との混合比を調整することを特徴とする。
【0025】
海水淡水化装置から放流される濃縮海水と下水処理場からの処理水と混合して、混合濃縮海水として海域に放流する場合、濃縮海水流量に混合する下水処理水流量が少なく、濃縮海水流量と下水処理水流量との混合比が適正値でないと、混合濃縮海水の塩分濃度が充分に希釈されずに高くなる。この状態では、塩分濃度が高い混合濃縮海水が海域に放流されることになり、海域における海洋生態系への影響が懸念される。
【0026】
そこで、予め求めた濃縮海水の塩分濃度に基づいて、下水処理水を混合した後の混合濃縮海水の塩分濃度が設定目標値になるように、濃縮海水の塩分濃度と濃縮海水流量及び処理水を混合した後の混合濃縮海水の設定目標値に基づいて、濃縮海水に混合する必要処理水流量を求めて、混合比を調整するようにしたものである。このようにすると、下水処理水を混合した後の混合濃縮海水の塩分濃度は設定目標値となるように維持され、混合濃縮海水の海域放流に伴う海洋生態系への影響を解消することが可能となる。
【0027】
又、上述したように、海水淡水化装置から放流される濃縮海水に下水処理水を混合する場合、濃縮海水流量と下水処理水流量との混合比を必要処理水流量で調整することを特徴とする。
【0028】
海水淡水化装置において、供給水(海水)は高圧ポンプにて5〜8MPa程度まで加圧されて逆浸透膜に供給され、供給海水の30〜60%が透過水(淡水)として回収される。この場合、選定した逆浸透膜に応じて回収率(供給海水量に対する淡水造水量)を設定した一定の回収率に維持することが求められる。そして、海水淡水化装置の運転条件は回収率を優先することを前提とした条件で運転され、高圧ポンプによる加圧圧力を制御して一定回収率としている。
【0029】
このため、回収率を一定とすると逆浸透膜から淡水として取出される透過水流量も一定となる。一方、逆浸透膜の被透過水側から放流される濃縮海水の流量も一定となり、海水淡水化装置からは略一定流量の濃縮海水が放流されることになる。このため、濃縮海水流量を増減して混合比を調整することは困難で、むしろ、一定流量の特性を生かして必要処理水流量を増減して混合比を調整することが容易である。
【0030】
このように、海水淡水化装置から放流される濃縮海水と下水処理水との混合比を調整して、混合濃縮海水の塩分濃度を設定値に維持するに際して、混合比の調整を混合下水処理水流量で行えば容易に調整することができる。
【0031】
又、濃縮海水と下水処理水とを混合した後の混合濃縮海水の塩分濃度を測定して、混合濃縮海水の塩分濃度設定目標値と塩分濃度測定値との偏差に応じて濃縮海水と下水処理水との混合比を調整することを特徴とする。
【0032】
海水淡水化装置からの濃縮海水に下水処理水を混合して混合後の混合濃縮海水の塩分濃度を設定目標値に維持する場合、混合濃縮海水の塩分濃度が目標値よりも高くなるようなことがあると、放流海域に塩分濃度の高い混合濃縮海水が放流されることになる。この結果、放流海域における海洋生態系への影響が懸念される。
【0033】
そこで、混合濃縮海水を放流海域に放流するに際して、混合濃縮海水の塩分濃度を測定して、この塩分濃度と塩分濃度設定目標値との偏差に応じて混合比を調整するようにしたものである。このようにした場合、混合濃縮海水の塩分濃度が高いと、目標値との偏差に応じて混合比を高く調整して下水処理水量を増加させ、混合濃縮海水の塩分濃度を目標値に維持させることになる。これにより、混合濃縮海水は設定した塩分濃度に維持されて海域に放流されることになるので、高塩分濃度濃縮海水放流に伴う海洋生態系への影響は抑制される。
【0034】
又、混合濃縮海水の放流海域に海水の塩分濃度を測定する塩分濃度計を配置し、この塩分濃度計で測定された塩分濃度と予め設定した前記放流海域における塩分濃度規準値との差分に応じて、濃縮海水流量と処理水流量との混合比を調整することを特徴とする。
【0035】
海水淡水化装置から放流される濃縮海水と下水処理水とを混合して、混合濃縮海水として海域に放流する場合、放流海域において混合濃縮海水の分散が充分に進行しないと、塩分濃度が高くなる恐れがある。一方、濃縮海水量に対する下水処理水量が少なく混合比の調整に不具合があると、放流される混合濃縮海水の塩分濃度が高くなる。結果的に、この影響を海洋生態系が受けることになり、放流海域における塩分濃度の情報に基づいた混合濃縮海水の放流操作が必要となる。
【0036】
そこで、混合濃縮海水の放流海域における塩分濃度の情報をベースに、海水淡水化装置から放流される濃縮海水流量と下水処理場からの処理水流量との混合比を調整するため、放流海域に配置した塩分濃度計で測定された塩分濃度と予め設定した放流海域における塩分濃度目標値との偏差に応じて混合比を調整するようにしたものである。
【0037】
このようにした場合、混合濃縮海水の放流領域における測定された塩分濃度が高い場合、同海域における塩分濃度目標値との偏差に応じて下水処理流量を増加させて混合比を高く調整し、放流する海域における塩分濃度を目標値に維持させることになる。これにより、混合濃縮海水の放流海域における塩分濃度は設定された塩分濃度目標値に維持され、放流する海域における塩分濃度が高くなるのが抑制されて、高塩分濃度による海洋生態系への影響を解消することが可能となる。
【0038】
又、海水淡水化装置から放流される濃縮海水と下水処理場からの処理水との混合比を放流海域に配置した塩分濃度計での測定値と放流海域における塩分濃度目標値との偏差に応じて調整する場合、放流海域の複数の箇所で塩分濃度を測定して、測定された塩分濃度の内、最大値の塩分濃度を選定して、この塩分濃度と塩分濃度目標値との偏差を求めるようにしたことを特徴とする。
【0039】
海水淡水化装置から放流される濃縮海水と下水処理場からの処理水を混合して混合濃縮海水として海域に放流した場合、放流後の混合濃縮海水は海域に拡散していくが、その拡散状態は、放流海域における海底地形,水深,潮流流速,放流流量及び放流流速等の諸条件の影響を受けて異なる。この場合、混合濃縮海水が良好に海域に拡散されないで、局所的な領域において塩分濃度が高くなると、この影響により海洋生態系への影響が懸念される。
【0040】
そこで、放流海域における局所的に高塩分濃度の海域を把握するため、放流海域の複数の箇所で塩分濃度を測定して、測定値の内、最大値を示す塩分濃度を選定し、この測定値と放流海域における塩分濃度目標値との偏差に応じて混合比を調整するようにしたものである。
【0041】
これにより、局所的な高塩分濃度の海域に合わせて、放流する海域における塩分濃度を低減するように、目標値との偏差に応じて下水処理流量を増加させて混合比を高く調整し、放流する海域における塩分濃度を目標値に維持させることになる。この結果、放流海域における局所的な高塩分濃度海域の発生を抑制することができ、海洋生態系への影響も低減可能となる。
【0042】
又、濃縮海水が放流される海域に塩分濃度を測定する塩分濃度計を配置して、前記塩分濃度計の測定値が予め設定された塩分濃度目標値よりも高いとき、下水処理場からの処理水を海域放流前の濃縮海水に混合して、混合した後の混合濃縮海水を海域に放流することを特徴とする。
【0043】
海水淡水化装置からは常時濃縮海水が海域に放流されるため、放流する海域における塩分濃度は他の海域よりも高くなる。このため、放流海域の塩分濃度を通常海水の塩分濃度程度まで低下させないと、海洋生態系へ及ぼす影響が大きくなる。
【0044】
そこで、濃縮海水放流海域の塩分濃度を低下させるために、濃縮海水の放流海域に塩分濃度計を配置して塩分濃度を測定し、この塩分濃度の測定値が予め設定された塩分濃度目標値よりも高いとき、希釈用の下水処理場からの処理水を海域放流前の濃縮海水に混合して、塩分濃度を低下させた混合濃縮海水を海域に放流するようにしたものである。
【0045】
このようにすると、放流海域の塩分濃度が目標値よりも高くなった場合は、放流される濃縮海水は初期の塩分濃度よりも低い状態で海域に放流されることになる。この結果、塩分濃度が目標値よりも高くなった放流海域の塩分濃度は低下し、同海域における海洋生態系への影響を抑制することができる。
【0046】
また、上述したように、放流海域の塩分濃度が塩分濃度目標値よりも高くなって、海水淡水化装置から放流される濃縮海水に下水処理場の処理水を混合する場合、下水処理場からの処理水の全流量を海水淡水化装置から放流される濃縮海水に混合することを特徴とする。
【0047】
海水淡水化装置からの濃縮海水の放流に伴い海域の塩分濃度が目標値よりも高くなった場合、早急に海域の塩分濃度を低下させる必要があり、対応時間が遅れると海洋生態系へ及ぼす影響が甚大となる恐れがある。
【0048】
そこで、早急に海域の塩分濃度を低下させるために、濃縮海水の塩分濃度を希釈する下水処理場から処理水の全流量を濃縮海水に混合して処理水の混合比を高くするようにしたものである。このようにすると、濃縮海水の塩分濃度は最大まで希釈されて海域に放流されることになるので、塩分濃度が目標値よりも高くなった海域の塩分濃度を早急に低下させることができる。この結果、放流海域の塩分濃度上昇に伴う生態系への対応が早急にできる。
【0049】
又、海水淡水化装置からの濃縮海水が放流される濃縮海水放流管と下水処理場から処理水が放流される処理水放流管を合流させて、合流後の下流側を濃縮海水が放流される海域内に臨ませたことにある。
【0050】
このような構成とすると、海水淡水化装置から放流される塩分濃度の高い濃縮海水を下水処理場から放流される処理水と混合することができ、処理水によって塩分濃度を希釈した濃縮海水を海域に放流することが可能となる。これによって、初期の塩分濃度の高い濃縮海水を直接放流するよりも、海域における海洋生態系への影響を抑制することができる。
【0051】
又、海水淡水化装置からの濃縮海水が放流される濃縮海水放流管と下水処理場から処理水が放流される処理水放流管を合流させる場合、海水淡水化装置の設置位置を下水処理場の設置位置よりも低位置にして、両者に高低差を有するようにしたことにある。
【0052】
このような位置構成とすると、海水淡水化装置から放流される濃縮海水に下水処理場から放流される処理水を混合する場合、高低差の位置エネルギーの利用が可能なり、処理水を混合するに際して例えば送水ポンプ等の設備と動力を使用しなくとも、処理水を自然流下で混合することが可能となる。この結果、濃縮海水を下水処理場からの処理水と混合して海域に放流する場合、混合に要する動力等のコスト削減が可能となる。
【実施例1】
【0053】
本発明の実施例1を図1から図4を用いて説明する。図1は実施例1に係る海水淡水化装置の濃縮海水放流方法を説明するシステム構成図である。
【0054】
海水Wは、取水管1を介して取水ポンプ2によって海域Szから取水されて逆浸透膜を使用する海水淡水化装置3に送られ、海水淡水化装置3で、後述するプロセスを得て海水から淡水の透過水Fwが得られ、送水ポンプ4によって配水管5及び配水管網7を介して需要端6に供給される。需要端6にて使用された水や雨水の水Rwは、下水Wwとして下水管網8及び幹線管渠9を介して下水処理場10に流入する。下水処理場10では、後述する処理プロセスを得て流入下水が処理され、処理水Twとして系外に排出される。
【0055】
海水淡水化装置3からの濃縮海水Cwを系外に放流する濃縮海水放流管11と、下水処理場10からの処理水Twが放流される処理水放流管12とが合流する。合流後の合流管13の下流側は混合濃縮海水Cwが放流される海域Sz内に臨んでいる。
【0056】
図2は、海水淡水化装置のシステム構成図である。図2に示すように、逆浸透膜処理の対象となる海水Wは、取水ポンプ1によって海域Szから取水され、原水タンク21に貯留された後、海水ポンプ22にて流量計25を介して砂ろ過器23及びMF膜装置24に供給される。
【0057】
流量計25は砂ろ過器23及びMF膜装置24への海水供給流量Qを測定する。流量計25の測定値Qは演算器26に入力される。演算器26では、測定値Qに別途入力される塩素系殺菌剤注入率CLが乗じられて塩素系殺菌剤注入量CQが求められ、塩素系殺菌剤注入ポンプ27によって塩素系殺菌剤Cが海水に注入される。
【0058】
ここで、塩素系殺菌剤Cは海水ポンプ22の吸込側で注入してもよく、後述する凝集剤注入前に注入すればよい。塩素系殺菌剤Cとしては、塩素ガスを水に注入して調製した塩素水または次亜塩素酸ナトリウム等が用いられ、殺菌剤の注入に伴い海水中の微生物等は殺菌または不活化される。
【0059】
演算器28には流量計25から測定値Qが入力されて海水供給流量に換算され、凝集剤注入量PQを求める。演算器28には、予め設定された凝集剤注入率Pが入力され、海水供給流量と凝集剤注入率が乗じられて凝集剤注入量PQが求められ、この凝集剤注入量PQに応じた凝集剤Gが凝集剤注入ポンプ29によって海水に注入される。
【0060】
凝集剤Gとしては、ポリ塩化アルミニウムまたはポリシリカ鉄(SiO2)n・Fe2O3)等が用いられ、海水に注入された凝集剤Gは混合器(図示せず)にて撹拌混合されて、海水中の濁質分をマイクロフロック化し、このフロックは砂ろ過器23にてろ過される。砂ろ過器23にてろ過されなかった成分は下流側のMF膜24にてろ過され、その後、処理水タンク30に導入される。
【0061】
なお、本実施例では、凝集剤Gの注入後、砂ろ過器23及びMF膜24を用いて濁質分を除去しているが、MF膜,NF膜等を用いてもよく、凝集処理後の濁質分の除去手段が特に限定されるものではない。
【0062】
処理水タンク30は保安フィルター32に接続され、保安フィルター32に接続された高圧ポンプ31で、処理水タンク30の処理水を加圧して逆浸透膜装置60に供給水PWとして送出する。保安フィルター32は、高圧ポンプ31及び逆浸透膜装置60内の逆浸透膜33への異物の侵入を阻止するため、高圧ポンプ31の吸込側に配設されている。
【0063】
高圧ポンプ31にて逆浸透膜装置31に供給される供給水PWは5〜8MPa程度まで加圧されて逆浸透膜33に供給され、この逆浸透膜33を介して透過水FWが淡水として取出される。透過水FWは透過水タンク34に貯留され、殺菌処理及びミネラル分添加が施された後、送水ポンプ4によって需要端6に供給される。
【0064】
一方、逆浸透膜33を透過しないは濃縮海水Cwは被透過水側から排出され、その後、圧力回収タービン35にてエネルギーが回収された後、系外に放流される。
【0065】
図3は下水処理場の活性汚泥法による処理システムの一例を示す構成図である。図3に示すように、下水管網8及び幹線管渠9を介して下水処理場10に流入した下水Isは、最初沈殿池36を経て曝気槽37に流入し、ブロワー38にて一定時間、空気で曝気された後、最終沈殿池39に流入する。最終沈殿池39で、上澄水と沈殿した活性汚泥Asに固液分離され、上澄水は越流して処理水Twとして系外に放流される。最終沈殿池39で沈殿した活性汚泥Asの一部は返送汚泥Raとして曝気槽37に返送され、再度、生物処理に使用される。
【0066】
一方、一部の活性汚泥Asは余剰汚泥として系外に抜き出され、その後、脱水処理される。なお、前記した下水処理場の流入下水処理において、最初沈殿池,曝気槽及び最終沈殿池からなるプロセスの活性汚泥法による下水処理法としたが、例えば、最終沈殿池を必要としない膜分離活性汚泥法であってもよく、下水処理場における流入下水の処理法が特に限定されるものでない。
【0067】
上述したように海水淡水化装置3の濃縮海水放流プロセスが構成されている場合、海水淡水化装置3から濃縮海水Cwが放流される濃縮海水放流管11は、下水処理場10から処理水Twが放流される処理水放流管12と合流されているので、下水処理場10から放流される処理水Twと濃縮海水Cwが混合され、混合された混合濃縮海水Ctとして海域Szに放流される。
【0068】
海水淡水化装置3から放流される濃縮海水Cwは、通常は海水の塩分濃度より高い塩分濃度であるが、濃縮海水Cwに下水処理場10から放流される処理水と濃縮海水Cwとを混合することによって、混合後の混合濃縮海水Ctの塩分濃度は低下し、塩分濃度の低い混合濃縮海水Ctを海域に放流することができる。
【0069】
図4に混合比Mと塩分濃度Sとの関係を示すように、下水処理場10からの処理水Twを用いて、この処理水Twと濃縮海水Cwを混合した場合、海水Wを用いた場合の同じ混合比と比較して、混合後の塩分濃度Sは低下する。ここで、濃縮海水Cwの塩分濃度(6%を想定)を通常の海水塩分濃度(3.5%)まで低下させる混合比Mを求めると、下水処理水を濃縮海水Cwに混合した場合、混合比Wは約0.7と低く、濃縮海水量Cfに対して少ない処理水量Tfで塩分濃度を低下させることができる。これに対して、海水Wを用いて濃縮海水Cwの塩分濃度を低下させようとした場合、図14に示したように、混合比Mは約100と高く、多大な海水量を必要とする。
【0070】
なお、処理水Twまたは海水Wと濃縮海水Cwとの混合後の混合濃縮海水Ctの塩分濃度Sは数1,数2に基づいて求めた。
(数1)
S={(Wo×Mb}+Ns/(1+Mb)} …(1)
(数2)
S={Ns/(1+Mb)} …(2)
【0071】
ここで、Sは混合濃縮海水塩分濃度(%)、Woは海水塩分濃(3.5%)、Mbは海水混合倍率、Nsは濃縮海水塩分濃度(6%)である。
【0072】
一方、混合比Mは数3で表したが、濃縮海水量Cfを混合量Tfで除して、混合比Mとして表してよい。また、数4で示すように、混合率Mrとしてもよく、混合比または混合率は同じ概念で表現され、特に限定されるものではない。
(数3)
混合比M=(混合量Mf/濃縮海水量Cf) …(3)
(数4)
混合率Mr=(混合量Mf/(混合量Mf+濃縮海水量Cf) …(4)
【0073】
ここで、混合量Mf=(処理水量Tfまたは海水量Wf)である。
【0074】
このように、海水淡水化装置3から放流される濃縮海水を海域Szに直接放流する場合と比較して放流海域における塩分濃度の上昇が抑制されることになる。
【0075】
以上説明したように、海水淡水化装置3からの濃縮海水Cwを下水処理場10からの処理水Twと混合した後に海域Szに放流することによって、放流海域における塩分濃度上昇が抑制されるので、海洋生態系への影響が低減可能な海水淡水化装置の濃縮海水放流方法とすることができる。
【実施例2】
【0076】
本発明の実施例2を図5から図7を用いて説明する。図5は、実施例2に係る海水淡水化装置の濃縮海水放流方法を説明するシステム構成図であり、実施例1と同様に構成されている。
【0077】
海水淡水化装置3から放流される濃縮海水Cwの濃縮海水放流管11には、濃縮海水Cwの濃縮海水流量Fcを測定する濃縮海水流量計40が設置され、濃縮海水流量計40の両側には、海水淡水化装置3から放流される濃縮海水Cwの塩分濃度Scを測定する塩分濃度計42が設置されている。塩分濃度計42は、濃縮海水Cwをサンプリングして塩分濃度Scを測定する。
【0078】
濃縮海水流量計40と塩分濃度計42との間には、下水処理場10から放流される処理水Twの処理水放流管12が接続され、処理水放流管12には下水処理場10から放流される処理水Twの処理水流量Ftを測定する処理水流量計41が取付けられ、処理水流量計41の上流側には処理水流量調節手段43が配設されている。すなわち、処理水流量調節手段43は、濃縮海水放流管11と合流する付近の処理水放流管12の下流側に配設されている。又、処理水流量計41は、流量制御器46を介して処理水流量調節手段43に接続されている。
【0079】
処理水放流管12から分岐した処理水放流分岐管12Aが設置されており、下水処理場10からの処理水流量Ftの内、濃縮海水CWに混合する必要処理水流量Nwを除いた余分の処理水量が存在する場合、処理水放流分岐管12Aから処理水Twを放流域(例えば、海域)に放流するようになっている。
【0080】
このように構成されている場合、海水淡水化装置の濃縮海水放流方法のシステムフローの詳細図である図6に示すように動作する。
【0081】
濃縮海水流量計40で測定された濃縮海水流量Fcと塩分濃度計42で測定された濃縮海水の塩分濃度Scは、処理水流量制御器44に入力される。処理水流量制御器44の演算器45では入力された濃縮海水流量Fcと濃縮海水塩分濃度Sc及び混合濃縮海水の塩分濃度の設定目標値Soに基づいて、濃縮海水に混合する必要処理水流量Nwを数5により演算する。
(数5)
Nw={Fc−(Sc/So)×Fc} …(5)
【0082】
演算器45で求められた必要処理水流量Nwは流量制御器46に入力され、流量制御器46からの信号により、処理水流量調節手段43は処理水流量計41の流量信号を入力して必要処理水流量Nwとなるように開度を調節する。
【0083】
演算器47には濃縮海水流量Fcと前記演算器45で求められた必要処理水流量Nwが入力されて、数6により混合比Mを演算する。
(数6)
M=Nw/Fc …(6)
【0084】
なお、濃縮海水流量Fc及び濃縮海水塩分濃度Scの変動が少ない場合等は、図7に示すように、予め塩分濃度設定目標値Soと混合比Mの関係が入力された演算器48に、処理水を混合した後の混合濃縮海水の塩分濃度設定目標値Soを入力して、混合比Mを求める。そして、求めた混合比Mwと濃縮海水流量Fcを演算器49に入力して、数7に従い必要処理流量Nwを求めてもよい。
(数7)
Nw=Fc×M …(7)
【0085】
上述したように、濃縮海水流量Fcとこれに混合する処理水流量Nwの混合比Mが適正に調整されて混合濃縮海水の塩分濃度が設定目標値に維持される場合、混合濃縮海水の塩分濃度を任意に低くすることができるので、塩分濃度が高くなることがない。この結果、高濃度塩分の混合濃縮海水の海域放流に伴う海洋生態系への影響が解消可能となる。
【0086】
また、濃縮海水Cwに処理水TWw混合するに際、濃縮海水流量を調節しないで、濃縮海水Cwに混合する必要処理水流量を調節して、この必要処理水流量の増減にて混合比を設定値に維持することにより混合比の調整設定が容易に行える。
【実施例3】
【0087】
本発明の実施例3を図8を用いて説明する。図8は、実施例3に係る海水淡水化装置の濃縮海水放流方法を説明するシステム構成図であり、実施例2と同様に構成されている。
【0088】
実施例3では、合流管13から分岐した配管に塩分濃度計61が設置され、塩分濃度計61は海水淡水化装置3から放流された濃縮海水Cwと下水処理場10から放流された処理水Twとを混合した後の混合濃縮海水Ctの塩分濃度Csを測定する。すなわち、塩分濃度計61は合流管13から混合濃縮海水Ctをサンプリングして塩分濃度Csを測定する。
【0089】
補正処理水制御器51の演算器52には、塩分濃度計42で測定された塩分濃度Cs及び混合濃縮海水Ctの塩分濃度の設定目標値Soが入力され、演算器52では設定目標値Soと塩分濃度Scの偏差±ΔSが求められる。
【0090】
必要補正処理水流量Nhを求める演算器53には、演算器52で求められた偏差±ΔS、海水淡水化装置3から放流される濃縮海水流量Fc、及び混合濃縮海水の設定目標値Soが入力され、数8に従い必要補正処理水流量Nhが求められる。
(数8)
Nh={Fc−(±ΔS/So)×Fc} …(8)
【0091】
演算器53で求められた必要補正処理水流量Nhと、実施例2で説明した演算器45又は演算器49で求められた必要処理水流量Nwが演算器54に入力される。ここで、必要処理水流量Nwが増減されて混合比Mが調整される。
【0092】
一方、調整補正後の必要処理水流量Nw及び処理水流量計41の流量信号は流量制御器46に入力される。この流量制御器46により、処理水流量調節手段43は処理水流量計41の流量信号に従い開度を調節して調整補正後の必要処理水流量Nwに調節し、混合濃縮海水Ctの塩分濃度Csを設定目標値Soに維持する。
【0093】
このように、混合濃縮海水の塩分濃度を測定して、この塩分濃度と塩分濃度設定目標値との偏差に応じて混合比を調整するようにした場合、混合濃縮海水の塩分濃度が高くとも、目標値との偏差に応じて混合比を高く調整して混合する処理水流量を増加させ、混合濃縮海水の塩分濃度が目標値に維持される。これにより、混合濃縮海水は設定した塩分濃度に維持されて海域に放流されることになるので、高塩分濃度濃縮海水放流に伴う海洋生態系への影響は抑制される。
【実施例4】
【0094】
本発明の実施例4を図9を用いて説明する。図9は、実施例4に係る海水淡水化装置の濃縮海水放流方法を説明するシステム構成図であり、実施例3と同様に構成されている。
【0095】
塩分濃度計62は混合濃縮海水Ctの放流海域Szに配置され、この海域Szの塩分濃度Czを測定する。塩分濃度計62は、蓄電部(図示せず)と発振部(図示せず)を備えて係留ブイを有して海面に浮上し、内蔵する採取ポンプ(図示せず)にて海水Wをサンプリングし、海水の塩分濃度Czを測定する。
【0096】
塩分濃度計62からは塩分濃度Szの測定値が送信され、地上に配置された受信機63にて測定値が受信される。なお、塩分濃度計62からの出力をケーブルを介して地上に伝送するようにしてもよい。
【0097】
海域Szに配置された塩分濃度計62で測定された塩分濃度Czの測定値は、補正処理水制御器51に入力されて必要補正処理水流量Nhが求められ、実施例2で説明した演算器45又は演算器49で求められた必要処理水流量Nwと必要補正処理水流量Nhが演算器54に入力され、必要処理水流量Nwは増減されて混合比Mが調整される。一方、調整補正後の必要処理水流量Nw及び処理水流量計41の流量信号が流量制御器46に入力される。この流量制御器46により、処理水流量調節手段43は、処理水流量計41の流量信号に従い開度を調節して調整補正後の必要処理水流量Nwに調節し、混合濃縮海水Ctの塩分濃度Csを設定目標値Soに維持する。
【0098】
このように、放流海域に配置した塩分濃度計で測定された塩分濃度と予め設定した放流海域における塩分濃度目標値との偏差に応じて混合比を調整することができる。
【0099】
以上説明したように、混合濃縮海水の放流領域における測定された塩分濃度が高い場合、放流海域における塩分濃度規準値との偏差に応じて下水処理流量を増加させて混合比を高く調整し、放流海域における塩分濃度を目標値に維持することができる。これにより、混合濃縮海水の放流海域における塩分濃度が目標値よりも高くなるのが抑制されて、高塩分濃度による海洋生態系への影響を解消することが可能となる。
【実施例5】
【0100】
本発明の実施例5を図10を用いて説明する。図10は、実施例5に係る海水淡水化装置の濃縮海水放流方法を説明するシステム構成図であり、実施例4と同様に構成されている。
【0101】
塩分濃度計62a,62b及び62cは、混合濃縮海水Ctの放流海域Szに複数配置され、この海域Szの塩分濃度Czを複数箇所で測定する。塩分濃度計62a,62b及び62cからは塩分濃度Szの測定値が送信され、地上に配置された受信機63にて測定値が受信される。
【0102】
判定器71は、複数の塩分濃度計62a,62b及び62cで測定された塩分濃度Cs1,Cs2及びCs3の内、最大値を示す塩分濃度を選定する。選定された塩分濃度Csの測定値は、補正処理水制御器51の演算器52に入力される。ここで、必要補正処理水流量Nhが求められ、必要補正処理水流量Nhと、実施例2で説明した演算器45又は演算器49で求められた必要処理水流量Nwが演算器54に入力され、必要処理水流量Nwは増減されて混合比Mが調整される。
【0103】
調整補正後の必要処理水流量Nw及び処理水流量計41の流量信号は、流量制御器46に入力される。この流量制御器46により、処理水流量調節手段43は処理水流量計41の流量信号に従い開度を調節して調整補正後の必要処理水流量Nwに調節し、混合濃縮海水Ctの塩分濃度Csを設定目標値Soに維持する。
【0104】
このように、本実施例は、放流海域における局所的に高塩分濃度の海域を把握するため、放流海域の数の箇所で塩分濃度を測定して、測定値の内、最大値を示す塩分濃度を選定し、この測定値と放流海域における塩分濃度目標値との偏差に応じて混合比を調整するようにしたものである。このため、局所的な高塩分濃度の海域に合わせて、放流海域における塩分濃度を低減するように、目標値との偏差に応じて処理水流量を増加させて混合比を高く調整し、放流海域における塩分濃度を目標値に維持させることになる。この結果、放流海域における局所的な高塩分濃度海域の発生を抑制することができ、海洋生態系への影響も低減可能となる。
【実施例6】
【0105】
本発明の実施例6を図11を用いて説明する。図11は、実施例6に係る海水淡水化装置の濃縮海水放流方法を説明するシステム構成図であり、実施例1と同様に構成されている。
【0106】
海水淡水化装置3から放流される濃縮海水Cwの濃縮海水放流管11には、下水処理場10から放流される処理水Twの処理水放流管12が接続され、処理水放流管12には処理水流量調節手段43が配設されている。処理水放流管12から分岐された処理水放流管12bにも処理水流量調節手段43が配設されている。
【0107】
塩分濃度計62は混合濃縮海水Ctの放流海域Szに配置され、この海域Szの塩分濃度Czを測定する。塩分濃度計62からは塩分濃度Szの測定値が送信され、地上に配置された受信機63にて測定値が受信される。
【0108】
塩分濃度計42で測定された塩分濃度Csの測定値は、受信機63を介して演算器52に入力される。演算器52には、放流海域における塩分濃度設定目標値So入力され、目標値Soと測定された塩分濃度の測定値Csの偏差±Δが求められる。偏差+Δが目標値Soを上回る場合、演算器52からの出力に基づいて流量制御器46は処理水流量調節手段43aを開放し、処理水流量調節手段43bを閉じる。また、放流海域の塩分濃度Csが設定目標値Soよりも高い場合、必要に応じて全処理水流量を濃縮海水Cwに混合する。
【0109】
このように処理水流量調節弁43aが開放された場合、海水淡水化装置3からの濃縮海水Cwには下水処理場10からの処理水Twが混合され、この混合された混合濃縮海水Ctが海域Szに放流されることになる。
【0110】
本実施例では、濃縮海水放流海域の塩分濃度を低下させるために、濃縮海水の放流海域に塩分濃度計を配置して塩分濃度を測定し、この塩分濃度の測定値が予め設定された塩分濃度目標値よりも高いとき、処理水を海域放流前の濃縮海水に混合して、塩分濃度を低下させた混合濃縮海水を海域に放流するようにしたものである。このようにすると、放流海域の塩分濃度が規準値よりも高くなった場合は、放流される濃縮海水は初期の塩分濃度よりも低い状態で海域に放流されることになる。この結果、塩分濃度が規準値よりも高くなった放流海域の塩分濃度は低下し、同海域における海洋生態系への影響を抑制することができる。
【0111】
また、本実施例では、放流海域の塩分濃度が塩分濃度目標値よりも高くなって、濃縮海水に処理水を混合する場合、下水処理場からの処理水の全流量を濃縮海水に混合するようにしている。このようにすると、濃縮海水の塩分濃度は最大まで希釈されて海域に放流されることになるので、塩分濃度が目標値よりも高くなった海域の塩分濃度を早急に低下させることができる。この結果、放流海域の塩分濃度上昇に伴う生態系への対応が早急にできる。
【実施例7】
【0112】
本発明の実施例7を図12を用いて説明する。図12は、実施例7に係る海水淡水化装置の濃縮海水放流方法を説明するシステム構成図であり、実施例1と同様に構成されている。
【0113】
海水淡水化装置3からの濃縮海水Cwが放流される濃縮海水放流管11と、下水処理場10から処理水が放流される処理水放流管12は合流するように接続されている。そして、合流後の下流側は濃縮海水Cwが放流される海域Sz内に臨ませてある。
【0114】
本実施例では、海水淡水化装置3の設置位置を下水処理場10の設置位置よりも低位置に配置して、両者に高低差hを有するように設定してある。
【0115】
このようにすると、海水淡水化装置3から放流される塩分濃度の高い濃縮海水を下水処理場10から放流される処理水と混合することができ、処理水によって塩分濃度を希釈した濃縮海水を海域に放流することが可能となる。これによって、初期の塩分濃度の高い濃縮海水を直接放流するよりも、海域における海洋生態系への影響を抑制することができる。
【0116】
又、海水淡水化装置3の設置位置を下水処理場10の設置位置よりも低位置にして設定しているので、海水淡水化装置から放流される濃縮海水に下水処理場から放流される処理水を混合する場合、処理水を自然流下で混合することが可能となる。この結果、濃縮海水を下水処理場からの処理水と混合して海域に放流する場合、混合に要する動力等のコスト削減が可能となる。
【符号の説明】
【0117】
3 海水淡水化装置
4 送水ポンプ
7 配水管網
10 下水処理場
11 濃縮海水放流管
12 処理水放流管
33 逆浸透膜
42,62 塩分濃度計
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取水した海水を加圧して逆浸透膜を透過させて透過水を得て、前記逆浸透膜を透過しない濃縮海水を系外に放流する海水淡水化装置からの、前記濃縮海水を下水処理場から排出される処理水と混合し、前記処理水が混合された混合濃縮海水を海域に放流することを特徴とする海水淡水化装置の濃縮海水放流方法。
【請求項2】
請求項1に記載の海水淡水化装置の濃縮海水放流方法において、前記混合濃縮海水の放流管である濃縮海水放流管に設置された塩分濃度計及び濃縮海水流量計で計測された前記濃縮海水の塩分濃度及び濃縮海水流量と、混合濃縮海水の塩分濃度の設定目標値に基づいて前記下水処理場からの処理水の流量である必要処理水流量を求めて、該必要処理水流量と前記濃縮海水流量との混合比を調整することを特徴とする海水淡水化装置の濃縮海水放流方法。
【請求項3】
請求項2に記載の海水淡水化装置の濃縮海水放流方法において、下水処理場からの処理水流量のうち、前記濃縮海水に混合する必要処理水流量を除いた余分の処理水流量が存在する場合、該余分の処理水流量を処理水放流分岐管から放流することを特徴とする海水淡水化装置の濃縮海水放流方法。
【請求項4】
請求項1に記載の海水淡水化装置の濃縮海水放流方法において、前記混合濃縮海水の塩分濃度を塩分濃度計により測定して、前記混合濃縮海水の塩分濃度設定目標値と塩分濃度測定値との偏差に応じて濃縮海水と下水処理水との混合比を調整することを特徴とする海水淡水化装置の濃縮海水放流方法。
【請求項5】
請求項1に記載の海水淡水化装置の濃縮海水放流方法において、前記混合濃縮海水の放流海域に海水の塩分濃度を測定する塩分濃度計を配置し、該塩分濃度計で測定された塩分濃度と予め設定した前記放流海域における塩分濃度規準値との偏差に応じて、濃縮海水流量と処理水流量との混合比を調整することを特徴とする海水淡水化装置の濃縮海水放流方法。
【請求項6】
請求項5に記載の海水淡水化装置の濃縮海水放流方法において、前記混合濃縮海水の放流海域の複数の箇所で塩分濃度を測定し、測定された塩分濃度の内、最大値の塩分濃度を選定して、選定された塩分濃度と塩分濃度目標値との偏差を求めることを特徴とする海水淡水化装置の濃縮海水放流方法。
【請求項7】
取水した海水を加圧して逆浸透膜を透過させて透過水を得て、前記逆浸透膜を透過しない濃縮海水を系外に放流する海水淡水化装置から、前記濃縮海水が放流される海域に塩分濃度を測定する塩分濃度計を配置して、前記塩分濃度計の測定値が予め設定された塩分濃度目標値よりも高いとき、下水処理場からの処理水を前記海域に放流前の濃縮海水に混合し、混合した後の混合濃縮海水を海域に放流することを特徴とする海水淡水化装置の濃縮海水放流方法。
【請求項8】
請求項7に記載の海水淡水化装置の濃縮海水放流方法において、前記下水処理場から系外に放流される処理水の全流量を海水淡水化装置から放流される濃縮海水に混合することを特徴とする海水淡水化装置の濃縮海水放流方法。
【請求項9】
取水した海水を加圧して逆浸透膜を透過させて透過水を得て、前記逆浸透膜を透過しない濃縮海水を系外に放流する海水淡水化装置と、流入下水を処理して処理水を系外に放流する下水処理場とを備え、前記濃縮海水が放流される濃縮海水放流管と前記処理水が放流される処理水放流管とを合流させ、前記濃縮海水と前記処理水の合流後の下流側を前記濃縮海水が放流される海域内に臨ませたことを特徴とする海水淡水化装置の濃縮海水の放流方法。
【請求項10】
請求項9に記載の海水淡水化装置の濃縮海水の放流方法において、前記海水淡水化装置の設置位置が前記下水処理場の設置位置よりも低位置にあり高低差を有することを特徴とする海水淡水化装置の濃縮海水放流方法。
【請求項1】
取水した海水を加圧して逆浸透膜を透過させて透過水を得て、前記逆浸透膜を透過しない濃縮海水を系外に放流する海水淡水化装置からの、前記濃縮海水を下水処理場から排出される処理水と混合し、前記処理水が混合された混合濃縮海水を海域に放流することを特徴とする海水淡水化装置の濃縮海水放流方法。
【請求項2】
請求項1に記載の海水淡水化装置の濃縮海水放流方法において、前記混合濃縮海水の放流管である濃縮海水放流管に設置された塩分濃度計及び濃縮海水流量計で計測された前記濃縮海水の塩分濃度及び濃縮海水流量と、混合濃縮海水の塩分濃度の設定目標値に基づいて前記下水処理場からの処理水の流量である必要処理水流量を求めて、該必要処理水流量と前記濃縮海水流量との混合比を調整することを特徴とする海水淡水化装置の濃縮海水放流方法。
【請求項3】
請求項2に記載の海水淡水化装置の濃縮海水放流方法において、下水処理場からの処理水流量のうち、前記濃縮海水に混合する必要処理水流量を除いた余分の処理水流量が存在する場合、該余分の処理水流量を処理水放流分岐管から放流することを特徴とする海水淡水化装置の濃縮海水放流方法。
【請求項4】
請求項1に記載の海水淡水化装置の濃縮海水放流方法において、前記混合濃縮海水の塩分濃度を塩分濃度計により測定して、前記混合濃縮海水の塩分濃度設定目標値と塩分濃度測定値との偏差に応じて濃縮海水と下水処理水との混合比を調整することを特徴とする海水淡水化装置の濃縮海水放流方法。
【請求項5】
請求項1に記載の海水淡水化装置の濃縮海水放流方法において、前記混合濃縮海水の放流海域に海水の塩分濃度を測定する塩分濃度計を配置し、該塩分濃度計で測定された塩分濃度と予め設定した前記放流海域における塩分濃度規準値との偏差に応じて、濃縮海水流量と処理水流量との混合比を調整することを特徴とする海水淡水化装置の濃縮海水放流方法。
【請求項6】
請求項5に記載の海水淡水化装置の濃縮海水放流方法において、前記混合濃縮海水の放流海域の複数の箇所で塩分濃度を測定し、測定された塩分濃度の内、最大値の塩分濃度を選定して、選定された塩分濃度と塩分濃度目標値との偏差を求めることを特徴とする海水淡水化装置の濃縮海水放流方法。
【請求項7】
取水した海水を加圧して逆浸透膜を透過させて透過水を得て、前記逆浸透膜を透過しない濃縮海水を系外に放流する海水淡水化装置から、前記濃縮海水が放流される海域に塩分濃度を測定する塩分濃度計を配置して、前記塩分濃度計の測定値が予め設定された塩分濃度目標値よりも高いとき、下水処理場からの処理水を前記海域に放流前の濃縮海水に混合し、混合した後の混合濃縮海水を海域に放流することを特徴とする海水淡水化装置の濃縮海水放流方法。
【請求項8】
請求項7に記載の海水淡水化装置の濃縮海水放流方法において、前記下水処理場から系外に放流される処理水の全流量を海水淡水化装置から放流される濃縮海水に混合することを特徴とする海水淡水化装置の濃縮海水放流方法。
【請求項9】
取水した海水を加圧して逆浸透膜を透過させて透過水を得て、前記逆浸透膜を透過しない濃縮海水を系外に放流する海水淡水化装置と、流入下水を処理して処理水を系外に放流する下水処理場とを備え、前記濃縮海水が放流される濃縮海水放流管と前記処理水が放流される処理水放流管とを合流させ、前記濃縮海水と前記処理水の合流後の下流側を前記濃縮海水が放流される海域内に臨ませたことを特徴とする海水淡水化装置の濃縮海水の放流方法。
【請求項10】
請求項9に記載の海水淡水化装置の濃縮海水の放流方法において、前記海水淡水化装置の設置位置が前記下水処理場の設置位置よりも低位置にあり高低差を有することを特徴とする海水淡水化装置の濃縮海水放流方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−125662(P2012−125662A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276523(P2010−276523)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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