説明

海洋コラーゲンを洗浄するための方法、およびその孔質スポンジを形成するための処置

本発明は、海洋コラーゲンを洗浄するための方法、その孔質スポンジを形成するための処理、および前記方法により作製された作製物およびその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋コラーゲンを精製するための、特に海洋コラーゲンのにおいおよび外見をよくするための方法に関する。
本発明はさらに、特に医療目的に適する、海洋コラーゲンの孔質スポンジの作製のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コラーゲンは、生分解性ならびに生体適合性のタンパク質であり、食品産業、製薬および化粧品産業ならびに医学分野で、多種多様の用途のための出発物質として用いられる。
「海洋コラーゲン」は、海洋生物、つまり海に住む生物から、特に海綿動物門の系統のメンバーから、好ましくはChondrosia reniformisから単離されるコラーゲンを意味すると解される。
多数のコラーゲン作製物が知られていて、医学分野で利用されている。かかる作製物は、例えば、スポンジ、繊維および膜を含む。
【0003】
これらの作製物の大多数を、例えば、ウシ、ウマまたはブタからの哺乳類の結合組織、皮膚、骨または腱から作製されるコラーゲンから製造する。これらの作製物の根本的な欠点は、以下の事実において見られる。
− ほとんどの場合、若齢の動物を、コラーゲンの十分な産生を得るために、コラーゲンのための源として用いなければならない;
− 得られるコラーゲンは、ほとんどの場合、酸性の媒体ならびに塩基性の媒体の両方に可溶性であり、コラーゲンの機構的な特性および液体媒体における安定性をよくするために、さらなる架橋反応(物理的な、熱処理による、または化学的に、二官能性物質を用いて)を必要とする。
− 牛海綿状脳症(BSE)によるコンタミネーションの危険性がある。
【0004】
哺乳類からのコラーゲンの作製の代替として、WO 01/64046は、Chondrosia reniformis属(Porifera, Demospongiae)の海綿からコラーゲンを分離するための方法を記載する。
【0005】
この方法において、新鮮なスポンジ出発物質をアルコール中で吸収して、それから水で洗い、そして抽出剤をそこに加え、好ましくは7〜12のpHとする。得られたコラーゲン抽出物を、懸濁液のpHを8〜11の値に増加させ、攪拌し、遠心分離し、次いで上澄みのpH値を低下させ、ならびに遠心分離して、沈殿物を分離する。
【0006】
この方法により得ることができるスポンジコラーゲンは、しかしながら以下の点において本質的に以下のものからなる欠点を有する。
− コラーゲン溶液は、汚れた外見を有する
− コラーゲンは、微生物学的に純粋でない、そして
− このスポンジコラーゲンからの作製物は、不快なにおいを有する。
【発明の開示】
【0007】
そのため、本発明に潜む課題は、海洋コラーゲンの上述の欠点を排除し、医薬目的のための作製物の製造のためにもまた適する、海洋生物からのコラーゲンを提供することであった。
【0008】
この課題は、コラーゲン沈殿物を、化学処理ステップを用いて精製し、そのようにしてそのにおいおよび外見をよくすることにより、解決される。精製コラーゲンを、次いで、凍結乾燥により孔質スポンジへと加工する。
【0009】
本発明により、海洋コラーゲンを精製するための方法は、コラーゲン沈殿物を処理することを包含し、例えば、WO 01/64046に記載の方法により、異なるpH価での水性溶液中の過酸化水素で得ることができる。
【0010】
この目的を達成するために、かかるコラーゲン沈殿物の湿度は、最初は70〜95重量%の含有量、好ましくは80〜90重量%の含有量に調整するべきである。これは、コラーゲン沈殿物を加圧下で絞り出すことにより、または遠心分離により達成できるが、コラーゲンを沈殿物の水分含有量を、必要ならば、所望の含有量へと低下させるためである。
【0011】
コラーゲン沈殿物を、それから、0.1〜1%(v/v)、好ましくは0.5%(v/v)のHを含有する水性H溶液中に懸濁する。それから、コラーゲン懸濁液のpHを11〜13の価へと調整する。このようにして、コラーゲンを溶解させる。
【0012】
アルカリ条件下でのHでのコラーゲンの培養に次いで、コラーゲン溶液をろ過し、不溶性成分を除去する。そののち、コラーゲンを、好適な水混和性有機溶媒を溶液に添加することにより、溶液から沈殿させる。
【0013】
コラーゲン沈殿物をろ過し、水分含有量を70〜95重量%、好ましくは80〜90重量%に再調整する。それから、コラーゲンを、再び、0.1〜1%(v/v)、好ましくは0.5%(v/v)のHの含有量を有する、水性H溶液に溶解し、このコラーゲン溶液のpHを、5〜7の価に調整し、コラーゲンを、それから、医療目的のためのスポンジ、膜または繊維の作製のために用いられるようにする。
【0014】
pHの11〜13の価への調整を、好ましくはNaOHで達成するが、他のアルカリ性水酸化物またはアルカリ土類水酸化物、例えばKOH、Ca(OH)またはMg(OH)などでもまた達成してもよい。
水混和性有機溶媒としては、エタノールおよびイソプロパノールが好ましい。沈殿を、好ましくは、1:2と1:3の間の水のエタノールに対する割合で実施する。
【0015】
コラーゲン溶液の5〜7のpHへの中和は、有機酸、例えばギ酸、酢酸、クエン酸、アスコルビン酸、プロピオン酸、乳酸など、または無機酸、例えば塩酸、リン酸または硫酸などを添加することによってpH価を低下させることにより、達成してもよい。好ましくは、pH価を、5N塩酸の添加により調整する。
【0016】
本発明による方法の利点は、以下のものである。
− タンパク質抽出における高い産生;
− バクテリアがいない、滅菌コラーゲン;
− 海綿動物門は神経構造を有しないゆえの、BSEなしのコラーゲン;
− 汚く見えない、感じが良い外見のコラーゲン;
− 不快なにおいのないコラーゲン;
− 酸性の媒体に不溶性であり、機構的な特性および液体中の安定性を改善するための、さらなる架橋反応を必要としない、コラーゲン;
− 外傷の治癒のための包帯剤の作製のために、または組織再生における支持体として用いることができるコラーゲン。
【0017】
その利点のために、本願の方法を用いて精製されたコラーゲンは、医療目的の作製物の製造のために、特に適する。
【0018】
つまり、本発明による方法を用いて精製したコラーゲンならびに孔質スポンジ、繊維材料または膜の製造のためのその使用もまた、本発明の主題である。
そのため、本発明はまた、精製海洋コラーゲンからの孔質スポンジの作製のための方法に関する。
【0019】
孔質コラーゲンスポンジを、本発明の方法により得られる溶液を、より小さな孔のスポンジを作製するために、コラーゲン溶液が強い振動/攪拌により発泡するか、コラーゲン溶液に含まれる空気が真空除去され、冷凍および凍結乾燥する。コラーゲン溶液は、好ましくは0.5〜5重量%の濃度のコラーゲンを含有する。
【0020】
コラーゲン溶液またはコラーゲン発泡体を凍結する、適切な型を用いることにより、任意の形の孔質コラーゲン発泡体を作製できる。
【0021】
さらによくした特性のコラーゲンスポンジは、特に医学用途に対する観点においては、これらを凍結乾燥させたのちにコラーゲンスポンジを酸性処理したのちに得ることができる。酸性処理を、無機酸で、好ましくは0.1N HCl溶液にスポンジを浸すことにより、実施する。そののち、酸性処理したスポンジを、冷凍および凍結乾燥により、またはエタノールに浸し空気乾燥することにより、脱水する。
【0022】
本発明による方法をコラーゲンスポンジの作製のために用いることにより、抗菌特性を有する孔質コラーゲンスポンジを作製することもまた可能である。この目的を達成するために、抗菌性活性物質を、冷凍に先立ってコラーゲン懸濁液に加えることができる。好ましい抗菌性活性物質はスルファジアジン銀であり、懸濁液中のコラーゲンの量に対して、1重量%の量で添加する。
【0023】
前述の手段の代替として、孔質コラーゲン発泡体を、酸性処理のあとに、抗菌性活性物質を含有する溶液中に浸すことができる。次いで、コラーゲンスポンジを、冷凍により、または抗菌性活性物質がエタノール中で不溶性の場合は、エタノールに浸し次いで空気乾燥することにより、脱水することができる。
【0024】
本発明のさらなる主題は、つまり、前述の方法により作製された孔質コラーゲンスポンジ、および外傷包帯剤などの医薬目的のための作製物を製造するための前記スポンジの使用である。
【0025】
例1
スポンジコラーゲンを精製するための方法
WO 01/64046に記載の方法に従って得られた、酸性の媒体(pH3)中に沈殿したコラーゲン沈殿物を、ろ過により媒体から分離し、加圧下で、およそ84重量%の残余水分含有量となるまで搾り出す。この方法で得られたコラーゲン繊維を凍結乾燥し、約−20℃の温度での貯蔵用とする。
【0026】
121gの冷凍コラーゲン繊維を、2時間攪拌しながら、1300mlの水性0.5%(v/v)H溶液に懸濁した。それから、溶液のpHをNaOHの5N溶液で12.4の価に調整し、コラーゲン繊維を溶かした。得られたコラーゲン溶液をろ過して不溶性成分を除去し、それから2600mlエタノール(濃縮、98%)中で強く攪拌しながら穿孔した。そこで沈殿したコラーゲンは白色または薄い黄色がかった色で、繊維状の外見を有した。
【0027】
コラーゲン繊維を、媒体から、ろ過、加圧下で搾り出しにより、または遠心分離により遊離し、次いで、300mlの水性0.5%(v/v)H溶液中で、攪拌しながら、均質的に懸濁した。溶液のpHを、5N HCl溶液で6.5の価に調整した。pHの調整を、繊維沈殿物の形成を避けるために、強く攪拌しながら実施した。このやり方により、2.8重量%の濃度のコラーゲンの滅菌コラーゲン溶液を得た。
【0028】
全ての方法のステップを室温で実施し、コラーゲンと接触する全ての対象を、使用する前に、0.5重量%のH溶液ですすいだ。
【0029】
例2
精製したスポンジコラーゲンを用いた、孔質スポンジの作製
例1による方法を用いて得られた、2重量%のコラーゲン濃度でpH価6.5のスポンジコラーゲンの溶液を、Ultra Turraxの補助で強く攪拌することにより発泡させた。コラーゲン発泡体を、ポリプロピレンまたはポリスチレン製の長方形の型に流し込んだ。発泡体の層の高さを、2〜8mmの間で変化させた。コラーゲン発泡体を型の中で−40℃で冷凍し、それから凍結乾燥した。
【0030】
例3
沈殿したスポンジコラーゲンに基づいた、スポンジの作製
スポンジコラーゲンの孔質スポンジを、例2に記載のように作製した。次いで、凍結乾燥スポンジを、0.1N HCl溶液に浸すことによる30分の酸性処理を施した。この処理のあとに、スポンジを蒸留水で、最後の酸の残留物を除去するまで、繰り返し洗浄した。
これらのスポンジを、穏やかな湿潤状態で冷凍し、凍結乾燥により乾燥させた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海洋コラーゲンを精製するための方法であって:
− 酸性媒体に沈殿した、コラーゲン沈殿物の水分含有量を、95〜70%に調整する、
− コラーゲンを、水性H溶液に懸濁する、
− コラーゲンを、コラーゲン懸濁液のpHを、11〜13の価に調整することにより、可溶化する、
− コラーゲンを、水混和性有機溶媒で沈殿する、
− コラーゲンを、ろ過する、
− 沈殿コラーゲンの水分含有量を、95〜70重量%に調整する、
− コラーゲンを、水性H溶液に再懸濁する、そして
− 得られたコラーゲン溶液のpHを、5〜7の価に調整する
ことを含む、前記方法。
【請求項2】
成分含有量を、90〜80重量%に調整することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
水性H溶液が0.1〜1.0%(v/v)、好ましくは0.5%(v/v)のH含有量を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
有機、水混和性溶媒を、エタノールおよびイソプロパノールを含む群から選択することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の方法に従って精製されることを特徴とする、海洋コラーゲン。
【請求項6】
孔質スポンジ、繊維材料または膜を製造するための、請求項1〜4のいずれかに従って精製される海洋コラーゲンの使用。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載の方法に従って精製される海洋コラーゲンから、孔質スポンジを精製するための方法であって、
− 海洋コラーゲンの溶液を発泡させる、または海洋コラーゲンの溶液に含有される空気を吸引で除去する、
− 前記発泡したまたは脱気したコラーゲン溶液を冷凍する;そして
− 前記冷凍コラーゲン溶液を凍結乾燥する
ことを特徴とする、前記方法。
【請求項8】
コラーゲン溶液が0.5〜5重量%のコラーゲン含有量を有することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
抗菌性活性物質を、発泡または脱気に先立ってコラーゲン溶液に添加することを特徴とする、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
コラーゲン溶液が、抗菌性活性物質を、溶液のコラーゲン含有量に対して、1重量%の量で抗菌性活性物質を含有することを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
コラーゲンスポンジを、その凍結乾燥の後で、無機酸、好ましくは0.1N HCl溶液で処理し、その後、もはや酸性を検出しなくなるまでずっと水で洗浄することを特徴とする、請求項7または8に記載の方法。
【請求項12】
酸性で処理するスポンジを抗菌性活性物質の溶液に浸すことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
浸したあとに、スポンジを、冷凍および凍結乾燥により、またはエタノール中に浸し空気乾燥することにより脱水することを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
抗菌性活性物質がスルファジアン銀であることを特徴とする、請求項9、10、12または13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
請求項7〜14のいずれかに従って作製されることを特徴とする、海洋コラーゲンの孔質スポンジ。
【請求項16】
請求項7〜14のいずれかに記載の方法に従って作製される海洋コラーゲンの孔質スポンジの、医薬品の作製のための使用。

【公表番号】特表2008−531774(P2008−531774A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556523(P2007−556523)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【国際出願番号】PCT/EP2006/001313
【国際公開番号】WO2006/089660
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(507283986)ローマン ウント ラウシャー ゲーエムベーハー ウント ツェーオー.カーゲー (4)
【Fターム(参考)】