説明

海水淡水化装置

【課題】加圧された海水からの回収エネルギを水圧ポンプに伝達する際の伝達効率を向上する。
【解決手段】本発明は、海水から塩分を除去して淡水を取り出す海水淡水化装置100であって、海水を吸い込んで吐出する水圧ポンプ1と、水圧ポンプ1から吐出された海水の一部が通過する際に塩分を除去して淡水化する逆浸透膜5と、両端が突出する駆動軸11を有し、駆動軸11の一端11aに水圧ポンプ1の回転軸1aが連結されて水圧ポンプ1を回転駆動する両軸型の駆動モータ10と、逆浸透膜5を通過しないで還流される海水によって回転駆動され、駆動軸11の他端11bに回転軸2aが連結されて水圧ポンプ1の回転を駆動モータ10の駆動軸10aを介して補助する水圧モータ2とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水から塩分を除去した淡水を取り出す海水淡水化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、水圧ポンプによって加圧された海水を、塩分を除去する逆浸透膜に送り、淡水を取り出す海水淡水化装置が用いられている。
【0003】
特許文献1には、逆浸透膜によって濾過されずに排出される海水の圧力によって回転駆動される水圧モータを備える海水淡水化装置が開示されている。この海水淡水化装置では、水圧ポンプの回転軸に直結される駆動軸を有する駆動モータと、排出される海水のエネルギによって回転駆動される水圧モータとによって水圧ポンプを駆動している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−83741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の海水淡水化装置では、駆動モータの駆動軸に水圧ポンプの回転軸を連結し、水圧ポンプの回転軸にさらに水圧モータの回転軸を連結している。そのため、組み立ての際には、駆動モータの駆動軸と水圧ポンプの回転軸とを同軸に調整した後、そこに更に水圧モータの回転軸も同軸となるように調整する必要があったため、組み立てが困難であった。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、駆動モータと水圧ポンプと水圧モータとの組み立てを容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、海水から塩分を除去して淡水を取り出す海水淡水化装置であって、海水を吸い込んで吐出する水圧ポンプと、前記水圧ポンプから吐出された海水の一部が通過する際にこの海水から塩分を除去して淡水化する逆浸透膜と、両端が突出する駆動軸を有し、前記駆動軸の一端に前記水圧ポンプの回転軸が連結されて前記水圧ポンプを回転駆動する両軸型の駆動モータと、前記逆浸透膜を通過しないで還流される海水によって回転駆動され、前記駆動軸の他端に回転軸が連結されて前記水圧ポンプの回転を前記駆動モータの前記駆動軸を介して補助する水圧モータと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、駆動軸の両端が突出する両軸型の駆動モータを用い、海水を逆浸透膜へ吐出する水圧ポンプの回転軸を駆動軸の一端に連結し、逆浸透膜を通過しないで還流される海水によって回転駆動される水圧モータの回転軸を駆動軸の他端に連結する。よって、駆動モータの駆動軸の一端と水圧ポンプの回転軸とを同軸に調整し、それとは別に駆動軸の他端と水圧モータの回転軸とを同軸に調整すればよい。したがって、駆動モータの駆動軸と水圧ポンプの回転軸と水圧モータの回転軸との同軸度の調整が容易であり、組み立てを容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態による海水淡水化装置の構成図である。
【図2】海水淡水化装置における水圧ポンプ,駆動モータ,及び水圧モータの正面図である。
【図3】図2における平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係る海水淡水化装置100について説明する。
【0011】
まず、図1を参照して、海水淡水化装置100の全体構成について説明する。
【0012】
海水淡水化装置100は、海水から塩分を除去して淡水を取り出す装置である。海水淡水化装置100は、海水を吸い込んで吐出する水圧ポンプ1と、水圧ポンプ1から吐出された海水の一部が通過する際に塩分を除去して淡水化する逆浸透膜5と、水圧ポンプ1を回転駆動する両軸型の駆動モータ10と、逆浸透膜5を通過しないで還流される海水によって回転駆動される水圧モータ2とを備える。
【0013】
水圧ポンプ1は、海水を逆浸透膜5に供給する供給通路3に設けられ、加圧した海水を逆浸透膜5へ吐出する。水圧ポンプ1の回転軸1aは、駆動モータ10の駆動軸11に連結される。水圧ポンプ1は、主として駆動モータ10によって回転駆動され、水圧モータ2によって補助的に回転駆動される。
【0014】
逆浸透膜5は、水を通す一方、塩類など水以外の不純物を透過させない性質を持つ濾過膜である。逆浸透膜5の上流には、水圧ポンプ1から吐出された海水が導かれる上流側室6が設けられる。逆浸透膜5の下流には、下流側室7が設けられる。下流側室7は、淡水を貯水可能な淡水タンク9に透過水取出通路8を介して連結される。
【0015】
上流側室6には、供給通路3と、逆浸透膜5によって濾過されなかった濃縮海水を還流する排出通路4とが連結される。排出通路4は、供給通路3と比較して下流の位置にて上流側室6と連結される。これにより、供給通路3から上流側室6に供給された海水のうち、逆浸透膜5によって濾過されなかった濃縮海水は、排出通路4を通じて還流される。
【0016】
水圧モータ2は、排出通路4に設けられる。水圧モータ2は、上流側室6から排出された濃縮海水の圧力によって回転し、水圧ポンプ1の回転を補助する。水圧モータ2の回転軸2aは、駆動モータ10の駆動軸11に連結される。
【0017】
次に、図2及び図3を参照して、駆動モータ10について説明する。
【0018】
駆動モータ10は、電源装置(図示省略)から供給される電力によって回転する電動機である。駆動モータ10に代えて、電力以外のエネルギによって回転する他の原動機を用いてもよい。
【0019】
駆動モータ10は、水圧ポンプ1と水圧モータ2とともに架台20上にブラケットを介して取り付けられる。駆動モータ10は、水圧ポンプ1と水圧モータ2との間に配設される。
【0020】
駆動モータ10は、両端が突出する駆動軸11を有する。駆動モータ10は、駆動軸11が水圧ポンプ1の回転軸1aと水圧モータ2の回転軸2aと同軸となるように配置される。駆動軸11の一端11aには、カップリング21を介して水圧ポンプ1の回転軸1aが連結される。駆動軸11の他端11bには、カップリング22を介して水圧モータ2の回転軸2aが連結される。
【0021】
カップリング21とカップリング22とは、軸ずれを吸収可能なフレックスカップリングである。カップリング21とカップリング22とを介して連結することによって、回転軸1aと駆動軸11との間、及び回転軸2aと駆動軸11との間の軸ずれが吸収される。
【0022】
ここで、従来の海水淡水化装置では、駆動モータの駆動軸に水圧ポンプの回転軸を連結し、水圧ポンプの回転軸にさらに水圧モータの回転軸を連結していた。組み立ての際には、駆動モータの駆動軸と水圧ポンプの回転軸とを同軸に調整した後、そこに更に水圧モータの回転軸も同軸となるように調整する必要があった。そのため、駆動モータの駆動軸と水圧モータの回転軸とを同軸に調整するのが困難であった。
【0023】
これに対して、海水淡水化装置100では、駆動軸11の両端が突出する両軸型の駆動モータ10が用いられる。駆動軸11の一端11aには、海水を逆浸透膜5へ吐出する水圧ポンプ1の回転軸1aが連結される。駆動軸11の他端11bには、逆浸透膜5を通過しないで還流される海水によって回転駆動される水圧モータ2の回転軸2aが連結される。よって、駆動モータ10の駆動軸11のと水圧ポンプ1の回転軸1aとを同軸に調整し、それとは別に駆動軸11と水圧モータ2の回転軸2aとを同軸に調整すればよい。したがって、駆動モータ10の駆動軸11と水圧ポンプ1の回転軸1aと水圧モータ2の回転軸2aとの同軸度の調整が容易であり、組み立てを容易にすることができる。
【0024】
また、従来は、水圧ポンプと水圧モータとを並列に並べて配置していた。そして、水圧ポンプの回転軸と水圧モータの回転軸とにそれぞれプーリを設け、各々のプーリ間に架け回されたベルトを介して回収エネルギを水圧ポンプに伝達していた。
【0025】
これに対して、駆動モータ10では、駆動軸11と水圧ポンプ1の回転軸1aと水圧モータ2の回転軸2aとをカップリング21,22だけで連結することができる。よって、従来の構成と比較すると、部品点数が減少してコンパクトにできる。
【0026】
次に、図1を参照して、海水淡水化装置100の作用について説明する。
【0027】
水圧ポンプ1は、駆動モータ10によって回転駆動され、海水を汲み上げる。水圧ポンプ1から吐出された海水は、供給通路3を通じて上流側室6に供給される。上流側室6に供給された海水は、供給通路3から排出通路4に向かって、逆浸透膜5に沿って流れる。
【0028】
水圧ポンプ1の吐出圧によって上流側室6内の水圧が上昇すると、海水の一部が逆浸透膜5を通過する。このとき、逆浸透膜5は、海水中の塩類などの不純物を透過させないで濾過する。逆浸透膜5によって濾過された透過水は、下流側室7から透過水取出通路8を通じて取り出され、淡水タンク9に貯水される。これにより、海水から塩類などの不純物を除去して淡水を精製することができる。
【0029】
上流側室6では、供給通路3から排出通路4に向けて海水が常に流れているため、不純物の滞留が防止される。また、上流側室6内では、海水が逆浸透膜5に沿って流れるため、逆浸透膜5に不純物が付着することが防止される。
【0030】
逆浸透膜5によって濾過されなかった濃縮海水は、上流側室6から排出通路4を通じて海水中に還流される。このとき、排出通路4を流れる濃縮海水によって、水圧モータ2が回転駆動される。
【0031】
水圧モータ2の回転軸2aの回転は、駆動モータ10の駆動軸11を介して水圧ポンプ1の回転軸1aに伝達される。よって、駆動モータ10によって回転駆動される水圧ポンプ1が、水圧モータ2の回転によって補助される。したがって、水圧モータ2によって補助された分だけ、駆動モータ10の消費エネルギを低減することができる。
【0032】
ここで、従来のプーリ間に架け回されるベルトを介して回収エネルギを水圧ポンプに伝達する構成では、回収エネルギの伝達効率が、ベルトの伝達ロス分だけ低下するおそれがあった。
【0033】
これに対して、水圧モータ2の回転軸2aは、駆動モータ10の駆動軸11に直接連結される。そのため、水圧モータ2が回転駆動されると、その回転が駆動軸11に直接伝達される。これにより、加圧された海水からの回収エネルギを、水圧ポンプ1の回転軸1aに直接伝達することができる。したがって、回収エネルギの伝達ロスが無いため、加圧された海水からの回収エネルギの伝達効率を向上できる。
【0034】
また、回収エネルギの伝達効率が向上した分だけ、水圧ポンプ1の起動時や通常の運転時に必要な駆動モータ10の駆動力が抑制される。よって、容量の小さな駆動モータ10を用いることができる。
【0035】
以上の実施の形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0036】
駆動軸11の両端が突出する両軸型の駆動モータ10を用いるため、駆動モータ10の駆動軸11のと水圧ポンプ1の回転軸1aとを同軸に調整するとともに、駆動軸11と水圧モータ2の回転軸2aとを同軸に調整することによって組み立てが可能である。したがって、駆動モータ10の駆動軸11と水圧ポンプ1の回転軸1aと水圧モータ2の回転軸2aとの同軸度の調整が容易であり、組み立てを容易にすることができる。
【0037】
また、海水淡水化装置100では、駆動軸11の両端が突出する両軸型の駆動モータ10を用い、海水を逆浸透膜5へ吐出する水圧ポンプ1の回転軸1aを駆動軸11の一端11aに連結し、逆浸透膜5を通過しないで還流される海水によって回転駆動される水圧モータ2の回転軸2aを駆動軸11の他端11bに連結する。これにより、加圧された海水からの回収エネルギを、水圧ポンプ1の回転軸1aに直接伝達することができる。したがって、加圧された海水からの回収エネルギの伝達効率を向上できる。
【0038】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【0039】
例えば、海水を淡水化する装置だけでなく、逆浸透膜5を用いる他の水処理システムにも本発明を適用することが可能である。また、水処理システムだけでなく、液圧システムにて余剰な流量,圧力をもった作動流体の流れがある場合にも、本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0040】
100 海水淡水化装置
1 水圧ポンプ
1a 回転軸
2 水圧モータ
2a 回転軸
5 逆浸透膜
10 駆動モータ
11 駆動軸
11a 駆動軸の一端
11b 駆動軸の他端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水から塩分を除去して淡水を取り出す海水淡水化装置であって、
海水を吸い込んで吐出する水圧ポンプと、
前記水圧ポンプから吐出された海水の一部が通過する際にこの海水から塩分を除去して淡水化する逆浸透膜と、
両端が突出する駆動軸を有し、前記駆動軸の一端に前記水圧ポンプの回転軸が連結されて前記水圧ポンプを回転駆動する両軸型の駆動モータと、
前記逆浸透膜を通過しないで還流される海水によって回転駆動され、前記駆動軸の他端に回転軸が連結されて前記水圧ポンプの回転を前記駆動モータの前記駆動軸を介して補助する水圧モータと、を備えることを特徴とする海水淡水化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−81922(P2013−81922A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225003(P2011−225003)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(304039065)カヤバ システム マシナリー株式会社 (185)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】