説明

消化器疾患に関連する症状の緩和に使用されるプロバイオティクス

【課題】消化器疾患に関連する症状の緩和に適したプロバイオティクス組成物の提供。特に、機能性腸疾患、過敏性腸症候群、機能性下痢、機能的膨脹および他の症状に関連する症状を緩和する、組成物、並びにその使用方法の提供。
【解決手段】ラクトバチルス・アシドフィラス(L.acidophilus)およびビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)を含む組成物、並びにその使用方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2007年10月11日に出願された「Probiotics for Use in Relieving Symptoms Associated with Gastrointestinal Disorders(消化器疾患に関連する症状の緩和に使用されるプロバイオティクス)」と題する、米国仮特許出願シリアルナンバー第60/979,187号について、優先権を主張する。
【0002】
技術分野
本発明は、消化器疾患に関連する症状の緩和に適したプロバイオティクス組成物を提供する。特に、本発明は、機能性腸疾患、過敏性腸症候群、機能性下痢、機能的膨脹及び他の症状に関連する症状を緩和する、組成物の使用を提供する。
【背景技術】
【0003】
ローマ基金(Rome Foundation)(マックリーン、バージニア州)によると、機能性腸疾患(FBD)に用いられるROMEII診断基準は、中部又はより底部の胃腸(GI)管に局在する諸症状を示す。FBDは、過敏性腸症候群(IBS)、機能性下痢、機能性便秘、機能性腹部膨満などの多数の臨床サブグループを含む。これらの疾患は、罹患患者における構造的又は生化学的異常に起因しない慢性又は再発性GI症状の可変的な組み合わせにより特徴付けられる。IBSは、世界中の多数の成人に影響する、最も一般的な機能性GI疾患である。IBS及び他のFBDの病態生理学は十分に理解されておらず、現在可能な薬物投与計画が非常に制限されているように、まだこれらの疾患の症状の緩和に適した組成物の使用の必要性が残る。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、消化器疾患に関連する症状の緩和に適したプロバイオティクス組成物を提供する。特に、本発明は、機能性腸疾患、過敏性腸症候群、機能性下痢、機能的膨脹及び他の症状に関連する症状を緩和する、組成物の使用を提供する。
【0005】
いくつかの実施態様において、本発明は、L.acidophilus及びB.animalisの亜種lactis Bi−07の組み合わせの使用を提供する。いくつかの好ましい実施態様において、本発明は、L.acidophilus NCFM(登録商標)(PTA−4797)及びB.animalisの亜種lactis Bi−07(PTA−4802)の組み合わせの使用を提供する。いくつかのさらに好ましい実施形態において、本発明は、L.acidophilus NCFM(登録商標)及びBifidobacterium lactis Bi−07を含む栄養補助食品を提供する。いくつかのさらに好ましい実施態様において、L.acidophilus NCFM(登録商標)及びBifidobacterium lactis Bi−07を含む栄養補助食品は、約1x10CFUから約2x1011CFUの全プロバイオティクス細菌/日の範囲の投与量で、被験者に投与される。いくつかの別の実施態様において、投与量は、約2x1011CFU全プロバイオティクス細菌/日である。しかし、異なる投与量が異なる設定での及び/又は異なる患者への使用に見られることが意図されるように、本発明は特定の投与量に限定されることを意図されない。
【0006】
本発明はまた、FBDを有する患者の鼓脹及び膨張の症状を改善する組成物の使用方法を提供する。いくつかの好ましい実施態様において、本発明は、L.acidophilus及びB.animalisの亜種lactisを含む組成物及びFBDの症状を緩和するそれらの使用方法を提供する。いくつかの特に好ましい実施態様おいて、本発明は、L.acidophilus NCFM(登録商標)及びB.animalisの亜種lactis Bi−07を含む組成物及びFBDの症状を緩和するそれらの使用方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、消化器疾患に関連する症状の緩和に適したプロバイオティクス組成物を提供する。特に、本発明は機能性腸疾患、過敏性腸症候群、機能性下痢、機能的膨脹及び他の症状に関連する症状を緩和する、組成物の使用方法を提供する。
【0008】
特に、本発明は、ヒト被験者の使用に適したLactobacillus及びBifidobacteriumのプロバイオティック培養を提供する。いくつかの特に好ましい実施態様おいて、L.acidophilusは、B.animalisとの組み合わせで提供される。さらに別の実施態様において、B.animalisの亜種lactis(本明細書で「B.lactis」としても示される)は、L.acidophilus NCFM(登録商標)との組み合わせで提供される。さらに追加の特に好ましい実施態様において、これらの微生物の組み合わせが提供される。さらに追加の実施態様において、B.animalisの亜種lactisは、PTA−4802として指定されるATCC株であり、L.acidophilus NCFM(登録商標)は、PTA−4797として指定されるATCC株である。
【0009】
本発明の開発の間、これらのプロバイオティクスの投与が、GI症状を緩和したことが見つかった。従って、本発明は、FBDに関連する症状の緩和に有用である、これらのプロバイオティック菌の組み合わせを含む、方法及び組成物を提供する。いくつかの特に好ましい実施態様において、前記組成物は、鼓脹及び膨張等の症状の緩和に使用される。しかし、本発明がこれらの特異的症状に限定されることは、意図されない。
【0010】
定義
別途指示されない限り、本発明の実施は、食品微生物学、栄養補助食品、胃腸薬、疫学、分子生物、微生物学、タンパク質精製、並びに産業用酵素の使用及び開発で一般的に使用される従来の技術を含み、それら全ては当該技術分野の技術に属する。上記及び下記の両方において、本明細書で言及される全ての特許、特許出願、論文及び公報は、参照によりここで明示的に本明細書に組み込まれる。
【0011】
更に、本明細書に提供される見出しは、多様な発明の側面又は実施態様を制限するものではなく、本明細書の全体を参照することにより含まれることができる。従って、以下に定義される語は、本明細書の全体を参照することにより、より完全に定義される。それでもなお、本発明の理解を容易にするために、多くの語の定義が下記に提供される。
【0012】
本明細書で別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的、科学的用語は、本発明の属する技術分野の当業者により一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと同様の又は均等の任意の方法及び物質が、本発明の実施に使用されるが、好ましい方法及び物質は、本明細書に記載される。従って、以下に定義される語は、本明細書の全体を参照することにより、より完全に説明される。また、本明細書で用いられている、単数の語「a」、「an」、及び「the」は、文中で別途明確な記載がない限り、複数の場合を含む。本発明は、当業者が使用する状況に依存し、変化することができ、記載された特定の手順、操作方法、及び試薬に限定されないことが理解される。
【0013】
本明細書で示される全ての最大数値限定は、本明細書でより少ない数値限定が明確に記載されているかのように、全てのより少ない数値限定を含むことが意図される。本明細書で示される全ての最小数値限定は、本明細書でより多い数値限定が明確に記載されているかのように、全てのより多い数値限定を含む。本明細書で示される全ての数値範囲は、本明細書でより狭義の数値範囲が明確に記載されているかのように、より広義の数値範囲の中にある、全てのより狭義の数値範囲を含む。
【0014】
本明細書で用いられる「食物」の語は、植物及び/又は動物に栄養を供給する任意の栄養素を示す。植物又は動物を生きている状態に保つために、取り入れられ、吸収される任意の物質に関して使用されるように、当該語が任意の特定要素に限定されることは、意図されない。液体の栄養素が定義により包含されるように、当該語は、「固体」の食物に限定されることもまた、意図されない。実際いくつかの実施態様において、液体の栄養素は、固体の食物要素よりも好ましい。いくつかの好ましい実施態様において、当該語は特に、ヒトへの消費に用いられる食物に関して使用される。
【0015】
本明細書で用いられる「飼料」の語は、非ヒト動物に栄養を供給する任意の栄養素を示す。植物又は動物を生きている状態に保つために、取り入れられ、吸収される任意の物質に関して使用されるように、当該語が任意の特定要素に限定されることは、意図されない。液体の栄養素が定義により包含されるように、当該語は、「固体」の食物に限定されることもまた、意図されない。実際いくつかの実施態様において、液体の栄養素は、固体の食物要素よりも好ましい。
【0016】
本明細書で用いられる「栄養補助食品」及び「食事補給食品」の語は、食事に追加される任意の製品を示す。いくつかの特に好ましい実施態様において、栄養補助食品は、口で摂取され、ビタミン、ミネラル、ハーブ、アミノ酸、酵素及び細菌の培地を含むがそれらに限られない、1以上の食物成分をしばしば含む。いくつかの特に好ましい実施態様おいて、本発明のプロバイオティックスは他の生理活性化合物がない状態で提供される。本明細書で用いられる「生理活性」は、体内で活性のある組成物/化合物を示す。生理活性は、栄養物質の吸収の増加又は減少、腸管微生物叢の組成物及び腸管微生物叢からの代謝副生成物の修飾、腸内免疫システムの発現の修飾等を含むがそれらに限られない、多様な機能を持つ酵素及び他の組成物を含む。
【0017】
本明細書で用いられる「栄養薬剤」の語は、健康上の利益を提供すると信じられている及び/又は健康上の利益を提供するために摂取される栄養補助/食事補給食品を示す。
【0018】
本明細書で用いられる「プロバイオティック」の語は、健康に有益である生きた微生物の食物成分を示す。
【0019】
本明細書で用いられる「プレバイオティック」の語は、一種の食物成分であって、これを摂取するヒト及び/又は他の動物に、有益に作用する非消化性食物成分を示す。好ましい実施態様において、プレバイオティックは、腸管内で限定された数の細菌型の増殖及び/又は活性を選択的に刺激し、ヒト及び/又は他の動物の健康を改善させる。
【0020】
本明細書で用いられる「シンバイオティック(synbiotic)」の語は、プレバイオティック及びプロバイオティクスの混合物を示す。
【0021】
本明細書で用いられる「病気」及び「疾患」の語は、任意の体の一部、器官、又は組織の正常な構造及び/又は機能からの任意の逸脱又は障害を示し、それらは、症状又は兆候の特性集合(a characteristic set)により明示される。当該語は、既知の又は未知の病因及び/又は病理を有する状態を包含する。
【0022】
本明細書で用いられる「治療する」の語は、疾患、障害、もしくは疾患の症状又は状態の改善、向上、及び/又は治療の結果となる組成物の提供を示す。
【0023】
本明細書で用いられる「経口投与」及び「経口」の語は、口で食物及び/又は補助食品を摂取することを示す。
【0024】
本明細書で用いられる「病気の未然防止」及び「疾患の予防」の語は、病気/疾患の発生を避けるために取られる対策を示す。いくつかの実施態様において、病気/疾患を避けるために、「予防的」措置が取られる。
【0025】
本明細書で用いられる「疾患の症状」の語は、任意の疾患の自覚及び/又は患者の状態を示す。患者により把握される任意の証拠に関して使用される。
【0026】
本明細書で用いられる「疾患の兆候」の語は、疾患/病気の有無の兆しを示す。検査医及び/又はその他のヘルスケア提供者に認知される、任意の疾患の客観的証拠に関して使用される。
【0027】
本明細書で用いられる「胃腸の」及び「GI」の語は、ヒト及び他の動物の消化管にある胃及び腸を示す。しかし、本明細書の文中でも用いられる「胃腸管」(「GI管」)の語は、口腔から直腸までの全消化管を示す。当該語は、筋肉の動き及びホルモンや酵素の放出が食物を消化する、口から肛門まで伸びる管を包含する。胃腸管は口で始まり、食道、胃、小腸、大腸、直腸及び最終的に肛門に進む。
【0028】
本明細書で用いられる「消化管」の語は、口腔、食道、胃、小腸、大腸及び副器官(例えば、肝臓、膵臓など)を含む、栄養物質(例えば、食物及び飲料)の消化に関係する器官及び構造の全てを示す。
【0029】
本明細書で用いられる「胃腸内細菌叢」の語は、ヒト及び他の動物の胃腸系に生息する微生物を示す。いくつかの特に好ましい実施態様において、当該語は、細菌性微生物に関して使用されるが、当該語がそのように限定されることは、意図されない。
【0030】
本明細書で用いられる「腸」の語は、小腸及び大腸を示す。
【0031】
本明細書で用いられる「食後」の語は、食事後の時間を示す。本明細書で用いられる「食後の症状」の語は、被験者が食事を摂取した後に起こる症状を示す。
【0032】
本明細書で用いられる「機能性腸疾患」(「FBD」)の語は、ヒト及び/又は他の動物の消化管で見られる構造的又は生化学的異常によっては説明されない、慢性又は再発性の胃腸症状の可変的な組み合わせを含む障害を示す。
【0033】
本明細書で用いられる「過敏性腸症候群」(「IBS」)の語は、当該技術分野で知られるように、RomeII診断基準を包含する。特に、当該語は、診断に先立つ12ヶ月前の間に、少なくとも12週間(連続している必要はない)の腹部不快感又は次の3つの特徴のうち、少なくとも2つを有する痛みに関して使用される。すなわち、3つの特徴とは、排便による軽減、及び/又は、排便回数の変化に関係する発病、及び/又は、便の形態(例えば、外観)の変化に関係する発病である。また、IBSの診断を支持する症状はまた、異常な排便回数(例えば、日に3回より多い排便及び/又は週に3回未満の排便)、異常な便の形態(例えば、塊の多い/硬い又はゆるい/水っぽい)、異常な便の排泄(例えば、腹圧、切迫及び/又は排便の不完全感)、粘液の排泄、及び/又は鼓脹及び/又は腹部膨満感を含む。
【0034】
本明細書で用いられる「機能性腹部鼓脹」の語は、当該技術分野で知られるように、RomeII診断基準を包含する。特に、当該語は、診断に先立つ12ヶ月前の間に、少なくとも12週間(連続している必要はない)の腹部の膨満感、鼓脹感及び/又は可視的膨張、及び機能性消化不良、過敏性腸症候群又は別の機能疾患の診断基準の不足に関して使用される。
【0035】
本明細書で用いられる「機能的便秘」の語は、当該技術分野で知られるように、RomeII診断基準を包含する。特に、当該語は、診断に先立つ12ヶ月前の間に、少なくとも12週間(連続している必要はない)の次の症状に関して使用される。すなわち、それらの症状は、排便時の1/4より多い間の腹圧、排便の1/4より多い塊の多い又は硬い便、排便の1/4より多い排便の不完全感、排便時の1/4より多い間の肛門直腸の閉塞/遮断感、排便の1/4より多くを促進する手動操作の要求(例えば、指を用いる排便、骨盤底の支持)、及び/又は週に3回未満の排便である。
【0036】
本明細書で用いられる「機能性下痢」の語は、当該技術分野で知られるように、RomeII診断基準を包含する。特に、当該語は、診断に先立つ12ヶ月前の間に、少なくとも12週間(連続している必要はない)、当該被験者に腹痛が無く、3/4より多くの時間でゆるい(例えば、柔らかい)又は水っぽい便を経験することに関して使用される。
【0037】
本明細書で用いられる「不特定の機能性腸疾患」の語は、当該技術分野で知られるように、RomeII診断基準を包含する。特に、機能性腸疾患の定義のカテゴリに適合しない、器質性疾患のない腸症状を示す。
【0038】
本明細書で用いられる「消化器症状の緩和」の語は、鼓腸、腹痛、下痢等を含むがそれらに限られない、胃腸症状の減少又は終了を示す。
【0039】
本明細書で用いられる「罹患」の語は、病気/疾患を示す。
【0040】
本明細書で用いられる「死亡」の語は、死を示す。
【0041】
本明細書で用いられる「発症率」の語は、一定期間の間起こる特異的疾患の新規症例の数のように、特定の事象が発生する率を示す。
【0042】
本明細書で用いられる「有病率」の語とは、特定時の特定の集団の存在における、特定の疾患及び/又は状態の総症例数をいう。
【0043】
本明細書で用いられる「後遺症」の語は、状態及び/又は疾患事象の結果として現れる病気/疾患及び症状/兆候を示す。いくつかの実施態様において、初期疾患/病気が解決した後の後遺症は長期間起こる。
【0044】
本明細書で用いられる「不顕性感染」の語は、疾病の兆候又は症状の発現/観察を生じない感染を示す。しばしば患者は、病原生物に感染するが、感染に気づかない。
【0045】
本明細書で用いられる「感染」の語は、体内での病原微生物の侵入及び増殖を示す。
【0046】
本明細書で用いられる「培養」の語は、1以上の微生物を含む任意の試料又は要素を示す。「純粋培養」は、微生物の存在が、特定の種及び生物種の1の株だけからなる培養である。これは、微生物の2以上の種及び/又は生物種が存在する培養である「混合培養」とは対照的である。本発明のいくつかの他の実施態様において、純粋培養が使用される。たとえば、いくつかの特に好ましい実施態様において、Lactobacillus(例えば、L.acidophilus)の純粋培養が使用される。しかし、別の実施態様において、混合培養が使用される。例えば、いくつかの特に好ましい実施態様において、L.acidophilus及びBifidobacteriumを含む培養が使用される。
【0047】
本明細書で用いられる「Lactobacillus」の語は、乳酸桿菌科ファミリーのLactobacillus属のメンバーを示す。これらの細菌は、「乳酸菌」としてよく示される菌群の大部分を表すグラム陽性条件的嫌気性細菌である。L.acidophilus、L.bulgaricus、L.casei、L.delbrueckii、L.fermentum、L.plantarum、L.reuteriなどを含むがそれらに限られない、多様なLactobacillusの種が同定されている。本発明が任意のLactobacillusの特定の種に限定されることは、意図されないが、いくつかの特に好ましい実施態様において、L.acidophilus NFCMが、本発明で使用される。当該類概念は、販売及び/又は他の用途のために再分類(例えば、遺伝的及び他の研究の結果としての生物の化学種の変化のためなど)された、又は名前が変更された種を含むことが、意図される。
【0048】
本明細書で用いられる「Bifidobacterium」の語は、Bifidobacterium属のメンバーを示す。これらの細菌は、胃腸内細菌叢の中にある菌の主要な株の1つであるグラム陽性嫌気性の細菌である。本発明を任意のBifidobacteriumの特定の種に限定することは、意図されないが、いくつかの特に好ましい実施態様において、B.lactis Bi−07が、本発明で使用される。当該類概念は、販売及び/又は他の用途のために再分類(例えば、遺伝的及び他の研究の結果としての生物の化学種の変化のためなど)された、又は名前が変更された種を含むことが、意図される。
【0049】
本明細書で用いられる「抗菌性」の語は、微生物の増殖を抑制する又は微生物を殺す任意の化合物を示す。当該語は、最大限広範な意味で使用されることが意図され、自然に、あるいは合成的に産生された抗生物質等の化合物を含むが、それらに限定されない。当該語は、微生物の増殖を抑制する又は微生物を殺すことに役立つ化合物及び要素を包含することもまた意図される。
【0050】
本明細書で用いられる「微生物培地」、「培養培地」及び「培地」の語は、微生物の育成及び複製に適した任意の基質を示す。当該後は、半固体及び液体微生物増殖システムと同様に、固形プレート培地を包含する。
【実施例】
【0051】
以下の実施例は、本発明の所定の好ましい実施態様及び側面を実証及びさらに例証するために提供され、それらの範囲を限定するように解釈されない。
【0052】
以下の実験の開示において、下記の略語が適用される。℃(摂氏温度)、HO(水)、gm(グラム)、μg及びug(マイクログラム)、mg(ミリグラム)、ng(ナノグラム)、μl及びul(マイクロリットル)、ml(ミリリットル)、mm(ミリメートル)、nm(ナノメートル)、μm及びum(マイクロメータ)、M(モル)、mM(ミリモル)、μM及びuM(マイクロモル)、U(単位)、sec(秒)、min(分)、hr(時間)、sd及びSD(標準偏差)、PBS(リン酸緩衝生理食塩水、150mM NaCl、10mMリン酸ナトリウムバッファ、pH7.2)、w/v(重量/体積)、v/v(体積/体積)、CFU(コロニー形成単位)、y/o(歳)、Becton Dickinson(ベクトン・ディキンソン・ダイアグノスティック・システムズ、スパークス、メリーランド州)、Difco(ディフコ研究所、デトロイト、ミシガン州)、GIBCO BRL又はGibco BRL(ライフ・テクノロジーズ・インク、ゲイザースバーグ、メリーランド州)、UNC(ノースカロライナ大学)、及びATCC(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、マナッサス、ヴァージニア州)。
【0053】
本発明の開発に使用される微生物は、L.acidophilus NCFM(登録商標)(PTA−4797)及びB.animalisの亜種lactis Bi−07(PTA−4802)であった。これらの株は、0.05%システインを含むMRS培地(例えば、Difco、Becton Dickinson)で、37℃で増殖させた。培養は、H/CO空気(Becton−Dickinson)を含むBBL GASPAK(商標)嫌気ジャーで48−72時間インキュベートした。大規模生産については、菌株は発酵培地で増殖され、遠心分離により回収し、当該技術分野で既知の方法を用いて、低温安定化した。低温安定化された溶液は、凍結乾燥された。
【0054】
本発明は、予測、無作為、ダブルブラインド、プラセボ対照試験を用い、評価され、FBDを有する患者における、プロバイオティック(Lactobacillus及びBifidobacterium)細菌の効果を評価した。全試験期間は、14週間であった。投与前値(baseline values)での適格性、主症状及び重篤度の判定に2週間のスクリーニング期間を設けた。その後、8週間の治療フェーズが続き、その間、患者は、2投与群(すなわち、プロバイオティクスの栄養補助食品による実薬投与又はプラセボ)に無作為に割り付けられた。無作為化の内容は、患者及び治験責任医師に知らされない状態のままであった。また、治療フェーズの停止後に4週間の追跡調査フェーズを設けた。
【0055】
被験者は、ノースカロライナ大学病院での外来患者GI診療所、地域の病院の施設、及び広告により募集された。この試験に用いられる出力計算は、IBSの基本症状である、腹痛へのプロバイオティクスの報告された結果に基づいた(例えば、Niedzielinら、Eur.J.Gatroenterol.Hepatol.、13、1143−1147ページ、2001年参照)。本試験が適切に出力したことを、出力計算は表示した。
【0056】
下記の試験対象患者基準を全て満たす被験者が、この試験に有資格であると判定された。すなわち当該試験対象患者基準は、署名されたインフォームド・コンセントを受け取った、年齢が18−65歳である、外来通院患者である、機能性GI障害に用いられるRomeII基準に従ってIBS又は機能性下痢あるいは機能性鼓脹があり、現在の治療法にもかかわらず、被験者は少なくとも2週間、上述の症状を有する(下痢を有する患者については、日に平均2回以上の排便、又は週にBristol Stool Form Scaleに関する平均4以上のスコアの定義が使用された)、重症化での症状を抑えるために、被験者の症状は軽度であった(症状重篤度は、投与前値で、2週間のスクリーニング期間の最後に評価され、無作為化の前に適格性を判定した)、被験者が最近の5年間で通常の軟性S状結腸鏡検査又は大腸内視鏡検査を受けた(年齢>50y/oの場合、被験者は、大腸内視鏡検査を受けていなければならない)ことである。
【0057】
以下の基準のうちのどれかが適合した、潜在的な被験者は除外された。すなわち当該基準は、被験者に消化管の炎症又は構造的異常(例えば、炎症性腸疾患(IBD)、十二指腸潰瘍(DU)又は胃潰瘍(GU)、閉塞又は症候性胆石症)があった、投与前時に被験者に重いFBD関連の症状があった、被験者に深刻で、不安定な病状がある、被験者にインスリン依存性糖尿病がある、被験者に最近の2年間で主要な精神科疾患の診断又は自殺企図があった、被験者に最近の2年間でアルコール又は薬物乱用の経歴があった、被験者に臨床検査の異常値(正常値の2.5倍より高いALT又はAST値、2.0mg/dlより高い血清クレアチニン値、未治療の異常なTSH値を含む)がある、被験者が最近の5年間で悪性腫瘍の治療を受けていた(BCC又はSCC皮膚癌以外)、被験者がラクターゼ欠乏症と診断され、当該診断により被験者の症状(すなわち、乳糖除去食で解決されたか著しく縮小された症状)を説明することが出来た、被験者が最近の21日中に薬剤試験に参加した、被験者が最近の8週間で抗生物質療法を受けた(抗生物質による治療中の被験者について、8週間のウォッシュアウト期間を要した)、被験者に重大な胃又は腸の手術歴があった、あるいは被験者が妊娠中あるいは授乳中であるか、又は試験過程の間、効果的な避妊法を継続する意思がないことである。
【0058】
機能性腸疾患(FBD)、IBS、又は機能性下痢のRomeII基準を満たし、少なくとも6ヶ月間の再発症状があった、五十七(57)人の無作為被験者(女性及び男性)が当該試験に含まれた。このうち、30人は実薬投与群に無作為に割り付けられ、27人はプラセボ群が割り当てられた。これらの個々のうち、33人はIBS患者(実薬投与群の17人及びプラセボ群の16人)であり、21人はFBD患者(非IBS FBD)(実薬投与群の12人及びプラセボ群の9人)であり、3人は機能性下痢患者(実薬投与群の1人及びプラセボ群の2人)であった。次の表は、実薬投与群及びプラセボ群中の各個人の統計学的情報を提供する。
【表1】

【0059】
被験者は、当該試験の間、4回診療所で検診を受けた。すなわち、(1)スクリーニング期間の初期(週−2)、(2)治療フェーズの初期(週0)、(3)治療フェーズの中期(週4)、及び(4)治療フェーズの終了時(週8)である。被験者は、治療フェーズの終了後、2週目(週10)及び4週目(週12)に電話で連絡を受けた。それぞれの試験来院では、被験者は、以下の事項を用いて主要な及び副次的結果判定法について評価された。すなわち当該事項は、GSA(「消化器症状の特異的な不安神経症」)、Dem Med(「主要な医学的記述」)(検診1のみ)、症状の発現に関する質問(検診1のみ)、抗生物質/プロバイオティック治療に関する質問(検診1のみ)、満足度スケール、BDI−II(「ベック抑うつ指標II(Beck Depression inventory−II)」)、クオリティ・オブ・ライフ(IBS−QOL)、食関連症状に関する質問、IBS重症度指標、併用薬、及び有害事象の検討である。
【0060】
(週12)の間及び追跡調査フェーズの終了時(すなわち、週14)において、被験者は電話で連絡を受け、日誌カードを送り返すよう依頼された。被験者は、スクリーニング期間の初期から始まり、治療を中止した後の4週が終わるまで日誌カードに症状を記録するよう依頼された。被験者は、排便の数、排便毎の便の硬さ、腹痛、鼓張、及び食後の症状を記録した。加えて被験者は、日毎に取る錠剤の数を記録した。通話の間、被験者は、機能性GI症状の全体的な緩和、全般的な快適さ、併用薬、及び(もし生じた場合に)試験による任意の有害事象の状況について質問された。その後、被験者の症状は一日単位で評価された。
【0061】
被験者の全ては、スクリーニング期間(週−2から週0)の間、細菌の過剰成長及び乳糖不耐症を評価する呼気試験を含む、各種の臨床検査を受けた。最近の24ヶ月の間に陰性の結果が得られた者は容認され、陽性であることがわかった患者は除外された。血液検査を治療の安全性の評価のため、スクリーニングの終了時及び治療開始前(週0)(投与前)、治療の中期(週4)及び治療の終了時(週8)に実施した。当該血液検査は、炎症のマーカーとしてのESR(赤血球沈降速度)、血小板の全血球数及び差動血球数(ヘマトクリット、ヘモグロビン、赤血球数、白血球数、及び好中球、リンパ球、単球、好酸、好塩基球、バンドを含む差動血球数),ナトリウム、塩化、カリウム、カルシウム、リン、クレアチニン、BUN、総タンパク質、LFT、アルブミン及び血液妊娠検査を含んだ。6ヶ月間のスクリーニング検診中に得られる検査結果は、投与前値として使用されることが出来た。検査結果は、被験者毎に記録した。糞便微生物叢の検査が選択肢としてあり、後の検査に含まれることも出来たが、当該検査は実施しないことと決定された。
【0062】
前述のように、被験者は、2つの治療群、すなわち実薬投与群対プラセボ群のうちの1つへ組み入れられた。実薬投与群は、L.acidophilus NCFM(登録商標)及びBifidobacterium lactis Bi−07を含む栄養補助食品を受け取った。実薬投与群の被験者は、微生物毎1x1011全CFU(菌株あたり5x1010CFU)相当量の経口投与量を受け取った。プラセボ薬及びプロバイオティック製薬をカプセル形態で日に2回、2x1011CFUの合計1日量で投与した。
【0063】
試験期間を通じて、被験者は、現在服薬中の安定した(1ヶ月以上)投薬(当該投薬は鎮痙薬、繊維栄養補助食品、下痢止め薬物治療及び/又は緩下剤薬物治療、並びに抗うつ薬を含む)を続けることが出来た。しかし、現在、腸症状に対する「ガス止め」薬物治療を行っている被験者は、スクリーニング検診の少なくとも7日前に、当該薬物療法を中止するように依頼された(すなわち、被験者は、試験のスクリーニングフェーズに入る前の最終週以降の当該投薬が許されなかった)。任意の理由のために抗生物質を服用する被験者については、少なくとも8週間のウォッシュアウト期間が試験の加入の前に要求された。被験者はまた、試験の残りの期間も当該投薬の休薬を要求された。参加者は、任意の安定投薬における変化を避け、また、試験参加の間、必要に応じた(すなわち、PRNの)投薬を受けることを避け、同様の投薬を続けるよう依頼された。試験期間の投薬における変化は、各検診で調査し、記録された。
【0064】
加えて、被験者は、非意図的にプロバイオティクス(すなわち、ヨーグルト)を消費することが出来た。しかし、試験の間、バクテリアが濃縮されたヨーグルト及び発酵乳を避けるよう依頼された。加えて、プロバイオティクスの栄養補助食品は試験の間、許容されず、被験者は試験加入前の少なくとも8週間に先立って当該栄養補助食品を中止するよう依頼された。
【0065】
前治療(すなわち、スクリーニングフェーズの終了時(週0))、治療フェーズの終了時(週8)、及び追跡調査フェーズの終了時(週12)の間の全ての結果測定スコア及び臨床検査での有意な変化を評価するために、データ解析を行った。全体的な応答性及び最大の特定/陽性症状の反応を決定するため、評価を各々の特定の評価項目の測定の応答性に対して行った。応答性の測定は、機能性GI症状の全体的な緩和、全ての機能性GIに関する特異的な症状、IBS重症度指標、及び健康に関したクオリティ・オブ・ライフを含んだ。全体のFBD群に対して、また一の試験的な方法において各サブグループ(すなわち、IBS、機能性下痢及び非IBS機能性腸疾患)で別個に、解析を行った。有害事象の発現率及び臨床検査での変化に対して、治療の許容性及び安全性を分析した。各患者及び全試験集団の報告された有害事象及び検査値異常の最新の記録は保管された。
【0066】
結果は、4週でのプラセボ投与群と比べ、鼓張及び膨張がプロバイオティクス投与群で有意に改善された(各々、4.10±3対17±3、p=0.009)ことを示し、8週で改善を示す強い傾向が示された(各々、4.26±3対5.84±3、p=0.06)。IBSサブグループ(n=33)のみを用いた二次解析は、プラセボ(n=15)群と比べ、鼓張及び膨張においてプロバイオティック群(n=17)で有意に改善された同様の結果が示された(各々、4.24±3対6.73±3、p=0.03)。これらの結果は、L.acidophilus NCFM(登録商標)及びBifidobacterium lactis Bi−07(2x1011CFU全プロバイオティック細菌/日)を含む食事補給食品がFBDを有する患者の鼓張及び膨張の症状を有意に改善したことを示した。従って、当該プロバイオティクスが前記疾患を有する患者の管理に使用されることが意図される。重要なことに、当該プロバイオティックが他の生理活性の補給のない被験者に提供されたことに注意される。
【0067】
本明細書で言及される全ての特許及び公報は、本発明が属する技術分野の当業者の水準の指標である。各々の公報が参照により組み込まれることが具体的及び個々に記載されるのと同程度に、全ての特許及び公報は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0068】
本発明の好ましい実施態様を記載することについて、多様な修飾が開示された実施態様になされることが当業者に明らかであり、当該修飾は、本発明の範囲内であることが意図される。
【0069】
言及される目的物と効果及びそれらに内在のものを得るため、本発明が対象物の実行にうまく適応されることは、当業者に容易に理解される。本明細書に記載される組成物及び方法は、好ましい実施態様の代表及び例であり、本発明の範囲の限定は意図されない。本発明の範囲と目的から逸脱することなく、本明細書で開示される本発明に多様な置換と修飾がなされることは当業者に明白である。
【0070】
本明細書で具体的に記載される本発明は、具体的に本明細書で開示されない任意の要素(element)又は要素(elements)、制限(limitation)又は制限(limitations)なしで適当に実行されることが出来る。使用される語及び表現は、説明のための用語として使用され、限定用語としては使用されない。また、当該語及び表現の、表示され、記載される機能の任意の同等物又はそれらの一部を排除する使用は意図されず、主張される本発明の範囲内で多様な修飾の可能性があることが認められる。従って、本発明は好ましい実施態様及び任意の特徴により具体的に開示されるが、開示される本明細書の概念の修飾及び多様化が当業者に用いられることが理解されるべきである。また、当該修飾及び多様化が、添付された特許請求の範囲により定義される本発明の範囲内であると考慮されることが理解されるべきである。
【0071】
本発明は、本明細書で広く、一般的に記載される。当該一般的な開示に含まれるより狭義の種類及び亜属グループの各々はまた、本発明の一部を形成する。これは、排除された材料が本明細書で具体的に列挙されているか否かに関わりなく、類概念から任意の対象を排除する条件付きの又は消極的な限定を伴う本発明の一般的な記載を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能性腸疾患の症状を改善するための医薬の製造におけるラクトバチルス・アシドフィラス(L.acidophilus)及びビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)を含む組成物の使用。
【請求項2】
前記組成物が食事補給食品である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記ラクトバチルス・アシドフィラス及びビフィドバクテリウム・ラクティスが約1x10から約2x1011CFU全プロバイオティクス細菌/日の投与量で個人に投与される、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記ラクトバチルス・アシドフィラス及びビフィドバクテリウム・ラクティスが約2x1011CFU全プロバイオティクス細菌/日の投与量で個人に投与される、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
前記機能性腸疾患の症状が鼓張及び膨張を含む、請求項1に記載の使用。

【公開番号】特開2013−40186(P2013−40186A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−222783(P2012−222783)
【出願日】平成24年10月5日(2012.10.5)
【分割の表示】特願2010−528995(P2010−528995)の分割
【原出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(509093978)
【Fターム(参考)】