海水淡水化装置
【課題】逆浸透膜の目詰まりが低減されることにより、低運転コストでかつ安定して淡水を得られる海水淡水化装置を提供する。
【解決手段】逆浸透膜3を用いた海水淡水化装置において、逆浸透膜3より前段に配置されて、逆浸透膜3に供給される海水10を前処理する前処理装置1と、前処理装置1の処理水11の水質項目を計測する計測手段5と、計測手段5による計測値の濃度値FFPcとあらかじめ与えた目標値FFPtに基づいて、前処理装置1を制御する制御手段7と、を備え、計測手段5は、有機物量を示す水質項目を計測し、該有機物量を示す水質項目の計測手段5の前段に、有機物を除去する分離手段8を備えることを特徴とする。
【解決手段】逆浸透膜3を用いた海水淡水化装置において、逆浸透膜3より前段に配置されて、逆浸透膜3に供給される海水10を前処理する前処理装置1と、前処理装置1の処理水11の水質項目を計測する計測手段5と、計測手段5による計測値の濃度値FFPcとあらかじめ与えた目標値FFPtに基づいて、前処理装置1を制御する制御手段7と、を備え、計測手段5は、有機物量を示す水質項目を計測し、該有機物量を示す水質項目の計測手段5の前段に、有機物を除去する分離手段8を備えることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水やかん水から淡水を得るための逆浸透膜を用いた淡水化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
逆浸透膜を用いた海水淡水化装置では、逆浸透膜の汚染による淡水生産効率の低下や生産水質の悪化が課題である。汚染の要因は、海域によって異なるが、「粒子性物質の付着による閉塞」、「無機化合物の析出」、「有機物の付着」、「生物由来のバイオフィルムの付着」などが挙げられる。逆浸透膜への供給水からこれらの汚染要因を除去するため、さまざまな前処理技術が開発されてきた。前処理後の処理水(以降、前処理水と呼ぶ)の、逆浸透膜の汚染生成ポテンシャルを評価するにあたり、粒子性物質の指標であるSDI(Silt Density Index)が導入され広く使用されているが、SDIの想定しない前述の他の汚染の要因も評価する必要がある。
【0003】
近年、逆浸透膜による海水淡水化プラントでは、特に「生物由来の汚染」(以降、「バイオファウリング」と呼ぶ)が大きな問題になる事例が報告されており、生物やそのエネルギ源となる有機物の評価が重要である。
非特許文献1によると、有機物のうち特に粘着性を持つ多糖類を含むTEP(Transparent Exopolymer Particles)が、バイオフィルムの生成に大きく寄与している。TEPは微生物を吸着して逆浸透膜面に付着・固定し、さらに微生物に資化される。TEPは、通常、海水中の低分子の多糖類が凝集して粒子状またはコロイド状になることで形成されるが、植物プランクトンなどがUF膜(Ultrafiltration Membrane)などの前処理によって剪断され、体外に流出した多糖類が凝集することでも形成される。さらに、逆浸透膜の前処理では、生物の活性を阻害するために次亜塩素酸ナトリウムなどを用いた殺菌処理が行われるが、耐性菌の発生や膜内での再増殖が問題となっている。
このように、バイオフィルムの生成によるバイオファウリングを抑制するためには、適切な前処理により生物と有機物、なかでもTEPを低減することが有効と考えられる。
【0004】
特許文献1によると、海水中に含まれる、微生物が資化可能な有機物(同化可能有機炭素)を測定するために、海水中の微生物を培養し、コロニー数の計数の代わりに細胞内のアデノシン三リン酸(以降、ATP(adenosine-triphosphate)を定量して生菌数に換算することでその最大増殖数を把握する方法が開示されている。
この方法によると、評価対象である海水中の微生物の増殖ポテンシャルを用いるため、前処理水中の同化可能有機炭素を高精度で評価することができる。
【0005】
特許文献2によると、前処理装置の後段の分岐流路に、バイオファウリング予測のための膜試験片を設置し、試験片のバイオファウリング生成結果を、前処理装置や逆浸透膜処理装置の運転管理に使用する方法が開示されている。
この方法によると、逆浸透膜モジュールと同じ膜材質、同じ供給水による連続運転であるため、高精度で膜モジュールのバイオファウリング生成状況を模擬・予測することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−194364号公報
【特許文献2】国際公開2008−038575号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】竹内和久「RO 海水淡水化の前処理とファウリング」日本海水学会誌 第63巻第6号、p367-371(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1で開示された方法では、測定した同化可能有機炭素はTEPを全て包含せず、例えば付着作用を有するが資化されにくい有機物を評価できない。
また、微生物の培養に1日以上必要であり、前処理運転の制御に使用するには時間遅れが大きいという問題がある。
【0009】
特許文献2で開示された方法では、スペーサの有無、圧力など膜モジュールとの運転条件の違いによりバイオファウリング生成の予測精度が低下する。
また、試験片のバイオファウリング生成に数日必要であり、前処理運転の制御に使用するには時間遅れが大きいという問題がある。
【0010】
そこで本発明は、逆浸透膜の目詰まりが低減されることにより、低運転コストでかつ安定して淡水を得られる海水淡水化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、このような課題を解決するために、請求項1に係る海水淡水化装置は、逆浸透膜を用いた海水淡水化装置において、前記逆浸透膜より前段に配置されて、前記逆浸透膜に供給される海水を前処理する前処理装置と、前記前処理装置の処理水の水質項目を計測する計測手段と、前記計測手段による計測値の濃度値とあらかじめ与えた目標値に基づいて、前記前処理装置を制御する制御手段と、を備え、前記計測手段は、有機物量を示す水質項目を計測し、該有機物量を示す水質項目の計測手段の前段に、有機物を除去する分離手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、逆浸透膜の目詰まりが低減されることにより、低運転コストでかつ安定して淡水を得られる海水淡水化装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態に係る海水淡水化装置の構成模式図である。
【図2】第1実施形態に係る海水淡水化装置の運転フローである。
【図3】第1実施形態の変形例に係る海水淡水化装置の構成模式図である。
【図4】第1実施形態の変形例に係る海水淡水化装置の運転フローである。
【図5】第1実施形態に係る海水淡水化装置の効果の概念図である。
【図6】第2実施形態に係る海水淡水化装置の構成模式図である。
【図7】第2実施形態に係る海水淡水化装置の効果の概念図である。
【図8】第3実施形態に係る海水淡水化装置の構成模式図である。
【図9】第4実施形態に係る海水淡水化装置の構成模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し重複した説明を省略する。
【0015】
≪第1実施形態≫
図1は、第1実施形態に係る海水淡水化装置の構成模式図である。
海水淡水化装置は、前処理装置1、高圧ポンプ2、逆浸透膜モジュール3等を備えている。
海水淡水化装置に供給される海水10は、まず、前処理装置1で固形性・溶解性物質を除去され、および/または、水温,pHなどが調整され、前処理水11となる。
前処理装置1で前処理された前処理水11は、高圧ポンプ2で加圧され、逆浸透膜を有する逆浸透膜モジュール3に流入し、透過水12と濃縮水13に分離される。
【0016】
前処理水11の一部は、流路4を流下して計測器51から計測器5Nに流入する。
計測器51から計測器5Nは、各水質項目について計測する計測器であり、前処理水11の水質を計測する。
【0017】
計測器51から計測器5Nで計測された各水質項目の計測値は計算手段6に送信される。
計算手段6は、計測器51から計測器5Nで計測された各水質項目の計測値と、あらかじめ設定しておいた計算式に基づいて、バイオファウリング生成能を示す指標を算出する。
制御手段7は、計算手段6で算出されたバイオファウリング生成能を示す指標に基づいて、前処理装置1の運転条件を決定し、処理装置1に制御信号を送信する。
【0018】
流路4から分岐する流路9には、分離装置8を介して吸光度を計測する計測器51が接続されている。流路9から流下した前処理水11は、分離装置8で一部の有機物を除去された後、計測器51で吸光度が計測される。
【0019】
分離装置8は、有機膜であるMF膜(Microfiltration Membrane)、UF膜、無機膜、活性炭、ゼオライト、イオン交換樹脂などによるろ過処理装置を用いることができる。
分離装置8に流入した前処理水11中の有機物は、生物による分解性、粘着性の有無などが異なる成分を含んでいる。
分離装置8の分離工程では、前処理水11から、バイオファウリングへの寄与率が高いと考えられる生物易分解性かつ粘着性を有する成分(有機物)を、選択的に除去する。または、生物易分解性かつ粘着性を有する成分(有機物)を、選択的に残留させる。
【0020】
分離装置8において、生物易分解性かつ粘着性を有する成分(有機物)を選択的に残留させた場合は、計測器51で計測した吸光度を有機物の指標として用いる。
一方、分離装置8において、生物易分解性かつ粘着性を有する成分(有機物)を選択的に除去した場合は、分離装置8で一部の有機物を除去された前処理水11の吸光度を計測器51で計測し(計測値を吸光度E1とする)、加えて、分離装置8を透過しない前処理水11の吸光度を計測器52で計測し(計測値を吸光度E0とする)、吸光度の差分(即ちE0−E1)を有機物の指標として用いる。
【0021】
ここで、例として、「生物難分解性のフミン質成分に相当する有機物」に起因する吸光度を計測して、全体の有機物に起因する吸光度から差し引くことにより、指標としての吸光度を求める方法について説明する。
前処理水11からUF膜(分離装置8)により分画分子量1000Da以上の成分を除去したろ過水の吸光度E1000、および、分画分子量300Da以上の成分を除去した吸光度E300を測定する。その吸光度の差分(E1000−E300)を求めることにより、「分画分子量300Da以上1000Da未満の成分」に起因する吸光度、即ち、「生物難分解性のフミン質成分に相当する有機物」に起因する吸光度を計測する。これを、分離装置8を透過しない前処理水11の吸光度E0から差し引いた値(即ち、「E0−(E1000−E300)」)を有機物の指標として用いる。
または、「生物難分解性のフミン質成分に相当する有機物」に変えて、「粘着性を持たない中性物質に相当する有機物」として、アルカリ条件下での陰イオン交換樹脂によるろ過水の吸光度を用いてもよい。
【0022】
なお、吸光度の測定に用いる波長は、例えば240〜800nmを用いるとよい。また、吸光度の測定は1種類以上の波長に対して行ってもよい。
計測器52から5Nは、各水質項目、例えば、前処理水11の水温、前処理水11の水素イオン指数(pH)、前処理水11の導電率、海水中の生物の活性度を示すATPの濃度、前処理水11の吸光度を計測する。
【0023】
<海水淡水化装置の運転フロー>
図2は、第1実施形態に係る海水淡水化装置の運転フローである。
以下、前処理装置1が「UF膜処理装置」の場合の運転方法を説明する。
【0024】
ステップS101において、まず計算手段6は、計測器5から送信された計測値を用いて、バイオファウリング生成能を示す指標であるバイオファウリング生成能FFPを算出する。計算式の例を式(1)に示す。
FFPc=f(T)+f(pH)+f(EC)+f(Ab)+f(ATP) ……(1)
ここで、FFPcはバイオファウリング生成能の計算値(濃度値)、Tは前処理水11の水温、pHは前処理水11の水素イオン指数(pH)、ECは前処理水11の導電率、Abは前処理水11の吸光度、ATPは前処理水11のATPの濃度である。
なお、式(1)右辺の各項は、水質項目ごとにバイオファウリング生成との関係を求めて設定するとよい。
計算手段6において計算されたバイオファウリング生成能FFPの計算値FFPc(濃度値)は、制御手段7に送信される。
【0025】
ステップS102において、制御手段7は入力手段20からバイオファウリング生成能FFPの目標値FFPtが入力される。
ステップS103において、制御手段7は計算値FFPcが目標値FFPtより大きいか否かを判断する。
計算値FFPcが目標値FFPt以下の場合には(ステップS103でNo)、フローを終了し、制御手段7は前処理装置1の運転条件を現状のまま継続する。
一方、計算値FFPcが目標値FFPtより大きい場合には(ステップS103でYes)、ステップS104に進み、制御手段7は前処理装置1(UF膜処理装置)のろ過速度を低減させるように運転条件を決定する。または、前処理装置1(UF膜処理装置)の逆洗頻度を増加させるように運転条件を決定してもよい。また、前処理装置1(UF膜処理装置)に薬洗を実施させるように制御信号を送信してもよい。
【0026】
前処理装置1が「UF膜処理装置」以外の場合、制御手段7が決定する前処理装置1の運転条件は、例えば、消毒剤、凝集剤、スケール防止剤、pH調整剤の注入率が考えられる。いずれの場合も、あらかじめバイオファウリング生成能FFPとの相関関係を把握して、目標値FFPtを設定するとよい。
【0027】
<第1実施形態の変形例>
また、上述のバイオファウリング生成能FFPを用いて、逆浸透膜モジュール3の運転条件を決定してもよい。
図3は第1実施形態の変形例に係る海水淡水化装置の構成模式図であり、図4は第1実施形態の変形例に係る海水淡水化装置の運転フローである。
第1実施形態の変形例に係る海水淡水化装置では、制御手段7から信号を送る表示手段21が追加される。また、計測器52から5Nには前処理水11の流量を計測する流量計が含まれる。
【0028】
ステップS201において、制御手段7は入力手段20から後述する濃度積算値∫FFPcの閾値である積算目標値∫FFPtが入力される。
ステップS202において、計算手段6は、前処理水11のバイオファウリング生成能FFPの計算値FFPc(濃度値)と、前処理水11の流量の計測値から、逆浸透膜モジュール3に供給された計算値FFPcの総量である濃度積算値∫FFPcを算出する。濃度積算値∫FFPcの算出は、例えば、測定周期ごとの前処理水11の流量と、式(1)により算出された計算値FFPcと、を積算し、前回の洗浄から現在までの合計を求めることにより算出される。
計算手段6において算出された濃度積算値∫FFPcは、制御手段7に送信される。
ステップS203において、制御手段7は濃度積算値∫FFPcが積算目標値∫FFPtより大きいか否かを判断する。
濃度積算値∫FFPcが積算目標値∫FFPt以下の場合には(ステップS203でNo)、ステップS202に戻る。
一方、濃度積算値∫FFPcが積算目標値∫FFPtより大きい場合には(ステップS203でYes)、ステップS204に進み、制御手段7は表示手段21に逆浸透膜モジュール3の洗浄を促す警告を発信する。
【0029】
以下に、第1実施形態(第1実施形態の変形例)に係る海水淡水化装置の構成による作用を説明する。
図5は、第1実施形態に係る海水淡水化装置の効果の概念図である。
逆浸透膜モジュール3を用いた海水淡水化装置で、前処理にUF膜処理を実施する場合、UF膜処理装置を運転条件一定で運転すると、原海水中の有機物のうち分子量の大きい成分(図示省略)が除去されるが、原海水中の低分子成分のうち一部が通過する。
さらに、プランクトン類が剪断されてプランクトン体内の成分が流出し低分子成分が増加する現象が報告されている(非特許文献1参照)。
【0030】
このとき、本実施形態による制御(図2参照)で運転すると、前処理装置1(UF膜処理装置)のろ過流速を低減する。または、逆洗や薬洗によりUF膜のファウリングを除去し、UF膜の運転圧力を低減する。
この結果、プランクトンの剪断が抑制されるため、低分子成分の増加を低減できる。これにより、前処理水11中のバイオファウリング寄与率の高い低分子の有機物量が低減され、逆浸透膜モジュール3のバイオファウリング生成が抑制される。
【0031】
また、バイオファウリング寄与率の高い有機物の供給積算量に応じて適切な時期に警告を表示し逆浸透膜が洗浄されることにより、(図4参照)、過剰な洗浄用薬剤の使用を抑制できる。
また、バイオフィルムの長期間接触にともなう生物による逆浸透膜の資化を防ぐことが期待できる。
【0032】
このように、本実施形態の構成をとることで浸透膜モジュール3の逆浸透膜の汚染を低減し、適切な時期に逆浸透膜を洗浄することにより洗浄頻度を低減する、または、交換までの使用期間を伸張するような運転を実現できる。その結果、運転コストの低減や環境負荷の低減が可能となる。
【0033】
≪第2実施形態≫
図6は、第2実施形態に係る海水淡水化装置の構成模式図である。
第2実施形態に係る海水淡水化装置は、第1実施形態に係る海水淡水化装置(図1参照)における前処理装置1(UF膜処理装置)に変えて、海水10を前処理する前処理装置として、不溶化処理装置22とろ過装置23を備えている。
海水10は、不溶化処理装置22で粒子状成分やコロイド状成分が凝集され、および/または、溶解性無機物を析出させられ、続いてろ過装置23に流入し、凝集物・析出物を除去された後、前処理水11となる。
【0034】
以降は、第1実施形態に係る海水淡水化装置と同様である。
すなわち、前処理水11は、高圧ポンプ2で加圧され、逆浸透膜を有する逆浸透膜モジュール3に流入し、透過水12と濃縮水13に分離される。前処理水11の一部は、流路4を流下して計測器51から計測器5Nに流入する。計測器51から計測器5Nは、各水質項目について計測する計測器であり、前処理水11の水質を計測する。計測器51から計測器5Nで計測された各水質項目の計測値は計算手段6に送信される。計算手段6は、計測器51から計測器5Nで計測された各水質項目の計測値と、あらかじめ設定しておいた計算式に基づいて、バイオファウリング生成能を示す指標を算出する。制御手段7は、計算手段6で算出されたバイオファウリング生成能を示す指標に基づいて、前処理装置(不溶化処理装置22、ろ過装置23)の運転条件を決定し、処理装置1に制御信号を送信する。
【0035】
不溶化処理装置22として、凝集剤注入装置、アルカリ剤注入装置、二酸化炭素微細気泡注入装置などを用いることができる。
この場合、制御手段7が決定する不溶化処理装置22の運転条件は、それぞれ、凝集剤注入率、アルカリ剤注入率、および/または、目標pH値、二酸化炭素微細気泡注入率、を用いることができる。
【0036】
ろ過装置23は、金属膜またはセラミック膜による無機膜ろ過装置を用いるとよい。
また、ろ過装置23は、デッドエンドろ過またはクロスフローろ過で逆洗を併用する、もしくは、クロスフローろ過で一次側の膜面を連続的/間欠的にブラシ等により機械洗浄してもよい。
制御手段7が決定するろ過装置23の運転条件は、ろ過流速、逆洗頻度、機械洗浄頻度などを用いることができる。
【0037】
以下に、第2実施形態に係る海水淡水化装置の構成による作用を説明する。
図7は、第2実施形態に係る海水淡水化装置の効果の概念図である。
逆浸透膜モジュール3を用いた海水淡水化装置で、前処理にUF膜処理を実施する場合、UF膜処理装置を運転条件一定で運転すると、前述のとおり、原海水中の有機物のうち分子量の大きい成分(図示省略)が除去されるが、原海水中の低分子成分のうち一部が通過し、さらに、プランクトン類が剪断されてプランクトン体内の成分が流出し低分子成分が増加する。
【0038】
一方、第2実施形態に係る海水淡水化装置の不溶化処理と無機膜によるろ過では、ろ過圧力が低いためプランクトン類の剪断による低分子有機物の溶出は起こらない。また、バイオファウリング寄与率の高い粘着性を有する有機物は、不溶化処理において生成した粒子に付着して、ろ過排水として除去される効果も期待できる。
このように、前処理水中のバイオファウリング寄与率の高い低分子の有機物量が低減されることにより、逆浸透膜のバイオファウリング生成が抑制される。
また、不溶化処理としてアルカリ剤注入を実施する場合、共沈現象による海水中のほう素の除去も期待できる。また、不溶化処理として二酸化炭素微細気泡注入による炭酸塩の析出促進処理を実施する場合、高二酸化炭素濃度環境による細胞内液のpH低下にともなう生物の活性阻害効果によるバイオフィルム形成抑制効果も期待できる。
【0039】
このように、本実施形態(第2実施形態)の構成をとることで、浸透膜モジュール3の逆浸透膜の汚染を低減し、逆浸透膜の洗浄頻度を低減する、または、交換までの使用期間を伸張するような運転を実現できる。または、ほう素除去のための逆浸透膜の回収率抑制運転や逆浸透膜の2段運転を不要とする運転を実現できる。その結果、運転コストの低減や環境負荷の低減が可能となる。
【0040】
≪第3実施形態≫
図8は、第3実施形態に係る海水淡水化装置の構成模式図である。
第3実施形態に係る海水淡水化装置は、第1実施形態に係る海水淡水化装置(図1参照)おける前処理装置1の後段に二酸化炭素注入装置24が設けられており、前処理装置1および二酸化炭素注入装置24が海水10を前処理する前処理装置として機能する。
海水10は、前処理装置1で固形性・溶解性物質を除去され、または、水温,pHなどが調整され、前処理水11となる。さらに、前処理水11は二酸化炭素注入装置24へ流入し、二酸化炭素含有ガスを散気される。
【0041】
以降は、第1実施形態に係る海水淡水化装置と同様である。
すなわち、前処理水11は、高圧ポンプ2で加圧され、逆浸透膜を有する逆浸透膜モジュール3に流入し、透過水12と濃縮水13に分離される。前処理水11の一部は、流路4を流下して計測器51から計測器5Nに流入する。計測器51から計測器5Nは、各水質項目について計測する計測器であり、前処理水11の水質を計測する。計測器51から計測器5Nで計測された各水質項目の計測値は計算手段6に送信される。計算手段6は、計測器51から計測器5Nで計測された各水質項目の計測値と、あらかじめ設定しておいた計算式に基づいて、バイオファウリング生成能を示す指標を算出する。制御手段7は、計算手段6で算出されたバイオファウリング生成能を示す指標に基づいて、前処理装置(前処理装置1、二酸化炭素注入装置24)の運転条件を決定し、処理装置1に制御信号を送信する。
【0042】
二酸化炭素注入装置24は、二酸化炭素含有ガスを前処理水11に注入する。二酸化炭素含有ガスは、二酸化炭素ガスを含みO2や有害ガスを含まない排ガスなどを用いてもよい。
制御手段7が決定する二酸化炭素注入装置24の運転条件は、ガス注入率または気中二酸化炭素濃度を用いることができる。
【0043】
以下に、第3実施形態に係る海水淡水化装置の構成による作用を説明する。
環境水の二酸化炭素分圧が上昇すると、水生生物の体液と環境水間の二酸化炭素分圧勾配が逆転して環境水中から生物体内へ二酸化炭素の拡散が生じ、生物の細胞内pH低下にともない生物の代謝・活性に対する阻害効果が報告されている(石松惇、吉川貴志、林正裕、喜田潤「海水環境:高二酸化炭素の影響」日本海水学会誌 第57巻第4号、p285-288(2003) 参照)。
【0044】
第3実施形態に係る海水淡水化装置では、逆浸透膜モジュール3の逆浸透膜への供給水の二酸化炭素濃度を増加させる。これにより、残存していた微生物が逆浸透膜表面に付着しても、微生物の代謝物の生成が阻害され、バイオフィルムの成長を抑制する効果が期待できる。
また、薬剤による殺菌と異なり一時的な不活化であるため、微生物の体液の溶出にともなうバイオファウリングの要因である有機物の増加は回避することができる。
【0045】
<第3実施形態の変形例>
また、別の二酸化炭素注入方法として、高圧ポンプ2の後段に設置されるエアチャンバ25の補充気体として二酸化炭素を用いてもよい。
エアチャンバ25は、チャンバ内のガスの圧縮作用により、高圧ポンプ2の圧力・流量の急激な増減を緩衝する目的で使用され、圧縮時にガスが送液に溶け込むためガスの補充が必要である。このガスとして二酸化炭素を用いる場合、前処理で二酸化炭素を注入する場合(第3実施形態)と異なり高圧ポンプ2の供給水の溶存気体量が増加しないため、高圧ポンプ2でのキャビテーション発生を回避することができる。
【0046】
このように、本実施形態(第3実施形態、第3実施形態の変形例)の構成をとることで、浸透膜モジュール3の逆浸透膜の汚染を低減し、逆浸透膜の洗浄頻度を低減する、または、交換までの使用期間を伸張するような運転を実現できる。その結果、運転コストの低減や環境負荷の低減が可能となる。
【0047】
≪第4実施形態≫
図9は、第4実施形態に係る海水淡水化装置の構成模式図である。
第4実施形態に係る海水淡水化装置は、第1実施形態に係る海水淡水化装置(図1参照)おける前処理装置1の後段にイオン交換樹脂槽26が設けられており、前処理装置1およびイオン交換樹脂槽26が海水10を前処理する前処理装置として機能する。
海水10は、前処理装置1で固形性・溶解性物質を除去され、および/または、水温,pHなどが調整され、イオン交換樹脂槽26へ流入し、イオン交換樹脂槽26で酸性多糖類を吸着・除去され、前処理水11となる。
【0048】
以降は、第1実施形態に係る海水淡水化装置と同様である。
すなわち、前処理水11は、高圧ポンプ2で加圧され、逆浸透膜を有する逆浸透膜モジュール3に流入し、透過水12と濃縮水13に分離される。前処理水11の一部は、流路4を流下して計測器51から計測器5Nに流入する。計測器51から計測器5Nは、各水質項目について計測する計測器であり、前処理水11の水質を計測する。計測器51から計測器5Nで計測された各水質項目の計測値は計算手段6に送信される。計算手段6は、計測器51から計測器5Nで計測された各水質項目の計測値と、あらかじめ設定しておいた計算式に基づいて、バイオファウリング生成能を示す指標を算出する。制御手段7は、計算手段6で算出されたバイオファウリング生成能を示す指標に基づいて、前処理装置(前処理装置1、イオン交換樹脂槽26)の運転条件を決定し、処理装置1に制御信号を送信する。
【0049】
イオン交換樹脂槽26は複数槽を並列して設置し、順番にオフラインで洗浄するとよい。
制御手段7が決定するイオン交換樹脂槽26の運転条件は、イオン交換樹脂槽26の洗浄頻度、接触時間などを用いることができる。例えば、制御手段7は、上述のバイオファウリング寄与率の高い有機物の指標の計測値を計算手段6から取り込み、計測値が入力手段20から入力された目標値より高い場合、イオン交換樹脂槽26の洗浄を実施する。
【0050】
以下に、第4実施形態に係る海水淡水化装置の構成による作用を説明する。
ある種のイオン交換樹脂は、酸性多糖類を吸着することが知られている。また、非特許文献1によると、上述のバイオファウリング寄与率の高い有機物中に酸性多糖類が偏在する。
したがって、本実施形態(第4実施形態)の構成のように、逆浸透膜への供給水をイオン交換樹脂と接触させて酸性多糖類を除去すると、供給水中の生物の付着・増殖を促進する要因が低減されるため、バイオファウリングの生成抑制が期待できる。
【0051】
このように、本実施形態(第4実施形態)の構成をとることで、浸透膜モジュール3の
逆浸透膜の汚染を低減し、逆浸透膜の洗浄頻度を低減する、または交換までの使用期間を伸張するような運転を実現できる。その結果、運転コストの低減や環境負荷の低減が可能となる
【符号の説明】
【0052】
1 前処理装置
2 高圧ポンプ(ポンプ)
3 逆浸透膜モジュール(逆浸透膜)
4 流路
5 計測器(計測手段)
6 計算手段
7 制御手段
8 分離装置(分離手段)
9 流路
10 海水
11 前処理水(処理水)
12 透過水
13 濃縮水
20 入力手段
21 表示手段(表示する機能)
22 不溶化処理装置
23 ろ過装置
24 二酸化炭素注入装置
25 エアチャンバ
26 イオン交換樹脂槽
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水やかん水から淡水を得るための逆浸透膜を用いた淡水化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
逆浸透膜を用いた海水淡水化装置では、逆浸透膜の汚染による淡水生産効率の低下や生産水質の悪化が課題である。汚染の要因は、海域によって異なるが、「粒子性物質の付着による閉塞」、「無機化合物の析出」、「有機物の付着」、「生物由来のバイオフィルムの付着」などが挙げられる。逆浸透膜への供給水からこれらの汚染要因を除去するため、さまざまな前処理技術が開発されてきた。前処理後の処理水(以降、前処理水と呼ぶ)の、逆浸透膜の汚染生成ポテンシャルを評価するにあたり、粒子性物質の指標であるSDI(Silt Density Index)が導入され広く使用されているが、SDIの想定しない前述の他の汚染の要因も評価する必要がある。
【0003】
近年、逆浸透膜による海水淡水化プラントでは、特に「生物由来の汚染」(以降、「バイオファウリング」と呼ぶ)が大きな問題になる事例が報告されており、生物やそのエネルギ源となる有機物の評価が重要である。
非特許文献1によると、有機物のうち特に粘着性を持つ多糖類を含むTEP(Transparent Exopolymer Particles)が、バイオフィルムの生成に大きく寄与している。TEPは微生物を吸着して逆浸透膜面に付着・固定し、さらに微生物に資化される。TEPは、通常、海水中の低分子の多糖類が凝集して粒子状またはコロイド状になることで形成されるが、植物プランクトンなどがUF膜(Ultrafiltration Membrane)などの前処理によって剪断され、体外に流出した多糖類が凝集することでも形成される。さらに、逆浸透膜の前処理では、生物の活性を阻害するために次亜塩素酸ナトリウムなどを用いた殺菌処理が行われるが、耐性菌の発生や膜内での再増殖が問題となっている。
このように、バイオフィルムの生成によるバイオファウリングを抑制するためには、適切な前処理により生物と有機物、なかでもTEPを低減することが有効と考えられる。
【0004】
特許文献1によると、海水中に含まれる、微生物が資化可能な有機物(同化可能有機炭素)を測定するために、海水中の微生物を培養し、コロニー数の計数の代わりに細胞内のアデノシン三リン酸(以降、ATP(adenosine-triphosphate)を定量して生菌数に換算することでその最大増殖数を把握する方法が開示されている。
この方法によると、評価対象である海水中の微生物の増殖ポテンシャルを用いるため、前処理水中の同化可能有機炭素を高精度で評価することができる。
【0005】
特許文献2によると、前処理装置の後段の分岐流路に、バイオファウリング予測のための膜試験片を設置し、試験片のバイオファウリング生成結果を、前処理装置や逆浸透膜処理装置の運転管理に使用する方法が開示されている。
この方法によると、逆浸透膜モジュールと同じ膜材質、同じ供給水による連続運転であるため、高精度で膜モジュールのバイオファウリング生成状況を模擬・予測することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−194364号公報
【特許文献2】国際公開2008−038575号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】竹内和久「RO 海水淡水化の前処理とファウリング」日本海水学会誌 第63巻第6号、p367-371(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1で開示された方法では、測定した同化可能有機炭素はTEPを全て包含せず、例えば付着作用を有するが資化されにくい有機物を評価できない。
また、微生物の培養に1日以上必要であり、前処理運転の制御に使用するには時間遅れが大きいという問題がある。
【0009】
特許文献2で開示された方法では、スペーサの有無、圧力など膜モジュールとの運転条件の違いによりバイオファウリング生成の予測精度が低下する。
また、試験片のバイオファウリング生成に数日必要であり、前処理運転の制御に使用するには時間遅れが大きいという問題がある。
【0010】
そこで本発明は、逆浸透膜の目詰まりが低減されることにより、低運転コストでかつ安定して淡水を得られる海水淡水化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、このような課題を解決するために、請求項1に係る海水淡水化装置は、逆浸透膜を用いた海水淡水化装置において、前記逆浸透膜より前段に配置されて、前記逆浸透膜に供給される海水を前処理する前処理装置と、前記前処理装置の処理水の水質項目を計測する計測手段と、前記計測手段による計測値の濃度値とあらかじめ与えた目標値に基づいて、前記前処理装置を制御する制御手段と、を備え、前記計測手段は、有機物量を示す水質項目を計測し、該有機物量を示す水質項目の計測手段の前段に、有機物を除去する分離手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、逆浸透膜の目詰まりが低減されることにより、低運転コストでかつ安定して淡水を得られる海水淡水化装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態に係る海水淡水化装置の構成模式図である。
【図2】第1実施形態に係る海水淡水化装置の運転フローである。
【図3】第1実施形態の変形例に係る海水淡水化装置の構成模式図である。
【図4】第1実施形態の変形例に係る海水淡水化装置の運転フローである。
【図5】第1実施形態に係る海水淡水化装置の効果の概念図である。
【図6】第2実施形態に係る海水淡水化装置の構成模式図である。
【図7】第2実施形態に係る海水淡水化装置の効果の概念図である。
【図8】第3実施形態に係る海水淡水化装置の構成模式図である。
【図9】第4実施形態に係る海水淡水化装置の構成模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し重複した説明を省略する。
【0015】
≪第1実施形態≫
図1は、第1実施形態に係る海水淡水化装置の構成模式図である。
海水淡水化装置は、前処理装置1、高圧ポンプ2、逆浸透膜モジュール3等を備えている。
海水淡水化装置に供給される海水10は、まず、前処理装置1で固形性・溶解性物質を除去され、および/または、水温,pHなどが調整され、前処理水11となる。
前処理装置1で前処理された前処理水11は、高圧ポンプ2で加圧され、逆浸透膜を有する逆浸透膜モジュール3に流入し、透過水12と濃縮水13に分離される。
【0016】
前処理水11の一部は、流路4を流下して計測器51から計測器5Nに流入する。
計測器51から計測器5Nは、各水質項目について計測する計測器であり、前処理水11の水質を計測する。
【0017】
計測器51から計測器5Nで計測された各水質項目の計測値は計算手段6に送信される。
計算手段6は、計測器51から計測器5Nで計測された各水質項目の計測値と、あらかじめ設定しておいた計算式に基づいて、バイオファウリング生成能を示す指標を算出する。
制御手段7は、計算手段6で算出されたバイオファウリング生成能を示す指標に基づいて、前処理装置1の運転条件を決定し、処理装置1に制御信号を送信する。
【0018】
流路4から分岐する流路9には、分離装置8を介して吸光度を計測する計測器51が接続されている。流路9から流下した前処理水11は、分離装置8で一部の有機物を除去された後、計測器51で吸光度が計測される。
【0019】
分離装置8は、有機膜であるMF膜(Microfiltration Membrane)、UF膜、無機膜、活性炭、ゼオライト、イオン交換樹脂などによるろ過処理装置を用いることができる。
分離装置8に流入した前処理水11中の有機物は、生物による分解性、粘着性の有無などが異なる成分を含んでいる。
分離装置8の分離工程では、前処理水11から、バイオファウリングへの寄与率が高いと考えられる生物易分解性かつ粘着性を有する成分(有機物)を、選択的に除去する。または、生物易分解性かつ粘着性を有する成分(有機物)を、選択的に残留させる。
【0020】
分離装置8において、生物易分解性かつ粘着性を有する成分(有機物)を選択的に残留させた場合は、計測器51で計測した吸光度を有機物の指標として用いる。
一方、分離装置8において、生物易分解性かつ粘着性を有する成分(有機物)を選択的に除去した場合は、分離装置8で一部の有機物を除去された前処理水11の吸光度を計測器51で計測し(計測値を吸光度E1とする)、加えて、分離装置8を透過しない前処理水11の吸光度を計測器52で計測し(計測値を吸光度E0とする)、吸光度の差分(即ちE0−E1)を有機物の指標として用いる。
【0021】
ここで、例として、「生物難分解性のフミン質成分に相当する有機物」に起因する吸光度を計測して、全体の有機物に起因する吸光度から差し引くことにより、指標としての吸光度を求める方法について説明する。
前処理水11からUF膜(分離装置8)により分画分子量1000Da以上の成分を除去したろ過水の吸光度E1000、および、分画分子量300Da以上の成分を除去した吸光度E300を測定する。その吸光度の差分(E1000−E300)を求めることにより、「分画分子量300Da以上1000Da未満の成分」に起因する吸光度、即ち、「生物難分解性のフミン質成分に相当する有機物」に起因する吸光度を計測する。これを、分離装置8を透過しない前処理水11の吸光度E0から差し引いた値(即ち、「E0−(E1000−E300)」)を有機物の指標として用いる。
または、「生物難分解性のフミン質成分に相当する有機物」に変えて、「粘着性を持たない中性物質に相当する有機物」として、アルカリ条件下での陰イオン交換樹脂によるろ過水の吸光度を用いてもよい。
【0022】
なお、吸光度の測定に用いる波長は、例えば240〜800nmを用いるとよい。また、吸光度の測定は1種類以上の波長に対して行ってもよい。
計測器52から5Nは、各水質項目、例えば、前処理水11の水温、前処理水11の水素イオン指数(pH)、前処理水11の導電率、海水中の生物の活性度を示すATPの濃度、前処理水11の吸光度を計測する。
【0023】
<海水淡水化装置の運転フロー>
図2は、第1実施形態に係る海水淡水化装置の運転フローである。
以下、前処理装置1が「UF膜処理装置」の場合の運転方法を説明する。
【0024】
ステップS101において、まず計算手段6は、計測器5から送信された計測値を用いて、バイオファウリング生成能を示す指標であるバイオファウリング生成能FFPを算出する。計算式の例を式(1)に示す。
FFPc=f(T)+f(pH)+f(EC)+f(Ab)+f(ATP) ……(1)
ここで、FFPcはバイオファウリング生成能の計算値(濃度値)、Tは前処理水11の水温、pHは前処理水11の水素イオン指数(pH)、ECは前処理水11の導電率、Abは前処理水11の吸光度、ATPは前処理水11のATPの濃度である。
なお、式(1)右辺の各項は、水質項目ごとにバイオファウリング生成との関係を求めて設定するとよい。
計算手段6において計算されたバイオファウリング生成能FFPの計算値FFPc(濃度値)は、制御手段7に送信される。
【0025】
ステップS102において、制御手段7は入力手段20からバイオファウリング生成能FFPの目標値FFPtが入力される。
ステップS103において、制御手段7は計算値FFPcが目標値FFPtより大きいか否かを判断する。
計算値FFPcが目標値FFPt以下の場合には(ステップS103でNo)、フローを終了し、制御手段7は前処理装置1の運転条件を現状のまま継続する。
一方、計算値FFPcが目標値FFPtより大きい場合には(ステップS103でYes)、ステップS104に進み、制御手段7は前処理装置1(UF膜処理装置)のろ過速度を低減させるように運転条件を決定する。または、前処理装置1(UF膜処理装置)の逆洗頻度を増加させるように運転条件を決定してもよい。また、前処理装置1(UF膜処理装置)に薬洗を実施させるように制御信号を送信してもよい。
【0026】
前処理装置1が「UF膜処理装置」以外の場合、制御手段7が決定する前処理装置1の運転条件は、例えば、消毒剤、凝集剤、スケール防止剤、pH調整剤の注入率が考えられる。いずれの場合も、あらかじめバイオファウリング生成能FFPとの相関関係を把握して、目標値FFPtを設定するとよい。
【0027】
<第1実施形態の変形例>
また、上述のバイオファウリング生成能FFPを用いて、逆浸透膜モジュール3の運転条件を決定してもよい。
図3は第1実施形態の変形例に係る海水淡水化装置の構成模式図であり、図4は第1実施形態の変形例に係る海水淡水化装置の運転フローである。
第1実施形態の変形例に係る海水淡水化装置では、制御手段7から信号を送る表示手段21が追加される。また、計測器52から5Nには前処理水11の流量を計測する流量計が含まれる。
【0028】
ステップS201において、制御手段7は入力手段20から後述する濃度積算値∫FFPcの閾値である積算目標値∫FFPtが入力される。
ステップS202において、計算手段6は、前処理水11のバイオファウリング生成能FFPの計算値FFPc(濃度値)と、前処理水11の流量の計測値から、逆浸透膜モジュール3に供給された計算値FFPcの総量である濃度積算値∫FFPcを算出する。濃度積算値∫FFPcの算出は、例えば、測定周期ごとの前処理水11の流量と、式(1)により算出された計算値FFPcと、を積算し、前回の洗浄から現在までの合計を求めることにより算出される。
計算手段6において算出された濃度積算値∫FFPcは、制御手段7に送信される。
ステップS203において、制御手段7は濃度積算値∫FFPcが積算目標値∫FFPtより大きいか否かを判断する。
濃度積算値∫FFPcが積算目標値∫FFPt以下の場合には(ステップS203でNo)、ステップS202に戻る。
一方、濃度積算値∫FFPcが積算目標値∫FFPtより大きい場合には(ステップS203でYes)、ステップS204に進み、制御手段7は表示手段21に逆浸透膜モジュール3の洗浄を促す警告を発信する。
【0029】
以下に、第1実施形態(第1実施形態の変形例)に係る海水淡水化装置の構成による作用を説明する。
図5は、第1実施形態に係る海水淡水化装置の効果の概念図である。
逆浸透膜モジュール3を用いた海水淡水化装置で、前処理にUF膜処理を実施する場合、UF膜処理装置を運転条件一定で運転すると、原海水中の有機物のうち分子量の大きい成分(図示省略)が除去されるが、原海水中の低分子成分のうち一部が通過する。
さらに、プランクトン類が剪断されてプランクトン体内の成分が流出し低分子成分が増加する現象が報告されている(非特許文献1参照)。
【0030】
このとき、本実施形態による制御(図2参照)で運転すると、前処理装置1(UF膜処理装置)のろ過流速を低減する。または、逆洗や薬洗によりUF膜のファウリングを除去し、UF膜の運転圧力を低減する。
この結果、プランクトンの剪断が抑制されるため、低分子成分の増加を低減できる。これにより、前処理水11中のバイオファウリング寄与率の高い低分子の有機物量が低減され、逆浸透膜モジュール3のバイオファウリング生成が抑制される。
【0031】
また、バイオファウリング寄与率の高い有機物の供給積算量に応じて適切な時期に警告を表示し逆浸透膜が洗浄されることにより、(図4参照)、過剰な洗浄用薬剤の使用を抑制できる。
また、バイオフィルムの長期間接触にともなう生物による逆浸透膜の資化を防ぐことが期待できる。
【0032】
このように、本実施形態の構成をとることで浸透膜モジュール3の逆浸透膜の汚染を低減し、適切な時期に逆浸透膜を洗浄することにより洗浄頻度を低減する、または、交換までの使用期間を伸張するような運転を実現できる。その結果、運転コストの低減や環境負荷の低減が可能となる。
【0033】
≪第2実施形態≫
図6は、第2実施形態に係る海水淡水化装置の構成模式図である。
第2実施形態に係る海水淡水化装置は、第1実施形態に係る海水淡水化装置(図1参照)における前処理装置1(UF膜処理装置)に変えて、海水10を前処理する前処理装置として、不溶化処理装置22とろ過装置23を備えている。
海水10は、不溶化処理装置22で粒子状成分やコロイド状成分が凝集され、および/または、溶解性無機物を析出させられ、続いてろ過装置23に流入し、凝集物・析出物を除去された後、前処理水11となる。
【0034】
以降は、第1実施形態に係る海水淡水化装置と同様である。
すなわち、前処理水11は、高圧ポンプ2で加圧され、逆浸透膜を有する逆浸透膜モジュール3に流入し、透過水12と濃縮水13に分離される。前処理水11の一部は、流路4を流下して計測器51から計測器5Nに流入する。計測器51から計測器5Nは、各水質項目について計測する計測器であり、前処理水11の水質を計測する。計測器51から計測器5Nで計測された各水質項目の計測値は計算手段6に送信される。計算手段6は、計測器51から計測器5Nで計測された各水質項目の計測値と、あらかじめ設定しておいた計算式に基づいて、バイオファウリング生成能を示す指標を算出する。制御手段7は、計算手段6で算出されたバイオファウリング生成能を示す指標に基づいて、前処理装置(不溶化処理装置22、ろ過装置23)の運転条件を決定し、処理装置1に制御信号を送信する。
【0035】
不溶化処理装置22として、凝集剤注入装置、アルカリ剤注入装置、二酸化炭素微細気泡注入装置などを用いることができる。
この場合、制御手段7が決定する不溶化処理装置22の運転条件は、それぞれ、凝集剤注入率、アルカリ剤注入率、および/または、目標pH値、二酸化炭素微細気泡注入率、を用いることができる。
【0036】
ろ過装置23は、金属膜またはセラミック膜による無機膜ろ過装置を用いるとよい。
また、ろ過装置23は、デッドエンドろ過またはクロスフローろ過で逆洗を併用する、もしくは、クロスフローろ過で一次側の膜面を連続的/間欠的にブラシ等により機械洗浄してもよい。
制御手段7が決定するろ過装置23の運転条件は、ろ過流速、逆洗頻度、機械洗浄頻度などを用いることができる。
【0037】
以下に、第2実施形態に係る海水淡水化装置の構成による作用を説明する。
図7は、第2実施形態に係る海水淡水化装置の効果の概念図である。
逆浸透膜モジュール3を用いた海水淡水化装置で、前処理にUF膜処理を実施する場合、UF膜処理装置を運転条件一定で運転すると、前述のとおり、原海水中の有機物のうち分子量の大きい成分(図示省略)が除去されるが、原海水中の低分子成分のうち一部が通過し、さらに、プランクトン類が剪断されてプランクトン体内の成分が流出し低分子成分が増加する。
【0038】
一方、第2実施形態に係る海水淡水化装置の不溶化処理と無機膜によるろ過では、ろ過圧力が低いためプランクトン類の剪断による低分子有機物の溶出は起こらない。また、バイオファウリング寄与率の高い粘着性を有する有機物は、不溶化処理において生成した粒子に付着して、ろ過排水として除去される効果も期待できる。
このように、前処理水中のバイオファウリング寄与率の高い低分子の有機物量が低減されることにより、逆浸透膜のバイオファウリング生成が抑制される。
また、不溶化処理としてアルカリ剤注入を実施する場合、共沈現象による海水中のほう素の除去も期待できる。また、不溶化処理として二酸化炭素微細気泡注入による炭酸塩の析出促進処理を実施する場合、高二酸化炭素濃度環境による細胞内液のpH低下にともなう生物の活性阻害効果によるバイオフィルム形成抑制効果も期待できる。
【0039】
このように、本実施形態(第2実施形態)の構成をとることで、浸透膜モジュール3の逆浸透膜の汚染を低減し、逆浸透膜の洗浄頻度を低減する、または、交換までの使用期間を伸張するような運転を実現できる。または、ほう素除去のための逆浸透膜の回収率抑制運転や逆浸透膜の2段運転を不要とする運転を実現できる。その結果、運転コストの低減や環境負荷の低減が可能となる。
【0040】
≪第3実施形態≫
図8は、第3実施形態に係る海水淡水化装置の構成模式図である。
第3実施形態に係る海水淡水化装置は、第1実施形態に係る海水淡水化装置(図1参照)おける前処理装置1の後段に二酸化炭素注入装置24が設けられており、前処理装置1および二酸化炭素注入装置24が海水10を前処理する前処理装置として機能する。
海水10は、前処理装置1で固形性・溶解性物質を除去され、または、水温,pHなどが調整され、前処理水11となる。さらに、前処理水11は二酸化炭素注入装置24へ流入し、二酸化炭素含有ガスを散気される。
【0041】
以降は、第1実施形態に係る海水淡水化装置と同様である。
すなわち、前処理水11は、高圧ポンプ2で加圧され、逆浸透膜を有する逆浸透膜モジュール3に流入し、透過水12と濃縮水13に分離される。前処理水11の一部は、流路4を流下して計測器51から計測器5Nに流入する。計測器51から計測器5Nは、各水質項目について計測する計測器であり、前処理水11の水質を計測する。計測器51から計測器5Nで計測された各水質項目の計測値は計算手段6に送信される。計算手段6は、計測器51から計測器5Nで計測された各水質項目の計測値と、あらかじめ設定しておいた計算式に基づいて、バイオファウリング生成能を示す指標を算出する。制御手段7は、計算手段6で算出されたバイオファウリング生成能を示す指標に基づいて、前処理装置(前処理装置1、二酸化炭素注入装置24)の運転条件を決定し、処理装置1に制御信号を送信する。
【0042】
二酸化炭素注入装置24は、二酸化炭素含有ガスを前処理水11に注入する。二酸化炭素含有ガスは、二酸化炭素ガスを含みO2や有害ガスを含まない排ガスなどを用いてもよい。
制御手段7が決定する二酸化炭素注入装置24の運転条件は、ガス注入率または気中二酸化炭素濃度を用いることができる。
【0043】
以下に、第3実施形態に係る海水淡水化装置の構成による作用を説明する。
環境水の二酸化炭素分圧が上昇すると、水生生物の体液と環境水間の二酸化炭素分圧勾配が逆転して環境水中から生物体内へ二酸化炭素の拡散が生じ、生物の細胞内pH低下にともない生物の代謝・活性に対する阻害効果が報告されている(石松惇、吉川貴志、林正裕、喜田潤「海水環境:高二酸化炭素の影響」日本海水学会誌 第57巻第4号、p285-288(2003) 参照)。
【0044】
第3実施形態に係る海水淡水化装置では、逆浸透膜モジュール3の逆浸透膜への供給水の二酸化炭素濃度を増加させる。これにより、残存していた微生物が逆浸透膜表面に付着しても、微生物の代謝物の生成が阻害され、バイオフィルムの成長を抑制する効果が期待できる。
また、薬剤による殺菌と異なり一時的な不活化であるため、微生物の体液の溶出にともなうバイオファウリングの要因である有機物の増加は回避することができる。
【0045】
<第3実施形態の変形例>
また、別の二酸化炭素注入方法として、高圧ポンプ2の後段に設置されるエアチャンバ25の補充気体として二酸化炭素を用いてもよい。
エアチャンバ25は、チャンバ内のガスの圧縮作用により、高圧ポンプ2の圧力・流量の急激な増減を緩衝する目的で使用され、圧縮時にガスが送液に溶け込むためガスの補充が必要である。このガスとして二酸化炭素を用いる場合、前処理で二酸化炭素を注入する場合(第3実施形態)と異なり高圧ポンプ2の供給水の溶存気体量が増加しないため、高圧ポンプ2でのキャビテーション発生を回避することができる。
【0046】
このように、本実施形態(第3実施形態、第3実施形態の変形例)の構成をとることで、浸透膜モジュール3の逆浸透膜の汚染を低減し、逆浸透膜の洗浄頻度を低減する、または、交換までの使用期間を伸張するような運転を実現できる。その結果、運転コストの低減や環境負荷の低減が可能となる。
【0047】
≪第4実施形態≫
図9は、第4実施形態に係る海水淡水化装置の構成模式図である。
第4実施形態に係る海水淡水化装置は、第1実施形態に係る海水淡水化装置(図1参照)おける前処理装置1の後段にイオン交換樹脂槽26が設けられており、前処理装置1およびイオン交換樹脂槽26が海水10を前処理する前処理装置として機能する。
海水10は、前処理装置1で固形性・溶解性物質を除去され、および/または、水温,pHなどが調整され、イオン交換樹脂槽26へ流入し、イオン交換樹脂槽26で酸性多糖類を吸着・除去され、前処理水11となる。
【0048】
以降は、第1実施形態に係る海水淡水化装置と同様である。
すなわち、前処理水11は、高圧ポンプ2で加圧され、逆浸透膜を有する逆浸透膜モジュール3に流入し、透過水12と濃縮水13に分離される。前処理水11の一部は、流路4を流下して計測器51から計測器5Nに流入する。計測器51から計測器5Nは、各水質項目について計測する計測器であり、前処理水11の水質を計測する。計測器51から計測器5Nで計測された各水質項目の計測値は計算手段6に送信される。計算手段6は、計測器51から計測器5Nで計測された各水質項目の計測値と、あらかじめ設定しておいた計算式に基づいて、バイオファウリング生成能を示す指標を算出する。制御手段7は、計算手段6で算出されたバイオファウリング生成能を示す指標に基づいて、前処理装置(前処理装置1、イオン交換樹脂槽26)の運転条件を決定し、処理装置1に制御信号を送信する。
【0049】
イオン交換樹脂槽26は複数槽を並列して設置し、順番にオフラインで洗浄するとよい。
制御手段7が決定するイオン交換樹脂槽26の運転条件は、イオン交換樹脂槽26の洗浄頻度、接触時間などを用いることができる。例えば、制御手段7は、上述のバイオファウリング寄与率の高い有機物の指標の計測値を計算手段6から取り込み、計測値が入力手段20から入力された目標値より高い場合、イオン交換樹脂槽26の洗浄を実施する。
【0050】
以下に、第4実施形態に係る海水淡水化装置の構成による作用を説明する。
ある種のイオン交換樹脂は、酸性多糖類を吸着することが知られている。また、非特許文献1によると、上述のバイオファウリング寄与率の高い有機物中に酸性多糖類が偏在する。
したがって、本実施形態(第4実施形態)の構成のように、逆浸透膜への供給水をイオン交換樹脂と接触させて酸性多糖類を除去すると、供給水中の生物の付着・増殖を促進する要因が低減されるため、バイオファウリングの生成抑制が期待できる。
【0051】
このように、本実施形態(第4実施形態)の構成をとることで、浸透膜モジュール3の
逆浸透膜の汚染を低減し、逆浸透膜の洗浄頻度を低減する、または交換までの使用期間を伸張するような運転を実現できる。その結果、運転コストの低減や環境負荷の低減が可能となる
【符号の説明】
【0052】
1 前処理装置
2 高圧ポンプ(ポンプ)
3 逆浸透膜モジュール(逆浸透膜)
4 流路
5 計測器(計測手段)
6 計算手段
7 制御手段
8 分離装置(分離手段)
9 流路
10 海水
11 前処理水(処理水)
12 透過水
13 濃縮水
20 入力手段
21 表示手段(表示する機能)
22 不溶化処理装置
23 ろ過装置
24 二酸化炭素注入装置
25 エアチャンバ
26 イオン交換樹脂槽
【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆浸透膜を用いた海水淡水化装置において、
前記逆浸透膜より前段に配置されて、前記逆浸透膜に供給される海水を前処理する前処理装置と、
前記前処理装置の処理水の水質項目を計測する計測手段と、
前記計測手段による計測値の濃度値とあらかじめ与えた目標値に基づいて、前記前処理装置を制御する制御手段と、を備え、
前記計測手段は、
有機物量を示す水質項目を計測し、
該有機物量を示す水質項目の計測手段の前段に、有機物を除去する分離手段を備える
ことを特徴とする海水淡水化装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記計測手段による計測値の濃度積算値と、あらかじめ与えた積算目標値と、に基づいて、前記逆浸透膜の洗浄時期を予測演算して表示する機能を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の海水淡水化装置。
【請求項3】
前記計測手段は、
有機物量を示す水質項目の計測に吸光度を用いる
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の海水淡水化装置。
【請求項4】
前記計測手段は、
海水中の生物の活性度を示す水質項目を計測する
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の海水淡水化装置。
【請求項5】
前記計測手段は、
前記海水中の生物の活性度を示す水質項目として、アデノシン三リン酸を計測する
ことを特徴とする請求項4に記載の海水淡水化装置。
【請求項6】
前記前処理装置は、
薬品の注入により海水中の溶解成分を析出させ、析出物をろ過することにより除去する機能を備える
ことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の海水淡水化装置。
【請求項7】
前記前処理装置は、
二酸化炭素を注入し、海水中の溶解成分の析出を促進する、または海水中の生物の活性度を阻害する機能を備える
ことを特徴とする請求項6に記載の海水淡水化装置。
【請求項8】
前記前処理装置は、
二酸化炭素を微細気泡として注入する機能を備える
ことを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の海水淡水化装置。
【請求項9】
前記逆浸透膜に前記処理水を送水するポンプと前記逆浸透膜との中間に配置されて、前記処理水の流量の脈動を低減するエアチャンバを備え、
前記エアチャンバの補給ガスとして二酸化炭素を注入し、前記処理水中の生物の活性度を阻害する機能を備える
ことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の海水淡水化装置。
【請求項10】
前記分離手段は、
有機物を除去するために、有機膜、無機膜、ゼオライト、活性炭、樹脂のうち1種類以上を用いる
ことを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の海水淡水化装置。
【請求項1】
逆浸透膜を用いた海水淡水化装置において、
前記逆浸透膜より前段に配置されて、前記逆浸透膜に供給される海水を前処理する前処理装置と、
前記前処理装置の処理水の水質項目を計測する計測手段と、
前記計測手段による計測値の濃度値とあらかじめ与えた目標値に基づいて、前記前処理装置を制御する制御手段と、を備え、
前記計測手段は、
有機物量を示す水質項目を計測し、
該有機物量を示す水質項目の計測手段の前段に、有機物を除去する分離手段を備える
ことを特徴とする海水淡水化装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記計測手段による計測値の濃度積算値と、あらかじめ与えた積算目標値と、に基づいて、前記逆浸透膜の洗浄時期を予測演算して表示する機能を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の海水淡水化装置。
【請求項3】
前記計測手段は、
有機物量を示す水質項目の計測に吸光度を用いる
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の海水淡水化装置。
【請求項4】
前記計測手段は、
海水中の生物の活性度を示す水質項目を計測する
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の海水淡水化装置。
【請求項5】
前記計測手段は、
前記海水中の生物の活性度を示す水質項目として、アデノシン三リン酸を計測する
ことを特徴とする請求項4に記載の海水淡水化装置。
【請求項6】
前記前処理装置は、
薬品の注入により海水中の溶解成分を析出させ、析出物をろ過することにより除去する機能を備える
ことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の海水淡水化装置。
【請求項7】
前記前処理装置は、
二酸化炭素を注入し、海水中の溶解成分の析出を促進する、または海水中の生物の活性度を阻害する機能を備える
ことを特徴とする請求項6に記載の海水淡水化装置。
【請求項8】
前記前処理装置は、
二酸化炭素を微細気泡として注入する機能を備える
ことを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の海水淡水化装置。
【請求項9】
前記逆浸透膜に前記処理水を送水するポンプと前記逆浸透膜との中間に配置されて、前記処理水の流量の脈動を低減するエアチャンバを備え、
前記エアチャンバの補給ガスとして二酸化炭素を注入し、前記処理水中の生物の活性度を阻害する機能を備える
ことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の海水淡水化装置。
【請求項10】
前記分離手段は、
有機物を除去するために、有機膜、無機膜、ゼオライト、活性炭、樹脂のうち1種類以上を用いる
ことを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の海水淡水化装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2011−177604(P2011−177604A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41519(P2010−41519)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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