説明

海綿鉄の製造方法および製造装置

還元ガスを用いた還元シャフト(1)内における直接還元によって、酸化鉄を含有する塊状の材料から海綿鉄を製造するための方法および装置において、還元ガスの全体は、星状または互いに平行に配置された複数の還元ガス分配管(2)を通じて、好適には還元シャフト(1)の下4分の1に、還元シャフトの横断面全体にわたって均一に分散して導入される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、還元ガスを用いた還元シャフト内における直接還元によって、酸化鉄を含有する塊状の材料から海綿鉄を製造するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
直接還元鉄とも称する海綿鉄を直接還元によって製造する際、還元シャフトには、ペレットおよび/または塊鉱などの塊状の酸化鉄が上方から供給される。当該酸化鉄は、向流原理によって、上昇する還元ガスとともに貫流する。還元シャフトに導入された、好適には750℃〜900℃の、ダストを含有する、一酸化炭素および水素に富む、特に70%〜90%のCOおよびHを含有する還元ガスは、溶融ガス化炉またはその他のガス発生器において生成されることが好ましい。このようにして塊状の酸化鉄は、全てまたは部分的に海綿鉄に還元され、80%から95%を超える程度の海綿鉄の金属化度が達成される。
【0003】
従来技術から知られた装置および方法においては、還元ガスは、たとえば環状の、耐火性を有する石材から形成された管、いわゆるバッスル管などを経由して、還元シャフトの周辺部に導入される。しかしながら、バッスル管によって還元ガスを導入する際には、還元シャフトの中央に到達する還元ガスがより少なくなるので、周縁領域における金属化度は、還元シャフト中央よりも大きくなる。金属化度が比較的低い場合の充填物は、比較的高い場合よりも、その重さが大きくなり、崩壊しやすくなるので、充填プロセスは還元シャフト中央に集中される。こうして中央に集中することによって、一定量の還元ガスは、より一層不均衡に分配されることになる。還元シャフトの直径が大きくなり、還元ガスがより多くのダストを含有すればするほど、還元ガスの分配は不均衡になる。加えて、耐火性を有する石材から形成されるバッスル管はライニングを必要とするので、費用がかかり、磨耗を受けやすく、その都度、交換しなければならない。
【0004】
特許文献1には、バッスル管に加えて、バッスル管の下方に配置された中央供給装置が記載されている。特許文献2によれば、やはりバッスル管の下方には、さらなる還元ガス吸気口が、下方に向かって開放された管、または、開放された内側端を有する、傾斜して下方に向けられた導管の形で配置されている。
【0005】
これらの装置は、中央への還元ガスの供給を改善するものの、中央にバッスル管およびガス分配管を備えた還元シャフトは費用がかかるとともに、還元ガスが同じ圧力で2つの異なるレベルに導入されるという不利点を有する。より高い吸気口の方が、上方に向かうガスの経路がより短くなるので、より高い吸気口を通じてより多くの平方メートル当りの還元ガスが導入されることになる。還元ガスがより少ないということは、還元シャフト中央における充填物の金属化度がより低いということを意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第2628447号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0904415号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の課題は、バッスル管およびそれに伴う還元シャフトの費用負担が大きく磨耗しやすいライニングを用いずに、還元ガスが均一に分配され、したがって金属化が均一に行われるような、容易な方法と容易な装置とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
それゆえに本発明の対象は、還元ガスを用いた還元シャフト内における直接還元によって、酸化鉄を含有する塊状の材料から海綿鉄を製造するための方法であって、還元ガスの全体が、星状または互いに平行に配置された複数の還元ガス分配管を通じて、好適には還元シャフトの下4分の1に導入されることを特徴とする方法である。
【0009】
当該方法を実施するために、ペレットおよび/または塊鉱などの、酸化鉄を含有する塊状の材料が上から還元シャフトに供給される。さらに、好適には750℃〜900℃の、特に溶融ガス化炉で生成された、ダストを含有する、一酸化炭素および水素に富む、特に70%〜90%のCOおよびHを含有するガスは還元ガスと呼ばれ、還元ガス分配管を通じて、好適には還元シャフトの下4分の1に導入される。導入された還元ガスは上昇し、その際に酸化鉄を海綿鉄に還元する。全ての還元ガスを、もっぱら星状または互いに平行に配置された還元ガス分配管を通じて導入することによって、還元ガスの均一な分配と、還元ガスに含まれるダストの、還元シャフト横断面全体に渡る均一な分散とが可能になる。
【0010】
独国特許発明第2810657号明細書からは、バッスル管の他に、天然ガスなどのプロセスガスを導入するためのさらなる装置を備えた還元シャフトが知られている。このとき、不利な点としては、バッスル管を通じた還元ガスの導入が均一ではないことと、装置の費用が高いこととが挙げられる。
【0011】
国際公開第00/36159号パンフレットには、2つのレベルもしくはゾーンに還元ガスが導入される還元シャフトが記載されている。特に、設備技術的に費用がかかること、および、還元ガスの導入を制御する必要性が高くなることが不利な点として挙げられる。
【0012】
還元ガス分配管は、支柱管に固定された、下方に向かって開放された半管シェルであり、下方に向かって延在する平行な壁面を有する。還元シャフトに上方から酸化鉄を供給する場合、半管シェルの下方には充填物が存在しない空間が形成される。当該空間から、還元ガスは均一に充填物内に流入する。
【0013】
還元ガス分配管は星状に配置され、それぞれの長さは同一または異なっていても良いが、長さが異なっていると好ましい。短い方の還元ガス分配管は好適には移動可能に支承され、長い方の還元ガス分配管は好適には水冷支承管に支持されている。星状の配置とは、複数の、好適には4〜12、特に好適には8つの還元ガス分配管が、還元シャフト壁面から還元シャフト内部に向かって伸長しており、全ての還元ガス分配管が還元シャフトの中心に向かっているという意味である。このとき、それぞれ、長い方の還元ガス分配管が、短い方の還元ガス分配管の隣に配置されていることが好ましい。好適には、長い方の還元ガス分配管は、海綿鉄のための排出ホッパーの上方に取り付けられる。排出ホッパーの下端には、水冷排出スクリューまたはその他の排出装置が配置されていることが好ましい。
【0014】
還元ガス分配管は、1つのレベルに位置していることが好ましい。
【0015】
それぞれ、長い方の還元ガス分配管を、短い方の還元ガス分配管の隣に配置することが好ましいが、短い方の、移動可能に支承された還元ガス分配管を、長い方の、支持された還元ガス分配管の僅かに上方に取り付けることも可能である。これは、崩壊およびブリッジングの傾向を有する鉱石を使用する場合に有利である。
【0016】
このとき重要なのは、高さの異なる還元ガス分配管を僅かに重ね合わせて配置して、還元ガス導入時に圧力の差異がほとんど生じないようにすることである。
【0017】
還元ガス分配管は平行にも配置可能であり、長さは同じでも異なっていても良い。このとき、還元ガス分配管は1つのレベルに配置されていることが好ましい。好適には直径の小さい還元シャフトの場合、全ての還元ガスは、複数の、好適には2〜8、特に好適には4つの、還元シャフト壁から対向する還元シャフト壁へと貫通する、平行に配置された還元ガス分配管を通じて導入される。中規模の大きさの還元シャフトの場合、さらに2つの還元ガス分配管を配置することができる。当該還元ガス分配管は、互いに対向しシャフトの直径に沿って中央に向かうと共に、還元シャフト壁から対向する還元シャフト壁へと貫通する他の還元ガス分配管に対して平行である。これらの付加的な、短い方の還元ガス分配管は、水冷支承管によって支持されていることが好ましい。
【0018】
本発明のさらなる対象は、還元ガスを用いた還元シャフト(1)内における直接還元によって、酸化鉄を含有する塊状の材料から海綿鉄を製造するための装置であって、還元ガスの全体が、好適には還元シャフト(1)の下4分の1において星状に配置された複数の還元ガス分配管(2a,2b)を通じて、または、好適には還元シャフト(1)の下4分の1において互いに平行に配置された還元ガス分配管(2)を通じて、供給されることを特徴とする装置である。
【0019】
以下、図示された実施例に基づいて、本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】内部に還元ガス分配管(2a,2d)および還元ガス分配管(2b)が図示された、還元シャフト(1)の垂直断面の図である。
【図2】充填物に還元ガスを導入するための、支柱管(3)を備えた還元ガス分配管(2)の垂直断面の図である。
【図3】図1に示した還元シャフト(1)の、星状に配置された還元ガス分配管(2a)および(2b)の上方における水平断面の図である。
【図4】図1に示した還元シャフト(1)の、平行に配置された還元ガス分配管(2c)の上方における水平断面の図である。
【図5】図1に示した還元シャフト(1)の、平行に配置された還元ガス分配管(2c)および(2d)の上方における水平断面の図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
上方から分配管(5)を通じて酸化鉄を含有する塊状の材料が供給される、円筒状の還元シャフト(1)の下4分の1には、複数の還元ガス分配管(2)が設けられている。当該還元ガス分配管を通って、還元ガスが還元シャフト(1)内に導入される。還元シャフト(1)の下端には、海綿鉄に還元される材料が、排出ホッパー(6)を通じて排出される。排出ホッパー(6)の下端には、水冷排出スクリューまたはその他の排出装置が配置されているが、図には示されていない。
【0022】
還元ガス分配管(2)は、下方に向かって延在する平行な壁面を有する、下方に向かって開放された半管シェルであり、図4から明らかなように、支柱管(3)に固定されている。当該支柱管は内部が水冷されていると好ましい。
【0023】
還元ガス分配管(2)は、星状に配置しても良い。
【0024】
星状に配置された還元ガス分配管(2a,2b)の長さは同一でも異なっていても良い。還元ガス分配管の長さは異なっていることが好ましいが、図3に示したように、長い方の還元ガス分配管(2a)と、短い方の還元ガス分配管(2b)とが交互になっていると特に好ましい。好適には、長い方の還元ガス分配管(2a)を通じて、還元シャフト(1)の中央領域と周縁領域の一部、特に約50%の領域とに、短い方の還元ガス分配管(2b)を通じて、周縁領域の残りの部分に、還元ガスが供給される。長い方の還元ガス分配管(2a)が必要とするような、比較的長い支柱管(3)は、たいていは図1に示したような水冷支承管(4)によって補足的に支持されている。当該支承管は、還元シャフト(1)の底面に固定されているが、短い方の還元ガス分配管(2b)の支柱管(3)は、好適には移動可能に支承されている。
【0025】
比較的少ない排出ホッパー(6)、好適には8より少なく、特に好適には4つの排出ホッパーを有する還元ガス分配管(2a,2b)が星状に配置されている還元シャフト(1)の場合、長い方の還元ガス分配管(2a)は排出ホッパー(6)の上方に、短い方の還元ガス分配管(2b)は排出ホッパー(6)の間の空間の上方に配置されていることが好ましい。
【0026】
還元ガス分配管(2a,2b)は1つのレベルに配置されていることが好ましい。
【0027】
好適に長い方の還元ガス分配管(2a)がそれぞれ、短い方の還元ガス分配管(2b)の隣に配置されている場合は、短い方の、移動可能に支承された還元ガス分配管(2b)を、長い方の、支持された還元ガス分配管(2a)のわずかに上方に配置することも可能である。これは、崩壊およびブリッジングの傾向を有する鉱石を使用する場合に有利である。このとき重要なのは、高さの異なる還元ガス分配管(2a,2b)をわずかに重ね合わせて配置して、還元ガス導入時に圧力の差異がほとんど生じないようにすることである。
【0028】
還元ガス分配管(2)は、互いに平行に配置しても良い。
【0029】
互いに平行に配置された還元ガス分配管(2c,2d)は、長さが同一でも異なっていても良いが、1つのレベルに配置されていると好ましい。還元ガス分配管(2)が平行に配置されている場合、特に還元シャフトが小さいときは、図5に示したように、2つ以上の互いに平行に配置された還元ガス分配管(2c)は、還元シャフトの壁面から、対向する還元シャフトの壁面へと貫通するように構成されている。
【0030】
中規模の大きさの還元シャフト、例えば直径6〜8mの還元シャフトの場合、図5に示したように、さらなる2つの還元ガス分配管(2d)を還元シャフト(1)の直径に沿って対向して配置し、残りの還元ガス分配管(2c)をそれと平行に、好適には還元シャフトの壁面から対向する還元シャフトの壁面へと貫通するように配置することが好ましい。このとき還元ガス分配管(2d)は好適には、星状の還元ガス分配管(2a)の支持と類似して、水冷支承管(4)によって支持されている。
【符号の説明】
【0031】
1 還元シャフト
2 還元ガス分配管
3 支柱管
4 支承管
5 分配管
6 排出ホッパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元ガスを用いた還元シャフト内における直接還元によって、酸化鉄を含有する塊状の材料から海綿鉄を製造するための方法において、
前記還元ガスの全体が、星状または互いに平行に配置された複数の還元ガス分配管を通じて、好適には前記還元シャフトの下4分の1に、前記還元シャフトの横断面全体にわたって均一に分散して導入されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記還元ガスの全体が、1つのレベルに配置された還元ガス分配管によって導入されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記還元シャフトの装入時に、下方に向かって開放された半管シェルとして構成されている前記還元ガス分配管の下方に、充填物の存在しない空間が形成されると共に、当該空間から前記還元ガスが均一に前記充填物に流入することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
還元ガス分配管が星状に配置されている場合、長い方の還元ガス分配管がそれぞれ、短い方の還元ガス分配管の隣に配置されており、前記短い方の還元ガス分配管は、前記長い方の還元ガス分配管の僅かに上方に配置されているので、実際には前記還元ガスを導入する際に、ほぼ圧力に差が生じないことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
還元ガスを用いた直接還元によって、酸化鉄を含有する塊状の材料から海綿鉄を製造するための装置であって、還元シャフト(1)と、前記還元シャフト(1)に前記還元ガスの全体を供給するための還元ガス分配管(2)と、を有する装置において、
前記還元シャフト(1)の下4分の1において、星状に配置された還元ガス分配管(2a,2b)または互いに平行に配置された還元ガス分配管(2)が設けられており、前記還元ガス分配管(2,2a,2b)は、下方に向かって延在する平行な壁を有する下方に向かって開放された半管シェルと、支柱管(3)とを備えていることを特徴とする装置。
【請求項6】
前記還元ガス分配管(2)は、1つのレベルに配置されていることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
星状に配置された前記還元ガス分配管(2)は長さが異なっており、前記短い方の還元ガス分配管(2b)は、好適には移動可能に支承されていることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項8】
前記長い方の還元ガス分配管(2a)は排出ホッパー(6)の上方に、前記短い方の還元ガス分配管(2b)は前記排出ホッパー(6)間の空間の上方に配置されることを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
還元ガス分配管(2a,2b)が星状に配置されている場合に、各長い方の還元ガス分配管(2a)は、短い方の還元ガス分配管(2b)の隣に配置されており、前記短い方の還元ガス分配管(2b)は、前記長い方の還元ガス分配管(2a)の僅かに上方に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項10】
少なくとも2つの平行に配置された還元ガス分配管(2)が、前記還元シャフトの壁面から、対向する還元シャフトの壁面へと貫通するように構成されていることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項11】
前記還元ガス分配管(2)が、水冷支承管(4)によって支持されていることを特徴とする請求項10に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−531389(P2010−531389A)
【公表日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513706(P2010−513706)
【出願日】平成20年6月10日(2008.6.10)
【国際出願番号】PCT/EP2008/004623
【国際公開番号】WO2009/000409
【国際公開日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【出願人】(301041586)シーメンス・ファオアーイー・メタルズ・テクノロジーズ・ゲーエムベーハー・ウント・コ (41)
【Fターム(参考)】