説明

浸漬型膜分離装置における膜ユニット

【課題】膜ユニットの組み立て解体を簡易に行え、かつ各膜エレメントの保持を確実に行い、その摩耗を防止するようにした浸漬型膜分離装置における膜ユニットを提供すること。
【解決手段】平行配列した各膜エレメントEの側端部を挿入可能とした膜エレメント挿入溝71を側面縦方向に所定間隔で形成した開口面が台形断面をした遊嵌弾性支持体7と、この遊嵌弾性支持体7の上下位置に隣接配設した弾性材製の櫛歯形固定支持体8とにより平行配列する膜エレメントEの両側面部の上下位置を一定間隔を保持して挟持するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浸漬型膜分離装置における膜ユニットに関し、特に、膜エレメントをしっかりと保持固定することでその摩耗を防止するようにし、かつ膜ユニットの組み立て解体を簡易に行えるようにした浸漬型膜分離装置における膜ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下水、産業排水、生活排水等の汚水(被処理水)を処理する方法として、膜分離活性汚泥処理法がある。この膜分離活性汚泥処理においては、汚水を活性汚泥処理する反応槽内に浸漬型膜分離装置を浸漬配置している。この浸漬型膜分離装置は、複数枚の有機平膜型の膜エレメントを所定間隔で平行に配列し、かつ膜面を上下方向に沿わせるようにして配置して膜ユニットを構成し、この膜ユニットを本体ケーシング内に充填するように構成している。
【0003】
そして、反応槽内底部に配設した散気装置により平行配列した膜エレメント間を膜面洗浄用気体(一般的には空気)を上昇させて汚水に上昇流を発生させて槽内で攪拌を行い、かつこれにより膜エレメントの膜面の洗浄を行うようにするとともに、各膜エレメント間の膜面より該膜エレメント内に発生させる負圧(膜間差圧)を利用して汚水を吸引することで濾過し、その濾過水を処理水として取り出すようにしている。
【0004】
ところで、平行配列した膜エレメント間を所定の間隔に保持するため、従来種々の方法が採用されている。例えば、特許文献1には、複数の膜エレメントを一体に保持して収納する枠体に、膜エレメントのそれぞれを個々別々に鉛直方向の姿勢で6〜10ミリの所定間隙をあけて平行に配列する方向に挿入する複数の案内溝を形成したものが示されているが、この方法では枠体より各膜エレメントの取り出しが容易に行える利点はあるが、膜エレメントの振動により該膜エレメントが案内溝に絶えず接触するため、膜エレメントの支持部分が摩耗するという問題があった。
【0005】
また、特許文献2には、押さえ板を、剛性材からなる支持部と、弾性材により歯状凸起を備えて一体成形した押さえ部とで構成し、膜エレメント間の各間隙に弾性材製の櫛歯状凸起を圧入するようにして支持するものが示されているが、この方法では膜エレメント支持体の上部は押さえ板にて支持されているのでその摩耗を削減することはできるも、膜エレメントの中央部及び下部は何も支持されていないのでその摩耗を防ぐことができないという問題があった。
【0006】
また、特許文献3には、上部フレーム及び下部フレームにそれぞれ上部案内部材及び下部案内部材を一体に形成し、かつ該各案内部材に案内溝を形成し、この案内溝にて膜エレメントの上部端面と下部端面とを上下より挟むようにして圧入して平行に配列する各膜エレメントを保持し、かつ膜エレメントの側部は中央部2カ所に間隔保持部材にて保持するものが示されているが、この方法では構成部材数が多く、構成が複雑になるとともにその組み立て及びメンテナンス時等における膜エレメント分解が複雑になるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3023928号公報
【特許文献2】特許第3328149号公報
【特許文献3】特開平2009−148743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来の浸漬型膜分離装置における膜ユニットの有する問題点に鑑み、膜ユニットの組み立て解体を簡易に行え、かつ各膜エレメントの保持を確実に行い、その摩耗を防止するようにした浸漬型膜分離装置における膜ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、浸漬型膜分離装置における膜ユニットは、平行配列した各膜エレメントの側端部を挿入可能とした膜エレメント挿入溝を側面縦方向に所定間隔で形成した開口面が台形断面をした遊嵌弾性支持体と、この遊嵌弾性支持体の上下位置に隣接配設した弾性材製の櫛歯形固定支持体とにより平行配列する膜エレメントの両側面部の上下位置を一定間隔を保持して挟持するように構成したことを特徴とする。
【0010】
この場合において、遊嵌弾性支持体を中空六角筒体の連続体から構成することができる。
【0011】
また、遊嵌弾性支持体に形成した膜エレメント側端部挿入用の溝の幅を、膜エレメントの幅より0.5〜3mm大きく形成することができる。
【0012】
また、櫛歯形固定支持体を、膜ユニットの本体ケーシングへの取り付けを着脱可能とし、かつ櫛歯形固定支持体の側面に、膜エレメント側端面部を挟持する膜エレメント挿入支持溝を形成することができる。
【0013】
また、上部の櫛歯形固定支持体の取付位置を、膜エレメントの集水ノズル取付位置よりも下方位置に設定することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の浸漬型膜分離装置における膜ユニットによれば、平行配列した各膜エレメントの側端部を挿入可能とした膜エレメント挿入溝を側面縦方向に所定間隔で形成した開口面が台形断面をした遊嵌弾性支持体と、この遊嵌弾性支持体の上下位置に隣接配設した弾性材製の櫛歯形固定支持体とにより平行配列する膜エレメントの両側面部の上下位置を一定間隔を保持して挟持するように構成することにより、膜面洗浄用気泡の上昇流等により膜エレメントに振動が発生せんとしても弾性材製の櫛歯形固定支持体によりその振動が上下左右から吸収抑制されるので、膜エレメントが遊嵌弾性支持体や櫛歯形固定支持体の溝との接触がないため溝が摩耗することがなく、膜ユニットを長期間に亘って安全使用することができる。
【0015】
また、遊嵌弾性支持体を中空六角筒体の連続体から構成することにより、膜エレメントを緩く、かつ、確実に支持することができる。
【0016】
また、遊嵌弾性支持体に形成した膜エレメント側端部挿入用の溝の幅を、膜エレメントの幅より0.5〜3mm大きく形成することにより、多数の膜エレメントを簡単に所定の間隔で平行配列させることができる。
【0017】
また、櫛歯形固定支持体を、膜ユニットの本体ケーシングへの取り付けを着脱可能とし、かつ櫛歯形固定支持体の側面に、膜エレメント側端面部を挟持する膜エレメント挿入支持溝を形成することにより、該櫛歯形固定支持体を本体ケーシングより取り外すだけで膜エレメントの挟持が解除されるので、簡単に所定の膜エレメントの着脱交換を行うことができる。
【0018】
また、上部の櫛歯形固定支持体の取付位置を、膜エレメントの集水ノズル取付位置よりも下方位置に設定することにより、膜エレメントを挟持固定した状態で集水排水管との接続作業が簡易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の浸漬型膜分離装置における膜ユニットの一実施例を示す正面図である。
【図2】同側面図である。
【図3】同平面図である。
【図4】(A)は図7のX−X断面図、(B)及び(C)は遊嵌弾性支持体の変形例である。
【図5】櫛歯形固定支持体の外観斜視図である。
【図6】膜エレメントを示し、(A)は外観正面図、(B)は側面図、(C)は平面図である。
【図7】膜エレメントの支持方法を示す外観説明図である。
【図8】(A)は膜エレメントを支持した状態を示す底面図、(B)はエレメントの底部を支持した状態を示す側面図である。
【図9】膜エレメントの交換作業を示す説明斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の浸漬型膜分離装置における膜ユニットの実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0021】
図1〜図9に、本発明の浸漬型膜分離装置における膜ユニットの一実施例を示す。
下水、産業排水、生活排水等の汚水(被処理水)を活性汚泥処理する場合、反応槽(図示省略)内に浸漬配置する浸漬型膜分離装置となる膜ユニットAを用いるが、この膜ユニットAは、本体ケーシングK内に複数枚の有機平膜型の膜エレメントを所定間隔で平行に配列し、かつその膜面を上下方向に沿わせるようにして配置し、これら平行配列する各膜エレメントの側端部を本体ケーシングKに固定するようにした開口面が台形断面をした遊嵌弾性支持体と、この遊嵌弾性支持体の上下位置に配設した弾性材製の櫛歯形固定支持体とにより振動を抑制するようにして支持して構成する。
【0022】
本体ケーシングKは、特に限定されるものではないが、例えば、本体ケーシングKの両側外面に縦方向に沿わせる縦ケーシング部材1と、同本体ケーシングKの正面側及び背面側に横方向に沿わせる横ケーシング部材2及び正面側及び背面側に配設する縦ケーシング部材K1間を連結するように配設する連結部材3とをもって箱形に組み合わせて所要の強度を有するように構成し、この箱形の本体ケーシングK内に複数枚の膜エレメントE、例えば、50〜100枚程度の膜エレメントEを平行配列して収納し、かつこれらの膜エレメントEを該本体ケーシングKに着脱可能に取り付けるようにし、さらには該本体ケーシングKの底部には、図2及び図8に示すように、膜エレメント受け板4、4を配設し、これにより平行配列する全膜エレメントEの左右側端底部を受けるようにして、膜エレメントEの重量を本体ケーシングKにて支持するようにするが、平行配列される膜エレメントE間の隙間には反応槽内の上昇汚水流が流れるようにする。また、この膜エレメント受け板4は本体ケーシングKを保持できる強度を有することが望ましい。
なお、本体ケーシングKを構成する横ケーシング部材2は、櫛歯形固定支持体を取り付けるようにした取付板と兼用することもできるが、この場合は、縦ケーシング部材1や連結部材3と簡易に着脱できるように蝶ナット等(図示省略)にて固定できるようにすることが望ましい。
【0023】
さらに上述のように組み合わせた箱形の本体ケーシングK内に複数枚の膜エレメントEを所定間隔をあけて平行配列して収納固定できるように、開口面が台形断面をした遊嵌弾性支持体7とこの遊嵌弾性支持体7の上下部において隣接配設するようにした櫛歯形固定支持体8とを本体ケーシングKに備える。
この遊嵌弾性支持体7は、開口面が台形断面に形成することによって、膜エレメントEを緩やかに遊嵌支持するものである限りにおいて、その構造は特に限定されるものではないが、例えば、図4(A)に示すように、合成樹脂を用いて中空六角形をした所定長さを有する筒状体、所謂ハニカム形状の中空六角筒体を、横1列に隣接配列して一体に構成したもので、この遊嵌弾性支持体7の外側面に形成される溝を膜エレメント挿入溝71として使用する。そして、この遊嵌弾性支持体7は、直接本体ケーシングKに固定することもできるが、図示の実施例では本体ケーシングKを構成する横ケーシング部材2の内側に沿って配設し、これにビス止め、鋲留め、その他の方法で固定して一体となるようにする。
なお、遊嵌弾性支持体7は、図4(A)に示すもののほか、図4(B)に示す背面に空間を形成したものや図4(C)に示す背面に空間のないものとすることができる。
【0024】
そして、この遊嵌弾性支持体7は、本体ケーシングKの長手方向に沿い、かつ互いに対峙するように配設し、該対峙する各遊嵌弾性支持体7の膜エレメント挿入溝71内に前記膜エレメントEを本体ケーシングKの上方位置から差し込むようにして挿入するも、遊嵌弾性支持体7の膜エレメント挿入溝71と膜エレメント側端部との間には隙間があり、その隙間分だけ膜エレメントEは遊嵌弾性支持体7の膜エレメント挿入溝71内にて膜面に対して交わる方向に若干移動自由となるが、この遊嵌弾性支持体7の溝間隔にて隣接される膜エレメントEの配列間隔は、図4に示すように、予め定めた間隔に保持される。
【0025】
また、櫛歯形固定支持体8は、平行配列する膜エレメントEの側端部を挟持して固定するもので、これは図7に示すように、通常前記遊嵌弾性支持体7の上端部と下端部に隣接するようにしてそれぞれ配設し、遊嵌弾性支持体7の膜エレメント挿入溝間隔と該櫛歯形固定支持体8の膜エレメント挿入支持溝81の間隔とを一致するように構成する。
この櫛歯形固定支持体8は、図5に示すように、ゴム或いは軟質合成樹脂等所要の挟持力を有する弾性材を用いて形成し、かつその長手方向の片面、すなわち、膜エレメント側に櫛歯形の膜エレメント挿入支持溝81を所定間隔に多数形成して構成する。これにより、遊嵌弾性支持体7の膜エレメント挿入溝71に順次膜エレメントEの側端部を挿入するようにして差し込むと膜エレメントEは自然と所定の間隔を保って平行に配列される。
この場合、遊嵌弾性支持体7より上方部位置と下方部位置において本体ケーシングKの外側方からそれぞれ膜エレメント側へ押しつけるようにすると、該膜エレメントEの側端部が膜エレメント挿入支持溝81内に差し込まれるようになって膜エレメントEは櫛歯形固定支持体8を介してしっかりと本体ケーシングKに固定されるようになる。
なお、この櫛歯形固定支持体8は前記横ケーシング部材2の内側面に接着或いは他の方法で固定するか、横ケーシング部材2側にビス止めできるようにした取付板82に接着或いは他の方法で固定するようにする。
【0026】
この膜エレメントEは、図6に示すように、濾板本体ともなる膜エレメント支持枠5の表面に所要の濾過膜6を配設し、この膜エレメント支持枠5の表面と濾過膜6との間に形成する通液流路(図示省略)内に負圧を作用させ、この負圧を利用して平行配列する膜エレメント間に形成される流路R内の汚水を吸引して濾過するように形成する。
この膜エレメント支持枠5は、特に限定されるものではないが、例えば、合成樹脂製とし、これを縦長形にしてその両側端部5aを先端側が細くなる図6(C)に示すように、テーパ形に形成して、該膜エレメント支持枠5の側端部が遊嵌弾性支持体7の膜エレメント挿入溝71及び櫛歯形固定支持体8の膜エレメント挿入支持溝81内に確実に挿入できるように形成するとともに、その内部に通水路(図示省略)を形成し、膜エレメントの膜面にて濾過した濾過水を該通水路を経て上部の集水孔51まで導くようにし、この集水孔51には必要に応じて集水ノズル52を突設し、この集水ノズル52に可撓性の管、例えば、ゴムホース等(図示省略)を介して、図9に示すように、本体ケーシングKに配設した集水排水管9に接続するようにする。
なお、この場合、遊嵌弾性支持体7の上部に配設する櫛歯形固定支持体8の取付位置を、膜エレメントに形成する集水ノズル52の取付位置よりも下方位置に設定することで前記ゴムホース等の接続作業、膜エレメントの取り外し等の交換作業が簡易に行えるものとなる。
【0027】
次に、上記膜ユニットの組み立て及び作用について説明する。
予め形成した縦ケーシング部材1、横ケーシング部材2、連結部材3、膜エレメント受け板4等部材を用いて箱形にビス止め、溶接その他の方法で一体に組み合わせて本体ケーシングKを構成する。この場合、本体ケーシングKの長手方向の正面側及び背面側に、互いに対峙するようにして遊嵌弾性支持体7を取り付ける。これは予め遊嵌弾性支持体7を取り付けたハニカム取付板72を本体ケーシングKに固定することにより、或いは横ケーシング部材2に直接取り付けるようにしてもよい。
また、この場合、左右に配設される2つの遊嵌弾性支持体7、7の膜エレメント挿入溝71、71は、互いに対峙するように配設することで、該遊嵌弾性支持体7の互いに対峙する膜エレメント挿入溝71、71間にそれぞれ膜エレメントEを本体ケーシングKの上方から落とし込むようにする。膜エレメントEは、完全には固定されていないものの各膜エレメント挿入溝71、71に各々配列される。膜エレメントEの左右両側底部は左右の両膜エレメント受け板4、4にて支持されるようにして本体ケーシング内に組み込まれる。
なお、この平行配列される膜エレメントEの最外側位置には膜エレメントと同形状に合成樹脂にて形成したダミー板10を採用し、これを膜エレメントと同様に最外側の遊嵌弾性支持体7の膜エレメント挿入溝71に落とし込む。ダミー板10は、完全には固定されていないものの膜エレメント挿入溝71、71に配列される。これにより、外側位置となる膜エレメントEとダミー板10との間に汚水の流路Rを確保するようにする。
【0028】
次に、櫛歯形固定支持体8を取り付けた取付板82を本体ケーシングKに取り付ける。この場合、図7に示すように、遊嵌弾性支持体7の上端部と下端部とに隣接するように配設してこの櫛歯形固定支持体8の取付板82、82を本体ケーシングに取り付け、取り外しが可能なようにして蝶ナット等によるビス止めにて固定する。この場合、櫛歯形固定支持体8の各膜エレメント挿入支持溝81内に全膜エレメントEのテーパ形をなした側端部5aが挿入されるようにする。
これにより、櫛歯形固定支持体8のもつ弾性力にて図4に示すように、全膜エレメントの側端部はその上下両位置で櫛歯形固定支持体8、8にて挟持されるようになり、櫛歯形固定支持体8が膜エレメントEを固定する治具としての作用を果たし、膜エレメントEの平行配列のピッチが一定に保持されるものとなり、さらにはその弾性を利用して膜エレメントEの振動が抑制或いは阻止されるようになる。
【0029】
そして本体ケーシングに取り付けた集水排水管9と、各膜エレメントに突設した集水ノズルとをゴムホースを介して接続し、膜エレメントにて濾過した処理水を排水できるようにする。この集水排水管と集水ノズル間をゴムホース(可撓性管)にて接続することで、応力集中等による破損を未然に防止することができる。
【0030】
上述のように構成した膜ユニットAを下水、産業排水、生活排水等の汚水(被処理水)を活性汚泥処理するようにした反応槽(図示省略)内に浸漬するようにして配置するが、反応槽の形状、処理能力その他の条件に応じて、反応槽内に浸漬セットする膜ユニットを1段とするか、上下に2段或いは3段を積層するかを設定するものとする。
また、この反応槽底部には散気装置(図示省略)、特に限定されるものではないが、例えば、多数のノズルを穿設した散気管を2列或いは複数列に配設する。この散気管の配設方法は平行配列する膜エレメントEに対して交わる方向に配設するものとする。これにより、いずれかの散気管に目詰まりが生じても膜エレメントEに対して交わる方向に配設した他の散気管により吐出される気泡が膜エレメント間に形成される流路R内を流通するようになり、効率的な処理が継続して行える。
【0031】
したがって、散気装置の散気管より吐出される気泡が膜面洗浄用気体として、その上昇力により平行配列される膜エレメント間にて形成される流路R内を上昇する際、周囲の汚水に上昇流を発生させて流路内を上昇するとともに、この汚水の上昇は反応槽内を攪拌するものとなる。さらに、この流路内を上昇する気泡及び上昇汚水流にて膜エレメントの膜面の洗浄も行えるが、振動が発生する。この振動は膜エレメントの上下位置にてこれを保持している櫛歯形固定支持体8にて吸収されるようになる。
このとき、各膜エレメント間の膜面より該膜エレメント内に発生させる負圧(膜間差圧)を利用して汚水を吸引することで濾過し、その濾過水を処理水として取り出し、集水ノズル、集水排水管を経て外部へ排水することができる。
【0032】
また、この膜ユニットを使用した汚水処理装置では、経時的に膜エレメントEに目詰まりが発生したり、或いは破損したりすることがある。このような場合、目詰まり或いは破損した膜エレメントのみを交換或いは修理することで汚水処理を継続することができる。
この膜エレメントEの取り外しは、図9に示すように、膜ユニットの上下4カ所に配設している櫛歯形固定支持体8をすべて取り外す。これは蝶ナット等の固定具にて取り付けられているので簡易に行うことができる。
【0033】
また、交換のため取り外すべき膜エレメントの集水ノズルと集水排水管とを接続しているゴムホースを取り外すことにより、当該膜エレメントは本体ケーシングに対してフリーとなる。
次に当該膜エレメントを図9の矢印にて示すように上方向に持ち上げるようにして引き上げることで簡易に本体ケーシングKより取り外すことができる。
修理した後、或いは新しい膜エレメントEと交換して再び前記引き上げた位置の遊嵌弾性支持体7の膜エレメント挿入溝71、71間に差し込むようにして取り付けた後、本体ケーシングの外側から差し込むようにして櫛歯形固定支持体8を簡単に再び取り付けることができ、これにより再使用可能となる。このように膜エレメントEの交換が簡易に迅速に行うことができる。
【0034】
以上、本発明の浸漬型膜分離装置における膜ユニットについて、実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の浸漬型膜分離装置における膜ユニットは、平行配列した各膜エレメントの両側部を、遊嵌弾性支持体とこの遊嵌弾性支持体の上下位置に配設した弾性材製の櫛歯形固定支持体とにより、膜エレメントをしっかりと保持固定することでその摩耗を防止するようにし、かつ膜ユニットの組み立て解体を簡易に行えるという特性を有していることから、浸漬型膜分離装置における膜ユニットの用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0036】
A 膜ユニット
E 膜エレメント
K 本体ケーシング
R 流路
1 縦ケーシング部材
2 横ケーシング部材
3 連結部材
4 膜エレメント受け板
5 膜エレメント支持枠
51 集水孔
52 集水ノズル
6 濾過膜
7 遊嵌弾性支持体
71 膜エレメント挿入溝
8 櫛歯形固定支持体
81 膜エレメント挿入支持溝
9 集水排水管
10 ダミー板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行配列した各膜エレメントの側端部を挿入可能とした膜エレメント挿入溝を側面縦方向に所定間隔で形成した開口面が台形断面をした遊嵌弾性支持体と、この遊嵌弾性支持体の上下位置に隣接配設した弾性材製の櫛歯形固定支持体とにより平行配列する膜エレメントの両側面部の上下位置を一定間隔を保持して挟持するように構成したことを特徴とする浸漬型膜分離装置における膜ユニット。
【請求項2】
遊嵌弾性支持体が中空六角筒体の連続体からなることを特徴とする請求項1記載の浸漬型膜分離装置における膜ユニット。
【請求項3】
遊嵌弾性支持体に形成した膜エレメント側端部挿入用の溝の幅を、膜エレメントの幅より0.5〜3mm大きく形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の浸漬型膜分離装置における膜ユニット。
【請求項4】
櫛歯形固定支持体を、膜ユニットの本体ケーシングへの取り付けを着脱可能とし、かつ櫛歯形固定支持体の側面に、膜エレメント側端面部を挟持する膜エレメント挿入支持溝を形成したことを特徴とする請求項1、2又は3記載の浸漬型膜分離装置における膜ユニット。
【請求項5】
上部の膜櫛歯形固定支持体の取付位置を、膜エレメントの集水ノズル取付位置よりも下方位置に設定したことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の浸漬型膜分離装置における膜ユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−63381(P2013−63381A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202889(P2011−202889)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】