説明

消化吸収抑制剤及び食品のGI値低減剤、並びにこれらが含まれた食品

【課題】作業性に優れており、様々な炭水化物から作られる食品に対して消化吸収を抑制する。
【解決手段】アラビノガラクタン、アラビノキシラン、トラガントガム、ガティガム、ウェランガム、ラムザンガム、イヌリン又はデキストランからなる水溶性高分子、又はアラビノガラクタン、アラビノキシラン、トラガントガム、ガティガム、ウェランガム、ラムザンガム、イヌリン、デキストラン、アラビアガム、プルラン、タマリンドガム、寒天、カラギナン、ファーセレラン、グアーガム、フェヌグリークガム、ローカストビーンガム、タラガム、コンニャクマンナン、ジェランガム、フノリ抽出物、サイリュームシードガム、カードラン、カシアガム、カラヤガム、アルギン酸などからなる水溶性高分子の分解物を主成分とし、食品に加えることによりそのGI値を低減する食品のGI値低減剤、並びにこれらが含まれた食品である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品に加えることによりその消化吸収を抑制する消化吸収抑制剤及び食品に加えることによりそのGI値を低減する食品のGI値低減剤、並びにこれらが含まれた食品に関する。
【背景技術】
【0002】
人間は、食事により栄養素を得て、その栄養素をエネルギーに変え、又は体内にグリコーゲンや蛋白質として蓄積することによって、体を維持し、健康を保っている。人間にとって生命を維持していくための重要な栄養素も、第二次世界大戦頃の日本においては、極度の栄養不足が続き、その後の高度成長期前までは、総エネルギー量を確保することしかできず、炭水化物に頼り蛋白質・脂質が少なく栄養バランスの不適正な時代があった。このため、国民の栄養に関し、積極的に動物性蛋白を摂取する欧米型の食生活が推奨されてきた。その結果、肉食で柔らかい噛むことが少ない出来合い食品や加工食品が多く出回るようになってきた。このような出来合い食品や加工食品は、容易に摂食することができるため、逆に栄養バランスを崩してしまい、このため肥満からくる糖尿病及びその合併症や心筋梗塞など生活習慣病と呼ばれる現代病が増加している。このため、総カロリーを抑えた食事制限による改善をしながら生活習慣病の予防や治療が行われている。しかしながら、一度覚えた栄養過剰の贅沢な食事をやめることは難しく、我が国においては、1割以上の糖尿病予備軍の病状が進行してしまうという問題がある。
【0003】
このような現状の中、最近食品のGI値(グリセミックインデックス値)を考えて食事を組み立てるという考え方が出てきている。GI値は、食品中の糖質の量は、同じでも血糖値の上昇が食品の質によって異なるということを数値で表したものであり、ブドウ糖を飲んだときの血糖値を100として色々な食品について数値化している。具体的には、GI値50の玄米ご飯は、GI値70の白米ご飯に比べて低く、ブドウ糖の吸収が遅いことになる。GI値が高い食品ばかり摂取すると、血糖値を一定に保つためにインシュリンが吸収過剰により余った血液中のブドウ糖を脂肪に変換・合成し脂肪細胞に取り込まれ肥満になる。しかし、GI値が低い食品を摂取すると、正常に筋肉や肝臓などでグリコーゲンや蛋白質の合成を促進しエネルギー代謝に使われることになる。
【0004】
このような背景から、物理的処理又は化学的処理を施し、酵素耐性が付加されたGI値の低い澱粉を作り、そのGI値の低い澱粉を含有させた消化性の悪い食品が考案されている(特許文献1)。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のものは、特殊な澱粉のみのGI値を下げるものであるので、米飯のように添加できない食品も存在し、様々な炭水化物から作られる食品に対応できるものではない。このような難消化性の澱粉を既存の澱粉と一部置き換えで添加した場合、消化吸収をより少なくするためには多くの澱粉を置き換える必要があり、食感や味が本来の食品と大きく異なってしまうという問題がある。
【0006】
このような問題を解決するため、本発明者らは、水溶性高分子を食品に加えることにより、様々な炭水化物から作られる食品に対して消化吸収を抑制したり、GI値を低減することを見出した(特許文献2)。
【特許文献1】特開2001−231469号公報
【特許文献2】特開2004−242567号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載の水溶性高分子は、澱粉に添加すると粘度が上昇するので、作業性が悪い。一方、作業性を向上させるために、添加量を少なくすると、消化吸収抑制効果やGI値低減効果が十分に発揮できなくなる。
【0008】
そこで、本発明は、作業性に優れており、様々な炭水化物から作られる食品に対して消化吸収を抑制する消化吸収抑制剤、及びGI値を低減することができる食品のGI値低減剤、並びにこれが含まれた食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の目的を達成するため、本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、アラビノガラクタン、アラビノキシラン、トラガントガム、ガティガム、ウェランガム、ラムザンガム、イヌリン及びデキストランのうち少なくとも1以上からなる水溶性高分子、又はアラビノガラクタン、アラビノキシラン、トラガントガム、ガティガム、ウェランガム、ラムザンガム、イヌリン、デキストラン、アラビアガム、プルラン、タマリンドガム、寒天、カラギナン、ファーセレラン、グアーガム、フェヌグリークガム、ローカストビーンガム、タラガム、コンニャクマンナン、ジェランガム、フノリ抽出物、サイリュームシードガム、カードラン、カシアガム、カラヤガム、アルギン酸、アルギン酸塩、アルギン酸誘導体、キサンタンガム、大豆多糖類、ペクチン、ゼラチン、セルロース、セルロース誘導体、及びポリデキストロースのうち少なくとも1以上からなる水溶性高分子の分解物は、食品に加えても粘度が上昇せず、かつ食品に加えることにより食品の消化吸収を抑制したり、GI値を低減することを見出した。
【発明の効果】
【0010】
以上のように本発明によれば、作業性に優れており、様々な炭水化物から作られる食品に対して消化吸収を抑制する消化吸収抑制剤、及びGI値を低減することができる食品のGI値低減剤、並びにこれが含まれた食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係る消化吸収阻害剤及び食品のGI値低減剤において、水溶性高分子の分解物は、水溶性高分子を酸や加熱処理、または酵素により加水分解されたものである。前記フノリ抽出物とは、フノリを熱水抽出することにより得られたものである。前記アルギン酸塩としては、例えばアルギン酸ナトリウムやアルギン酸カリウムなどがあり、アルギン酸誘導体としては、例えばアルギン酸プロピレングリコールエステルなどがある。また、セルロース誘導体としては、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウムなどがある。
【0012】
本発明に係る消化吸収阻害剤及び食品のGI値低減剤は、食品の加熱処理前に加えられることにより消化吸収を抑制し、又はGI値を低減するよう構成されていることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る消化吸収阻害剤及び食品のGI値低減剤は、食品に含ませても良く、その食品としては、だんご、中華料理のタレ、カレー又はシチューのルー、ポテトサラダ、そばやうどんの麺つゆ、くず湯、お粥、フラワーペーストなどがある。
【実施例】
【0014】
次に、本発明に係る消化吸収抑制剤及び食品のGI値低減剤の実施例について説明する。
実施例1及び2
先ず、アラビアガム(CNI社)及びアラビノガラクタン(日本シーベルヘグナー)それぞれを500gずつ水500gに溶解し、それぞれにクエン酸50gを加え、それを95℃で3時間静置することによって、それぞれを分解した。これら分解された溶液を冷却した後、炭酸ナトリウムによりpH6.0まで中和することによって、50%濃度のアラビアガム分解物溶液と50%濃度のアラビノガラクタン分解物溶液を得た。これらアラビアガム分解物とアラビノガラクタン分解物を実施例1及び2に係る消化吸収抑制剤及び食品のGI値低減剤とする。
【0015】
実施例3乃至12
次に、プルラン(林原商事)、タマリンドガム(大日本製薬)、カシアガム(伊那食品工業)、大豆多糖類(三栄源FFI)、ペクチン(CPケルコ)、ポリデキストロース(ダニスコ)、アラビノキシラン(伊那食品工業)、トラガントガム(伊那食品工業)、ガティガム(伊那食品工業)及びイヌリン(フジ日本精糖)それぞれを150gずつ850gの水に溶解し、塩酸10mlを添加し、95℃で1〜3時間静置することによって、それぞれを分解した。これら分解された溶液を冷却した後、10%水酸化ナトリウム溶液でpH6.0まで中和した。それぞれの分解溶液をロータリーエバポレータで濃縮後、スプレードライヤーにて粉末化することによって、プルラン分解物、タマリンドガム分解物、カシアガム分解物、大豆多糖類分解物、ペクチン分解物、ポリデキストロース分解物、アラビノキシラン分解物、トラガントガム分解物、ガティガム分解物及びイヌリン分解物を得た。これら分解物を実施例3乃至12に係る消化吸収抑制剤及び食品のGI値低減剤とする。
【0016】
実施例13乃至16
次に、ローカストビーンガム(伊那食品工業)、タラガム(伊那食品工業)、コンニャクマンナン(伊那食品工業)及びカシアガム(伊那食品工業)それぞれを100gずつ900gの水に分散し、マンナナーゼ100ユニットを添加後、45℃で2時間反応させることによって、それぞれを分解した。次いで、これら分解された溶液について、120℃、15分のオートクレーブ処理を行なうことによってマンナナーゼを失活させた。それぞれの分解溶液をロータリーエバポレータによって濃縮後、スプレードライヤーにて粉末化し、ローカストビーンガム分解物、タラガム分解物、コンニャクマンナン分解物及びカシアガム分解物を得た。これら分解物を実施例13乃至16に係る消化吸収抑制剤及び食品のGI値低減剤とする。
【0017】
実施例17
次に、カードラン(武田薬品工業)100gを900gの水に分散させ、β−グルカナーゼ50ユニットを添加後、37℃で12時間反応させることによって、カードランを分解した。その後、この分解された溶液について、120℃、15分のオートクレーブ処理を行なうことによってβ−グルカナーゼを失活させた。その分解溶液をロータリーエバポレータで濃縮後、スプレードライヤーによって粉末化し、カードラン分解物を得た。このカードラン分解物を実施例17に係る消化吸収抑制剤及び食品のGI値低減剤とする。
【0018】
実施例18乃至20
次に、カラギナン(伊那食品工業)、ファーセレラン(伊那食品工業)及びフノリ抽出物のそれぞれ1000gに5%リン酸溶液50gを均一に混ぜ、110℃で2時間静置することによってそれぞれを分解した。その後、分解された溶液に炭酸ナトリウム溶液を噴霧して中和することによって、カラギナン分解物、ファーセレラン分解物及びフノリ分解物を得た。これら分解物を実施例18乃至20に係る消化吸収抑制剤及び食品のGI値低減剤とする。
【0019】
実施例21乃至26
次に、ジェランガム(CPケルコ)、サイリュームシードガム(大日本製薬)、キサンタンガム(CPケルコ)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)(第一薬品工業)、ウェランガム(CPケルコ)及びラムザンガム(CPケルコ)のそれぞれ1000gに15%リン酸溶液50gを均一に混ぜ、95℃で12時間静置することによってそれぞれを分解した。その後、分解された溶液に炭酸ナトリウム溶液を噴霧して中和することによって、ジェランガム分解物、サイリュームシードガム分解物、キサンタンガム分解物、CMCナトリウム分解物、ウェランガム分解物及びラムザンガム分解物を得た。これら分解物を実施例21乃至26に係る消化吸収抑制剤及び食品のGI値低減剤とする。
【0020】
実験例1
次に、これら実施例1乃至26に係る消化吸収抑制剤及びGI値低減剤を加えた場合の澱粉に対するアミラーゼ消化率を以下のように測定した。先ず、これら実施例1乃至26に係る消化吸収抑制剤及びGI値低減剤それぞれ0.5gと水200gを小麦粉10gに加えてスラリー状にした後、100℃まで加熱し見かけ上十分な位糊化させることによって、表1に示すようにサンプル1a乃至26aを得た。また、小麦粉10gと水200gでスラリーを作り、これを100℃まで加熱し、完全に小麦粉を糊化させた後、実施例1乃至26に係る消化吸収抑制剤及びGI値低減剤を添加することによって表1に示すようにサンプル1b乃至26bを得た。比較例として、小麦粉10gを水200gでスラリーを作り、これを100℃まで加熱し、完全に小麦粉を糊化させたものを用意した。
【0021】
【表1】

【0022】
これらサンプル1a乃至26a、サンプル1b乃至26b及び比較例それぞれについてα−アミラーゼ消化試験を行った。α−アミラーゼの消化性試験は、これらサンプル1a乃至26a、サンプル1b乃至26b及び比較例の溶液それぞれにα−アミラーゼ50ユニットを添加し、30分、60分、及び120分後にサンプリングを行い、次いで、α−アミラーゼについて失活後蒸留水で任意に希釈を行い、Park-Jhonson法にてα−アミラーゼの消化作用によって生じた澱粉の還元末端の定量を行った。比較例の120分後の還元末端数を100として、サンプル1a乃至26a、サンプル1b乃至26b並びに30分後及び60分後の比較例それぞれの割合を%で示した。その結果を表2及び3に示す。サンプル1a乃至26aは、表2及び3から明らかなようにサンプル1b乃至26b及び比較例に比し消化率が低い値を示した。
【0023】
【表2】

【0024】
【表3】

【0025】
実施例27乃至38
次に、本発明に係る消化吸収抑制剤及びGI値低減剤の実施例27乃至38として、表4に示すようにアラビノガラクタン、アラビノキシラン、トラガントガム、ガディガム、ウェランガム、ラムザンガム、イヌリン、デキストラン、寒天分解物(伊那食品工業)、アルギン酸分解物((株)キミカ)、ゼラチン分解物((株)ニッピ)、デキストラン分解物(和光純薬(株))を用意した。
【0026】
【表4】

【0027】
実験例2
次に、これら実施例27乃至38に係る消化吸収抑制剤及びGI値低減剤を加えた場合の澱粉に対するアミラーゼ消化率を以下のように測定した。すなわち、先ず、これら実施例27乃至38に係る消化吸収抑制剤及びGI値低減剤それぞれ0.5gと水200gを小麦粉10gに加えてスラリー状にした後、100℃まで加熱し見かけ上十分な位糊化させることによって表4に示すようにサンプル27a乃至38aを得た。また、小麦粉10gと水200gでスラリーを作り、これを100℃まで加熱し、完全に小麦粉を糊化させた後、実施例27乃至38に係る消化吸収抑制剤及びGI値低減剤を添加することによって表4に示すようにサンプル27b乃至38bを得た。比較例として、小麦粉10gと水200gでスラリーを作り、これを100℃まで加熱し、完全に小麦粉を糊化させたものを使用した。
【0028】
これらサンプル27a乃至38a、サンプル27b乃至38b及び比較例それぞれについてα−アミラーゼ消化試験を行った。α−アミラーゼの消化性試験は、これらサンプル27a乃至38a、サンプル27b乃至38b及び比較例それぞれにα−アミラーゼ50ユニットを添加し、30分、60分、及び120分後にサンプリングを行い、次いで、α−アミラーゼを失活後蒸留水で任意に希釈を行い、Park-Jhonson法にてα−アミラーゼの消化作用によって生じた澱粉の還元末端の定量を行った。比較例の120分後の還元末端数を100として、サンプル27a乃至38a、サンプル1b乃至26b並びに30分後及び60分後の比較例それぞれの割合を%で示した。その結果を表5に示す。サンプル27a乃至38aは、表5から明らかなようにサンプル27b乃至38b及び比較例に比し消化率が低い値を示した。
【0029】
【表5】

【0030】
実験例3
次に、実施例13乃至26に係る消化吸収抑制剤及びGI値低減剤それぞれ0.5gと水200gを小麦粉10gに加えてスラリー状にした後、100℃まで加熱し見かけ上十分な位糊化させ表6に示すようにサンプル13c乃至26cを得た。また、表6に示すように、小麦粉10gと水200gでスラリーを作り、これを100℃まで加熱し、完全に小麦粉を糊化させたものを比較例1として用意し、実施例13乃至26に係る消化吸収抑制剤及びGI値低減剤それぞれの原料であるローカストビーンガム、タラガム、コンニャクマンナン、カシアガム、カードラン、カラギナン、ファーセレラン、フノリ抽出物、ジェランガム、サイリュームシードガム、キサンタンガム、CMCナトリウム、ウェランガム及びラムザンガムについて、サンプル13c乃至26cと同様に処理したものを比較例13乃至26として用意した。
【0031】
【表6】

【0032】
これらサンプル13c乃至26c、並びに比較例1、13乃至26の粘度を80℃でB型回転粘度計を用いて測定した。粘度測定の結果を表7に示す。実施例13乃至26を添加したサンプル13c乃至26cは、表7から明らかなように比較例1、13乃至26に比し粘度が低い値を示した。
【0033】
【表7】

【0034】
また、これらサンプル13c乃至26c、並びに比較例1、及び13乃至26それぞれについてα−アミラーゼ消化試験を同時に行った。α−アミラーゼ消化性試験は、これらサンプル13c乃至26c、並びに比較例1、及び13乃至26それぞれにα−アミラーゼ50ユニットを添加し、120分後にサンプリングを行い、α−アミラーゼを失活後蒸留水で任意に希釈を行い、Park-Jhonson法にてα−アミラーゼの消化作用によって生じた澱粉の還元末端の定量を行った。比較例1の120分後の還元末端数を100として、サンプル13c乃至26c、及び比較例13乃至26それぞれの割合を%で示した。その結果を表7に示す。実施例13乃至26を添加したサンプル13c乃至26cは、表7から明らかなように比較例に比し消化率が低い値を示した。
【0035】
実験例4
次に、本実施例に係る消化吸収抑制剤及びGI値低減剤を澱粉に添加した時のDSCによるアルファ化について測定した。先ず、中力粉9.0mgに対し、実施例1に係るアラビアガム分解物2.0mg、実施例3に係るプルラン分解物1.0mg、実施例6に係る大豆多糖類分解物1.0mg、実施例27に係るアラビノガラクタン1.0mg、実施例35に係る寒天分解物1.0mg、実施例36に係るアルギン酸分解物1.0mg及び実施例37に係るゼラチン分解物1.0mgそれぞれを添加し、これらを銀製の密封耐圧型試料容器に入れ、蒸留水を加えクリンピングして完全密封した。この状態で6時間以上室温に静置し、DSCで糊化温度と糊化エンタルピーの測定を行った。測定温度を20℃から120℃、昇温速度を1.0K/minとした。比較例として、中力粉10.0mgに対し蒸留水50mgを加えたものを実施例と同じ条件で測定した。これらの結果を表8に示す。
【0036】
【表8】

【0037】
表8から明らかなように、実施例1に係るアラビアガム分解物、実施例3に係るプルラン分解物、実施例6に係る大豆多糖類分解物、実施例27に係るアラビノガラクタン、実施例35に係る寒天分解物、実施例36に係るアルギン酸分解物及び実施例37に係るゼラチン分解物を添加した澱粉溶液は、比較例に比し糊化温度が上昇し、糊化エンタルピーが減少したため、アルファ化が阻害されていたことを示した。
【0038】
実験例5
次に、中力粉30gに対し、実施例1に係るアラビアガム分解物6.0g、実施例3に係るプルラン分解物3.0g、実施例6に係る大豆多糖類分解物3.0g、実施例27に係るアラビノガラクタン3.0g、実施例35に係る寒天分解物3.0g、実施例36に係るアルギン酸分解物3.0g、実施例37に係るゼラチン分解物3.0gをそれぞれ添加して混合後、水467gを加えアミログラフにかけて粘度を測定した。昇温速度及び降温速度は3.0K/minの条件で行った。比較例として、中力粉30gに対し蒸留水470gを加えたものを実施例と同じ条件で測定した。これらの結果を表9に示す。
【0039】
【表9】

【0040】
表9から明らかなように、実施例1に係るアラビアガム分解物、実施例3に係るプルラン分解物、実施例6に係る大豆多糖類分解物、実施例27に係るアラビノガラクタン、実施例35に係る寒天分解物、実施例36に係るアルギン酸分解物、及び実施例37に係るゼラチン分解物を添加した澱粉溶液は、比較例に比し糊化時の最高粘度及び、冷却時の粘度が減少したため、アルファ化が阻害されていたことを示した。
【0041】
実験例6
次に、本実施例に係る消化吸収抑制剤及びGI値低減剤を加えた生麺(うどん)に対するアミラーゼ消化率を測定した。先ず、中力粉500gに対し、実施例1に係るアラビアガム分解物を30g、実施例7に係るペクチン分解物15g及び実施例27に係るアラビノガラクタン15gをそれぞれ加えて混合した後、12ボーメの食塩水230gを添加し、混合器で15分間練り上げ、室温で30分間静置した後、ローリングプレス機でさらに練り上げ、3時間室温に寝かし、ローリングプレス機で生地を長方形に薄く延ばし、切断機で切断することによって、実施例1に係るアラビアガム分解物、実施例7に係るペクチン分解物及び実施例27に係るアラビノガラクタンそれぞれを含む生麺(うどん)を作製した。また、本実施例に係る消化吸収抑制剤及びGI値低減剤を加えないこと以外は同様に生麺(うどん)を比較例として作製した。作製したそれぞれのうどんを10倍量の水で一定時間茹で上げ、10メッシュの篩に通し、そのうちの100gを1Lの50mMリン酸緩衝液(pH6.0)の入った溶出試験機に分散させ、α−アミラーゼを100ユニット添加し、30分、60分、120分のサンプリングを行い、各サンプルについて酵素反応により生じる還元末端の定量をPark-Jhonson法によって行った。これらの結果を表10に示す。
【0042】
【表10】

【0043】
実施例1に係るアラビアガム分解物、実施例7に係るペクチン分解物、実施例27に係るアラビノガラクタンをそれぞれ含む生麺(うどん)は、表10から明らかなように比較例に係るうどんに比し消化率が抑制されることを示した。
【0044】
実験例7
次に、本実施例に係る消化吸収抑制剤及びGI値低減剤を加えた蒸しパンに対するアミラーゼ消化率を測定した。先ず、薄力粉500gと実施例3に係るプルラン分解物、実施例4に係るタマリンドガム分解物、及び実施例35に係る寒天分解物をそれぞれ10g、グラニュー糖250g、ベーキングパウダー15gを粉体混合し、卵2個と水250gを混合した容器の中に合わせ生地を作製し、型に流し込み蒸し器で30分蒸し上げ、実施例3に係るプルラン分解物、実施例4に係るタマリンドガム分解物、及び実施例35に係る寒天分解物を含む蒸しパンを作製した。また本実施例に係る消化吸収抑制剤及びGI値低減剤を加えないこと以外は同様の処方で蒸しパンを比較例として作製した。作製したそれぞれの蒸しパンを1cm角ほどに大きさに切り分け、そのうちの50gを1Lの50mMリン酸緩衝液(pH6.0)の入った溶出試験機に分散させ、α−アミラーゼを100ユニット添加し、30分、60分、120分のサンプリングを行い、各サンプルについて酵素反応により生じる還元末端の定量をPark-Jhonson法によって行った。これらの結果を表11に示す。
【0045】
【表11】

【0046】
実施例3に係るプルラン分解物、実施例4に係るタマリンドガム分解物、実施例35に係る寒天分解物をそれぞれ含む蒸しパンは、表11から明らかなように比較例に係る蒸しパンに比し消化率が抑制されることを示した。
【0047】
実験例8
次に、本実施例に係る消化吸収抑制剤及びGI値低減剤を加え、過加熱によりのびた生麺(うどん)に対するアミラーゼ消化率及び物性を測定した。先ず、中力粉500gに対し、実施例1に係るアラビアガム分解物を30g、実施例7に係るペクチン分解物15g、及び実施例27に係るアラビノガラクタン15gそれぞれを加えて混合した後、12ボーメの食塩水230gを添加し、混合器で15分間練り上げ、室温で30分間静置した後、ローリングプレス機でさらに練り上げ、3時間室温に寝かし、ローリングプレス機で生地を長方形に薄く延ばし、切断機で切断することによって、実施例1に係るアラビアガム分解物、実施例7に係るペクチン分解物及び実施例27に係るアラビノガラクタンをそれぞれ含む生麺(うどん)を作製した。また、本実施例に係る消化吸収抑制剤及びGI値低減剤を加えないこと以外は同様の処方で生麺(うどん)を比較例として作製した。作製したそれぞれのうどんを10倍量の水で一定時間茹で上げ茹で汁に漬けた状態のまま90℃で3時間保持し、水きり後10メッシュの篩に通し、そのうちの100gを1Lの50mMリン酸緩衝液(pH6.0)の入った溶出試験機に分散させ、α−アミラーゼを100ユニット添加し、30分、60分、120分のサンプリングを行い、各サンプルについて酵素反応により生じる還元末端の定量をPark-Jhonson法によって行った。これらの結果を表12に示す。
【0048】
【表12】

【0049】
実施例1に係るアラビアガム分解物、実施例7に係るペクチン分解物、実施例27に係るアラビノガラクタンをそれぞれ含む生麺(うどん)は、表12から明らかなように比較例に係るうどんに比し消化率が抑制されることを示した。
【0050】
実験例9
次に、本実施例に係る消化吸収抑制剤及びGI値低減剤を加えた生麺(うどん)に対する血糖値及びGI値を測定した。先ず、中力粉500gに対し、実施例1に係るアラビアガム分解物を30g加え混合後、12ボーメの食塩水230gを添加し、混合器で15分間練り上げ、室温で30分間静置した後、ローリングプレス機でさらに練り上げ、3時間室温に寝かし、ローリングプレス機で生地を長方形に薄く延ばし、切断機で切断することによって、実施例1に係るアラビアガム分解物を含む生麺(うどん)を作製した。また、消化吸収抑制剤を加えないこと以外は同様の処方で生麺(うどん)を比較例として作製した。作製したそれぞれのうどんを10倍量の水で一定時間茹で上げた後、温めた市販の麺つゆ300gの中に入れ血糖値試験の被験食1とした。さらに、消化吸収剤を加えない処方の生麺(うどん)に被験食1とした。さらに、消化吸収剤を加えない処方の生麺(うどん)に、被験食1のうどんと等量の実施例1に係るアラビアガム分解物を麺つゆの方に加えたものを被験食2とした。比較例として作製した生麺(うどん)を温めた市販の麺ゆつ300gにいれたものを比較例1、うどんの炭水化物量と等量のブドウ糖を250gの水に溶解したものを比較例2とした。血糖値試験は、健常男子6名を対象に行った。一晩絶食後、試験開始前の血糖値をそれぞれ自己血糖値測定装置(グルテスター:)を用いて測定し、0分の血糖値とした。その後、上記被験食を約10分で摂取させ、食後15分、30分、45分、60分、90分、120分後に血糖値を測定した。被験食摂取の順序は、被験者に伏せてランダムに振り分け、各被験者に対し1週間に1回、計4週間にわたって血糖値試験を実施した。これらの結果を血糖曲線として図1に示した。図1の結果は、全て平均値±標準偏差で表し、各被験食間の有意差検定は対応のあるt−検定で行った。*は、5%の危険率で有意差があることを示す。図1の結果から、実施例1に係るアラビアガム分解物を添加したうどんでは、比較例1及び比較例2と比べて血糖値が有意に減少したことを示した。また、実施例1に係るアラビアガム分解物を麺つゆに添加した場合に比べても、実施例1に係るアラビアガム分解物を添加したうどんでは、血糖値が減少する傾向にあることを示した。
【0051】
また、図1の血糖曲線からそれぞれ血糖曲線下面積を求め、比較例2の血糖曲線面積を100とした時の割合としてGI値を算出した。その結果を表13に示した。
【0052】
【表13】

【0053】
表13の結果は、全て平均値±標準偏差で表し、各被験食間の有意差検定は対応のあるt−検定で行った。**は1%の危険率で有意差があることを示す。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本実施例に係る消化吸収抑制剤及びGI値低減剤を加えた生麺(うどん)に対する血糖値の測定結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アラビノガラクタン、アラビノキシラン、トラガントガム、ガティガム、ウェランガム、ラムザンガム、イヌリン及びデキストランのうち少なくとも1以上からなる水溶性高分子を主成分とし、食品に加えることによりその消化吸収を抑制する消化吸収抑制剤。
【請求項2】
アラビノガラクタン、アラビノキシラン、トラガントガム、ガティガム、ウェランガム、ラムザンガム、イヌリン、デキストラン、アラビアガム、プルラン、タマリンドガム、寒天、カラギナン、ファーセレラン、グアーガム、フェヌグリークガム、ローカストビーンガム、タラガム、コンニャクマンナン、ジェランガム、フノリ抽出物、サイリュームシードガム、カードラン、カシアガム、カラヤガム、アルギン酸、アルギン酸塩、アルギン酸誘導体、キサンタンガム、大豆多糖類、ペクチン、ゼラチン、セルロース、セルロース誘導体、及びポリデキストロースのうち少なくとも1以上からなる水溶性高分子の分解物を主成分とし、食品に加えることによりその消化吸収を抑制する消化吸収抑制剤。
【請求項3】
食品の加熱処理前に加えられることによりその消化吸収を抑制することを特徴とする請求項1又は2記載の消化吸収抑制剤。
【請求項4】
アラビノガラクタン、アラビノキシラン、トラガントガム、ガティガム、ウェランガム、ラムザンガム、イヌリン及びデキストランのうち少なくとも1以上からなる水溶性高分子を主成分とし、食品に加えることによりそのGI値を低減する食品のGI値低減剤。
【請求項5】
アラビノガラクタン、アラビノキシラン、トラガントガム、ガティガム、ウェランガム、ラムザンガム、イヌリン、デキストラン、アラビアガム、プルラン、タマリンドガム、寒天、カラギナン、ファーセレラン、グアーガム、フェヌグリークガム、ローカストビーンガム、タラガム、コンニャクマンナン、ジェランガム、フノリ抽出物、サイリュームシードガム、カードラン、カシアガム、カラヤガム、アルギン酸、アルギン酸塩、アルギン酸誘導体、キサンタンガム、大豆多糖類、ペクチン、ゼラチン、セルロース、セルロース誘導体、及びポリデキストロースのうち少なくとも1以上からなる水溶性高分子の分解物を主成分とし、食品に加えることによりそのGI値を低減する食品のGI値低減剤。
【請求項6】
食品の加熱処理前に加えられることによりそのGI値を低減することを特徴とする請求項4又は5記載の食品のGI値低減剤。
【請求項7】
請求項1乃至3いずれか記載の消化吸収抑制剤又は請求項4乃至6いずれか記載のGI値低減剤を含むことを特徴とする食品。

【図1】
image rotate