説明

海洋浮遊物回収フェンス

【課題】海洋上を漂流するごみや流木等の浮遊物を、海洋上で浮遊しながら回収する海洋浮遊物回収フェンスを提供する。
【解決手段】捕捉材1の上下方向の中程に所定間隔に浮力体を配置し、さらに、縦方向に所定の間隔に剛性体製の支持材5を取り付け、湾曲状に撓むことが可能な長尺材による弓張り材7を下部に取り付けた網状体による抵抗体6を捕捉材1にロープ状の懸垂材10によって所定間隔に連結して一体にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋上を漂流するごみや流木等の浮遊物を、海洋上で浮遊しながら回収するようにした回収フェンスに関する。
【背景技術】
【0002】
海洋上を漂流するごみや流木等の浮遊物は、海岸に漂着して散在してしまい、部分的に回収されるか、そのまま放置されているのが実情である。
【0003】
オイル漏れなどの場合には、オイル漏出個所の周りやその付近にオイルフェンスを設置することによって漏出したオイルの拡散を防止している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、埋め立て工事等の土砂の流出による海洋の汚濁防止を防ぐためには、沿岸に沿った埋め立て海域に土砂の流出を防ぐ仕切り材を配置する技術がある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−325134号公報
【特許文献2】特開2009−114819公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の技術においては、広大な海洋に漂流しているごみ等の浮遊物は、海岸に散在してしまうか、放置されてしまうのが実情である。また、沿岸で行う埋め立て工事の際に発生する土砂の流出や、タンカーのオイル流出等に対しては、局所的にシルトフェンスやオイルフェンスを係留固定して対応するものであるが、係留用のシンカーやアンカーの設置が困難であり、大型のものはクレーン船等が必要であるので、設置作業が困難であり、さらに強度上の問題もある。
【0007】
本発明は、このような問題を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明は、網状体による捕捉材の上下方向の中程に所定間隔に浮力体を配置し、さらに、縦方向に所定の間隔に剛性体製の支持材を取り付け、湾曲状に撓むことが可能な長尺材による弓張り材を下部に取り付けた網状体による抵抗体を、上記捕捉材にロープ状の懸垂材によって所定間隔に連結して一体にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
このようにした本発明は、帯状のかたまりになって吹送風によって漂流してくる浮遊物を捕捉材によって回収しながら漂流し、適宜に浮遊物回収フェンスごと回収基地まで曳航して海上でまとめて回収することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例を示す正面図
【図2】側面図
【図3】弓張り材の一例を示す断面説明図
【図4】弓張り材の変形応力を示すグラフ
【図5】懸垂材と弓張り材の連結状態例の説明図
【図6】支持ブイの説明図
【図7】浮遊物回収フェンスの海上における平面説明図
【図8】浮遊物回収フェンスの海中における説明図
【図9】回収状態の説明図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0012】
図において、1は、網状体による捕捉材であり、繊維素材を網状に編んで構成することができ、例えば魚網等を用いることができる。網目の大きさは任意であるが、浮遊物より小さくする。この捕捉材1の大きさは、本実施例では、幅50m、高さ1mとした。
【0013】
上記捕捉材1には、上下方向の中程に所定間隔に窓2を設け、その窓2に浮力体3を配置し、ロープ等の抗張力材4によって捕捉材1に取り付けてある。この抗張力材4は捕捉材1の幅方向の全長にわたってわたしておくとよい。なお、この窓は必ずしも必要なものではなく、なくてもよいもので、その場合には、浮力体を捕捉材の側面に取り付けることになる。
【0014】
捕捉材1には、さらに、縦方向に所定の間隔に支持材5が取り付けてある。この支持材5は、合成樹脂や金属等による剛性体製のパイプや棒状体であり、下部に重錘5Aを取り付けたり埋設したりして下部の方が上部より重くなるようにしてある。この支持材5によって、捕捉体1は全幅にわたって浮力体3によって浮上する海上(水上)部1Aおよび海中(水中)部1Bが上下方向に大きく撓んだり屈折したりしないようにしてある。なお、この支持材5の長さは捕捉材1の縦方向の必ずしも全長でなくてもよいが、上端は捕捉材1の上端と同じかそれより高くしておくことにより捕捉材1の海上に出る海上部が下方に下がったり撓んだりしないようにする。この支持材5の取り付け間隔は、本実施例では約3mである。
【0015】
また、捕捉材の網目が全面にわたって均一である必要はなく、必要に応じては左右両側に向かって中央より大きくして中央付近より両側の方の水の通りをよくする(抵抗を小さくする。)ようにしてもよい。これによって、後述するように海上に配置させた際に、捕捉材を湾曲形状に形成し易くすることができる。
【0016】
上記捕捉材1の海上部の高さは捕捉した浮遊物が飛び出さない海上部の高さとする。捕捉材1は風波の影響で大きなロール運動が発生することから、浮力体3への影響を少なくするため、浮力体3と捕捉材1は直接接続しない構造がよい。
【0017】
6は、抵抗体であり、これも繊維素材を網状に編んで構成することができ、これも魚網等を用いることができる。この抵抗体6の網目は上記捕捉材1と同等かそれより大きい網目が好ましい。抵抗体6の幅は捕捉材1と同等の幅であり、高さは網目の大きさによって変わるが捕捉材1より低くてもよい。
【0018】
この抵抗体の網目も全面にわたって均一である必要はなく、必要に応じては左右両側に向かって中央より大きくして中央付近より両側の方の水の通りをよくする(抵抗を小さくする。)ようにしてもよい。これによって、後述するように海中に配置させた際に、抵抗体を湾曲形状に形成し易くすることができる。
【0019】
この抵抗体6の下部には、弓張り材7が取り付けてある。この弓張り材7は、弓のように力が作用すると湾曲状に撓むが屈折することがないようにした長尺材である。例えば、図3に示すような、ゴムや合成樹脂のような弾性体8中に金属製のチェーン9を構成する各リングを離間させ、その間にも弾性体8が介在するようにしてチェーン9を埋設した複合材製の長尺材である。なお、長尺材はこのような構造の他にも、ゴムや合成樹脂のような弾性材中にコイル、金属ワイヤーもしくはパイプを埋設した複合材製の長尺材等のように湾曲状に撓むことが可能で海水に耐久性のある材料であればよい。
【0020】
このように抵抗体6に弓張り材7を取り付けることにより、抵抗体6は幅方向には湾曲状に撓むことができ、屈折したり曲折したりすることがない。
【0021】
このようにした抵抗体6は上記捕捉材1に懸垂材10によって連結してある。この懸垂材10は、一般的には、魚網に使う繊維素材製の可撓性のあるロープでよい。その長さは、使用する海域によって異なるが一般には5〜10m程度であるが、それ以上長い場合も考えられる。上記弓張り材7の重量は、捕捉材1に垂下された抵抗体6が海中で安定して垂下することができる程度の重さである。
【0022】
上記懸垂材10の上端は、捕捉材1に取り付けてある支持材5の下部に取り付け、下端は、抵抗体6に連結し、図5に示す如く、抵抗体6に取り付けた弓張り材1に接続するものとする。これによって、捕捉材1と抵抗体6とは一体の構造となる。
【0023】
11は、捕捉材1の両端に取り付ける支持ブイである。図6に示す如く、この支持ブイ11を構成する浮力体12に懸垂重錘13を垂下索14によって垂下させる。浮力体12には捕捉材1への連結環15と回収時の牽引ロープ連結環16が取り付けられているとよく、さらに、図示しないが、漂流移動中の位置情報を発信する発信装置や標識装置を取り付けるとよい。
【0024】
また、必要に応じて、捕捉材1の両側にパラシュートアンカーや吹き流しを取り付けてもよい。
【0025】
以上によって、海洋浮遊物回収フェンスは構成される。
【0026】
上述した構成の作用について説明する。
【0027】
一般に海上を浮遊する漂流物の移動速度は潮流よりも海上風の影響を受けることが知られ、海上風の速度の3%程度の速度(吹送風)で海上を移動する。また、海上風の影響を受けない深度の潮流の速度は吹送風より遅く、流れの方向は潮汐活動による。
【0028】
そこで、海洋浮遊物回収フェンスを沖合の潮目付近に配置すると、浮力体3により捕捉材1の上部の海上部1Aが海面上に突出し、全体は潮流に対してほぼ直交するようにして湾曲状に広がった状態で安定する。
【0029】
海中にある抵抗体6は弓張り材7によって湾曲形状を形成し、かつその形状を保持することができる。また、捕捉材1は吹送風と海水の抵抗によって湾曲状態を保つことができる。
【0030】
この湾曲状に広がった状態は、図7に示す如く、両側の支持ブイ11により浮遊物回収フェンスの中央より両側は流れに対する抵抗を大きくして中央と両側との漂流速度に差を設けることによって湾曲状に形成することができる。なお、上記した如く、捕捉材や抵抗体の網目の大きさを中程と側部とを変えることによっても湾曲状を形成することが可能である。
【0031】
また、漂流速度を調節するために、上記の如く、パラシュートアンカーや吹き流しを取り付けてもよい。
【0032】
そこで、海面の捕捉材1は吹送風の影響で移動し、海中の抵抗体6は潮流によりそれより遅く移動することになる。この捕捉材1と抵抗体6の流速の差が抵抗力となって浮遊物回収フェンスの移動速度は吹送風の速度より遅い速度で漂流することになる(図8)。なお、捕捉体1と抵抗体6とを懸垂材10によって間隔を設けて連結して捕捉材1と抵抗体6とを連続させずに離したことにより、確実に抵抗差を生じさせることができ、回収フェンスの移動速度を吹送風の速度より遅くすることが一層確実となる。
【0033】
これにより、浮遊物回収フェンスは吹送風によって流されてくる漂流物を待ち受けることができることになり、帯状のかたまりになって吹送風によって漂流してくる浮遊物は、捕捉材1に順次捕捉されることになる。浮遊物は湾曲した捕捉材1によってまとまって捕捉された状態で捕捉材1と共に漂流することになる。
【0034】
このようにして捕捉された漂流物は、適宜に浮遊物回収フェンスごと回収基地まで曳航して海上で回収することができる。
【0035】
以上のようにして海上で浮遊物を回収することにより、従来海岸の広い範囲にばらばらに漂着して回収作業が困難となったごみ等の漂流物をまとめて一個所で回収することが可能となる。
【0036】
なお、上記の説明は、ごみ等の浮遊物の回収用フェンスとして説明をしたが、捕捉材を網状体から既存の不透過のフェンスに換えることによって、海上で漏出されたオイルのオイルフェンスとしても同様に利用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 捕捉材
1A 海上部
1B 海中部
2 窓
3 浮力体
4 抗張力材
5 支持材
5A 重錘
6 抵抗体
7 弓張り材
8 弾性体
9 チェーン
10 懸垂材
11 支持ブイ
12 浮力体
13 懸垂重錘
14 垂下索
15 連結環
16 牽引ロープ連結環

【特許請求の範囲】
【請求項1】
捕捉材の上下方向の中程に所定間隔に浮力体を配置し、さらに、縦方向に所定の間隔に剛性体製の支持材を取り付け、湾曲状に撓むことが可能な長尺材による弓張り材を下部に取り付けた網状体による抵抗体を、上記捕捉材にロープ状の懸垂材によって所定間隔に連結して一体にしたことを特徴とする海洋浮遊物回収フェンス。
【請求項2】
請求項1において、捕捉材の上部を海面上より突出させたことを特徴とする海洋浮遊物回収フェンス。
【請求項3】
請求項1において、捕捉材の両側にそれぞれブイを接続したことを特徴とする海洋浮遊物回収フェンス。
【請求項4】
請求項1、請求項2もしくは請求項3において、捕捉材を網状体としたことを特徴とする海洋浮遊物回収フェンス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−246634(P2012−246634A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117472(P2011−117472)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(505127721)公立大学法人大阪府立大学 (688)
【出願人】(502435889)学校法人長崎総合科学大学 (20)
【出願人】(000110882)ニチモウ株式会社 (52)
【出願人】(502183832)株式会社アキト (2)
【Fターム(参考)】