説明

浸透性に優れた殺菌剤、及び殺菌方法

【課題】中性電解水、微酸性電解水、弱酸性電解水の欠点を改良した、茹卵等の食品や衣類などの細かく深い疵、凹凸、皺の中まで殺菌効果を示す殺菌剤を提供する。
【解決手段】中性電解水、微酸性電解水或いは弱酸性電解水にマイクロ・ナノバブル発生装置による処理を行い、これらの浸透性を高めることにより、疵12a、凹凸、皺の有る、殻剥き茹卵12等の食品や衣類などの疵や凹凸、皺の内部まで殺菌剤を浸透させて、井戸水13中で保存することにより発生する白濁、とろみ13aや微酸性電解水14中で保存することにより発生する薄い白濁14aの生成を抑制できる、マイクロ・ナノバブル処理した微酸性電解水15。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌剤及び殺菌方法に係り、特に浸透性に優れた殺菌剤及び殺菌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中性電解水や 微酸性電解水、それに弱酸性電解水は、強酸性電解水とともに次亜塩素酸水の一種であり、いずれも食品添加物としての使用が認められている殺菌剤の一種である。このうち、特に微酸性電解水は製造からの保存期間が半年以上と長く、微酸性であることによって殺菌成分のほぼ全てが分子状の次亜塩素酸として存在するため、極希薄な溶液にもかかわらず殺菌力が強く有機物と出会ってもトリハロメタンを殆ど生成せず、非常に安全性の高い殺菌剤である。そして、現在では食品製造業を始め、工業、医療、介護、農業、等の分野で広く用いられている。
【0003】
尚、強酸性電解水(強酸性次亜塩素酸水)は殺菌力は強いが保存が殆どきかず、また塩素ガスを発生し易くて金属を腐食する可能性が大きいなど、取り扱いが不便である。また、pHも2.7以下と非常に低く食品によっては変質のおそれがある。この強酸性電解水は塩化ナトリウム水溶液を有隔膜電解槽内で電解して陽極側から得られる水溶液である。
【0004】
また弱酸性電解水(弱酸性次亜塩素酸水)は、当初は食品添加物としては認められていなかったが、現在では審議通過しており、0.2%以下の塩化ナトリウム水溶液を有隔膜電解槽内で電解して陽極側から得られる水溶液を言う。或いは陽極から得られる水溶液に陰極から得られる水溶液を加えてpH2.7〜5.0にしたものを言う。殺菌力や保存性は強酸性電解水と微酸性電解水との中間程度であるが、食品添加物としての歴史も浅く情報も少ない。
【0005】
一方、微酸性電解水(微酸性次亜塩素水)は以前の規格では2〜6%の塩酸を無隔膜電解槽内で得られる水溶液をいい、pH5.0〜6.5、有効塩素含量10〜30mg/kgのものとされていたが、現在では、この規格と3%以下の塩酸及び5%以下の塩化ナトリウムを含む水溶液を無隔膜電解槽内で得られる水溶液のことを言い、pH5.0〜6.5で有効塩素含量50〜80mg/kgのもと言う2つの規格があるようである。前者の規格で有効塩素含量10mg/kg(ppm )と言うのは、食品の味や香りを損ねず殺菌できるものでこれを最低限とし、その以上濃度を濃くしても殺菌力が向上しない30ppm を上限として定められたものである。現在はこの両規格が併存していると思われるが、いずれにしてもpH5.0〜6.5と微弱酸性であり、保存性もほぼ同様である。
【0006】
この微酸性電解水は、食品に塩素臭が残留すると言った問題がおこらず、すすぎも不要なため節水と省労働が可能であり、手荒れの心配もなく、安全性が高いために口から摂取したり目などに入らないように留意する必要もないなど、多くの利点を有している。
【0007】
そして、現在のところ微酸性電解水に大きな問題が見られないのか、これの改質については殆ど情報がない。ただ、特許文献1に示すようにポリエーテル変成シリコーンを微酸性電解水に0.001〜1.0%加えることによって表面張力を低くすることによって向上された殺菌効果をもつようにしたものがある。また、特許文献2に示すように塩酸を希釈する水に重炭酸ナトリウムを溶解して低硬度水を使用したときも電解条件の調整を不要にしたり、特許文献3のように低硬度水でも適正なpHを保つようにアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩を加える記述が開示されている。
【0008】
尚、最近中性電解水が注目されつつある。この中性電解水は、水道水に含まれる塩素イオンを活用して電解するため、食塩や塩酸などの添加物は一切不要であり、換気も不要なシンプルなものある。また、排水時もそのまま排水できる。しかも、ノロウイルスや鳥インフルエンザなど多くの細菌やウイルスに効果を発揮する。生成後短時間で効果が低下することなく、約20日間は十分な効果を奏する。そして、一般の水道水と比べ圧倒的に高い残留塩素を持ち、濃度の低下や緩やかである。また、ランニングコストも基本的に水道代と電気代のみで経済的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−176489号公報
【特許文献2】特開2009−136814号公報
【特許文献3】特開2010−082588号公報
【0010】
ところが、本発明者らがプラスチック袋に、微酸性電解水とともに未殺菌の細かい疵のある殻剥き茹卵を入れて未加熱の状態のまま10℃以下の温度で14日間保存しておいたところ、液部にとろみは見られなかったが多少の白濁がみられた。そして、標準培地法・デコキシコレート寒天培地法により、一般生菌数と大腸菌群の検査を行ったところ、液部で大量のコロニーが観察された(カウント不可能)。卵部も同様であった。このような現象が起こったのは、剥き卵の細かな疵の中に菌が存在しており、微酸性電解水ではこの疵の中の菌を殺菌出来なかったものによるものと推察された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はこのように細かな深いところにある菌の殺菌も出来る、浸透性に優れた中性電解水や微酸性電解水、及び弱酸性電解水を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
その手段として、本発明においては、(1)中性電解水や微酸性電解水或いは弱酸性電解水中に微細なマイクロ乃至ナノ級の空気、窒素ガス或いはオゾンガスの泡(バブル)を発生させること、或いは、(2)通常の水道水(微量の塩素を含む)や、希塩酸や塩酸/塩化ナトリウム、塩化ナトリウムを添加した水に微細なマイクロ乃至ナノ級の空気などの泡(バブル)を発生させたものを電気分解すること、(3)または水に微細なマイクロ・ナノバブル処理したのちこの水に微量の塩素ガス、或いはこの水に希塩酸や塩酸/塩化ナトリウム、塩化ナトリウムを添加して、これらを電気分解するものである。この操作により、中性電解水や微酸性電解水、弱酸性電解水のクラスターや分子を小さくさせて、卵の細かくて深い疵の所にいる菌をも殺菌できるようにしたものである。
【0013】
マイクロ・ナノバブルとは、微細な気泡をいう。特に気泡の直径の大きさによって数百nmまでのものをナノバブル、数百nmから数十μmまでのものをマイクロナノバブル、数十μmから数百μmまでのものをマイクロバブル、とに分かれる。本発明において、マイクロ・ナノバブルとは、ナノバブル、マイクロナノバブル、マイクロバブルの全てを含むものとし、また特に定義しないかぎり、ナノバブル、マイクロナノバブル、マイクロバブルがそれぞれ単一に存在する状態だけでなく、混在している状態をも含むものとする。
【0014】
マイクロ・ナノバブルを発生させる装置としては、現在2つの形式のものが知られている。一つは、マイクロ・ナノバブル現象を解明した、徳山工業高等専門学校教授の大成博文氏が開発した超高速旋回方式(株式会社ナノプラネット研究所のM2−LM/SUS等)、もう一つが、加圧減圧方式(株式会社アスプのSMX115型やAS−K3型等、株式会社大日のD−1型、D−2型、D−3型等)である。
【0015】
前者は、ポンプで圧力をかけた液体を送り込むと、装置内で旋回運動をする。遠心力で液体が外側へ寄ることで中心部は圧力が下がり、吸気口から気体を吸い込む。液体は装置の外周を、気体は中心部を高速旋回(毎秒400〜600回転)する。この高速旋回する気体の空洞部が、噴出口前後で速度差を生じた結果、空気が回転切断される。その空気はまるできし麺のような平たい帯状となり、捩じられ、引きちぎられ、マイクロバブル(直径が10μm〜数百μm以下の微細な気泡)となって噴出する(特許第3397154号等参照)。
【0016】
このマイクロバブルは、周囲の圧力が内部の圧力よりも高いため、次第に収縮してマイクロナノバブル(数百〜10μm以下)、更にはナノバブル(数百nm以下)になると思われる。もっとも、現在ナノバブルは明確には観察されていない。
【0017】
もう一つの方式は、ポンプ等で液体を加圧し、そこに空気を入れ、加圧下で空気を強制的に溶け込ます。この液体を圧力開放装置まで移送し気泡を発生させる。小さい気泡核が成長して白く見える気泡となる。前者に比べて、気泡の大きさは大きい。その他の方式によってもマイクロ・ナノバブルを発生させることができれば、いかなる方式による装置でもかまわない。尚、これらの各方式で発生する気泡は、周囲がマイナスに帯電しているため、寄り集まって大きくなることはない。
【0018】
本発明の場合、上記何れの方式も利用できる。但し、以下の実施例ではその多くが前者の装置を用いた。これは、装置や操作が簡単で、且つ効果が大きいことによる。特に、前者で処理した水の場合、生理活性に優れていると言われており、また幾分pHを上げる。更に前者ではマイクロ・ナノバブル処理を繰り返すとその度毎に浸透性が良くなるが、後者の場合、1回処理すれば、後は何回処理しても、効果は変わらないように思われる。処理液のpHが幾分上昇することは、微酸性電解水の場合元のpHを低いものとすることが好ましくまた、弱酸性電解水の場合は微酸性電解水に変化することも考えられる。
【0019】
従来、このようにマイクロ・ナノバブルで微酸性電解水を処理して浸透性を向上させる技術は本発明者らが知る限り、知られていない。
【0020】
マイクロ・ナノバブルは、これを発生させる装置に液体を取り込み、装置外部から吸入した空気(或いは、窒素ガスやオゾンガス)を液体に混合させて微細気泡を生じさせ、これを装置から噴出させることによって発生するものである。そこで、微酸性電解水等をマイクロ・ナノバブル発生装置に取り込み、空気と混合させて微細気泡を生じさせ、装置から噴出させる(超高速旋回方式、大成方式)、或いは、水をマイクロ・ナノバブル発生装置に取り込み空気と混合させて微細気泡を生じさせ、装置から噴出させる(加圧、減圧方式)という処理を行う。
【0021】
尚、一般に液体中で微細空気泡を発生させると浮遊菌が増殖する可能性があるが、本発明の場合微酸性電解水それ自体が殺菌性があるためその問題は生じない。
【0022】
本発明のマイクロ・ナノバブル処理した微酸性電解水は、通常の微酸性電解水と同様に使用できるとともに、特に浸透性が優れているため、細かな疵がある食品や、凹凸の有る繊維製品や手指など皺のある箇所に噴霧したり浸漬したりして十分な殺菌効果をもたらすものである。また、手足の角質の下に潜んでいる水虫菌のところまで十分に到達し、2〜3週間乃至1〜3ケ月程度で水虫はほぼ完治すると言う効果もある。
【0023】
弱酸性電解水も、微酸性電解水に比べてpHが幾分低いだけで保存性も幾分あり、微酸性電解水と同様にマイクロ・ナノバブル処理できるものである。中性電界水も同様である。
【発明の効果】
【0024】
本発明は以上説明した通り、(1)中性電解水や微酸性電解水或いは弱酸性電解水をマイクロ・ナノバブル処理した殺菌剤、(2)通常の水道水(微量の塩素を含む)や、希塩酸や塩酸/塩化ナトリウム、塩化ナトリウムを添加した水に微細なマイクロ乃至ナノ級の空気などの泡(バブル)を発生させたものを電気分解した殺菌剤、(3)または水に微細なマイクロ・ナノバブル処理したのちこの水に微量の塩素ガス、或いはこの水に希塩酸や塩酸/塩化ナトリウム、塩化ナトリウムを添加して、これらを電気分解した殺菌剤で、何れも浸透性に優れるものである。
従って、
(1)簡単な操作で食品その他への浸透性に優れた殺菌剤を作ることができる。また、その効果は半月〜1ケ月程度持続する。
(2)皺や凹凸、細かな傷がある食品でも加熱しなくても、殺菌剤が皺や傷の部分に浸透するため殺菌が十分に行われ、エネルギーの節約になる。
(3)凹凸の多い布地や皮膚の角質部分にも十分に浸透して殺菌効果をもたらす。
(4)処理した中性電解水や微酸性電解水或いはや弱酸性電解水を加熱しても、その浸透性の効果は変わらない。また、マイクロ・ナノバブル処理した効果は半月〜1月程度以上持続する。
などの効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】超高速旋回方式の説明図である。(実施例1)
【図2】マイクロ・ナノバブル処理装置(ナノ処理装置、テストマシン)の正面図である。(実施例1)
【図3】加圧減圧式方式の説明図である。(実施例1)
【図4】細かな疵のある殻剥き茹で卵(10個)と共に液体をビニール袋に入れ、非加熱の状態で10℃以下の温度で14日間保存したものである。(a)は、液体として井戸水、(b)は微酸性電解水、(c)はマイクロ・ナノバブル処理した微酸性電解水を用いたものである。(実施例2)
【図5】マイクロ・ナノバブル処理装置(テストプラント)の一例を示す正面図である。(実施例5)
【発明を実施するための形態】
【0026】
細かい疵のある殻剥き茹卵殻つき茹卵に、マイクロ・ナノバブル発生装置による処理を加えた微酸性電解水を用いて殺菌する。以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0027】
(微酸性電解水のマイクロ・ナノバブル処理)
図1は、超高速旋回方式(大成式)装置の説明図、図2は、図1のマイクロバブル発生装置を用いるマイクロ・ナノバブル処理装置(テストマシン)の一例、図3は、加圧減圧式装置の説明図((株)大日工業)、である。これらの装置で、微酸性電解水にマイクロ・ナノバブル処理を行う場合について説明する。本発明では、主として、図2の装置を用いて実験した。
【0028】
図1は、マイクロバブルを発生させる原理図で、まず、ポンプ1で圧力を掛けた液体(微酸性電解水)2をマイクロバブル発生装置3に送り込むと、装置3内で液体2が旋回運動をする。装置3内部では、遠心力で液体2が外側へ寄ることで中心部は圧力が下がり、吸気口4から気体5を吸い込む(自吸)。装置3内で液体と気体が旋回運動をする。その回転数は毎秒400〜600回転にもなる。液体2は装置の外周を、気体5は中心部が超高速で旋回する。この超高速旋回する気体の空洞部が、噴出前後で速度差を生じた結果、気体が回転切断され、マイクロバブルとなって装置3の出口6から噴出する。そして、マイクロバブルは周囲の圧力に押されてナノバブルにまで縮小すると思われている。
【0029】
図2は、図1のマイクロバブル発生装置3を用いた、5L程度の微酸性電解水を処理できる小型のマイクロ・ナノバブル処理装置(以下、ナノ処理装置、テストマシンと言う)10である。この処理装置10は、タンク2Aとポンプ1を吸水管1Aと送水管1Bでつなぎ、送水管1Bの先端はマイクロバブル発生装置3の先端部近くに連結され、マイクロバブル発生装置3の基部には送気管4Aが連結されている。ポンプ1で液体(微酸性電解水)をマイクロバブル発生装置3に送り込むと、空気5が吸気口4から吸い込まれ、微酸性電解水2と攪拌されて出口6からマイクロバブルMBが噴出される。図中、2Bは液面である。そして、以下の実施例(旋回方式)では、この図2に示す装置10を用いて微酸性電解水をナノ処理した。
【0030】
実験に用いたマイクロバブル発生装置3は、径が50mm、長さが100mm程度であり、これで、1〜10L程度の液体を処理できる。処理液体が100〜500Lもの量になると、この程度の装置が複数台(4〜6台程度)必要となる。尚、空気の代わりに窒素ガス或いはオゾンガスを用いてもよい。
【0031】
図3は、加圧減圧式装置の一例を示すものである。これは、株式会社大日工業の特開2010−22955の第1図に示されたものである。この装置7は、第一の加圧槽8Aと第二の加圧槽8Bで加圧して気体(空気)を液体に溶解したのち、減圧部9で常圧に戻してマイクロバブルを発生させるものである。この種の装置は、様々な形式のものが提案されており、図3のものはその一例である。
【0032】
図2の装置を用いて、微酸性電解水のナノ処理を行う。この装置は、タンク容量が約8Lで5L程度の微酸性電解水を一度に処理できるテストマシンである。そして、上記マイクロバブル発生装置3の場合、1分間に5L程度の微酸性電解水を処理できる(5Lの微酸性電解水ならば、1分間に1回転処理できる)。そして、5Lの微酸性電解水を20〜30分間処理すると、約20回転〜30回転処理したことになる。これで、微酸性電解水にマイクロバブルやナノバブルが十分に発生したことになる。同じ条件で2時間処理しても、効果は余り変わらない。
【実施例2】
【0033】
(疵のある殻剥き茹卵への殺菌剤の浸透)
図4は、袋11に入れた1Lの液体中に、七部茹での殻剥き茹卵(こまかな疵12a)あり)12の10個(図では5個)を入れ、無加熱の状態で10℃以下の温度で保管した状態を示す。そして、(a)は液体として井戸水13、(b)は液体として微酸性電解水14、(c)は微酸性電解水をマイクロ・ナノバブル処理したもの15を用いた。菌数検査は標準培地法ほデンキシコレート寒天培地法により、一般生菌数と大腸菌群の検査を行った。
【0034】
図の(a)(b)(c)とも保管から14日後の状態を示す。まず、(a)では井戸水13は、官能検査において液部が白濁13aしており、とろみが生じていた。菌数結果においては、液部、卵部とも大量のコロニー形成が観察された(カウント不能)。(b)微酸性電解水14では、官能検査においては液部が多少白濁14aしていたが、井戸水程ではなかった。液部のとろみはなかった。菌数結果においては、井戸水程ではなかったが、液部、卵部とも大量のコロニー形成が観察された(カウント不能)。このような現象が起こったのは、剥き卵の細かな疵の中に菌が存在しており、微酸性電解水ではこの疵の中の菌を殺菌出来なかったものによるものと推察された。
【0035】
これに対し、(c)のマイクロ・ナノバブル処理した微酸性電解水15では、官能検査では液部の濁りもなく、無色透明であった。菌数結果においては、液部、卵部ともコロニー形成は観察されなかった。尚、卵部の菌数結果は卵を摺潰して行った。(表1)
【表1】

【0036】
通常、殻剥き茹卵の出荷保存は、疵のないものを選び、更に袋ごと加熱殺菌を行い冷蔵するので、10日程度は液にもあまり変質はみられないが、それ以上では白濁を生じる。そして、コストの関係で微酸性電解水が使われることも少ない。
【0037】
これに対し、本願発明では疵のある剥き卵を選び、しかも液と卵を加熱せずそのままの状態で袋詰めし10℃以下で保存したが、10日たっても液は無色透明で菌数結果もコロニーは観測されなかった。これに対し、従来の微酸性電解水や井戸水では液に白濁やとろみが見られ菌数結果も無限大であった(表1)。
【0038】
これは、本発明の殺菌剤(マイクロ・ナノバブル処理した微酸性電解水)の浸透性が優れているために、卵の細かな奥深い疵の中まで浸透して殺菌を行った結果と推察された。本発明の場合、加熱殺菌が不要のためエネルギーや手間を省くことができる。
【実施例3】
【0039】
(水虫の治療)
水虫は、白癬菌(真菌)が手足の角質層や表皮に住み着いて発症する病気で、菌自体は弱いがなかなか完治できない難点がある。ところが、本発明のマイクロ・ナノバブル処理した微酸性電解水は、浸透性がよいので、患部に噴霧したり塗布したり或いは浸漬することで、1〜2週間乃至1〜3月で完全に完治してしまう。時々処置を忘れていても、大丈夫である。
【実施例4】
【0040】
(作業衣の汗くささの脱臭)
しばらく着込んだ作業衣は、汗や汚れに細菌が住み着いて繁殖し所謂汗くさいいやな臭いを発する。この作業衣に微酸性電解水を噴霧したら幾分臭いがしなくなったが、まだ残っていた。そこで、この微酸性電解水にマイクロ・ナノバブル処理を施したものを噴霧したところ、汗くささが綺麗に消臭された。
【実施例5】
【0041】
図5は、図2のマイクロ・ナノバブル処理装置10を移動可能に仕上げたマイクロ・ナノバブル処理装置(テストプラント)である。この処理装置40は、台車41にポンプ42とタンク43を設置し、ポンプ42とタンク43は吸水管44及び排水管45で連結する。排水管45の先端はマイクロバブル発生装置3の前寄りに連結され、また、マイクロバブル発生装置3の基部にはエアホース46が連結されている。エアホース46の基部はエアフィルター47に連結されている。符号48は操作盤、49はキャスターである。また、符号50は、処理した微酸性電解水を取り出すための取り出し口である。この装置40は、約20Lの微酸性電解水を処理することができる。但し、20Lの微酸性電解水を十分に処理するのには1時間も1時間半も時間がかかる。そこで、このようにな場合、マイクロバブル発生装置3の数を2〜4個程度まで増やして処理をおこなえば、処理時間は1/2〜1/4まで短縮できる。その場合、ポンプの数も増やす必要がある。尚、ナノ処理中、かなりの熱量が発生する。そこで、タンク43を二重構造などにして冷却水を流すなどして、微酸性電解水の温度の上昇を防ぐ事が、品質保持上も好ましい。
【0042】
尚、工業的に大量の微酸性電解水等が必要になる場合、数百L或いはそれ以上の容量のタンクを使用すれば、よい。その場合、マイクロバブル発生装置3は10個〜20個或いはそれ以上など、処理する微酸性電解水等の容量に合わせた数のマイクロバブル発生装置3及びポンプが必要となる。
【実施例6】
【0043】
図2の装置を用いて、実施例1と同様にして中性電解水のナノ処理を行った。得られたナノ処理中性電界水を、実施例2の図4に示す袋11に入れ、同様に殻剥き茹卵(細かな傷12aがある)を入れ、同様にテストしたところ、ナノ未処理の中性電界水では液部のとろみはなかったが、菌数では液部、卵部とも大量のコロニーが観察された(カウント不能)。この場合、微酸性電解水の場合と同様に、剥き卵の細かな疵の中に菌が存在しており、中性電解水ではこの疵の中の菌を殺菌できなかったものによると推察される。ナノ処理した中性電解水は、ナノ処理した微酸性電解水と同様10日たっても液は無色透明であり菌のコロニーも見られなかった。
【実施例7】
【0044】
次に、通常の水道水(微量の塩素を含む)や、希塩酸や塩酸/塩化ナトリウム、塩化ナトリウムを添加した水に微細なマイクロ乃至ナノ級の空気などの泡(バブル)を発生させたものを電気分解することより、本発明の浸透性に優れた殺菌剤を得ることができる。これは、例えば、微酸性電解水の場合、希塩酸などを添加した水に微細なマイクロ・ナノバブルを発生させる。そして、このマイクロ・ナノバブルを発生させた水を定法により電気分解して得る。得られた中性電解水や微酸性電解水それに弱酸性電解水は、実施例2で得られた微酸性電解水と同等の浸透性に優れた殺菌剤となった。
【実施例8】
【0045】
更に、水に微細なマイクロ・ナノバブル処理したのちこの水に微量の塩素ガス、或いはこの水に希塩酸や塩酸/塩化ナトリウム、塩化ナトリウムを添加して、これらを電気分解することにより、実施例2と同様に優れた浸透性を呈する中性電界水や微酸性電解水、弱酸性電解水が得られた。この内、微酸性電解水は、実施例2と同様に殻剥き茹卵について同様のテストを行ったが、同様に優れた抗菌効果を示した。
【産業上の利用可能性】
【0046】
(1)中性電解水や微酸性電解水或いは弱酸性電解水をマイクロ・ナノバブル処理(ナノ処理)することにより、又は(2)通常の水道水(微量の塩素を含む)や、希塩酸や塩酸/塩化ナトリウム、塩化ナトリウムを添加した水に微細なマイクロ乃至ナノ級の空気などの泡(バブル)を発生させたものを電気分解することにより、更には(3)または水に微細なマイクロ・ナノバブル処理したのちこの水に微量の塩素ガス、或いはこの水に希塩酸や塩酸/塩化ナトリウム、塩化ナトリウムを添加して、これらを電気分解することにより、これらの殺菌剤を各種殺菌対象物への浸透性を大きくでき、細くて狭い疵などがある食品の殺菌を加熱殺菌しなくても確実に行うなど、食品業界を始め多くの中性電解水、微酸性電解水或いは弱酸性電解水を用いる業界への影響は大なるものである。
【符号の説明】
【0047】
1 ポンプ
1A 吸水管
1B 送水管
2 液体(調味液)
2A タンク
2B 液面
3 マイクロバブル発生装置(旋回方式)
3A マイクロバブル
4 吸気口
4A 送気管
5 気体(空気)
6 出口
7 マイクロバブル発生装置(加圧減圧方式)
8A 第一の加圧槽
8B 第二の加圧槽
9 減圧部
10 マイクロ・ナノバブル処理装置
MB マイクロバブル
11 プラスチック袋
12 殻剥き茹卵
12a 疵
13 井戸水
13a 白濁、とろみ
14 微酸性電解水
14a 薄い白濁
15 マイクロ・ナノバブル処理した微酸性電解水
40 マイクロ・ナノバブル処理装置(テストプラント)
41 台車
42 ポンプ
43 タンク
44 吸水管
45 排水管
46 エアホース
47 エアフィルター
48 操作盤
49 キャスター
50 取り出し口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中性電解水、微酸性電解水或いは弱酸性電解水をマイクロ・ナノバブル処理したことを特徴とする浸透性に優れた殺菌剤。
【請求項2】
通常の水道水(微量の塩素を含む)や、希塩酸や塩酸/塩化ナトリウム、塩化ナトリウムを添加した水に微細なマイクロ乃至ナノ級の空気などの泡(バブル)を発生させたものを電気分解して得た浸透性に優れた殺菌剤。
【請求項3】
水に微細なマイクロ・ナノバブル処理したのちこの水に微量の塩素ガス、或いは希塩酸や塩酸/塩化ナトリウム、塩化ナトリウムを添加した後、これらを電気分解して得た浸透性に優れた殺菌剤。
【請求項4】
請求項1、請求項2又は請求項3に示す浸透性に優れた殺菌剤で、食品を処理するものである食品の殺菌方法。
【請求項5】
プラスチック袋に、請求項1、請求項2又は請求項3の殺菌剤と、熱殺菌していない疵のある殻剥き茹卵を入れて封をする茹卵の保存方法。
【請求項6】
水虫を患っている患部に、請求項1、請求項2又は請求項3の殺菌剤を噴霧、塗布或いは浸漬するものである、水虫の治療方法。
【請求項7】
凹凸の有る繊維製品や手指など皺のある箇所に、請求項1、請求項2又は請求項3の殺菌剤を噴霧、塗布或いは浸漬して浸透させるものである殺菌剤の使用方法。
【請求項8】
台車にポンプとタンクを設置し、ポンプとタンクは吸水管及び排水管で連結する。排水管の先端はマイクロバブル発生装置の前寄りに連結され、また、マイクロバブル発生装置の基部にはエアホースが連結され、エアホースの基部はエアフィルターに連結されるとともに、タンクを二重構造としたりタンクの内外に冷却水を流す冷却配管などの冷却手段を設けたことを特徴とする、中性電解水、微酸性電解水或いは弱酸性電解水のマイクロ・ナノバブル処理装置。
【請求項9】
マイクロバブル発生装置は、タングの容量に応じて2個〜30個設け、処理時間は、マイクロバブル発生装置1個当たりの1分間の処理量からみて、20〜30回転処理できるように、タンク(中性電解水、微酸性電解水或いは弱酸性電解水)の容量と処理時間を定めるものである、中性電解水、微酸性電解水或いは弱酸性電解水のマイクロ・ナノバブル処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−10758(P2013−10758A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−127305(P2012−127305)
【出願日】平成24年6月4日(2012.6.4)
【出願人】(505138303)株式会社プロジェクトジャパン (4)
【出願人】(591130021)株式会社誠実村 (2)
【出願人】(511134768)株式会社中本商事 (1)
【出願人】(511134780)
【Fターム(参考)】