説明

浸漬膜装置

【目的】 膜面に付着した非濾過物質を膜面から効果的に剥離する。
【構成】 処理槽10の液中に膜ユニット11を浸漬し、膜を透過した濾過処理水を得る浸漬膜装置において、複数の膜ユニット11A,11Bを液中の仕切板14で隔てゝ槽内液中に配置すると共に、その個々の膜ユニットの下方に個々に散気装置15A,15Bを設け、散気装置を交互に作動可能にする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、平膜を複数枚積層した積層体や、中空糸膜を平面状、或いはすだれ状にした膜エレメントを複数枚積層した積層体や、管状膜を複数本並行に接続したものを膜ユニットとして用いた浸漬膜装置に関する。
【0002】
【従来の技術】処理槽の液中に上述した膜ユニットを浸漬し、膜ユニットの内部を吸引して膜を透過した濾過処理水を得る浸漬膜装置は従来から公知である。又、膜の下部に散気装置を設け濾過ケークを剥離させることも公知である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】この浸漬膜装置を運転して膜濾過を行うと、膜面には濃度分極層、ゲール層、ケーク層などの非濾過物質が付着する。そして、非濾過物質の厚さが増すと濾過抵抗が増大し、濾過圧力が高まって濾過効率は著しく低下する。このため膜ユニットの下方に散気装置を設け、一定時間膜濾過運転を行ったら、又は膜濾過運転中に一定濾過圧力になったら、運転を中止して逆洗を行うが、この逆洗の前後に散気装置を作動し、膜ユニットの下面全体に下から気泡を浴びせ、膜の間を上向する気泡と、上向水流の剪断力で膜面に付着した非濾過物質を剥離する必要がある。この場合、膜ユニットの回りに槽内の液が下向流して循環する対流スペースを保つことが必要で、処理槽内への膜の充填率がその対流スペース分だけ減少することになる。
【0004】
【課題を解決するための手段】そこで本発明は、処理槽の液中に膜ユニットを浸漬し、膜を透過した濾過処理水を得る浸漬膜装置において、複数の膜ユニットを液中の仕切板で隔てゝ槽内液中に配置すると共に、その個々の膜ユニットの下方に個々に散気装置を設け、散気装置を交互に作動可能にしたことを特徴とする。
【0005】
【実施例】図示の各実施例において、10は処理槽で、処理槽の液中には膜ユニット11が浸漬してあり、ポンプ12を接続した吸引管13が膜ユニットの内部を吸引し、処理槽内の原液中、膜ユニット11を透過したものを濾過処理水として採水する。膜ユニットは、前述したように平膜の複数枚の積層体、又は中空糸膜を平面状、或いはすだれ状にした膜エレメントの複数枚の積層体、又は管状膜を複数本並行に接続したものである。
【0006】図1の実施例では、処理槽10内に2つの膜ユニット11A,11Bを上端が液面下の仕切板14で隔てゝ隣接状に配置してあり、各膜ユニット11A,11Bの下方には個々に散気装置15A,15Bが設けてある。4つの散気装置15A,15Bは共通のブロワー16に分岐管17で接続し、管に設けた開閉弁18A,18Bで個々に作動できるようになっている。膜濾過運転を中止し、逆洗を行う前後に開閉弁18A,18Bを交互に開閉し、例えば散気装置15Aから15分間、気泡を膜ユニット11Aに浴びせ、次の15分は散気装置15Bから気泡を膜ユニット11Bに浴びせ、これを繰返す。これにより散気装置15Aから浮上する気泡によって膜ユニット11Aの膜の間には上向流が生じ、気泡と上向水流により膜ユニット11Aの膜面に付着した非濾過物質は膜面から剥離し、同時に膜ユニット11Bの膜間には下向流が生じ、この下向水流によって膜面に付着した非濾過物質が剥離される。散気装置15Bが作動しているときは上記とは逆で膜ユニット11Bの膜面に付着した非濾過物質は気泡と上向水流により膜面から剥離し、膜ユニット11Aの膜面に付着した非濾過物質は膜間に生じた下向水流で膜面から剥離する。尚、散気は膜の運転を中止して行っても、膜の運転中に行ってもよい。
【0007】図2の実施例では、処理槽10内に4つの膜ユニット11A,11B,11C,11Dを三枚の仕切板14A,14B,14Cで隔てゝ隣接状に配置してあり、各膜ユニットの下方には個々に散気装置15A,15B,15C,15Dが設けてある。4つの散気装置は共通のブロワー16に分岐管17で接続し、分岐管に設けた4つの開閉弁18A,18B,18C,18Dで4つの散気装置を個々に作動することができる。膜濾過運転を行っている間、或いは運転を中止し、逆洗の前後に開閉弁を操作し、例えば散気装置15A,15B,15C,15Dの順に15分間宛作動させたり、或いは15Aと15C、15Bと15Dを15分間宛交互に作動させる。作動している散気装置の上の膜ユニットの膜間には気泡による上向流が生じ、気泡と上向水流が膜面に付着した非濾過物質を剥離し、作動していない散気装置の上の膜ユニットの膜間には下向流が生じ、この下向水流が膜面に付着した非濾過物質を膜面から剥離する。
【0008】
【発明の効果】以上で明らかなように、散気装置を交互に作動することで、作動している散気装置の上の膜ユニットの膜間には気泡による上向流が生じ、気泡と上向水流とにより膜面に付着した非濾過物質を剥離する。そして、作動を中止している散気装置の上の膜ユニットの膜間には下向流が生じ、この下向水流が膜面に付着した非濾過物質を剥離する。従って、下向流を生じさせる対流スペースを膜ユニットの間に保つ必要が無くなるので、処理槽への膜充填率が高まる。又、同じ数の膜ユニットを充填する場合、使用する処理槽の大きさは大幅に小型化する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の浸漬膜装置の第1実施例の断面図である。
【図2】本発明の浸漬膜装置の他の1実施例の断面図である。
【符号の説明】
10 処理槽
11A 膜ユニット
11B 膜ユニット
11C 膜ユニット
11D 膜ユニット
12 ポンプ
13 吸引管
14 仕切板
14A 仕切板
14B 仕切板
14C 仕切板
15A 散気装置
15B 散気装置
15C 散気装置
15D 散気装置
16 ブロワー
17 分岐管
18A 開閉弁
18B 開閉弁
18C 開閉弁
18D 開閉弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】 処理槽の液中に膜ユニットを浸漬し、膜を透過した濾過処理水を得る浸漬膜装置において、複数の膜ユニットを液中の仕切板で隔てゝ槽内液中に配置すると共に、その個々の膜ユニットの下方に個々に散気装置を設け、散気装置を交互に作動可能にしたことを特徴とする浸漬膜装置。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【公開番号】特開平7−185271
【公開日】平成7年(1995)7月25日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−345957
【出願日】平成5年(1993)12月24日
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)