説明

海水淡水化装置

【課題】減圧下で海水をスプレー噴射しない、新たな蒸発手法による海水淡水化装置及び淡水の製造方法を提供すること。
【解決手段】第1斜行ハニカム2と、該第1斜行ハニカムの下面側より該第1斜行ハニカム内に、被加湿空気30を供給するための被加湿空気供給手段26と、海水38を加熱するための海水加熱手段34と、該海水加熱手段に海水を供給するための第1海水供給管39と、該第1斜行ハニカムの上面側より該第1斜行ハニカム内に、該海水加熱手段で加熱された加熱海水を供給するための加熱海水供給手段31,32,35と、該第1斜行ハニカムの後段に設置され、該第1斜行ハニカムの上面から排出される高温加湿空気を冷却することにより、該加湿空気中の水蒸気を凝縮させるための冷却手段25と、該冷却手段で凝縮されて生じた淡水37を装置外へ取り出すための淡水取り出し手段36と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水をエネルギー効率良く淡水化するための海水の淡水化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、海水の淡水化方法には、蒸発法、イオン交換樹脂法、逆浸透膜法、電気透析法、冷凍法等、種々の方法が用いられていた。
【0003】
従来の蒸発法による海水淡水化装置としては、減圧空間内に海水をスプレー噴射して、水分を蒸発させた後、蒸発した水分を凝縮して、淡水を得るスプレーフラッシュ方式の海水淡水化装置が用いられていた。
【0004】
例えば、特許第2878296号公報(特許文献1)には、内部を減圧状態とし、海面付近の比較的高温の温海水を導入可能としたフラッシュ室に、温海水を噴霧可能とした多数のノズルを配設すると共に、同ノズルは磁性を有するセラミック素材で構成し、同ノズルより噴霧された温海水を蒸発可能とするとともに、深部の比較的低温の冷海水にて冷却された凝縮器を第1ドレンセパレータを介して前記フラッシュ室に連通連結し、フラッシュ室で発生した水蒸気を同凝縮器に水蒸気流入管を介して導入して凝結させ、淡水を生成可能とし、しかも、凝縮器の下手側には更に第2ドレンセパレータを凝結水流出管を介して連通し、更には、凝縮器は、冷海水を注入可能としたケーシング中に、伝熱板の2枚合わせで中空状にした伝熱体を多数並設し、各伝熱体の中空部を連通状態とし、伝熱体の中空部は水蒸気流入管と凝結水流出管とに連通せしめて構成したことを特徴とする海水淡水化装置が開示されている。
【0005】
また、特開平9−52082号公報(特許文献2)には、温海水をノズルを介して減圧した容器内に噴射することにより、その一部を蒸発させるスプレーフラッシュ式の蒸発器と、この蒸発器内で発生した蒸気を該蒸発器外に導く蒸気配管と、この蒸気配管を介して導入された蒸気を、間接熱交換により冷却することにより、凝縮させて淡水を得る淡水凝縮器と、を備えた海水淡水化装置において、前記温海水として、LNG火力発電所の蒸気タービンの復水器から排出される温海水を用いるとともに、前記淡水凝縮器の間接熱交換のための冷却水としてLNG火力発電所のLNG気化器から排出される冷海水を使用することを特徴とする海水淡水化装置が開示されている。
【0006】
また、特開2005−185988号公報(特許文献3)には、熱交換用媒体として取入れた海水に対し熱を放出し、温度の高くなった前記海水を排出する所定の放熱手段と併設される海水淡水化装置において、大気圧以下の所定圧力に減圧した容器内に、海水を略霧状に噴射して水分を一部蒸発させる一方、蒸発しなかった残りの海水を排出するスプレーフラッシュ式のフラッシュ蒸発器と、海水を冷却水として使用し、前記フラッシュ蒸発器で得られた水蒸気を冷却し凝縮させて塩分を含まない水を得る凝縮器とを少なくとも備え、前記放熱手段に対し、前記凝縮器で冷却水として使用した海水を前記熱交換用媒体として供給する一方、前記放熱手段から排出された海水を前記フラッシュ蒸発器に導入することを特徴とする海水淡水化装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2878296号公報(請求項1)
【特許文献2】特開平9−52082号公報(請求項1)
【特許文献3】特開2005−185988号公報(請求項1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上記特許文献1〜3のスプレーフラッシュ方式の海水淡水化装置では、減圧下に海水をスプレー噴射しているために、減圧を得るための動力が必要であり、また、耐圧容器も必要となる上、運転には、膨大なエネルギーが必要となり、更に、海水スケールでスプレーノズルが詰まってしまう等の種々の問題があった。
【0009】
従って、本発明の課題は、減圧下で海水をスプレー噴射しない、新たな蒸発手法による海水淡水化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記従来技術における課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、斜行ハニカム内で、高温の海水と被加湿空気とを向流接触させることにより、水蒸気の含有量が極めて高い高温の加湿空気が得られるので、そのような高温であり且つ水蒸気の含有量が高い加湿空気を冷却して凝縮すれば、高効率で海水の淡水化を行えることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、一方向に向かって伝播する波形形状を有する波形シートが複数積層されてハニカム形状を呈し、隣り合う波形シートの山部の稜線方向が斜めに交差し、且つ、一枚おきに波形シートの山部の稜線方向が略同一方向になるように、該波形シートが積層されており、上面及び下面の2面に通気空洞の開口を有する第1斜行ハニカムと、
該第1斜行ハニカムの下面側より該第1斜行ハニカム内に、被加湿空気を供給するための被加湿空気供給手段と、
海水を加熱するための海水加熱手段と、
該海水加熱手段に海水を供給するための第1海水供給管と、
該第1斜行ハニカムの上面側より該第1斜行ハニカム内に、該海水加熱手段で加熱された加熱海水を供給するための加熱海水供給手段と、
該第1斜行ハニカムの後段に設置され、該第1斜行ハニカムの上面から排出される高温加湿空気を冷却することにより、該高温加湿空気中の水蒸気を凝縮させるための冷却手段と、
該冷却手段で凝縮されて生じた淡水を装置外へ取り出すための淡水取り出し手段と、
を有することを特徴とする海水淡水化装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、減圧下で海水をスプレー噴射しない、新たな蒸発法による海水淡水化装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る斜行ハニカムを示す模式図である。
【図2】図1に示す斜行ハニカムを、波形シートの積層方向から見た図である。
【図3】本発明に係る斜行ハニカムを構成する波形シートを、通気空洞の形成方向に対して垂直な面で切ったときの斜視図である。
【図4】本発明の海水淡水化装置の一形態例の模式図である。
【図5】本発明の海水淡水化装置の他の形態例の模式図である。
【図6】実施例で用いた海水淡水化装置を示す図である。
【図7】L字ダクトの形態例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の淡水の製造方法は、一方向に向かって伝播する波形形状を有する波形シートが複数積層されてハニカム形状を呈し、隣り合う波形シートの山部の稜線方向が斜めに交差し、且つ、一枚おきに波形シートの山部の稜線方向が略同一方向になるように、該波形シートが積層されており、上面及び下面の2面に通気空洞の開口を有する第1斜行ハニカムの下面より該第1斜行ハニカム内に被加湿空気を供給し、該第1斜行ハニカムの上面から高温加湿空気を排出し、且つ、該第1斜行ハニカムの上面より該第1斜行ハニカム内に、被加湿空気より高い温度であり且つ海水が沸騰する温度未満の温度である加熱海水を供給し、該第1斜行ハニカムの下面から高塩分濃度海水を排出する加湿工程と、
該高温加湿空気を冷却することにより該高温加湿空気中の水蒸気を凝縮させて、淡水を得る凝縮工程と、
を有することを特徴とする淡水の製造方法である。
【0015】
本発明の淡水の製造方法及び本発明の海水淡水化装置について、図1〜図5を参照して説明する。
【0016】
本発明の淡水の製造方法及び本発明の海水淡水化装置は、海水中の水分を蒸発させることにより被加湿空気を加湿させて、高温加湿空気を得るための部材として、斜行ハニカムを用いる。以下、被加湿空気を加湿するために用いられる斜行ハニカムを、第1斜行ハニカムと記載する。第1斜行ハニカムの構造について、図1〜図3を参照して説明する。図1は、第1斜行ハニカムを示す模式図である。図2は、図1に示す第1斜行ハニカムを、波形シートの積層方向から見た図である。図3は、第1斜行ハニカムを構成する波形シートを、通気空洞の形成方向に対して垂直な面で切ったときの斜視図である。図1中、斜行ハニカム2は、波形形状に加工されている波形シート3を、図1中のA方向に積層して作成されており、四面、すなわち、上面6(図1中、上側の面)、下面7(図1中、下側の面)、左面5及び右面4に、通気空洞の開口8を有している。なお、図1中、A方向と、B方向と、C方向とは、それぞれ直交している。
【0017】
図3には、斜行ハニカム2の作成に用いられる波形シート3qを示す。波形シート3qは、一方向に向かって伝播する波形形状に加工されており、斜行ハニカム2中で、他の波形シート3p及び3rに挟み込まれることにより、波形シート3qの山部11が連続する方向に延びた、略半円柱状の通気空洞12が形成される。以下の説明において、山部11の頂点部分の延長線(尾根の部分)を、山部の稜線13と呼ぶ。通気空洞12は山部の稜線13と平行に形成される。図3では、波形シート3qを挟み込んでいる、波形シート3p及び3rを記載していないが、山部11aと11cを結ぶ線上に、波形シート3pの山部の稜線が位置することになるので、波形シート3q及び山部11aと11cを結ぶ線に囲まれる部分が、通気空洞12aである。同様に、山部11bと11dを結ぶ線上に、波形シート3rの山部の稜線が位置することになるので、波形シート3q及び山部11bと11dを結ぶ線に囲まれる部分が、通気空洞12bである。
【0018】
第1斜行ハニカムは、波形シートを積層方向(図1では、A方向)から見たときに、波形シートの山部の稜線の方向が、(i)挟まれている両側の波形シートの山部の稜線の方向とは異なる方向であり、すなわち、挟まれている両側の波形シートとは山部の稜線の方向が交差しており、且つ(ii)一枚おきに山部の稜線方向が同一方向となるように積層される。具体例を示すと、(i)波形シート3pの山部の稜線の方向が、波形シート3qの山部の稜線の方向とは異なる方向になるように、すなわち、A方向から見た時に、波形シート3pの山部の稜線と、波形シート3qの山部の稜線が交差するように、且つ(ii)波形シート3pの山部の稜線の方向と、波形シート3rの山部の稜線の方向が同一方向となるように、すなわち、A方向から見た時に、波形シート3pの山部の稜線と、波形シート3rの山部の稜線が平行になるように積層される。
【0019】
通常、第1斜行ハニカム2は、山部の稜線が交互に斜めに交差し且つ山部の稜線が一枚おきに略同一方向になるように積層された積層物を、4面に通気空洞の開口8が形成されるようにカットして製造される。そして、図1に示す第1斜行ハニカム2では、その断面が、右面4、左面5、上面6及び下面7となる。なお、斜行ハニカムは、開口を有する面を4面有しているが、本発明では、第1斜行ハニカムは、4面ある開口を有する面のうちの2面が、上面及び下面にあればよく、他の2面の開口を有する面が上面及び下面以外のどの面にあってもよい。通気空洞12の形成方向について、更に詳細に説明する。波形シート3aは、斜行ハニカム2の最も外側の波形シートであり、波形シート3bは、外側から2番目の波形シートである。図1及び図2に示すように、水平面に対する波形シート3aの山部の稜線13aの傾斜角度を斜行角度α1と呼び、この斜行角度α1は、通常30〜80度、好ましくは45〜70度であり、また、水平面に対する波形シート3bの山部の稜線13bの傾斜角度を斜行角度α2と呼び、この斜行角度α2は、通常30〜80度、好ましくは45〜70度である。波形シート3aの山部の稜線13aと波形シート3bの山部の稜線13bとが交差する角度のうち、上下方向に開いた方の角度を交差角度θ1と呼び、この交差角度θ1は、通常20〜120度、好ましくは40〜90度である。なお、α1+α2+θ1=180度である。
【0020】
波形シート3の山高さ(図3中、符号h)は、特に制限されないが、好ましくは3.0〜10.0mm、特に好ましくは5.0〜7.0mmである。山高さが上記範囲未満だと、製造困難に又は圧損が大きくなり易く、また、上記範囲を超えると、空気と海水の接触面積が小さくなり加湿効率が低くなり易い。また、波形シート3のピッチ(図3中、符号p)は、特に制限されないが、好ましくは6.0〜20.0mm、特に好ましくは10.0〜14.0mmである。
【0021】
すなわち、第1斜行ハニカムは、一方向に向かって伝播する波形形状を有する波形シートが複数積層されてハニカム形状を呈し、隣り合う波形シートの山部の稜線方向が斜めに交差し、且つ、一枚おきに波形シートの山部の稜線方向が略同一方向になるように、波形シートが積層されており、上面及び下面の2面に通気空洞の開口を有する。
【0022】
第1斜行ハニカムを構成する波形シートは、基材シートが波形に加工されたものである。このような基材シートとしては、耐熱性及び耐食性を有するものが適宜選択され、例えば、無機繊維からなる無機繊維基材シート、金属箔からなる金属基材シート、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンジフルオライドなどの有機繊維からなる有機繊維基材シート等が挙げられる。
【0023】
無機繊維基材シートとしては、表面に凹凸があり、内部が多孔質であることが、斜行ハニカムの表面積が大きく採れ、斜行ハニカムに浸透して流下する水と空気との接触面積が高まる点で好ましい。このような無機繊維基材シートとしては、例えば、3次元網目構造を有して所定の繊維間空隙率を有するものが挙げられ、具体的には、アルミナ、シリカ及びチタニアからなる群より選択される1又は2以上の充填材又は結合材とガラス繊維、セラミック繊維又はアルミナ繊維等の無機繊維基材とからなるものが挙げられる。また、無機繊維基材シートは、通常、充填材又は結合材を60〜93重量%、繊維を7〜40重量%を含み、好ましくは充填材又は結合材を70〜88重量%、繊維を12〜30重量%を含む。無機繊維基材シートの配合比率が上記範囲内にあると、無機繊維基材シートの水浸透性及び強度が高いため好ましい。なお、充填材及び結合材を含有する無機繊維基材シートは、公知の方法で作製され、例えば、ガラス繊維、セラミック繊維又はアルミナ繊維で作製された無機繊維基材シートを、アルミナゾル等の結合材とアルミナ水和物等の充填材を混合したスラリーに浸漬した後、乾燥し、コルゲート加工し、その後、乾燥処理と熱処理を行い、水分と有機分を除去することにより作製される。無機繊維基材シートが、アルミナ以外にシリカやチタニアを含有する場合、例えば、シリカ及びチタニアの配合量は、アルミナ100重量部に対してそれぞれ通常5〜40重量部である。
【0024】
また、上記結合材又は充填材を含有する無機繊維基材シートの繊維間空隙率は、通常50〜80%、好ましくは60〜75%である。無機繊維基材シートの繊維間空隙率を上記範囲内とすることにより、ほどよい浸透性を実現でき、空気と海水との接触効率を高めることができる。また、上記結合材又は充填材を含有する無機繊維基材シートの厚さ、すなわち、壁の厚さが通常200〜1000μm、好ましくは300〜800μmである。上記結合材又は充填材を含有する無機繊維基材シートが、上記空隙率と上記厚さを有すると、液ガス比及び水の浸透速度が適度な範囲となり、空気と海水との接触効率を高めると共に、強度的も十分となる。
【0025】
無機繊維基材シートを構成する繊維の平均繊維径は、特に制限されないが、好ましくは1〜20μm、特に好ましくは3〜10μmである。平均繊維径が上記範囲内にあることにより、斜行ハニカムの機械的強度が高くなる。
【0026】
金属基材シートの材質としては、例えば、ステンレス鋼(SUS);表面にアルミニウムを主成分とする金属酸化物膜が形成されているアルミニウム、例えば、国際公開第2006/134737に開示されているような、アルミニウムの表面にアルミニウムを主成分とする金属酸化物を形成することにより、表面が不動態処理されたアルミニウム;表面にアルミニウム酸化物を含有する酸化不動態膜が形成されているステンレス鋼、例えば、特開平10−8216号公報に開示されているような、アルミニウムを0.5〜7重量%含有するステンレス鋼の表面を不活性ガスとHOガス、Oガス、Oガス等の酸化性ガスとの混合ガス雰囲気中で熱処理することにより得られる、表面にアルミニウム酸化物を含有する酸化不動態膜が形成されているステンレス鋼;表面がフッ素コーティングされているステンレス鋼、アルミニウム等の金属材料などが挙げられる。金属基材シートの厚さは、好ましくは10〜200μmである。
【0027】
無機繊維基材シートや金属基材シート等の上記基材シートをコルゲート状の波形シートに成形する方法としては、径方向に振幅する波形の凹凸が表面に形成された複数の歯車間に平板状シートを通すような公知のコルゲーターを用いる方法が挙げられる。得られた波形シートから上記斜行ハニカムを成形する方法としては、例えば、まず、上記波形シートを所定の斜行角になるように裁断して矩形の波形シートを作製し、次いで、得られた矩形の波形シートを1枚おきの波の伝播方向が斜交するように配置し、これらを接着して又は接着することなく積層する方法が挙げられる。
【0028】
本発明の海水淡水化装置は、本発明の淡水の製造方法を実施するために用いられる海水淡水化装置である。図4は、本発明の海水淡水化装置の一形態例の模式図である。なお、説明の都合上、図4では、L字ダクトの部分を断面図で示している。
【0029】
図4中、海水淡水化装置20は、L字ダクト21内の垂直部22に設置され、被加湿空気30を加湿するための第1斜行ハニカム2と、L字ダクト21内の水平部23に、すなわち、第1斜行ハニカム2の後段に設置され、高温加湿空気33を冷却するための冷却手段25と、第1斜行ハニカム2に被加湿空気30を供給するための送風機26と、海水38を加熱するための加熱器34と、加熱海水49の散水部35と、散水部35へ加熱海水49を送液するためのポンプ31と、L字ダクト21の水平部23の冷却手段25の前段に、すなわち、第1斜行ハニカム2の後段且つ冷却手段25の前段に設置され、高温加湿空気33中に含まれる海水飛沫を捕捉するための第2斜行ハニカム24と、を有する。また、冷却手段25の下方には、冷却手段25で高温加湿空気33が冷却されることにより生じる淡水37の受器46が設置されており、第2斜行ハニカム24の下方には、第2斜行ハニカム24内を通過した第2斜行ハニカム洗浄用水43の受器45が設置されており、第2斜行ハニカム24の上方には、第2斜行ハニカム24の上面より淡水37を第2斜行ハニカム洗浄用水として供給するための、図示しない第2斜行ハニカム洗浄用水散水部が設置されている。
【0030】
また、海水淡水化装置20は、L字ダクト21の垂直部22の下方と送風機26とを繋ぐ被加湿空気供給管27と、加熱器34と散水部35とを繋ぎ、ポンプ31が付設される加熱海水供給管32と、加熱器34に繋がり、海水38を加熱器34に供給するための第1海水供給管39と、冷却手段25に繋がり、冷却手段25に海水38を供給するための第2海水供給管40と、冷却手段25と加熱器34とを繋ぐ冷却管通過海水送液管41と、湿分減少空気47を装置外へ排出するための湿分減少空気排出管48と、淡水の受器46に繋がり、淡水37を装置外へ排出するための淡水排出管36と、L字ダクト21の垂直部22の底部に繋がり、高塩分濃度海水28を装置外へ排出するための高塩分濃度海水排出管29と、淡水排出管36から分岐し、第2斜行ハニカムの洗浄用水散水部に繋がる第2斜行ハニカム洗浄用水供給管44と、洗浄水の受器45と加熱器34に繋がる第2斜行ハニカム洗浄用水送液管42と、を有する。なお、図4に示す海水淡水化装置20では、第2斜行ハニカム洗浄用水供給管44は、L字ダクト21の水平部23の背面を通って、淡水排出管36と第2斜行ハニカムの洗浄水散水部とに繋がっている。また、第2斜行ハニカム洗浄用水送液管42は、L字ダクト21の水平部23の背面を通って、洗浄水の受器45と加熱器34とに繋がっている。図4では、L字ダクト21の水平部23の背面を通る第2斜行ハニカム洗浄用水供給管44及び第2斜行ハニカム洗浄用水送液管42を、点線で示した。
【0031】
L字ダクト21は、断面形状が四角形の空気の流路であり、第1斜行ハニカム2が設置される部分が垂直方向に伸びており、冷却手段25及び第2斜行ハニカムが設置される部分が水平方向に伸びている。
【0032】
第1斜行ハニカム2は、L字ダクト21の垂直部22内で垂直方向に供給される被加湿空気30及び加熱海水49の供給方向に対して、上面6及び下面7が垂直になるように、つまり、L字ダクト21内の垂直部22に、上面6が上に向き下面7が下に向くように設置されている。また、第1斜行ハニカムの上面6及び下面7以外の4面は、L字ダクト21の垂直部22の壁面に囲まれている。なお、図1中のB方向が、加熱海水49が供給される方向である。
【0033】
第1斜行ハニカム2の高さ(図4中の第1斜行ハニカム2の上下方向の長さ)は、特に制限されないが、好ましくは0.2〜3.0m、特に好ましくは0.5〜1.5mである。第1斜行ハニカム2の高さが、上記範囲未満だと、被加湿空気と加熱海水との接触が不十分となり易く、また、上記範囲を超えると、圧力損失が大きくなり易い。
【0034】
第1斜行ハニカム2の上面6及び下面7の面積は、被加湿空気の第1斜行ハニカム内を通過する通過速度が、0.1〜4.0m/S、好ましくは0.3〜2.0m/Sとなるように、適宜選択される。
【0035】
送風機26は、第1斜行ハニカム2の下面7より第1斜行ハニカム2内に、被加湿空気30を供給するための手段である。図4に示す形態例では、送風機26が被加湿空気供給手段であるが、本発明において、被加湿空気供給手段は、これに制限されず、第1斜行ハニカム2の下面7より第1斜行ハニカム2内に、被加湿空気30を供給することができるものであればよい。
【0036】
また、図5に示す他の形態例のように、湿分減少空気排出管48を、被加湿空気供給管27に繋ぐこと、すなわち、湿分減少空気47の出口を被加湿空気30の入口に繋ぐことにより、海水淡水化装置20bから排出される湿分減少空気47を、被加湿空気30として、海水淡水化装置20bに供給することもでき、この形態例では、送風機26が、湿分減少空気47を吸い込み、被加湿空気30として、海水淡水化装置20b内へ送風することができる。周辺空気の温度より、湿分減少空気47の温度が低い場合には、この形態例のように、海水淡水化装置20bから排出される湿分減少空気47を、被加湿空気30として、海水淡水化装置20bに供給することにより、熱利用効率が高くなるため、ランニングコストが低くなる。
【0037】
加熱器34は、海水38を加熱するための海水加熱手段である。加熱器34としては、特に制限されず、例えば、太陽熱を利用する加熱器、燃焼熱を利用する加熱器、排熱を利用する加熱器、水蒸気を利用する加熱器、電気ヒーター等が挙げられ、太陽熱を利用する加熱器、排熱を利用する加熱器が、ランニングコストが低くなる点で好ましい。
【0038】
ポンプ31、加熱海水供給管32及び散水部35は、加熱器34で加熱された加熱海水49を、第1斜行ハニカム2の上面6より第1斜行ハニカム2内に供給するための手段である。図4に示す形態例では、ポンプ31、加熱海水供給管32及び散水部35が加熱海水供給手段であるが、本発明において、加熱海水供給手段は、これに制限されず、第1斜行ハニカム2の上面6より第1斜行ハニカム2内に、加熱海水49を供給することができるものであればよい。
【0039】
第1斜行ハニカム2内では、被加湿空気30と加熱海水49とが向流接触する。この向流接触により、被加湿空気30は、加熱海水49との熱交換によって高温の空気になるとともに加熱海水中の水分が蒸発気化して水蒸気として移動するので、被加湿空気30は加熱加湿され、第1斜行ハニカム2の上面6からは、高温加湿空気33が排出される。第1斜行ハニカム2を通過した後の高温加湿空気33は、温度が高くなるため、水蒸気を極めて多く含有することができる。つまり、高温加湿空気33は、高温であり且つ水蒸気の含有量が極めて高い。
【0040】
一方、第1斜行ハニカム2内で、加熱海水49中の水分が蒸発するので、水含有量が減少するため、高塩分濃度海水28が、第1斜行ハニカム2の下面7から排出される。また、加熱海水49は、被加湿空気30と熱交換し、水分の蒸発気化により気化熱を奪われるので、高塩分濃度海水28の温度は低くなる。そして、第1斜行ハニカム2の下面7から排出された高塩分濃度海水28は、L字ダクト21の垂直部22の底部に貯まる。ダクト21の垂直部22の底部に貯まった高塩分濃度海水28は、高塩分濃度海水排出管29から、装置外へと排出される。
【0041】
このようにして、本発明の淡水の製造方法に係る加湿工程では、第1斜行ハニカムの下面より第1斜行ハニカム内に、被加湿空気を供給し、第1斜行ハニカムの上面から高温加湿空気を排出し、且つ、第1斜行ハニカムの上面より加熱海水を供給し、第1斜行ハニカムの下面から高塩分濃度海水を排出することにより、被加湿空気と加熱海水とを、第1斜行ハニカム内で向流接触さて、高温且つ高水蒸気含有量の加湿空気を得る。
【0042】
加湿工程において、第1斜行ハニカムに供給される加熱海水の温度は、被加湿空気より高い温度であり且つ海水が沸騰する温度未満の温度であり、好ましくは40〜99℃、特に好ましくは70〜97℃、更に好ましくは85〜95℃、より好ましくは90〜95℃である。第1斜行ハニカムに供給される加熱海水の温度が、上記範囲にあることにより、効率的な海水淡水化が可能となる。一方、第1斜行ハニカムに供給される加熱海水の温度が、上記範囲を超えると、海水の加熱効率が悪くなり、また、上記範囲より低いと、高温加湿空気中の水蒸気含有量が少なくなり淡水化効率が低くなる。
【0043】
加湿工程において、第1斜行ハニカムへの被加湿空気の供給量G(kg/時間)に対する第1斜行ハニカムへの加熱海水の供給量L(kg/時間)(L/G)は、好ましくは1〜10、特に好ましくは3〜7である。第1斜行ハニカムへの被加湿空気の供給量G(kg/時間)に対する第1斜行ハニカムへの加熱海水の供給量L(kg/時間)(L/G)が、上記範囲にあることにより、効率的な海水淡水化が可能となる。
【0044】
加湿工程において、第1斜行ハニカムに供給される被加湿空気の温度は、特に制限されないが、好ましくは10〜40℃、特に好ましくは25〜35℃である。第1斜行ハニカムに供給される被加湿空気の温度が上記範囲にあることにより、効率的な海水淡水化が可能となる。
【0045】
加湿工程を行うことにより、第1斜行ハニカムから排出される高温加湿空気の温度は、好ましくは39〜99℃、特に好ましくは69〜94℃である。そして、第1斜行ハニカムから排出される高温加湿空気の温度が、上記のように高いので、高温加湿空気中の水蒸気の含有量が、0.04〜18kg/kg(乾燥空気)、好ましくは0.2〜2.6kg/kg(乾燥空気)と、極めて高くなる。
【0046】
第1斜行ハニカム2の上面6から排出される高温加湿空気33は、第2斜行ハニカム内を通過した後、冷却手段25に送られる。
【0047】
冷却手段25は、加湿空気33を冷却することにより高温加湿空気33中の水蒸気を凝縮させて、淡水37を生じさせる手段である。冷却手段25としては、高温加湿空気33を冷却することができるものであれば、特に制限されず、例えば、管内に冷却用水を流し、高温加湿空気33と管内の冷却用水との間で熱交換を行うことにより、高温加湿空気33を冷却する冷却管からなる冷却手段等が挙げられる。
【0048】
冷却手段25として、冷却管からなる冷却手段25を用いる場合、冷却管としては、管内に冷却水が流れる管状のものであればよく、特に制限されず、例えば、熱交換効率を高めるための多数のフィンを有する冷却管や、耐食性を高めるためにポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂でコーティングされた冷却管や、耐食性を高めるために材質としてキュプロニッケル合金、チタン合金が用いられている冷却管が挙げられる。また、冷却管の形状としては、熱交換効率を高めるためにコイル状に成形されたものが挙げられる。また、冷却手段25として、多段の冷却手段を用いることができ、多段の冷却手段に、冷却用水を通液させる場合、冷却用水の通液方法としては、多段の冷却手段に、直列に冷却用水を通液してもよいし、並列に冷却用水を通液してもよい。
【0049】
冷却管内に流す冷却用水としては、特に制限されず、海水、河川水、工業用水、下水、水素添加水のような機能水、防錆剤を添加した薬液添加水、アンモニア、二酸化炭素、フロン、代替フロン等の冷媒などが挙げられる。冷却管内に流す冷却用水としては、淡水化される海水が、熱効率及びコスト面から好ましい。
【0050】
そして、高温加湿空気33が冷却手段25で冷却されることにより、高温加湿空気33中の水蒸気が凝縮して、淡水37が生じる。生じた淡水37は、冷却手段25の下方に設置されている淡水の受器46に一旦貯められた後、淡水排出管36から、装置外へと排出される。
【0051】
このようにして、本発明の淡水の製造方法に係る冷却工程では、第1斜行ハニカムから排出される高温加湿空気を冷却することにより、加湿空気中の水蒸気を凝縮させて、淡水を得る。
【0052】
冷却工程において、加湿空気を冷却する際の冷却温度は、適宜選択されるが、例えば、冷却手段として冷却管を用いる場合は、冷却管に供給される冷却用水の温度は、好ましくは15〜40℃、特に好ましくは25〜35℃である。
【0053】
また、高温加湿空気33は、冷却手段25で冷却されることにより、高温加湿空気33中の水蒸気含有量が減少するので、水蒸気含有量が減少した湿分減少空気47となる。湿分減少空気47は、湿分減少空気排出管48から、装置外へと排出される。
【0054】
図4に示す形態例は、冷却手段25として、上記の冷却管からなる冷却手段を有し、冷却手段25に海水38を供給するための第2海水供給管40と、冷却手段25である冷却管を通過した海水を、加熱器34に送液するための冷却管通過海水送液管41と、を有する形態例である。図4に示す形態例では、海水38が、冷却管内を流れるときに、高温加湿空気33から熱を受け取るので、海水38は、冷却管内を通過することにより、加熱される。そして、加熱された冷却管通過海水(冷却手段25を通過した後の海水)が、冷却管通過海水送液管41を経て、加熱器34へ送液される。そのため、図4に示す形態例では、高温加湿空気33の熱を用いて、海水38を予め加熱することができるので、熱効率が高くなる。なお、図4に示す形態例では、冷却管通過海水送液管41は、直接、加熱器34に繋がっているが、第1海水供給管39又は第2斜行ハニカム洗浄用水送液管42に繋がっていてもよい。冷却管通過海水送液管41が、第1海水供給管39又は第2斜行ハニカム洗浄用水送液管42に繋がっている場合は、第1海水供給管39又は第2斜行ハニカム洗浄用水送液管42を経由して、冷却管通過海水が、加熱器34に送液される。
【0055】
このように、本発明の淡水の製造方法では、海水と高温加湿空気との熱交換により冷却工程を行い、且つ、冷却工程で熱交換を行った後の海水を加熱して加熱海水を得ることが、熱効率が高くなる点で好ましい。
【0056】
本発明の淡水の製造方法では、第1斜行ハニカムの後段側より加熱海水を供給するため、加熱海水の飛沫が、高温加湿空気に伴われて、冷却手段へと移動してしまうことがある。そのため、本発明の淡水の製造方法では、第1斜行ハニカムの後段且つ冷却手段の前段に、海水飛沫捕捉手段を設け、加熱海水の飛沫を捕捉することが好ましい。図4に示す形態例は、L字ダクト21の水平部23の冷却手段25の前段に、第2斜行ハニカム24を有する形態例である。第2斜行ハニカム24の波形シートの積層構造は、第1斜行ハニカム2の波形シートの積層構造と同様である。ただし、第2斜行ハニカム24では、上面、下面、高温加湿空気33の供給面50及び排出面51が、斜行ハニカムの通気空洞の開口8が形成される4面であり、上面が上を向き、下面が下を向き、高温加湿空気33の供給面50が高温加湿空気33の供給側を向き、高温加湿空気33の排出面51が高温加湿空気の排出側を向くように、設置される。そのため、第2斜行ハニカム24の上面及び下面は、第2斜行ハニカム洗浄用水が斜行ハニカムに供給される方向に対して垂直になり、且つ、第2斜行ハニカム24の高温加湿空気33の供給面50及び排出面51は、高温加湿空気33の通過方向に対して垂直になる。つまり、図1中のB方向が、第2斜行ハニカム洗浄用水の供給方向である。また、高温加湿空気33の供給方向は、図1中のB方向及びA方向のいずれとも直交する。よって、第2斜行ハニカム24への高温加湿空気33の供給方向と第2斜行ハニカム洗浄用水の供給方向とは、直交する。
【0057】
第2斜行ハニカム24まで、高温加湿空気33に伴われてきた海水飛沫は、液体なので、第2斜行ハニカム24内で、第2斜行ハニカムの波形シートに付着し、捕捉される。一方、高温加湿空気33中の水蒸気は、気体なので、第2斜行ハニカムの通気空洞を通過して、冷却手段25へと移動する。そのため、第2斜行ハニカムが、海水飛沫が、高温加湿空気33に伴われて冷却手段25へ移動することを防止するので、第2斜行ハニカムが、淡水37中に海水が混入するのを防ぐことができる。
【0058】
そして、冷却手段25で冷却されて生じた淡水37の一部を、第2斜行ハニカム洗浄用水として、第2斜行ハニカム24の上面より第2斜行ハニカム24内に供給することにより、第2斜行ハニカム洗浄用水が第2斜行ハニカム24内に捕捉された飛沫海水を洗い流すので、第2斜行ハニカム24内から飛沫海水が再飛散することを防止することができる。このとき、第2斜行ハニカム洗浄用水の温度が低いと、第2斜行ハニカム24の温度が低くなるので、第2斜行ハニカム24内で、高温加湿空気33中の水蒸気の凝縮が起こってしまう。そのため、第2斜行ハニカム洗浄用水供給管44に、加熱器441を付設することにより、第2斜行ハニカム24に供給される第2斜行ハニカム洗浄用水(淡水37)の温度を高めてから、第2斜行ハニカム24に第2斜行ハニカム洗浄用水を供給することができ、第2斜行ハニカム24内での高温加湿空気33中の水蒸気の凝縮を防止又は少なくすることができる。第2斜行ハニカム24に供給する第2斜行ハニカム洗浄用水の温度は、好ましくは39〜98℃、特に好ましくは69〜96℃である。また、第2斜行ハニカム24への第2斜行ハニカム洗浄用水の供給を、連続的に行ってもよいし、間欠的に行ってもよい。
【0059】
第2斜行ハニカム24の洗浄に用いられた第2斜行ハニカム洗浄用水43は、第2斜行ハニカム24の下方に設置されている洗浄水の受器45に一旦貯められ、洗浄水送液管42を経て、加熱器34に送液される。なお、図4に示す形態例では、洗浄水送液管42は、直接、加熱器34に繋がっているが、第1海水供給管39又は冷却管通過海水送液管41に繋がっていてもよい。第2斜行ハニカム洗浄用水送液管42が、第1海水供給管39又は冷却管通過海水送液管41に繋がっている場合は、第1海水供給管39又は冷却管通過海水送液管41を経由して、洗浄水が、加熱器34に送液される。
【0060】
第2斜行ハニカム24を構成する波形シートとしては、前記の無機繊維からなる無機繊維基材シートをコルゲート加工したものが好ましく、3次元網目構造を有して前記所定の繊維間空隙率を有する無機繊維基材シートをコルゲート加工したものが特に好ましい。
【0061】
第2斜行ハニカム24の幅(図4中の第2斜行ハニカム24の左右方向の長さ)は、特に制限されないが、好ましくは0.1〜0.3m、特に好ましくは0.15〜0.25mである。
【0062】
第2斜行ハニカムでは、図1及び図2に示すように、斜行角度β1は、通常30〜80度、好ましくは45〜70度であり、また、斜行角度β2は、通常30〜80度、好ましくは45〜70度である。交差角度θ2は、通常20〜120度、好ましくは40〜90度である。なお、β1+β2+θ2=180度である。
【0063】
第2斜行ハニカム24の高温加湿空気33の供給面50及び排出面51の面積は、特に制限されないが、高温加湿空気の第2斜行ハニカム内の通過速度が、1.0〜3.5m/S、好ましくは2.0〜3.0m/sとなるように、適宜選択される。
【0064】
このように、本発明の淡水の製造方法では、第1斜行ハニカムから排出される高温加湿空気を、冷却工程でする前に、海水飛沫捕捉手段である第2斜行ハニカムを通過させることが、好ましい。
【0065】
図4に示す形態例では、L字ダクト21の垂直部22から水平部23に曲がる部分の外側の壁が、直角に曲がっているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、図7(A)に示す形態例のように、垂直部22から水平部23に曲がる部分の外側の壁が、傾斜していてもよいし、また、図7(B)に示す形態例のように、垂直部22から水平部23に曲がる部分の外側の壁が、弧状になっていてもよい。
【0066】
本発明の海水淡水化装置は、一方向に向かって伝播する波形形状を有する波形シートが複数積層されてハニカム形状を呈し、隣り合う波形シートの山部の稜線方向が斜めに交差し、且つ、一枚おきに波形シートの山部の稜線方向が略同一方向になるように、該波形シートが積層されており、上面及び下面の2面に通気空洞の開口を有する第1斜行ハニカムと、
該第1斜行ハニカムの下面側より該第1斜行ハニカム内に、被加湿空気を供給するための被加湿空気供給手段と、
海水を加熱するための海水加熱手段と、
該海水加熱手段に海水を供給するための第1海水供給管と、
該第1斜行ハニカムの上面側より該第1斜行ハニカム内に、該海水加熱手段で加熱された加熱海水を供給するための加熱海水供給手段と、
該第1斜行ハニカムの後段に設置され、該第1斜行ハニカムの上面から排出される高温加湿空気を冷却することにより高温加湿空気中の水蒸気を凝縮させるための冷却手段と、
該冷却手段で凝縮されて生じた淡水を装置外へ取り出すための淡水取り出し手段と、
を有することを特徴とする海水淡水化装置である。
【0067】
そして、本発明の海水淡水化装置は、第1斜行ハニカムの後段且つ冷却手段の前段に設置され、一方向に向かって伝播する波形形状を有する波形シートが複数積層されてハニカム形状を呈し、隣り合う波形シートの山部の稜線方向が斜めに交差し、且つ、一枚おきに波形シートの山部の稜線方向が略同一方向になるように、該波形シートが積層されており、高温加湿空気の供給側の面、高温加湿空気の排出側の面、上面及び下面の4面に通気空洞の開口を有し、高温加湿空気の供給側の面より前記高温加湿空気が通気される第2斜行ハニカムと、第2斜行ハニカムの上面より第2斜行ハニカム洗浄用水を供給するための第2斜行ハニカム洗浄用水供給部と、からなり、高温加湿空気中に存在する海水飛沫を捕捉するための海水飛沫捕捉手段を有することが好ましい。更に、本発明の海水淡水化装置が、第2斜行ハニカム洗浄用水を加熱するための第2斜行ハニカム洗浄水加熱部を有することが、第2斜行ハニカムを高温加湿空気が通過するときに、第2斜行ハニカム内での加湿空気中の水蒸気の凝縮を防ぐ又は少なくすることができる点で、特に好ましい。
【0068】
また、本発明の海水淡水化装置では、冷却手段が、管内に冷却用水を流すことにより、高温加湿空気を冷却する冷却管で構成されていることが、好ましい。
【0069】
また、本発明の海水淡水化装置は、冷却手段が、管内に冷却用水を流すことにより、高温加湿空気を冷却する冷却管で構成されており、且つ、冷却管に海水を供給するための第2海水供給管と、海水加熱手段に、冷却管を通過した海水を送液するための冷却管通過海水送液管と、を有することが、好ましい。また、本発明の海水淡水化装置が、冷却手段が、管内に冷却用水を流すことにより、高温加湿空気を冷却する冷却管で構成されており、且つ、冷却管に海水を供給するための第2海水供給管と、海水加熱手段に、冷却管を通過した海水を送液するための冷却管通過海水送液管と、を有する形態の場合、第1海水供給管を設けず、海水加熱手段への海水の供給を、全て、第2海水供給管及び冷却管を経て、冷却管通過海水送液管から行う形態例とすることもできる。
【0070】
本発明の海水淡水化装置及び本発明の淡水の製造方法では、第1斜行ハニカムで、高温の海水と被加湿空気を向流接触させる場合には、高温の加湿空気が得られる。この高温の加湿空気は温度が高いので、水蒸気の含有量が極めて多くなる。そして、本発明の海水淡水化装置及び本発明の淡水の製造方法では、高温であり且つ水蒸気の含有量が極めて高い加湿空気を、冷却するので、淡水の製造効率が高く、また、熱効率が高いので製造コストを低くすることができる。
【0071】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【実施例】
【0072】
<空気加湿装置>
図6に示す構成で、第1斜行ハニカム2として下記斜行ハニカムAが、第2斜行ハニカム24として下記斜行ハニカムBが、冷却手段25として下記冷却コイルCが、設置されている海水淡水化装置60を作製した。
【0073】
<斜行ハニカムA>
・Eガラス繊維と有機バインダーで形成したガラス不織布を、結合材としてアルミナゾル、充填材としてアルミナ水和物を含むスラリーに浸漬及び乾燥後、コルゲート加工して、無機繊維基材シートを得た。下記の交差角となるように波の伝播方向が交差するように重ね合わせた後、500℃で熱処理し、次いで、下記の寸法に切り出して、Eガラス含有量20重量%、アルミナとアルミナの硬化物との合計含有量が80重量%、繊維間空隙率65%の無機繊維基材シートの波形シートからなる斜行ハニカムを得た。
・セルピッチ10mm、セル山高さ5.0mm
・斜行角度α1:60度、斜行角度α2:60度、交差角度θ1:60度
次にこの斜行ハニカムを保持可能な大きさで、且つ、上面及び下面のみが通気可能なケースに組み込んで斜行ハニカムAとした。
斜行ハニカムA:
高さ:1.0m
上面(下面)の面積 :35m(5m×7m)
伝熱(気液接触)面積:290m/m
【0074】
<斜行ハニカムB>
・斜行ハニカムAと同様にして、波形シートを、下記の交差角となるように波の伝播方向が交差するように重ね合わせた後、500℃で熱処理し、次いで、下記の寸法に切り出して、Eガラス含有量20重量%、アルミナとアルミナの硬化物との合計含有量が80重量%、繊維間空隙率65%の無機繊維基材シートの波形シートからなる斜行ハニカムを得た。
・セルピッチ10mm、セル山高さ5.0mm
・斜行角度β1:60度、斜行角度β2:60度、交差角度θ2:60度
次にこの斜行ハニカムを保持可能な大きさで、左面、右面、上面及び下面の4面が通気可能なケースに組み込んで斜行ハニカムBとした。
斜行ハニカムB:
左右面間の長さ(厚み):0.2m
左面(右面)の面積(通風面積):26.6m(3.8m×7 m)
気液接触面積:290m/m
【0075】
<冷却コイルC>
・材質:銅管
・冷却管内径:14.6mm、冷却管外径:15.5mm
・冷却コイルの構造:総延長が21480m冷却管を、冷却コイルに加工し、設置した。
【0076】
(実施例1)
以下に示す運転条件で、海水淡水化装置60の運転を行った。その結果を以下に示す。
【0077】
<運転条件>
・被加湿空気30:30℃、湿度80RH%、絶対湿度0.0216kg/kg(乾燥空気)
・被加湿空気(30℃、湿度80RH%)の供給量:70000m/時間、乾燥空気換算82218kg(乾燥空気)/時間
・加熱海水49:温度85℃、塩分濃度3.4%、供給量493800kg/時間
・第1斜行ハニカム2のL/G:6.3
・冷却用海水38b:30℃、供給量432000kg/時間
・第2斜行ハニカム洗浄用水52:80℃、供給量780kg/時間(連続)
・第2斜行ハニカム24のL/G:0.01
【0078】
<結果>
・第1斜行ハニカム2から排出される高温加湿空気33:80℃、湿度100RH%、絶対湿度0.553kg/kg(乾燥空気)
・加湿量:0.5314kg/kg(乾燥空気)(0.553−0.0216)
・単位時間当たりの加湿量:43690kg/時間(0.5314×82218)
・第1斜行ハニカム2での熱交換量:113.8×10kJ/時間
・高塩分濃度海水28:30℃、塩分濃度3.7%
・冷却手段25で得られた淡水37:塩分濃度0.1%以下
・冷却管通過海水53:73℃
【0079】
(実施例2)
以下に示す運転条件で、海水淡水化装置60の運転を行った。その結果を以下に示す。
【0080】
<運転条件>
・被加湿空気30:30℃、湿度80RH%、絶対湿度0.0216kg/kg(乾燥空気)
・被加湿空気(30℃、湿度80RH%)の供給量:70000m/時間、乾燥空気換算82218kg(乾燥空気)/時間
・加熱海水49:温度75℃、塩分濃度3.4%、供給量298800kg/時間
・第1斜行ハニカム2のL/G:3.8
・冷却用海水38b:30℃、供給量432000kg/時間
・第2斜行ハニカム洗浄用水52:70℃、供給量780kg/時間(連続)
・第2斜行ハニカム24のL/G:0.01
【0081】
<結果>
・第1斜行ハニカム2から排出される高温加湿空気33:70℃、湿度100RH%、絶対湿度0.279kg/kg(乾燥空気)
・加湿量:0.2574kg/kg(乾燥空気)(0.279−0.0216)
・単位時間当たりの加湿量:21163kg/時間(0.2574×82218)
・第1斜行ハニカム2での熱交換量:56.3×10kJ/時間
・高塩分濃度海水28:30℃、塩分濃度3.6%
・冷却手段25で得られた淡水37:塩分濃度0.1%以下
・冷却管通過海水53:58℃
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明によれば、熱効率良く海水の淡水化を行うことができるので、安価に、淡水が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に向かって伝播する波形形状を有する波形シートが複数積層されてハニカム形状を呈し、隣り合う波形シートの山部の稜線方向が斜めに交差し、且つ、一枚おきに波形シートの山部の稜線方向が略同一方向になるように、該波形シートが積層されており、上面及び下面の2面に通気空洞の開口を有する第1斜行ハニカムと、
該第1斜行ハニカムの下面側より該第1斜行ハニカム内に、被加湿空気を供給するための被加湿空気供給手段と、
海水を加熱するための海水加熱手段と、
該海水加熱手段に海水を供給するための第1海水供給管と、
該第1斜行ハニカムの上面側より該第1斜行ハニカム内に、該海水加熱手段で加熱された加熱海水を供給するための加熱海水供給手段と、
該第1斜行ハニカムの後段に設置され、該第1斜行ハニカムの上面から排出される高温加湿空気を冷却することにより、該高温加湿空気中の水蒸気を凝縮させるための冷却手段と、
該冷却手段で凝縮されて生じた淡水を装置外へ取り出すための淡水取り出し手段と、
を有することを特徴とする海水淡水化装置。
【請求項2】
前記第1斜行ハニカムの後段且つ前記冷却手段の前段に設置され、一方向に向かって伝播する波形形状を有する波形シートが複数積層されてハニカム形状を呈し、隣り合う波形シートの山部の稜線方向が斜めに交差し、且つ、一枚おきに波形シートの山部の稜線方向が略同一方向になるように、該波形シートが積層されており、高温加湿空気の供給側の面、高温加湿空気の排出側の面、上面及び下面の4面に通気空洞の開口を有し、高温加湿空気の供給側の面より前記高温加湿空気が通気される第2斜行ハニカムと、該第2斜行ハニカムの上面より第2斜行ハニカム洗浄用水を供給するための第2斜行ハニカム洗浄用水供給部と、該第2斜行ハニカム洗浄用水を加熱するための第2斜行ハニカム洗浄用水加熱部と、からなり、前記高温加湿空気中に存在する海水飛沫を捕捉するための海水飛沫捕捉手段を有することを特徴とする請求項1記載の海水淡水化装置。
【請求項3】
前記冷却手段が、管内に冷却用水を流すことにより前記高温加湿空気を冷却する冷却管で構成されていることを特徴とする請求項1又は2いずれか1項記載の海水淡水化装置。
【請求項4】
前記冷却管に前記冷却用水として海水を供給するための第2海水供給管と、前記海水加熱手段に、前記冷却管を通過した海水を送液するための冷却管通過海水送液管と、を有することを特徴とする請求項3記載の海水淡水化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−217963(P2012−217963A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88396(P2011−88396)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(000004400)オルガノ株式会社 (606)
【出願人】(390003333)新晃工業株式会社 (46)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【Fターム(参考)】