説明

海洋生物の除去装置

【課題】 漁網に入ったクラゲなどを効率的に除去することが可能であり、使用に際し操作性に優れ、大型の越前クラゲなどを効率的に吸い込んで破砕処理を行うことが可能な海洋生物除去装置の提供。
【解決手段】 海に浮遊するクラゲ等の海洋生物を吸引して破砕する吸引破砕手段を主輸送管12内に設けてなる海洋生物除去装置において、先端側に海洋生物を導入する開口部16Aを有し、後端側の末端部が主輸送管12の吸込口に接続されるとともに、開口部16Aから末端部にかけて内径が徐々に細径となる形状に形成され、開口部16Aの開き角度を110°〜170°としたラッパ形状の吸引ガイドを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋生物の除去装置に係わり、例えば定置網漁等で漁網の中に入った越前クラゲなどの海洋生物を網揚げ作業前に除去するために使用する除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、海の状況変化により大量のクラゲが定置網に入る事例が多く発生し、クラゲの毒や酸欠によって魚が大量死したり漁網が破損するなど、漁業関係者の間で大きな問題となっている。かかる場合、次善策として多くの定置網漁業者はタモ網などでクラゲを掬い上げ漁網の外に除去する等して対処しているが、このような作業は漁業者に体力的、時間的に大きな負担を強いるものであり、又長時間の作業によって漁船が消費する燃料も莫大となるため、実効性のある対策が望まれていた。
【0003】
従来、定置網に入ったクラゲを除去する装置として、特開2008−296110号公報(特許文献1)記載の発明が公知であるが、同公報記載の「クラゲ除去方法及び装置」は、クラゲを水とともに吸引して破砕する吸引破砕ポンプと、吸引破砕ポンプの吸込み口付近に向かう水流を水面下に生じさせる水流発生装置を備えている。
【0004】
また、図8及び図9は、従来の大型クラゲ用クラッシャーポンプの一例を示した側面図、並びに使用時の状況を示した説明図である。図8に示される大型クラゲ用クラッシャーポンプ100は、漏斗状に形成された円錐板(吸込み口)102、パイプ状部104,パイプ状部104内部に配設された吸引破砕ポンプ106を備えている。当該クラッシャーポンプ100を使用する場合は、図9に示されるように、円錐板102を下方に向けて水中に沈め、クラゲを海水とともに吸い込んだ後、吸引破砕ポンプ106によって破砕して、漁網の外に排出する。
このようなクラッシャーポンプ100は、道南鉄工株式会社(http://www.donan-tekkou.com/)においても製造されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−296110号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の発明は吸引破砕ポンプ、水流を水面下に生じさせる水流発生装置を備えているが、吸込み口を下方に向けて水中に沈めながら作業を行う関係上、クラゲをその傘頂部から吸い込む事となり、クラゲの傘径が吸込み口の内径を3〜4倍を超えてしまうと、その大きさ故に吸込み口を閉塞してしまい、吸込み口にクラゲが引っ掛かる現像が頻発することが想定される。
【0007】
また、図8及び図9に示される大型クラゲ用クラッシャーポンプ100は、先端に内径約90cmの漏斗状に形成された円錐板(吸込み口)102が取り付けられ、パイプ状に形成されたパイプ状部104における内側の中心に、吸引破砕ポンプ106が配設され、当該吸引破砕ポンプ106によってクラゲを切断するとともに、海水を引き込んで後方へ流す4枚の破砕羽根106Aが設けられている。
【0008】
図8に示されるクラッシャーポンプ100では、円錐板102の開き角度θは90度未満と、外観的には略鋭角状に形成されているため、円錐板102の開口端102Aと、破砕羽根106Aとの間の距離が必然的に遠くなる。この結果、クラゲが円錐板102から多少なりとも離れると、十分な吸込力をクラゲに作用させることができない状況に至るという課題があった。つまり、このクラッシャーポンプ100では円錐板102の開放端の内径をクラゲの傘径よりも大きく設定し、且つクラゲと円錐板との間の距離を極力短くなるように操作しなければクラゲをスムーズに吸い込むことができない場合が多かった。
【0009】
さらに、クラゲを切断する破砕羽根106Aは吸込力を確保する観点から、円錐板102の根元付近に近接して配設されているため、例えば、円錐板102を取り外してメンテナンス等を行うに際しては破砕羽根106Aが露出する格好となり、安全上の観点から細心の注意を払って作業を行う必要が生じ、取り扱い上不便であった。また、傘径の大きなクラゲを吸い込むためには円錐板102自体の大型化が避けられず、例えば円錐板102自体の重量が100kgを越える場合もあり、使用時のハンドリング上も不利であった。
【0010】
本発明は、このような諸事情に対処するために提案されたものであって、漁網に入ったクラゲなどを効率的に除去することが可能であり、使用に際し操作性に優れた海洋生物除去装置を提供することを目的とする。
また、吸引特性に優れ、大型の越前クラゲなどを効果的に吸い込んで破砕処理を行うことが可能な海洋生物除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、海に浮遊するクラゲ等の海洋生物を吸引して破砕する吸引破砕手段を主輸送管内に設けてなる海洋生物除去装置において、先端側に海洋生物を導入する開口部を有し、後端側の末端部が前記主輸送管の吸込口に接続されるとともに、該開口部から末端部にかけて内径が徐々に細径となる形状に形成され、該開口部の開き角度θを110°〜170°としたラッパ形状の吸引ガイドを具備したことを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1において、前記吸引ガイドの開口部の内径Dが、末端部の内径dに対し、1.5〜5.0倍であることを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2において、前記吸引ガイドの内面は、曲面で形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項1又は2において、前記吸引ガイドの内面は、平坦な形状に形成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のうち何れか1項において、前記吸引ガイドの内面における前記主輸送管の吸込口の近傍付近に、傾斜角の緩くなる緩勾配部が面取り部とともに形成されていることを特徴とする。
【0016】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5のうち何れか1項において、前記吸引破砕手段における破砕羽根は、前記主輸送管の吸込口よりも内側となる位置に設置されていることを特徴とする。
【0017】
請求項7記載の発明は、請求項1〜6のうち何れか1項において、前記吸引ガイド、吸引破砕手段を備えた主輸送管に対し、該主輸送管の吐出口に延長用輸送管が接続可能であり、これらの吸引ガイド、主輸送管、延長用輸送管の3つの各ユニットは着脱自在であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
上述のように、各請求項記載の発明によれば、定置網などの漁網に入った大型の越前クラゲなどの海洋生物を効率的に除去することが可能であり、運搬・使用に際しての操作性・利便性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る海洋生物除去装置の側面図である。
【図2】同じく、本発明の一実施形態に係る海洋生物除去装置の使用時の状況を模式的に示す説明図である。
【図3】同じく、本発明の一実施形態に係る海洋生物除去装置の要部である吸引ガイドの形状を模式的に示す断面図である。
【図4】同じく、本発明の一実施形態に係る海洋生物除去装置の要部である吸引ガイドの具体的な形状を示す側面図である。
【図5】同じく、本発明の一実施形態に係る海洋生物除去装置の要部である吸引ガイドの開口部の中心軸上における吸引流速を測定した結果を示すグラフである。
【図6】同じく、本発明の一実施形態に係る海洋生物除去装置の海中での使用状況につき側面側から視た説明図である。
【図7】同じく、本発明の一実施形態に係る海洋生物除去装置による除去作業時における吸引ガイド付近の状態を示す概略斜視図である。
【図8】従来の大型クラゲ用クラッシャーポンプの側面図である。
【図9】従来の大型クラゲ用クラッシャーポンプの使用状況の説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る海洋生物除去装置の好適な実施形態について添付図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る海洋生物除去装置の側面図、図2は本実施形態に係る海洋生物除去装置の使用時の状況を模式的に示す説明図である。
図1に示されるように、本実施形態における海洋生物除去装置10は、主輸送管12と、延長用輸送管13と、吸引破砕手段としての油圧モータ14Aと、吸引ガイド16とを主要な要素としている。
【0021】
主輸送管12はパイプ状をなし、その吸込口に後述する吸引ガイド16を取り付けるフランジ12A、その吐出口に延長用輸送管13を取り付けるフランジ12Bが、それぞれ設けられている。延長用輸送管13にはフレキシブルパイプ13Aが後部側に接続されている。なお、主輸送管12、延長用輸送管13、吸引ガイド16の計3つの各ユニットは、それぞれ着脱自在に構成されており、除去するクラゲの大きさなど、その用途に応じて適宜、大きさ、長さの異なるユニットを組み合わせて使用することができるようになっている。
【0022】
主輸送管12には吸引破砕手段14として、油圧モータ14Aが設置されているとともに、この油圧モータ14Aは主輸送管12内側の伝達軸14Bを経て吸込側のインペラ(破砕羽根)18と軸接続され、インペラ18を回転駆動するようになっている。インペラ18は主輸送管12の吸込口となるフランジ12Aよりも、やや内側となる位置に設けられ、主輸送管12の吸込口の端面からは突出しないようになっており、除去作業時における不要物等の巻き込みを防止し、安全性の向上を図っている。吸引破砕手段14は、これに限らず、吸込力並びに破砕力を備えている他の駆動装置を用いることも可能である。
【0023】
図2に示されるように、油圧モータ14Aは船舶50のエンジン52の動力を利用する油圧ポンプ54から、管路、各種の制御弁等を経て供給される作動油の油圧によって回転駆動され、伝達軸14Bを介してインペラ18を回転させるようになっている。インペラ18の回転方向は海中にて吸込力を作用させる方向となる。
【0024】
図3は吸引ガイド16の形状を模式的に示す断面図、図4は吸引ガイド16の具体的な形状を示す側面図である。
図3に示されるように、本実施形態における吸引ガイド16は、その開き角度θa=110°からθb=170°の範囲となるように形成されている。
【0025】
また、図4(a)に示される吸引ガイド16Yは内面が凸状となる略楕円状の曲面を描いた流線形に形作られているとともに、図4(b)に示される吸引ガイド16Zは内面が平坦に形成され、両者ともに吸引ガイド16,16Y,16Zの内側には突起物や角が一切、存在しないように形成されている。
特に、図4(b)に示される吸引ガイド16Zの内面には、主輸送管12との接続部分近傍に勾配の異なる緩勾配部16Cが形成されているとともに、その接合部16Dに面取り部16Eが形成され、内面形状が吸込口12Cと接続する部分にかけて緩やかとなっている。これによって、吸込口12C付近での縮流の発生をより確実に防止することが可能となる。
【0026】
このように、本実施形態では、開口部16Aの開き角度を110°〜170°の範囲とした吸引ガイド16を主輸送管12の前方に接続している。このことは、吸込口12Cと開口部16Aの端部との間の距離Lを短縮することにも繋がり、結果的に開口部16A付近における吸込力を一定以上に維持することを可能にしている。これらの構成によって、吸込力の低下を防止することが可能であるとともに、クラゲの傘径よりも小さい吸引ガイド開口径となるDでも吸引ガイド16の内面を流線形にしてクラゲを吸い込む際の流動抵抗を減少させているので、大型のクラゲを効率的に主輸送管12内へ吸い込むことができる。これにより、主輸送管12内にて、クラゲをインペラ18によって破砕し迅速に漁網60の外側へ排出することが可能である。
【0027】
また、吸引ガイド16は一般に耐食性に優れるステンレス鋼やFRP等によって製作されるが、前述したように、その内面は平坦又は曲面を描いた流線形に形作られており、突起物が一切存在しないように形成されている。これによって、大型クラゲの吸込み時に引っ掛かりの原因となる内面の突起する部分を完全に無くすることができ、主輸送管12の吸引口12Cの内径dの約6倍の傘径を有する大型クラゲも容易に吸引、破砕して廃棄場所へ排出することが可能である。加えて、フッ素処理加工などの摩擦低減加工を吸引ガイド16の内面に施すことにより、吸込み時の摩擦力をさらに減らすことが可能である。
【0028】
次に、吸引ガイド16における開口部16Aの開き角度を110°〜170°の範囲とした理由等について、図5のグラフに基づいて説明する。
図5のグラフは、吸引ガイドにつき開き角度を90°から170°まで変化させつつ、開口部16Aの中心軸上の吸引流速を測定した結果を示しており、横軸を吸引ガイド16の開き角度θ、縦軸を吸引ガイド16の開口部16Aの中心部並びに主輸送管12の吸込口12Cの中心部における流速比(d/D)として、実験結果をプロットしたものである。
【0029】
図3にて主輸送管12の吸込口12Cの内径をd(=吸引ガイド16における末端部16Bの内径)、吸引ガイド16の開口部16Aの内径をDとする。図5に示されるように、D(D/d=3〜5)とした場合、吸引ガイド16の開き角度θが110°未満(要するに鋭角状)になると、吸込口12Cから吸引ガイド16の開口部16Aの端部との間の距離が遠くなる結果、開口部16Aの端部近傍に浮遊するクラゲを主輸送管12内に引き込む性能が、流速比が0.1前後と、極端に悪化することが図5のグラフより理解できる。
【0030】
また、吸引ガイド16の開口部16Aの開き角度θが170°〜180°になると、主輸送管12から開口部16Aの端部との距離が近くなり、吸引流速は上昇するものの、吸込口12C(吸引ガイド末端部16B)での縮流が大きくなるため、この部分の見掛けの断面積が小さくなり、吸引ガイド末端部16Bと吸込口12Cとの間のつなぎ目で時々詰まりを発生するようになる。
このため、吸引ガイド16における開口部16Aの開き角度を110°〜170°の範囲にすることが吸引効率、傘径の大きなクラゲを除去する上で、適当であることが理解できる。
【0031】
さらに、本実施形態における吸引ガイド16の開口部16Aの内径Dは、主輸送管12の内径dの1.5〜5.0倍にしているが、その理由は以下の通りである。
先ず、1.5倍としたのは吸引ガイド16の前方の吸込力を減少させることなく、吸引ガイド16の開口部16Aより大きな傘径のクラゲであっても、開口部16Aにて引っ掛かることなく安定した吸引を維持するための最小の内径である。また、吸引ガイド16の開口部16Aの背後から前方へ回り込む海水の量を抑制し、吸引ガイド16前方軸方向の吸込力を向上させることを同時に配慮したものである。
【0032】
一方、5.0倍としたのは、大型クラゲの傘径が開口部16Aの内径よりも大きな場合でも吸引ガイド16前方のクラゲを容易に吸い込むことができ、且つ、作業時に除去装置10の運搬・移動等、各種の操作を行う場合に重量や大きさの点から効率的なハンドリングを可能とする限界の内径である。
また、吸引ガイド16の内面は、平坦又は曲面を描いた流線形に形作られ、大型クラゲの吸込み時に引っ掛かりの原因となる突起する部分を完全に無くし自然な流線を得るようにしているので、水深1〜3mの場所で側方吸引することにより、吸込口12Cの内径の約5倍の傘径のクラゲについても、容易に吸引・破砕処理して廃棄場所へ排出できる。
【0033】
以上のように、吸引ガイド16の開口部16Aの開き角度は、開口部16Aの内径Dが一定の条件とした場合に、110°未満になると、主輸送管12の吸込口12Cから開口部16Aの開放端までの距離が遠くなって吸引効率が低下し、仮にクラゲが中心軸上に位置していたとしても、吸込力を十分に作用させることができなくなり、クラゲを吸い込む確率が大幅に減少する。従って、吸込口12Cで縮流が発生しない条件として、見掛け上の吸込口12Cの内径を小さくすることなく、且つ吸込口12Cから吸引ガイド16の開放端までの距離が短いことが先ず求められる。さらに、吸込力を高く維持しながら吸込み時の流動抵抗を少なくすることが、吸引ガイド16の寸法等を設定する上で必要な条件となる。
【0034】
具体的には、吸引ガイド16は開口部16Aの開き角度を110°〜170°としたラッパ形状とし、且つ開口部16Aの内径は末端部16Bの内径dに対し1.5〜5.0倍となるようにすることにより、吸込力の低下を防止することができる。好ましくは縮流を抑制し、且つ図5のグラフからも理解できるように、開口部16Aの開き角度を120°〜160°、開口部16Aの内径Dを末端部16Bの内径dに対し1.5〜4.0倍とすると、より確実に吸込力を維持し得る。
【0035】
次いで、前述のように構成した本実施形態の海洋生物除去装置10を使用してクラゲの除去作業を行った場合の実証結果について説明する。
図6は本実施形態に係る海洋生物除去装置10の海中での使用状況につき側面側から視た説明図、図7は除去作業時における吸引ガイド16付近の状態を示す概略斜視図である。
【0036】
図2及び図6,図7に示されるように、海洋生物除去装置10は船舶50に対し、補助ロープ56、並びに甲板上のクレーン58等により吊り下げ保持された状態で使用され、主輸送管12、延長用輸送管13,吸引ガイド16等が海水面X−Xに対し略平行となるようにして水深1〜3mの所で除去作業を行う。
なお、実験に際し、除去装置10に設置した吸引ガイド16は、その開き角度は150°、開口部16Aの径は1,000mm、主輸送管12に接続される末端部16Bの内径は300mmとした。
【0037】
準備作業は除去装置10を、海水面に浮遊しているクラゲの傍らへ,船舶50のクレーン58で移動させるとともに、吸引・破砕したクラゲを漁網(定置網)60の外へ排出するために、延長用輸送管13及びフレキシブルパイプ13Aの位置を決めて漁網60に固定する。そして、定置網漁で一定の網起こし後、魚は漁網60内の中央部から底部に位置する一方、クラゲは水面近傍に浮遊する性質を有することから、クラゲのみを選択的に吸引することができる。これによって漁網60内の魚を犠牲にすることがない。
【0038】
除去作業中は補助ロープ56、クレーン58によって除去装置10の位置を適宜調整しながら、吸引ガイド16の開口部16Aを海水面に浮遊するクラゲに近づけ、インペラ18による吸込力によって主輸送管12内へ吸引しながら破砕し、延長用輸送管13から漁網60の外に排出する作業を繰り返す。
なお、船舶50の側方に除去装置10を横付けして除去作業を行う他、海に浮かぶフロートの下部に除去装置10を設置して除去作業を行うことも可能である。
【0039】
このように、漁網60内のクラゲを排出した場合、主輸送管12内でのインペラ18による海水の流量を毎分18(m)に設定した場合、タモ網などでクラゲを掬い上げて漁網の外へ除去する方法と比較して、5分の1から10分の1に作業時間を短縮できることが確認された。つまり作業に要する労力、時間を短縮しながら、クラゲによる漁網60の損傷を防止することが可能となり、漁船が消費する燃料についても同時に低減することができる。
【0040】
また、本実施形態の海洋生物除去装置10は、少なくとも主輸送管12、延長用輸送管13、吸引ガイド16の3つのユニットから構成されているので、移動などのハンドリングが容易であるとともに、且つクラゲの大きさや発生量、漁網60の大きさ等に合わせて、例えば吸引ガイド16の開口部16Aの径や開き角度θ及び延長用輸送管13の長さを適宜設定する等、組み合わせを最適化することが可能である。
【0041】
以上説明したように、本実施形態の海洋生物除去装置10によれば、吸込力を高く維持することができるとともに、主輸送管12,吸引ガイド16を小型化しても大型のクラゲを吸引して破砕処理することができるので、漁業に悪影響を及ぼすクラゲを短時間、且つ少ない作業手間で処理し得る。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上説明したように、本発明によれば、クラゲ等の除去作業を短時間で容易に行うことが可能であり、定置網漁などに際しての漁業者の作業負担等を軽減することができる。
【符号の説明】
【0043】
10 海洋生物の除去装置
12 主輸送管
12A 12B フランジ
12C 吸込口
13 延長用輸送管
13A フレキシブルパイプ
14 吸引破砕手段
14A 油圧モータ
14B 伝達軸
16 16Y 16Z 吸引ガイド
16A 開口部
16B 末端部
16C 緩勾配部
16D 接合部
16E 面取り部
18 インペラ(破砕羽根)
50 船舶
52 エンジン
54 油圧ポンプ
56 補助ロープ
58 クレーン
60 漁網


【特許請求の範囲】
【請求項1】
海に浮遊するクラゲ等の海洋生物を吸引して破砕する吸引破砕手段を主輸送管内に設けてなる海洋生物除去装置において、
先端側に海洋生物を導入する開口部を有し、後端側の末端部が前記主輸送管の吸込口に接続されるとともに、該開口部から末端部にかけて内径が徐々に細径となる形状に形成され、該開口部の開き角度を110°〜170°としたラッパ形状の吸引ガイドを具備したことを特徴とする海洋生物除去装置。
【請求項2】
前記吸引ガイドの開口部の内径Dが、末端部の内径dに対し、1.5〜5.0倍であることを特徴とする請求項1に記載の海洋生物除去装置。
【請求項3】
前記吸引ガイドの内面は、曲面で形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の海洋生物除去装置。
【請求項4】
前記吸引ガイドの内面は、平坦な形状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の海洋生物除去装置。
【請求項5】
前記吸引ガイドの内面における前記主輸送管の吸込口の近傍付近に、傾斜角の緩くなる緩勾配部が面取り部とともに形成されていることを特徴とする請求項1〜4のうち、何れか1項に記載の海洋生物除去装置。
【請求項6】
前記吸引破砕手段における破砕羽根は、前記主輸送管の吸込口よりも内側となる位置に設置されていることを特徴とする請求項1〜5のうち、何れか1項に記載の海洋生物除去装置。
【請求項7】
前記吸引ガイド、吸引破砕手段を備えた主輸送管に対し、該主輸送管の吐出口に延長用輸送管が接続可能であり、これらの吸引ガイド、主輸送管、延長用輸送管の3つの各ユニットは着脱自在であることを特徴とする請求項1〜6のうち、何れか1項に記載の海洋生物除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−228213(P2012−228213A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99094(P2011−99094)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(506349418)株式会社赤井商会 (1)
【Fターム(参考)】