説明

海洋に適用するための温度調節可能な導管

【解決手段】内側から外側に向かって以下の複数の層:内側ライニング、金属からなる少なくとも2つの補強層並びに外側被覆を有する多層構造のフレキシブル管において、2つの補強層の間に導電性プラスチック材料からなる1つの層が存在し、前記導電性プラスチック材料からなる層は両方の補強層と電気的に接続されていて、かつ前記2つの補強層は電源と接続することができることを特徴とする、多層構造のフレキシブル管。
【効果】この管は効率的に加熱できるため、寒冷地帯での油搬送の場合に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、結合していない層を備えた多層構造の温度調節可能なフレキシブル管である。この種の管は、以後、簡素化のために及び英語の言語領域に相応して、アンボンデッド・フレキシブル・パイプ(Unbonded Flexible Pipe)とする。このアンボンデッド・フレキシブル・パイプは、搬送される流体からのガスの拡散に高い抵抗で対抗し、従って液状又はガス状の媒体を搬送するため及び特に有利に原油又は天然ガスを搬送するために使用できる。
【背景技術】
【0002】
アンボンデッド・フレキシブル・パイプは、それ自体従来技術である。この種の管は、搬送される流体の流出に対するバリアとしての、通常ではプラスチック管の形の内側ライニングと、該内側ライニングの外側の1以上の補強層とを有する。このアンボンデッド・フレキシブル・パイプは、高い外部圧力でのこの内側ライニングの崩壊を抑制するために、付加的な層、例えば該内側ライニングの内側の1以上の補強層を有することができる。この種の内側補強は、通常ではカーカスといわれる。さらに、外部環境からの補強層内への又は更に内部にあるポリマーの又は金属の機能層内への液体の侵入に対するバリアを設けるために、外側被覆を有することができる。多くの場合に、金属構造体に関する摩擦による摩耗を抑制するために、外側補強層の間に熱可塑性層が、例えば巻き付けられた「耐摩耗テープ(Anti-Wear Tapes)」の形で挿入される。
【0003】
典型的なアンボンデッド・フレキシブル・パイプは、例えば、WO 01/61232、US 6123114及びUS 6085799に記載されており;このアンボンデッド・フレキシブル・パイプは、更に、API推奨基準17B(API Recommended Practice 17B)、「フレキシブルパイプの推奨基準(Recommended Practice for Flexible Pipe)」、第3版、2002年3月、並びにAPI仕様17J(API Specification 17J)、「アンボンデッド・フレキシブル・パイプの仕様(Specification for Unbonded Flexible Pipe)」、第2版、1999年11月に詳細に特徴付けられている。
【0004】
「アンボンデッド」の表現は、この関連で、補強層及びプラスチック層を含めた層の少なくとも2つが構造的に相互に結合されていないことを意味する。実際に、この管は少なくとも2つの補強層を有し、これらの補強層は管の長さにわたり直接的に相互に結合しておらず、間接的にも、つまり他の層を介しても相互に結合していない。それにより、この管を輸送の目的で巻き取るために、このパイプは曲げやすく、十分にフレキシブルである。
【0005】
この種のアンボンデッド・フレキシブル・パイプは、液体、ガス及びスラリーの輸送のために、海洋で適用する場合に並びに多様な陸上で適用する場合に多様な実施形で使用される。このアンボンデッド・フレキシブル・パイプは、例えば流体の輸送のために、管の長さにわたり極めて高い又は極めて異なる水圧が存在する箇所で使用することができ、例えば海底から海面の又は海面付近の施設まで長く延びる上昇管の形で、更に一般に多様な施設間で液体又はガスを輸送するための管として、深海の海底に敷設されている管として、又は海面付近の施設の間の管として使用することができる。
【0006】
慣用のフレキシブル管の場合に、1つ又は複数の補強層は、大抵はスパイラル状に配置された鋼製ワイヤ、鋼製異形材又は鋼製テープからなり、この場合に個々の層はこのパイプの軸に対して多様な巻き付け角度で形成されていてもよい。
【0007】
この内側ライニングは、従来技術の場合には通常、ポリオレフィン、例えば架橋されていてもよいポリエチレンからなるか、ポリアミド、例えばPA11又はPA12又はポリビニリデンフルオリド(PVDF)からなる。その他に、他の材料からなる層も含むことができる1層又は多層のライニングが公知である。
【0008】
約40℃を下回る温度で、石油からいくつかの成分は析出することがある。ここでは、特にロウ及び場合により水和物の析出が重要であり、これらは、管横断面を低減させることがある。低温でも輸送機能を保証するため、この現象を抑制する目的でこの導管は加熱可能であるのが好ましい。この種の導管の加熱を実施する多様な方法が存在する。
【0009】
WO91/18231は、加熱可能なフレキシブル管システムを記載しており、このフレキシブル管システムは導電性ケーブルを有し、この導電性ケーブルは導電性の電源と接続されかつ抵抗加熱の原理により熱を生じさせる。
【0010】
このコンセプトの欠点は、費用のかかる設計及び全長にわたって制御できない温度調節である。
【0011】
更に、WO 97/20162の場合には、フレキシブルな内部導管の周囲に複数の小さな導管が配置されている、フレキシブル管システムを記載している。これらは、プロセス媒体又は流れの輸送のために利用することができる。温度調節された媒体を導通することによって、この管システムの温度調節も考慮できる。このコンセプトの欠点は、同様に、費用のかかる設計、熱損失及び全長にわたり制御できない温度調節である。
【0012】
他の出願(WO 92/11487、WO 85/04941、WO 2000/66934、WO 2000/66935及びWO 2001/07824)は、媒体温度の受動安定化としての断熱のテーマに取り組んでいる。しかしながら、この場合でも、頻繁に使用される発泡性の構造体の圧縮率が問題となる。このことは、大きな水深で及びそれと関連して高い外部圧力で、この断熱作用の低減を生じることになりえる。
【0013】
加熱のための他の方法は、WO 2006/097765、WO 2006/090182及びUS 4 874 925に記載されている。例えば2つの導体が存在し、これらの導体は管に沿って相互に180°ずらされて導電性層内に埋め込まれている多層管に関している。一方の導体から他方の導体への電流に基づいて、導電性層中での加熱が行われる。この導体と導電性層との結合又は均質な接続は、加熱のために重要である。この導電性層は、外側に向かって断熱され、かつ場合により電気的に絶縁されている。内側の原油に向かう付加的な層は、電気的絶縁のために得策であるか又は必要である。
【0014】
WO 2008/005829には、導電性ポリマー層を有し、この層が抵抗加熱体として機能する、自動車分野における加熱可能な導管が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】WO 01/61232
【特許文献2】US 6123114
【特許文献3】US 6085799
【特許文献4】WO91/18231
【特許文献5】WO 97/20162
【特許文献6】WO 92/11487
【特許文献7】WO 85/04941
【特許文献8】WO 2000/66934
【特許文献9】WO 2000/66935
【特許文献10】WO 2001/07824
【特許文献11】WO 2006/097765
【特許文献12】WO 2006/090182
【特許文献13】US 4 874 925
【特許文献14】WO 2008/005829
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の課題は、搬送される媒体は付加的に僅かな構造的なコストで電気加熱することができる多層構造のフレキシブル管を提供することよりなる。この場合、この導管は具体的に必要である管部分においてだけ適切に加熱されることが可能であるのが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記課題は、内側から外側に向かって以下の複数の層:
− 内側ライニング、
− 金属からなる少なくとも2つの補強層並びに
− 外側被覆
を有し、更に、2つの補強層の間に導電性プラスチック成形材料からなる層が存在し、この導電性プラスチック成形材料からなる層は両方の補強層と電気的に接続されていて、かつ両方の補強層を電源と接続することができるフレキシブル管によって解決された。有利に、これらの補強層はこのための接続部を有する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この内側ライニングは、通常では、搬送される流体の流出に対するバリアであるプラスチック管である。適用技術的な必要性に応じて、このプラスチック管は、単層であるか又はそれぞれ異なる成形材料からなる複数の層からなることもできる。この場合、このプラスチック管は、例えば二層、三層、四層であるか又は、このプラスチック管は特別な場合に更に多くの層からなる。この種のライニングは従来技術である。この内側ライニングは、他の実施態様の場合に、薄壁の金属製コルゲート管からなることもできる。
【0019】
この補強層は、通常ではスパイラル状に配置された鋼製ワイヤ、鋼製異形材又は鋼製テープからなる。この補強層の構造は従来技術である。有利に、この補強層の少なくとも1つが、内圧に耐えるように構成され、かつこの補強層の他の少なくとも1つが、引っ張り力に耐えるように構成されている。通常では、2より多くの補強層が存在する。この補強層に続いて、外側被覆が、通常では熱可塑性成形材料又はエラストマーからなる管又はホースの形で存在する。
【0020】
可能な実施態様の場合には、このアンボンデッド・フレキシブル・パイプの内側ライニングの内側にカーカスが存在する。この種のカーカス及びその構造は従来技術である。他の可能な実施態様の場合に、このアンボンデッド・フレキシブル・パイプは、特に、高い外部圧力のもとで用いられない場合には、カーカスを有しない。
【0021】
本発明の場合に2つの補強層の間に配置されている導電性プラスチック成形材料からなる層は、この2つの補強層の内側の補強層に、例えば巻き付け押出(Wickelextrusion)により被着押出成形(aufextrudieren)することができるか又は導電性プラスチック成形材料からなる層は予め作成されたテープの巻き付けにより形成することができる。特別な場合に、このアンボンデッド・フレキシブル・パイプは、それぞれ2つの補強層の間に導電性プラスチック成形材料からなる複数の層を有することもできる。
【0022】
この導電性プラスチック成形材料のために適した材料は、例えば、オレフィン性ポリマー、ポリアミド、フルオロポリマー、ポリエチレン−2,6−ナフタラート、ポリブチレン−2,6−ナフタラート、ポリフェニルスルホン、ポリアリーレンエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド又はポリアリーレンエーテルケトン/ポリフェニレンスルフィド−ブレンドをベースとする成形材料である。
【0023】
導電性プラスチック成形材料のために使用されるオレフィン性ポリマーは、第一に、ポリエチレン、特に高密度ポリエチレン(HDPE)、又はアイソタクチック又はシンジオタクチックポリプロピレンであることができる。このポリプロピレンはホモポリマーであるか、又は例えばエチレン又は1−ブテンをコモノマーとして有するコポリマーであることができ、この場合ランダムコポリマーもブロックコポリマーも使用することができる。さらに、このポリプロピレンは、例えば従来技術によって、エチレン−プロピレン−ゴム(EPM)又はEPDMを用いて耐衝撃性に変性されていてもよい。同様に本発明により使用可能なシンジオタクチックポリスチレンは、公知の方法で、メタロセン触媒を用いるスチレンの重合により製造することができる。
【0024】
この導電性プラスチック成形材料のために使用されるポリアミドは、ジアミン及びジカルボン酸の組合せ、ω−アミノカルボン酸又は相応するラクタムから製造可能である。基本的に、全てのポリアミド、例えばPA6又はPA66を使用することができる。有利な実施態様の場合に、このポリアミドのモノマー単位は、平均で少なくとも8個、少なくとも9個、又は少なくとも10個のC原子を有している。ラクタムの混合物の場合には、算術平均を考慮した。ジアミンとジカルボン酸との組合せの場合には、ジアミン及びジカルボン酸のC原子の算術平均は、この有利な実施態様の場合に、少なくとも8、少なくとも9又は少なくとも10でなければならない。適切なポリアミドは、例えば:PA610(ヘキサメチレンジアミン[6個のC原子]とセバシン酸[10個のC原子]とから製造可能、モノマー単位中のC原子の平均は、従ってこの場合8である)、PA88(オクタメチレンジアミンと1,8−オクタン二酸とから製造可能)、PA8(カプリルラクタムから製造可能)、PA612、PA810、PA108、PA9、PA613、PA614、PA812、PA128、PA1010、PA10、PA814、PA148、PA1012、PA11、PA1014、PA1212及びPA12である。ポリアミドの製造は従来技術である。もちろん、これに基づくコポリアミドも使用することができ、この場合、場合によりカプロラクタムのようなモノマーを使用することができる。
【0025】
ポリアミドとして、有利に、部分芳香族ポリアミドを使用することもでき、このジカルボン酸割合の5〜100Mol%は8〜22個のC原子を有する芳香族ジカルボン酸に由来し、結晶融点Tmは少なくとも260℃、有利に少なくとも270℃、特に有利に少なくとも280℃である。この種のポリアミドは、通常ではPPAともいわれる。このポリアミドは、ジアミンとジカルボン酸の組合せから、場合によりω−アミノカルボン酸又は相応するラクタムの添加下で製造することができる。適切なタイプは、例えばPA66/6T、PA6/6T、PA6T/MPMDT(MPMDは2−メチルペンタメチレンジアミンを表す)、PA9T、PA10T、PA11T、PA12T、PA14T並びにこの後者のタイプと、脂肪族ジアミン及び脂肪族ジカルボン酸又はω−アミノカルボン酸又はそのラクタムとの共縮合物である。
【0026】
ポリアミドの他に、この成形材料は他の成分、例えば耐衝撃性改質剤、他の熱可塑性プラスチック、可塑剤及び他の通常の添加剤を含有することができる。必要なのは、ポリアミドが成形材料のマトリックスを形成することだけである。
【0027】
導電性プラスチック成形材料のために使用されるフルオロポリマーは、例えばポリビニリデンフルオリド(PVDF)、エチレン−テトラフルオロエチレン−コポリマー(ETFE)、三成分、例えばプロペン、ヘキサフルオロプロペン、ビニルフルオリド又はビニリデンフルオリドを用いて変性されたETFE(例えばEFEP)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン−コポリマー(E−CTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン−ペルフルオロアルキルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン−コポリマー(CPT)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロペン−コポリマー(FEP)又はテトラフルオロエチレン−ペルフルオロアルキルビニルエーテル−コポリマー(PFA)である。他のモノマー、例えばトリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロペン及びヘキサフルオロプロペンを40質量%まで有するビニリデンフルオリドをベースとするコポリマーも挙げられる。
【0028】
ポリフェニルスルホン(PPSU)は、例えば、Solvay Advanced Polymers社の商品名Radel(登録商標)で製造されている。これは、4,4′−ジヒドロキシビフェニル及び4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホンから求核置換により製造できる。特に、PPSU/フルオロポリマーブレンド、例えばPPSU/PTFEブレンドも適している。
【0029】
同様に使用可能なポリアリーレンエーテルケトンは、式
(−Ar−X−)及び(−Ar′−Y−)
[式中、Ar及びAr′は、二価の芳香族基、有利に1,4−フェニレン、4,4′ビフェニレン並びに1,4−、1,5−又は2,6−ナフチレンを表す]の単位を有する。Xは、電子求引性基、有利にカルボニル又はスルホニルであり、Yは、他の基、例えばO、S、CH2、イソプロピリデン等である。この場合、基Xの少なくとも50%、有利に少なくとも70%、特に有利に少なくとも80%は、カルボニル基であり、基Yの少なくとも50%、有利に少なくとも70%、特に有利に少なくとも80%は、酸素からなる。
【0030】
有利な実施態様の場合に、基Xの100%はカルボニル基からなり、基Yの100%は酸素からなる。この実施態様の場合に、ポリアリーレンエーテルケトンは、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK、式I)、ポリエーテルケトン(PEK、式II)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK、式III)又はポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK、式IV)であることができるが、もちろんカルボニル基と酸素基との他の配置も可能である。
【0031】
【化1】

【0032】
このポリアリーレンエーテルケトンは部分結晶性であり、これは、例えばDSC分析において、結晶融点Tmの決定により表され、これはたいていの場合に大きさに応じて約300℃以上である。
【0033】
導電性プラスチック成形材料のために使用されるポリフェニレンスルフィドは、式
(−C64−S−)の単位を含有し、
有利にこの少なくとも50質量%、少なくとも70質量%、少なくとも90質量%はこの単位からなる。この残りの単位は、ポリアリーレンエーテルケトンの場合に上記されているような単位、又は三官能性又は四官能性分岐単位であることができ、この分岐単位は、この合成の際に例えばトリクロロベンゼン又はテトラクロロベンゼンの併用から生じる。ポリフェニレンスルフィドは、多くのタイプ又は成形材料が市販されている。
【0034】
ポリアリーレンエーテルケトン/ポリフェニレンスルフィド−ブレンドの場合に、両方の成分は考えられる全ての混合比で存在することができるので、純粋なポリアリーレンエーテルケトンから純粋なポリフェニレンスルフィドまでの組成物範囲を隙間なく埋められる。一般に、このブレンドは、ポリアリーレンエーテルケトン少なくとも0.01質量%又はポリフェニレンスルフィド少なくとも0.01質量%を含有する。
【0035】
この導電性プラスチック成形材料は、通常の助剤及び添加剤、並びに場合により他のポリマーを含有することができ、これはポリアリーレンエーテルケトンの場合に、例えばフルオロポリマー、例えばPFA(テトラフルオロエタンとペルフルオロビニルメチルエーテルとからなるコポリマー)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、LCP、例えば液晶性ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリベンズイミダゾール(PBI)又は他の耐高温性ポリマー、ポリフェニレンスルフィドの場合に、例えばエチレンと極性コモノマーとのコポリマー又はターポリマー、及び部分芳香族ポリアミドの場合に脂肪族ポリアミドである。このポリアミド成形材料は、例えば、加水分解安定剤、可塑剤又は耐衝撃性改質剤を含有することができる。この成形材料は、更に、潤滑剤、例えば黒鉛、二硫化モリブデン、六方晶系窒化ホウ素又はPTFEを含有することができる。成形材料に対して、ベースポリマーの割合並びに有利な場合にオレフィン性ポリマー、ポリアミド、フルオロポリマー、ポリエチレン−2,6−ナフタラート、ポリブチレン−2,6−ナフタラート、ポリフェニルスルホン、ポリアリーレンエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド又はポリアリーレンエーテルケトン/ポリフェニレンスルフィド−ブレンドの割合は、少なくとも50質量%、有利に少なくとも60質量%、特に有利に少なくとも70質量%、殊に有利に少なくとも80質量%、更に特に有利に少なくとも90質量%である。
【0036】
このプラスチック成形材料の導電性は、公知の方法で、例えば導電性カーボン、黒鉛粉及び/又はグラファイトフィブリルの添加により達成される。このプラスチック成形材料のIEC60093による体積抵抗は、10-3〜1010Ωmの範囲内、有利に10-2〜108Ωmの範囲内、特に有利に10-1〜107Ωmの範囲内、殊に有利に100〜106Ωmの範囲内にある。
【0037】
導電性層を被着押出成形(aufextrudieren)する場合に、この層の厚さは約0.05〜50mm、有利に0.1〜20mm、特に有利に0.2〜10mm及び殊に有利に0.4〜6mmである。
【0038】
他の実施態様の場合に、導電性成形材料からなるテープを、引っ張りながら内側補強層上に巻き付け、場合により溶接し、次いで外側補強層を全面の接触が生じるように覆い被せる。
【0039】
このテープの幅は管の直径に依存する。通常の幅は、約20mm〜約700mmの範囲内、有利に約30mm〜約500mmの範囲内、特に有利に約40mm〜約300mmの範囲内にある。このテープの厚さは、一方で十分な機械的安定性がなければならず、かつ他方で、良好な巻き取りができるために十分に柔軟でなければならないことにより制限される。従って、実際にこのテープは、0.05mm〜5mmの範囲内の厚さ、有利に0.1mm〜3mmの範囲内の厚さを有する。
【0040】
このテープの横断面は長方形であることができる。しかしながらこのテープは側面に切欠を有することができるため、重なった領域が相互に咬み合い、巻物のほぼ平坦な表面が生じる。
【0041】
しかしながらこのテープは重ねて巻き付けることもでき;この重なる領域は、大きさに応じて、テープ幅の約10%で十分である。しかしながら、第1層のテープを突き合わせて巻き付け、場合によりその上に、第2層のテープを同様に突き合わせて巻き付けるが、ほぼ半分のテープ幅だけずらすことができる。
【0042】
巻き付けの後にこのテープの重なる箇所を相互に溶接することもできる。これは、熱風溶接、加熱エレメントとの接触又は有利にUVスペクトル領域、可視スペクトル領域又はIRスペクトル領域での電磁線の入射により行うことができる。原則として、テープの固定のためにスポット溶接で十分であるが、連続的に中断のない溶接シームを生じさせるのが有利である。もちろん、このテープは重なった領域で相互に全面的に溶接することもできる。
【0043】
導電性プラスチック成形材料からなる層は、同時に耐摩耗層としても機能することができる。従来技術において、補強層の摩耗を抑制するために、耐摩耗テープは鋼製の補強層の間に配置される。この場合、第一にテープが摩耗する。この摩耗は、場合により、このフレキシブル管の全寿命にわたり十分な熱効率を保証するために、この設計の際に考慮しなければならない。
【0044】
この層に接する両方の補強層を電源に接続して、電気的導体として用いることができ、次いで電流は、一方の補強層から他方の補強層へ導電性プラスチック成形材料からなる層を通して半径方向に流れる。この印加される電圧は、層厚、伝導率及び所望の温度から生じる。この構造は、製造に基づいて、導電性プラスチック成形材料からなる層と、その下又はその上にある補強層との間で良好でかつ大面積の接触が保証されるという利点を有する。これは、良好な電流の通過及びそれによる良好な熱収率を保証する。
【0045】
この成形材料がカーボンブラック又は導電性カーボンブラックを導電性添加物として含有する場合には、この加熱の際に、PTC効果(Positive Temperature Coefficient)を利用することができる。この効果は内在的な安全機能である、それというのも、この効果は、加熱の際の伝導率の低下により一定電圧で温度上昇を抑制するためである。導管の熱による損傷又は輸送されるべき媒体の熱による損傷はそれにより抑制することができる。
【0046】
本発明の場合に、導電性プラスチック成形材料からなる層を具体的な管部分にだけ配置することも可能である。この導電性プラスチック成形材料を、適切な加熱が必要となる領域で導電性に構成することができ、かつこの管の他の領域ではその代わりに例えば通常の耐摩耗テープを取り付けることができる。同様に、補強層の全長に電圧を印加するのではなく、具体的な管部分だけに適切に作動させることが有利である。これは、例えば管構造体中に組み込まれている、外側に向かって遮断された導体によって実現することができる。
【0047】
この導電性層又はこのために使用されたテープは、多層に構成することもできる。例えば、外側に向いた側が、接続のための良好な導電性層からなることができ、この導電性層は場合により同時に潤滑層(耐摩耗層)として機能し、それに対して内側に向かって導電性充填剤を含有する中間層が続き、この導電性充填剤は所望の温度効率及び熱効率を調節する。この内側に向いた側は、次いで、導電性及び伝熱性の観点で、並びに潤滑及び摩耗挙動の観点で最適化されている層からなることができる。それにより、このようなシートの表面抵抗の問題は解消でき、かつ場合により金属テープ間の隙間による接触損失を補償することができる。良好な導電性の外側層のIEC60093による体積抵抗は、例えば約10-3〜103Ωmであり、中間層の体積抵抗は例えば約10-1〜108Ωmである。
【0048】
このフレキシブル管は、場合により、ここに記載された層の他に、他の層、例えば、一方向性の又は織物により強化されたポリマー層(この場合、良好な伝熱性の炭素繊維補強材を使用することができる)又は断熱のための外側の層を有することができる。
【0049】
本発明を用いて、析出を抑制するために、この管は全長にわたり又は選択された部分において加熱することができる。この管系及び輸送される媒体の熱による損傷は、この場合に避けることができる。この技術的交換は簡単である、それというのも複雑な技術付属部品は必要なく、この管構造自体は変化がないためである。この本発明による管は、寒冷地帯、例えば寒帯地域での油搬送の場合でも使用できるように効果的に加熱することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側から外側に向かって以下の複数の層:
− 内側ライニング、
− 金属からなる少なくとも2つの補強層並びに
− 外側被覆
を有する多層構造のフレキシブル管において、2つの補強層の間に導電性プラスチック成形材料からなる層が存在し、前記導電性プラスチック成形材料からなる層は両方の補強層と電気的に接続されていて、かつ前記2つの補強層は電源と接続することができることを特徴とする、多層構造のフレキシブル管。
【請求項2】
前記導電性プラスチック成形材料は、オレフィン性ポリマー、ポリアミド、フルオロポリマー、ポリエチレン−2,6−ナフタラート、ポリブチレン−2,6−ナフタラート、ポリフェニルスルホン、ポリアリーレンエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド又はポリアリーレンエーテルケトン/ポリフェニレンスルフィド−ブレンドをベースとする成形材料であることを特徴とする、請求項1記載のフレキシブル管。
【請求項3】
前記導電性プラスチック成形材料からなる層が、2つの補強層の内側の補強層に被着押出成形されていることを特徴とする、請求項1又は2記載のフレキシブル管。
【請求項4】
前記導電性プラスチック成形材料からなる層が、予め作成されたテープの巻き付けにより形成されていることを特徴とする、請求項1又は2記載のフレキシブル管。
【請求項5】
前記導電性プラスチック成形材料のIEC60093による体積抵抗が、10-3Ωm〜1010Ωmの範囲内にあることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載のフレキシブル管。
【請求項6】
前記導電性プラスチック成形材料が、導電性カーボンブラック、グラファイトフィブリル及び/又は黒鉛粉を含有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載のフレキシブル管。
【請求項7】
前記導電性プラスチック成形材料からなる層は、多層に構成されていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載のフレキシブル管。
【請求項8】
原油を搬送するための、請求項1から7までのいずれか1項記載のフレキシブル管の使用。
【請求項9】
前記導電性プラスチック成形材料からなる層に接する前記2つの補強層を電源に接続し、前記導電性プラスチック成形材料からなる層を通して電流を供給することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載のフレキシブル管の加熱方法。

【公開番号】特開2012−233577(P2012−233577A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−102139(P2012−102139)
【出願日】平成24年4月27日(2012.4.27)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】