説明

消化促進組成物及びGI値調整組成物、並びにそれらが含まれた食品

【課題】天然物で構成されるとともに、食物の消化を促進させることが可能な消化促進組成物及び食物のGI値を調整することが可能なGI値調整組成物、並びにこれらが含まれた食品を提供することである。
【解決手段】水とともに加熱された大豆に真菌を加えて発酵分解処理することによってアミラーゼ活性を0.1〜100unit/gに調整されたことを特徴とする消化促進組成物及びGI値促進組成物、並びにそれらが含まれた食品である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品の消化を促進させる消化促進組成物、及び食品のGI値を調整することが可能なGI値調整組成物、並びにそれらが含まれた食品に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の食品素材の多くは、より精製され、使いやすいように加工されている。このため、農産物本来の栄養成分がすべて含有されておらず、必要とされる微量成分が摂取できないという問題がある。疫学的に十分な検証が得られていないが、このような現代の食品の摂取では、免疫調節を十分に行なうことができず、アトピーや花粉症などの発症が多くなっていると唱える学者も多い。このため、近年、古来から食されている素材を農薬や化成肥料を使わない自然な状態で摂取することが推奨されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような自然食品は、加工度が低いため、消化吸収が悪いという問題がある。例えば、玄米食と白米食では一般に知られたGI値で55と84の差があるので、様々な微量ミネラルなどが含有された玄米食は、吸収性が悪く、自然なものを摂取したつもりでも十分に栄養を吸収していない場合が多い。
【0004】
また、近年、高齢化とともに様々な機能障害が発生している。口腔乾燥や唾液の分泌量が少ないヒトが多くなっている。このために食事の咀嚼運動で唾液と混ざる量が少なくなっている。また食品がより軟食化していることで、飲み込みまでの咀嚼回数が少なく、同様に唾液が多く分泌されずに食品との唾液混合が少ない。このことは、唾液中の澱粉分解酵素であるアミラーゼによる食物の分解を遅らせることになっている。また、膵臓からの十二指腸へのアミラーゼ分泌調整が高齢者ほど十分でなく、さらに、腸内の蠕動運動低下により消化液の混合が十分でなく、消化吸収が衰えることによって、十分に栄養を吸収することができないという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、天然物で構成されるとともに、食物の消化を促進させることが可能な消化促進組成物及び食物のGI値を調整することが可能なGI値調整組成物、並びにこれらが含まれた食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の目的を解決するために、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、水とともに加熱された大豆に真菌を加えて発酵分解処理することによってアミラーゼ活性を0.1〜100unit/gに調整することによって、食物の消化を促進させることができるとともに、食物のGI値を調整することができることを見出した。すなわち、本発明は、大豆を発酵分解処理することによってアミラーゼ活性を0.1〜100unit/gに調整されたことを特徴とする消化促進組成物及びGI値調整組成物である。また、本発明は、水とともに加熱された大豆に真菌を加えて発酵分解処理することによってアミラーゼ活性を0.1〜100unit/gに調整されたことを特徴とする消化促進剤及びGI値調整剤である。
【発明の効果】
【0007】
以上のように、本発明によれば、天然物で構成されるとともに、食物の消化を促進させることが可能な消化促進組成物及び食物のGI値を調整することが可能なGI値調整組成物、並びにこれらが含まれた食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に係る消化促進組成物及びGI値調整組成物において、アミラーゼ活性は、0.1〜100unit/gであることが好ましく、特に1〜100unit/gであることが好ましい。このアミラーゼ活性は、日局(JP14)の「でんぷん消化力試験法(i)」の操作法によって試験する際のでんぷん糖化力単位(unit/g)で示され、このでんぷん糖化力単位(unit/g)は、1分間に1mgのブドウ糖に相当する還元力の増加をもたらす酵素量から計算される。すなわち、でんぷん糖化力単位(unit/g)は、数1に基づいて計算することができる。
【0009】
【数1】

【0010】
本発明に係る消化促進組成物及びGI値調整組成物は、塩分を5%重量以下に抑えた状態で大豆を水と真菌とともに発酵分解処理することによって得ることができる。真菌である麹菌としては、Aspergillus属、Rhizopus属、Monascus属などの真菌、具体的には、Aspergillus oryzae、Aspergillus sojae、Aspergillus awamori、Aspergillus kawachil、Rhizopus delemer、Monascus ruberなどがある。塩分を下げることにより、麹菌は、増殖してアミラーゼ活性を増やすことができる。一方、麹が増殖しやすくなる反面、雑菌であるグラム陰性菌や土壌菌なども増えることになる。そこで、本発明に係る消化促進組成物及びGI値調整組成物は、大豆発酵の前処理として加熱殺菌処理を行なうことが好ましく、さらに発酵前に酒精(アルコール)などを適度に浸して処理することが好ましい。
【0011】
発酵分解処理に使用される麹としては、米麹、麦麹、そば麹、豆麹など通常大豆発酵に使用されるものであれば使用することができるが、米麹が特に好ましい。使用される麹の量は、出来上がりの発酵物に対し5重量%以上であることが好ましく、15重量%以上であることが特に好ましい。
【0012】
本発明に係る消化促進組成物及びGI値調整組成物は、冷凍状態、又は乾燥して粉末状態にすることより、保存することができる。乾燥については、できるだけ酵素失活しない低温乾燥がよく、フリーズドライや、真空ドラムドライ、スプレードライ、真空ベルト乾燥などの方法により行なうことが好ましい。
【0013】
本発明に係る消化促進組成物及びGI値調整組成物は、発酵分解処理時には、無塩の状態か、塩分の量を5重量%以下、好ましくは3重量%以下に抑えられているので、様々な食品に添加して利用することができる。特に、米や麦などの穀類、芋やコーンなどの澱粉を多く含む野菜などと併用することにより、消化を促進させたり、GI値を増加させたりすることができる。
【0014】
本発明に係る消化促進組成物及びGI値調整組成物が添加される具体的な食品形態としては、パン、麺、米飯、マカロニ、ピザ、菓子類(例えば、餅生地を使った和菓子・スポンジ生地やビスケット生地などの洋菓子・中華まんやゴマ団子などの中華菓子・煎餅など)、芋やコーン、豆などの惣菜などがある。さらに、本発明に係る消化促進組成物やGI値調整組成物は、ふりかけ、お茶漬けの素、混ぜご飯の素、チャーハンの素、ラーメンやうどんなどのスープ、ジャム、バターなどのスプレッド製品、芋サラダなどへ混ぜる味噌ドレッシング、マヨネーズなどに添加して使用することもできる。特に、本発明に係る消化促進組成物及びGI値調整組成物は、食品として精製度の低い素材と併用することでより効果を発揮することができる。例えば、ライムギや大麦などを使用しているミューズリーやシリアルに加えたりその味付けとしてまぶしたりすることができる。
【0015】
本発明に係る大豆発酵物及びその製造方法において、水とともに加熱処理した大豆とは、水に浸した状態や水蒸気の雰囲気下で加水後に加熱処理を行なうことをいう。これらの発酵分解処理は、酒精液及び真菌を加えた後、4〜80℃で行なわれ、15〜50℃で行なうことが好ましく、30〜45℃で行なうことがさらに好ましい。また、発酵時間は、12時間以上、好ましくは1日以上、さらに好ましくは14日以上であり、1年以内、好ましくは6ヶ月以内、さらに好ましくは30日以内である。
【実施例】
【0016】
以下、本発明に係る消化吸収促進組成物及びGI値調整組成物、並びにこれらが含まれた食品に係る実施例について説明する。先ず、60%酒精液(NEDO95%を希釈して使用)9.2kgに米麹(宮坂醸造(株)製)21kgを加え混ぜ合わせた。別に蒸煮した大豆60kgを直径4mmの穴のあいた網に切断しながら通しミンチ状にしたものを作製し上記の米麹を加え混ぜ合わせた。この混合物を43℃にて120時間発酵後、続いて30℃にて30日間熟成発酵させ実施例1に係る消化吸収促進組成物及びGI値調整組成物を得た。比較例として、60%酒精液9.2kgに米麹21kgを加え混ぜ合わせ、別に蒸煮した大豆60kgを直径4mmの穴のあいた網に切断しながら通しミンチ状にしたものを作製し上記の米麹及び食塩11kgを加え混ぜ合わせた。この混合物を43℃にて120時間発酵後、続いて30℃にて30日間熟成発酵させ比較例1に係る大豆発酵物を得た。これら実施例1に係る消化吸収促進組成物及びGI値調整組成物、並びに比較例1に係る大豆発酵物についてアミラーゼ活性を測定した。アミラーゼ活性は日局(JP14)の「でんぷん消化力試験法」の操作法(i)の方法により算出した。実施例1に係る消化吸収促進組成物及びGI値調整組成物のアミラーゼ活性は、20unit/gであり、比較例1に係る大豆発酵物のアミラーゼ活性は、0.08unit/gであり、明らかに実施例1の方がアミラーゼ活性が高かった。
【0017】
次に、実施例1に係る消化吸収促進組成物及びGI値調整組成物、並びに比較例1に係る大豆発酵物を胚芽入りの蒸しパンの素に1〜10%の割合で加えて、蒸しパンを作った。それぞれについて官能試験をしたところ、比較例1に係る大豆発酵物は5%以上加えると塩分が強く摂食に耐えないとの評価を得た。それに対し実施例1に係る消化吸収促進組成物及びGI値調整組成物の含量を増やすほど風味のある味噌風味蒸しパンであると好評な結果を得た。塩分を除くことにより、添加量をふやすことができアミラーゼ活性を高くすることができた。
【0018】
次に、実施例1に係る消化吸収促進組成物及びGI値調整組成物をフリーズドライ機により乾燥させ粉砕して粉末状に加工した。この粉末に玄米粉、ライムギ粉及び小麦粉と水を加えて、エクストルーダー(日本製鋼所社製)によって、130℃にてシリアル食品を作った。同様に、実施例1に係る消化吸収促進組成物及びGI値調整組成物を加えないシリアル食品をつくった。それぞれについてGI値を測定したところ、実施例1に係る消化吸収促進組成物及びGI値調整組成物が添加されたシリアル食品のGI値は、73となり、比較例1に係る大豆添加物が添加されたシリアル食品のGI値は、55となり、明らかに実施例1の方が消化吸収作用及びGI値増強作用に優れていることがわかった。
【0019】
実施例1に係る消化吸収促進組成物及びGI値調整組成物をフリーズドライ機により、乾燥させ粉砕し、それをマヨネーズに添加した。嚥下困難者が食べることができる硬さにジャガイモのポテトサラダを作り寒天溶液とそのマヨネーズで混ぜて冷却凝固調整し、ポテトサラダ羹を作った。消化吸収が十分でない患者用に優れた介護食を作ることができた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水とともに加熱された大豆に真菌を加えて発酵分解処理することによってアミラーゼ活性を0.1〜100unit/gに調整されたことを特徴とする消化促進組成物。
【請求項2】
前記発酵分解処理時における塩の含有量が5重量%以下又は無塩であることを特徴とする請求項1記載の消化促進組成物。
【請求項3】
水とともに加熱された大豆に真菌を加えて発酵分解処理することによってアミラーゼ活性を0.1〜100unit/gに調整されたことを特徴とするGI値調整組成物。
【請求項4】
前記発酵分解処理時における塩の含有量が5%以下又は無塩であることを特徴とする請求項3記載のGI値調整組成物。
【請求項5】
請求項1若しくは2記載の消化促進組成物又は請求項3若しくは4記載のGI値調整組成物が含まれたことを特徴とする食品。
【請求項6】
澱粉が含まれていることを特徴とする請求項5記載の食品。


【公開番号】特開2007−129987(P2007−129987A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−328185(P2005−328185)
【出願日】平成17年11月11日(2005.11.11)
【出願人】(000118615)伊那食品工業株式会社 (95)
【Fターム(参考)】