説明

海藻着生用ブロック及びその製造方法並びに海藻養殖方法

【課題】資源の有効活用、海水浄化、海洋資源の育成の更なる促進を図る。
【解決手段】海藻着生用ブロック12は、バイオマス資源を原材料として生成される炭、タール、ピッチ、樹脂成分を加熱圧縮して成形される炭基盤材10を、少なくとも表面から一定の厚みの部分、又は、少なくとも一部表面に備えるものである。炭基盤材10のポーラス構造が、海藻の着生面として有効に機能すると共に、軽量かつ高強度で、腐敗し難いものである。又、その製造直後でも水中に使用することでバイオフィルムが表面に即時に発生し、生態系への阻害要因を作らず、直ちに海藻の着生が可能となる。又、構成材料・成分の比率をコントロールすることで、海藻の生長に必要な栄養分の増減や、海藻着生用ブロック12の海中での浮力の調整を行うことができる。しかも、育成する海藻種の根の大きさに応じた粒子径の炭を用いることで、海藻の生長を促進することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海藻着生用ブロック及びその製造方法並びに海藻養殖方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、間伐材を漁礁や海藻礁として有効利用することにより、廃棄物の削減と共に、海水浄化、海洋資源の育成を促進する試みがなされている。しかしながら、間伐材は、フナムシ等の食害を受け、又、木質材料が腐敗することによって、長期間の使用に耐えるものではなく、再利用も困難であった。
一方、本出願人らは、漁業系廃棄物である貝殻を利用した藻場造成用コンクリートブロックを発案し、これを海底に設置することで、耐久性の高い人工海藻礁の造成を可能としている(例えば、特許文献1)
【0003】
【特許文献1】特開2004−307257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、コンクリートブロックは、比重が重いことから、海底に泥が溜っているような場所では、埋没により消失してしまう場合があった。又、浮泥の多い海域では、着床した海藻の幼芽に泥が付着し、生長が阻害される場合があった。しかも、従来のコンクリートブロックは、強アルカリが低下する等海藻種の着生条件が整うまで1年以上の時間が必要となり、人工海藻礁を迅速に拡大することが困難であった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、資源の有効活用、海水浄化、海洋資源の育成の更なる促進を図ることにある。
上記課題を解決するために、本発明は、バイオマスを原料とする炭化材料からなる海藻着生用基盤材を提供することで、耐久性の高い人工海藻礁の造成を可能とするものである。又、海藻着生用基盤材のリサイクルを可能とし、資源の有効活用を促進するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0006】
(1)バイオマス資源から生成される炭、タール、ピッチ、樹脂成分を加熱圧縮して成形される炭基盤材を、少なくとも表面から一定の厚みの部分、又は、少なくとも一部表面に備える海藻着生用ブロック(請求項1)。
本項に記載の海藻着生用ブロックは、バイオマス資源を原材料として生成される炭、タール、ピッチ、樹脂成分を加熱圧縮して成形される炭基盤材を、少なくとも表面から一定の厚みの部分、又は、少なくとも一部表面に備えるものであり、かかる炭基盤材のポーラス構造が、海藻の着生面として有効に機能すると共に、軽量かつ高強度で、腐敗し難いものである。なお、バイオマス資源としては、例えば、未利用間伐材、剪定枝、建築廃材等の木質系廃棄物、農畜産業系廃棄物、食品系廃棄物等が用いられる。かかる材料からなる海藻着生用ブロックは、その製造直後でも水中に使用することでバイオフィルムが表面に即時に発生し、生態系への阻害要因を作らず、直ちに海藻の着生が可能となる。
又、海藻着生用ブロックの材料比率をコントロールすることで、海藻の生長に必要な栄養分の増減や、海藻着生用ブロックの海中での浮力の調整を行うことができる。
【0007】
(2)前記材料・成分に、触媒として機能する金属材料が混合される海藻着生用ブロック(請求項2)。
本項に記載の海藻着生用ブロックは、前記材料・成分に、触媒として機能する金属材料を混合してなることにより、機械的強度の向上が図られる。又、鉄系材料を用いることとすれば、鉄分が海藻の育成を促進するものとなる。更に、海藻着生用ブロックの着火性、燃焼性を制御することが容易となり、燃料としてのリサイクル用途にも適したものとなる。
【0008】
(3)柱状又は板状をなし、重心位置を外れた位置に、吊下げ用の穴乃至フックが設けられている海藻着生用ブロック(請求項3)。
本項に記載の海藻着生用ブロックは、柱状又は板状をなし、重心位置を外れた位置に、吊下げ用の穴乃至フックが設けられていることから、海中に吊下げられた状態で、小さな波によっても比較的大きな揺動を生じ、表面への浮泥の堆積を防ぐことが可能となる。
なお、吊下げ用の穴乃至フックの位置を、海藻着生用ブロックの重心位置から外す手法としては、重心位置からずれた位置に吊下げ用の穴乃至フックの位置を設けたり、錘を使用することが挙げられる。
【0009】
(4)三角柱状又は三角板状を成していることを特徴とする海藻着生用ブロック(請求項4)。
本項に記載の海藻着生用ブロックは、三角柱状又は三角板状を成すことによって、海中に吊下げられた状態で、傾斜面への浮泥の堆積を防ぐことが可能となる。よって、傾斜面に着床した海藻の生長が、浮泥の堆積により阻害されることを防ぐものである。
【0010】
(5)育成する海藻種に適した粒子径の炭が用いられる海藻着生用ブロック(請求項5)。
本項に記載の海藻着生用ブロックは、育成する海藻種の根の大きさに応じた粒子径の炭を用いることで、海藻の生長を促進するものである。
【0011】
(6)バイオマス資源から生成される炭、タール、ピッチ、樹脂成分を混合し、加熱圧縮して炭基盤材を成形し、該炭基盤材を必要な形状へと裁断し、各断片の重心位置を外れた位置に、吊下げ用の穴乃至フックを設ける海藻着生用ブロックの製造方法(請求項6)。
本項に記載の海藻着生用ブロックの製造方法は、バイオマス資源から生成される炭、タール、ピッチ、樹脂成分を混合し、加熱圧縮して炭基盤材を成形することで、炭基盤材のポーラス構造が、海藻の着生面として有効に機能すると共に、軽量かつ高強度で、腐敗し難いものである。なお、バイオマス資源としては、例えば、未利用間伐材、剪定枝、建築廃材等の木質系廃棄物、農畜産業系廃棄物、食品系廃棄物等が用いられる。
又、炭基盤材を必要な形状へと裁断し、各断片の重心位置を外れた位置に、吊下げ用の穴乃至フックを設けることで、海中に吊下げられた状態で、小さな波によっても揺動を生じ、表面への浮泥の堆積を防ぐことが可能な海藻着生用ブロックを製造するものである。
【0012】
(7)前記材料・成分に触媒として機能する金属材料を混合する海藻着生用ブロックの製造方法(請求項7)。
本項に記載の海藻着生用ブロックの製造方法は、前記材料・成分に、触媒として機能する金属材料を混合することにより、機械的強度の向上を図るものである。又、鉄系材料を用いることとすれば、鉄分が海藻の育成を促進するものとなる。更に、鉄系材料を用いることとすれば、海藻着生用ブロックの着火性、燃焼性を制御することが容易となり、燃料としてのリサイクル用途にも適したものとなる。
【0013】
(8)上記(1)から(5)のいずれか1項の海藻着生用ブロックを、水槽に沈降させ海藻を播種して発芽させ、一定期間養生して海藻幼体を育成させた後、比較的浅い水深領域に、水平に設置したロープによって、前記海藻着生用ブロックを一定間隔を空けて吊下げ、海藻の生長に応じ、前記ロープを設置する水深を深くする海藻養殖方法(請求項8)。
本項に記載の海藻養殖方法は、上記(1)から(5)のいずれか1項記載の海藻着生用ブロックを、水槽に沈降させ海藻を播種して発芽させ、一定期間養生して海藻幼体を育成させることで、海藻の着床を確実に行う。その後、比較的浅い水深領域に、水平に設置したロープによって、海藻着生用ブロックを一定間隔を空けて吊下げることで、海藻の生長に十分な光を、各海藻着生用ブロックに着床した海藻幼体に浴びせ、海藻の生長を促進する。さらに、海藻の生長に応じてロープを設置する水深をより深くすることで、海藻の更なる生長を促すものである。
【0014】
(9)上記(8)において、海藻が必要な生長を遂げた時点で、前記海藻着生用ブロックごと海中から引き上げ、前記海藻着生用ブロックから海藻を刈り取る海藻養殖方法。
本項に記載の海藻養殖方法は、海藻着生用ブロックごと海中から引き上げ、海藻を刈り取ることで、刈り取り作業を円滑に行うものである。
【0015】
(10)上記(1)から(5)のいずれか1項の海藻着生用ブロックを、水槽に沈降させ海藻を播種して発芽させ、一定期間養生して海藻幼体を育成させた後、比較的浅い水深領域に、水平に設置したロープによって、前記海藻着生用ブロックを一定間隔を空けて吊下げ、海藻の生長に応じ、前記ロープを設置する水深を深くし、海藻が必要な生長を遂げた時点で、前記海藻着生用ブロックごと海中から引き上げ、前記海藻着生用ブロックから海藻を刈り取り、海藻を刈り取った前記海藻着生用ブロックを、再度水槽に沈降させ海藻を播種して発芽させ、又は、燃料として利用することを特徴とする海藻着生用ブロックの利用方法。
本項に記載の海藻養殖方法は、バイオマス資源を原材料として生成される炭、タール、ピッチ、樹脂成分を加熱圧縮して成形される炭基盤材の、高い耐久性に鑑み、何度も再利用するものである。又、再利用が不可能となった場合には、燃料として利用することで、バイオマス資源の有効活用を図るものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明はこのように構成したので、資源の有効活用、海水浄化、海洋資源の育成の更なる促進を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、添付図面に基づいて説明する。図1には、本発明の実施の形態に係る海藻着生用ブロックの製造方法が示されている。本発明の実施の形態では、まず、(a)に示されるように、未利用間伐材、剪定枝、建築廃材等の木質系廃棄物、農畜産業系廃棄物、食品系廃棄物等のバイオマス資源から生成される炭、タール、ピッチ、樹脂成分を混合し、又、必要に応じこれら材料・成分に触媒として機能する金属材料を混合する。そして、成形鋳型に混合材料を投入し、加熱圧縮することにより、(b)に示されるような炭基盤材10を成形する。
【0018】
具体例としては、バイオマス資源を約300℃〜900℃の炭化処理によって炭を得ると共に、乾溜の際の煙を冷却液化した後、粗酢液(水溶性部分)を静置分離もしくは、および蒸留により除去して全タール(タールオイル、ピッチを含有)成分を得るものである。そして、育成する海藻種に適した粒子径となるように、炭を粉砕し、全タールと混合する。炭と全タールとの混合比率は、重量比で1:2〜1:1とする。そして、かかる混合物を成形鋳型に投入し、常温で10分冷圧した後、120℃〜160℃、圧力50〜200Kg/cmで0〜20分保持して熱圧成形した後、放熱する。このようにして得られた炭素基盤10は、ポーラス構造を有するものとなる。
【0019】
続いて、炭基盤材を必要な形状へと裁断する。本発明の実施の形態では、(c)に示されるように、三角柱状をなす海藻着生用ブロック12へと裁断する。この際、海藻着生用ブロック12の傾斜面12aの面積は、育成する海藻種に適した面積を確保する。そして、図12に示されるように、海藻着生用ブロック12の重心位置Gを外れた位置に、吊下げ用の穴14を設ける。なお、穴14の穿孔作業は、炭基盤材10を三角柱状をなす海藻着生用ブロック2へと裁断する前後の何れであっても良い。図示の例では、炭基盤材10を正三角柱状に裁断して海藻着生用ブロック12としたが、例えば、プラスチック等で成形された芯材の表面を、板状に裁断した炭基盤材10で覆うようにして、海藻着生用ブロック12を構成することとしてもよい。この場合、育成する海藻種に適した面積及び厚みで、炭基盤材10を板状に裁断するものとする。
【0020】
海藻着生用ブロック12を用いた海藻養殖方法は、次の通りである。まず、図3に示されるように、海水で満たされた比較的浅い水槽に、等間隔にロープ16を張り、各ロープ16に複数の海藻着生用ブロック12を固定する。そして、海藻着生用ブロック12に海藻を播種して発芽させる。播種する海藻は、養殖を行う海域に適したものとし、かつ、資源の有効活用を図るために、食用に適したもの(例えば、アカモク等。)がより好ましい。
そして、一定期間養生して海藻幼体を育成させた後、図4に示されるように、比較的浅い水深領域に形成された人工海藻礁18に、水平に設置したロープ16によって、海藻着生用ブロック12を一定間隔を空けて吊下げ、海藻の生長に応じ、ロープ16を設置する水深を深くする。
【0021】
人工海藻礁18は、図4に示されるように、海底に一定間隔で支柱20を立て、浮き22を介して支柱20に結び付けられた浮き梁24に、ロープ16を張ったものである。又、浮き梁24には、錘26が取り付けられており、錘26の重さと、浮き22の浮力とを均衡させることで、ロープ16が張られる水深を一定に保持する。そして、海藻着生用ブロック12の穴14にこのロープ16を挿通し、各海藻着生用ブロック12が可能な限り等間隔となるように位置決めし、ロープ16に固定する。又、海藻の生長の初期段階等、必要に応じロープ16の下方に椰子マット等のシート28を張ることにより、擬似的に水深を浅くし、かつ、各海藻着生用ブロック12に当る波を和らげることも可能である。又、浮き22と浮き梁24とをつなぐロープの長さを調節し、錘26の重さを増減することにより、ロープ16を張る水深を調整することが可能である。
なお、海藻着生用ブロック12の設置やロープ16を張る水深の調整等、海藻の養殖に必要な作業は、作業者がボート30に乗った状態で行うことができる。そして、海藻が必要な生長を遂げた時点で、海藻着生用ブロック12ごと海中から引き上げ、ボート30上又は陸上にて、海藻着生用ブロック12から海藻を刈り取ることができる。
【0022】
さて、本発明の実施の形態に係る海藻着生用ブロック12の、製造から利用に至るまでの流れの一例が、図5に示されている。その流れは、以下の通りである。
(1)バイオマス資源を収集する。
(2)バイオマス資源から炭、タール、ピッチ、樹脂成分を生成する。
(3)バイオマス資源から生成された炭、タール、ピッチ、樹脂成分を混合し、加熱圧縮して炭基盤材10を成形する。そして、図1に示されるように、炭基盤材10を必要な形状へと裁断し、海藻着生用ブロック12へと加工する。
(4)図3に示されるように、海藻着生用ブロック12を水槽に沈降させ、海藻を播種する。
(5)水槽内で、海藻幼芽を養生する。
(6)一定期間養生して海藻幼体を育成させた後、図4に示されるように、人工海藻礁(養殖装置)18に海藻着生用ブロック12を取り付けることで、海域へと設置する。
(7)海藻の生長に合わせた水深調整を行う。
(8)海藻を収穫する。
(9)海藻着生用ブロック12が再利用可能か否か、その状態を確認する。そして、再利用可能な場合には、再び海藻を播種する。
(10)一方、海藻着生用ブロック12の傷みが進み、再利用が困難な場合には、海藻着生用ブロック12を燃料として利用する。
【0023】
上記構成をなす本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。本発明の実施の形態に係る海藻着生用ブロック12は、バイオマス資源を原材料として生成される炭、タール、ピッチ、樹脂成分を加熱圧縮して成形される炭基盤材10を、少なくとも表面から一定の厚みの部分、又は、少なくとも一部表面に備えるものであり、かかる炭基盤材10のポーラス構造が、海藻の着生面として有効に機能すると共に、軽量かつ高強度で、腐敗し難いものである。又、海藻着生用ブロック12は、その製造直後でも水中に使用することでバイオフィルムが表面に即時に発生し、生態系への阻害要因を作らず、直ちに海藻の着生が可能となる。又、海藻着生用ブロック12を構成する各材料・成分の比率をコントロールすることで、海藻の生長に必要な栄養分の増減や、海藻着生用ブロック12の海中での浮力の調整を行うことができる。しかも、育成する海藻種の根の大きさに応じた粒子径の炭を用いることで、海藻の生長を促進することができる。具体的には、海藻の根が大きい場合には大粒の粒子とし、根が小さい場合には、細かい粒子とすることが望ましい。
【0024】
又、必要に応じ、海藻着生用ブロック12を構成する各材料・成分に、触媒として機能する金属材料を混合することで、海藻着生用ブロック12の機械的強度の向上が図られる。又、触媒として鉄系材料を用いることとすれば、鉄分が海藻の育成を促進するものとなる。更に、海藻着生用ブロック12の着火性、燃焼性を制御することが容易となり、燃料としてのリサイクル用途にも適したものとなる。
【0025】
又、海藻着生用ブロック12は、柱状又は板状をなし、重心位置Gを外れた位置に、吊下げ用の穴14が設けられていることから、海中に吊下げられた状態で、小さな波によっても比較的大きな揺動を生じ、表面への浮泥の堆積を防ぐことが可能となる。なお、かかる機能を発揮する上では、海藻着生用ブロック12は三角柱状又は三角板状をなしていることが望ましいが、同様の機能を発揮するものであれば、他の形状を採用することも可能である。
又、穴14に代えて、ロープ16を結び付けるためのフックを設けることとしても良い。なお、吊下げ用の穴14乃至フックの位置を、海藻着生用ブロックの重心位置Gから外す手法としては、図2に示されるように、重心位置からずれた位置に吊下げ用の穴14乃至フックの位置を設け、又は、三角形の底部に錘を固定する等が挙げられる。
【0026】
又、海藻着生用ブロック12は、三角柱状を成すことによって、海中に吊下げられた状態で、傾斜面12a(図2)への浮泥の堆積を防ぐことが可能となる。よって、傾斜面12aに着床した海藻の生長が、浮泥の堆積により阻害されることを防ぐことができる。
【0027】
又、本発明の実施の形態に係る海藻着生用ブロックの製造方法は、バイオマス資源から生成される炭、タール、ピッチ、樹脂成分を混合し、加熱圧縮して炭基盤材を成形することで、炭基盤材10のポーラス構造が、海藻の着生面として有効に機能すると共に、軽量かつ高強度で、腐敗し難いものとなる。
又、炭基盤材10を必要な形状へと裁断し、各断片の重心位置Gを外れた位置に、吊下げ用の穴乃至フックを設けることで、海中に吊下げられた状態で、小さな波によっても比較的大きな揺動を生じ、表面への浮泥の堆積を防ぐことが可能な海藻着生用ブロック12を製造することができる。
【0028】
又、本発明の実施の形態に係る海藻着生用ブロック12を、水槽に沈降させ海藻を播種して発芽させ、一定期間養生して海藻幼体を育成させることで、海藻の着床を確実に行うことができる。その後、比較的浅い水深領域に、水平に設置したロープ16によって、海藻着生用ブロック12を一定間隔を空けて吊下げることで、海藻の生長に十分な光を、各海藻着生用ブロック12に着床した海藻幼体に浴びせ、海藻の生長を促進することができる。さらに、海藻の生長に応じてロープ16を設置する水深をより深くすることで、海藻の更なる生長を促すものである。
【0029】
そして、海藻が必要な生長を遂げた時点で、海藻着生用ブロック12ごと海中から引き上げ、海藻着生用ブロック12から海藻を刈り取ることで、刈り取り作業を円滑に行うことができる。
更に、バイオマス資源を原材料として生成される炭、タール、ピッチ、樹脂成分を加熱圧縮して成形される炭基盤材10は、間伐材等のようにフナムシ等の食害を受けたり、腐敗することなく、高い耐久性を備えることに鑑み、海藻を刈り取った海藻着生用ブロック12を、何度も再利用することが可能である。又、再利用が不可能となった場合には、海藻を刈り取った海藻着生用ブロック12を、燃料として利用することで、バイオマス資源の有効活用を図るものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態に係る海藻着生用ブロックの製造手順を示す説明図であり、(a)は炭素盤材の製造工程を、(b)炭素盤材の裁断工程を、(c)は海藻着生用ブロックの単体図を示すものである。
【図2】本発明の実施の形態に係る海藻着生用ブロックの平面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る海藻着生用ブロックに、海藻を播種して養殖を行う手順を説明する説明図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る海藻着生用ブロックが用いられる、人工海藻礁の模式図であり、(a)は人工海藻礁の一部を抜粋した図、(b)は要部拡大図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る海藻着生用ブロックの、製造から利用に至るまでの流れの一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0031】
10:炭素盤材、12:海藻着生用ブロック、14:穴、16:ロープ、G:重心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマス資源から生成される炭、タール、ピッチ、樹脂成分を混合し、加熱圧縮して成形される炭基盤材を、少なくとも表面から一定の厚みの部分、又は、少なくとも一部表面に備えることを特徴とする海藻着生用ブロック。
【請求項2】
前記材料・成分に、触媒として機能する金属材料が混合されることを特徴とする請求項1記載の海藻着生用ブロック。
【請求項3】
柱状又は板状をなし、重心位置を外れた位置に、吊下げ用の穴乃至フックが設けられていることを特徴とする請求項1記載の海藻着生用ブロック。
【請求項4】
三角柱状又は三角板状を成していることを特徴とする請求項1又は2記載の海藻着生用ブロック。
【請求項5】
育成する海藻種に適した粒子径の炭が用いられることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の海藻着生用ブロック。
【請求項6】
バイオマス資源から生成される炭、タール、ピッチ、樹脂成分を混合し、加熱圧縮して炭基盤材を成形し、該炭基盤材を必要な形状へと裁断し、各断片の重心位置を外れた位置に、吊下げ用の穴乃至フックを設けることを特徴とする海藻着生用ブロックの製造方法。
【請求項7】
前記材料・成分に触媒として機能する金属材料を混合することを特徴とする海藻着生用ブロックの製造方法
【請求項8】
請求項1から5のいずれか1項記載の海藻着生用ブロックを、水槽に沈降させ海藻を播種して発芽させ、一定期間養生して海藻幼体を育成させた後、比較的浅い水深領域に、水平に設置したロープによって、前記海藻着生用ブロックを一定間隔を空けて吊下げ、海藻の生長に応じ、前記ロープを設置する水深を深くすることを特徴とする海藻養殖方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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