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海藻からのフコキサンチンの抽出方法とその装置
説明

海藻からのフコキサンチンの抽出方法とその装置

【課題】フコキサンチンの抽出率、回収率が著しく良好な、海藻からのフコキサンチンの抽出方法とその装置を提供することを課題とする。
【解決手段】海藻から、高圧流体によってフコキサンチンを抽出することを特徴とする。高圧流体としては、超臨界流体や亜臨界流体などが用いられる。また流体の成分としては、たとえば二酸化炭素が用いられる。このような高圧流体と補助溶媒との混合流体を用いてフコキサンチンを抽出することも可能である。さらに、天日乾燥、凍結乾燥、酵素処理などの前処理を行うことも可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海藻からのフコキサンチンの抽出方法と、その抽出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フコキサンチンは、天然色素の一種であるカロテノイドに含まれる化合物の一つであり、海藻、特にワカメ、コンブ、ヒジキ、モズクなどの褐色の褐藻類に多く含有されている。フコキサンチンは、従来から脂肪細胞の代謝性を有することによる肥満の抑制作用や、抗酸化力が強いことによる抗がん作用などが確認されており、これらの作用を利用するための種々の研究がなされている。
【0003】
たとえば特許文献1に開示された発明は、フコキサンチンを抗酸化剤として用いるものであり、珪藻に含まれる抗酸化能を有する物質がフコキサンチンであることを見い出したものである。また特許文献2に開示された発明は、フコキサンチンを抗腫瘍剤として用いる技術を開示するものであり、フコキサンチンが特に肝臓癌に対して抗腫瘍活性を有することを知見して発明されたものである。さらに特許文献3に係る発明は神経細胞保護剤に関するものであり、特許文献4に係る発明は血糖値上昇抑制剤に関するものであり、特許文献5に係る発明は糖尿病治療剤に関するものであり、特許文献6は血管新生抑制剤に関するものである。このように、フコキサンチンは、特に医薬品として、種々の機能を有することが見い出されており、さらに、天然素材由来の抽出成分で安全性も高いと認められることから、近年ではその活用が期待されている。
【0004】
しかしながら、フコキサンチンは前記海藻に微量にしか含有されていないため、このような海藻からフコキサンチンを抽出するのは必ずしも容易ではなく、実際には海藻に含有されている多種の有効成分から、フコキサンチンのみを抽出する有用な技術は未だ開発されていない。
【0005】
たとえば特許文献7に係る発明は、海藻を、温度0℃以上50℃未満、濃度55%以上70%以下のエタノール水溶液と接触させ、前記海藻を前記エタノール水溶液から分離して海藻食品材を得ることを特徴とするものである。
【0006】
しかし、この特許文献7に係る発明は、所望の色素を抽出することに主眼がおかれており、フコキサンチンのみならずクロロフィルも抽出するものである。そして、この特許文献7に係る発明は、海藻食品材を製造することを目的とするので、この技術を上記のような各種の特性を有する医薬品用として応用するのには適さないものである。またフコキサンチンを、エタノール水溶液を主体とする溶媒を用いて抽出するものであり、抽出率や回収率は良好なものではない。
【0007】
また特許文献8に係る発明は、海藻の一つである褐藻類の成熟体に含まれているフコキサンチンやフコステロールの量は少なく、実用的な量を得るには時間と費用がかかるという問題を解決することを課題とするもので、褐藻類中でのフコキサンチンやフコステロールの存在について、褐藻類の盤状体もしくは糸状体においては、その成熟体に比べ、数十倍ないし百倍以上のフコキサンチンやフコステロールを含むことに着目し、また、この盤状体もしくは糸状体は、成熟体の前駆体である直立体を形成させない条件で培養することにより、フコキサンチンやフコステロールを得るために十分な量の盤状体もしくは糸状体を得ることができることを見出して、発明されたものである。
【0008】
しかし、この特許文献8に係る発明は、褐藻類の盤状体もしくは糸状体の抽出手段が有機溶媒による抽出手段にすぎないので、フコキサンチンの抽出率、回収率は決して良好なものではない。
【0009】
さらに、特許文献9に係る発明は、フコキサンチンの活性成分は光によって分解されやすいという性質があること、フコキサンチンは褐藻類を原料として抽出するので、抽出過程において夾雑物であるアルギン酸やクロロフィルが混入してしまい、純度の高いフコキサンチンを入手することが困難であること等の問題点を解決することを課題としてなされたもので、遮光雰囲気下でエタノールによって成分を抽出し、活性炭によって夾雑物を吸着することによってフコキサンチンを得るフコキサンチンの精製方法としてなされたものである。
【0010】
しかしながら、この特許文献9に係る発明では、遮光雰囲気下で抽出することで、フコキサンチンの活性成分が光によって分解されやすいという問題を解決するものであるが、抽出手段自体は上記特許文献7に係る発明と同様のエタノールを主体とする溶媒を用いた抽出手段を採用するにすぎないものであるため、フコキサンチンの抽出率、回収率は決して良好なものではない。
【0011】
いずれにしても、上記特許文献7乃至9に係る発明は、海藻からエタノール等の有機溶媒によって抽出するという、ごく一般的な抽出手段を採用するにすぎないものであるので、フコキサンチンの抽出率、回収率が良好なものではなく、フコキサンチンの抽出に実効性のある技術とはいえないものであった。
【0012】
【特許文献1】特開平7−224278号公報
【特許文献2】特開平10−158156号公報
【特許文献3】特開2001−335480号公報
【特許文献4】特開2007−297370号公報
【特許文献5】特開2007−314451号公報
【特許文献6】特開2008−1623号公報
【特許文献7】特開平9−173012号公報
【特許文献8】特開2004−35528号公報
【特許文献9】特開2004−75634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、フコキサンチンの抽出率、回収率が著しく良好なフコキサンチンの抽出方法とその装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、海藻から、高圧流体によってフコキサンチンを抽出することを特徴とするフコキサンチンの抽出方法を提供するものである。高圧流体としては、好ましくは超臨界流体又は亜臨界流体が用いられる。また流体の成分としては、好ましくは二酸化炭素が用いられる。このような高圧流体と補助溶媒との混合流体を用いてフコキサンチンを抽出することも可能である。
【0015】
高圧流体によってフコキサンチンを抽出する前処理として、天日乾燥あるいは凍結乾燥を行うことが望ましい。また、これら天日乾燥もしくは凍結乾燥の前処理とともに、あるいはこれらの前処理とは別に酵素処理を行うことも可能である。
【0016】
さらに、本発明は、原料としての海藻を収容し、高圧流体を供給することによって前記海藻からフコキサンチンを抽出する抽出容器2と、該抽出容器2で抽出されたフコキサンチンを高圧流体とともに供給し、該高圧流体からフコキサンチンを分離する分離容器3とを具備することを特徴とするフコキサンチンの抽出装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、上述のように、抽出溶媒として、超臨界流体や亜臨界流体等の高圧流体を用いることで、この高圧流体を原料としての海藻の繊維の隙間や細胞内部に浸透させることによってフコキサンチンを効率的に抽出する方法であるため、上記特許文献7乃至9に係る発明のように、エタノール等の有機溶媒を主体とした溶媒によって抽出する方法に比べると、フコキサンチンの抽出率、回収率が著しく向上するという効果がある。
【0018】
一方、前記高圧流体を用いてフコキサンチンを抽出する際、フコキサンチンは脂溶性の物質であるため、原料としての海藻の内部に含有される余剰の水分が阻害物質となる。そこで、抽出の前処理として天日乾燥や凍結乾燥を行った場合には、余剰の水分が除去されるので、抽出率、回収率がより良好となる。
【0019】
さらに、前処理として酵素処理を行った場合には、酵素の作用によって原料としての海藻の細胞壁がより柔軟になり、その上で前記天日乾燥や凍結乾燥などの前処理を実施した場合、海藻中の余剰の水分がよりいっそう除去されやすくなると共に、前記高圧流体が海藻の組織や細胞内部により浸透しやすくなり、結果として抽出率、回収率がさらに良好となる効果がある。ちなみに、本発明においては、原料としての海藻に含有されていたフコキサンチンの含有量に対する抽出物中の含有量の比率である、フコキサンチンの回収率が65〜85%程度となり、原料中に含有されているフコキサンチンがほとんど抽出物として回収される、非常に優れたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明のフコキサンチンの抽出方法は、上述のように、海藻から、高圧流体によってフコキサンチンを抽出することを特徴とするものである。また、本発明のフコキサンチンの抽出装置は、上述のように原料としての海藻を収容し、高圧流体を供給することによって前記海藻からフコキサンチンを抽出する抽出容器2と、該抽出容器2で抽出されたフコキサンチンを高圧流体とともに供給し、該高圧流体からフコキサンチンを分離する分離容器3とを具備することを特徴とするものである。
【0021】
一般的に海藻とは、植物体の色が主として褐色である褐藻類、紅色である紅藻類、緑色である緑藻類の大きく3種類の群からなる海産の藻類のことをいう。この海藻のなかでフコキサンチンは、褐藻類に多く含まれる脂溶性物質であって、天然色素のひとつであるカロテノイドのなかの一種である。純度の高いものは橙色の柱状結晶構造を有する。褐藻類は、褐藻綱(Phaeophyceae)に分類される藻類で、ナガマツモ目(Chordariales)、コンブ目(Laminariales)、ウイキョウモ目(Dictyosiphonales)、アミジグサ目(Dictyotales)、ヒバマタ目(Fucales)、イソガワラ目(Ralfsiales)、カヤモノリ目(Scytosiphonales)、シオミドロ目(Ectocarpales)、クロガシラ目(Sphacelariales)、ウルシグサ目(Desmarestiales)、ムチモ目(Cutleriales)、ケヤリ目(Sporochnales)、ウスバオウギ目(Syringodermatales)に属する藻類が含まれる。
【0022】
褐藻類に属する具体的な海藻としては、ワカメ、コンブ、ヒジキ、モズク、ニセモズク、ナガマツモ、オキナワモズク、ナミマクラ、ニセフトモズク、ソメワケグサ、イシゲ、ネバリモ、クロモ、シワノカワ、イシモズク、ヒモマクラ、フトモズク、アナメ、チガイソ、アイヌワカメ、ネコアシコンブ、ツルモ、スジメ、ミスジコンブ、カジメ、アントクメ、アラメ、クロシオメ、トロロコンブ、ニセツルモ、コンブモドキ、コモンブクロ、エゾフクロ、ニセカヤモ、ウイキョウモ、サメズグサ、キタイワヒゲ、イワヒゲ、ハバモドキ、ヨコジマノリ、ヤハズグサ、アミジグサ、ニセアミジ、フタエオウギ、ヤレオウギ、ハイオウギ、サナダグサ、ウミウチワ、コモングサ、ヂガミグサ、シマオウギ、スギモク、ウガノモク、ヒバマタ、ヤバネモク、ジョロモク、エゾイシゲ、ホンダワラ、ラッパモク、マツモ、クロハンモン、キンイロハンモン、イシツキゴビア、ニセイシノカワ、イソガワラ、ムラチドリ、フクロノリ、ハバノリ、カゴメノリ、セイヨウハバノリ、カヤモノリ、イソブドウ、シオミドロ、ピラエラ、ヤドリミドロ、クロガシラ、カシラザキ、ウルシグサ、ムチモ、イチメガサ、ウミボッス、ケヤリ、ウスバオウギが含まれる。
【0023】
本発明においては、入手が容易で、大量かつ安定して供給され、比較的安価なワカメ(Undaria pinnatifida)が主として用いられる。ワカメは、褐藻類コンブ目チガイソ科に属する海藻である。原料としては、ワカメの葉部、茎部、根部等を用いることができるが、フコキサンチンは特にワカメの葉部に多く含有されているため、葉部を原料として用いることが望ましい。なお、当該原料は、採集されたそのままの形状のものを用いることも可能であるが、必要に応じて乾燥、細切、破砕、粉砕等の処理を行ったものを用いることが、成分の抽出効率を高める上で好ましい。
【0024】
高圧流体としては、超臨界流体や亜臨界流体を用いることが好ましい。流体の成分としては、たとえば二酸化炭素(臨界温度:31.1℃,臨界圧力:7.38MPa)の他に、亜酸化窒素(臨界温度:36.4℃,臨界圧力:7.24MPa)やトリフルオロメタン(臨界温度:25.9℃,臨界圧力:4.84MPa)等の、臨界点が二酸化炭素に近似している成分を使用することが好ましい。特に、作業環境における人に対する安全性および工業化の可能性の観点から、二酸化炭素を用いるのが特に好ましい。
【0025】
より具体的な実施形態について、図1に従って説明する。図1は、一実施形態としてのフコキサンチンの抽出装置の概略ブロック図を示す。本実施形態のフコキサンチンの抽出装置は、ボンベ1と、抽出容器2と、分離容器3と、補助溶媒用容器4と、高圧ポンプ5と、高圧ポンプ6と、保圧弁7と、流速計8と、積算流量計9とを具備して構成されている。
【0026】
ボンベ1は、高圧流体として用いる流体の成分としての二酸化炭素を充填したボンベであり、このボンベ1から二酸化炭素が系内に供給される。
【0027】
抽出容器2は、原料であるワカメを収容してフコキサンチンを抽出するための容器で、この抽出容器2の内部で前記収容されたワカメに高圧流体を接触させて該ワカメからフコキサンチンを抽出することになる。抽出容器2は、耐圧性のステンレス製のもので、容器本体2aと蓋体2bとで構成されている。なお、抽出容器2は、流体の成分を高圧流体の状態に保持するために恒温装置(図示せず)を具備することが好ましい。この恒温装置としては、ウォーターバス、カラムオーブン等、温度を一定に維持できるものであれば、その種類は問わない。
【0028】
分離容器3は、前記抽出容器2で抽出されたフコキサンチンと高圧流体とを供給した後、フコキサンチンと高圧流体の成分とを分離するための容器である。なお、フコキサンチンと高圧流体の成分を分離するために、当該分離容器3の内部で高圧の状態から大気圧まで減圧操作を行うことになる。このとき、流体成分の断熱膨張の原理により急激に温度が低下する。その温度低下によって、分離容器3およびその周辺が急激に冷却されて結露し、さらに流体成分自体が凍結することによってガスの流露が閉塞する恐れがある。それらを防止するために、前記抽出容器2と同様に恒温設備を具備することが好ましいが、強制的に流体成分の凍結を防止するためには加温設備を具備することが特に好ましい。
【0029】
補助溶媒用容器4は、フコキサンチンを抽出するための補助溶媒を収容するための容器である。補助溶媒は、高圧ポンプ6によって抽出容器2へ供給されるが、図1に示すように抽出容器2の手前で高圧流体成分と合流させて高圧流体と補助溶媒との混合流体として抽出容器2へ導入する場合と、図示はしていないが高圧流体とは別に抽出容器2へ単独で導入する場合がある。いずれの場合も、高圧流体と補助溶媒の混合流体が抽出容器2の内部でワカメと接触してフコキサンチンを抽出するのである。
【0030】
高圧ポンプ5は、前記ボンベ1の流体成分を抽出容器2へ供給するためのものであり、その高圧ポンプ5の圧力は、両側の圧力計10、11で測定され、保圧弁7によって調整される。高圧ポンプ5は、流体を安定的かつ定量的に移送するために、プランジャー式あるいはダイヤフラム式等の容積式ポンプであることが好ましい。
【0031】
流速計8は、前記分離容器3で分離された流体である二酸化炭素の流速を測定するものであり、積算流量計9は、系を流通する流体の流量を測定するものである。その他、本実施形態のフコキサンチンの抽出方法に使用する装置には、さらに、操作に必要な補助的な耐圧ハルブ(図示せず)、配管部(線図で図示している)等が具備されている。
【0032】
次に、上記のような装置を用いて、フコキサンチンを抽出する方法の実施形態について説明する。
【0033】
先ず、抽出容器2内に、処理対象物である原料のワカメを収容する。このワカメは、予め天日乾燥によって前処理したものである。次に、抽出容器2を収容している恒温槽を所定の温度に設定し、保圧弁7を所定の圧力に設定した上で、ボンベ1から抽出容器2へ二酸化炭素を供給する。抽出容器2への二酸化炭素の供給は、高圧ポンプ5によって連続的になされる。
【0034】
より具体的には、高圧ポンプ5によって昇圧され、流路を介して抽出容器2側へ供給される圧力が上記保圧弁7によって設定された圧力に保持されるようになっている。即ち、高圧ポンプ5による流体の吐出圧力が保圧弁7の設定圧力未満であると、連続的に流体が流路を介して抽出容器2側へ供給される。一方、高圧ポンプ5による流体の吐出部の圧力が保圧弁7の設定圧力以上になると、保圧弁7が開の状態となり、保圧弁7を介して流体が高圧ポンプの供給部側へ返送される。
【0035】
たとえば保圧弁7の設定値を20MPaとした場合、装置の運転開始後には、抽出容器2側へ供給される流体の圧力は、ボンベ圧の5MPaから上昇し、臨界圧7.4MPaを超えて、20MPaまで上昇する。その後は、抽出容器2の圧力は常に20MPaに安定した状態で維持されることとなる。なお、温度異常などの何らかの条件変化によって高圧ポンプ5の吐出部の圧力が20MPa以上に上昇すると、20MPaを超えた圧力の流体は、開いた保圧弁7を介して高圧ポンプ5の供給部側へ返送されることとなる。
【0036】
このように、高圧ポンプ5の連続運転によって、抽出容器2の圧力は20MPaより下がらないように維持され、また保圧弁7によって20MPaより上がらないように維持されることとなる。この場合、保圧弁7で設定される圧力は、20MPaに限定されるものではない。
【0037】
このようにして、臨界圧力以上、臨界温度以上に昇圧、昇温された流体、すなわち超臨界流体は抽出容器2へ供給される。そして、抽出容器2へ供給された超臨界流体は、該抽出容器2内で予め収容されていたワカメからフコキサンチンを抽出するのである。
【0038】
温度と圧力は、使用する流体が超臨界流体になる条件、すなわち臨界圧力以上、臨界温度以上の条件であればよい。本実施形態で用いる二酸化炭素は、温度31.1℃(臨界温度)、圧力7.38MPa(臨界圧力)以上の温度と圧力の条件下で超臨界流体となり、上記のような恒温槽の温度設定及び保圧弁7での圧力設定によって超臨界状態を維持することができる。本実施形態では、温度は40℃に設定され、圧力は20MPaに設定される。
【0039】
そして、抽出容器2内の温度と圧力が所定の値(40℃,20MPa)に達した後、所定の時間(本実施形態では1時間)、二酸化炭素を流通させる。このとき、分離容器3側への流路は閉塞されており、分離容器3への二酸化炭素の供給はなされない。すなわち、系内は所定の温度と圧力に保持された状態となり、原料であるワカメの繊維や細胞内部に超臨界流体となった二酸化炭素が均一に隅々まで浸透し、そこからフコキサンチンを抽出するための準備段階を整えることになる。さらに、浸透した超臨界二酸化炭素には既にフコキサンチンの溶解が進行している。
【0040】
このように40℃の温度と20MPaの圧力で系内を1時間保持した後、分離容器3側への流路を開放状態とし、抽出容器2から分離容器3側へも二酸化炭素を流通させる。そして、分離容器3側への流路を開放状態とした状態で、二酸化炭素を5時間流通させる。
【0041】
分離容器3側への流路を開放状態とした状態で、40℃の温度と20MPaの圧力で5時間、新鮮な二酸化炭素をワカメに接触させて流通することで、フコキサンチンが溶解した超臨界二酸化炭素と当該新鮮な二酸化炭素が入れ替わる。さらに、ワカメに浸透した新鮮な二酸化炭素には新たにフコキサンチンが溶解する。そして、このサイクルが5時間繰り返される。結果的に二酸化炭素を介してワカメからフコキサンチンが抽出され、抽出容器2の外部に排出されて分離容器3に供給されることとなる。
【0042】
さらに、二酸化炭素を流通させている状態で、補助溶媒用容器4から高圧ポンプ6を介して補助溶媒を抽出容器2へ供給する。本実施形態では、補助溶媒としてエタノールを用いる。このとき、抽出容器2へ供給される流体は、二酸化炭素とエタノールの混合流体となる。エタノールは油性物質を良く溶解する効果があるため、元来脂溶性のあるニ酸化炭素と混合することによって、フコキサンチンの溶解力が相乗的に向上することとなる。なお、抽出物として、超臨界二酸化炭素、エタノール、及びフコキサンチンの3者の混合物が分離容器3へ供給されることとなる。
【0043】
分離容器3は、大気と連通状態とされており、分離容器3内が減圧されることにより二酸化炭素は気体となり、フコキサンチン及びエタノールから分離されて、分離容器3から排出され、さらに系外に排出される。そして、分離容器3でフコキサンチンが沈殿し回収される。分離容器3から排出される二酸化炭素の流速は流速計8で測定され、さらに積算流量計9で系を流通する二酸化炭素の流量が測定される。
【0044】
上述のように、本実施形態では、抽出容器2内に原料であるワカメを収容するとともに、その抽出容器2に超臨界二酸化炭素を供給し、超臨界二酸化炭素の抽出力によってワカメからフコキサンチンを抽出し、そのフコキサンチンと超臨界二酸化炭素との混合流体を分離容器3で分離してフコキサンチンを回収することとしたため、フコキサンチンの抽出率、回収率が、単にアルコール等の溶媒のみ抽出していた従来の方法に比べて、著しく良好となった。さらにエタノールを超臨界二酸化炭素の補助溶媒として用いることで、抽出率、回収率がさらに向上することとなった。
【0045】
なお、上記実施形態では、超臨界流体として二酸化炭素(臨界温度:31.1℃,臨界圧力:7.38MPa)を用いたが、これ以外に、亜酸化窒素(臨界温度:36.4℃,臨界圧力:7.24MPa)、トリフルオロメタン(臨界温度:25.9℃,臨界圧力:4.84MPa)等を使用することができる。これらのうちでも、作業環境における人に対する安全性および工業化の可能性の観点から二酸化炭素を用いるのが特に好ましい。
【0046】
また、該実施形態では、高圧流体として超臨界二酸化炭素を用いたが、操作条件として、臨界温度未満でかつ臨界圧力以上、臨界温度以上でかつ臨界圧力未満、および臨界温度と臨界圧力を共に僅かに下回る条件におかれた流体、いわゆる亜臨界二酸化炭素を用いることも可能である。さらには超臨界流体や亜臨界流体以外の高圧流体を用いることも可能である。
【0047】
また、上記実施形態では、補助溶媒としてエタノールを用いたが、補助溶媒の種類はこれに限定されるものではなく、たとえばメタノール、プロパノールなどの低級アルコール、ノルマルヘキサンやシクロヘキサンなどの炭化水素、アセトン、酢酸エチル等を用いることも可能である。要は、食品あるいは医薬品関連で適用される物質を取り扱う観点、および天然物質を劣化させずに品質を保持する観点などから適宜、選択することが好ましいのである。
【0048】
さらには、ココナツのような天然物を補助溶媒用の試料として用いることができる。ココナツを、原料であるワカメとともに抽出容器2内に収容し、その状態で超臨界二酸化炭素を抽出容器2へ供給すると、超臨界二酸化炭素によってココナツから油分(ココナツオイル)が抽出され、その油分が超臨界二酸化炭素の補助溶媒として機能して、ワカメからフコキサンチンを抽出するのである。なお、ゴマ、大豆、カカオ、ピーナッツなど、油分を多く含有する天然果実および種子類を用いても同様の効果が得られる。
【0049】
さらに、上記実施形態では、抽出容器2とは別に補助溶媒用容器4を設けたが、このような補助溶媒用容器4を設けずに、たとえば抽出容器2に補助溶媒を収容して超臨界流体とともに用いてもよい。
【0050】
さらに、上記実施形態で用いた装置に関し、抽出容器2や分離容器3の材質、配管の材質、機器類の型式、その他図示されていないラインフィルター、逆止弁、ドレン弁、バイパス配管、安全弁、架台等の一般的な附属部品については適宜、選択して使用することが可能である。
【実施例】
【0051】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0052】
(実施例1)
本実施例は、ワカメからフコキサンチンを抽出する実施例で、4種類の品質のワカメについて、フコキサンチンの抽出率や回収率を求めたものである。原料のワカメとしては徳島県産の4種類の品質のもの(Grade1:店頭販売される高級品質のもの、Grade2:店頭販売される中級品質のもの、Grade3:低級品質で店頭販売されないもの、Grade4:Grade3の品質よりおとる品質のもの)を、予め天日乾燥により前処理したものを用いた。天日乾燥は(2日間)行った。
【0053】
実験には、上記図1に示すような装置を用いた。抽出容器への試料(ワカメ)の充填量は80.0gとした。抽出容器内の温度と圧力は、それぞれ40℃と20MPaに調整した。抽出に関する時間は、保持時間を1時間、流通時間を5時間、合計6時間とした。二酸化炭素の供給条件は、高圧ポンプの送液速度が、7cc/min(重量換算で7g/min)になるように設定した。
【0054】
さらに、Grade1及びGrade2については、超臨界二酸化炭素のみを用いて実験を行ったが、Grade3及びGrade4については、超臨界二酸化炭素のみを用いた場合と、補助溶媒としてエタノールを超臨界二酸化炭素とともに用いた場合との双方について実験を行った。補助溶媒を用いる場合は、二酸化炭素の送液速度に対して5モル%のエタノールを添加した。すなわち、二酸化炭素の1molあたりの重量を44.01g、エタノールの1molあたりの重量を46.07gとすると、1minあたりのエタノールの送液重量は、次の計算値となる。
(7g/44.01g)×0.05×46.07g=0.366g
よって、エタノールの送液速度は、0.366g/minとなる。実験結果を表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
表1において、「抽出物量」とは、抽出された抽出物の量であり、表中の数値の単位はgである。また「試料中含有量」とは、試料であるワカメ1g中に含有されているフコキサンチンの量であり、表中の数値の単位は(mg/g)である。さらに「抽出物中含有量」とは、抽出物1g中に含有されているフコキサンチンの量であり、表中の数値の単位は(mg/g)である。
【0057】
さらに「抽出率」とは、試料に対する抽出物量の割合、すなわち、抽出容器に充填された試料に対する、抽出された抽出物量の割合であり、次式で定義する。
(抽出率)=(抽出物量)/(抽出容器への試料の充填量)×100
従って、表中の数値の単位は(%)である。たとえばGrade1の場合は、
(0.31(g)/80.0(g))×100
で求められる。さらに「回収率」とは、前記試料中含有量に対する抽出物中含有量の比率であり、次式で定義する。
(回収率)=[(抽出物中含有量)×(抽出率)]/(試料中含有量)
たとえばGrade1の場合は、
7.5(mg/g)×[0.31(g)/80.0(g)×100]

0.146(mg/g)
で求められ、単位は(%)である。
【0058】
表1から明らかなように、いずれのRunNo.の実験の場合も、抽出率の値は、0.3%以上の優れたものであった。また、フコキサンチンの回収率は、いずれの場合も15%以上と非常に優れたものであった。また、Grade3及びGrade4については、補助溶媒を用いない場合には抽出率がそれぞれ0.40%、0.34%であったのに対し、補助溶媒を用いた場合には抽出率はともに0.80%に上昇した。
【0059】
(実施例2)
本実施例では、温度条件と圧力条件を変えた場合のフコキサンチンの抽出実験を行い、抽出率と回収率を求めた。条件は、温度40℃で圧力20MPa、温度40℃で圧力30MPa、温度60℃で圧力30MPaの3通りの条件で行った。試料は、上記実施例1で用いた4種類の品質の試料のうち、予め天日乾燥により前処理したGrade3及びGrade4を用いた。温度40℃で圧力20MPaの条件の場合には、補助溶媒を用いた場合と用いない場合との2通りで実験した。
【0060】
実験には、上記実施例1と同様に図1の装置を用い、試料の充填量は実施例1と同様に80.0gとした。また抽出に関する時間は、実施例1と同様に、保持時間を1時間、流通時間を5時間、合計6時間とした。二酸化炭素の供給条件は、高圧ポンプの送液速度が、7cc/min(重量換算で7g/min)になるように設定した。
【0061】
補助溶媒を用いる場合は、実施例1と同様の条件で5モル%のエタノールを添加した。実験結果を表2に示す。なお、抽出率と回収率は、上記実施例1と同じ定義式で求めた。
【0062】
【表2】

【0063】
表2からも明らかなように、いずれの場合もフコキサンチンの回収率は良好な値であった。特に、Grade3の試料を用いた場合には、いずれの条件でもフコキサンチンの回収率が20%を超えた。なお、温度条件が60℃の場合より、40℃の場合の回収率が、良好な値となることがわかった。
【0064】
(実施例3)
本実施例では、上記実施例1のような保持時間の1時間、流通時間の5時間、計6時間のフコキサンチンの抽出操作を4回繰り返して行い、フコキサンチンの抽出物中含有量(mg/g)、抽出率(%)、および回収率(%)を求めてその変化を調べた。
【0065】
原料のワカメには上記実施例1と同じGrade3のものを用い、前処理として2日間天日乾燥したものを試料とした。実験には上記図1の装置を用い、抽出容器内への試料の充填量は80.0gとした。抽出容器内の温度と圧力は、それぞれ40℃と20MPaに調整した。抽出に関する時間は、保持時間を1時間、流通時間を5時間、合計6時間とした。二酸化炭素の供給条件は、高圧ポンプの送液速度が、7cc/min(重量換算で7g/min)になるように設定した。実験結果を表3に示す。本実施例においても、抽出率と回収率は上記実施例1と同じ定義式で求めた。
【0066】
【表3】

【0067】
表3からも明らかなように、フコキサンチンの抽出物中含有量は、1回目の操作では8.3mg/gであり、2回目、3回目、4回目では、それぞれ23.9mg/g、51.3mg/g、61.9mg/gと増加した。このフコキサンチンの抽出物中含有量と上記抽出率の結果から、1回目の操作では、フコキサンチン以外の不純物が抽出物中に多く含有されていたものと考えられ、2回目、3回目、4回目と操作を重ねるにつれて、抽出物中の不純物の量が徐々に少なくなり、その分、フコキサンチンの抽出物中含有量が増加したものと考えられる。
【0068】
これに対して、フコキサンチンの抽出率は、1回目の操作では0.39%であり、2回目、3回目、4回目では、それぞれ0.14%、0.06%、0.05%であった。この結果から、初期操作時の1回目に抽出率が最も高く、抽出物が最も多く抽出されていることが示され、2回目〜4回目の操作では、徐々に抽出率が減少することがわかった。ただし、4回の操作で、原料から累計0.64%の抽出物が抽出できたことになる。
【0069】
さらに、回収率は、いずれも約20%程度と良好であり、特に4回の操作によって回収されたフコキサンチンの累計の回収率は82.9%と非常に良好なものであった。
【0070】
(実施例4)
本実施例では、ワカメの有効利用の観点から、上記実施例1乃至3で用いたGrade1〜4以外の廃棄処分される品質のものを用い、前処理として異なる乾燥法を施した後にフコキサンチンの含有量を比較した。前処理の乾燥法として、上記実施例1、2のような天日乾燥の他、凍結乾燥、熱風乾燥、マイクロ波による乾燥を行った。
【0071】
先ず、前処理として約1200gのワカメを乾燥し、80.0gの質量となるまでの乾燥時間を測定した。質量は、精密電子天秤で測定した。60℃のマイクロ波加熱、40℃のマイクロ波加熱、60℃の熱風乾燥、天日乾燥、凍結乾燥の5種類の乾燥法で行った。その結果を図2のグラフに示す。図2からも明らかなように、60℃のマイクロ波加熱では約3時間で目的の質量となり、40℃のマイクロ波加熱では約4時間で目的の質量となり、60℃の熱風乾燥では約11時間で目的の質量となった。一方、図2には示さないが、天日乾燥では目的の質量となるまでに約2日間を要し、凍結乾燥では約1週間を要した。
【0072】
上記の処理で得られた各乾燥処理後の試料中のフコキサンチンの含有量を測定した。その結果を表4に示す。表4において、FDは凍結乾燥、MW60は60℃のマイクロ波加熱、MW40は40℃のマイクロ波加熱、Hot−Air60は60℃の熱風乾燥、Solarは天日乾燥をそれぞれ略記したものである。またフコキサンチンの試料中含有量の単位は(mg/g)である。
【0073】
【表4】

【0074】
表4からも明らかなように、フコキサンチンの試料中含有量は、前処理として凍結乾燥(1週間)を行った場合には0.399mg/gで最も多かった。また天日乾燥(2日間)を行った場合には0.290mg/gで次に多かった。さらに60℃の熱風乾燥(11時間)を行った場合には0.258mg/g、40℃のマイクロ波加熱(4時間)を行った場合には0.232mg/g、60℃のマイクロ波加熱(3時間)を行った場合には0.204mg/gであった。
【0075】
この結果からも明らかなように、80.0gの質量となるまでの乾燥時間が長い前処理法ほど、フコキサンチンの試料中含有量が多いことがわかった。なお、マイクロ波加熱や熱風乾燥では目的質量となるまでの乾燥時間が短くなるが、凍結乾燥や天日乾燥のフコキサンチンの含有量と比較して大幅に少ないことから、マイクロ波加熱や熱風乾燥は水分の除去には有効であるが、ワカメに含有されている一部のフコキサンチンが分解して減少した可能性が示唆された。
【0076】
上述のように前処理としての乾燥を行い、それぞれの乾燥法で80.0gの試料を得た後、上記図1の装置を用いて超臨界二酸化炭素による抽出処理を行った。上記それぞれの乾燥法で得られた80.0gの試料を抽出容器内に充填し、40℃、20MPaの条件で実験を行った。抽出時間は、保持時間1時間、流通時間5時間の計6時間とした。二酸化炭素の供給条件は、高圧ポンプの送液速度が、7cc/min(重量換算で7g/min)になるように設定した。
【0077】
測定は、それぞれの試料について4回ずつ行い、フコキサンチンの抽出物中含有量(mg/g)、抽出率(%)、回収率(%)を測定した。抽出物中含有量の結果を表5に、抽出率の結果を表6に、回収率の結果を表7にそれぞれ示す。
【0078】
フコキサンチンの抽出物中含有量に関しては、表5からも明らかなように、1回目の測定では、天日乾燥を行った場合が15.2mg/gと最も多く、60℃の熱風乾燥を行った場合が9.6mg/g、凍結乾燥を行った場合が8.8mg/g、40℃のマイクロ波加熱を行った場合が4.1mg/g、60℃のマイクロ波加熱を行った場合が3.7mg/gであった。
【0079】
これに対し、2回目以降の測定では、いずれの乾燥法を行った場合にもフコキサンチンの抽出物中含有量が増加した。これは、上記実施例3の結果と同様に、1回目の操作では、フコキサンチン以外の不純物が抽出物中に多く含有されており、2回目、3回目、4回目と操作を重ねるにつれて、抽出物中の不純物の量が徐々に少なくなり、その分、フコキサンチンの抽出物中含有量が向上したものと考えられる。
【0080】
抽出率に関しては、表6からも明らかなように、1回目の測定では、前処理として凍結乾燥を行った場合が1.24%と最も多く、続いて40℃のマイクロ波加熱を行った場合が0.71%、天日乾燥を行った場合が0.56%、60℃の熱風乾燥を行った場合が0.45%、60℃のマイクロ波加熱を行った場合が0.42%であった。
【0081】
これに対し、2回目の測定では、天日乾燥の場合が0.30%、60℃のマイクロ波加熱の場合が0.26%、40℃のマイクロ波加熱の場合が0.16%、60℃の熱風乾燥の場合が0.15%、凍結乾燥の場合が0.11%であった。さらに、3回目及び4回目の測定では、いずれの前処理の場合も、抽出率は減少した。
【0082】
回収率に関しては、表7からも明らかなように、1回目の測定では、天日乾燥を行った場合が29.4%と最も多く、凍結乾燥を行った場合が27.2%、60℃の熱風乾燥を行った場合が16.8%、40℃のマイクロ波加熱を行った場合が12.5%、60℃のマイクロ波加熱を行った場合が7.5%であった。
【0083】
これに対し、2回目の測定では、凍結乾燥、60℃の熱風乾燥、40℃のマイクロ波加熱、60℃のマイクロ波加熱のいずれの場合もフコキサンチンの回収率が減少したが、天日乾燥の場合には、フコキサンチンの回収率はさらに増加した。ただし3回目、4回目の測定では、天日乾燥の場合も含めて、全体としてフコキサンチンの回収率は減少した。
【0084】
なお、計4回の操作によるフコキサンチンの回収率の総計は、いずれも65%以上で良好なものであり、特に前処理として天日乾燥を行った場合には、非常に良好であった。
【0085】
【表5】

【0086】
【表6】

【0087】
【表7】

【0088】
(実施例5)
本実施例では、抽出容器に充填する試料として、ワカメの他にココナツを用いて実験を行った。ココナツは油分を含んでおり、超臨界二酸化炭素を接触することによってココナツ中の油分であるココナツオイルが抽出され、そのココナツオイルが超臨界二酸化炭素の補助溶媒として、ワカメ中のフコキサンチンを抽出する機能を奏するものであることを確認した。
【0089】
原料のワカメについては、実施例4と同様にワカメの有効利用の観点から、上記 Grade1〜4以外の廃棄処分される品質のものについて、実施例1と同様に天日乾燥により前処理したものを用いた。実験には、上記図1に示すような装置を用い、抽出容器内には試料としてのワカメと、補助溶媒として機能させるココナツとを充填した。充填量をワカメ50.0g、ココナツ50.0gとしたもの、ワカメ25.0g、ココナツ50.0gとしたもの、及びワカメ50.0g、ココナツ25.0gの3種類を準備した。またワカメ単独についても実験を行った。
【0090】
温度と圧力は40℃、20MPaに調整した。抽出時間は、保持時間1時間、流通時間5時間の計6時間とした。二酸化炭素の供給条件は、高圧ポンプの送液速度が、7cc/min(重量換算で7g/min)になるように設定した。
【0091】
そして、抽出物中のフコキサンチンの含有量、抽出率、回収率を求めた。測定は4回行った。実験結果として、フコキサンチンの抽出物中含有量を表8に、抽出率を表9に、回収率を表10に、それぞれ示す。表8乃至10において、ワ50g:コ50gは、ワカメ50.0g、ココナツ50.0gを充填した場合であり、ワ25g:コ50gは、ワカメ25.0g、ココナツ50.0gを充填した場合であり、ワ50g:コ25gは、ワカメ50.0g、ココナツ25.0gを充填した場合である。Run NO.は1回目、2回目、3回目、4回目の測定を示す。表8におけるフコキサンチンの抽出物中含有量の単位は(mg/g)、表9における抽出率の単位は(%)、表10における回収率の単位は(%)である。
【0092】
【表8】

【0093】
【表9】

【0094】
【表10】

【0095】
フコキサンチンの抽出物中含有量に関しては、表8からも明らかなように、1回目の測定では、ワカメ50.0g、ココナツ50.0gの場合は0.0022mg/g、ワカメ25.0g、ココナツ50.0gの場合は0.0017mg/g、ワカメ50.0g、ココナツ25.0gの場合は0.006mg/gであった。2回目の測定では、ワカメ50.0g、ココナツ50.0gの場合に著しい増加が認められ、ワカメ25.0g、ココナツ50.0gの場合も増加が認められたが、ワカメ50.0g、ココナツ25.0gの場合は1回目の測定とほぼ同様であった。
【0096】
さらに、3回目の測定では、ワカメ50.0g、ココナツ50.0gに増加が認められなかったが、ワカメ25.0g、ココナツ50.0gの場合はわずかに増加が認められ、ワカメ50.0g、ココナツ25.0gの場合は著しい増加が認められた。また4回目の測定では、ワカメ50.0g、ココナツ50.0g及びワカメ50.0g、ココナツ25.0gの場合ともに著しい増加が認められた。ワカメ25.0g、ココナツ50.0gの場合には増加はわずかであった。
【0097】
全体として、ワカメ25.0gの場合に比べてワカメ50.0gの場合はフコキサンチンの抽出物中含有量が多く、特にワカメとココナツの質量比が2:1であるワカメ50.0g、ココナツ25.0gの場合にフコキサンチンの抽出物中含有量が最も多かった。これらのことから、試料としてのワカメに、ある程度の充填量が必要であることがわかった。またワカメとココナツの質量比が2:1である場合に、ココナツの補助溶媒としての機能が効果的に発揮されることがわかった。
【0098】
抽出率に関しては、表9からも明らかなように、1回目の測定では、ワカメ50.0g、ココナツ50.0gの場合は19.2%、ワカメ25.0g、ココナツ50.0gの場合は29.9%、ワカメ50.0g、ココナツ25.0gの場合は17.9%であった。これに対して、2回目の測定では、いずれの場合も抽出率は減少し、3回目、4回目の測定では、さらに抽出率が減少した。
【0099】
回収率に関しては、表10からも明らかなように、1回目の測定では、ワカメ50.0g、ココナツ50.0gの場合は26.8%、ワカメ25.0g、ココナツ50.0gの場合は47.6%、ワカメ50.0g、ココナツ25.0gの場合は55.7%であった。また、ワカメのみの場合には、29.4%であった。
【0100】
1回目の測定では、ワカメ50.0g、ココナツ50.0gの場合に回収率が増加したが、ワカメ25.0g、ココナツ50.0gの場合、及びワカメ50.0g、ココナツ25.0gの場合は、回収率は減少した。ワカメのみの場合は同程度であった。3回目及び4回目の測定では、全体的に回収率は減少した。しかしながら、計4回の操作による回収率の総計は、いずれも非常に良好なものであった。
【0101】
(実施例6)
本実施例では、原料のワカメを凍結乾燥する場合の前処理として酵素処理を実施することによる効果を確認した。試料として、前記実施例4および5で用いたものと同じワカメを用いた。まず、ワカメに対して酵素を浸透させるために、ワカメ100gに対して酵素溶液500gを加え、60℃の浴槽中で2時間反応させた。この浴槽中での酵素処理後、1週間凍結乾燥して試料とした。なお、酵素処理を施さないものとして、ワカメ100gを60℃の浴槽中で2時間浸漬させたものをそのまま1週間凍結乾燥した試料も作成した。
【0102】
酵素溶液としては、セルラーゼY−2NC(ヤクルト薬品工業株式会社製)の0.6%酵素溶液を用いた。セルラーゼY−2NCは、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)が産生するセルラーゼで、セルラーゼの他にヘミセルラーゼを高力価で含有する酵素である。
【0103】
実験には、上記図1に示すような装置を用い、上記凍結乾燥後の試料80.0gを抽出容器内に充填した。温度と圧力は、40℃、20MPaに調整した。抽出時間は、保持時間1時間、流通時間5時間の計6時間とした。二酸化炭素の供給条件は、高圧ポンプの送液速度が、7cc/min(重量換算で7g/min)になるように設定した。
【0104】
上記のような酵素処理を行った場合の試料と、行っていない場合の試料について超臨界抽出処理し、フコキサンチンの抽出物中の含有量、抽出率、及び回収率を求めた。その実験結果を表11に示す。表11において、フコキサンチンの抽出物中含有量の単位は(mg/g)、抽出率の単位は(%)、及び回収率の単位は(%)である。
【0105】
【表11】

【0106】
表11からも明らかなように、抽出率に関しては、酵素処理を行っていない場合が0.45%であるのに対し、酵素処理を行った場合には0.55%と良好であった。また、フコキサンチンの回収率に関しては、酵素処理を行っていない場合が20.8%であるのに対し、酵素処理を行った場合には25.1%と良好であった。なお、フコキサンチンの抽出物中含有量に関しては、酵素処理を行った場合と行っていない場合とで同程度であった。これは、酵素処理を実施したとしてもフコキサンチンが分解されないということを示している。
【0107】
結果として、抽出率及び回収率の双方において、酵素処理を行っていない場合に比べて行った場合に良好であったこと、さらに、酵素処理を行ってもフコキサンチンが分解されないことなどが明らかとなり、前処理として酵素処理を行うことによる効果が認められた。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】一実施形態としてのフコキサンチンの抽出方法の工程を示す概略ブロック図。
【図2】前処理としての乾燥法の試料の質量と乾燥時間との関係を示すグラフ。
【符号の説明】
【0109】
2 抽出容器
3 分離容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海藻から、高圧流体によってフコキサンチンを抽出することを特徴とするフコキサンチンの抽出方法。
【請求項2】
高圧流体が、超臨界流体又は亜臨界流体である請求項1記載のフコキサンチンの抽出方法。
【請求項3】
高圧流体の成分が二酸化炭素である請求項1又は2記載のフコキサンチンの抽出方法。
【請求項4】
海藻が褐藻類である請求項1乃至3のいずれかに記載のフコキサンチンの抽出方法。
【請求項5】
高圧流体によってフコキサンチンを抽出する工程の前処理として、天日乾燥を行う請求項1乃至4のいずれかに記載のフコキサンチンの抽出方法。
【請求項6】
高圧流体によってフコキサンチンを抽出する工程の前処理として、凍結乾燥を行う請求項1乃至4のいずれかに記載のフコキサンチンの抽出方法。
【請求項7】
高圧流体によってフコキサンチンを抽出する工程の前処理として、酵素処理を行う請求項1乃至6のいずれかに記載のフコキサンチンの抽出方法。
【請求項8】
高圧流体とともに、補助溶媒を用いてフコキサンチンを抽出する請求項1乃至7のいずれかに記載のフコキサンチンの抽出方法。
【請求項9】
原料としての海藻を収容し、高圧流体を供給することによって前記海藻からフコキサンチンを抽出する抽出容器(2)と、該抽出容器(2)で抽出されたフコキサンチンを高圧流体とともに供給し、該高圧流体からフコキサンチンを分離する分離容器(3)とを具備することを特徴とするフコキサンチンの抽出装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−6783(P2010−6783A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−170910(P2008−170910)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(599073917)財団法人かがわ産業支援財団 (35)
【出願人】(307005586)株式会社フード・リサーチ (4)
【Fターム(参考)】