説明

海洋風車ポンプ装置および風車ポンプ式人工漁場

【課題】海洋において低層水を風車力で汲み上げる海洋風車ポンプ装置および、またこのポンプ装置に海洋生物育成手段を付設した浮遊漁礁多数で造成する高生産性の人工漁場を提供する。
【解決手段】上端に風車系と風向制御手段を備え、その風車系が海中のポンプと伝達手段を介して連系し、かつ海中で貫通接触する従浮体を有する長円筒状の塔ポンプ体と、下端に海底シンカーを連結し、海中の上部に主浮体を貫通接合し、回動尾翼体を装着するライザー管体とが、嵌合連結した海洋風車ポンプ装置であり、このポンプ装置に前記主浮体と接触する内周環材と外周環材の間に軟面材を架け渡し、海面浮状の複数の小浮体により海中に混合育成床を付設した風車ポンプ浮遊漁礁多数で構成する高生産性の風車ポンプ式人工漁場である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋風車ポンプ装置、およびこの風車ポンプ装置と混合育成床で構成する風車ポンプ浮遊魚礁を配置する風車ポンプ式人工漁場に関する。
【技術背景】
【0002】
従来より沿岸水域における魚類海藻の養殖場はあるが、沖合以遠の深い水域における下層水を風車駆動ポンプにより汲み上げ、増殖するプランクトンを利用する漁場はなかった。
また、原動機駆動ポンプを利用して下層水である深層水を汲み上げる同じ目的の試行装置である海水汲上げ装置が開発され(例えば、特許文献1参照。)、平成16年10月現在相模湾に稼動中である(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
以下に、図12により前記試行装置を説明する。図において、1は試行装置、2は係留索、10は本体部、12はバラストタンク、16は放水口、20は管塔部(表層水取水機構、放流水温度調節手段)、25は表層水取水口、30は深層水取水管、50は大径基部(動力装置及びポンプを格納)であり、試行装置は運転時海面に浮状し、動力装置で駆動する上下一体インペラポンプにより表層水取水口と深層水取水管先端取水口より吸水し、混合した水を放水口より海中に放水する。そして前記試行装置の実用型の動力には海水の表層深層の上下温度差による発電、即ち海洋温度差発電電力が予定されている。
【特許文献1】 特開2002−370690号公報
【非特許文献1】 「平成15年度 深層水活用型漁場造成技術開発 機器開発ワーキンググループ(報告書)」 社団法人 マリノフォーラム21 平成16年3月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記汲上げ装置の実用装置は、複雑な構造であり、海洋温度差発電ゆえにその適用海域が亜熱帯海域以南に限定され、また、混合水の放流にまかせ海藻や魚類などの海洋生物の育成手段を備えていない。
そこで本発明は、海洋の風力を動力源とする汲上げ放流動作を行うと同時に前記汲上げ装置が有していた前記問題を解決しようとするものであり、普遍的に賦存する海洋風力を利用する構造のシンプルな汲上げ装置すなわち海洋風車ポンプ装置であり、またこのポンプ装置に海洋生物育成手段すなわち混合育成床を備える風車ポンプ浮遊魚礁多数により造成する風車ポンプ式人工漁場を提供することを、目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そして、本発明は上記目的を達成するために、海洋風車ポンプ装置の基本構成が、上端部に風車と風向尾翼を備え、風車回転軸と両端にポンプインペラを装着したインペラ駆動軸が伝達ベルトで連係して下端部に前記インペラとケーシングによりポンプ部を構成し、さらに海中外側部と貫通する中抜円筒従浮体を海中に保持する塔ポンプ体と、数百メートルに及び下端の吸水口に海底シンカーを連結し上部海面下で中抜円筒主浮体と貫通接合し、回動尾翼体が装着されるライザー管体とが嵌合連結してなっているのである。
さらに別の発明である風車ポンプ式人工漁場は、前記ポンプ装置を中心にして円錐台状混合育成床を海中に装備した風車ポンプ浮遊魚礁の一以上を海洋に設置して、海洋生物の生産効率的に行い漁獲を可能とするものである。
【0006】
そして、前記基本構成の海洋風車ポンプ装置の風車系は、ガバナー型可変ピッチ式のブレードすなわち翼複数構成の風車と風向尾翼の方式、前記同様の可変ピッチ式風車と中間風向翼の方式、可変ピッチ式の固定コーニング風車の方式、可傾コーニング風車の方式および単純風車と電動スラスタ風向制御システムの方式の五通りがある。
まず、既存技術の可変ピッチ風車と風向尾翼の方式は、塔ポンプ体上部を挟んで前記風車と風向尾翼が装着され、可変ピッチ風車はハブに回動的に装着した各翼の基端部に、その翼弦に略垂直のレバー材の先端に錘であるガバナーを取り付けてあり、風向尾翼を風車の正反対側に塔ポンプ体中心線を含む面内かつ海面に鉛直に直接間接に装着する構造としたものである。なお、以下の課題解決手段において、この第1の課題解決手段と同一部分は省略する。
【0007】
また、第2の課題解決手段は、塔体上部と前記同型の風車の間に、中間風向翼を風車の正反対側に回動可能に装着するダウンウインド式風車であり、この風向翼は回転軸に対して上下対称形でその下半の重量をより大きい構造としたものである。
【0008】
また、第3の課題解決手段は、可変ピッチ式の固定後傾コーニング翼風車方式であり、所定角度後傾の複数のコーニング翼で構成した固定コーニング風車が装着される構造としたものである。
【0009】
また、第4の課題解決手段は、可傾後退ブレード即ち可傾コーニング翼風車方式であり、このコーニング風車は、各翼がハブに初期傾斜を付けてピン接合され、ハブから延伸する風車回転軸の貫通する滑環体が小止輪に当接して前記ハブより所定位置にあり、この滑環体と初期傾斜付き各翼とを連動材を介して連結し、滑環体とハブの間に前記小止輪越に予伸バネを配設し、この滑環体と回転軸の端部のバネ受の間にも予縮バネを配設する構造としたものである
【0010】
また、第5の課題解決手段は、電動スラスタ風向制御システムと単純風車のダウンウインド設置方式であり、この風向制御システムは、塔体上部設置の風力発電装置、風向風速センサを含むコントローラおよび二のサイドスラスタを逆方向に組み合わせたサイドスラスタ複合体二基を、円筒形従浮体の対称的な両外側に風車回転軸に平行に設置し、これらを電気的に接続して構成するものである。
【0011】
また、第6の課題解決手段は、海洋風車ポンプ装置の主浮体を中心に、内外周環材の間に軟面材を架け渡し、海面浮状の複数の小浮体を綱を介して全面に配設した混合育成床を海中に付置する風車ポンプ浮遊魚礁多数を、水深千メートルに及ぶ海域に所定間隔で設置した風車ポンプ式人工漁場である。
【0012】
また、第七の課題解決手段は、風車ポンプ式人工漁場により海洋生物の効果的生産を行うものである。
【0013】
上記第1の課題解決手段による作用は次のようである。
すなわち、主浮体の浮力により海洋に安定的にやや傾斜して自立する長い管状の、ガバナー式可変ピッチ風車と風向尾翼方式風車ポンプ装置は、所定の風速までは風向尾翼の作用により風車を風上に向け、風車の回転力でインペラ遠心ポンプを駆動することにより、低層水である海底水または深層水をライザー管下端吸水口より汲み上げ表層海中へ所定量を放流し、また海水の流れに対し水中重量略ゼロの回動尾翼体がライザー管体の下流側に回動しライザー管体の抵抗を低減する。
そして、所定以上の風速の強風の場合、可変ピッチ式風車は、所定の回転数に達するとガバナーの回転遠心力により各翼が回動し風車のピッチを変え、その回転数を略一定に維持し所定以上の受風圧力を抑制するので、風車ポンプ装置は風下側への傾斜が抑制されて、汲み上げポンプ作動を継続する。そして風速の低下とともにピッチ変化も戻ることになる。また、塔ポンプ体は海中の従浮体の浮力と略釣合っていて、風が風車回転面に対し斜めに吹く場合、風向尾翼に作用する尾翼に垂直な力により塔ポンプ体がその軸心に関し右または左にゆっくり回動することにより、風車は常時風上に向くのである。なお、以下の課題解決手段において、この第1の課題解決手段と同一部分の作用は省略する。
【0014】
上記第2の課題解決手段による作用は次のようである。すなわち、可変ピッチ式風車と中間風向翼方式風車ポンプ装置は、下半の重量が大きい風向翼は常時海面に対して鉛直状を維持し、斜風による力により前記同様に塔ポンプ体が回動することで風車の風上方向性を常時維持し、また所定以上の風速においても、前記同様翼のピッチの変化により風車ポンプ装置の風下側への傾斜を抑制して、汲み上げポンプ作動を継続する。
【0015】
上記第3の課題解決手段による作用は次のようである。すなわち、可変ピッチ固定コーニング風車方式風車ポンプ装置は、その固定後傾コーニング風車が、所定以上の強風時には前記同様風車ピッチの変化により風下側への傾斜を抑制され、また斜風の場合、後傾コーニング翼のジャイロ作用よる力が塔ポンプ体を回動し、風車が風上に向かう風向性が維持されるので、汲み上げポンプ作動を継続する。
【0016】
上記第4の課題解決手段による作用は次のようである。すなわち、可傾コーニング風車方式風車ポンプ装置は、斜風がこの可傾コーニング風車に当ると前記同様に各翼のジャイロモーメントにより風車を風上に向け、強風時は各翼が前記両バネに抗して次第に後傾し風車はすぼみ、風車回転数を減少してゆくと同時に風車の回転面積も減少し受風圧力を抑制し、上記同様風下側への傾斜を抑制し、本ポンプ装置の作動を継続する。そして風速の低下とともに前記両バネの作用で風車はすぼみを開いて行き受風圧力制御を果たす。
【0017】
上記第5の課題解決手段による作用は次のようである。すなわち、単純風車と電動スラスタ風向制御方式風車ポンプ装置は、その単純風車が、所定以上の風速を受けると、風向制御システムの一要素である塔上部の風力発電装置の発電電力により、水中の従浮体に対称的に配置された、サイドスラスタ複合体二基の一方の複合体の一の電動スラスタと反対側の複合体のスラスタが相互に逆噴流となるようにコントローラの指令により動作し、搭ポンプ体をゆっくり回動させ風車を風向から最大90度までずらし、大きな受風圧力を回避しながら、風車ポンプ装置自体の風下方向への傾斜を抑制して、汲み上げポンプ作動を継続する。
【0018】
上記第6の課題解決手段による作用は次のようである。すなわち、海面浮状の複数の小浮体を綱を介して全面に配設した混合育成床を、海洋風車ポンプ装置の主浮体を中心に海中に配置した風車ポンプ浮遊魚礁で構成する式風車ポンプ人工漁場は、インペラ遠心ポンプより混合育成床に放流された下層水である冷たく重い深層水が、海面浮状の複数の小浮体の波による上下の動揺に伴い動揺する軟面材上を外周へ流れる間に温かく軽い表層水と混合し、すなわち汲み上げた深層水と表層水との混合に動力を使わずに波力で行い、混合水は外周から流下し所定の水深で層状となり主に流れの方向に略水平に拡散する。
【0019】
上記第7の課題解決手段による作用は次のようである。すなわち、風車ポンプ式人工漁場において効果的に生育繁茂する海洋生物を、漁船が通年にわたり収穫するのである。
【発明の効果】
【0020】
上述したように本発明の各海洋風車ポンプ装置は、その風車系と風向制御手段がそれぞれ異なり、ガバナー型可変ピッチ式風車と風向尾翼、ガバナー型可変ピッチ式風車と中間風向翼、ガバナー型可変ピッチ式固定コーニング風車、可傾コーニング風車、単純風車と電動スラスタ風向制御システムであり、かつ塔ポンプ体とライザー管体が軸受を介した共通軸心廻りの回動可能な嵌合連結したものであり、風車に正面から風が吹けば風車回転力で汲上げ作動を行い、また水中の回動尾翼体が潮流等の下流側に常に回動しライザー管体の抵抗を低減し、風車ポンプ装置自体の傾斜を抑制する。
まず、可変ピッチ式翼風車と風向尾翼式の海洋風車ポンプ装置は、所定風速までは風車に風が斜めに吹く時、風向尾翼に生じる風向とのずれを減らす力により塔ポンプ体を回動し、すなわち風向を制御し、常に風上に向かう風車の回転力でポンプインペラを駆動し、下層水を汲み上げ放流し、そして所定風速を越えると風車翼のピッチが変わり風車に作用する強大な受風圧力を抑制し、ポンプ装置自体の大きな傾斜を抑制し、風車の先端部が波浪により受ける損傷を防止しながら、下層水の汲み上げ放流を継続する。なお、以下の発明の効果は、本第1のポンプ装置の発明と同一部分の同様の効果は省略する。
【0021】
また、可変ピッチ式風車と中間風向翼式の海洋風車ポンプ装置は、中間風向翼により前記同様に風車を風上に制御し、所定風速を超えると、風車翼のピッチが変わり風車に作用する受風圧力を抑制しながら下層水の汲み上げ放流を継続する。
【0022】
また、可変ピッチ式固定コーニング風車式の海洋風車ポンプ装置は、可変ピッチ式固定コーニング風車の翼のジャイロ作用により風上に向かうコーニング風車が、正面より受ける風による回転力でインペラポンプを駆動し、下層水を汲み上げ放流し、所定風速を超えると風車翼のピッチが変わり風車に作用する受風圧力を抑制しながら、下層水の汲み上げ放流を継続する。
【0023】
また、可傾コーニング風車式の海洋風車ポンプ装置は、可傾コーニング翼のジャイロ作用による回転力で塔ポンプ体を回動し、また所定風速を超えるとコーニング翼が傾斜を強め、コーニング風車のすぼみによる回転面積の減少により風車に作用する受風圧力を抑制しながら、受風圧力を抑制しながら下層水の汲み上げ放流を継続する。
【0024】
また、単純風車と電動スラスタ風向制御システムの海洋風車ポンプ装置は、所定風速までの斜風が風車に当っても、風向制御システムのコントローラの指令によるサイドスラスタ複合体に発現する力により塔ポンプ体を風向に回動し、風車を風上に向け、所定風速を超えると風向制御装置の作動で塔ポンプ体を風向からずらし、下層水の汲み上げ放流を継続する。
【0025】
本発明の風車ポンプ式人工漁場は、構成する各風車ポンプ浮遊魚礁の放流する下層水である深層水と表層水の混合水に含まれる栄養成分によりプランクトンが増殖し、これを摂取する魚類が蝟集し、生育し、混合育成床には海藻が生育する。
【0026】
風車ポンプ式人工漁場における海洋生物を生産する方法は、効果的に生育繁茂する海洋生物を漁船が通年にわたり収穫することを実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図1〜12に基づいて説明する。
図1に示すように本発明の第一のもの基本構成は、可変ピッチ風車と風向尾翼を装備する風向尾翼海洋風車ポンプ装置1Aが、上端部に複数の可変ピッチ翼構成の風車2と風向尾翼3を装備し、海面下に中抜き円筒従浮体4を剛性支持材5により保持し、一対のインペラからなる汲上げ放流ポンプ6を備える長い円筒体である塔ポンプ体7と、下端の吸水口に海底シンカー8と非剛的に連結し、上端部に中抜円筒主浮体9を貫通接合し、上部に回動尾翼体10を装着したライザー管体11とが、塔ポンプ体下端部とライザー管体上端部の嵌合連結により、一体となるものである。そして、前記主浮体9の浮力により風車ポンプ装置が、沿岸沖合から水深略千メートルまでの海域において、静穏時も海水の流れに影響され鉛直に近い傾斜状態を保持することになる。
なお、前記ライザー管11Bと海底シンカー8の非剛的連結は、ライザー管下端部内面の内径両端で接合され、吸水口であるその管下端円断面から外延する連結板の端部の連結孔と、所定長さのアングル連結材の両端部の同一面材部にない一方の連結孔とをボルトナットによりピン接合し、他方の連結孔と海底シンカーに接合した連結板の連結孔とを同様にピン接合しており、すなわち複式ピン接合によりライザー管体の任意方向の傾斜を許容し回動は許容しないものである。
【0028】
図2に示すように塔ポンプ体7は、長い鋼製中空円筒状のものであり、すなわち上端部に可変ピッチ風車2が、一端が円筒内面で支持され中間にベルト車12を装着し塔壁を貫通する風車回転軸13の他端部に装着され、この風車と正反対側の塔体外部に風向尾翼3が、塔ポンプ体中心線を含む面内に海面に鉛直に水平材を介してまたは直接、装着されており、さらに海中で貫通する中抜従浮体4を、海面上側部支点14に接合され外側部に沿う複数の剛性支持材5を介して海面下に接触保持しているものである。この従浮体と支持材の重量を差し引いた有効浮力は、塔ポンプ体の重心より上位の前記支点でこの塔体の浮力を差し引いた水中重量と釣合っている、すなわち塔体全体重量と塔体全浮力は、全体重量の重心より全体浮力の浮心が上位にある状態で略釣合っている。
【0029】
なお、塔ポンプ体7と従浮体4との接合方法は回動式もよく、水平部および縦部からなる断面がL字形であり、塔ポンプ体の外径より大きい内径の軸受環状材を天地を逆にしてその水平部の上面および縦部の内径側の面に軸受が配置され、また海中従浮体上面に接合した複数の支持材の先端が前記軸受環状材に等間隔に接合され、前記二箇所の軸受が、塔ポンプ体の海面上の外周に水平に接合された所定幅の環状受板と塔ポンプ体の外周に当接する方法である。この方法は塔ポンプ体の回動を容易にするのである。
【0030】
そして図3に示すように、塔ポンプ体下部には汲上げ放流ポンプ6があり、両端に対掌的な遠心インペラ15が装着され、二の軸支持材16で支持され前記風車回転軸13に平行なインペラ駆動軸17の中間にベルト車17Bが装着され、このベルト車と風車回転軸13のベルト車12とが伝達ベルト17Cを介して連系しており、各遠心とポンプ部両側部に固定したガイドを兼ねる二のケーシング18により所定開口幅の二のインペラ周状放流口19を形成しており、さらにポンプ部より下位の円筒外周にライザー管体との嵌合連結のための外周受板20が水平に接合されている。なお、図示してないが、インペラ駆動軸と風車回転軸は各支持材と軸受を介して装着され、駆動軸と風車回転軸の間に伝達ベルトの振れ止めを配置しており、両インペラの外側にもケーシングがある。
また、可変ピッチ風車2は図4に示すように、風速の強弱に応じて翼長線を軸として回動する翼2Bがハブ2Cに装着され、この翼の基端部近傍で翼弦に略垂直のレバー材2Dの先端に錘であるガバナー2Eが接合された可変ピッチ翼複数個からなる。
なお、図示してないが、風速の低下に伴い各翼のピッチ角度変化を戻すバネが翼基端部に装着されている。
【0031】
また、図1に示したように、こうに鋼製ライザー管体11は、ライザー管11Bの上端部で前記のように中抜円筒主浮体9と貫通接合し、下端に所定重量の海底シンカー8と複式ピン接合の連結をしており、そしてこのライザー管体の流体抵抗を低減するため図5に示すように、回動尾翼体10すなわち、長方形板を二つ折りした立体略V字形尾翼材の対をなす両側板部10Bが、ライザー管体の外径より大きい内径を有する上下二の回動環状平板10Cの内周端面の形成する円筒空間に、その両側板部の縦端辺10D全体が接するすなわちその円筒空間を挟む位置関係で、前記上下の環状平板10Cと接合され、さらにこれら上下の環状平板の外面に複数の尾翼体ローラー10Eをその環状平板の中心を起点とする放射状に配置し、また円筒状尾翼浮体10Fを前記両側板部のなす三角柱状空間に装着して回動尾翼体10とし、この回動尾翼体がライザー管体11の貫通する前記二の環状平板の上下ローラー10Eの一方が、ライザー管体外周に所定間隔で上下に接合された外周ローラー受10Gの一方に当接して、ライザー管体の所定部分に単一または複数で回動装着される。なお前記尾翼浮体の有効浮力は回動尾翼体の水中重量と略等しく、すなわち回動尾翼体の水中重量は略ゼロであり、また、環状平板は対称中心線に垂直な直径両端でフランジ接合されているのである。
【0032】
図6に示すように、さらに前記主浮体9の上面には塔ポンプ体7との嵌合連結のため、塔ポンプ体の外径より大きい内径の所定高さの嵌合円筒22がライザー管軸心に合せて接合され、その内周面の上端部から下端部まで複数の側面ローラー23を所定間隔で配置しており、かつその上端外周にローラー受環材24が水平に接合され、その受環材上面にもローラー23Bが所定間隔で配置されている。そして塔ポンプ体7の下部外周に接合された前記外周受板20が前記受環材24上のローラー23Bと当接し、また前記嵌合円筒の内周面に配置されたローラーと塔ポンプ体の下端部が当接することにより、塔ポンプ体7の下端部とライザー管体11の上端部の前記嵌合円筒22が同軸回動可能に嵌合し、塔ポンプ体7とライザー管体11が連結し一体の風車ポンプ装置1Aを形成する。
なお、前記外周受板20に、前記受環材24の下側に所定隙間をもって入り込む曲り鉤25を所定間隔で配設してもよい。
【0033】
以下、上記構成の動作を説明する。この海洋風車ポンプ装置1Aは、全体浮力の中心である浮心が全体重量の中心である重心より上位にあり、海底シンカーに常時引き上げ力が作用して、静穏時も潮流等のためその中抜円筒主浮体9の浮力により小傾斜状に立ち、尾翼浮体10Fの浮力に釣合い水中重量の略ゼロである回動尾翼体10が、潮流等により常にその下流側に回動し、ライザー管体の水平断面が準流線型となりライザー管体抵抗を低減し、そして所定以上の風速の風が風車正面より吹くと風車は回転を始め、風が風車に斜めに吹く場合、風向尾翼3に当たる風の尾翼面に垂直方向の力により、海中の従浮体4の浮力と水中重量の略釣合った塔ポンプ体7がその中心軸の回りにゆっくり回動し、風車が風上に向き回転を開始ないし回転速度を増すことになる。そしてこの風車の回転力は、伝達ベルト17Cを介してインペラ駆動軸17に伝わりインペラ15が回転し塔ポンプ体内部の水を放流し、ライザー管下端の吸水口より流入する低層水を順次吸い上げることにより、本ポンプ装置の汲み上げ放流動作が行われる。
【0034】
風速上昇に伴い回転数が上がると、回動式各翼2Bの基端部に取り付けた翼弦に略垂直のレバー材の先端のガバナー2Dも同様に回転し、その遠心力により翼基端部をねじり回動させ、風車回転面に対する翼の取り付け角度であるピッチ角を変えることになり、風車に対する風を逃しまたは失速を起こし、風のエネルギーの風車の回転運動への変換を略一定にして回転数の増加を抑制し、受風圧力の上昇を抑制し、風車ポンプ装置の風下側への傾斜を抑制し、風車翼の先端部の波浪による損傷を防止する。そして風速が低下すると風車のピッチは戻り受風圧力抑制を果たすのである。また、風車翼はすべて耐海水性である。
なお、風車ポンプ装置全体の挙動の概要は、主浮体の有効浮力による張力がライザー管と海底シンカーとの連結部に作用しており、潮流や風浪に基づく流れによって風車ポンプ装置はある程度の傾斜をし、強風時には受風圧力の他波浪に応答する上下左右の動揺力も加わり、長いライザー管体の多様な挙動にも影響され、前記の傾斜状態で波周期からずれた複雑な動揺も行う。また、海底シンカーは短時過大な水平力が作用すると、ずり移動して海洋風車ポンプ装置の傾斜を抑制することもある。
なお、以下の発明の海洋風車ポンプ装置の動作は、本第1の風車ポンプ装置の発明の同一部分の同様の動作は省略する。
【0035】
また、前記風向尾翼海洋風車ポンプ装置の風体系の変形型であり、図7に示すように塔ポンプ体7を風上に設置するダウンウインド風車の中間風向翼海洋風車ポンプ装置1Bは、伸延した風車回転軸13の先端部に可変ピッチ風車2を塔体7に向けて装着し、この塔体と可変ピッチ風車の間に、前記回転軸に対して上下対称形でその下半の重量が大きい中間風向翼3Bがその回転軸を部分的に貫通させて回動可能に装着する構造である。そして中間風向翼と風車の重量に釣合うバランサ3Cを風上になる塔体の反対側に取り付ける。
【0036】
以下、上記構成の動作を説明する。この中間風向翼3Bと可変ピッチ式風車2のポンプ装置1Bは、風車回転軸が回転してもその中間風向翼が常に略鉛直状態を保持し、風向制御すなわち風車を風上に向けるので、上記同様にポンプ作動をし、強風時は風車翼のピッチが変わり風を逃し、回転数を略一定に保持し受風圧力を抑制し、風下側への傾斜を抑制し、本ポンプ装置の作動を継続する。
【0037】
また、前記海洋風車ポンプ装置の変形型であり、図8に示すように可変ピッチ固定コーニング風車2Fを装備する可変ピッチ固定コーニング海洋風車ポンプ装置1Cは、外延する回転軸13のハブ2Cに所定角度後傾した可変ピッチ式の翼2G複数を、ダウンウインドに装着固定したものである。
【0038】
以下、上記構成の動作を説明する。この固定コーニング海洋風車ポンプ装置1Cは、斜風がこの固定コーニング風車に当ると各翼2Gのジャイロ効果のモーメントにより風車を風上に向け、強風時は前記同様ピッチが変わることにより、上記同様、ポンプ装置1Cの風下側への傾斜を抑制し、ポンプ作動を継続する。
【0039】
また、前記風車ポンプ装置の変形型であり、図9に示すように初期傾斜の付いた可傾コーニング風車2Hを、前記固定コーニング風車と同様ダウンウインドに装着する可傾コーニング海洋風車ポンプ装置1Dであり、この可傾コーニング風車2Hは、複数の可傾コーニング翼2iの風車の場合、雨傘の開閉すぼみ機構に類似して、各翼2iの基端部がハブ2Cに初期傾斜の方向へ傾斜可能にピン接合され、風車回転軸13の貫通する滑環体2Jがハブより所定位置の小止輪2Kに当接していて、この滑環体2Jとコーニング翼2iの所定箇所とを連動材2Mを介してピン接合連結し、前記バブと滑環体の間に前記小止輪2Kを越えて予伸バネ2Nを配設し、滑環体と回転軸の先端に接合したバネ受2Pとの間には予縮バネ2Qを配設し、これら両バネ力の懸かる滑環体2Jは前記小止輪2Kに、コーニング翼2iが初期傾斜の状態で当接する、構成のものである。なお、前記コーニング翼2iの所定箇所とは風車回転軸を含みピン接合軸線と直行する面が翼と交差する箇所を原則とする。また滑環体2Jの内面に軸受を配設してもよい。
【0040】
以下、上記構成の動作を説明する。可傾コーニング海洋風車ポンプ装置1Dは、斜風の場合、その可傾コーニング翼2iのジャイロ効果により前記同様に塔ポンプ体7が回動することでコーニング風車は自動的に風上へ向い、また強風により所定以上の受風圧力を受けると、予伸バネ2Nと予縮バネ2Qの両の力を滑環体2Jと連動材2Mを介して小止輪2Kに抵抗させて初期傾斜を維持している可傾コーニング翼2iは、風車回転軸13の貫通するこの滑環体を前記両バネの力に抗しながら移動しつつ傾斜を増し、滑環体2Jが予縮バネ2Qをほぼ完全に縮めるまで、すなわち回転軸に対する所定の角度まで傾斜し、風車はすぼむと同時に回転を低減するので受風圧力が低下し、風車ポンプ装置の風下側への傾斜を抑制して、汲み上げポンプ作動を継続する。そして風速の低下とともに前記両バネの作用で風車はすぼみを開いて行くことで受風圧力制御を果たす。
【0041】
また、前記中間風向翼海洋風車ポンプ装置の風向制御方法の変形型であり、図10に示すように、回転作動のみのダウンウインド設置の単純風車2Sと電動スラスタ海洋風車ポンプ装置1Eは、風向自己制御式風力発電機2Tの電力で駆動する二のサイドスラスタ複合体2Uによる風向制御を行うものであり、このスラスタ複合体風向制御方法は、塔体頂上に設置した風力発電機2Tと、正逆方向の電動スラスタ二台を接合し海中の従浮体4の対称的側部に風車回転軸と平行に設置したサイドスラスタ複合体2U二基と、充電式蓄電池および塔体頂に設置した風向と風速センサを含むコントローラ2Vとを相互に電気的に接続された制御システムによる風向制御方法である。なお充電式蓄電池は無風時の制御システム維持のためである。また、スラスタ風向制御システムは前記各ダウンインド風車ポンプ装置に併用してもよく、さらに単純風車をダウンインド設置とした海洋風車ポンプ装置に採用してもよい。
【0042】
以下、上記構成の動作を説明する。塔体頂部の風力発電装置2Tの発電電力により、水中従浮体4の外側部に対称的に配置された両サイドスラスタ複合体の各一の電動スラスタが、相互に逆方向噴流するコントローラ2Vの指令により、生起する回転モーメントにより、塔ポンプ体7を右または左にゆっくり回動させ、単純風車2Sを強風向から最大90度までずらし大きな受風圧力を回避する横向きカットアウトにより、海洋風車ポンプ装置1Eの風下側への傾斜を抑制し汲み上げポンプ作動を継続する。そして所定風速以下になると風車ポンプ装置を風上に向けなおし受風圧力制御を果たす。
このように、風向、風速により変化する風車回転数を風車回転数センサで検知することでコントローラ2Vがサイドスラスタ複合体2Uに風向制御指令を出し、状況変化に対応した汲上げポンプ作動を継続する。なお、両側のスラスタ複合体の各一の電動スラスタを同方向噴流にして、海洋風車ポンプ装置の傾斜を制御するのもよい。
【0043】
図11に示すように、本発明の第二のものである風車ポンプ式人工漁場30は、上記いずれかの海洋風車ポンプ装置を中心にして混合育成床37を付設した風車ポンプ浮遊漁礁31を所定間隔で海洋に設置し造成したものである。
この風車ポンプ浮遊魚礁31は、図12に示すように、ライザー管体11上部の海中にある主浮体9の上面外周に水平に設けた複数の受材9Bの下に接触配置した鋼管製の内周環材32と、浮力を調整して略ゼロの水中重量とし同心状に配置した鋼管製外周環材33の間に、複数の縦長台形状の合成樹脂繊維製軟面材34を、その上辺を内周環材に底辺を外周環材に、かつ軟面材側辺相互をラップさせて架け渡し、このラップ部では下側の面材端に沿い上側面材と縫綱により所定縫目で縫い合わせ、海面浮状の複数の所定浮力を有する複数の小浮体35を綱36を介して全面に配設し、内周環材32より外周環材33を深く設定し円錐台状の混合育成床37を構成し、この混合育成床を風車ポンプ装置に付設した構成ものである。なお、内外周両環材の間に複数の綱を放射状に架け渡してもよい。
なお、内周環材はその2分割の、外周環材はその4分割以上の分割材を、浮体を付加して現場海面で端部フランジ相互をボルト接合したものであり、外周環材は円形に限定されず、複数の小浮体が前記同様に配設される。
そして風車ポンプ式人工漁場30は、この風車ポンプ浮遊魚礁31の一以上を水深千メートルまでの海域に所定間隔で設置し造成したものである。
【0044】
以下、上記構成の動作を説明する。水深千メートルまでの海域に所定間隔で設置した多数の風車ポンプ浮遊魚礁31は、その風車ポンプ装置が汲み上げ放流する低温かつ重い底層水が、波により上下に動揺する海面浮状の複数の小浮体35のため同様に上下に動揺する混合育成床37の軟面材34の上を外周へ流れながら温かい表層水と混合し、ある比重の混合水となり育成床37外周より流落させるのである。一定水深で潮流方向に層状に拡散するこの流落した混合水にプランクトンが増殖し、魚類が集まり生育し、かつ混合育成床の軟面材には海藻が生育すると同時に魚類の生活空間となる。
なお、軟面材側辺相互のラップ状縫い付けは、高波浪時の育成床の動揺に基づく海水の縫い目からの流動を許し、育成床の損傷予防のためである。
【0045】
風車ポンプ式人工漁場30による海洋生物の生産方法は、水深千メートルにも及ぶ海洋に設置した複数の風車ポンプ浮遊魚礁31で構成する風車ポンプ式人工漁場30において海洋生物を高い生産性で生産する方法である。
【0046】
以下、上記生産方法を説明する。風車ポンプ浮遊魚礁31が汲み上げ放流する低層水に含まれる栄養成分で、プランクトンが増殖し、このプランクトンを基盤とする食物連鎖により魚類が成育し、また混合育成床37に海藻が繁茂するので、通年にわたり海洋生物を漁船により漁獲できる。
【0047】
なお、風車ポンプ式人工漁場を構成する風車ポンプ浮遊魚礁各部の形状寸法の適宜変更、材質の変更、適宜補強材、浮体、バランサの取付けもよい。例えば、外周環材の面外変形に抗するためその下側全周に補強材を接合してもよく、また鋼製ライザー管の中間以下は合成樹脂管としてもよく、また主浮体の下端外周とライザー管を外周する帯環材を複数の補強斜材を介して連結しライザー管と帯環材のすき間に弾性クッション材を挟んでもよく、また風車翼の先端部を波浪に触れた時分離する、分離式としてもよい。
また、可傾コーニング風車のハブと塔部の間の風車回転軸にバネ留を立て、このバネ留と各翼の所定箇所とを予伸バネを介して連結してもよい。
また、風向尾翼海洋風車ポンプ装置の平面状風向尾翼を平行二風向尾翼にしてもよい。
また、風車は垂直軸風車とし垂直軸に直接装着する水平インペラを設置した海洋風車ポンプ装置、風車ポンプ式人工漁場もよい。この場合、風向制御の前記諸手段は不要である。
また、海洋風車ポンプ装置を、浮体に連結した係留索とアンカーにより設置してもよく、海底基礎に剛接合設置してもよい。なお、一以上の係留索に中抜主浮体の浮力による張力が常に掛っているものとする。
【0048】
なお、海洋風車ポンプ装置の組立、設定の概略は、設定海域への従浮体を装着した塔ポンプ体とライザー管体を、それぞれ浮体を付加し個別に水面搬送し、ここで両者の嵌合連結一体化後、尾翼体を取付け、海底シンカーを連結しかつこのシンカーを作業船の吊り綱と連結し、主従両浮体の浮力を注排気水により調整しながら、前記付加した浮体を順次外し塔ポンプ体とライザー管体の一体化した風車ポンプ装置を、塔ポンプ体の喫水付近を作業船が保持しながら、他の作業船が海底シンカーの降下を吊り綱で調整しながらライザー管体の傾斜沈下に任せ、また塔ポンプ体の上部が水面を離れたら風車を取付けることとし、大型クレーン船を使わずに、海洋に立て設置することである。なお、主従両浮体に浮力調整用の注排気水の複数のバルブとパイプが装着されているが、詳細は省略する。
また、メンテナンスも、浮力調整と作業船がポンプ装置を引き傾け、風車が海水に浸かる程度に傾斜させることにより、比較的容易に行える。
【0049】
また、ポンプの回転により生じる反作用に抗するのに必要であれば、二のインペラの回転方向を逆にしてもよく、すなわち風車回転軸の中央部に歯車を装着し、この歯車は、回転軸風車と平行な回転軸にベルト車とともに装着された同径の歯車と噛み合い、これら同径の二のベルト車は、左右に分割支持され同形のインペラが装着された駆動軸と夫々の伝達ベルトを介して連係する構造もよい。
また、風車回転軸と前記駆動軸の連係は、伝達ベルトに代えて各軸付設のベベルギヤと両端にベベルギヤを付設した伝達軸を介してもよい。なお、風車回転数と異なるインペラ回転数とするためギヤ比を変えてもよく、同様にベルト車の径比を変えてもよく、両軸の間に支持材や触れ止めを配置する。
また、塔ポンプ体の水面上の円筒壁部分、例えば水面から所定高さ以上を骨組構造としてもよい。所定高さ以上とするのは表層水の流入を防ぐためである。
【0050】
また、所定角度で折れた端部接合面を有する二の側板をその接合面の間に、尾板の辺部を挟み接合し、円筒状尾翼浮体を装着した立体Y字形の回動尾翼体を、前記V字形尾翼体と同様にライザー管体の所定部分に回動装着してもよい。
また、スラスタ複合体海洋風車ポンプ装置以外の塔ポンプ体の上端より風車翼先端相当以下まで立体のVまたはY字形の軽量尾翼材を固定装着してもよく、この場合平面風向尾翼に代えてまたは併用し、風車と塔ポンプ体の間に所定の間隔をとりかつ尾翼材に対するカウンターバランスを付設してもよい。同様に、全ての海洋風車ポンプ装置の塔ポンプ体に円筒状尾翼浮体をはずした軽量回動尾翼体を装着してもよい。この場合、回動尾翼体の環状平板と塔ポンプ体の間に回動をスムーズにするローラーを装着してもよい。これら尾翼材や尾翼体の装着はダウンインド設置風車の疲労耐性向上がある。
【0051】
また、塔ポンプ体の下端嵌合部分を、内径を拡大した中抜主浮体に挿入嵌合する構造としてもよい。この場合嵌合円筒は不要である。
また、塔ポンプ体の外径より大きい所定内径でその塔ポンプ体の貫通し海面浮状する環状浮体と、この内径面上端と下端各4箇所以上とを、塔ポンプ体または従浮体の海面下外側の前記内径面下端と同じ水深箇所を、塔ポンプ体の外径と環状浮体の内径の差以下の長さの複数の鎖を介して連結し、さらに環状浮体の前記下端4箇所以上と塔ポンプ体又は従浮体のより深い外側とを、前記同様の長さの複数の鎖を介して略直線状に連結してもよい。
また、従浮体と塔ポンプ体の隙間に生物付着を抑え、摩擦を抑える硬質材を装着してもよい。従浮体と塔ポンプ体を連結する支持材の両端の接合をピン接合としてもよい。
【0052】
また、塔ポンプ体内水面下に第二の従浮体を、塔ポンプ体内面に沿い塔内水面上の支点に接合する支持材により保持してもよい。
また、混合育成床の内周環材はその内部空間に基づく浮力を有してもよく、また、上側軟面材側辺と下側軟面材着脱ラップ部相互を所定間隔で着脱接合してもよい。
また、内、外周環両材の間に放射状に張り渡した綱の上に、異径の所定幅の環状軟面材を同心状に内周環材から外周環材まで順次内側軟面材の下に外側軟面材をラップさせ、下軟面材の周辺端に沿い所定縫い目で上側軟面材と縫い合わせ、浮状小浮体を綱を介して全体に配置することにより円錐台状混合育成床を形成してもよい。
また、塔ポンプ体が斜風に基づく力により回動不十分の時、人工漁場にいる漁船や監視作業船により回動するための補助手段であるワイヤー掛けを塔ポンプ体海面上の対称位置に備えてもよい。
【0053】
また、風車ポンプ式人工漁場は比較的浅い沿岸大陸棚海域に、風車ポンプ浮遊魚礁を係留索とアンカーにより設置して、また海底基礎に剛接合設置して造成してもよい。
また、混合育成床の内周環材内面域に軟面材を架け渡し、浮状小浮体の綱の長さを調整し中央部の平面や低い容器形の混合育成床にし、海底シンカーを接合した係留索一以上と連結した外周環材に、外周環材同様に内部に浮力の生じる密閉空間部を設け水中重量を略ゼロに調整した外周環材の直径程の長さの管材の一端を放射状にピン接合し、これらの棒材の各他端に海面浮状の浮体を綱を介して連結し、隣の管材の先端相互を綱で連結し、これら外周綱と外周環材の間に軟面材や網材を張り渡し外周複合部とし、比較的浅い沿岸大陸棚海域に係留索により設置する単独の複合育成床もよい。
なお、外周複合部は、各先端の海面浮状浮体を接合した綱を手繰って浮状浮体に前記管材の先端を直接接合させて複合育成床を浮遊育成生簀に変形してもよい。この場合、前記外周綱または軟面材外周に連続浮体を接合してもよく、その他細部は省略する。もちろん、複合育成床と海洋風車ポンプ装置との風車ポンプ浮遊魚礁の大陸棚以遠海域設置もよい。
【0054】
また、魚類廃物など動物性蛋白質を分解、精製したアミノ酸を継続的に供給する装置を育成床や複合育成床に備えた風車ポンプ浮遊魚礁、同供給装置を備えた単独の複合育成床や浮遊育成生簀もよい。このアミノ酸供給装置はプランクトン、海藻、放流稚魚等海洋生物育成促進のためであり、所定沿岸海域に同供給装置を備えた人工漁法もよい。なお、蛋白質分解方法は加圧水熱反応もある。
さらに育成床、複合育成床、浮遊育成生簀、小浮体やライザー管体その他の部位に複数の耐海水耐圧発光ダイオード群、特に紫外線発光ダイオード群を装備した風車ポンプ浮遊魚礁もよく、この場合塔ポンプ体外面に装着した太陽電池や風力発電機の電力で発光させ、充電式蓄電池とコントローラを備え夜間などの発光時間の任意設定もよい。ダイオード発光による集魚やプランクトン育成等の効果のためである。
また係留して所定海面および海中に浮状する発電装置等と発光ダイオード群筏と一体の海洋生物育成促進装置、または発電装置等浮体と発光とがケーブルを介して導通している分離型の同育成促進装置もよく、この分離型育成促進装置は紫外線発光ダイオード群筏を有光層以深に設置してもよい。
さらに、アミノ酸供給装置と発電装置等装備発光ダイオード群を併設する風車ポンプ浮遊魚礁、複合育成床や浮遊育成生簀もよく、前記両装置を併設する既存生簀および所定沿岸海域人工漁法もよい。
【0055】
また、前記各海洋風車ポンプ装置の塔ポンプ体単体を改造して、すなわちポンプインペラを廃し増速手段を備えた水面下の発電機室を作り、大型化した中抜従浮体を海中に保持し、回動尾翼体を装着し、下端の嵌合部を適宜延長してバラスト部にした風車発電塔とし、バラスト下部とスイベル回動的に連結する係留索とアンカーにより設置し、従浮体を含めた前記風車発電塔の全浮力がその全重量より大きくかつ浮力の中心すなわち浮心は全体重心より上位に構成した洋上浮遊風力発電装置もよい。
また、前記発電塔の風車を含めた発電系を、現行陸上風力発電装置に替え、この場合も従浮体を含めた発電塔の全浮力はその全重量より大きくかつ浮力の中心すなわち浮心は全体重心より上位に構成した洋上浮遊風力発電装置もよい。この発電装置の設置方法は係留索とアンカーによるが、設置水深により多様な設置方法がある。
【0056】
なお、この洋上浮遊風力発電装置の組み立て設置の概要は、発電系を外した発電塔を海上搬送し、バラストに係留索を介して海底シンカーを連結した後所定位置に設置し、円筒従浮体に注水排気してその浮力を減らし幹体の上端を海面上略5メートルまで沈め、一方作業台船上でハブと複数の翼を結合組み立てた風車を、既存の発電機ナセルと接合一体化し風車発電機とし、短リーチのクレーン船でこの風車発電機を前記幹体上端に載置接合し、従浮体浮力を注気排水により付加し載幹体を浮上させ、風車発電機を所定の高さに設定することにより形成設置されるものである。なお、円筒浮体の浮力調整機構その他細部は省略する。
【0057】
また、風車と従浮体を除去し気密型出入口を有する塔ポンプ体の一部を海面上に露出し、インペラポンプを水平に装着する電動ポンプ式浮遊魚礁複数と前記洋上風力発電装置または他の形式の洋上風力発電装置を、電力ケーブルを介して接続した風力発電電動ポンプ式人工漁場もよい。なお、塔ポンプ体は海水浸入を防ぐ加圧装置を備え浮体としても機能し、また主浮体を前記海面浮状環状浮体に代えてもよい。
また、千メートルを越える深海域では、風車ポンプ装置を海底シンカーで定置せずに、ライザー管の所定箇所、例えば下端にウエイトを付けた非定置式の、風や海流のままに漂流する風車ポンプ漂流魚礁群で造成する風車ポンプ式漂流入工漁場もよい。
以上、前記風車ポンプ装置と人工漁場の各構成要素と方法の適宜組み合わせによる、別形の多様な風車ポンプ装置と風車ポンプ式人工漁場、さらに一体または分離型海洋生物育成促進装置と組み合わせた複合育成床と浮遊育成生簀およびそれらの多様な利用方法の存在も理解でき、省略した細部構造の多様な存在も理解できよう。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】風向尾翼海洋風車ポンプ装置の概要側面図である。
【図2】塔ポンプ体の概要縦断面図である。
【図3】ポンプ部の縦断面概要図である。
【図4】可変ピッチ翼のガバナー取付けを上から見た図(図中、翼2Bは断面)である。
【図5】回動尾翼体の側面図である。
【図6】塔ポンプ体とライザー管体の嵌合連結部の縦断面図
【図7】中間風向翼海洋風車ポンプ装置の3翼風車系の概要側面図である。
【図8】固定コーニング海洋風車ポンプ装置の2翼風車系の概要側面図である。
【図9】可傾コーニング海洋風車ポンプ装置の可傾3翼風車翼の装着部の概要図である。
【図10】単純風車と電動スラスタ海洋風車ポンプ装置の概要側面図である。
【図11】風車ポンプ式人工漁場の斜視図である。
【図12】風車ポンプ浮遊魚礁の概要側面図である。
【図13】試行装置である海水汲上げ装置の概要図である。
【符号の説明】
【0059】
1A 風向尾翼海洋風車ポンプ装置 1B 中間風向翼海洋風車ポンプ装置
1C 可変ピッチ固定コーニング海洋風車ポンプ装置
1D 可傾コーニング海洋風車ポンプ装置
1E スラスタ複合体海洋風車ポンプ装置 2 可変ピッチ風車
2B 回動式翼 2C ハブ 2D レバー材
2E ガバナー 2F 可変ピッチ固定コーニング風車
2G 可変ピッチ固定コーニング翼 2H 可傾コーニング風車
2i 可傾コーニング翼 2J 滑環体 2K 小止輪
2M 連動材 2N 予伸バネ 2P バネ受
2Q 予縮バネ 2S 単純風車 2T 風車発電機
2U サイドスラスタ複合体 2V コントローラ 3 風向尾翼
3B 中間風向翼 3C バランサ 4 従浮体
5 支持材 6 ポンプ 7 塔ポンプ体
8 海底シンカー 9 主浮体 9B 受材
10 回動尾翼体 10B 側板部 10C 環状平板
10D 縦端辺 10E ローラー 10F 円筒状尾翼浮体
10G 外周ローラー受 11 ライザー管体 11B ライザー管
12 ベルト車 13 風車回転軸 14 側部支点
15 遠心インペラ 16 軸支持材 17 駆動軸
17B ベルト車 17C 伝達ベルト 18 ケーシング
19 放流口 20 外周受板 22 嵌合円筒
23、23B ローラー 24 ローラー受環材 25 曲り鉤
30 風車ポンプ式人工漁場 31 風車ポンプ浮遊魚礁
32 内周環材 33 外周環材 34 軟面材
35 小浮体 36 綱 37 混合育成床

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端部側部に風車回転軸に装着した可変ピッチ風車を備え反対側に固定風向尾翼を備え、前記回転軸と両端にポンプインペラを装着した海面下のポンプ駆動軸とが、伝達ベルトとベルト車を介して平行に連係し、前記インペラの外周部とケーシングが全周状放流口を形成するポンプを下部に構成し、海面下で貫通する中抜円筒従浮体を、海面上底シンカーを連結し上部で中抜円筒主浮体に貫通接合し、さらに回動尾翼体が装着されるライザー管体であり、この管体の上端部が前記塔ポンプ体の下端部と同軸回動状に嵌合連結してなることを特徴とする風向尾翼海洋風車ポンプ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の海洋風車ポンプ装置において、塔ポンプ体外に延在する回転軸の端部に可変ピッチ式風車を装着し、この風車と塔ポンプ体の間に中間風向翼を前記回転軸に回動状に装着してなることを特徴とする中間風向翼海洋風車ポンプ装置。
【請求項3】
請求項2に記載の海洋風車ポンプ装置において、可変ピッチ固定コーニング風車のみポンプ体近傍に装着してなることを特徴とする固定コーニング海洋風車ポンプ装置。
【請求項4】
請求項3に記載の海洋風車ポンプ装置において、可傾コーニング風車を装着してなることを特徴とする可傾コーニング海洋風車ポンプ装置。
【請求項5】
請求項1に記載の海洋風車ポンプ装置において、単純風車と、塔ポンプ体上部に装着した風向自己制御式風力発電機、海面下の従浮体の下部外側の対称位置に風車回転軸に平行に設置した、サイドスラスタ複合体二基およびコントローラで構成する風向制御システムとを装着してなることを特徴とする電動スラスタ複合体海洋風車ポンプ装置。
【請求項6】
請求項1から5に記載の海洋風車ポンプ装置のいずれにおいても、中抜円筒主浮体を中心にして内周環材と外周環材との間に軟面材を架け渡し、海面浮状の複数の小浮体を綱を介して全面に配設した混合育成床を装備した風車ポンプ浮遊魚礁を配置してなることを特徴とする風車ポンプ式人工漁場。
【請求項7】
請求項6に記載の風車ポンプ式人工漁場により海洋生物を生産することを特徴とする海洋生物生産方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−132514(P2006−132514A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−349095(P2004−349095)
【出願日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(592254917)
【Fターム(参考)】