説明

浸漬リソグラフィ用の組成物及びプロセス

【課題】浸漬リソグラフィ処理に適した、フォトレジスト組成物の上に適用されるバリアー層組成物を提供する。別の面において、浸漬リソグラフィ処理のための新規な方法を提供する。
【解決手段】浸漬リソグラフィ用のバリアー層として、少なくとも樹脂主鎖内にフッ素置換基を含有していない1種以上の樹脂をはじめとする、1種以上の非溶媒担体材料(成分)を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浸漬リソグラフィ処理に適した、フォトレジスト組成物の上に適用されるバリアー層組成物に関する。別の態様において、浸漬リソグラフィ処理に適した新規な方法が提供される。
【背景技術】
【0002】
フォトレジストは、画像を基体に転写するために使用される感光性フィルムである。フォトレジストの被覆層は、基体の上に形成され、次いで、フォトレジスト層がフォトマスクを通して活性化放射線の光源に露光される。フォトマスクは、活性化放射線に対して不透明である領域と、活性化放射線に対して透明である他の領域とを有する。活性化放射線への露光によって、フォトレジスト塗膜の光誘起化学的変化が与えられ、それによってフォトマスクのパターンがフォトレジスト被覆された基体に転写される。露光に続いて、フォトレジストを現像して、基体の選択的処理を可能にするレリーフ画像を得る。
【0003】
半導体産業の成長は、ICデバイスの複雑性は平均2年毎に2倍になると述べているムーアの法則によって推進される。これは、減少し続ける加工寸法(feature size)を有するリソグラフ的転写パターン及び構造に対する要求を必然的に伴う。
【0004】
より小さい加工寸法に到達するための一つのアプローチは、より短い波長の光を使用することであるけれども、193nmよりも下で透明である材料を発見することの困難性は、フィルムの中により多くの光を合焦させるために、単純に液体を使用することによってレンズの開口数を増加させる浸漬リソグラフィを使用するという選択に至った。浸漬リソグラフィは、画像形成デバイス(例えば、KrF又はArFステッパー)の最後の表面と、ウェーハ又は他の基体上の最初の表面との間に、比較的高い屈折率の流体を使用する。
【0005】
浸漬顕微鏡検査(immersion microscopy)は、空気よりも大きい屈折率を有する液体を使用することにより、レンズの開口数を増加させるための方法として報告された。この改良は定量化することができ、最小ライン幅、Wは、下記のようにして計算される。
W=kλ/NA :式1
(式中、kは解像度係数であり、λは光の波長であり、そしてNAは開口数である)
【0006】
1の屈折率を有する空気について、開口数の実際的限度は0.93である。1よりも大きい屈折率を有する材料について、1よりも大きいNAが、下記の式に基づいて達成可能であり、
NA=n sin(α)=d/(2f) :式2
NAを代入することによって、この式は、下記に示すように単純化することができる。
W=kλ/n sin(α) :式3
(式中、nは浸漬流体の屈折率であり、そしてαはレンズの受光角である)
従って、1.47の屈折率を有する水について、193nmで35nmのライン幅が可能である。
【0007】
現在、広範囲の且つ証明された浸漬リソグラフィ系は、未だ存在しない。例えば、Chemical and Engineering News、第18〜24頁(2004年6月28日号)を参照されたい。浸漬リソグラフィのための信頼性があり且つ便利なフォトレジスト及び画像形成プロセスが、明らかに必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Chemical and Engineering News、第18〜24頁(2004年6月28日号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
浸漬フォトリソグラフィのための新規な材料及びプロセスが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、浸漬フォトリソグラフィのための新規な組成物及びプロセスを提供する。
【0011】
更に特に、第一の態様において、本発明者らは、フォトレジスト組成物層の上に適用され、そして好ましくは、浸漬リソグラフィプロセスで使用される流体(例えば、水)の中への、フォトレジスト層の成分の移動を少なくとも抑制することができる、新規なオーバーコーティング(トップコート又はバリアー層)組成物を提供する。
【0012】
本発明の好ましいバリアー層には、少なくとも樹脂主鎖内にフッ素置換基を含有していない1種以上の樹脂をはじめとする、1種以上の非溶媒担体材料(成分)を含有するものが含まれる。
【0013】
本発明のバリアー組成物には種々の材料が含有されていてよく、及び好ましいバリアー組成物成分は、約500、1000、1500又は2000ダルトンを越える分子量を有する材料のような、より高い分子量材料である。好ましいバリアー組成物材料には、また、実質的にリソグラフィ的に不活性であるもの、即ち、露光前及び露光後の熱処理、画像形成の典型的なリソグラフ処理工程の間に結合破断反応を受けない、又は他には浸漬流体と反応しない材料が含有されている。
【0014】
好ましいバリアー組成物材料には、Si及び/又はヘテロ原子(特に、N、O又はS、特に、O又はS)置換を含有する樹脂が含有されている。追加の好ましいバリアー組成物材料には、増加した屈折率の組成物を得るために有用であり得る、ジルコニア及び/又はハフニアが含有されていてよい。好ましいバリアー組成物材料には、また、300nm未満の露光放射線(例えば、248nm)又は200nm未満の露光放射線(例えば、193nm)をはじめとする露光放射線の過剰の吸収を回避するために、芳香族基、例えば、フェニル、ナフチル又はアントラセニルを実質的に含有しない(例えば、全組成物の約5、4、3、2又は1重量%未満が芳香族基である)。カーボネート、エステル、エーテル、ヒドロキシ又は他の極性基置換を含むものを含有する脂肪族ポリマー(即ち、芳香族含有物を本質的に又は完全に有しないポリマー)が好ましい。浸漬リソグラフィプロセスで使用するための特に好ましいバリアー層には、Si原子を含有する樹脂、例えば、1種以上の有機ポリシリカ材料、特に1種以上のシルセスキオキサン又はシロキサン樹脂が含まれる。
【0015】
本発明の特に好ましいバリアー組成物は、その下にあるフォトレジスト組成物層から、露光手段とバリアー組成物層との間に位置する浸漬流体(例えば、水又はある種の水性組成物)中への、1種以上の成分の移動を少なくとも抑制することができる。理解されるように、本明細書で参照される場合、用語「浸漬流体」は、浸漬リソグラフィを実施するために、露光手段とフォトレジストで被覆された基体との間に介在させた流体(例えば、水)を意味する。
【0016】
本発明者らは、フォトレジスト層から浸漬流体層の中への酸の移動が、特に問題になり得ることを見出した。とりわけ、浸漬流体の中に移動する酸又は他のフォトレジスト物質は、露光手段を損傷させ得、並びにフォトレジスト層の中にパターン形成される画像の解像度を低下させ得る。
【0017】
本明細書で参照される場合、バリアー組成物層が不存在である以外は、同じ方式で処理される同じフォトレジスト系に比較して、バリアー組成物を使用して、減少した量の酸又は有機材料が浸漬流体中に検出されるときには、バリアー層は浸漬流体の中へのフォトレジスト材料の移動を抑制している考えられる。浸漬流体中のフォトレジスト材料の検出は、下記の実施例8に記載したようにして実施することができ、これは、(オーバーコートしたバリアー組成物層有り及び無しで)フォトレジストの露光前及び次いで浸漬流体を通しての露光によるフォトレジスト層のリソグラフ処理後の浸漬流体の質量分光分析を含む。好ましくは、このバリアー組成物は、如何なるバリアー層も使用しない同じフォトレジスト(即ち、浸漬流体は、フォトレジスト層と直接接触している)に比較して、浸漬流体中に存在するフォトレジスト材料(この場合も先と同様に、質量分光法によって検出されるような酸又は有機物質)において少なくとも10パーセントの減少を与え、更に好ましくは、このバリアー組成物は、如何なるバリアー層も使用しない同じフォトレジストに比較して、浸漬流体中に存在するフォトレジスト材料(この場合も先と同様に、酸又は有機物質)における少なくとも20、50又は100パーセントの減少を与える。
【0018】
別の態様において、本発明は、浸漬露光プロトコルにおけるリソグラフ処理のための新規な方法を提供する。本発明の好ましい方法には、下記の工程が含まれ得る。
1)フォトレジスト組成物を、(例えば、スピンコーティングによって)半導体ウェーハのような基体に適用する工程。フォトレジストは、ウェーハ表面又は有機若しくは無機反射防止組成物のような、ウェーハの上に予め適用された材料又は平坦化層などの上に好適に適用することができる。
2)溶媒担体を除去するために、例えば、約120℃以下で約30〜60秒間、適用されたフォトレジスト組成物を任意に熱処理する工程。しかしながら、本発明の好ましい態様において、フォトレジスト組成物溶媒担体は、バリアー組成物を適用する前には熱処理によって除去されない。
3)フォトレジスト組成物の上に、本発明のバリアー組成物を、例えば、スピンコーティングによって適用する工程。次いで、被覆された基体を熱処理して、バリアー組成物の、溶媒担体、及び好ましくは前記のように、溶媒がそれまでに除去されていない場合にはフォトレジスト組成物の溶媒担体を除去することができる。
4)オーバーコートしたフォトレジスト層を、露光手段と被覆された基体との間に介在させた流体(例えば、水を含有する流体)と共に、パターン化された活性化放射線に露光する工程、即ち、フォトレジスト層を、露光手段とバリアー組成物層との間に介在させた流体層によって浸漬露光する工程。介在させた流体は、典型的にバリアー組成物と接触している。
【0019】
更に他の態様において、本発明は、1種又は2種以上のフォトレジスト組成物成分の望まない移動又は他の移転を減少させることができる、浸漬露光プロトコルにおけるリソグラフ処理のためのさらなる方法を提供する。これらの方法には、一般的に、溶媒組成物(水性又は非水性)による、フォトレジスト組成物層の処理又は洗浄が含まれている。所望により、バリアー組成物層を、溶媒組成物によって処理されたフォトレジスト組成物層の上に適用することができるが、バリアー組成物層の使用は必要ではない。
【0020】
かかる溶媒組成物処理工程によって、次の露光の間に浸漬流体の中に移動することができるフォトレジスト組成物材料を除去することができる。
【0021】
かかる方法において、好適には、溶媒組成物は、例えば、スピンコーティングによってフォトレジスト組成物層に適用される。フォトレジスト組成物層は、任意に、例えば、溶媒組成物処理工程の前の熱処理によって除去される溶媒担体を有していてよい。この溶媒処理組成物は、水性組成物(例えば、水若しくは水/有機混合物)又は非水性成分であってよく、そして1種以上の有機溶媒、好ましくは1種以上の極性溶媒、例えば、イソプロパノールなどのような1種以上のアルコールを含有していてよい。処理工程のために、水/イソプロパノール溶媒混合物もまた好ましい。次いで、溶媒組成物を、例えば、更なるスピニングによって実質的に除去することができ、そしてバリアー組成物をフォトレジスト組成物層の上に適用することができる。前記のように、所望により、バリアー組成物を、例えば、スピンコーティングによって、溶媒組成物処理したフォトレジスト組成物層の上に適用することができる。
【0022】
本発明のリソグラフ系の好ましい画像形成波長には、300nm未満の波長、例えば248nm、及び200nm未満の波長、例えば193nmが含まれる。本発明の系において使用するための特に好ましいフォトレジストには、光活性成分(例えば、1種以上の光酸発生剤化合物)、下記のものから選択される1種以上の樹脂が含まれ得る。
1)248nmで画像形成するために特に好適な、化学増幅型ポジ型レジストを与えることができる酸不安定基を含有するフェノール樹脂。この種類の特に好ましい樹脂には、i)ビニルフェノール及びアルキルアクリレートの重合した単位を含有するポリマー(ここで、重合したアルキルアクリレート単位は、光酸の存在下で脱保護反応を受けることができる)。光酸誘起脱保護反応を受けることができる典型的なアルキルアクリレートには、例えば、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸メチルアダマンチル、メタクリル酸メチルアダマンチル並びに光酸誘起反応を受けることができる他の非環式アルキル及び脂環式アクリレート、例えば、米国特許第6,042,997号及び米国特許第5,492,793号中のポリマーが含まれる。;ii)ビニルフェノール、ヒドロキシ若しくはカルボキシ環置換基を含有しない任意に置換されたビニルフェノール(例えば、スチレン)及び米国特許第6,042,997号に記載されたポリマーのような、前記のポリマーi)で記載された脱保護基のようなアルキルアクリレートの重合した単位を含有するポリマー;並びにiii)光酸と反応するアセタール若しくはケタール部分を含む繰り返し単位、及び任意に芳香族繰り返し単位、例えばフェニル基若しくはフェノール基を含有するポリマー(かかるポリマーは、米国特許第5,929,176号及び米国特許第6,090,526号に記載されている)並びにi)及び/又はii)及び/又はiii)のブレンドが含まれる;
2)200nm未満の波長、例えば、193nmで画像形成するために特に好適な、化学増幅型ポジ型レジストを与えることができる、フェニル又は他の芳香族基を実質的に又は完全に含有しない樹脂。この種類の特に好ましい樹脂には、i)非芳香族環式オレフィン(環内二重結合)、例えば任意に置換されたノルボルネンの重合された単位を含有するポリマー、例えば米国特許第5,843,624号及び米国特許第6,048,664号に記載されているポリマー;ii)アルキルアクリレート単位、例えば、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸メチルアダマンチル、メタクリル酸メチルアダマンチル並びに他の非環式アルキル及び脂環式アクリレートを含有するポリマー、例えば、米国特許第6,057,083号、欧州特許出願公開第01008913A1号、欧州特許出願公開第00930542A1号及び出願係属中の米国特許出願第09/143,462号に記載されているポリマー、iii)重合された無水物単位、特に重合された無水マレイン酸及び/又はイタコン酸無水物単位を含有するポリマー、例えば、欧州特許出願公開第01008913A1号、米国特許第6,048,662号に開示されているもの並びにi)及び/又はii)及び/又はiii)のブレンドが含まれる;
3)ヘテロ原子、特に、酸素及び/又は硫黄を含有する繰り返し単位(しかし無水物以外、即ち、この単位はケト環原子を含有していない)を含有し、及び好ましくは、如何なる芳香族単位も実質的に又は完全に含有していない樹脂。好ましくは、ヘテロ脂環式単位は、樹脂主鎖に縮合されており、及び樹脂が、ノルボルネン基の重合によって得られるような縮合炭素脂環式単位及び/又は無水マレイン酸若しくはイタコン酸無水物の重合によって得られるような無水物単位を含有することが更に好ましい。このような樹脂は、国際特許出願公開第PCT/US01/14914号、米国特許出願第09/567,634号に開示されている。
4)例えば、テトラフルオロエチレン、フッ素化芳香族基、例えばフルオロスチレン化合物、ヘキサフルオロアルコール部分を含有する化合物などの重合によって得ることができるような、フッ素置換を含有する樹脂(フルオロポリマー)。このような樹脂の例は、例えば、国際特許出願第PCT/US99/21912号に開示されている。
【0023】
本発明は、更に、フォトレジストレリーフ画像の形成方法及び電子デバイスの製造方法を提供する。本発明は、また、単独で又はフォトレジスト組成物と組み合わせて本発明のバリアー層組成物で被覆された基体を含む新規な製造物品を提供する。
【0024】
本発明の他の面は、後で記載する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
前記のように、第一の態様において、フォトレジスト組成物を処理するための方法は、
(a)基体の上に、フォトレジスト組成物を適用する工程、
(b)フォトレジスト組成物の上に、フッ素化主鎖置換を有する樹脂以外の1種以上の成分を含有するバリアー組成物を適用する工程、
(c)このフォトレジスト層を、このフォトレジスト組成物を活性化するための放射線に浸漬露光する工程
を含む。
【0026】
かかる方法において、好ましくは、バリアー組成物は1種以上の非フッ素化樹脂を含有する。また、このバリアー組成物は、Si原子を含有する1種以上の樹脂、例えば1種以上の有機ポリシリカ樹脂を含有する。他の面において、このバリアー組成物は、エステル、エーテル、スルホン又はスルフィド基を含有する1種以上の樹脂を含有していても良い。このバリアー組成物は、また、かかる1種以上の樹脂と同じか又は異なっていてよい、フッ素置換基を含有する成分を含有していてよい。
【0027】
このような方法において、約1と約2との間の屈折率を有する流体が、露光している過程において、露光手段とバリアー組成物との間に好適に維持されている。本発明のこれらの方法において、種々のフォトレジスト、例えば、化学増幅型ポジ型フォトレジスト及びネガ型フォトレジストを使用することができる。
【0028】
本発明のこれらの方法の幾つかの態様において、フォトレジスト組成物は、バリアー組成物を適用する前には熱的に処理されない。また、本発明のこれらの方法の幾つかの態様において、適用されたフォトレジスト組成物及びバリアー組成物を有する基体を、露光の前に熱的に処理して、適用されたフォトレジスト組成物及び適用されたバリアー組成物の両方から溶媒を除去する。
【0029】
本発明の好ましい態様において、バリアー組成物は、フォトレジスト組成物の1種以上の成分の、バリアー組成物と露光のために使用する露光手段との間に介在している流体中への移動を抑制する。
【0030】
本発明の方法及び系は、種々の画像形成波長、例えば、300nm未満の、例えば248nmの波長又は200nm未満の、例えば193nmの波長を有する放射線で使用されうる。
【0031】
他の具体的態様において、(a)基体の上に、フォトレジスト組成物を適用する工程、(b)適用したフォトレジスト組成物を流体組成物で処理する工程、並びに(c)このフォトレジスト層を、このフォトレジスト組成物を活性化するための放射線に浸漬露光する工程を含む、フォトレジスト組成物を処理するための方法が提供される。このフォトレジスト組成物は、水性流体組成物、並びに1種以上の有機溶媒を含有する流体組成物を含む、種々の流体組成物で処理することができる。或る態様において、バリアー組成物、好ましくは前記のようなバリアー組成物、例えば、1種以上の非フッ素化樹脂及び/又はSi原子を含有する1種以上の樹脂、例えば1種以上の有機ポリシリカ樹脂が含有されているバリアー組成物を、処理したフォトレジスト組成物層の上に適用することができる。
【0032】
他の具体的態様において、その上に、1)フォトレジスト組成物の被覆層及び2)フォトレジスト組成物層の上のバリアー組成物の被覆層(このバリアー組成物には、1種以上の非フッ素化成分が含有されている)を有する基体、並びに3)浸漬フォトリソグラフィ露光手段を含む被覆された基体系のような浸漬リソグラフィ系が提供される。処理したフォトレジスト組成物層の上のバリアー組成物は、前記のように、例えば、1種以上の非フッ素化樹脂及び/又はSi原子を含有する1種以上の樹脂、例えば1種以上の有機ポリシリカ樹脂を含有するバリアー組成物であってよい。
【0033】
浸漬フォトリソグラフィプロセスにおいて、下にあるフォトレジスト組成物と共に使用するために適合している、本発明の特に好ましい有機バリアーコーティング組成物には、1種以上のシルセスキオキサン樹脂及び1種以上のフッ素化有機樹脂が含有されていてよい。
【0034】
バリアー組成物
前記のように、本発明の好ましいバリアー層には、1種以上の非溶媒担体材料(成分)、例えば、少なくとも樹脂主鎖に沿ってフッ素置換を含有していない1種以上の樹脂を含有するものが含まれる。かかる主鎖フッ素化樹脂は、典型的に、テトラフルオロエチレン等をはじめとするフッ素化オレフィンの重合によって得られる。少なくとも幾つかの態様において、本発明のバリアー組成物には、フッ素置換が、−C(OH)(CFのようなペンダント基又は1個以上のフッ素原子を有するペンダントアルキル若しくは脂環式基(例えば、縮合した若しくは縮合していないノルボルニル、ペンダントアダマンチルなど)のものである、フッ素化樹脂が含有されていてよい。
【0035】
本発明のバリアー組成物には種々の材料が含有されていてよく、及び好ましいバリアー組成物成分は、例えば、約500、1000、1500又は2000ダルトンを越える分子量を有する材料のような、より高い分子量の材料である。好ましくは、バリアー組成物には、実質的にリソグラフィ的に不活性である材料、即ち、露光前及び露光後の熱処理、画像形成の典型的なリソグラフ処理工程の過程で結合破断反応を受けない、又は他には浸漬流体と反応しない材料のみが含有されている。
【0036】
好ましいバリアー組成物材料には、Si及び/又はヘテロ原子(特に、N、O又はS、特に、O又はS)置換又は前記のような他の置換、例えばジルコニア若しくはハフニアを含有する樹脂が含有されている。好ましいバリアー組成物材料には、また、300nm未満の露光放射線(例えば、248nm)又は200nm未満の放射線(例えば、193nm)のような露光放射線の過剰の吸収を回避するために、芳香族基、例えば、フェニル、ナフチル又はアントラセニルを実質的に含有しない。また、カーボネート、エステル、エーテル、ヒドロキシ又は他の極性基置換を好適に含む脂肪族ポリマーが好ましい。浸漬リソグラフィプロセスにおいて使用するための特に好ましいバリアー層には、Si原子を含有する樹脂が含まれる。
【0037】
好ましいバリアー組成物層は、193nmで約1.47以上を含む、193nmで約1.4以上の屈折率を有する。更に、ある特定の系のために、屈折率は、樹脂ブレンドの成分比又はバリアー組成物の樹脂の何れかの組成を変えることによる場合を含む、バリアー組成物の樹脂の組成を変更することによって、調整することができる。例えば、バリアー層組成物中の有機含有物の量を増加させることによって、層の増加した屈折率を得ることができる。
【0038】
好ましいバリアー層組成物は、目標露光波長(例えば、193nm又は248nm)で、浸漬流体の屈折率とフォトレジストの屈折率との間の屈折率を有する。
【0039】
特に好ましいバリアー組成物には、イソプロパノール及びエタノールのような極性溶媒中の溶解度を適切に有する、有機ポリシリカフィルム組成物が含まれる。かかる有機ポリシリカフィルムは、1種以上の有機シランと1種以上のケイ素含有架橋剤(但し、この架橋剤に、4個よりも多い加水分解性基を含有する)との部分縮合物を使用して調製することができる。特に好適なケイ素含有架橋剤は、5個又は6個の加水分解性基を有する。本明細書で使用される場合、用語「部分縮合物」は、更なる縮合反応を受けて、その分子量を増加させることができる、シランオリゴマー又はプレポリマーあるいは加水分解物を指す。
【0040】
かかる有機ポリシリカ部分縮合物は、a)1種以上の式(I)RSiY4−aのシラン及び1種以上の式(II)R(RO)3−bSi(RSi(OR3−dのシランを含有する混合物を、塩基性触媒の存在下で反応させる工程、並びにb)この混合物を酸性触媒の存在下で反応させる工程を含む方法によって好適に製造することができる。ただし式中、Rは、水素、(C〜C)アルキル、(C〜C12)アリールアルキル、置換された(C〜C12)アリールアルキル、アリール及び置換されたアリールであり;Yは、任意の加水分解性基であり;aは1〜2の整数であり;R、R、R及びRは、独立に、水素、(C〜C)アルキル、(C〜C12)アリールアルキル、置換された(C〜C12)アリールアルキル、アリール及び置換されたアリールから選択され;Rは、(C〜C10)アルキル、−(CH−、−(CHh1−E−(CHh2−、−(CH−Z、アリーレン、置換されたアリーレン又はアリーレンエーテルであり;Eは、酸素、NR又はZであり;Zはアリール又は置換されたアリールであり;Rは、水素、(C〜C)アルキル、アリール又は置換されたアリールであり;b及びdは、それぞれ0〜2の整数であり;cは0〜6の整数であり;そしてh、h1、h2及びkは、独立に1〜6の整数である。但し、R、R、R及びRの少なくとも1個は、水素ではない。
【0041】
一つの具体的態様において、Rは、(C〜C)アルキル、ベンジル、ヒドロキシベンジル、フェネチル又はフェニル、更に好ましくは、メチル、エチル、イソブチル、tert−ブチル又はフェニルである。Yについての適切な加水分解性基には、これらに限定されないが、ハロ、(C〜C)アルコキシ、アシルオキシなど、好ましくはクロロ及び(C〜C)アルコキシが含まれる。式(I)の好適な有機シランには、これらに限定されないが、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、トリルトリメトキシシラン、トリルトリエトキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、tert−ブチルトリエトキシシラン、tert−ブチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、フェネチルトリメトキシシラン、ヒドロキシベンジルトリメトキシシラン、ヒドロキシフェニルエチルトリメトキシシラン及びヒドロキシフェニルエチルトリエトキシシランが含まれる。
【0042】
式(II)の有機シランには、好ましくは、R及びRが、独立に、(C〜C)アルキル、ベンジル、ヒドロキシベンジル、フェネチル又はフェニルであるものが含まれる。好ましくは、R及びRは、メチル、エチル、tert−ブチル、イソブチル及びフェニルである。一つの態様において、Rは、(C〜C10)アルキル、−(CH−、アリーレン、アリーレンエーテル及び−(CHh1−E−(CHh2−である。式(II)の好適な化合物には、これらに限定されないが、Rが、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキシレン、ノルボルニレン、シクロヘキシレン、フェニレン、フェニレンエーテル、ナフチレン及び−CH−C−CH−であるものが含まれる。別の態様において、cは1〜4である。
【0043】
式(II)の適切な有機シランには、これらに限定されないが、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリフェノキシシリル)メタン、ビス(ジメトキシメチルシリル)メタン、ビス(ジエトキシメチルシリル)メタン、ビス(ジメトキシフェニルシリル)メタン、ビス(ジエトキシフェニルシリル)メタン、ビス(メトキシジメチルシリル)メタン、ビス(エトキシジメチルシリル)メタン、ビス(メトキシジフェニルシリル)メタン、ビス(エトキシジフェニルシリル)メタン、ビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリフェノキシシリル)エタン、ビス(ジメトキシメチルシリル)エタン、ビス(ジエトキシメチルシリル)エタン、ビス(ジメトキシフェニルシリル)エタン、ビス(ジエトキシフェニルシリル)エタン、ビス(メトキシジメチルシリル)エタン、ビス(エトキシジメチルシリル)エタン、ビス(メトキシジフェニルシリル)エタン、ビス(エトキシジフェニルシリル)エタン、1,3−ビス(トリメトキシシリル)プロパン、1,3−ビス(トリエトキシシリル)プロパン、1,3−ビス(トリフェノキシシリル)プロパン、1,3−ビス(ジメトキシメチルシリル)プロパン、1,3−ビス(ジエトキシメチルシリル)プロパン、1,3−ビス(ジメトキシフェニルシリル)プロパン、1,3−ビス(ジエトキシフェニルシリル)プロパン、1,3−ビス(メトキシジメチルシリル)プロパン、1,3−ビス(エトキシジメチルシリル)プロパン、1,3−ビス(メトキシジフェニルシリル)プロパン及び1,3−ビス(エトキシジフェニルシリル)プロパンが含まれる。
【0044】
好適な有機ポリシリカ材料には、これらに限定されないが、シルセスキオキサン、部分縮合ハロシラン又はアルコキシシラン、例えば、500〜20,000の数平均分子量を有する、テトラエトキシシランの制御した加水分解によって部分的に縮合されたもの、組成RSiO、OSiRSiO、RSiO及びOSiRSiO(式中、Rは有機置換基である)を有する有機的に変性されたケイ酸エステル、並びにモノマー単位としてSi(OR)を有する部分縮合オルトケイ酸エステルが含まれる。シルセスキオキサンは、RSiO1.5(式中、Rは有機置換基である)タイプのポリマー性ケイ酸エステル材料である。好適なシルセスキオキサンは、アルキルシルセスキオキサン、アリールシルセスキオキサン、アルキル/アリールシルセスキオキサン混合物及びアルキルシルセスキオキサンの混合物である。シルセスキオキサン材料には、シルセスキオキサンのホモポリマー、シルセスキオキサンのコポリマー又はこれらの混合物が含まれる。このような材料は、一般的に商業的に入手可能であるか又は公知の方法によって製造することができる。
【0045】
別の具体的態様において、有機ポリシリカ材料には、上記のケイ素含有モノマーに加えて、広範囲の種々の他のモノマーが含有されていてよい。例えば、有機ポリシリカ材料には、更に、第二架橋剤及びカルボシラン部分が含有されていてよい。
【0046】
好適な第二架橋剤は、ケイ素含有材料のための任意の公知架橋剤であってよい。典型的な第二架橋剤には、式(III)M(OR11(式中、Mは、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ケイ素、マグネシウム又はホウ素であり、R11は、(C〜C)アルキル、アシル又はSi(OR12であり、R12は、(C〜C)アルキル又はアシルであり、そしてnはMの原子価である)のシランが含まれる。一つの具体的態様において、R11は、メチル、エチル、プロピル又はブチルである。他の態様において、Mは、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム又はケイ素である。このような第二架橋剤の組合せを使用することができることは、当業者に認められるであろう。式(I)及び(II)のシランの混合物の、かかる第二架橋剤有機シランに対する比は、典型的に、99:1〜1:99、好ましくは95:5〜5:95、更に好ましくは90:10〜10:90である。
【0047】
カルボシラン部分は、(Si−C)構造、例えば、(Si−A)構造(式中、Aは、置換された又は置換されていないアルキレン又はアリーレンである)を有する部分、例えば、SiRCH−、−SiRCH−、=SiRCH−及び≡SiCH−(式中、Rは、通常水素であるが、任意の有機又は無機基であり得る)を指す。好適な無機基には、有機ケイ素、シロキシル又はシラニル部分が含まれる。これらのカルボシラン部分は、典型的に、複雑な枝分かれ構造になるような方式で、「頭−尾」(即ち、Si−C−Si結合を有する)で結合している。特に有用なカルボシラン部分は、繰り返し単位(SiHCH)及び(SiHy−1(CH=CH)CH)(式中、x=0〜3及びy=1〜3)を有するものである。これらの繰り返し単位は、有機ポリシリカ樹脂中に1〜100,000、好ましくは1〜10,000の任意の数で存在してよい。好適なカルボシラン前駆体は、米国特許第5,153,295号(Whitmarshら)及び米国特許第6,395,649号(Wu)に開示されているものである。
【0048】
有機ポリシリカ部分縮合物は、シランを加水分解(又は部分的に縮合)して、所望の重量平均分子量を有する部分縮合物を形成するために十分な時間、式Iのものをはじめとする三又は二官能性有機シランの1種以上、式IIのものをはじめとするケイ素含有架橋剤の1種以上及び典型的に水を反応させることによって製造することができる。典型的に、この反応温度は、エタノールの沸点のために78〜80℃である。水の量は、典型的に、0.1〜2.0モル当量、更に典型的に0.25〜1.75モル当量、なお更に典型的に0.75〜1.5モル当量である。酸性又は塩基性触媒が典型的に使用される。好適な酸及び塩基には、強酸及び強塩基、例えば、それぞれ塩酸及びテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、並びに弱酸及び塩基、例えば、それぞれ酢酸又はトリエチルアミンが含まれる。塩酸のような典型的に強い酸触媒が、シランの加水分解及び縮合反応に触媒作用するために使用される。シランと水とは、典型的に0.5〜48時間反応させるが、より長い時間又はより短い時間を使用することができる。特に好適な反応時間は、1〜24時間である。シランのモル比は、広範囲に亘って変化させることができる。1種以上の式(I)のシランの、1種以上の式(II)のシランに対するモル比は、99:1〜1:99、特に95:5〜5:95、更に特に90:10〜10:90、なお更に特に80:20〜20:80である。
【0049】
バリアー層組成物中に使用するための好適な有機ポリシリカ部分縮合物は、広範囲の分子量を有していてよい。典型的に、この部分縮合物は、≦20,000の重量平均分子量を有するけれども、より高い分子量を使用することができる。更に典型的に、この重量平均分子量は、≦15,000、なお更に典型的に≦10,000、最も典型的に≦5,000である。
【0050】
有機ポリシリカ部分縮合物の形成に続いて、そして任意に酸性触媒を除去した後、部分縮合物に安定剤を任意に添加することができる。かかる安定剤は、好ましくは有機酸である。少なくとも2個の炭素を有し、及び25℃で約1〜約4の酸解離定数(「pKa」)を有する任意の有機酸が好適である。好ましい有機酸は、約1.1〜約3.9、更に好ましくは約1.2〜約3.5のpKaを有する。キレート化剤として機能することができる有機酸が好ましい。かかるキレート化有機酸には、ポリカルボン酸、例えば、ジ−、トリ−、テトラ−及びより高級カルボン酸並びに1個以上のヒドロキシル、エーテル、ケトン、アルデヒド、アミン、アミド、イミン、チオールなどで置換されたカルボン酸が含まれる。好ましいキレート化有機酸は、ポリカルボン酸及びヒドロキシ置換カルボン酸である。用語「ヒドロキシ置換カルボン酸」には、ヒドロキシ置換ポリカルボン酸が含まれる。好適な有機酸には、これらに限定されないが、シュウ酸、マロン酸、メチルマロン酸、ジメチルマロン酸、マレイン酸、リンゴ酸、シトラマル酸、酒石酸、フタル酸、クエン酸、グルタル酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、オキサロ酢酸、ケトグルタル酸、サリチル酸及びアセト酢酸が含まれる。好ましい有機酸は、シュウ酸、マロン酸、ジメチルマロン酸、クエン酸及び乳酸であり、更に好ましくはマロン酸である。有機酸の混合物を、本発明において有利に使用することができる。当業者は、ポリカルボン酸が、化合物中のそれぞれのカルボン酸部分についてのpKa値を有することを理解する。本発明で使用するために好適である有機酸としては、かかるポリカルボン酸中のpKa値の1個のみが、25℃で1〜4の範囲内であることが必要である。かかる安定剤は、典型的に、1〜10,000ppm、好ましくは10〜1000ppmの量で使用される。かかる安定剤は、材料の更なる縮合を遅延させるように機能し、そして部分縮合物の貯蔵寿命を延長させる。
【0051】
前記のように、種々の他の材料も、本発明のバリアー層組成物の成分として有用である。更に特に、ペルフルオロ主鎖置換を含有しない好適な有機ポリマーは、例えば、これらに限定されないが、ポリ(アルキレンオキシド)モノマー、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ芳香族(メタ)アクリレート、ビニル芳香族モノマー、窒素含有化合物及びそれらのチオ類似体、置換されたエチレンモノマー並びにこれらの組合せの、任意のノン・ライト・アドソービング・ディープUVポリマー(non light adsorbing deep UV polymer)から選択することができる。
【0052】
特に有用な非フッ素化有機ポリマーは、重合した単位として、シリル含有モノマー又はポリ(アルキレンオキシド)モノマー及び1種以上の架橋剤から選択された少なくとも1種の化合物を含有するものである。かかるポロゲンは、米国特許第6,271,273号に記載されている。好適なシリル含有モノマーには、これらに限定されないが、ビニルトリメチルシラン、ビニルトリエチルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、ジビニルシラン、トリビニルシラン、ジメチルジビニルシラン、ジビニルメチルシラン、メチルトリビニルシラン、ジフェニルジビニルシラン、ジビニルフェニルシラン、トリビニルフェニルシラン、ジビニルメチルフェニルシラン、テトラビニルシラン、ジメチルビニルジシロキサン、ポリ(メチルビニルシロキサン)、ポリ(ビニルヒドロシロキサン)、ポリ(フェニルビニルシロキサン)、アリルオキシ−tert−ブチルジメチルシラン、アリルオキシトリメチルシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリイソプロピルシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリメチルシラン、アリルトリフェニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、ジエチルメチルビニルシラン、ジメチルエトキシビニルシラン、ジメチルフェニルビニルシラン、エトキシジフェニルビニルシラン、メチルビス(トリメチルシリルオキシ)ビニルシラン、トリアセトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、トリエチルビニルシラン、トリフェニルビニルシラン、トリス(トリメチルシリルオキシ)ビニルシラン、ビニルオキシトリメチルシラン及びこれらの混合物が含まれる。本発明のポロゲンを形成するために有用なシリル含有モノマーの量は、典型的に、使用するモノマーの全重量基準で1〜99重量%である。シリル含有モノマーは、1〜80重量%、更に好ましくは5〜75重量%の量で存在することが好ましい。
【0053】
好適なポリ(アルキレンオキシド)モノマーには、これらに限定されないが、ポリ(プロピレンオキシド)モノマー、ポリ(エチレンオキシド)モノマー、ポリ(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)モノマー、ポリ(プロピレングリコール)(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール)アルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール)フェニルエーテル(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール)4−ノニルフェノールエーテル(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)アルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)フェニルエーテル(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレン/エチレングリコール)アルキルエーテル(メタ)アクリレート及びこれらの混合物が含まれる。好ましいポリ(アルキレンオキシド)モノマーには、トリメチロールプロパンエトキシレートトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロポキシレートトリ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール)メチルエーテルアクリレートなどが含まれる。特に好適なポリ(プロピレングリコール)メチルエーテルアクリレートモノマーは、200〜2000の範囲内の分子量を有するものである。本発明において有用なポリ(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)モノマーは、線状、ブロック又はグラフトコポリマーであってよい。かかるモノマーは、典型的に、1〜50、好ましくは2〜50の重合度を有する。典型的に、本発明のポロゲンにおいて有用なポリ(アルキレンオキシド)モノマーの量は、使用するモノマーの全重量基準で1〜99重量%である。ポリ(アルキレンオキシド)モノマーの量は、好ましくは2〜90重量%、更に好ましくは5〜80重量%である。
【0054】
シリル含有モノマー及びポリ(アルキレンオキシド)モノマーは、単独で使用しても又は組み合わせて使用しても、本発明のポロゲンを形成することができる。一般的に、ポロゲンを誘電体マトリックスと相溶化させるために必要なシリル含有モノマー又はポリ(アルキレンオキシド)モノマーの量は、マトリックス中に所望されるポロゲンのローディングのレベル、有機ポリシリカ誘電体マトリックスの特定の組成及びポロゲンポリマーの組成に依存する。シリル含有モノマーとポリ(アルキレンオキシド)モノマーとの組合せ物を使用する場合、一方のモノマーの量は、他方のモノマーの量が増加するとき減少し得る。従って、組合せ物中のシリル含有モノマーの量が増加するとき、組合せ物中のポリ(アルキレンオキシド)モノマーの量を減少させることができる。
【0055】
代表的架橋剤には、これらに限定されないが、トリビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルピリジン、ジビニルナフタレン及びジビニルキシレン;並びに例えば、エチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリビニルシクロヘキサン、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジビニルベンゼン、グリシジルメタクリレート、2,2−ジメチルプロパン1,3ジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール200ジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート、ポリエチレングリコール600ジメタクリレート、ポリ(ブタンジオール)ジアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシトリアクリレート、グリセリルプロポキシトリアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリトリトールモノヒドロキシペンタアクリレート及びこれらの混合物が含まれる。架橋を受けることができるシリル含有モノマー、例えば、これらに限定されないが、ジビニルシラン、トリビニルシラン、ジメチルジビニルシラン、ジビニルメチルシラン、メチルトリビニルシラン、ジフェニルジビニルシラン、ジビニルフェニルシラン、トリビニルフェニルシラン、ジビニルメチルフェニルシラン、テトラビニルシラン、ジメチルビニルジシロキサン、ポリ(メチルビニルシロキサン)、ポリ(ビニルヒドロシロキサン)、ポリ(フェニルビニルシロキサン)、テトラアリルシラン、1,3−ジメチルテトラビニルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン及びこれらの混合物を、架橋剤として使用することもできる。
【0056】
バリアー組成物を処方及び流延するための好ましい溶媒材料は、1種又は2種以上のバリアー層組成物の成分(例えば、1種以上の樹脂)を溶解又は分散させるが、その下にあるフォトレジスト層を感知できるほど溶解しない、任意のものであってもよい。更に特に、バリアー組成物を処方するための好適な溶媒には、これらに限定されないが、アルコール、例えばイソプロパノール、n−ブタノール、アルキレングリコール、例えばプロピレングリコールの1種以上が含まれる。あるいは、非極性溶媒、例えば脂肪族及び芳香族炭化水素、例えばドデカン、イソオクタン、メシチレン及びキシレンを使用することができる。
【0057】
バリアー組成物は、1種以上の固体成分(例えば、1種以上の樹脂)を、1種以上の極性溶媒、例えば前記で定義したもの、又はその代わりに1種以上の非極性溶媒、例えば前記で定義した脂肪族及び芳香族炭化水素の中に混合することによって、好適に選択することができる。本発明のバリアー組成物の製造のための代表的な手順について後記する実施例を参照されたい。
【0058】
本明細書で使用される場合、下記の略語は、文中に他の方法で明瞭に示されていない限り、下記の意味を有するものとする。℃=摂氏温度;μm=ミクロン=マイクロメートル:UV=紫外;rpm=毎分回転数;min.=分;hr.=時;nm=ナノメートル;g=グラム;%wt=重量%;L=リットル、mL=ミリリットル;ppm=百万分率;GPa=ギガパスカル;Mw=重量平均分子量;Mn=数平均分子量。
【0059】
用語「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの両方を含み、及び用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの両方を含む。同様に、用語「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミド及びメタクリルアミドの両方を指す。「アルキル」は、直鎖、枝分かれ及び環式アルキル基を含む。用語「ポリマー」は、ホモポリマー及びコポリマーの両方を含む。用語「オリゴマー」及び「オリゴマー性」は、二量体、三量体、四量体などを指す。「モノマー」は、重合させることができる任意のエチレン性又はアセチレン性不飽和化合物を指す。かかるモノマーには、1個以上の二重結合又は三重結合が含有されていてよい。「クロスリンカー」及び「架橋剤」は、本明細書を通して互換的に使用され、及び重合させることができる2個以上の基を有する化合物を指す。本明細書で使用される場合、「硬化する」及び「硬化」は、重合、縮合又は化合物の分子量が増加する任意の他の反応を指す。本明細書で使用される場合、溶媒除去単独の工程は、「硬化」とは考えられない。しかしながら、溶媒除去と例えば重合との両方を含む工程は、本明細書で使用される場合、用語「硬化」の範囲内である。用語「有機ポリシリカ」材料(又はオルガノシロキサン)は、ケイ素、炭素、酸素及び水素原子を含有する材料を指す。本明細書で使用される場合、「シラン」は、加水分解及び/又は縮合を受けることができるケイ素含有材料を指す。
【0060】
フォトレジスト
広範囲の種々のフォトレジスト組成物を、本発明のバリアー層組成物及びプロセスと組み合わせて使用することができる。
【0061】
前記のように、本発明に従って使用するための好ましいフォトレジストには、ポジ型又はネガ型の化学増幅型フォトレジスト、即ち、光酸促進架橋反応を受けて、レジストの被覆層の露光領域を、未露光領域よりも現像液非可溶性にするネガ型レジスト組成物及び1種以上の組成物成分の酸不安定基の光酸促進脱保護反応を受けて、レジストの被覆層の露光領域を、未露光領域よりも水性現像液に、より可溶性にするポジ型レジスト組成物が含まれる。エステルのカルボキシル酸素に共有結合している、第三級非環式アルキル炭素(例えば、t−ブチル)又は第三級脂環式炭素(例えば、メチルアダマンチル)を含有するエステル基が、しばしば、本発明のフォトレジスト中に使用される樹脂の好ましい光酸不安定基である。アセタール光酸不安定基もまた好ましい。
【0062】
本発明のフォトレジストには、典型的に、前記したような本発明の樹脂成分及び光活性成分が含有されている。好ましくは、この樹脂は、レジスト組成物にアルカリ性水性現像可能性を与える官能基を有する。例えば、ヒドロキシル又はカルボキシレートのような極性官能基を含む樹脂バインダーが好ましい。好ましくは、樹脂成分は、レジストをアルカリ性水溶液で現像可能にするために十分な量で、レジスト組成物中に使用する。
【0063】
200nmよりも長い波長、例えば248nmで画像形成するためには、フェノール樹脂が典型的に好ましい。好ましいフェノール樹脂は、触媒の存在下で対応するモノマーの、ブロック重合、乳化重合又は溶液重合によって形成することができるポリ(ビニルフェノール)である。ポリビニルフェノール樹脂の製造のために有用であるビニルフェノールは、例えば、商業的に入手可能なクマリン又は置換クマリンを加水分解し、続いて得られるヒドロキシケイ皮酸を脱カルボキシル化することによって調製することができる。有用なビニルフェノールは、また、対応するヒドロキシアルキルフェノールの脱水又は置換された若しくは置換されていないヒドロキシベンズアルデヒドとマロン酸との反応から得られるヒドロキシケイ皮酸の脱カルボキシル化によって調製することができる。かかるビニルフェノールから調製された好ましいポリビニルフェノール樹脂は、約2,000〜約60,000ダルトンの分子量範囲を有する。
【0064】
また、200nmよりも長い波長、例えば248nmで画像形成するためには、光活性成分と、フェノール単位及び非フェノール単位の両方を含有するコポリマーを含む樹脂成分との混合物を含む、化学増幅型フォトレジストが好ましい。例えば、かかるコポリマーの一つの好ましいグループは、実質的に、本質的に又は完全に、コポリマーの非フェノール単位上にのみ酸不安定基、特にアルキルアクリレート光酸不安定基を有する、即ち、フェノール性アルキルアクリレートコポリマーである。一つの特に好ましいコポリマーバインダーは、下記の式の繰り返し単位x及びyを有する。
【0065】
【化1】

【0066】
(式中、ヒドロキシル基は、コポリマーを通してオルト、メタ又はパラ位のいずれかに存在し、及びR’は、1〜約18個の炭素原子、更に典型的に1〜約6〜8個の炭素原子を有する置換された又は置換されていないアルキルである。)
tert−ブチルが一般的に好ましいR’基である。R’基は、例えば、1個以上のハロゲン(特に、F、Cl又はBr)、C1−8アルコキシ、C2−8アルケニルなどによって、任意に置換されていてよい。単位x及びyは、コポリマー中で規則的に交互になっていてよく又はポリマーを通してランダムに散在していてよい。かかるコポリマーは容易に形成することができる。例えば、上記の式の樹脂のために、ビニルフェノールと置換された又は置換されていないアルキルアクリレート、例えば、アクリル酸t−ブチルなどとを、当該技術分野で公知のフリーラジカル条件下で縮合させることができる。置換されたエステル部分、即ち、R’−O−C(=O)−、アクリレート単位の部分は、樹脂の酸不安定基として機能し、及びこの樹脂を含有するフォトレジストの被覆層の露光の際に、光酸誘起開裂を受ける。好ましくは、このコポリマーは、約3以下の分子量分布、更に好ましくは約2以下の分子量分布と共に、約8,000〜約50,000、更に好ましくは約15,000〜約30,000のMwを有する。非フェノール性樹脂、例えば、アルキルアクリレート、例えばアクリル酸t−ブチル又はメタクリル酸t−ブチルと、ビニル脂環式化合物、例えばビニルノルボルナニル又はビニルシクロヘキサノール化合物とのコポリマーも、本発明の組成物中の樹脂バインダーとして使用することができる。かかるコポリマーは、また、かかるフリーラジカル重合又は他の公知の手順によって調製することができ、および好適に約8,000〜約50,000のMw及び約3以下の分子量分布を有するであろう。
【0067】
本発明のポジ型の化学増幅型フォトレジストで使用するための酸不安定性脱保護基を有する他の好ましい樹脂は、シップレーカンパニー(Shipley Company)の欧州特許出願公開第0829766A2号(アセタールを有する樹脂及びケタール樹脂)並びにシップレーカンパニーの欧州特許出願公開第0783136A2号 1)スチレン、2)ヒドロキシスチレン及び3)酸不安定基、特にアルキルアクリレート酸不安定基、例えばアクリル酸t−ブチル又はメタクリル酸t−ブチルの単位を含有するターポリマー及び他のコポリマー)に開示されている。一般的に、種々の酸不安定基、例えば酸感受性エステル、カーボネート、エーテル、イミドなどを有する樹脂が好適である。光酸不安定基は、更に典型的に、ポリマー主鎖からペンダントであるけれども、ポリマー主鎖に一体になっている酸不安定基を有する樹脂を使用することもできる。
【0068】
前記のように、200nm未満の波長、例えば193nmで画像形成するために、好ましくは、実質的に、本質的に又は完全に、フェニル又は他の芳香族基を含有しない1種以上のポリマーを含有するフォトレジストが使用される。例えば、200nm未満の画像形成のために、好ましいフォトレジストポリマーは、約5モルパーセントよりも少ない芳香族基、更に好ましくは約1又は2モルパーセントよりも少ない芳香族基、更に好ましくは約0.1、0.02、0.04及び0.08モルパーセントよりも少ない芳香族基、なお更に好ましくは約0.01モルパーセントよりも少ない芳香族基を含有する。特に好ましいポリマーは、芳香族基を完全に含有しない。芳香族基は200nm未満の放射線を非常に吸収することができ、従ってこのような短波長放射線で画像形成されるフォトレジストで使用されるポリマーのために望ましくない。
【0069】
実質的に又は完全に芳香族基を含有せず、そして本発明のPAGと共に処方して200nm未満の画像形成するためのフォトレジストを得ることができる好適なポリマーは、欧州特許出願公開第930542A1号、米国特許第6,692,888号、米国特許第6,680,159号(全てシップレーパンパニーのものである)に開示されている。
【0070】
実質的に又は完全に芳香族基を含有しない好適なポリマーは、アクリレート単位、例えば、メチルアダマンチルアクリレート、メチルアダマンチルメタクリレート、エチルフェンキルアクリレート、エチルフェンキルメタクリレートなどの重合によって得ることができるような光酸不安定アクリレート単位;ノルボルネン化合物又は環内炭素−炭素二重結合を有する他の脂環式化合物の重合によって得ることができるような縮合非芳香族脂環式基;並びに無水マレイン酸及び/又はイタコン酸無水物などの重合によって得ることができるような無水物を好適に含有している。
【0071】
本発明の好ましいネガ型組成物には、本発明の酸及び光活性成分に曝露した際に、硬化、架橋又は固化する材料の混合物が含有されている。特に好ましいネガ型組成物には、本発明の、フェノール樹脂のような樹脂バインダー、架橋剤成分及び光活性成分が含有されている。かかる組成物及びその使用は、欧州特許出願公開第0164248号及び欧州特許出願公開第0232972号、並びにThackerayらに付与された米国特許第5,128,232号に開示されている。樹脂バインダー成分として使用するための好ましいフェノール樹脂には、ノボラック及び前記のもののようなポリ(ビニルフェノール)が含まれる。好ましい架橋剤には、メラミン、グリコールウリルを含むアミン系材料、ベンゾグアナミン系材料及び尿素系材料が含まれる。メラミン−ホルムアルデヒド樹脂が、一般的に最も好ましい。かかる架橋剤は商業的に入手可能である。例えば、メラミン樹脂は、アメリカン・サイアナミド社(American Cyanamid)によって、Cymel300、301及び303の商品名で販売されている。グリコールウリル樹脂は、アメリカン・サイアナミド社によって、Cymel1170、1171、1172の商品名で販売されており、尿素系樹脂は、Beetle60、65及び80の商品名で販売されており、及びベンゾグアナミン樹脂は、Cymel1123及び1125の商品名で販売されている。
【0072】
200nm未満の波長、例えば193nmで画像形成するために、好ましいネガ型フォトレジストは、シップレーカンパニーの国際特許出願公開第03077029号に開示されている。
【0073】
本発明のフォトレジストには、また、他の材料が含有されていてよい。例えば、他の任意の添加物には、化学線及びコントラスト染料、縦皺防止剤、可塑剤、感度増強剤、増感剤(例えば、I線(即ち365nm)又はG線波長のようなより長い波長で、本発明のPAGを使用するため)などが含まれる。このような任意の添加物は、典型的に、比較的高濃度、例えば、レジストの乾燥成分の全重量の5〜30重量パーセントの量で存在してよい充填剤及び染料以外は、フォトレジスト組成物中に低濃度で存在する。
【0074】
本発明のレジストの好ましい任意の添加物は、添加された塩基、例えば、現像されたレジストレリーフ画像の解像度を向上させることができるカプロラクタムである。添加された塩基は、比較的少量、例えば、PAGに対して約1〜10重量パーセント、更に典型的に1〜約5重量パーセントで好適に使用される。他の好適な塩基性添加物には、スルホン酸アンモニウム塩、例えばp−トルエンスルホン酸ピペリジニウム及びp−トルエンスルホン酸ジシクロヘキシルアンモニウム;アルキルアミン、例えばトリプロピルアミン及びドデシルアミン;アリールアミン、例えばジフェニルアミン、トリフェニルアミン、アミノフェノール、2−(4−アミノフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどが含まれる。
【0075】
本発明に従って有用なレジストの樹脂成分は、典型的に、レジストの露光された被覆層を、例えば、アルカリ性水溶液で現像可能にするために十分な量で使用される。更に特に、樹脂バインダーは、レジストの全固形分の50〜約90重量パーセントを好適に構成する。光活性成分は、レジストの被覆層中の潜像の発生を可能にするために十分な量で存在させるべきである。更に特に、光活性成分は、好適には、レジストの全固形分の約1〜40重量パーセントの量で存在する。典型的に、化学増幅型レジストのために、より少ない量の光活性成分が好適である。
【0076】
本発明のレジスト組成物には、また、活性化放射線に露光した際に、レジストの被覆層中の潜像を発生させるために十分な量で適切に使用される光酸発生剤(即ち、「PAG」)が含まれている。193nm及び248nm画像形成で画像形成するための好ましいPAGには、イミドスルホネート、例えば、下記の式の化合物が含まれる。
【0077】
【化2】

【0078】
(式中、Rは、カンファー、アダマンタン、アルキル(例えば、C1−12アルキル)及びペルフルオロアルキル、例えばペルフルオロ(C1−12アルキル)、特にペルフルオロオクタンスルホネート、ペルフルオロノナンスルホネートなどである)特に好ましいPAGは、N−[(ペルフルオロオクタンスルホニル)オキシ]−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドである。
【0079】
スルホネート化合物、特にスルホン酸塩もまた好適なPAGである。193nm及び248nm画像形成のための2種の好適な薬剤は、下記のPAG1及び2である。
【0080】
【化3】

【0081】
かかるスルホネート化合物は、上記のPAG1の合成を詳述している欧州特許出願第96118111.2号(欧州特許出願公開第0783136号)に開示されたようにして製造することができる。
【0082】
上記のカンファースルホネート基以外のアニオンで錯化された、上記の2種のヨードニウム化合物も好適である。特に、好ましいアニオンには、式RSOのものが含まれる(式中、Rは、アダマンタン、アルキル(例えば、C1−12アルキル)及びペルフルオロアルキル、例えばペルフルオロ(C1−12アルキル)、特にペルフルオロオクタンスルホネート、ペルフルオロブタンスルホネートなどである)。
【0083】
他の公知のPAGも、本発明に従って使用されるフォトレジスト中に使用することができる。特に193nm画像形成のために、増強された透明性を得るために、芳香族基、例えば上記のイミドスルホネートを含有しないPAGが、一般的に好ましい。
【0084】
本発明のレジストの好ましい任意の添加物は、添加された塩基、特に、現像されたレジストレリーフ画像の解像度を向上させることができる、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)又はテトラブチルアンモニウムラクテートである。193nmで画像形成されるレジストのために、好ましい添加された塩基は、ヒンダードアミン、例えばジアザビシクロウンデセン又はジアザビシクロノネンである。添加された塩基は、比較的少量、例えば、全固形分に対して約0.03〜5重量パーセントで好適に使用される。
【0085】
本発明に従って使用されるフォトレジストには、また、他の任意の材料が含有されていてよい。例えば、他の任意の添加物には、縦皺防止剤、可塑剤、感度増強剤などが含まれる。このような任意の添加物は、典型的に、比較的高濃度、例えば、レジストの乾燥成分の全重量の約5〜30重量パーセントの量で存在してよい充填剤及び染料以外は、フォトレジスト組成物中に低濃度で存在する。
【0086】
本発明のネガ型フォトレジストには、典型的に、好ましくは別個のレジスト成分として架橋成分が含有される。メラミン、例えば、サイメルメラミン樹脂のようなアミン系架橋剤が、しばしば好ましい。
【0087】
本発明に従って使用されるフォトレジストは、一般的に、公知の手順に従って調製される。例えば、本発明のレジストは、フォトレジストの成分を、好適な溶媒、例えば、グリコールエーテル、例えば2−メトキシエチルエーテル(ジグリム)、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート;乳酸エステル、例えば乳酸エチル若しくは乳酸メチル(乳酸エチルが好ましい);プロピオン酸エステル、特にプロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル及びエチルエトキシプロピオネート;セロソルブエステル、例えばメチルセロソルブアセテート;芳香族炭化水素、例えばトルエン若しくはキシレン又はケトン、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン及び2−ヘプタノン中に溶解させることによってコーティング組成物として製造することができる。典型的に、フォトレジストの固体含有量は、フォトレジスト組成物の全重量基準で、5から35重量パーセントの間で変化する。このような溶媒のブレンドもまた好適である。
【0088】
リソグラフィ処理
液体フォトレジスト組成物は、例えば、スピニング、浸漬、ローラーコーティング又は他の一般的な塗布技術によって、基体の上に適用することができる。スピンコーティングのとき、コーティング溶液の固形分含有量は、使用する特別のスピニング装置、溶液の粘度、スピナーの速度及びスピニングのために許容される時間の長さに基づいて、所望のフィルム厚さを与えるように調節することができる。
【0089】
本発明に従って使用されるフォトレジスト組成物は、フォトレジストによるコーティングを含むプロセスで一般的に使用される基体に、好適に適用される。例えば、この組成物は、マイクロプロセッサ及び他の集積回路コンポーネントの製造用の、シリコンウェーハ又は二酸化ケイ素で被覆されたシリコンウェーハの上に適用することができる。アルミニウム−酸化アルミニウム、ヒ化ガリウム、セラミック、石英、銅、ガラス基体なども、好適に使用される。フォトレジストは、また、反射防止層、特に有機反射防止層の上に好適に適用されうる。
【0090】
前記のように、適用されたフォトレジスト組成物層は、好ましくは、溶媒組成物、例えば1種以上の水性及び/又は有機溶媒、例えばアルコールを含有する溶媒組成物で処理することができる。かかる溶媒組成物処理は、浸漬露光の過程における、フォトレジスト材料の浸漬流体の中への望ましくない移動を減少させることができる。
【0091】
バリアー組成物層を使用する場合、バリアー組成物は、任意の好適な方法(スピンコーティングが好ましい)によってフォトレジスト組成物の上に適用することができる。
【0092】
表面の上へのフォトレジストの被覆に続いて、これを、好ましくはフォトレジスト被膜がタックフリーになるまで溶媒を除去するために、加熱によって乾燥させることができ、又は前記のように、バリアー層組成物を適用した後フォトレジスト層を乾燥させ、フォトレジスト組成物及びバリアー組成物層の両方からの溶媒を、単一の熱処理工程で実質的に除去することができる。
【0093】
次いで、フォトレジスト層(存在する場合には、オーバーコートしたバリアー組成物層と共に)を、浸漬リソグラフィ系内で露光される。即ち、露光手段(特に、投映レンズ)とフォトレジスト被覆基体との間の空間が、浸漬流体、例えば、水、又は1種以上の添加物(例えば増大した屈折率の流体を与えることができる硫酸セシウム)と混合した水によって占められる。好ましくは、浸漬流体(例えば、水)は、バブルを回避するように処理されている。例えば、水は、ナノバブルを回避するために脱気することができる。
【0094】
本明細書において「浸漬露光」又は他の同様の用語に対する言及は、露光を、露光手段と被覆されたフォトレジスト組成物層との間に介在するこのような流体層(例えば、水又は添加物を含有する水)を用いて行うことを示す。
【0095】
次いで、フォトレジスト組成物層を、典型的に、露光手段及びフォトレジスト組成物の成分に依存して約1〜100mJ/cmの範囲内の露光エネルギーを有する活性化放射線への露光で好適にパターン化する。本明細書において、フォトレジスト組成物を、フォトレジストを活性化する放射線に露光することに対する言及は、放射線が、例えば、光活性成分の反応を起こすこと(例えば、光酸発生剤化合物から光酸を生成すること)によって、フォトレジストの中に潜像を形成することができることを示す。
【0096】
前記のように、フォトレジスト組成物は、好ましくは、短い露光波長、特に300nm未満及び200nm未満の露光波長(248nm及び193nmが特に好ましい露光波長である)並びにEUV及び157nmによって光活性化される。
【0097】
露光に続いて、この組成物のフィルム層を、好ましくは、約70℃〜約160℃の範囲内の温度でベークする。その後、このフィルムを、好ましくは、水性系現像液、例えば、第四級アンモニウムヒドロキシド溶液、例えばテトラアルキルアンモニウムヒドロキシド溶液、種々のアミン溶液、好ましくは0.26Nテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、例えばエチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン又はメチルジエチルアミン;アルコールアミン、例えばジエタノールアミン又はトリエタノールアミン;環式アミン、例えばピロール、ピリジンなどで処理することによって現像する。一般的に、現像は、当該技術分野で認められた手順に従う。
【0098】
基体の上のフォトレジスト被膜の現像に続いて、現像された基体を、レジストが除去されたこれらの領域上で、例えば、当該技術分野で公知の手順に従って、レジストが除去された基体領域を、化学的にエッチングするか又はメッキすることによって、選択的に処理することができる。マイクロエレクトロニクス基体の製造、例えば、二酸化ケイ素ウェーハの製造のために、好適なエッチング剤には、ガスエッチング剤、例えば、ハロゲンプラズマエッチング剤、例えば、プラズマ流として適用されるCl又はCF/CHFエッチング剤のような塩素又はフッ素系エッチング剤が含まれる。このような処理の後で、公知のストリッピング手順を使用して、レジストを処理した基体から除去することができる。
【0099】
下記の限定されない実施例は、本発明の例示である。
【実施例】
【0100】
実施例1
バリアー組成物製造
トップ層(バリアー)コーティング溶液を、ポリエチレン容器に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート中の27%の溶液固形分として、55重量%のメチルトリエトキシシラン及び45重量%のテトラエチルオルトシリケートの加水分解物(hydrozylate)10.62g、並びにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶媒中の93%の溶液固形分として、90重量%のコグニス・フォトマー(Cognis Photomer)8061及び10重量%のUCB TMPTA−Nを含むアクリレートコポリマー1.99gを装入することによって調製した。有機ポリシリカは、上記及びシップレーカンパニーの公開特許文書に記載されているようにして調製し、有機ポリマーは、米国特許第6,271,273号(Youら)及び米国特許第6,420,441号に開示されている方法に従って調製した。
【0101】
このポリマーに、イソプロパノール215gを添加し、及びこの溶液を振り、均一な溶液を形成させた。このサンプルを、AmberliteIRN150(ローム・アンド・ハース社(Rohm and Haas Company)(ペンシルベニア州フィラデルフィア)の製品)の床に通してイオン交換し、次いで0.2ミクロンのポリテトラフルオロエチレンフィルターディスクに通して濾過した。
【0102】
実施例2〜6
バリアー組成物製造
実施例1に概説した手順に基づいて、追加のトップコートサンプルを、実施例1に記載した同じ有機ポリシリカポリマーから調製した。有機ポリマーの組成を表1に示し、それぞれのサンプルの溶液固形分は、15重量%であった(組成物の残りは、イソプロパノール(IPA)担体溶媒であった)。
【0103】
【表1】

【0104】
実施例7
バリアー組成物の処理
実施例1〜6のコーティングサンプルを、サイト・サービスズ・トラックトリックス(Site Services Tractrix)200mmトラックの上でスピンコートした。ウェーハを静止させたまま、溶液をピペットからウェーハの上に置いた。200mmウェーハを、1500〜2500rpmの回転速度で回転させて、所望のフィルム厚さを達成させた。フィルムを回転する工程において、過剰の溶媒もフィルムから除去された。フィルムから溶媒の残りを除去するために、ウェーハをホットプレート上で90℃で、フィルムが乾燥するまで加熱した。
【0105】
被覆工程
トップ層コーティング組成物を、未被覆シリコンウェーハの上にスピンコートして、被膜の厚さ及び光学特性を決定した。次いで、このサンプルを、前もってメタクリレート系193nmフォトレジストを堆積させたシリコンウェーハにスピンコートした。レジストをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートから堆積させ、次いで任意に120℃で1分間硬化させた。イソプロパノール(IPA)洗浄工程又はレジスト層の上面へのトップ層被膜堆積の結果を、表2及び3に示す。ソフトベークレジストサンプルについて、被膜は、最小のフィルム損失でIPA洗浄工程の影響を受けなかった。非ソフトベークサンプルについて、フィルム厚さ損失は約25nmであった。両方の場合に、実施例1の堆積から、良好な品質のトップ層フィルムが調製された。
【0106】
【表2】

【0107】
【表3】

【0108】
スタック形成
バリアー性能を測定するために、ウェーハを、60nm厚さの市販の有機反射防止層で被覆し、215℃で硬化させ、次いでメタクリレート系193nmフォトレジストを被覆した。次いで、レジストを任意にソフトベークし、その後トップコート層を堆積させた。イソプロパノールを、ウェーハに任意に適用して予備湿潤させ、及びレジストの表面を洗浄し、その後トップコートを堆積させた。トップコート層の析出後、フィルムを90℃又は120℃の温度で1分間ソフトベークした。
【0109】
実施例8
バリアー組成物層性能
このスタックウェーハを、露光させないままにしておくか又は193nm放射線に露光した。次に、ウェーハを全て120℃で1分間(メタクリレート系レジストについての標準的露光後ベーク温度)ソフトベークした。次いで、1mLの脱イオン水小滴を、PTFEのOリングを使用する制限された領域内で、60秒間ウェーハと接触状態に置いた。次いで、小滴を除去し、LC/質量分析によって、レジスト中の光酸及びその光分解副生成物を分析して、水相(浸漬流体)中の汚染を減少するための、予備湿潤予備洗浄及びトップコート層材料の効能を決定した。
【0110】
【表4】

【0111】
実施例9
リソグラフ処理
下記のリソグラフ結果(下記の表5に記載した)は、特定されたバリアー組成物層(即ち、実施例1及び6のバリアー組成物層)を有するフォトレジストのパターン化露光(193nm)で得られた。
【0112】
【表5】

【0113】
実施例10
バリアー組成物層の光学的特性
バリアー組成物の光学的特性は、193nm及び248nmで評価した。結果を下記の表6に記載する。
【0114】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)基体の上にフォトレジスト組成物を適用する工程;
(b)フォトレジスト組成物の上に、フッ素化主鎖置換を有する樹脂以外の、1種以上の成分を含有するバリアー組成物を適用する工程;
(c)フォトレジスト層を、フォトレジスト組成物を活性化する放射線に浸漬露光する工程
を含む、フォトレジスト組成物の処理方法。
【請求項2】
バリアー組成物が、Si原子を含有する1種以上の樹脂を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
(a)基体の上にフォトレジスト組成物を適用する工程;
(b)適用したフォトレジスト組成物を流体組成物で処理する工程;並びに
(c)フォトレジスト層を、フォトレジスト組成物を活性化する放射線に浸漬露光する工程
を含む、フォトレジスト組成物の処理方法。
【請求項4】
バリアー組成物を、処理されたフォトレジスト組成物層の上に適用する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
フォトレジスト組成物を、水性流体組成物で処理する、請求項3記載の方法。
【請求項6】
フォトレジスト組成物を、1種以上の有機溶媒を含有する流体組成物で処理する、請求項3記載の方法。
【請求項7】
基体上に、
1)フォトレジスト組成物の被覆層及び
2)フォトレジスト組成物層上のバリアー組成物の被覆層(バリアー組成物は、1種以上の非フッ素化成分を含む)
を有する基体;並びに
3)浸漬フォトリソグラフィ露光手段
を含む、被覆された基体系。
【請求項8】
浸漬フォトリソグラフィプロセスにおいて、下にあるフォトレジスト組成物と共に使用するために適合している有機バリアーコーティング組成物であって、1種以上のシルセスキオキサン樹脂及び1種以上のフッ素化有機樹脂を含むバリアーコーティング組成物。

【公開番号】特開2011−123517(P2011−123517A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−14240(P2011−14240)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【分割の表示】特願2005−193666(P2005−193666)の分割
【原出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【出願人】(591016862)ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー. (270)
【Fターム(参考)】