消化器系の運動をイパモレリンを用いて刺激する方法
【課題】胃腸系の運動を効果的に刺激する有効な生理的方法を提供する。
【解決手段】治療上有効な量の下記構造式Iにより表されるグレリン模倣化合物:
又はその製薬上許容しうる塩、溶媒和物若しくは水和物を患者に投与する。
【解決手段】治療上有効な量の下記構造式Iにより表されるグレリン模倣化合物:
又はその製薬上許容しうる塩、溶媒和物若しくは水和物を患者に投与する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2007年12月21日出願の米国暫定特許出願第61/008,828号(その全内容を、参考として本明細書中に援用する)の利益を請求するものである。
本明細書中で援用するすべての参考文献(特許、特許出願、及び公開された特許出願を含む)を、それらが各々更に個別に引用されていてもいなくても、参考として、そっくりそのまま援用する。
【背景技術】
【0002】
胃腸(GI)の運動は、栄養素を消化器系を通して輸送する協調した神経筋プロセスである。C. Scarpignato, 「Pharmacological Stimulation of Gastrointestinal Motility: Where We Are And Where Are We Going?」Dig. Dis., 15: 112(1997)。胃腸系の弱った(即ち、遅い)運動は、胃食道逆流疾患、胃不全麻痺(例えば、糖尿病性及び術後性の当該麻痺)、過敏性大腸症候群、イレウス、及び便秘症(例えば、ダイエット又はオピオイド誘発性のもの)に関係する可能性があり、工業国の最も大きな健康管理上の負担の一つである。S. D. Feighner等、「Receptor for Motilin Identified in the Human Gastrointestinal System」、Science, 284: 2184-2188(1999年6月25日)。
【0003】
成長ホルモン分泌促進物質(GHS)、例えばグレリン及びその模倣物は、胃腸管の運動を刺激することが報告されている。しかしながら、研究されてきた特定のGHS化合物は、胃腸の運動の治療のために臨床的に利用することはできないであろうという薬物速度論的特性を有している。特に、グレリンは、胃で生成される28アミノ酸のペプチドである。グレリンの生物学的に活性な形態(即ち、アシル化形態)は、血清半減期が9〜13分しかない(Akamizu等、(2004)European Journal of Endocrinology 150:447-55)。加えて、合成のGHS化合物例えばGHRP−6は、短い血清半減期を有し、これは、この化合物を用いてGI運動性疾患を治療することを妨げる。Bowers等は、GHRP−6の血清半減期が20分しかないことを示した((1992)Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism 74:292-8)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】C. Scarpignato, 「Pharmacological Stimulation of Gastrointestinal Motility: Where We Are And Where Are We Going?」Dig. Dis., 15: 112(1997)
【非特許文献2】S. D. Feighner等、「Receptor for Motilin Identified in the Human Gastrointestinal System」、Science, 284: 2184-2188(1999年6月25日)
【非特許文献3】Akamizu等、(2004)European Journal of Endocrinology 150:447-55
【非特許文献4】Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism 74:292-8(1992)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の故に、胃腸系の運動を効果的に刺激する有効な生理的方法が非常に望まれており、それは、当分野における進歩となるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、胃腸管系の運動を刺激する方法を必要とする患者において、該運動を刺激する方法であって、該患者は、胃腸系の疾患(即ち、異常、病気、病状、又は薬物若しくは手術により誘発された機能不全)を患っている、ことを特徴とする当該方法に関するものである。この方法は、それを必要とする患者に、治療上有効な量のグレリン模倣化合物又はその製薬上許容しうる塩、水和物若しくは溶媒和物を投与することを含む。好適具体例において、このグレリン模倣物は、式Iにより表されるイパモレリン(下記参照)又はその製薬上許容しうる塩、水和物若しくは溶媒和物である。
【0007】
上記のように、グレリン及びグレリン模倣化合物は、限られた血清半減期を有することが示されており、それ故、GI運動性疾患の治療に用いるのに適当でない。グレリン及びGHRP−6に対して、イパモレリンの血清半減期は、ヒトにおいて、3〜6.5時間であることが示されている。従って、本発明は、胃腸系の運動を刺激する方法及び治療上有効な組成物を提供する。
【0008】
胃腸管の運動の刺激は、オピオイドにより誘発された胃腸管機能不全例えばモルヒネにより誘発された結腸機能不全又は便秘症の治療法において、それを必要とする患者において用いられ、治療上有効な量のグレリン模倣化合物又はその製薬上許容しうる塩、水和物若しくは溶媒和物を投与することを含む。患者は、手術後の痛みの管理又は慢性的な痛みの管理のためにアヘン誘導体又はオピオイドを使用していてよい。典型的なアヘン誘導体及びオピオイドには、モルヒネ、コデイン、オキシコドン、ヒドロモルフォン、ヒドロコドン、メタドン、フェンタニル、及び抗炎症剤例えばアセトアミノフェン又はアスピリンとの組合せが含まれる。好適なグレリン模倣物は、式Iにより表されるイパモレリン、又はその製薬上許容しうる塩、水和物若しくは溶媒和物である。
【0009】
胃腸管運動の刺激は、胃不全麻痺を治療するために、それを必要とする患者において、治療上有効な量のグレリン模倣化合物を投与することにより利用することができる。好適なグレリン模倣物は、式Iにより表されるイパモレリン、又はその製薬上許容しうる塩、水和物、誘導体、酸アミド若しくは溶媒和物である。
【0010】
更なる具体例において、胃腸管運動の刺激は、胃食道逆流疾患(GERD)を治療する方法において、それを必要とする患者において、治療上有効な量のグレリン模倣化合物を投与することにより、利用することができる。特定の具体例において、このグレリン模倣物は、式Iにより表されるイパモレリン、又はその製薬上許容しうる塩、水和物若しくは溶媒和物である。特定の具体例において、胃食道逆流疾患は、夜間性の胃食道逆流疾患である。
【0011】
この発明は又、胃腸管運動を、過敏性大腸症候群(IBS)の治療のために、それを必要とする患者において、治療上有効な量のグレリン模倣化合物を投与することにより刺激する方法をも提供する。好適なグレリン模倣物は、式Iにより表されるイパモレリン、又はその製薬上許容しうる塩、水和物若しくは溶媒和物である。過敏性大腸症候群は、便秘症−主たる過敏性大腸症候群であってよく、又は交互の便秘/下痢の過敏性大腸症候群であってもよい。
【0012】
この発明は又、便秘を治療するために、それを必要とする患者において、治療上有効な量のグレリン模倣化合物を投与することにより胃腸管運動を刺激する方法をも提供する。好適なグレリン模倣物は、式Iにより表されるイパモレリン、又はその製薬上許容しうる塩、水和物若しくは溶媒和物である。
【0013】
一具体例において、胃腸管運動の刺激は、手術により又は手術に関連して誘発された胃腸機能不全(例えば、術後イレウス)を治療する方法において、それを必要とする患者において、治療上有効な量のグレリン模倣化合物を投与することにより利用される。特定の具体例において、このグレリン模倣物は、式Iにより表されるイパモレリン、又はその製薬上許容しうる塩、水和物若しくは溶媒和物である。
【0014】
好適なグレリン模倣物は、下記の式Iにより表されるイパモレリン(α−メチルアラニン−L−ヒスチジン−D−β−(2−ナフチル)−アラニン−D−フェニルアラニン−L−リジンアミド又はH−Aib−His−β−(2−ナフチル)−D−Ala−D−Phe−Lys−NH2):
【化1】
又は、製薬上許容しうるその塩、水和物若しくは溶媒和物である。
【0015】
この開示において及び特に特許請求の範囲及び/又は段落において、用語「含む」、「含まれる」、「含んでいる」などは、米国特許法において、それに帰せられる意味を有しうる;例えば、それらは、「包含する」、「包含される」、「包含している」などを意味し;そして用語「本質的に〜からなっている」及び「本質的に〜からなる」は、米国特許法において、それらに帰せられる意味を有し、例えば、それらは、明示的に列挙されてない構成要素を認めるが、従来技術で見出される構成要素又は発明の基本的若しくは新規な特徴に影響を与える構成要素は排除するということは注目される。
【0016】
これらの及び他の具体例は、下記の詳細な説明により開示され又は該説明から自明であって、それに包含される。
【0017】
下記の詳細な説明(説明のために与えるものであり、この発明を記載した特定の具体例だけに限定することを意図したものではない)は、下記の図面を伴うことにより最もよく理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】術後イレウスのラットモデルにおける、10及び100mg/kgのイパモレリンの経口投与の胃運動性(gastrokinetic)への効力を示した図である。
【図2】術後イレウスのラットモデルにおける、静脈投与された0.1、0.25又は1.0mg/kgのイパモレリンの効力を示した図である。
【図3】術後イレウスのラットモデルにおける、静脈投与された0.01、0.03及び0.1mg/kgのイパモレリンの効力を示した図である。
【図4】グレリンが、4mg/kgのモルヒネを投与されたラットにおいて、胃内容排出を加速しなかったこと及び食塩溶液又はグレリンを投与されたラットがフェノールレッドの同じ群平均吸光度を示したことを示した図である。
【図5】ラットモデルにおける術後イレウスを治療するための、0.25、1.0、2.5mg/kgのイパモレリン(この図では、26−0161と記載)の静脈投与の、10mg/kgのRC−1139と比較した、胃運動性への効力を示した図である。
【図6】ヒトにおいてモルヒネにより誘発された胃腸運動の低下の、0.01、0.03及び0.06mg/kgの投与量での、イパモレリンの静脈内単独投与による反転(reversal)を示した図である。
【図7】様々なグレリン模倣物の胃内容物の排出に対する効果を比較した棒グラフである。
【図8】様々なグレリン模倣物の小腸を通る胃腸運動に対する効果を比較した棒グラフである。
【図9】様々なグレリン模倣物の胃内容物の排出に対する効果を比較した棒グラフである。
【図10】様々なグレリン模倣物の小腸を通る胃腸運動に対する効果(幽門括約筋から遠位)を比較した棒グラフである。
【図11】様々なグレリン模倣物の小腸を通る胃腸運動に対する効果(幽門括約筋から近位)を比較した棒グラフである。
【図12】図12A〜Dは、術後イレウスのラットモデルにおける、腹部の手術の、大腸通過時間、糞粒排出量、食物摂取量、及び体重増加に対する影響を示した図である。
【図13】0.1及び1mg/kgのイパモレリンの単独投与後の、腹部手術後のラットにおける、ビヒクル及び対照(GHRP−6)と比較しての、大腸通過時間を示した図である。
【図14】0.1及び1mg/kgのイパモレリンの単独投与後の、腹部手術後のラットにおける、12、24又は48時間目における、ビヒクル及び標準的対照(GHRP−6)と比較しての、累積的糞粒排出量を示した図である。
【図15】0.1及び1mg/kgのイパモレリンの単独投与後の、腹部手術後のラットの、3〜48時間目の種々の時点における累積的食物摂取量を、ビヒクル及び標準的対照(GHRP−6)と比較して示した図である。
【図16】0.1及び1mg/kgのイパモレリンの単独投与後の、腹部手術後のラットの、24及び48時間目における体重に対する効果を、ビヒクル及び標準的対照(GHRP−6)と比較して示した図である。
【図17】0.01、0.1及び1.0mg/kgのイパモレリンの複数回の投与後の、腹部手術後のラットの、大腸通過時間を、ビヒクルと比較して示した図である。
【図18】0.01、0.1及び1.0mg/kgのイパモレリンの複数回の投与後の、腹部手術後のラットにおける、48時間にわたる糞粒排出量の、ビヒクルと比較しての効果を示した図である。
【図19】0.01、0.1及び1.0mg/kgのイパモレリンの複数回の投与後の、腹部手術後のラットにおける、48時間にわたる累積的食物摂取量の、ビヒクルと比較しての効果を示した図である。
【図20】0.01、0.1及び1.0mg/kgのイパモレリンの、複数回の投与後の、腹部手術後のラットにおける、48時間にわたる体重増加に対する効果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、胃腸系の運動を刺激することを必要とする患者において、該胃腸系の運動を刺激する方法であって、該患者が、胃腸系の疾患(即ち、異常又は病気又は薬物若しくは手術により誘発された機能不全)を患っていることを特徴とする当該方法に関するものである。ある具体例において、これらの疾患には、オピオイドにより誘発される胃腸機能不全、例えば、モルヒネにより誘発される胃腸機能不全、便秘症、糖尿病に関連した胃不全麻痺、胃食道逆流疾患(GERD)、過敏性大腸症候群(IBS)、又は薬物若しくは手術により誘発される胃腸機能不全、例えば、術後イレウスが含まれる。この方法は、それを必要とする患者に、治療上有効な量のグレリン模倣化合物又はその製薬上許容しうる塩、水和物若しくは溶媒和物を投与することを含む。このグレリン模倣物は、好ましくは、式Iにより表されるイパモレリン、又はその製薬上許容しうる塩、水和物若しくは溶媒和物である。
【0020】
グレリン模倣物
ここで用いる場合、用語「グレリン模倣物」又は「グレリン模倣化合物」又は「グレリンアゴニスト」は、従来採用されてきた歴史的用語「成長ホルモン分泌促進物質」又は「成長ホルモン分泌促進化合物」と同意語である。グレリン模倣物又はグレリンアゴニストは、グレリンレセプター(GRLN)への結合を特徴とする少なくとも一つの機能を促進(誘導又は増進)する物質(例えば、分子、化合物)を指す。GRLNレセプターは、以前に文献中に、その第一の公知の属性−成長ホルモンの分泌−を反映するGHS1aレセプターとして報告されている。このグレリンレセプターは、主として、視床下部及び下垂体で発現される。これらのレセプターの下垂体での活性化は、成長ホルモンの分泌を誘導する。成長ホルモンの分泌の誘導に加えて、最近の研究は、グレリン模倣物が、食欲及び体重を増大させることができることを示した。特定の具体例において、これらのグレリン模倣物は、米国特許第5,767,085号、6,303,620号、6,576,648号、5,977,178号、6,566,337号、6,083,908号、6,274,584号及び6,919,315号に記載されたものである(これらのすべての内容を、参考として、本明細書中に援用する)。
【0021】
続いて、このGRLNレセプターは、下垂体及び視床下部以外の身体中での位置、例えば胃腸管及び血管系において同定された。グレリン又はグレリン模倣物のそれらのレセプターへの結合は、成長ホルモン分泌以外の又はそれに加えての薬理学的活性を生じた。特に、この他の薬理学的活性は、胃腸管運動促進(prokinetic)活性の増大並びに噴門機能の変化であった。従って、以前に成長ホルモン分泌促進化合物と呼ばれていた物質は、今では、そのレセプター(GRLN)への結合から生じる一層広い生理活性作用の範囲を表すように、一層一般的に、グレリン模倣物又はアゴニストと呼ばれている。
【0022】
最も同定されたグレリン模倣物は、種々の長さのコアペプチド主鎖(トリ、テトラ、ペンタ、及びヘキサペプチド、並びにマクロ環状)を有している。種々の分子構造が、グレリンレセプターに対する種々の親和性を生じ、それ故、種々の薬理学的結果を生じうるということも予想される。何れの分子が、一般的クラスの他のものと比較して並外れた活性又は有効性を有しうるかを先験的に決定することはできない。それは、一般に、並外れた結果又は発見を伴う特定の研究から明らかとなる。
【0023】
GRLNレセプターアゴニスト活性を有する化合物を、任意の適当な方法によって、同定して活性を評価することができる。例えば、GRLNレセプターアゴニストのGRLNレセプターへの結合親和性は、レセプター結合アッセイを用いて測定することができ、成長ホルモン刺激は、米国特許第6,919,315号(参考として、本明細書中に援用する)に記載されたようにして評価することができる。これらのグレリン模倣物は、任意の商業的供給者を含む任意の起源から得ることができる。
【0024】
この発明の場合には、好適なグレリン模倣物は、下記の構造式I(α−メチルアラニン−L−ヒスチジン−D−β−(2−ナフチル)−アラニン−D−フェニルアラニン−L−リジンアミド又はH−Aib−His−β−(2−ナフチル)−D−Ala−D−Phe−Lys−NH2)により表されるイパモレリン:
【化2】
又は、製薬上許容しうるその塩、水和物、酸、アミド、結晶又は溶媒和物である。
【0025】
本発明は、部分的に、本願発明者によりなされた、ある特定のグレリン模倣物、特に、イパモレリンが胃腸運動に対する驚くべき有効且つ強力な刺激効果を有するという驚くべき発見に基いている。イパモレリンは、強力な成長ホルモン分泌促進物質であるが、そのGRLNレセプターとの結合親和性は、多くの他の報告されたグレリン模倣物より、約2〜3log弱い。
【0026】
同時投与される物質
本発明の他の面は、少なくとも一種の物質とグレリン模倣物例えばイパモレリンの、胃腸の異常、病気又は病状を治療するための同時投与に関係する。同時投与されるとは、2種類以上の物質を単回医薬組成物として一緒に投与すること、又は2種類以上の物質を短時間例えば数秒乃至数日のうちに投与することを意味しうる。
【0027】
末梢作用性オピオイドアンタゴニスト
末梢作用性オピオイドレセプターアンタゴニスト例えば血液脳関門を横切らないメチルナルトレキソン、ナルトキソン、ナルトレキソン、ナルメフェン及びアルビモパン(ENTEREG(商標))を、オピオイドにより誘発される副作用を、オピオイド禁断症状を誘発し又は痛覚消失を無効にすることなく治療するために投与することは可能である。(Holzer P., 「Opioids and Opioid Receptors in the Enteric Nervous System: From a Problem in Opioid Analgesia to a Possible New Prokinetic Therapy in Humans」Neurosci Lett., 361(1-3):192-5(2004))(参考として、本明細書中に援用する)。ここで用いる場合、末梢作用性オピオイドアンタゴニストは、末梢で作用する(即ち、中枢ではなく、例えば、中枢神経系には作用しない)オピオイドアンタゴニストを指す。
【0028】
プロトンポンプインヒビター
他の面において、本発明は、胃腸の病状又は疾患の治療のための、グレリン模倣物例えばイパモレリンとプロトンポンプインヒビターとの同時投与を与える。プロトンポンプインヒビターは、胃酸の分泌(酸生成の最終過程)を、胃壁細胞の分泌表面でのH+K+−ATPアーゼ酵素系の特異的阻害により抑制する。プロトンポンプインヒビターは、ベンズイミダゾール化合物例えばエソメプラゾール(NEXIUM(商標))、オメプラゾール(PRILOSEC(商標))、ランソプラゾール(PREVACID(商標))、ラベプラゾール(ACIPHEX(商標))及びパントプラゾール(Protonix(商標))を含む。これらのプロトンポンプインヒビターは、置換されたベンズイミダゾールとピリジン環との間に位置されたスルフィニル基を含む。中性pHで、エソメプラゾール、オメプラゾール、ランソプラゾール、及びパントプラゾールは、化学的に安定で、脂溶性であり、弱塩基性であって、阻害活性が全くない。これらの未帯電の弱塩基は、血液から壁細胞に達して、分泌細管中に拡散し、そこでは、これらの薬物は、プロトン化され、それにより、捕捉される。プロトン化された種は、転位してスルフェン酸及びスルフェンアミドを形成し、後者の種は、H+K+−ATPアーゼのスルフヒドリル基と相互作用することができる。酵素分子当たり2分子のインヒビターにより完全な阻害が起きる。プロトンポンプインヒビターの効果の特異性は、a)H+K+−ATPアーゼの選択的分布;b)反応性インヒビターの生成を触媒するのに酸性条件が必要であること;及びc)酸性細管中での及び標的酵素に隣接するプロトン化薬物及びカチオン性スルフェンアミドの捕捉に由来すると考えられている。Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics, 第9版、901-915頁(1996)(参考として、本明細書中に援用する)。
【0029】
H2レセプターアンタゴニスト
更に別の面において、本発明は、胃腸の病状又は疾患の治療のための、グレリン模倣物例えばイパモレリンとH2レセプターアンタゴニストの同時投与を提供する。H2レセプターアンタゴニストは、ヒスタミンのH2レセプターとの相互作用を競争的に阻害する。それらは、高度に選択的であって、H1レセプターに殆ど又は全く影響を有しない。H2レセプターが、血管及び気管支平滑筋を含む多くの組織に存在しても、H2レセプターアンタゴニストは、胃酸の分泌以外の生理機能には殆ど目立った介入をしない。H2レセプターアンタゴニストには、ニザチジン(AXID(商標))、ラニチジン(ZANTAC(商標)及びTRITEC(商標))、ファモチジン(PEPCID AC(商標))、及びシメチジン(TAGAMET(商標)。Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics、第9版、901-915頁(1996))(参考として、本明細書中に援用する)が含まれるが、これらに限られない。H2レセプターアンタゴニストは、ヒスタミン、他のH2アゴニスト、ガストリン(及び、一層程度は低いが、ムスカリン作動性アゴニスト)に誘出される胃酸の分泌を阻害する。H2レセプターアンタゴニストは又、基礎的及び夜間の酸分泌をも阻害する。
【0030】
制酸剤
本発明の他の面は、胃腸の病状又は疾患の治療のための、グレリン模倣物例えばイパモレリンと制酸剤との同時投与の方法を提供する。例えば、この発明の化合物を、制酸剤と同時投与して胃酸を中和することができる。例えば、水酸化アルミニウム及びマグネシウム(MAALOX(商標)及びMYLANTA(商標))は、胃酸を中和して、胃及び十二指腸球部におけるpHを増大させる。
【0031】
緩下剤
本発明は、更に、グレリン模倣物例えばイパモレリンと緩下剤を、胃腸の病状又は疾患を治療するために、同時投与するための方法を提供する。緩下剤は、様々な形態であってよく、例えば、液体、錠剤、坐薬、粉末、顆粒、カプセル、チューインガム、チョコレート風味のウェハース、及びキャラメルを含む。緩下剤の基本型は、膨張性緩下剤、潤滑性緩下剤、便軟化剤(緩和性緩下剤とも呼ばれる)、及び刺激性緩下剤である。
【0032】
膨張性緩下剤は、消化管を消化されずに通過するセルロース及びオオバコなどの材料を含む。例えば、これらの材料は、液体を吸収して膨張し、便を軟らかく、かさばったものにして、通過を容易にする。このかさばった便は、次いで、結腸を刺激して運動させる。このグループの緩下剤には、FIBERCON(商標)、FIBERALL(商標)、及びMETAMUCIL(商標)などのブランドが含まれる。
【0033】
潤滑性緩下剤には、例えば、鉱油が含まれる。鉱油は、最も広く用いられる潤滑性緩下剤である。口から摂取すれば、該油が、便をコートする。これは、便の水分と柔らかさを保ち、その通過を容易にする。潤滑性緩下剤は、しばしば、しぶり腹を回避する必要のある患者(例えば、腹部手術後)に用いられる。
【0034】
便軟化剤(緩和性緩下剤)は、便を、それらの水分含量を増すことによって、一層軟らかくして、通過を一層容易にする。この型の緩下剤は、実際は、結腸の運動を刺激しないが、しぶり腹を伴わない結腸運動を可能にする。便軟化剤は、例えば、最近の外科手術の故に、しぶり腹を避けることを必要とする人々において便秘を防止するために用いられるのがベストである。便軟化剤には、例えば、ドクセートナトリウム(COLACE(商標)、REGUTOL(商標)、その他)、ドクセートカルシウム(SURFAK(商標)、DC SOFTGELS(商標))及びドクセートカリウム(DIALOSE(商標)、DIOCTO-K(商標))が含まれる。
【0035】
セロトニンレセプター(5−HT)アゴニスト(純粋又は混合物)
本発明は又、グレリン模倣物例えばイパモレリンとセロトニンレセプターアゴニスト例えば5−HT4アゴニストを、胃腸の病状又は疾患を治療するために同時投与するための方法をも提供する。これらのセロトニンアゴニストは、純粋であっても混合された5−HTレセプターサブタイプであってもよく、又は他の中枢神経系レセプター例えばドーパミンとの混合物であってもよい。
【0036】
5−HT4アゴニストは、結腸内容物の結腸を通過する移動をスピードアップし、腸神経刺激に対する感受性を低下させる。この発明の化合物と組み合わせて用いることのできる適当なセロトニンアゴニストには、ラウオルシン、ヨヒンビン、メトクロプラミド、プルカロプリド及びテガセロド(ZELNORM(商標))が含まれるが、これらに限られない。Spiller R.,「Serotonergic Modulating Drugs for Functional Gastrointestinal Diseases」、Br J Clin Pharmacol. 54:11-20(2002)及び米国特許第6,413,988号(参考として、本明細書中に援用する)。
【0037】
モチリンレセプターアゴニスト
本発明は、更に、グレリン模倣物例えばイパモレリンとモチリンレセプターアゴニストの、胃腸の病状又は疾患の治療ための同時投与のための方法を提供する。モチリンは、多くの種の胃腸管系で生成される22アミノ酸のペプチドである。モチリンは、イヌ、ウサギ及びヒトの胃組織並びにウサギの結腸において、平滑筋の収縮を誘導する。局所的な胃腸組織から離れて、モチリン及びそのレセプターは、他の組織において見出されている。
【0038】
モチリンに加えて、モチリンレセプターのアゴニストであって、胃腸管内容物の排出を誘出する他の物質がある。それらの薬剤の一つは、抗生物質のエリスロマイシンである。研究は、エリスロマイシンが、モチリン自身に匹敵する生物学的応答を誘出し、それ故、慢性特発性擬似腸閉塞及び胃不全麻痺などの病気の治療に有用でありうることを示した。Weber, F.等、The American Journal of Gastroenterology, 88:4, 485-90(1993)(参考として、本明細書中に援用する)。
【0039】
ドーパミンアンタゴニスト
本発明の他の面は、グレリン模倣物例えばイパモレリンとドーパミンアンタゴニストの、胃腸の病状又は疾患を治療するための同時投与のための方法を提供する。
【0040】
ドーパミンアンタゴニストは、ドーパミンレセプターに結合するが、それらを活性化せず、それにより、ドーパミン又は外因性アゴニストの作用をブロックする薬物である。このクラスの薬物には、メトクロプラミド、ドンペリドン、アミスルプリド、クレボプリド、モサプラミン、ネモナプリド、レモキシプリド、リスペリドン、スルピリド、スルトプリド及びジプラシドンが含まれるが、これらに限られない。
【0041】
コリンエステラーゼインヒビター
本発明は又、グレリン模倣物例えばイパモレリンとコリンエステラーゼインヒビターを、胃腸の病状又は疾患を治療するために同時投与するための方法をも提供する。用語「コリンエステラーゼインヒビター」は、アセチルコリンの作用を、コリンエステラーゼによるその破壊又は加水分解を阻害することによって延長させる少なくとも一つの薬剤を指す。コリンエステラーゼインヒビターは又、アセチルコリンエステラーゼインヒビターとしても知られている。コリンエステラーゼインヒビターの例には、エドロホニウム、ネオスチグミン、ネオスチグミンメチルサルフェート、ピリドスチグミン、タクリン及びフィゾスチグミン、アンベノニウムクロリド(MYTELASE(商標))、エドロホニウムクロリド(TENSILON(商標))、ネオスチグミン(PROSTIGMINE(商標))、ピリドグスチミナ(MESTINON(商標))、ジスチグミンブロミド、エプタスチグミン、ガランタミン、アクセクリジン、アセチルクロリンブロミド、アセチルクロリンクロリド、アクラトニウムナパジシレート、ベンズピリニウムブロミド、カルバコール、カルポニウムクロリド、セメカリウムブロミド、デクスパンテノール、ジイソプロピルパラオキソン、エコチオフェートクロリド、エセリジン、フルトレトニウム、メタコリンクロリド、ムスカリン、オキサプロパニウムヨージド、及びキサノメリンが含まれるが、これらに限られない。
【0042】
立体化学
ここに記載された化合物の多くは、少なくとも一つのキラル中心を有し、それ故、種々の鏡像型で存在しうる。所望であれば、キラル炭素を、アスタリスク(*)で示すことができる。この発明の式においてキラル炭素への結合が直線として描かれている場合には、キラル炭素の(R)及び(S)配置の両方が、それ故、鏡像異性体の両方及びそれらの混合物が式中に包含されるということが理解される。当分野で用いる場合、キラル炭素の絶対配置を特定することを望む場合には、キラル炭素への結合の一つをくさび(紙面の上側の原子への結合)として描くことができ、別のものを、短い平行線のシリーズ又はくさび(紙面の下側の原子への結合)として描くことができる。カーン−インゴルド−プレローグのシステムを利用して、キラル炭素に、(R)又は(S)は位置を割り当てることができる。
【0043】
本発明の化合物が2つ以上のキラル炭素を有する場合には、それは、2以上の光学異性体を有することができ、ジアステレオ異性体として存在しうる。例えば、2つのキラル炭素がある場合には、その化合物は、最大4種類の光学異性体及び2対の鏡像異性体((S,S)/(R,R)及び(R,S)/(S,R))を有することができる。これらの鏡像異性体の対(例えば、(S,S)/(R,R))は、互いの鏡像立体異性体である。鏡像でない立体異性体(例えば、(S,S)と(R,S))は、ジアステレオ異性体である。これらのジアステレオ異性体対は、当業者に公知の方法たとえばクロマトグラフィー又は結晶化によって分離することができ、各対中の個々の鏡像異性体を、上記のように分離することができる。本発明は、かかる化合物の各ジアステレオ異性体及びそれらの混合物を包含する。
【0044】
スクリーニング
グレリン模倣化合物は、例えば、ライブラリー又は分子のコレクションを適当な方法を用いてスクリーニングすることによって同定することができることは理解される。関心ある化合物の他の起源は、多くの構造的に異なる分子種を含むことのできるコンビナトリアルライブラリーである。コンビナトリアルライブラリーは、リード化合物を同定するために又は以前に同定されたリード化合物を最適化するために利用することができる。かかるライブラリーは、コンビナトリアル化学の周知の方法により製造して、適当な方法によりスクリーニングすることができる。
【0045】
胃腸の疾患を治療する方法
本発明は、胃腸系の運動を、それを必要とする患者において刺激する方法であって、該患者が胃腸系の疾患(即ち、病気、異常、病状、又は薬物若しくは手術により誘発される機能不全)を患っている当該方法を提供する。この方法は、治療上有効な量のグレリン模倣化合物又は製薬上許容しうるその塩、水和物若しくは溶媒和物を、それを必要とする患者に投与することを含む。このグレリン模倣物は、式Iにより表されるイパモレリン、又は製薬上許容しうるその塩、水和物若しくは溶媒和物である。
【0046】
ここで用いる場合、用語「胃腸の疾患」は、障害のある胃腸機能を生じる任意の病気、異常、病状、又は機能不全を指す。例えば、この胃腸の疾患は、オピオイドに誘発される胃腸の機能不全、例えばモルヒネにより誘発される便秘、術後イレウス、又は胃不全麻痺であってよい。
【0047】
便秘症
他の面において、この発明は、治療上有効な量のグレリン模倣物例えばイパモレリンを投与することにより、便秘症を治療する方法を提供する。便秘症は、不快な又は頻繁な結腸の運動を有する状態である。便秘症の人は、硬い便を生じて、排便が困難でありうる。その人は又、直腸が完全に空になっていないかのように感じうる。急性の便秘症は、突然顕著に始まる。他方、慢性の便秘症は、潜行的に始まって、数カ月又は数年間続きうる。
【0048】
この発明の便秘症を治療する方法は、更に、グレリン模倣物例えばイパモレリンを治療上有効な量の緩下剤と同時投与することを含むことができる。適当な緩下剤には、膨脹性緩下剤、潤滑性緩下剤、便軟化剤、又はこれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限られない。
【0049】
オピオイド誘発性の便秘症
この発明は、オピオイドにより誘発される便秘症を、治療上有効な量のグレリン模倣物例えばイパモレリンを投与することによって治療する方法を提供する。慢性痛を軽減するためのオピオイド鎮痛剤の使用は、中枢神経系の標的外の臓器に効果を引き起こしうる。例えば、オピオイドの作用は、胃内容物の排出を遅くして結腸の運動を抑制することができる。糞便が腸内に長時間あることは、糞便内容物からの過度の水分及びナトリウムの吸収を生じ、これは、一層硬く、一層乾燥した便及び便秘症を生じる。この影響は、鎮痛剤を使用している個人の約90%を悩ませている。オピオイド薬物療法を受けている慢性痛を有する患者にとって、その結果生じる便秘症は、投与量を制限させる副作用でありうる。加えて、術後痛の管理のために用いられる鎮痛剤は、オピオイド誘発性便秘症を引き起こしうる。適当なオピオイドには、モルヒネ、コデイン、オキシコドン、ヒドロモルフォン、ヒドロコドン、メタドン、フェンタニル、及び抗炎症剤例えばアセトアミノフェン又はアスピリン又はこれらの任意の組合せとの組合せが含まれるが、これらに限られない。
【0050】
オピオイドに誘発される便秘症の治療方法は、更に、グレリン模倣化合物例えばイパモレリンを治療上有効な量の末梢作用性オピオイドアンタゴニスト、緩下剤又はこれらの任意の組合せと同時投与することを含むことができる。適当な末梢作用性オピオイドアンタゴニストには、メチルナルトレキソン、ナルトレキソン、ナルメフェン、ナロキソン及びアルビモパン又はこれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限られない。適当な緩下剤には、膨脹性緩下剤、潤滑性緩下剤、及び便軟化剤、又はこれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限られない。
【0051】
術後イレウス
本発明は、術後イレウスを、治療上有効な量のグレリン模倣物例えばイパモレリンを投与することによって治療する方法を提供する。胃腸(GI)管の運動が、手術後に一時的に機能低下することは、十分に、立証されている。腹部の手術が胃腸の運動に対して有する影響は、一般に、「術後イレウス」と呼ばれており、これは、消化管の正常な強調した運動の混乱を示す用語であり、腸内容物の蠕動運動が機能不全となる。イレウスは又、結腸の機能的、非機械的障害としても定義されている。用語「術後イレウス」は、正常な胃及び腸からの内容物の排出の遅延を指す。
【0052】
術後イレウスの治療方法は、更に、グレリン模倣物例えばイパモレリンを治療上有効な量のドーパミンアンタゴニストと同時投与することを含むことができる。適当なドーパミンアンタゴニストには、メトクロプラミド、ドンペリドン、アミスルプリド、クレボプリド、モサプラミン、ネモナプリド、レモキシプリド、リスペリドン、スルピリド、スルトプリド及びジプラシドン、又はこれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限られない。
【0053】
過敏性大腸症候群
本発明は、過敏性大腸症候群を、治療上有効な量のグレリン模倣物例えばイパモレリンを投与することによって治療する方法を提供する。過敏性大腸症候群(IBS)は、全胃腸管の運動に影響を与える機能障害であり、腹痛、便秘症、及び/又は下痢を生じうる。IBSにおける障害された消化管の運動は、炎症又は腫瘍などの物理的構造の変化を伴わない。IBSの症状は、腸の任意の部分における異常な筋肉収縮に関係すると考えられる。
【0054】
この症候群において、胃腸管は、胃腸刺激に対して特に敏感である。ストレス、ダイエット、薬物、ホルモン、又は軽微な刺激が、胃腸管の異常な収縮を引き起こしうる。種々の型のIBSがある:便秘優勢のIBS、下痢優勢のIBS及び便秘優勢と便秘優勢が交互に起きるIBS。
【0055】
IBSを治療する方法は、グレリン模倣化合物例えばイパモレリンを治療上有効な量のH2レセプターアンタゴニスト;セロトニン5−HTアゴニスト;緩下剤;又はこれらの任意の組合せと同時投与することを含むことができる。
【0056】
適当なH2レセプターアンタゴニストには、ニザチジン、ラニチジン、ファモチジン、及びシメチジン、又はこれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限られない。適当な中枢神経系レセプターアゴニストには、ラウオルシン、ヨヒンビン、メトクロプラミド、テガセロド、又はこれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限られない。適当な緩下剤には、膨脹性緩下剤、潤滑緩下剤、便軟化剤、又はこれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限られない。
【0057】
胃食道逆流疾患
この発明は、更に、胃食道逆流疾患を、治療上有効な量のグレリン模倣物例えばイパモレリンを投与することによって治療する方法を提供する。胃食道逆流疾患(GERD)は、胃の内容物(例えば、胆汁酸塩)が食道に戻って、胃内容物の胃から下部食道への慢性的な逆流を引き起こす状態である。一般に、胸やけとして知られるGERDは、食道の刺激及び炎症を引き起こす。
【0058】
GERDの人々は、食道括約筋(胃内容物が食道に戻るのを防止するための、食道の下端に位置する環状の筋肉)が、その防御的任務を行なうことができない。人が飲食するときのみ開く代わりに、それは、弛緩して消化液が食道に逆流して食道の内層を刺激するのを許す。
【0059】
2つの型のGERD、直立性又は日中性GERD及び仰臥性又は夜間性GERDが同定されている。夜間性逆流症状の発現は、低頻度であるが、酸洗浄(clearance)は、一層長時間である。夜間性逆流は、GERDの合併症例えば食道糜爛、潰瘍及び呼吸症状と結合しうる。現在、1700万人の米国人が、胸やけ及びGERDの他の症状に苦しんでいると見積もられている。
【0060】
GERDを治療する方法は、グレリン模倣化合物例えばイパモレリンを治療上有効な量のH2レセプターアンタゴニスト;制酸剤;プロトンポンプインヒビター;又はこれらの任意の組合せと同時投与することを含む。
【0061】
適当なH2レセプターアンタゴニストには、ニザチジン、ラニチジン、ファモチジン、及びシメチジン、又はこれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限られない。適当な制酸剤には、水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウム及びこれらの組合せが含まれるが、これらに限られない。適当なプロトンポンプインヒビターには、エソメプラゾール(NEXIUM(商標))、オメプラゾール、ランソプラゾール、パントプラゾール、又はこれらの組合せが含まれるが、これらに限られない。
【0062】
胃不全麻痺
本発明は、胃不全麻痺例えば糖尿病性又は特発性の胃不全麻痺を、治療上有効な量のグレリン模倣物例えばイパモレリンを投与することによって治療する方法を提供する。胃不全麻痺(遅い胃内容物の排出とも呼ばれる)は、胃がその内容物を排出するのに余りに長時間を要する異常である。それは、しばしば、1型糖尿病又は2型糖尿病の人々に生じる。胃不全麻痺は、胃への神経が損傷を受け又は作用停止した場合に起こりうる。迷走神経は、消化管を通る食物の動きを制御する。もし迷走神経が損傷を受けると、胃及び腸の筋肉は、正常に働かず、食物の動きは、遅くなるか停止する。糖尿病は、もし血中グルコースレベルが長時間にわたって高く維持されるならば、迷走神経に損傷を与えうる。高い血中グルコースは、神経に化学的変化を引き起こして、神経に酸素と栄養素を運ぶ血管に損傷を与える。
【0063】
胃不全麻痺を治療する方法は、グレリン模倣化合物例えばイパモレリンを、治療上有効な量のドーパミンアンタゴニストと同時投与することを含むことができる。適当なドーパミンアンタゴニストには、メトクロプラミド、ドンペリドン、アミスルプリド、クレボプリド、モサプラミン、ネモナプリド、レモキシプリド、リスペリドン、スルピリド、スルトプリド及びジプラシドン、又はこれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限られない。
【0064】
この発明は、更に、胃腸系の運動を刺激する(即ち、誘導する)のに有用な医薬組成物に言及する。この医薬組成物は、グレリン模倣物及び随意の製薬上許容しうるキャリアーを含む。この医薬組成物は、第二の量の適当な治療剤を含むことができる。適当な治療剤は、治療される患者の病状に基いて、決定することができる。
【0065】
例えば、この医薬組成物は、第一の量のグレリン模倣物例えばイパモレリン、及び第二の量の緩下剤(便秘を治療する場合)を含むことができる。本発明の医薬組成物は、適宜、製薬上許容しうるキャリアーを含むことができる。このグレリン模倣物と緩下剤は、各々、この医薬組成物中に、治療上有効な量で存在することができる。他の面において、該第一の及び第二の量は、一緒に、治療上有効な量を構成することができる。
【0066】
この医薬組成物は、第一の量のグレリン模倣物及び第二の量のH2レセプターアンタゴニストを含むことができる。本発明の医薬組成物は、適宜、製薬上許容しうるキャリアーを含むことができる。このグレリン模倣物及びH2レセプターアンタゴニストは、各々、この医薬組成物中に、治療上有効な量で存在することができる。他の面において、該第一の及び第二の量は、一緒に、治療上有効な量を構成することができる。
【0067】
この医薬組成物は、第一の量のグレリン模倣物及び第二の量のセロトニンレセプターアゴニストを含むことができる。この医薬組成物は、適宜、製薬上許容しうるキャリアーを含むことができる。このグレリン模倣物とセロトニンレセプターアゴニストは、各々、この医薬組成物中に、治療上有効な量で存在することができる。この第一の及び第二の量は、一緒に、治療上有効な量を構成することができる。
【0068】
この医薬組成物は、第一の量のグレリン模倣物例えばイパモレリン及び第二の量の制酸剤を含むことができる。この医薬組成物は、適宜、製薬上許容しうるキャリアーを含むことができる。このグレリン模倣物と制酸剤は、各々、この医薬組成物中に、治療上有効な量で存在することができる。他の面において、該第一及び第二の量は、一緒に、治療上有効な量を構成することができる。
【0069】
この医薬組成物は、第一の量のグレリン模倣物及び第二の量のオピオイドアンタゴニストを含むことができる。この医薬組成物は、適宜、製薬上許容しうるキャリアーを含むことができる。このグレリン模倣物及びオピオイドアンタゴニストは、各々、この医薬組成物中に、治療上有効な量で存在することができる。第一及び第二の量は、一緒に、治療上有効な量を構成することができる。
【0070】
この医薬組成物は、第一の量のグレリン模倣物及び第二の量のプロトンポンプインヒビターを含むことができる。この医薬組成物は、適宜、製薬上許容しうるキャリアーを含むことができる。このグレリン模倣物及びプロトンポンプインヒビターは、各々、この医薬組成物中で、治療上有効な量で存在することができる。第一の量及び第二の量は、一緒に治療上有効な量を構成することができる。
【0071】
この医薬組成物は、第一の量のグレリン模倣物及び第二の量のモチリンレセプターアゴニストを含むことができる。この医薬組成物は、適宜、製薬上許容しうるキャリアーを含むことができる。このグレリン模倣物及びモチリンレセプターアゴニストは、各々、この医薬組成物中に、治療上有効な量で存在することができる。第一及び第二の量は、一緒に、治療上有効な量を構成することができる。
【0072】
この医薬組成物は、第一の量のグレリン模倣物及び第二の量のドーパミンアンタゴニストを含むことができる。この医薬は、適宜、製薬上許容しうるキャリアーを含むことができる。このグレリン模倣物及びドーパミンアンタゴニストは、各々、この医薬組成物中に、治療上有効な量で存在することができる。第一及び第二の量は、一緒に、治療上有効な量を構成することができる。
【0073】
この医薬組成物は、第一の量のグレリン模倣物及び第二の量のコリンエステラーゼインヒビターを含むことができる。この医薬組成物は、適宜、製薬上許容しうるキャリアーを含むことができる。このグレリン模倣物及びコリンエステラーゼインヒビターは、各々、この医薬組成物中に、治療上有効な量で存在することができる。第一の及び第二の量は、一緒に、治療上有効な量を構成することができる。
【0074】
この医薬組成物は、第一の量のグレリン模倣物及び第二の量のソマトスタチンを含むことができる。この医薬組成物は、適宜、製薬上許容しうるキャリアーを含むことができる。このグレリン模倣物及びソマトスタチンは、各々、この医薬組成物中に、治療上有効な量で存在することができる。第一の及び第二の量は、一緒に、治療上有効な量を構成することができる。
【0075】
この発明は、更に、グレリン模倣化合物の、胃腸系の運動を刺激する(即ち、誘導する)ための医薬の製造のための利用に言及する。
【0076】
患者は、ここで用いる場合、哺乳動物などの動物を指し、霊長類(例えば、ヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ブタ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ラット、マウス又は他のウシ属、ヒツジ様動物、ウマ科、イヌ科、ネコ科、ゲッ歯類又はネズミ科の動物種が含まれるが、これらに限られない。好適具体例において、哺乳動物は、ヒトである。
【0077】
ここで用いる場合、治療すること及び治療は、胃腸系の運動を刺激する(例えば、誘導する)ことを指す。
【0078】
ここで用いる場合、治療上有効な量は、所望の生物学的応答を誘出するのに十分な量を指す。この所望の生物学的応答は、胃腸系の運動を刺激する(例えば、誘導する)ことである。所望の生物学的応答は、オピオイドにより誘発された便秘症を治療するために、それを必要とする患者において、胃腸系の運動を刺激する(例えば、誘導する)ことである。この患者は、術後痛の管理のため又は慢性痛管理のためにオピオイドを使用している者であってよい。
【0079】
所望の生物学的応答は、胃不全麻痺を治療するために、それを必要とする患者において胃腸系の運動を刺激する(例えば、誘導する)ことである。
【0080】
所望の生物学的応答は、胃食道逆流疾患を治療するために、それを必要とする患者において、胃腸系の運動を刺激する(例えば、誘導する)ことである。この胃食道逆流疾患は、夜間の胃食道逆流疾患である。
【0081】
所望の生物学的応答は、過敏性大腸症候群を治療するために、それを必要とする患者において、胃腸系の運動を刺激する(例えば、誘導する)ことである。この過敏性大腸症候群は、便秘優勢の過敏性大腸症候群である。更に別の具体例において、過敏性大腸症候群は、便秘/下痢過敏性大腸症候群である。
【0082】
所望の生物学的応答は、便秘症を治療するために、それを必要とする患者において、胃腸系の運動を刺激する(例えば、誘導する)ことである。
【0083】
所望の生物学的応答は、術後イレウスを治療するために、それを必要とする患者において、胃腸系の運動を刺激する(例えば、誘導する)ことである。
【0084】
医薬組成物
本発明における使用に適した医薬組成物は、意図する目的を達成するために治療上有効な量で活性成分が含有されている組成物を包含する。各投薬形態の個々の投与量中に含まれる活性成分の単位含有量は、それ自身で有効量を構成する必要はないということは、必要な有効量は、複数の投薬単位(カプセル、若しくは錠剤若しくはバイアル又はこれらの組合せ)の投与により達成することができることから、認められよう。加えて、幾つかの投薬レベルにおいては、有効量が、一週間、一ヶ月、3ヶ月、又は6ヶ月の使用後まで何らの測定可能な効果を示しえないということは理解される。有効量の決定は、十分、当業者の能力内にあり、特に、ここに与えた詳細な開示に照らして当業者の能力内にある。任意特定のユーザーについての特定の投与量レベルは、年齢、身体的活動レベル、一般的健康状態、及び胃腸疾患の重篤さを含む様々な因子に依存するであろう。
【0085】
治療上有効な投与量は又、所望の効果を、望ましくない副作用又は許容できない副作用を生じることなく達成するのに必要な量をも指す。この発明のグレリン模倣物例えばイパモレリンの毒性と治療的効力を、細胞培養物又は実験動物における標準的な製薬学的手順によって測定することができる。標準的方法を用いて、試験集団の約50%において効力を示す投薬量、ED50を測定することができる。同様に、集団の50%に望ましくない副作用を生じる投薬量、SD50を測定することができる。副作用と治療効果の間の投与量比は、治療インデックスとして表すことができ、それは、SD50/ED50間の比として表されうる。高い治療インデックスを有するグレリン模倣物(例えば、イパモレリン)即ち低投薬量で有効であり望ましくない副作用を有しない(たとえ有するにしても、非常に高い投与量の場合にだけ有する)ものは、好適である。好適な治療インデックスは、約3より大きく、一層好ましくは、治療インデックスは、10より大きく、最も好ましくは、治療インデックスは、25より大きい(例えば、50より大きい)。その上更に、如何なる投薬レベルにおいても副作用を有しないグレリン模倣物は、一層好適である。最後に、低投薬量で有効であり、如何なる投薬レベルでも副作用を有しないグレリン模倣物が、最も好適である。厳密な配合、投与経路及び投薬量は、所望の効果によって選択することができ、当業者によりなされうる。
【0086】
ある具体例において、これらのグレリン模倣物は、製薬上許容しうる塩として配合される。ここで用いる場合、用語製薬上許容しうる塩は、製薬上許容しうる無毒性の酸(無機酸、有機酸を含む)から製造される、投与されるべき化合物の塩、その溶媒和物、水和物又はクラスレートを指す。かかる無機酸の例は、塩化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸及びリン酸である。適当な有機酸は、例えば、脂肪酸、芳香族酸、カルボン酸及び有機酸のクラスのスルホン酸から選択することができ、その例は、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、樟脳スルホン酸、クエン酸、フマル酸、グルコン酸、イセチオン酸、乳酸、リンゴ酸、粘液酸、酒石酸、パラ−トルエンスルホン酸、グリコール酸、グルクロン酸、マレイン酸、フロ酸、グルタミン酸、安息香酸、アントラニル酸、サリチル酸、フェニル酢酸、マンデル酸、エムボン酸(パモ酸)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、パントテン酸、ベンゼンスルホン酸(ベシル酸塩)、ステアリン酸、スルファニル酸、アルギン酸、ガラクツロン酸などである。
【0087】
この発明のグレリン模倣物は、それらの水和物例えば半水和物、一水和物、二水和物、三水和物、四水和物など及び溶媒和物から製造することができる。
【0088】
グレリン模倣物例えばイパモレリン及びその誘導体並びに任意の同時投与される薬剤を、投与に適当でありうる任意の適当な医薬組成物中に組み込むことができる。かかる組成物は、典型的には、活性な薬剤(例えば、この発明のグレリン模倣物)及び製薬上許容しうるキャリアーを含む。
【0089】
ここで用いる場合、「製薬上許容しうるキャリアー」は、任意のすべての溶媒、分散媒、被覆剤、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤など(医薬投与と適合性のもの)を包含することを意図している。かかる媒質及び薬剤の、医薬的に活性な物質のための利用は、当分野で周知である。如何なる慣用の媒質又は薬剤であっても活性化合物と不適合性である場合を除いて、それらのこれらの組成物における使用は企図される。補助的活性化合物も又、この発明の医薬組成物に組み込むことができる。この医薬組成物の成分の何れに対しても、この発明の因子の溶解度又は浄化値に影響を与えるための改変を行なうことができる。ペプチド分子は又、酵素分解に対する抵抗性を増すために、D−アミノ酸を用いて合成することもできる。幾つかの場合には、この組成物は、一種以上の可溶化剤、防腐剤、及び透過性増進剤と同時投与することができる。
【0090】
グレリン模倣物の投与
治療上有効な量又は投与量は、患者の年齢、性別、及び体重、並びに患者の現時点での健康状態に依存する。当業者は、適当な投薬量を、所望の生物学的応答を達成するために、これらの及び他の因子によって決定することができる。
【0091】
この発明のグレリン模倣物の一日当りの適当な投与量は、約1ng〜約10,000mg、約5ng〜約9,500mg、約10ng〜約9,000mg、約20ng〜約8,500mg、約30ng〜約7,500mg、約40ng〜約7,000mg、約50ng〜約6,500mg、約100ng〜約6,000mg、約200ng〜約5,500mg、約300ng〜約5,000mg、約400ng〜約4,500mg、約500ng〜約4,000mg、約1μg〜約3,500mg、約5μg〜約3,000mg、約10μg〜約2,600mg、約20μg〜約2,575mg、約30μg〜約2,550mg、約40μg〜約2,500mg、約50μg〜約2,475mg、約100μg〜約2,450mg、約200μg〜約2,425mg、約300μg〜約2,000、約400μg〜約1,175mg、約500μg〜約1,150mg、約0.5mg〜約1,125mg、約1mg〜約1,100mg、約1.25mg〜約1,075mg、約1.5mg〜約1,050mg、約2.0mg〜約1,025mg、約2.5mg〜約1,000mg、約3.0mg〜約975mg、約3.5mg〜約950mg、約4.0mg〜約925mg、約4.5mg〜約900mg、約5mg〜約875mg、約10mg〜約850mg、約20mg〜約825mg、約30mg〜約800mg、約40mg〜約775mg、約50mg〜約750mg、約100mg〜約725mg、約200mg〜約700mg、約300mg〜約675mg、約400mg〜約650mg、約500mg、又は約525mg〜約625mgの範囲内であってよい。
【0092】
この発明のグレリン模倣物の、他の適当な一日当りの投与量は、約1ng、約5ng、約10ng、約20ng、約30ng、約40ng、約50ng、約100ng、約200ng、約300ng、約400ng、約500ng、約1μg、約5μg、約10μg、約20μg、約30μg、約40μg、約50μg、約100μg、約200μg、約300μg、約400μg、約500μg(0.5mg)、約1mg、約1.25mg、約1.5mg、約2.0mg、約2.5mg、約3.0mg、約3.5mg、約4.0mg、約4.5mg、約5mg、約10mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約625mg、約650mg、約675mg、約700mg、約725mg、約750mg、約775mg、約800mg、約825mg、約850mg、約875mg、約900mg、約925mg、約950mg、約975mg、約1000mg、約1025mg、約1050mg、約1075mg、約1100mg、約1125mg、約1150mg、約1175mg、約1200mg、約1225mg、約1250mg、約1275mg、約1300mg、約1325mg、約1350mg、約1375mg、約1400mg、約1425mg、約1450mg、約1475mg、約1500mg、約1525mg、約1550mg、約1575mg、約1600mg、約1625mg、約1650mg、約1675mg、約1700mg、約1725mg、約1750mg、約1775mg、約1800mg、約1825mg、約1850mg、約1875mg、約1900mg、約1925mg、約1950mg、約1975mg、約2000mg、約2025mg、約2050mg、約2075mg、約2100mg、約2125mg、約2150mg、約2175mg、約2200mg、約2225mg、約2250mg、約2275mg、約2300mg、約2325mg、約2350mg、約2375mg、約2400mg、約2425mg、約2450mg、約2475mg、約2500mg、約2525mg、約2550mg、約2575mg、約2600mg、約3,000mg、約3,500mg、約4,000mg、約4,500mg、約5,000mg、約5,500mg、約6,000mg、約6,500mg、約7,000mg、約7,500mg、約8,000mg、約8,500mg、約9,000mg、又は約9,500mg以上の投与量を含む。
【0093】
グレリン模倣物の適当な投与量は、一日当たり約0.20mg〜約4000mgの範囲内であってよく、例えば、約1mg〜約4000mg、例えば、約5mg〜約3000mg、例えば、約10mg〜約2400mgであってよい。この投与量は、単回投薬にて投与することもできるし、複数回の投薬(例えば、一日当たり1〜4回)にて投与することもできる。複数回の投薬を用いる場合には、各投薬量は、同じであっても異なってもよい。
【0094】
追加的治療剤例えば緩下剤のための適当な投与量は、グレリン模倣物について上記したものと同じ範囲であってよい。グレリン模倣物及び追加の薬剤の投与量は、同じであっても異なってもよい。追加的薬剤の適当な投与量は、文献中に見出すことができる。
【0095】
この発明の方法における使用のための化合物は、任意の適当な経路例えば経口投与又は非経口投与{例えば、経皮投与、経粘膜投与(例えば、舌下、舌側、(経)頬投与)、膣投与(例えば、経膣的及び膣周囲投与)、鼻(腔内)投与及び直腸(内)投与、皮下投与、筋肉内投与、皮内投与、動脈内投与、静脈内投与、吸入及び局所的投与}による投与のために配合することができる。
【0096】
好適具体例において、この発明の化合物は、静脈内送達用に配合される。他の好適具体例において、この発明の化合物は、経口送達用に配合される。適当な組成物及び投薬形態には、錠剤、カプセル、キャプレッツ、丸薬、ゲルキャップ、トローチ、分散液、懸濁液、溶液、シロップ、顆粒、ビーズ、経皮パッチ、ゲル、粉末、ペレット、マグマ剤、ロゼンジ、クリーム、ペースト、膏剤、ローション、ディスク、坐薬、液体スプレー、乾燥粉末又はエアゾル化配合物が含まれる。
【0097】
これらの化合物が経口投与されるということは好適である。適当な経口投薬形態には、例えば、慣用の手段により、製薬上許容しうる賦形剤例えば結合剤(例えば、ポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、ラクトース、微晶質セルロース又はリン酸カルシウム);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク又はシリカ);崩壊剤(例えば、ナトリウム澱粉グリコレート);又は湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)を用いて製造された錠剤、カプセル又はキャプレッツが含まれる。所望であれば、適当な方法を用いて、これらの錠剤を、例えば、飲み込みやすくするために又は活性成分の遅延された放出を与えるために被覆することができる。経口投与のための液体製剤は、溶液、シロップ又は懸濁液の形態であってよい。液体製剤(例えば、溶液、懸濁液及びシロップ)は又、経口投与に適しており、製薬上許容しうる添加剤例えば懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、メチルセルロース又は水素化した食用脂肪);乳化剤(例えば、レシチン又はアラビアゴム);非水性ビヒクル(例えば、アーモンド油、油性エステル又はエチルアルコール);及び防腐剤(例えば、メチル又はプロピルp−ヒドロキシベンゾエート又はソルビン酸)と共に、慣用の手段により製造することができる。
【0098】
好ましくは、この発明のグレリン模倣物を含む医薬組成物は、胃腸疾患(例えば、胃腸の運動を損なう胃腸管の異常、病気、病状又は損傷)を、胃腸の運動を刺激することにより治療するために用いられる。厳密な配合、投与経路及び投薬量は、所望の効果によって選択することができ、当業者によって為されうる。
【0099】
投薬の間隔は、実験的試験により決定することができる。この発明の一種以上のグレリン模倣物は、正常より10%、約20%、約50%上回るか又は下回る胃腸の運動を維持する養生法を用いて投与することができよう。
【0100】
他の適当な投与方法は、この発明のグレリン模倣物を、移植物により又はグレリン模倣物を発現することのできる細胞系統を、該移植物又は細胞系統がグレリン模倣物を胃腸系の細胞に与えることができるように与えることである。
【0101】
この発明の医薬組成物は、その意図した投与経路と適合するように配合することができる。
【0102】
経口投与は、この発明の医薬組成物の、口を介する摂取、又は食道を含む胃腸系の他の任意の部分を介する摂取による投与又は坐薬投与による投与を指す。非経口投与は、組成物例えばグレリン模倣物を含む組成物の、胃腸管を介した経路(例えば、経口送達)以外の経路による送達を指す。特に、非経口投与は、腸脈内注射、皮下注射、筋肉内注射又は髄内(即ち、鞘内)注射であってよい。非経口投与用製剤は、ガラス又はプラスチック製のアンプル、ディスポーサブル注射器又は多数の投与用小瓶に封入することができる。局所投与は、医薬の、皮膚又は粘膜(鼻、肺及び口(この場合は、経口投与の形態でもありうる)の表面膜を含む)の外表面への適用を指し、それで、薬剤は、皮膚又は粘膜の外表面を横切って、下にある組織に入る。医薬の局所投与は、その薬剤の皮膚及び周囲組織への限られた分布を生じうるか、又は、その薬剤が血流によって治療領域から移動される場合には、その薬剤の全身的分布を生じうる。
【0103】
この発明により企図される局所投与の一形態において、グレリン模倣物は、経皮送達により送達される。経皮送達は、薬剤の、皮膚のバリヤーを横切る拡散を指す。無傷の皮膚を通過する吸収は、活性な薬剤を皮膚への適用の前に油性のビヒクル中に入れること(塗油として知られた方法)及び極微針の使用により増進されうる。受動的局所投与は、活性な薬剤を、緩和剤又は浸透増進剤と共に、直接、治療部位に適用することからなりうる。皮膚を通過する送達を増進させる他の方法は、医薬の投薬量を増すことである。局所投与のための投薬量は、他の経路により投与される投薬量の10倍、100倍又は1000倍まで増大させることができる。
【0104】
経皮送達のための浸透剤は、一般に、当分野で公知であり、例えば、経粘膜投与のために、洗剤、胆汁酸塩、及びフシジン酸誘導体が含まれる。経粘膜投与は、鼻スプレー又は坐薬の利用により達成することができる。吸入による投与のためには、この発明のグレリン模倣物は、適当な噴射剤例えば二酸化炭素などのガスを含んだ加圧容器又波ディスペンサーからのエアゾルスプレーの形態で、又はネブライザーにて送達することができる。経皮投与のためには、この発明のグレリン模倣物を、当分野で一般に知られているように、軟膏、膏薬、ゲル、又はクリーム中に配合することができる。
【0105】
加えて、この発明のグレリン模倣物は、鼻投与又は肺投与法により送達することができる。エーロゾル化した医薬の肺送達は、多くの参考文献に記載されており、それは、Gansslen(1925)Klin. Wochenschr. 4:71に始まり、Laube等、(1993)JAMA 269:2106-21-9; Elliott等、(1987)Aust. Paediatr. J. 23:293-297; Wigley等、(1971)Diabetes 20:552-556. Corthorpe等、(1992)Pharm Res 9:764-768; Govinda(1959)Indian J. Physiol. Pharmacol. 3:161-167; Hastings等、(1992)J.Appl.Physiol. 73:1310-1316; Liu等、(1993)JAMA 269:2106-2109; Nagano等、(1985)Jikeikai Med. J. 32:503-506; Sakr(1992)Int. J. Phar. 86:1-7;及びYoshida等、(1987)Clin.Res. 35:160-166(これらの各々を、参考として、本明細書中に援用する)を含む。乾燥粉末医薬の肺送達は、米国特許第5,254,330号に記載されている。計量された投与量の吸入器は、Lee及びSciara(1976)J. Pharm. Sci. 65:567-572に記載されている。組換えインスリンの気管支内投与は、Schlutiter等(Abstract)(1984)Diabetes 33:75A 及び Kohler等、(1987)Atemw. Lungenkrkr. 13:230-232に簡単に記載されている。様々なポリペプチドの鼻内及び肺送達が、米国特許第5,011,678号及びNagai等、(1984)J. Contr. Rel. 1:15-22に記載されている。
【0106】
注射用途に適した医薬組成物は、当分野で公知であり、例えば、無菌の水溶液(水溶性の場合)又は懸濁液及び、無菌の注射溶液又は分散液を即座に調製するための無菌の粉末が含まれる。この発明のグレリン模倣物の静脈内投与に対して、適当なキャリアーには、例えば、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF, ニュージャージー、Parsippany)又はリン酸緩衝塩溶液(PBS)が含まれる。
【0107】
生理的に許容しうるキャリアーは、医薬(即ち、局所、経口及び非経口)用途に適当であるとしてこの分野で知られている任意のキャリアーであってよい。適当な医薬用キャリアー及び配合物は、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences(19版)(Genarro等、(1995)Mack Publishing Co., ペンシルベニア、Easton)に記載されている。
【0108】
経口投与溶組成物は、一般に、生理的に許容しうる不活性な希釈剤又は食用キャリアーを含む。それらは、ゼラチンカプセルに封入することができ又は錠剤に圧縮することができる。経口治療剤投与のために、この発明のグレリン模倣物は、生理的賦形剤に組み込むことができ、錠剤、トローチ又はカプセルの形態で用いることができる。
【0109】
注射可能な薬物の送達を変える幾つかの系は、治療剤の薬物速度論的特性を変えるために利用することができる(例えば、K. Reddy, 2000, Annals of Pharmacotherapy 34:915-923参照)。薬物送達を、配合の変化(例えば、連続的放出製品、リポソーム)又は薬物分子(例えば、PEG付加(pegylation))への付加によって改変することができる。これらの薬物送達機構の潜在的利点は、増大又は延長された薬理学的活性持続期間、有害な影響の減少、及び増大した患者の従順さ及び生活の質を包含する。注射可能な連続的放出系は、薬物を、制御された、予め決められた様式で送達し、血漿中の薬物濃度の大きな変動を回避することが重要である場合に特に適している。薬物をリポソーム内に封入することは、延長された半減期及び、増大した毛細血管透過性を有する組織(例えば、腫瘍)への増大した分布を生じうる。PEG付加は、この発明のグレリン模倣物と関連してありうる制限(例えば、安定性、半減期、免疫原性)を最少化するために治療用ペプチド又はタンパク質を改変する方法を与える。
【0110】
この発明により、少なくとも一種のグレリン模倣物は、多量体の形成を可能にするために、脂質又は脂質ビヒクル(例えば、ミセル、リポソーム、ミクロスフェア、プロトセル、プロトビオント、リポソーム、コアセルベートなど)と配合することができる。同様に、グレリン模倣物は、PEG付加、架橋、ジスルフィド結合形成、共有架橋結合の形成、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー形成、又は他の確立された方法を利用して、多量体化することができる。これらの多量体化したグレリン模倣物は、医薬組成物中に配合することができ、それらの効果を増大又は増進するために利用することができる。
【0111】
これらのグレリン模倣物は又、直腸送達のために、坐薬(例えば、慣用の坐薬基剤例えばカカオバター及び他のグリセリドを使用)又は保持浣腸の形態で製造することもできる。
【0112】
当業者は、この発明のグレリン模倣物を、局所的な胃腸組織例えば胃、食道、小腸又は結腸(但し、これらに限られない)に一層特異的に送達するために利用することのできる様々な技術が公知であることを認めるだろう。この送達方法は、関心ある組織、送達すべき化合物の性質、及び治療の持続期間などの因子に依存するであろう。
【0113】
一面において、この発明のグレリン模倣物は、グレリン模倣物を急速な身体からの排除に対して防護するキャリアー例えば制御された放出のための配合物(移植物及びマイクロカプセル化送達システムを含む)と共に製造される。これらは、当業者に公知の方法例えば米国特許第4,522,811号に記載された方法に従って製造することができる。
【0114】
このように、本発明の詳細な好適具体例につき記載してきたが、上の段落により規定された発明は、多くの明白な同等物が、本発明の精神又は範囲から離れるることなく可能であるのであるから、上記した特定のものに限定すべきではないということは理解されるべきである。
【実施例】
【0115】
この発明は、今から、下記の非制限的実施例により、更に説明される。
【0116】
イパモレリンの胃運動的効力を、術後イレウスのラットモデルにおいて評価した。これらの研究において、イパモレリンは、腹部手術後の雄ラットに、経口投与され(10mg/kg及び100mg/kg)又は0.01mg/kg〜1.0mg/kgの投与量範囲にわたって単回静脈注射にて投与された。イパモレリンの、胃内容物の排出に対する効果を、ある投与量のフェノールレッドを経口胃管栄養法により投与した直後にイパモレリンを投与することにより、対照用動物と比較して測定した。
【0117】
実施例1.術後イレウスのラットモデルにおけるイパモレリン(10又は100mg/kg)の胃運動的効力
この研究は、イパモレリンの、術後イレウスのラットモデルにおける、10又は100mg/kgの投与量での、単回経口投与後の、潜在的な胃運動的効力を評価した。
【0118】
【表1】
【0119】
方法及び実験デザイン
雄のSprague-Dawley CD(商標)(Crl: CD(商標)(SD))ラット(Rattus norvegicus)を、Charles River Canada Inc.(カナダ国、ケベック、St. Constant在)から得た。これらの動物を実験室の環境に慣らすために、それらの動物を得てから処理の開始まで、9日間を置いた。処理の開始時に、動物は、約7週齢であり、体重は、230〜254gの範囲であった。
【0120】
動物は、個別に、自動給水バルブを備えたステンレス鋼製のワイヤメッシュ底のケージに収容された。各ケージは、プロジェクト、群、動物の数及び性別を示すカラーコード化ケージカードで明確に標識された。各動物は、固有に識別された。動物室の環境及び日長について標的とされた条件は、次のとおりであった:温度22±3℃;湿度50±20%;光周期は12時間の照明と12時間の暗黒。
【0121】
すべての動物は、市販の標準的な認可されたペレット状研究室用食餌(PMI Certified Rodent Chow 5002: PMI Nutrition International Inc.)を自由に摂ることができた(示した手順中を除く)。この食餌は、製造業者によって、汚染物質(例えば、重金属、アフラトキシン、有機リン酸塩、塩素化炭化水素及びPCB)の最大許容濃度について、制御され、日常的に分析されたものであった。軟水化され、逆浸透により精製されて紫外線に曝露された市営水道水が、無制限に与えられた(示した手順中を除く)。食餌材料中には、この研究の結果に影響を与えうる公知の汚染物質は存在しなかったと考えられる。
【0122】
この研究で入手して使用したイパモレリンは、Bachem AG社(スイス国、Bubendorf在)から得た。使用したビヒクルは、注射用の0.9%塩化ナトリウム(Baxter社製)であった。胃内容物の排出レベルを評価するのに用いた胃腸マーカーは、フェノールレッド(Sigma Aldrich社製)であった。
【0123】
適当量の試験品を、注射用0.9%塩化ナトリウム(米国薬局方)に溶解させた。これらの試験品配合物を、要すれば、0.1N/1N塩化水素酸又は0.1N水酸化ナトリウムを用いて、pH7.4〜7.5に調節した。すべての投薬用配合物を、室温に維持し、遮光した。フェノールレッドを、投薬の日に、5mg/mL溶液として脱イオン水で調製して、室温に遮光して保存した。
【0124】
外科的カテーテル法
各動物には、抗生物質ベンザチンペニシリンG及びプロカインペニシリンG(0.1mL)を、外科手術の日に筋肉内注射し、手術の2日後に再び注射した。これらの動物を、イソフルランガスで麻酔してから、手術の準備(大腿部と背面の切開部位の毛剃りを含む)をした。毛剃りした領域を、クロルヘキシジングルコネート(4%)で洗い、次いで、多めのポビドンヨード(10%)を適用した。外科手術前に、及び外科手順の最後に、麻酔下で、低刺激性の眼科用潤滑剤(Tears Naturale(商標)PM)を各眼に投与した。動物を、外科手順の間中、イソフルランガス麻酔下に維持した。
【0125】
右鼠蹊領域に小さな切込みを入れ、大腿静脈を引き出した。この静脈に小さい静脈切開を行って、medical gradeのシリコーンベースのカテーテルを挿入して、そのカテーテルのチップを大静脈中に、ほぼ腎臓のレベルに置いた。このカテーテルは、適当な縫合材料を用いて適所に固定され、皮下を通り、頸のうなじの露出点まで導かれた。この大腿部を、暖かい(約37℃)0.9%塩化ナトリウム注射(米国薬局方)によって洗浄した。この大腿部を、断続的さし縫い縫合により閉じて、露出部位を、巾着縫合糸により閉じた(これは、5〜10日中に又は治癒結果によって除去された)。局所的抗生物質(ポリミキシンB、バシトラシン、ネオマイシン)を、日々、このカテーテル露出部位に最後まで及び大腿部位に必要ないと考えられるまで投与した。
【0126】
ジャケットを、この動物の上に、束縛系を維持するために置いた。0.9%塩化ナトリウム注射(米国薬局方)を予め満たしたカテーテルを、この束縛系を通して送り、ケージの外側に固定されたスイベルに結合した。スイベルの上部は、注入ポンプに接続され、すべての動物は、0.9%塩化ナトリウム注射(米国薬局方)を0.4mL/時の速度で、処理の開始まで連続的に注入された。
【0127】
術後イレウスを誘発する外科手術
すべての処理手順は、各日に処理される各群からのほぼ等しい数の動物を用いて、連続する2日にわたって繰り返された。食餌は、手術前の一晩、動物へ与えられなかった。手術の日に、動物は、イソフルランガスを用いて麻酔され、非刺激性の眼科用潤滑剤(Tears Naturale PM)を各眼に適用した。これらの動物を、全腹部領域の毛を剃ることにより、手術の準備をした。毛剃りした領域を清浄化して、適切に殺菌してから切開した。外科用メスを用いて、腹部を開いて、盲腸の場所を突き止めた。その盲腸を体外に出して約1分間処理した(即ち、両手の間で、食塩溶液をしみ込ませたガーゼ中で、穏やかにたたいた)。その後、この盲腸を、元の位置に戻し、外科手術部位を、吸収性縫合材料(断続的縫合糸)及びステープルを用いて閉じた。次いで、動物を、それらのケージへ戻して、麻酔から回復させた。
【0128】
偽の対照群(グループ1)に割り当てられた動物は、同じ処理手順を受けたが、但し、盲腸は、体外に出されてから処理を受けずに元の位置に戻された。
【0129】
投与量の投与
投薬は、連続した日々に開始し、各群からのほぼ等しい数の動物に、各日に投薬した。投薬前に、これらの動物は、水を取り上げられた。これらの試験/対照用品は、注射器と可撓性の胃管栄養法用チューブを用いる経口胃管栄養法により投与された。これらの動物は、フェノールレッドの経口胃管栄養法による投与に続いて直ちに投薬された。その投与体積は5mL/kg(イパモレリン及びフェノールレッド投与の両方について)であり、実際に投与された投与量は、各動物の直近の体重に基いた。
【0130】
胃腸の評価
モルヒネ注射の約30分後に、すべての動物は、0.4mLのフェノールレッドを経口胃管栄養法により与えられた。対照又は試験品の投与の約30分後に、これらのラットを、安楽死させた。次いで、その胃を、腹壁切開により、あらわにし、迅速に幽門と噴門で結紮して、取り出した。その胃を切り開いて、その内容物を、100mLの0.1N NaOHで抽出した。この抽出物のフェノールレッド含量を、分光器にて、558nmで分光学的にアッセイした。収集後、試料は、分析のために移動させるまで、濡れた氷上に保存した。
【0131】
結果
術後イレウス後に経口投与されたイパモレリンは、胃内容物の排出を、10及び100mg/kgで、対照用動物と比較して、それぞれ、12.4%及び41.6%加速した(但し、統計的有意を達成してはいない)。図1参照。
【0132】
結論
10又は100mg/kgの投与量で経口投与されたイパモレリンは、投与量依存的関係で、術後イレウスのラットモデルにおいて、胃内容物の排出を加速した。
【0133】
実施例2.術後イレウスのラットモデルにおける静脈内投与されたイパモレリン(0.1、0.25又は1.0mg/kg)の胃運動的効力
この研究において、イパモレリンは、留置カテーテルによるゆっくりとした静脈内ボーラス注射として投与された(凡そ100秒間で)。
【0134】
【表2】
【0135】
方法及び実験デザイン
雄のSprague-Dawley CD(商標)(Crl: CD(商標)(SD))ラット(Rattus norvegicus)を、Charles River Canada Inc.(カナダ国、ケベック、St. Constant在)から購入した。これらの動物の購入からカテーテルの外科的移植まで8日間を置き、これらの動物を、物理的及び環境的条件に順応させた。動物への投薬は、処理前の動物の適切な回復を可能にするために、カテーテルの外科的移植の約1週間後から開始した。処理の開始時に、動物は、約10〜12週齢であり、体重は、327〜397gの範囲であった。
【0136】
動物を、個別に、自動給水バルブを備えたステンレス鋼製のワイヤメッシュ底のケージに収容した。各ケージを、プロジェクト、グループ、動物の数及び性別を示すカラーコード化ケージカードを用いて、明確に標識した。各動物は、個別に識別された。動物室の環境及び日長についての標的とした条件は、次の通りであった:温度22±3℃;湿度50±20%;光周期は、12時間の照明と12時間の暗黒であった。
【0137】
すべての動物は、標準的な市販の認可されたペレット状の実験室用食餌(PMI CertifiedRodent Chow 5002: PMI Nutrition International Inc.)を自由に摂取できた。この食餌は、汚染物質(例えば、重金属、アフラトキシン、有機リン酸塩、塩素化炭化水素及びPCB)の最大許容濃度について、製造業者によって、制御され、日常的に分析された。軟水化され、逆浸透により精製され、紫外線にさらされた市営水道水を無制限に与えた(示した手順中を除く)。これらの食餌材料中には、この研究の結果に影響を与える公知の汚染物質はなかったと考えられる。
【0138】
入手されてこの研究で用いられたイパモレリンは、Bachem AGから得られた。用いたビヒクルは、注射用の0.9%塩化ナトリウム(Baxter)であった。胃からの排出のレベルを評価するために用いた胃腸マーカーは、フェノールレッド(Sigma Aldrich)であった。
【0139】
外科的カテーテル法
各動物は、抗生物質ベンザチンペニシリンG及びプロカインペニシリンG(0.1mL)の筋肉内注射を、外科手術の日に受け、術後2日目に再び受けた。これらの動物を、イソフルランガスにより麻酔してから、大腿部及び背側の切開部位の毛剃りなどの外科手術の準備をした。毛剃りした領域を4%クロルヘキシジングルコネートで洗浄してから、多めの10%ポビドンヨードで洗浄した。外科手術の前と該外科手順の最後に、麻酔下で、低刺激性の潤滑性眼科薬剤(Tears Naturale PM)を各眼に投与した。動物を、外科手順の間中、イソフルランガス麻酔下に維持した。
【0140】
右鼠蹊領域に小さい切開を開き、大腿静脈を引き出した。小さい静脈切開を行なって、医用等級のシリコーンベースのカテーテルを挿入した。そのカテーテルのチップは、凡そ腎臓のレベルで大静脈内に置かれた。そのカテーテルは、縫合材で適所に固定され、次いで、皮下を通り、頸部のうなじにある露出点まで導かれた。大腿部を、暖かい(約37℃)0.9%塩化ナトリウム注射液(米国薬局方)で洗浄した。この大腿部を、断続的さし縫い縫合で閉じて、露出部位を、巾着縫合で閉じ、5〜10日後に又は治癒結果に応じて抜糸した。局所的抗生物質(ポリミキシンB、バシトラシン、ネオマイシン)を、カテーテル露出部位に毎日、最後まで、投与し、大腿部には、必要ないと思われるまで投与した。
【0141】
ジャケットを、この動物の上に、束縛系を維持するために置いた。0.9%塩化ナトリウム注射(米国薬局方)を予め満たしたカテーテルを、この束縛系を通して供給し、ケージの外側に固定されたスイベルに結合した。スイベルの上部は、注入ポンプに接続され、すべての動物は、0.9%塩化ナトリウム注射(米国薬局方)を0.4mL/時の速度で、処理の開始まで連続的に注入された。
【0142】
術後イレウスを誘発する外科手術
すべての処理手順は、各日に処理される各群からのほぼ等しい数の動物を用いて、連続する2日にわたって繰り返された。食餌は、手術前の一晩、動物へ与えられなかった。手術の日に、動物は、イソフルランガスを用いて麻酔され、非刺激性の眼科用潤滑剤(Tears Naturale PM)を各眼に適用した。これらの動物を、全腹部領域の毛を剃ることにより、手術の準備をした。毛剃りした領域を清浄化して、適切に殺菌してから切開した。外科用メスを用いて、腹部を開いて、盲腸の場所を突き止めた。その盲腸を体外に出して約1分間処理した(即ち、両手の間で、食塩溶液をしみ込ませたガーゼ中で、穏やかにたたいた)。その後、この盲腸を、元の位置に戻し、外科手術部位を、吸収性縫合材料(断続的縫合糸)及びステープルを用いて閉じた。次いで、動物を、それらのケージへ戻して、麻酔から回復させた。
【0143】
偽物の対照群(グループ1)に割り当てられた動物は、同じ処理手順を受けたが、但し、盲腸は、体外に出されてから処理を受けずに元の位置に戻された。技術的不注意のために、動物No.2001、2009、3001及び4001の盲腸は、食塩溶液を浸透させたガーゼの代わりに注射用無菌水(米国薬局方)で処理されたということに注意されたい。このわずかな逸脱は、この研究の結果又は結果の解釈に何の影響も有しなかったと考えられた。
【0144】
投与量の投与
投薬は、連続した日々に開始し、各群からのほぼ等しい数の動物に、各日に投薬した。これらの試験/対照用品は、留置カテーテルを介してのゆっくりとしたボーラス静脈注射として投与された(凡そ100秒間で)。これらの動物は、フェノールレッドの経口胃管栄養法による投与後直ちに、投与された。その投与量体積は、5mL/kg(イパモレリン及びフェノールレッド投与の両方)であり、実際の投与される投与量は、各動物の直近の体重に基いた。
【0145】
胃腸の評価
フェノールレッドの投与前に、これらの動物は、水を取り上げられた。手術後約30分(イレウス)で、動物は、0.4mLのフェノールレッドを経口胃管栄養法により受けた。次いで、動物に投薬し、約30分後に、安楽死させた。安楽死時に、胃を、腹壁切開により露出させて、幽門と噴門で迅速に結紮して取り出した。この胃を、切り開いて、その内容物を、100mLの0.1N NaOHで抽出した。この抽出物のフェノールレッド含有量を、比色定量法により、分光器で558nmでアッセイした。収集後に、試料を、分析のために移動させるまで、濡れた氷上に貯蔵した。
【0146】
結果
外科手術後に、0.1、0.25及び1.0mg/kgの投与量で静脈内投与されたイパモレリンは、胃内容物の排出を、雄のアルビノラットにおいて、ビヒクル対照及び偽物対照動物と比較して加速した(投与量関係は認められなかったが)。イパモレリンの静脈内投薬(0.1、0.25又は1.0mg/kg)で治療された動物は、胃のフェノールレッド含有量の、ビヒクル対照グループと比較しての低下(それぞれ、85.7%、95.6%及び92.2%)を示した。これらの減少は、0.25及び1.0mg/kg投与量レベルで統計的有意に達した(それぞれ、p≦0.001及びp≦0.01)。図2参照。
【0147】
ビヒクル対照グループの平均の胃フェノールレッド含有量は、偽物対照グループのそれと類似しており、統計的に差がなく、これは、偽物対照グループにおける(予想外の)イレウス又は外科的対照グループにおいて検出可能なイレウスを誘導できないことを反映しうる。従って、偽物対照グループと比較して発現される場合には、イパモレリンの静脈内投薬(0.1、0.25又は1.0mg/kg)で処理された動物は、胃フェノールレッド含有量の減少(それぞれ、87.1%、96.0%及び93.1%)を示し、これは、すべての投与量レベルにおいて統計的に有意であった。図2参照。
【0148】
結論
外科手術後に雄のアルビノラットに、投与量0.1、0.25及び1.0mg/kgで静脈内投与されたイパモレリンは、胃内容物の排出を、偽物及びビヒクル対照動物と比較して有意に加速した。
【0149】
実施例3.術後イレウスのラットモデルにおける静脈内投与されたイパモレリン(0.01、0.03又は0.1mg/kg)の胃運動的効力
この研究において、イパモレリンは、ゆっくりとしたボーラス静脈注射として留置カテーテルを介して、0.01、0.03又は0.1mg/kgの投与量で投与された(凡そ100秒間で)。
【0150】
【表3】
【0151】
雄のSprague-Dawley CD(商標)(Crl: CD(商標)(SD))ラット(Rattus norvegicus)を用いた。これらの動物の購入からカテーテルの外科的移植まで7日間置いて、これらの動物を物理的及び環境的条件に順応させた。これらの動物への投薬を、動物の処理前の適当な回復のために、カテーテルの外科的移植の約1週間後に開始した。治療開始時に、動物は、約10週齢であり、体重は、334〜385gの範囲であった。動物を、個別に、自動給水バルブを備えたステンレス鋼製のワイヤメッシュ底のケージに収容した。動物室の環境及び日長について標的とした条件は、次のとおりであった:
温度:22±3℃;湿度:50±20%;光周期:12時間の照明と12時間の暗黒。
すべての動物を、死亡率及び病気の徴候及び治療に対する反応について1日に2回検査した(但し、到着の日及び検死の日は、1回検査する)。個々の体重を、投薬の前日に、無作為に測定した(投与量計算目的のためにのみ)。
【0152】
外科的カテーテル法
小さい切開を右鼠蹊領域に作り、大腿静脈を引き出した。小さい静脈切開を行なって、医用等級のシリコーンベースのカテーテルを挿入し、そのカテーテルのチップを、大静脈内で、凡そ腎臓のレベルに位置させた。このカテーテルを、適当な縫合材を用いて適所に固定してから、皮下を通り、頸部のうなじの露出点まで導いた。大腿部を、暖かい(約37℃)0.9%塩化ナトリウム注射液(米国薬局方)で洗浄した。この大腿部を、断続的さし縫い縫合を用いて閉じ、露出部位を巾着縫合により閉じて、5〜10日中に又は治癒結果によって抜糸した。局所的抗生物質(ポリミキシンB、バシトラシン、ネオマイシン)を、カテーテル露出部位に、毎日最後まで、投与し、大腿部に、必要ないと考えられるまで投与した。
【0153】
ジャケットを、この動物の上に、束縛系を維持するために置いた。0.9%塩化ナトリウム注射(米国薬局方)を予め満たしたカテーテルを、この束縛系を通して供給し、ケージの外側に固定されたスイベルに結合した。スイベルの上部は、注入ポンプに接続され、すべての動物は、0.9%塩化ナトリウム注射(米国薬局方)を0.4mL/時の速度で、処理の開始まで連続的に注入された。
【0154】
術後イレウスを誘発する外科手術
全治療手順を、各日に処理される各グループからのほぼ等しい数の動物を用いて、2日連続で繰り返した。食餌は、外科手術前の一晩、動物へ与えられなかった。外科手術の日に、動物をイソフルランガスで麻酔し、低刺激性の眼用潤滑剤(Tears Naturale PM)を各眼に適用した。これらの動物を、全腹部領域の毛を剃ることにより、手術の準備をした。毛剃りした領域を清浄化して、適切に殺菌してから切開した。外科用メスを用いて、腹部を開いて、盲腸の場所を突き止めた。その盲腸を体外に出して約1分間処理した(即ち、両手の間で、食塩溶液をしみ込ませたガーゼ中で、穏やかにたたいた)。その後、この盲腸を、元の位置に戻し、外科手術部位を、吸収性縫合材料(断続的縫合糸)及びステープルを用いて閉じた。次いで、動物を、それらのケージへ戻して、麻酔から回復させた。
【0155】
手術なしの対照群(グループ1)に割り当てられた動物は、術後イレウスを誘発するための外科手術を受けなかった。
【0156】
投与量の投与
投薬は、連続した日々に開始し、各群からのほぼ等しい数の動物に、各日に投薬した。これらの試験/対照用品は、留置カテーテルを介してのゆっくりとしたボーラス静脈注射として投与された。これらの動物は、フェノールレッドの経口胃管栄養法による投与後直ちに、投薬された。その投与量体積は、グループ1、2及び5については5mL/kgであり;グループ3については0.5mL/kgであり、グループ4については1.5mL/kgであった。実際の投与される投与量は、各動物の直近の体重に基いた。
【0157】
胃腸の評価
フェノールレッドの投与前に、これらの動物は、水を取り上げられた。手術後約30分(イレウス)で、動物は、0.4mLのフェノールレッドを経口胃管栄養法により受けた。次いで、動物に投薬し、約30分後に、安楽死させた。安楽死時に、胃を、腹壁切開により露出させて、幽門と噴門で迅速に結紮して取り出した。この胃を、切り開いて、その内容物を、100mLの0.1N NaOHで抽出した。この抽出物のフェノールレッド含有量を、比色定量法により、分光器で558nmでアッセイした。収集後に、試料を、分析のために移動させるまで、濡れた氷上に貯蔵した。
【0158】
結果
外科手術後に、0.01、0.03及び0.1mg/kgの投与量で静脈内投与されたイパモレリンは、胃内容物の排出を、雄のアルビノラットにおいて、ビヒクル対照及び無手術対照動物と比較して加速した(投与量関係は認められなかったが)。イパモレリンの静脈内投薬(0.01、0.03又は0.1mg/kg)で治療された動物は、胃のフェノールレッド含有量の、ビヒクル対照グループと比較しての低下を示した。これらの減少は、すべての投与量レベルで統計的有意に達した(0.01及び0.1mg/kgで、p≦0.05及び0.03mg/kgで、p≦0.0)。図3参照。
【0159】
ビヒクル対照グループの平均の胃フェノールレッド含有量は、無手術対照グループのそれと類似しており、統計的に差がなく、これは、外科的対照グループにおいて検出可能なイレウスを誘導できないことを反映しうる。従って、無手術対照グループと比較して表現される場合には、イパモレリンの静脈内投薬(0.01、0.03又は0.1mg/kg)で処理された動物は、胃フェノールレッド含有量の減少を示し、これは、すべての投与量レベルにおいて統計的に有意であった。
【0160】
実施例4.ラットにおける胃イレウスを誘発するモルヒネの効力
この研究の目的は、モルヒネのラットにおいて胃イレウスを誘発する潜在的効力を評価することであった。処理グループを下記に示した。
【0161】
【表4】
【0162】
方法及び実験デザイン
雄のSprague-Dawley CD(商標)(Crl: CD(商標)(SD))ラット(Rattus norvegicus)を、Charles River Canada Inc.(カナダ国、ケベック、St. Constant在)から得た。到着後、すべての動物は、正常な健康状態を保証するために獣医学スタッフの有資格メンバーによる一般的な身体検査にかけられた。すべての動物は、使用のために許容しうると考えられた。動物を受け入れてから処理の開始まで、動物を研究室環境に慣らすために、9日間を置いた。処理の開始時に、動物は、凡そ7週齢であり、体重は、231〜267gの範囲であった。動物の体重が、プロトコールで述べられた範囲の僅かに外側にあったということに留意されたい。この偏りは、この研究の結果又は結果の解釈に影響を有しないと考えられた。
【0163】
動物を、個別に、自動給水バルブを備えたステンレス鋼製ワイヤメッシュ底のケージに収容した。動物室の環境及び日長についての標的とした条件は、次のとおりであった:温度22±3℃;湿度50±20%;光周期は、12時間の照明と12時間の暗黒。
【0164】
すべての動物は、市販の標準的な認可されたペレット状研究室用食餌(PMI Certifie Rodent Chow 5002: PMI Nutrition International Inc.)を自由に摂ることができた(示した手順中を除く)。この食餌は、製造業者によって、汚染物質(例えば、重金属、アフラトキシン、有機リン酸塩、塩素化炭化水素及びPCB)の最大許容濃度について、制御され、日常的に分析されたものであった。これらの分析の結果は、PCS−MTLの科学資料庫に保持される。軟水化され、逆浸透により精製されて紫外線に曝露された市営水道水が、無制限に与えられた(示した手順中を除く)。水の周期的分析は、PCS−MTLの品質保証部門により監査される管理認可分析研究所に下請けされた。これらの分析の結果は、PCS−MTLの科学資料庫に保持される。食餌材料中には、この研究の結果に影響を与えうる公知の汚染物質は存在しなかったと考えられる。
【0165】
これらの投与量配合物は、投与の日に調製した。適当な対照を、所望の濃度を達成するようにビヒクルに溶解させた。硫酸モルヒネ溶液を供給物として用いた。フェノールレッドを、投与の日に、5mg/mL溶液として調製して、使用まで遮光して室温に保存した。
【0166】
投与量の投与
モルヒネ(4mg/kg又は1mg/kg)を、上背部(肩甲骨領域)に、注射器に取り付けた皮下注射針を用いる皮下注射によって投与した。モルヒネを、対照/陽性対照品の投与の約30分前に投与した。投与量体積は、グループ2及び3について、0.1mL/kgであり、グループ4及び5について、0.4mL/kgであった。投与された実際の投与量は、各動物の直近の体重に基いた。
【0167】
胃腸の評価
モルヒネ注射の約30分後に、すべての動物は、0.4mLのフェノールレッドを経口胃管栄養法により与えられた。対照又は試験品の投与の約30分後に、これらのラットを、安楽死させた。次いで、その胃を、腹壁切開により、あらわにし、迅速に幽門と噴門で結紮して、取り出した。その胃を切り開いて、その内容物を、100mLの0.1N NaOHで抽出した。この抽出物のフェノールレッド含量を、分光器にて、558nmで分光学的にアッセイした。収集後、試料は、分析のために移動させるまで、濡れた氷上に保存した。
【0168】
結果
1又は4mg/kgの投与量で皮下投与された場合、モルヒネは、胃内容物の排出を有意に、対照動物と比較して約42%減じる(但し、統計的有意性を達成しない)。胃イレウスを逆転させることで知られる強力な胃運動促進性ペプチドであるグレリンは、1mg/kgのモルヒネへの曝露後に50μg/kgの投与量で静脈内投与された場合、胃内容物の排出を、1mg/kg及び食塩溶液で処理された動物と比較したとき約37%加速し、イレウスを約11%減じた。しかしながら、グレリンは、胃内容物の排出を、4mg/kgのモルヒネを投与されたラットにおいて加速せず、両グループ(食塩溶液対グレリン)は、フェノールレッドの同じ群平均吸光度を示した(それぞれ、2.99及び3.01)。図4参照。
【0169】
結論
雄のアルビノラットに、1又は4mg/kgの投与量で皮下投与されたモルヒネは、類似のレベルの胃イレウスを、非投与量依存性様式で誘発した。グレリンは、胃内容物の排出を加速し、1mg/kgのモルヒネへの曝露後に誘発された胃イレウスを逆転させたが、4mg/kgの投与量のモルヒネを投与されたマウスの胃内容物排出には影響を有しなかった。
【0170】
実施例5.ラットモデルにおける術後イレウスを治療するための、イパモレリンの静脈内注射(1.0、2.5、10mg/kg)の、RC−1139と比較しての胃運動促進的効力
イパモレリンを、術後イレウスのラットモデルにおいて、RC−1139(公知の胃運動促進効力を有するグレリン模倣物)との比較において評価した。この研究において、各薬物は、下記の表に示したように単回静脈注射として投与された。治療グループは、下記のとおりであった。
【0171】
【表5】
【0172】
すべての動物は、死亡率及び不健康の徴候又は治療に対する反応について、毎日2回検査された(動物が一回検査を受けた到着の日及び剖検の日を除く)。個々の体重は、ランダムに及び投与の前の日(投与量計算の目的のみのために)に測定した。2匹の動物が、10mg/kgの投与量でのイパモレリンの投与の直後に死亡したので、グループ4の残りのすべての動物は、0.25mg/kgで投与された。
【0173】
方法及び実験デザイン
雄のSprague-Dawley CD(商標)(Crl: CD(商標)(SD))ラット(Rattus norvegicus)を、複数の治療グループに無作為に分けた。動物を研究室環境に慣らすために、動物の受領と治療の開始の間に、少なくとも5日を置いた。治療の開始時に、動物は、約7週齢で、体重は、205〜272gの範囲であった。
【0174】
最初の投与のための配合物の調製前に、試験的な調製を、2mg/mL(試験品溶液)及び2mg/mL(参照品溶液)で行なって、提示した配合法の適性を確認した。
【0175】
投与のために、配合物を、適当量の試験品又は参照品を注射用0.9%塩化ナトリウム(米国薬局方)溶解させることにより調製した。これらの投与用配合物を、次いで、0.1N/1N塩化水素酸又は、要すれば、0.1N水酸化ナトリウムを用いてpHを7.4〜7.5に調節した。すべての投与用配合物を、0.2μmPVDFフィルターを通して濾過してから使用して、遮光して室温で保存した。
【0176】
フェノールレッドは、投与の日に5mg/mL溶液として脱イオン水中で調製して、遮光して室温で保存した。
【0177】
術後イレウスを誘発するための外科手術
すべての治療手順を、各日に処理される各グループからのほぼ同数の動物を用いて、2日連続で繰り返した。食餌は、外科手術前の一晩、動物へ与えられなかった。外科手術の日に、動物は、イソフルランガスを用いて麻酔され、低刺激性の眼用潤滑剤を各眼に適用された。これらの動物は、全腹部領域の毛を剃ることにより、外科手術の準備をされた。毛剃りした領域を清浄化して、適切に殺菌してから切開した。外科用メスを用いて、腹部を開いて、盲腸の場所を突き止めた。その盲腸を体外に出して約1分間処理した(即ち、両手の間で、食塩溶液をしみ込ませたガーゼ中で、穏やかにたたいた)。その後、この盲腸を、元の位置に戻し、外科手術部位を、吸収性縫合材料(断続的縫合糸)及びステープルを用いて閉じた。次いで、動物を、それらのケージへ戻して、麻酔から回復させた。
【0178】
投与量の投与
動物は、フェノールレッドの経口胃管栄養法による投与の直後に、投薬された。これらの試験品/対照品及び参照品は、静脈注射(凡そ100秒間のゆっくりとしたボーラス注射)により尾静脈に、注射器と適当なゲージの針を用いて投与された。投与量体積は、5mL/kgであり、実際に投与された投与量は、各動物の直近の体重に基いた。
【0179】
胃腸の評価
フェノールレッドの投与前に、これらの動物へは水は与えられなかったことを取り上げられた。手術後約30分で、動物に、0.4mLのフェノールレッドを経口胃管栄養法により与え、その後、試験品を与え、それから、約30分後に、安楽死させた。安楽死時に、胃を、腹壁切開により露出させて、幽門と噴門で迅速に結紮して取り出した。この胃を、切り開いて、その内容物を、100mLの0.1N NaOHで抽出した。この抽出物のフェノールレッド含有量を、比色定量法により、分光器で558nmでアッセイした。収集後に、試料を、分析のために移動させるまで、濡れた氷上に貯蔵した。
【0180】
結果
術後イレウスの誘発後に、0.25、1及び2.5mg/kgの投与量で静脈内投与されたイパモレリンは、胃内容物の排出を、雄のアルビノラットにおいて、対照動物及びRC−1139処理した動物と比較して加速した(投与量関係は認められなかったが)。図5参照。
【0181】
0.25及び2.5mg/kgのイパモレリン投与量は、フェノールレッド含有量の約50及び60%の減少という類似のレベルの効力をそれぞれ示し、1mg/kgの投与量後には、約21%の胃内容物排出が認められた。10mg/kgのRC−1139の投与後のフェノールレッドマーカーの胃含有量は、対照グループのそれよりも約16%低かった。
【0182】
結論
術後イレウスを有する雄のアルビノラットに0.25、1及び2.5mg/kgの投与量で静脈内投与されたイパモレリンは、対照及び参照用動物と比較して、胃内容物排出を加速した。
【0183】
実施例6.健康な志願者への、モルヒネにより誘発された胃内容物排出遅延を逆転させるためのイパモレリンの投与
導入
胃内容物排出の遅延は、術後イレウス、オピエート誘発された大腸機能不全及び胃不全麻痺を含む幾つかの重要な標的適応症において、病因論的役割を演じる。加えて、胃内容物排出の遅延は、吐き気を促進又は悪化させうる。従って、イパモレリンなどの薬剤は、動物モデルにおいて胃内容物排出を促進する示された能力を有し(上記の実施例参照)、低下した運動性により分類される様々なGI疾患において重要な治療的役割を果たすことができる。
【0184】
イパモレリンは、グレリン模倣物である。グレリンは、28アミノ酸のペプチドホルモンであり、主に、胃の酸分泌腺で合成され、一層程度は低いが腎臓及び視床下部などの身体の他の器官においても合成されている。グレリンにより発揮される重要な生理的効果のうちには、胃の運動を調節する能力があり、それは、様々な動物種並びヒトにおいて、強力な胃運動促進効果を示している(上部及び下部GIの両方で)。Masuda 2000, Asakawa 2001, Tack 2006を参照されたい。加えて、ラットモデルにおいて、グレリンは、胃の術後イレウスを解消することが示されている。Trudel 2002参照。
【0185】
このグレリンの胃運動促進活性が消化管への直接的効果により又は迷走神経性コリン作動性ムスカリン作動性経路により間接的に媒介されることは、ありそうなことである。それは、胃において局所的に作用して、迷走神経の求心性ニューロンの興奮(firing)を刺激して胃の運動を刺激する。Peeters 2003参照。様々な疾患におけるグレリンの積極的効果を、グレリンを模倣する薬剤の同定及び開発にによって活用するために、長年にわたって努力がなされてきた。グレリンは、ヒトにおいて例外的に短い半減期(約10分)を有しており、それ故、治療的潜在能力が限られている。イパモレリンは、ヒトにおいて、静脈内治療剤として利用可能な約6時間の半減期を有し、それ故、治療用途に適しているグレリン模倣物である。
【0186】
本研究は、イパモレリンの胃内容物排出に対する効果の評価のための十分立証された、臨床薬理学的モデル(アセトアミノフェンAUC)を採用するようにデザインされた。イパモレリンは、上記の実施例において、ラットモデルにおける胃内容物排出に対する強力な刺激効果を有することが示された。この研究は、これらの発見をヒトに拡張することを意図した。
【0187】
投薬量
この研究のために選択されたイパモレリンの投与量(0.06mg/kg 15分にわたる静脈内点滴)は、以前のフェーズ1の研究で安全であること及び十分許容されることが示されている投与量であった。イパモレリンは、正常食塩溶液中の2当量の酢酸を用いて、0.5mg/mLの無菌溶液として配合された。この無菌溶液を、更に、正常の食塩溶液で希釈して、使用前に投与に適した体積とした。
【0188】
この研究のために選択されたモルヒネの投与量(0.05mg/kg、静脈内ボーラス投与)は、鎮痛用投与量として臨床的に妥当であり、胃内容物排出を正常な志願者において有意に遅延させることが以前に示されている[Yuan 1998]投与量であった。
【0189】
この研究のために選択されたアセトアミノフェンの投与量(1000mg経口懸濁液投与)は、標準的なアセトアミノフェンの売薬の投与量である。この投与量は、以前の胃内容物排出の研究で上首尾に採用されてきており、容易に測定される血漿濃度(>0.2μg/mL)を生じる。
【0190】
この研究デザインは、標準的な、三期の、無作為の、単回投与量の交差研究であった。
この研究は、単回投与量の投与を用いて行なわれ、それは、胃内容物排出のアセトアミノフェンAUCモデルに適していて十分に研究されている。本研究で採用された3つの薬物のすべては、6時間以下の半減期を有しており、それ故、5〜8日の洗浄間隔は、これらの薬物の身体からの完全な排除を保証する。
【0191】
この研究の目的は、静脈内イパモレリンの、オピエートにより誘発された胃内容物排出遅延を逆転させる能力を評価すること並びに静脈内イパモレリンの、オピエートにより誘発された吐き気を逆転させる能力を評価することを含んだ。本発明者等は、イパモレリンがオピエートにより誘発された胃内容物排出遅延を、血漿アセトアミノフェン吸収により評価して逆転させる(イパモレリン投与後のAUC0-60は、偽薬投与後のそれより50%大きい)ことを予測した。
【0192】
研究デザイン
この研究は、単回中心の、二重盲検の、無作為の、単回投与の、三方交差研究として行なわれた。この研究は、下記の処理を比較した:
1.モルヒネ+イパモレリン;
2.モルヒネ対照;及び
3.正常対照
【0193】
胃内容物排出の測定として、アセトアミノフェンAUCの測定のためのアセトアミノフェン投与後、血漿試料を、3時間にわたって得た。モルヒネは、胃内容物排出を有意に遅延させるであろうということが予想され[Yuan 1998];更に、イパモレリンは、胃内容物排出の観察された遅延を逆転させるであろうということが予想された。関心ある第一のパラメーターは、アセトアミノフェン投与後の最初の一時間(AUC0-60)にわたる血漿AUCに反映されるアセトアミノフェンの初期吸収である。更なる関心あるパラメーターは、AUC0-180、CMAX及びTMAXを含む。
【0194】
この研究の薬物は、十分較正された点滴用ポンプ(例えば、Harvardポンプ又は類似品)を介して、15分の期間にわたって投与された。各患者の投与量を、体重に基いて、最大100kg(6mg)まで計算した。次いで、この投与体積を、通常の注射用塩溶液を希釈剤として用いて15mLの全体積まで希釈した。注射器に気泡を(攪拌を容易にするために)引き込んで、その注射器を穏やかに6回逆さにすることにより混合した。
【0195】
モルヒネ投与
モルヒネ(1.0mg/mL)/偽薬を、ゆっくりとしたボーラス注射(30〜60秒)により投与した。次いで、点滴用カテーテルを、3〜5mLの正常食塩溶液で直ちにフラッシュした。
【0196】
アセトアミノフェン投与
アセトアミノフェンの懸濁液(32mg/mL)を投与前によく振盪した。投与すべき投与量は、31mL(992mg)であった。次いで、患者は、追加の150mLの水を与えられて飲んだ。
【0197】
結果
イパモレリンによる治療は、十分許容され、それらの結果は、ヒトにおいてモルヒネに誘発された胃腸運動の遅延を逆転させることを示した。図6参照。
【0198】
実施例7.健康な男性志願者においてモルヒネにより誘発された胃内容物排出遅延におけるイパモレリンの一層低投与量の試験
この研究は、実施例6aのデザインと同じデザインであったが、胃内容物排出のオピエートにより誘発された遅延を逆転させるイパモレリンの一層低い静脈内投与量を評価した。データは、すべての処理を終えた23人の患者について与えられている。この研究の処理は:
(1)未処理(食塩溶液)対照;(2)モルヒネ0.05mg/kg(IV:静脈内投与);及び(3)モルヒネ0.05mg/kg+イパモレリン0.01mg/kg(静脈内投与)及び(4)モルヒネ0.05mg/kg+イパモレリン0.03mg/kg(静脈内投与)。アセトアミノフェンエリキシルを、胃内容物排除の評価を可能にするように、各処理サイクルにおいて経口投与した。これらの処理を、単純盲検の、偽薬対照の、3方交差研究にて施与した(処理の間に5〜8日の洗浄あり)。
【0199】
これらの結果は、モルヒネの投与が、血漿アセトアミノフェンレベルの低下により測定されるうように胃内容物排出を遅延させたことを示している。この効果は、イパモレリンの投与量により逆転され、実施例6で提示したものに匹敵した。データは、図6に示してある。
【0200】
実施例8.イパモレリンを含む様々なグレリン模倣物の、ラットの胃腸運動に対する効果の比較
この研究の目的は、一連のグレリン模倣物の、ラットの胃腸運動(木炭の通過により測定)に対する薬理学的効果を、一般に用いられる胃腸運動促進剤のメトクロプラミド、及び対照と比較して、実験薬剤の単回静脈内点滴後に評価することであった。治療剤グループは、下記のとおりであった:
【0201】
【表6】
【0202】
処理手順:
各投与用配合物を、投与の日に調製した。これらのグレリン模倣物につき、4mg/mLのストック溶液のアリコートを、適当な体積のビヒクルで希釈して、最終的な所望の濃度を達成した。参考品配合物も又、投与の日に、適当量の参考品を適当量のビヒクルと混合して所望の最終濃度を達成することによって調製した。これらの食塩溶液及びメトクロプラミド(1mg/mL)は、供給されたものを使用した。
【0203】
投薬を、連続した日に行ない、凡そ同数の動物が各日に投薬された。食餌は、手術前の一晩、これらの動物へ与えられなかった。各配合物を、注射器と適当なゲージの針を用いる尾静脈への静脈注射により投与した。投与容量は、5mL/kg又は10mL/kgであった(メトクロプラミドだけの場合)。
【0204】
試験品の投与の約30分後に、すべての動物は、3mLの活性炭を経口胃管栄養法により受け、食餌及び水は、その後20分間、動物へ与えられなかった。
【0205】
観察期間の後に、これらのラットを安楽死させ、腹腔を開いて、胃及び小腸を取り出した。木炭の存否を記録した。これらの胃の重量(内容物を伴うか又は伴わない)を測定して、胃内容物排出の指標を得た。これらの小腸を全長にわたって開いて拡張した。木炭の位置を突き止めて、幽門括約筋から木炭の最も近いもの及び遠くの痕跡までの距離、並びに幽門括約筋から盲腸までの全距離を測定した。木炭が移動した距離も又、小腸の全長のパーセンテージとして測定した。
【0206】
結果
メトクロプラミドは、小腸の運動を有意に増大させ、木炭食餌が移動した距離を、対照グループの67.3%からメトクロプラミド処理グループの86.9%まで、29%増大させた。対照的に、メトクロプラミド投与された動物のグループの胃の木炭含有量は、対照グループのそれと有意に異ならなかった。
【0207】
イパモレリンは、胃内容物排出を、対照グループと比較して有意に増大させて、胃に残っている木炭の量を66%減じた。グレリン及びGHRP−6も又、胃に残っている木炭の量を対照グループと比較して有意に減じた(それぞれ、57%及び64%)が、それらの効果は、イパモレリンのそれと有意に異ならなかった。
【0208】
イパモレリンは、明らかに、胃内容物排出の非常に有意(P≦0.001)の増大及び、食塩溶液処理した対照グループと比較して小腸運動の増大に向かう傾向を生じたが、これは、イパモレリンが強力な胃腸運動促進剤であるという見解を支持している。これらの実験の結果は、図7及び8に示してある。
【0209】
実施例9.イパモレリンを含む様々なグレリン模倣物のラットの胃腸運動に対する効果の比較
この研究の目的は、一連のグレリン模倣物のラットの胃腸運動に対する薬理学的効果を(木炭通過の測定によって)、実験薬剤の単回静脈内点滴後に、対照と比較して評価することであった。
【0210】
【表7】
【0211】
処理手順:
投薬を連続した日々に開始し、各グループからのほぼ同数の動物に、各日に投薬した。食餌は、手術前の一晩、これらの動物へ与えられなかった。投与の前に、これらの動物へ水が与えられなかった。これらの試験/参照/陽性対照品を、注射器及び適当なゲージの針を用いて、尾静脈への静脈注射により投与した。投与量体積は、5mL/kgであり、投与される実際の投与量は、各動物の直近の体重に基いた。
【0212】
試験/参考又は陽性対照品の投薬の約30分後に、すべての動物は、3mLの活性炭を経口胃管栄養法により受け、その後、20分間は、食餌及び水は、動物へ与えられなかった。
【0213】
この観察期間の最後に、これらのラットを安楽死させて、腹腔を開いて、胃及び小腸を取り出した。木炭の胃における存否を記録した。これらの胃(内容物を伴うもの及び伴わないもの)を重量測定して、胃内容物排出の指標を得るために記録した。これらの小腸を、全長にわたって開いて拡張した。木炭の位置を突き止め、幽門括約筋から最も近い及び遠くの木炭の痕跡までの距離並びに幽門括約筋から盲腸までの全距離を測定して記録した(すべての距離は、mmで測定された)。胃重量(内容物を含むもの及び含まないもの)に加えて、木炭が移動した距離を、胃内容物排出の指標を得るために、小腸の全長のパーセンテージとして記録した。この20分間の観察期間中に認められた任意の異常な又は普通でない臨床的徴候を記録した。
【0214】
結果
75μモル/kgの単回静脈内投与量で、グレリン及びこの研究で試験した3つのグレリン模倣物(イパモレリン、GHRP−6及びRC−1139アセテート)は、雄のアルビノラットにおいて、独立に投与した場合、胃内容物排出及び小腸通過に対して異なる効果を示した。イパモレリンのみが、胃内容物排出及び小腸通過の測定(木炭の幽門括約筋から近距離及び遠距離の移動)に対してグレリンと類似の促進効果を示した。グレリン、GHRP−6及びイパモレリンは、小腸通過の2つの測定のうちの一つ(木炭の幽門括約筋からの近距離の移動)により、胃内容物排出を生じた。図9、10及び11参照。
【0215】
実施例10.ラットにおける術後イレウスの治療に対するイパモレリンの効力
この研究の目的は、イパモレリンがPOIのラットモデルにおいて結腸通過を加速するかどうかを研究することであった。この評価を行なうために、単回投与量及び複数回投与量の効力の両方を評価した。
【0216】
材料と方法
動物:右頚静脈に移植された留置カテーテルを有する雄の成体のSprague-Dawley ラットを、Charles River社(マサチューセッツ、Wilmington)から得た。これらの動物の初期体重は、250〜270gであった。これらのカテーテルは、環境順化中開存的に維持されて、イパモレリン又はビヒクルの投薬のために利用された。外科手術にかけられず、薬物又はビヒクル処理にかけられない対照ラットの更なるグループであって、結腸通過を測定する染料マーカーの点滴に用いられる留置カテーテルを近位結腸(盲腸から1〜2cm)に移植されて有するグループを購入した。すべてのラットを、制御された条件(25℃、12時間の明暗サイクル)下で、単独で収容し、食餌と水は自由に摂取させた。少なくとも一週間の環境馴化期間が、試験前に与えられた。
【0217】
術後イレウス(POI)の誘発:POIは、「running of the bowel」(Kalff等、1998)に記載された外科手順により誘発された。特に、ラットは、イソフルラン(2〜3%)の吸入により麻酔され、腹部を毛剃りされ、殺菌されて、正中線切開を行なって内蔵を露出させた。小腸及び盲腸を、体外に引き出して5分間、無菌食塩溶液に浸したコットンアプリケーターを用いて精査した。精査の完了後、腸管を食塩溶液に浸したガーゼでカバーして、腹部を、更に10分間開いたままに維持した。結腸通過を研究するために、200μlの非吸収性の染料マーカー(食塩溶液中のトリパンブルー)を近位(盲腸から1cmの距離)の結腸に注入した。次いで、この切開を、絹縫合糸を用いて閉じた。全手順は、25〜30分間続いた。外科手術は、常に、午前6:00〜8:00に行なわれ、これらの動物は、イパモレリン又はビヒクル処理を、明暗サイクルの照明時に受けた。
【0218】
結腸通過時間の測定:実験前に、これらのラットを、20〜22時間にわたって絶食させたが、水は自由に飲ませた。外科的手順の最後に、これらのラットは、染料マーカーの結腸内注射を受けた。この外科手術の後に、これらのラットは、清潔なケージ内に置かれて、予め計ってある量の食事(Purina(商標)rat chow)と水を供給された。結腸通過時間を、外科手術の終りと糞粒中の染料の出現との間の期間として評価した。外科手術及び薬物又はビヒクルによる処理を受けたことのない未経験ラットを、各実験日に、POIを有するラット共に研究した。これらの未経験ラットは、20〜22時間の絶食の後に、結腸に染料マーカーを点滴するために用いられる結腸カテーテルを装着された。これらの動物から集めたデータは、健康な対照への参照として役立った。以前の研究においては、POIを有するラットは、結腸通過時間において、未経験動物と比較して有意の遅延を示した(Zittel等、1998; Greenwood-Van Meerveld, 未公開データ)。
【0219】
累積的糞排出量、食餌摂取量及び体重:糞粒を、外科手術後の最初の48時間中に、3時間間隔及び12時間間隔で計数して重量測定した(実験デザイン参照)。この累積的糞排出量は、手術後の48時間中の糞粒の数を加えることにより評価された。食餌の摂取は、実験デザインに従って、3時間間隔又は12時間間隔で記録され、体重100g当りのgとして規格化された。累積的な食餌の摂取量は、実験の両シリーズにおいて、手術後の48時間にわたって計算された。体重を、毎日午前8:00〜9:00に測定してから、動物を絶食させ、実験の日には、外科手術前及び手術の24時間後及び48時間後に測定した。体重の変化を、外科手術前に測定した絶食した動物の体重と比較しての体重獲得として表した。
【0220】
試験及び対照用品:試験化合物イパモレリン(遊離塩基)を、2モル当量の氷酢酸と混合することにより二酢酸塩に変換した。0.5mg/mlのストック溶液を日々、無菌食塩溶液及び氷酢酸(0.1μl/ml)にて調製して、イパモレリンを溶液(pH3〜4)とした。次いで、この溶液をNaOHを用いて滴定してpH7.0〜7.2とした。更なる希釈を、食塩溶液にて行なった。無菌の食塩溶液を、ビヒクル対照実験において用いた。陽性対照[D−Lys3]−GHRP−6は、Sigma-Aldrich社(ミズーリ、St. Louis在)から購入して、この食塩溶液に溶解させた。試験用及び対照用品の両方を、頚静脈カテーテルを介して、体重100g当たり0.2mlの体積で、ボーラス静脈内点滴として投与した。
【0221】
データ及び統計的解析:これらのデータは、各グループにつき、平均値±SEMとして表した。グループ間の差異を、スチューデントのT検定により、並びに一方向又は二方向ANOVAとその後の随意の多重比較のためのダンネット検定又はボンフェローニ検定によって統計的有意性につき評価した。p<0.05のレベルは、有意であると考えられた。加えて、これらの多重投薬の効果についてのデータは、処理間の線の勾配間の有意な差を測定するために線形回帰分析を用いて評価された。
【0222】
実験デザイン:
実験シリーズ1:POIのラットモデルにおけるイパモレリンの単回投与により誘導される急性の効果を測定する。
・ ラットを、7日間、設備に順応させた;カテーテルの開通性は維持された
・ 0日目:ラットを体重測定して、午前8:00から9:00まで絶食させた
・ 1日目:午前6:00から8:00まで、イソフルラン麻酔下での「腸の運動(runnin)」手術
染料を、手術の最後に、近位の大腸に注入。
イパモレリン又はビヒクルによる単回投与量の処理。
ケージにおける観察(最初の糞粒排出までの時間;手術後3、6、9及び12時間での糞排出量及び食餌の摂取量)。
・ 2日目:午前7:00から8:00まで、手術後24時間での体重、糞排出量、食餌の摂取量
・ 3日目:午前7:00から8:00まで、手術後48時間での体重、糞排出量、食餌の摂取量
イソフルランの過剰投与により安楽死させた。
【0223】
未経験ラットは、絶食させたが、手術はしなかった。体重、大腸通過、糞粒排出量及び食餌摂取量を、POIのラットと同時点で測定した。
グループ(単回投与量処理):
POI+ビヒクル(静脈内投与)n=12
POI+イパモレリン0.1mg/kg(静脈内投与)n=9
POI+イパモレリン1mg/kg(静脈内投与)n=10
POI+GHRP−6 20μg/kg(静脈内投与)n=8
未経験(手術なし、薬物なし)n=14
【0224】
実験シリーズ2:POIのラットモデルにおけるイパモレリンの複数回投与量の効力を測定する。
・ ラットを、7日間、設備に順応させた;カテーテルの開通性は維持された
・ 0日目:ラットを体重測定して、午前8:00から9:00まで絶食させた
・ 1日目:午前6:00から8:00まで、イソフルラン麻酔下での「腸の運動」手術
染料を、手術の最後に、近位の大腸に注入。
イパモレリン又はビヒクルの複数回の投薬(手術終了時における第一の投与量、3時間間隔での、第二、第三及び第四の投与量)。
ケージにおける観察(最初の糞粒排出までの時間;手術後3、6、9及び12時間での糞排出量及び食餌の摂取量)。
・ 2日目:午前7:00から8:00まで、手術後24時間での体重を測定
イパモレリン又はビヒクルの複数回投薬(体重測定時における第一の投与量、3時間間隔での、第二、第三及び第四の投与量)。
ケージにおける観察(手術後24、27、30、33及び36時間での糞排出量及び食餌の摂取量)。
・ 3日目:午前7:00から8:00まで、手術後48時間での体重、糞排出量、食餌の摂取量を測定
イソフルラン過剰投与により安楽死。
【0225】
未経験ラットは、絶食させたが、手術はしなかった。体重、大腸通過、糞粒排出量及び食餌摂取量を、POIのラットと同時点で測定した。未経験ラットは、イパモレリン又はビヒクルの投与中複数回処理されたPOIのラットと異なって、これらの処理をされなかったということに注意されたい。
グループ(複数回投与):
POI+ビヒクル(静脈内投与)n=8
POI+イパモレリン0.01mg/kg(静脈内投与)n=8
POI+イパモレリン0.1mg/kg(静脈内投与)n=8
POI+イパモレリン1mg/kg(静脈内投与)n=7
未経験(手術なし、薬物なし)n=8
【0226】
結果
ラットにおけるPOI:腹部手術の、大腸通過、糞粒排出量、食事摂取量及び体重に対する影響。
「腸の運動」外科手術にかけられたラットと未経験ラットとの間の比較は、外科手術が大腸通過の遅延(図12A)、糞粒排出量の減少(図12B)、食餌摂取量の減少(図12C)及び体重増加量の減少(図12D)を特徴とするPOIの発生を生じることを示した。
【0227】
POIのラットモデル。(A)大腸通過時間(最初の印しのある糞粒排出までの時間として測定)は、未経験ラットと比較して、手術後有意に遅延する。(B)手術後24及び48時間における累積的糞粒排出量は、未経験ラットと比較して減少する。(C)累積的食餌摂取量は、手術後24及び48時間において、未経験ラットと比較して、有意に減少する。(D)体重増加は、手術後、未経験ラットと比較して減少する。データは、12匹のPOIのラットと14匹の未経験ラットからの平均値±SEMである。外科手術にかけられたラットと未経験ラットの間の差の有意性は、スチューデントのt検定を用いて調べた:*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
【0228】
実験シリーズ1:POIのラットモデルにおける、イパモレリンの単回投与量処理により誘導される急性効果を測定する。
実験を、POIのラットで行なって、0.1mg/kg又は1mg/kgのイパモレリンの単回投与量の処理の効力を調べた。イパモレリン又はビヒクルを、外科手術の終了に続いて静脈内点滴により投与した。最初の糞粒排出までの時間(図13)並びに累積的糞粒排出量(図14)、食餌摂取量(図15)及び体重増加(図16)を外科手術後の48時間において測定して、イパモレリンの効力を、イパモレリンの効果をビヒクルの効果と比較することにより評価した。加えて、20μgのGHPR−6(GRLNのアゴニスト、即ち、GHS−R1a)の効力を陽性対照として用いた(Davenport等、2005)。図13に提示した結果は、1mg/kgのイパモレリン又は20μgのGHRP−6の単回術後投与量は、有意に、大腸通過時間を減じたことを示している。
【0229】
しかしながら、イパモレリンもGHRP−6も、外科手術後の最初の48時間後における糞粒排出量(図14)、食餌摂取量(図15)又は体重増加(図16)に有意の効果を有しなかった。
【0230】
まとめると、実験シリーズ1から得られたこれらの結果は、外科手術の最後に与えられた1mg/kgのイパモレリンの単回投与量の処理は、POIのラットにおける48時間の回復過程において、最初の腸運動への時間を減じたが、糞排出量及び食餌摂取量に対する効果を誘導しなかったことを示している。しかしながら、これらの結果は、ラットにおけるイパモレリンの報告された半減期30〜60分(Johansen等、1998)に基いて予想されるものと一致する。
【0231】
実験シリーズ2:POIのラットモデルにおけるイパモレリンの複数回の投与量の効力を測定する。
イパモレリン(0.01、0.1又は1mg/kg、静脈内投与)の複数回投与量の投与量−応答効果を、POIのラットにおいて調べた。その結果は、0.1mg/kg又は1mg/kgのイパモレリンの複数回の投与が、大腸通過の、ビヒクルの効果と比較して、有意の加速を引き起こすことを示した(図17)。
【0232】
イパモレリンの複数回投与量の糞粒排出量に対する効果は、図18に提示してある。イパモレリンの複数回投与量は、累積的糞粒排出量の、ビヒクルと比較しての増加を誘導した。この効果は、0.1mg/kg又は1mg/kgの投与量で有意に達した(図18)。糞排出量は、0.1又は1mg/kg(静脈内投与)の投与量でイパモレリンを受けたラットにおいて、ビヒクルで処理されたラットと比較して、一層高速度(一層低い1/勾配値)で増加した。0.01mg/kgの投与量で、イパモレリンは、有意の効果を示さなかった。加えて、イパモレリンは、増加した食餌摂取量を誘導した(図19)。一層高投与量のイパモレリンにより誘導された食餌摂取量の増加は、体重増加と関係した。図20に示したように、複数回投与の範例に従って投与された1mg/kgのイパモレリンの最高投与量を受けたラットは、外科手術後の最初の48時間において、ビヒクルで処理されたラットと比較して、有意に、一層多くの体重を得た。
【0233】
結論
全体的にみて、これらの結果は、ラットにおいて、外科手術後の最初の48時間におけるイパモレリンの複数回の静脈内投与が大腸通過及び食事摂取量を改善して、体重増加を増大させることを示しており、これは、イパモレリンの外科手術後の静脈内点滴がPOIの患者における症状を改善しうることを示唆している。
【0234】
今や、完全に、本開示を与えたので、当業者は、同様のことを、同等のパラメーター、濃度、及び条件の広い範囲において、この開示の精神及び範囲から離れることなく、過度の実験をせずに行なうことができることを認めるであろう。更に、この開示は、特定の具体例に関して記載されてきたが、更なる改変が可能であることは理解されよう。この出願は、この開示の任意の変形物、利用又は適応をカバーすることを意図しており、それらは、一般に、開示された原理に従い、該開示からのかかる逸脱を包含するものであり、それらは、この開示が属する分野における公知の又は慣習的な実施の内にあり、上に示した必須の事項に適用されうるものである。
【0235】
参考文献
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【技術分野】
【0001】
この出願は、2007年12月21日出願の米国暫定特許出願第61/008,828号(その全内容を、参考として本明細書中に援用する)の利益を請求するものである。
本明細書中で援用するすべての参考文献(特許、特許出願、及び公開された特許出願を含む)を、それらが各々更に個別に引用されていてもいなくても、参考として、そっくりそのまま援用する。
【背景技術】
【0002】
胃腸(GI)の運動は、栄養素を消化器系を通して輸送する協調した神経筋プロセスである。C. Scarpignato, 「Pharmacological Stimulation of Gastrointestinal Motility: Where We Are And Where Are We Going?」Dig. Dis., 15: 112(1997)。胃腸系の弱った(即ち、遅い)運動は、胃食道逆流疾患、胃不全麻痺(例えば、糖尿病性及び術後性の当該麻痺)、過敏性大腸症候群、イレウス、及び便秘症(例えば、ダイエット又はオピオイド誘発性のもの)に関係する可能性があり、工業国の最も大きな健康管理上の負担の一つである。S. D. Feighner等、「Receptor for Motilin Identified in the Human Gastrointestinal System」、Science, 284: 2184-2188(1999年6月25日)。
【0003】
成長ホルモン分泌促進物質(GHS)、例えばグレリン及びその模倣物は、胃腸管の運動を刺激することが報告されている。しかしながら、研究されてきた特定のGHS化合物は、胃腸の運動の治療のために臨床的に利用することはできないであろうという薬物速度論的特性を有している。特に、グレリンは、胃で生成される28アミノ酸のペプチドである。グレリンの生物学的に活性な形態(即ち、アシル化形態)は、血清半減期が9〜13分しかない(Akamizu等、(2004)European Journal of Endocrinology 150:447-55)。加えて、合成のGHS化合物例えばGHRP−6は、短い血清半減期を有し、これは、この化合物を用いてGI運動性疾患を治療することを妨げる。Bowers等は、GHRP−6の血清半減期が20分しかないことを示した((1992)Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism 74:292-8)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】C. Scarpignato, 「Pharmacological Stimulation of Gastrointestinal Motility: Where We Are And Where Are We Going?」Dig. Dis., 15: 112(1997)
【非特許文献2】S. D. Feighner等、「Receptor for Motilin Identified in the Human Gastrointestinal System」、Science, 284: 2184-2188(1999年6月25日)
【非特許文献3】Akamizu等、(2004)European Journal of Endocrinology 150:447-55
【非特許文献4】Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism 74:292-8(1992)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の故に、胃腸系の運動を効果的に刺激する有効な生理的方法が非常に望まれており、それは、当分野における進歩となるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、胃腸管系の運動を刺激する方法を必要とする患者において、該運動を刺激する方法であって、該患者は、胃腸系の疾患(即ち、異常、病気、病状、又は薬物若しくは手術により誘発された機能不全)を患っている、ことを特徴とする当該方法に関するものである。この方法は、それを必要とする患者に、治療上有効な量のグレリン模倣化合物又はその製薬上許容しうる塩、水和物若しくは溶媒和物を投与することを含む。好適具体例において、このグレリン模倣物は、式Iにより表されるイパモレリン(下記参照)又はその製薬上許容しうる塩、水和物若しくは溶媒和物である。
【0007】
上記のように、グレリン及びグレリン模倣化合物は、限られた血清半減期を有することが示されており、それ故、GI運動性疾患の治療に用いるのに適当でない。グレリン及びGHRP−6に対して、イパモレリンの血清半減期は、ヒトにおいて、3〜6.5時間であることが示されている。従って、本発明は、胃腸系の運動を刺激する方法及び治療上有効な組成物を提供する。
【0008】
胃腸管の運動の刺激は、オピオイドにより誘発された胃腸管機能不全例えばモルヒネにより誘発された結腸機能不全又は便秘症の治療法において、それを必要とする患者において用いられ、治療上有効な量のグレリン模倣化合物又はその製薬上許容しうる塩、水和物若しくは溶媒和物を投与することを含む。患者は、手術後の痛みの管理又は慢性的な痛みの管理のためにアヘン誘導体又はオピオイドを使用していてよい。典型的なアヘン誘導体及びオピオイドには、モルヒネ、コデイン、オキシコドン、ヒドロモルフォン、ヒドロコドン、メタドン、フェンタニル、及び抗炎症剤例えばアセトアミノフェン又はアスピリンとの組合せが含まれる。好適なグレリン模倣物は、式Iにより表されるイパモレリン、又はその製薬上許容しうる塩、水和物若しくは溶媒和物である。
【0009】
胃腸管運動の刺激は、胃不全麻痺を治療するために、それを必要とする患者において、治療上有効な量のグレリン模倣化合物を投与することにより利用することができる。好適なグレリン模倣物は、式Iにより表されるイパモレリン、又はその製薬上許容しうる塩、水和物、誘導体、酸アミド若しくは溶媒和物である。
【0010】
更なる具体例において、胃腸管運動の刺激は、胃食道逆流疾患(GERD)を治療する方法において、それを必要とする患者において、治療上有効な量のグレリン模倣化合物を投与することにより、利用することができる。特定の具体例において、このグレリン模倣物は、式Iにより表されるイパモレリン、又はその製薬上許容しうる塩、水和物若しくは溶媒和物である。特定の具体例において、胃食道逆流疾患は、夜間性の胃食道逆流疾患である。
【0011】
この発明は又、胃腸管運動を、過敏性大腸症候群(IBS)の治療のために、それを必要とする患者において、治療上有効な量のグレリン模倣化合物を投与することにより刺激する方法をも提供する。好適なグレリン模倣物は、式Iにより表されるイパモレリン、又はその製薬上許容しうる塩、水和物若しくは溶媒和物である。過敏性大腸症候群は、便秘症−主たる過敏性大腸症候群であってよく、又は交互の便秘/下痢の過敏性大腸症候群であってもよい。
【0012】
この発明は又、便秘を治療するために、それを必要とする患者において、治療上有効な量のグレリン模倣化合物を投与することにより胃腸管運動を刺激する方法をも提供する。好適なグレリン模倣物は、式Iにより表されるイパモレリン、又はその製薬上許容しうる塩、水和物若しくは溶媒和物である。
【0013】
一具体例において、胃腸管運動の刺激は、手術により又は手術に関連して誘発された胃腸機能不全(例えば、術後イレウス)を治療する方法において、それを必要とする患者において、治療上有効な量のグレリン模倣化合物を投与することにより利用される。特定の具体例において、このグレリン模倣物は、式Iにより表されるイパモレリン、又はその製薬上許容しうる塩、水和物若しくは溶媒和物である。
【0014】
好適なグレリン模倣物は、下記の式Iにより表されるイパモレリン(α−メチルアラニン−L−ヒスチジン−D−β−(2−ナフチル)−アラニン−D−フェニルアラニン−L−リジンアミド又はH−Aib−His−β−(2−ナフチル)−D−Ala−D−Phe−Lys−NH2):
【化1】
又は、製薬上許容しうるその塩、水和物若しくは溶媒和物である。
【0015】
この開示において及び特に特許請求の範囲及び/又は段落において、用語「含む」、「含まれる」、「含んでいる」などは、米国特許法において、それに帰せられる意味を有しうる;例えば、それらは、「包含する」、「包含される」、「包含している」などを意味し;そして用語「本質的に〜からなっている」及び「本質的に〜からなる」は、米国特許法において、それらに帰せられる意味を有し、例えば、それらは、明示的に列挙されてない構成要素を認めるが、従来技術で見出される構成要素又は発明の基本的若しくは新規な特徴に影響を与える構成要素は排除するということは注目される。
【0016】
これらの及び他の具体例は、下記の詳細な説明により開示され又は該説明から自明であって、それに包含される。
【0017】
下記の詳細な説明(説明のために与えるものであり、この発明を記載した特定の具体例だけに限定することを意図したものではない)は、下記の図面を伴うことにより最もよく理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】術後イレウスのラットモデルにおける、10及び100mg/kgのイパモレリンの経口投与の胃運動性(gastrokinetic)への効力を示した図である。
【図2】術後イレウスのラットモデルにおける、静脈投与された0.1、0.25又は1.0mg/kgのイパモレリンの効力を示した図である。
【図3】術後イレウスのラットモデルにおける、静脈投与された0.01、0.03及び0.1mg/kgのイパモレリンの効力を示した図である。
【図4】グレリンが、4mg/kgのモルヒネを投与されたラットにおいて、胃内容排出を加速しなかったこと及び食塩溶液又はグレリンを投与されたラットがフェノールレッドの同じ群平均吸光度を示したことを示した図である。
【図5】ラットモデルにおける術後イレウスを治療するための、0.25、1.0、2.5mg/kgのイパモレリン(この図では、26−0161と記載)の静脈投与の、10mg/kgのRC−1139と比較した、胃運動性への効力を示した図である。
【図6】ヒトにおいてモルヒネにより誘発された胃腸運動の低下の、0.01、0.03及び0.06mg/kgの投与量での、イパモレリンの静脈内単独投与による反転(reversal)を示した図である。
【図7】様々なグレリン模倣物の胃内容物の排出に対する効果を比較した棒グラフである。
【図8】様々なグレリン模倣物の小腸を通る胃腸運動に対する効果を比較した棒グラフである。
【図9】様々なグレリン模倣物の胃内容物の排出に対する効果を比較した棒グラフである。
【図10】様々なグレリン模倣物の小腸を通る胃腸運動に対する効果(幽門括約筋から遠位)を比較した棒グラフである。
【図11】様々なグレリン模倣物の小腸を通る胃腸運動に対する効果(幽門括約筋から近位)を比較した棒グラフである。
【図12】図12A〜Dは、術後イレウスのラットモデルにおける、腹部の手術の、大腸通過時間、糞粒排出量、食物摂取量、及び体重増加に対する影響を示した図である。
【図13】0.1及び1mg/kgのイパモレリンの単独投与後の、腹部手術後のラットにおける、ビヒクル及び対照(GHRP−6)と比較しての、大腸通過時間を示した図である。
【図14】0.1及び1mg/kgのイパモレリンの単独投与後の、腹部手術後のラットにおける、12、24又は48時間目における、ビヒクル及び標準的対照(GHRP−6)と比較しての、累積的糞粒排出量を示した図である。
【図15】0.1及び1mg/kgのイパモレリンの単独投与後の、腹部手術後のラットの、3〜48時間目の種々の時点における累積的食物摂取量を、ビヒクル及び標準的対照(GHRP−6)と比較して示した図である。
【図16】0.1及び1mg/kgのイパモレリンの単独投与後の、腹部手術後のラットの、24及び48時間目における体重に対する効果を、ビヒクル及び標準的対照(GHRP−6)と比較して示した図である。
【図17】0.01、0.1及び1.0mg/kgのイパモレリンの複数回の投与後の、腹部手術後のラットの、大腸通過時間を、ビヒクルと比較して示した図である。
【図18】0.01、0.1及び1.0mg/kgのイパモレリンの複数回の投与後の、腹部手術後のラットにおける、48時間にわたる糞粒排出量の、ビヒクルと比較しての効果を示した図である。
【図19】0.01、0.1及び1.0mg/kgのイパモレリンの複数回の投与後の、腹部手術後のラットにおける、48時間にわたる累積的食物摂取量の、ビヒクルと比較しての効果を示した図である。
【図20】0.01、0.1及び1.0mg/kgのイパモレリンの、複数回の投与後の、腹部手術後のラットにおける、48時間にわたる体重増加に対する効果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、胃腸系の運動を刺激することを必要とする患者において、該胃腸系の運動を刺激する方法であって、該患者が、胃腸系の疾患(即ち、異常又は病気又は薬物若しくは手術により誘発された機能不全)を患っていることを特徴とする当該方法に関するものである。ある具体例において、これらの疾患には、オピオイドにより誘発される胃腸機能不全、例えば、モルヒネにより誘発される胃腸機能不全、便秘症、糖尿病に関連した胃不全麻痺、胃食道逆流疾患(GERD)、過敏性大腸症候群(IBS)、又は薬物若しくは手術により誘発される胃腸機能不全、例えば、術後イレウスが含まれる。この方法は、それを必要とする患者に、治療上有効な量のグレリン模倣化合物又はその製薬上許容しうる塩、水和物若しくは溶媒和物を投与することを含む。このグレリン模倣物は、好ましくは、式Iにより表されるイパモレリン、又はその製薬上許容しうる塩、水和物若しくは溶媒和物である。
【0020】
グレリン模倣物
ここで用いる場合、用語「グレリン模倣物」又は「グレリン模倣化合物」又は「グレリンアゴニスト」は、従来採用されてきた歴史的用語「成長ホルモン分泌促進物質」又は「成長ホルモン分泌促進化合物」と同意語である。グレリン模倣物又はグレリンアゴニストは、グレリンレセプター(GRLN)への結合を特徴とする少なくとも一つの機能を促進(誘導又は増進)する物質(例えば、分子、化合物)を指す。GRLNレセプターは、以前に文献中に、その第一の公知の属性−成長ホルモンの分泌−を反映するGHS1aレセプターとして報告されている。このグレリンレセプターは、主として、視床下部及び下垂体で発現される。これらのレセプターの下垂体での活性化は、成長ホルモンの分泌を誘導する。成長ホルモンの分泌の誘導に加えて、最近の研究は、グレリン模倣物が、食欲及び体重を増大させることができることを示した。特定の具体例において、これらのグレリン模倣物は、米国特許第5,767,085号、6,303,620号、6,576,648号、5,977,178号、6,566,337号、6,083,908号、6,274,584号及び6,919,315号に記載されたものである(これらのすべての内容を、参考として、本明細書中に援用する)。
【0021】
続いて、このGRLNレセプターは、下垂体及び視床下部以外の身体中での位置、例えば胃腸管及び血管系において同定された。グレリン又はグレリン模倣物のそれらのレセプターへの結合は、成長ホルモン分泌以外の又はそれに加えての薬理学的活性を生じた。特に、この他の薬理学的活性は、胃腸管運動促進(prokinetic)活性の増大並びに噴門機能の変化であった。従って、以前に成長ホルモン分泌促進化合物と呼ばれていた物質は、今では、そのレセプター(GRLN)への結合から生じる一層広い生理活性作用の範囲を表すように、一層一般的に、グレリン模倣物又はアゴニストと呼ばれている。
【0022】
最も同定されたグレリン模倣物は、種々の長さのコアペプチド主鎖(トリ、テトラ、ペンタ、及びヘキサペプチド、並びにマクロ環状)を有している。種々の分子構造が、グレリンレセプターに対する種々の親和性を生じ、それ故、種々の薬理学的結果を生じうるということも予想される。何れの分子が、一般的クラスの他のものと比較して並外れた活性又は有効性を有しうるかを先験的に決定することはできない。それは、一般に、並外れた結果又は発見を伴う特定の研究から明らかとなる。
【0023】
GRLNレセプターアゴニスト活性を有する化合物を、任意の適当な方法によって、同定して活性を評価することができる。例えば、GRLNレセプターアゴニストのGRLNレセプターへの結合親和性は、レセプター結合アッセイを用いて測定することができ、成長ホルモン刺激は、米国特許第6,919,315号(参考として、本明細書中に援用する)に記載されたようにして評価することができる。これらのグレリン模倣物は、任意の商業的供給者を含む任意の起源から得ることができる。
【0024】
この発明の場合には、好適なグレリン模倣物は、下記の構造式I(α−メチルアラニン−L−ヒスチジン−D−β−(2−ナフチル)−アラニン−D−フェニルアラニン−L−リジンアミド又はH−Aib−His−β−(2−ナフチル)−D−Ala−D−Phe−Lys−NH2)により表されるイパモレリン:
【化2】
又は、製薬上許容しうるその塩、水和物、酸、アミド、結晶又は溶媒和物である。
【0025】
本発明は、部分的に、本願発明者によりなされた、ある特定のグレリン模倣物、特に、イパモレリンが胃腸運動に対する驚くべき有効且つ強力な刺激効果を有するという驚くべき発見に基いている。イパモレリンは、強力な成長ホルモン分泌促進物質であるが、そのGRLNレセプターとの結合親和性は、多くの他の報告されたグレリン模倣物より、約2〜3log弱い。
【0026】
同時投与される物質
本発明の他の面は、少なくとも一種の物質とグレリン模倣物例えばイパモレリンの、胃腸の異常、病気又は病状を治療するための同時投与に関係する。同時投与されるとは、2種類以上の物質を単回医薬組成物として一緒に投与すること、又は2種類以上の物質を短時間例えば数秒乃至数日のうちに投与することを意味しうる。
【0027】
末梢作用性オピオイドアンタゴニスト
末梢作用性オピオイドレセプターアンタゴニスト例えば血液脳関門を横切らないメチルナルトレキソン、ナルトキソン、ナルトレキソン、ナルメフェン及びアルビモパン(ENTEREG(商標))を、オピオイドにより誘発される副作用を、オピオイド禁断症状を誘発し又は痛覚消失を無効にすることなく治療するために投与することは可能である。(Holzer P., 「Opioids and Opioid Receptors in the Enteric Nervous System: From a Problem in Opioid Analgesia to a Possible New Prokinetic Therapy in Humans」Neurosci Lett., 361(1-3):192-5(2004))(参考として、本明細書中に援用する)。ここで用いる場合、末梢作用性オピオイドアンタゴニストは、末梢で作用する(即ち、中枢ではなく、例えば、中枢神経系には作用しない)オピオイドアンタゴニストを指す。
【0028】
プロトンポンプインヒビター
他の面において、本発明は、胃腸の病状又は疾患の治療のための、グレリン模倣物例えばイパモレリンとプロトンポンプインヒビターとの同時投与を与える。プロトンポンプインヒビターは、胃酸の分泌(酸生成の最終過程)を、胃壁細胞の分泌表面でのH+K+−ATPアーゼ酵素系の特異的阻害により抑制する。プロトンポンプインヒビターは、ベンズイミダゾール化合物例えばエソメプラゾール(NEXIUM(商標))、オメプラゾール(PRILOSEC(商標))、ランソプラゾール(PREVACID(商標))、ラベプラゾール(ACIPHEX(商標))及びパントプラゾール(Protonix(商標))を含む。これらのプロトンポンプインヒビターは、置換されたベンズイミダゾールとピリジン環との間に位置されたスルフィニル基を含む。中性pHで、エソメプラゾール、オメプラゾール、ランソプラゾール、及びパントプラゾールは、化学的に安定で、脂溶性であり、弱塩基性であって、阻害活性が全くない。これらの未帯電の弱塩基は、血液から壁細胞に達して、分泌細管中に拡散し、そこでは、これらの薬物は、プロトン化され、それにより、捕捉される。プロトン化された種は、転位してスルフェン酸及びスルフェンアミドを形成し、後者の種は、H+K+−ATPアーゼのスルフヒドリル基と相互作用することができる。酵素分子当たり2分子のインヒビターにより完全な阻害が起きる。プロトンポンプインヒビターの効果の特異性は、a)H+K+−ATPアーゼの選択的分布;b)反応性インヒビターの生成を触媒するのに酸性条件が必要であること;及びc)酸性細管中での及び標的酵素に隣接するプロトン化薬物及びカチオン性スルフェンアミドの捕捉に由来すると考えられている。Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics, 第9版、901-915頁(1996)(参考として、本明細書中に援用する)。
【0029】
H2レセプターアンタゴニスト
更に別の面において、本発明は、胃腸の病状又は疾患の治療のための、グレリン模倣物例えばイパモレリンとH2レセプターアンタゴニストの同時投与を提供する。H2レセプターアンタゴニストは、ヒスタミンのH2レセプターとの相互作用を競争的に阻害する。それらは、高度に選択的であって、H1レセプターに殆ど又は全く影響を有しない。H2レセプターが、血管及び気管支平滑筋を含む多くの組織に存在しても、H2レセプターアンタゴニストは、胃酸の分泌以外の生理機能には殆ど目立った介入をしない。H2レセプターアンタゴニストには、ニザチジン(AXID(商標))、ラニチジン(ZANTAC(商標)及びTRITEC(商標))、ファモチジン(PEPCID AC(商標))、及びシメチジン(TAGAMET(商標)。Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics、第9版、901-915頁(1996))(参考として、本明細書中に援用する)が含まれるが、これらに限られない。H2レセプターアンタゴニストは、ヒスタミン、他のH2アゴニスト、ガストリン(及び、一層程度は低いが、ムスカリン作動性アゴニスト)に誘出される胃酸の分泌を阻害する。H2レセプターアンタゴニストは又、基礎的及び夜間の酸分泌をも阻害する。
【0030】
制酸剤
本発明の他の面は、胃腸の病状又は疾患の治療のための、グレリン模倣物例えばイパモレリンと制酸剤との同時投与の方法を提供する。例えば、この発明の化合物を、制酸剤と同時投与して胃酸を中和することができる。例えば、水酸化アルミニウム及びマグネシウム(MAALOX(商標)及びMYLANTA(商標))は、胃酸を中和して、胃及び十二指腸球部におけるpHを増大させる。
【0031】
緩下剤
本発明は、更に、グレリン模倣物例えばイパモレリンと緩下剤を、胃腸の病状又は疾患を治療するために、同時投与するための方法を提供する。緩下剤は、様々な形態であってよく、例えば、液体、錠剤、坐薬、粉末、顆粒、カプセル、チューインガム、チョコレート風味のウェハース、及びキャラメルを含む。緩下剤の基本型は、膨張性緩下剤、潤滑性緩下剤、便軟化剤(緩和性緩下剤とも呼ばれる)、及び刺激性緩下剤である。
【0032】
膨張性緩下剤は、消化管を消化されずに通過するセルロース及びオオバコなどの材料を含む。例えば、これらの材料は、液体を吸収して膨張し、便を軟らかく、かさばったものにして、通過を容易にする。このかさばった便は、次いで、結腸を刺激して運動させる。このグループの緩下剤には、FIBERCON(商標)、FIBERALL(商標)、及びMETAMUCIL(商標)などのブランドが含まれる。
【0033】
潤滑性緩下剤には、例えば、鉱油が含まれる。鉱油は、最も広く用いられる潤滑性緩下剤である。口から摂取すれば、該油が、便をコートする。これは、便の水分と柔らかさを保ち、その通過を容易にする。潤滑性緩下剤は、しばしば、しぶり腹を回避する必要のある患者(例えば、腹部手術後)に用いられる。
【0034】
便軟化剤(緩和性緩下剤)は、便を、それらの水分含量を増すことによって、一層軟らかくして、通過を一層容易にする。この型の緩下剤は、実際は、結腸の運動を刺激しないが、しぶり腹を伴わない結腸運動を可能にする。便軟化剤は、例えば、最近の外科手術の故に、しぶり腹を避けることを必要とする人々において便秘を防止するために用いられるのがベストである。便軟化剤には、例えば、ドクセートナトリウム(COLACE(商標)、REGUTOL(商標)、その他)、ドクセートカルシウム(SURFAK(商標)、DC SOFTGELS(商標))及びドクセートカリウム(DIALOSE(商標)、DIOCTO-K(商標))が含まれる。
【0035】
セロトニンレセプター(5−HT)アゴニスト(純粋又は混合物)
本発明は又、グレリン模倣物例えばイパモレリンとセロトニンレセプターアゴニスト例えば5−HT4アゴニストを、胃腸の病状又は疾患を治療するために同時投与するための方法をも提供する。これらのセロトニンアゴニストは、純粋であっても混合された5−HTレセプターサブタイプであってもよく、又は他の中枢神経系レセプター例えばドーパミンとの混合物であってもよい。
【0036】
5−HT4アゴニストは、結腸内容物の結腸を通過する移動をスピードアップし、腸神経刺激に対する感受性を低下させる。この発明の化合物と組み合わせて用いることのできる適当なセロトニンアゴニストには、ラウオルシン、ヨヒンビン、メトクロプラミド、プルカロプリド及びテガセロド(ZELNORM(商標))が含まれるが、これらに限られない。Spiller R.,「Serotonergic Modulating Drugs for Functional Gastrointestinal Diseases」、Br J Clin Pharmacol. 54:11-20(2002)及び米国特許第6,413,988号(参考として、本明細書中に援用する)。
【0037】
モチリンレセプターアゴニスト
本発明は、更に、グレリン模倣物例えばイパモレリンとモチリンレセプターアゴニストの、胃腸の病状又は疾患の治療ための同時投与のための方法を提供する。モチリンは、多くの種の胃腸管系で生成される22アミノ酸のペプチドである。モチリンは、イヌ、ウサギ及びヒトの胃組織並びにウサギの結腸において、平滑筋の収縮を誘導する。局所的な胃腸組織から離れて、モチリン及びそのレセプターは、他の組織において見出されている。
【0038】
モチリンに加えて、モチリンレセプターのアゴニストであって、胃腸管内容物の排出を誘出する他の物質がある。それらの薬剤の一つは、抗生物質のエリスロマイシンである。研究は、エリスロマイシンが、モチリン自身に匹敵する生物学的応答を誘出し、それ故、慢性特発性擬似腸閉塞及び胃不全麻痺などの病気の治療に有用でありうることを示した。Weber, F.等、The American Journal of Gastroenterology, 88:4, 485-90(1993)(参考として、本明細書中に援用する)。
【0039】
ドーパミンアンタゴニスト
本発明の他の面は、グレリン模倣物例えばイパモレリンとドーパミンアンタゴニストの、胃腸の病状又は疾患を治療するための同時投与のための方法を提供する。
【0040】
ドーパミンアンタゴニストは、ドーパミンレセプターに結合するが、それらを活性化せず、それにより、ドーパミン又は外因性アゴニストの作用をブロックする薬物である。このクラスの薬物には、メトクロプラミド、ドンペリドン、アミスルプリド、クレボプリド、モサプラミン、ネモナプリド、レモキシプリド、リスペリドン、スルピリド、スルトプリド及びジプラシドンが含まれるが、これらに限られない。
【0041】
コリンエステラーゼインヒビター
本発明は又、グレリン模倣物例えばイパモレリンとコリンエステラーゼインヒビターを、胃腸の病状又は疾患を治療するために同時投与するための方法をも提供する。用語「コリンエステラーゼインヒビター」は、アセチルコリンの作用を、コリンエステラーゼによるその破壊又は加水分解を阻害することによって延長させる少なくとも一つの薬剤を指す。コリンエステラーゼインヒビターは又、アセチルコリンエステラーゼインヒビターとしても知られている。コリンエステラーゼインヒビターの例には、エドロホニウム、ネオスチグミン、ネオスチグミンメチルサルフェート、ピリドスチグミン、タクリン及びフィゾスチグミン、アンベノニウムクロリド(MYTELASE(商標))、エドロホニウムクロリド(TENSILON(商標))、ネオスチグミン(PROSTIGMINE(商標))、ピリドグスチミナ(MESTINON(商標))、ジスチグミンブロミド、エプタスチグミン、ガランタミン、アクセクリジン、アセチルクロリンブロミド、アセチルクロリンクロリド、アクラトニウムナパジシレート、ベンズピリニウムブロミド、カルバコール、カルポニウムクロリド、セメカリウムブロミド、デクスパンテノール、ジイソプロピルパラオキソン、エコチオフェートクロリド、エセリジン、フルトレトニウム、メタコリンクロリド、ムスカリン、オキサプロパニウムヨージド、及びキサノメリンが含まれるが、これらに限られない。
【0042】
立体化学
ここに記載された化合物の多くは、少なくとも一つのキラル中心を有し、それ故、種々の鏡像型で存在しうる。所望であれば、キラル炭素を、アスタリスク(*)で示すことができる。この発明の式においてキラル炭素への結合が直線として描かれている場合には、キラル炭素の(R)及び(S)配置の両方が、それ故、鏡像異性体の両方及びそれらの混合物が式中に包含されるということが理解される。当分野で用いる場合、キラル炭素の絶対配置を特定することを望む場合には、キラル炭素への結合の一つをくさび(紙面の上側の原子への結合)として描くことができ、別のものを、短い平行線のシリーズ又はくさび(紙面の下側の原子への結合)として描くことができる。カーン−インゴルド−プレローグのシステムを利用して、キラル炭素に、(R)又は(S)は位置を割り当てることができる。
【0043】
本発明の化合物が2つ以上のキラル炭素を有する場合には、それは、2以上の光学異性体を有することができ、ジアステレオ異性体として存在しうる。例えば、2つのキラル炭素がある場合には、その化合物は、最大4種類の光学異性体及び2対の鏡像異性体((S,S)/(R,R)及び(R,S)/(S,R))を有することができる。これらの鏡像異性体の対(例えば、(S,S)/(R,R))は、互いの鏡像立体異性体である。鏡像でない立体異性体(例えば、(S,S)と(R,S))は、ジアステレオ異性体である。これらのジアステレオ異性体対は、当業者に公知の方法たとえばクロマトグラフィー又は結晶化によって分離することができ、各対中の個々の鏡像異性体を、上記のように分離することができる。本発明は、かかる化合物の各ジアステレオ異性体及びそれらの混合物を包含する。
【0044】
スクリーニング
グレリン模倣化合物は、例えば、ライブラリー又は分子のコレクションを適当な方法を用いてスクリーニングすることによって同定することができることは理解される。関心ある化合物の他の起源は、多くの構造的に異なる分子種を含むことのできるコンビナトリアルライブラリーである。コンビナトリアルライブラリーは、リード化合物を同定するために又は以前に同定されたリード化合物を最適化するために利用することができる。かかるライブラリーは、コンビナトリアル化学の周知の方法により製造して、適当な方法によりスクリーニングすることができる。
【0045】
胃腸の疾患を治療する方法
本発明は、胃腸系の運動を、それを必要とする患者において刺激する方法であって、該患者が胃腸系の疾患(即ち、病気、異常、病状、又は薬物若しくは手術により誘発される機能不全)を患っている当該方法を提供する。この方法は、治療上有効な量のグレリン模倣化合物又は製薬上許容しうるその塩、水和物若しくは溶媒和物を、それを必要とする患者に投与することを含む。このグレリン模倣物は、式Iにより表されるイパモレリン、又は製薬上許容しうるその塩、水和物若しくは溶媒和物である。
【0046】
ここで用いる場合、用語「胃腸の疾患」は、障害のある胃腸機能を生じる任意の病気、異常、病状、又は機能不全を指す。例えば、この胃腸の疾患は、オピオイドに誘発される胃腸の機能不全、例えばモルヒネにより誘発される便秘、術後イレウス、又は胃不全麻痺であってよい。
【0047】
便秘症
他の面において、この発明は、治療上有効な量のグレリン模倣物例えばイパモレリンを投与することにより、便秘症を治療する方法を提供する。便秘症は、不快な又は頻繁な結腸の運動を有する状態である。便秘症の人は、硬い便を生じて、排便が困難でありうる。その人は又、直腸が完全に空になっていないかのように感じうる。急性の便秘症は、突然顕著に始まる。他方、慢性の便秘症は、潜行的に始まって、数カ月又は数年間続きうる。
【0048】
この発明の便秘症を治療する方法は、更に、グレリン模倣物例えばイパモレリンを治療上有効な量の緩下剤と同時投与することを含むことができる。適当な緩下剤には、膨脹性緩下剤、潤滑性緩下剤、便軟化剤、又はこれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限られない。
【0049】
オピオイド誘発性の便秘症
この発明は、オピオイドにより誘発される便秘症を、治療上有効な量のグレリン模倣物例えばイパモレリンを投与することによって治療する方法を提供する。慢性痛を軽減するためのオピオイド鎮痛剤の使用は、中枢神経系の標的外の臓器に効果を引き起こしうる。例えば、オピオイドの作用は、胃内容物の排出を遅くして結腸の運動を抑制することができる。糞便が腸内に長時間あることは、糞便内容物からの過度の水分及びナトリウムの吸収を生じ、これは、一層硬く、一層乾燥した便及び便秘症を生じる。この影響は、鎮痛剤を使用している個人の約90%を悩ませている。オピオイド薬物療法を受けている慢性痛を有する患者にとって、その結果生じる便秘症は、投与量を制限させる副作用でありうる。加えて、術後痛の管理のために用いられる鎮痛剤は、オピオイド誘発性便秘症を引き起こしうる。適当なオピオイドには、モルヒネ、コデイン、オキシコドン、ヒドロモルフォン、ヒドロコドン、メタドン、フェンタニル、及び抗炎症剤例えばアセトアミノフェン又はアスピリン又はこれらの任意の組合せとの組合せが含まれるが、これらに限られない。
【0050】
オピオイドに誘発される便秘症の治療方法は、更に、グレリン模倣化合物例えばイパモレリンを治療上有効な量の末梢作用性オピオイドアンタゴニスト、緩下剤又はこれらの任意の組合せと同時投与することを含むことができる。適当な末梢作用性オピオイドアンタゴニストには、メチルナルトレキソン、ナルトレキソン、ナルメフェン、ナロキソン及びアルビモパン又はこれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限られない。適当な緩下剤には、膨脹性緩下剤、潤滑性緩下剤、及び便軟化剤、又はこれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限られない。
【0051】
術後イレウス
本発明は、術後イレウスを、治療上有効な量のグレリン模倣物例えばイパモレリンを投与することによって治療する方法を提供する。胃腸(GI)管の運動が、手術後に一時的に機能低下することは、十分に、立証されている。腹部の手術が胃腸の運動に対して有する影響は、一般に、「術後イレウス」と呼ばれており、これは、消化管の正常な強調した運動の混乱を示す用語であり、腸内容物の蠕動運動が機能不全となる。イレウスは又、結腸の機能的、非機械的障害としても定義されている。用語「術後イレウス」は、正常な胃及び腸からの内容物の排出の遅延を指す。
【0052】
術後イレウスの治療方法は、更に、グレリン模倣物例えばイパモレリンを治療上有効な量のドーパミンアンタゴニストと同時投与することを含むことができる。適当なドーパミンアンタゴニストには、メトクロプラミド、ドンペリドン、アミスルプリド、クレボプリド、モサプラミン、ネモナプリド、レモキシプリド、リスペリドン、スルピリド、スルトプリド及びジプラシドン、又はこれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限られない。
【0053】
過敏性大腸症候群
本発明は、過敏性大腸症候群を、治療上有効な量のグレリン模倣物例えばイパモレリンを投与することによって治療する方法を提供する。過敏性大腸症候群(IBS)は、全胃腸管の運動に影響を与える機能障害であり、腹痛、便秘症、及び/又は下痢を生じうる。IBSにおける障害された消化管の運動は、炎症又は腫瘍などの物理的構造の変化を伴わない。IBSの症状は、腸の任意の部分における異常な筋肉収縮に関係すると考えられる。
【0054】
この症候群において、胃腸管は、胃腸刺激に対して特に敏感である。ストレス、ダイエット、薬物、ホルモン、又は軽微な刺激が、胃腸管の異常な収縮を引き起こしうる。種々の型のIBSがある:便秘優勢のIBS、下痢優勢のIBS及び便秘優勢と便秘優勢が交互に起きるIBS。
【0055】
IBSを治療する方法は、グレリン模倣化合物例えばイパモレリンを治療上有効な量のH2レセプターアンタゴニスト;セロトニン5−HTアゴニスト;緩下剤;又はこれらの任意の組合せと同時投与することを含むことができる。
【0056】
適当なH2レセプターアンタゴニストには、ニザチジン、ラニチジン、ファモチジン、及びシメチジン、又はこれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限られない。適当な中枢神経系レセプターアゴニストには、ラウオルシン、ヨヒンビン、メトクロプラミド、テガセロド、又はこれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限られない。適当な緩下剤には、膨脹性緩下剤、潤滑緩下剤、便軟化剤、又はこれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限られない。
【0057】
胃食道逆流疾患
この発明は、更に、胃食道逆流疾患を、治療上有効な量のグレリン模倣物例えばイパモレリンを投与することによって治療する方法を提供する。胃食道逆流疾患(GERD)は、胃の内容物(例えば、胆汁酸塩)が食道に戻って、胃内容物の胃から下部食道への慢性的な逆流を引き起こす状態である。一般に、胸やけとして知られるGERDは、食道の刺激及び炎症を引き起こす。
【0058】
GERDの人々は、食道括約筋(胃内容物が食道に戻るのを防止するための、食道の下端に位置する環状の筋肉)が、その防御的任務を行なうことができない。人が飲食するときのみ開く代わりに、それは、弛緩して消化液が食道に逆流して食道の内層を刺激するのを許す。
【0059】
2つの型のGERD、直立性又は日中性GERD及び仰臥性又は夜間性GERDが同定されている。夜間性逆流症状の発現は、低頻度であるが、酸洗浄(clearance)は、一層長時間である。夜間性逆流は、GERDの合併症例えば食道糜爛、潰瘍及び呼吸症状と結合しうる。現在、1700万人の米国人が、胸やけ及びGERDの他の症状に苦しんでいると見積もられている。
【0060】
GERDを治療する方法は、グレリン模倣化合物例えばイパモレリンを治療上有効な量のH2レセプターアンタゴニスト;制酸剤;プロトンポンプインヒビター;又はこれらの任意の組合せと同時投与することを含む。
【0061】
適当なH2レセプターアンタゴニストには、ニザチジン、ラニチジン、ファモチジン、及びシメチジン、又はこれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限られない。適当な制酸剤には、水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウム及びこれらの組合せが含まれるが、これらに限られない。適当なプロトンポンプインヒビターには、エソメプラゾール(NEXIUM(商標))、オメプラゾール、ランソプラゾール、パントプラゾール、又はこれらの組合せが含まれるが、これらに限られない。
【0062】
胃不全麻痺
本発明は、胃不全麻痺例えば糖尿病性又は特発性の胃不全麻痺を、治療上有効な量のグレリン模倣物例えばイパモレリンを投与することによって治療する方法を提供する。胃不全麻痺(遅い胃内容物の排出とも呼ばれる)は、胃がその内容物を排出するのに余りに長時間を要する異常である。それは、しばしば、1型糖尿病又は2型糖尿病の人々に生じる。胃不全麻痺は、胃への神経が損傷を受け又は作用停止した場合に起こりうる。迷走神経は、消化管を通る食物の動きを制御する。もし迷走神経が損傷を受けると、胃及び腸の筋肉は、正常に働かず、食物の動きは、遅くなるか停止する。糖尿病は、もし血中グルコースレベルが長時間にわたって高く維持されるならば、迷走神経に損傷を与えうる。高い血中グルコースは、神経に化学的変化を引き起こして、神経に酸素と栄養素を運ぶ血管に損傷を与える。
【0063】
胃不全麻痺を治療する方法は、グレリン模倣化合物例えばイパモレリンを、治療上有効な量のドーパミンアンタゴニストと同時投与することを含むことができる。適当なドーパミンアンタゴニストには、メトクロプラミド、ドンペリドン、アミスルプリド、クレボプリド、モサプラミン、ネモナプリド、レモキシプリド、リスペリドン、スルピリド、スルトプリド及びジプラシドン、又はこれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限られない。
【0064】
この発明は、更に、胃腸系の運動を刺激する(即ち、誘導する)のに有用な医薬組成物に言及する。この医薬組成物は、グレリン模倣物及び随意の製薬上許容しうるキャリアーを含む。この医薬組成物は、第二の量の適当な治療剤を含むことができる。適当な治療剤は、治療される患者の病状に基いて、決定することができる。
【0065】
例えば、この医薬組成物は、第一の量のグレリン模倣物例えばイパモレリン、及び第二の量の緩下剤(便秘を治療する場合)を含むことができる。本発明の医薬組成物は、適宜、製薬上許容しうるキャリアーを含むことができる。このグレリン模倣物と緩下剤は、各々、この医薬組成物中に、治療上有効な量で存在することができる。他の面において、該第一の及び第二の量は、一緒に、治療上有効な量を構成することができる。
【0066】
この医薬組成物は、第一の量のグレリン模倣物及び第二の量のH2レセプターアンタゴニストを含むことができる。本発明の医薬組成物は、適宜、製薬上許容しうるキャリアーを含むことができる。このグレリン模倣物及びH2レセプターアンタゴニストは、各々、この医薬組成物中に、治療上有効な量で存在することができる。他の面において、該第一の及び第二の量は、一緒に、治療上有効な量を構成することができる。
【0067】
この医薬組成物は、第一の量のグレリン模倣物及び第二の量のセロトニンレセプターアゴニストを含むことができる。この医薬組成物は、適宜、製薬上許容しうるキャリアーを含むことができる。このグレリン模倣物とセロトニンレセプターアゴニストは、各々、この医薬組成物中に、治療上有効な量で存在することができる。この第一の及び第二の量は、一緒に、治療上有効な量を構成することができる。
【0068】
この医薬組成物は、第一の量のグレリン模倣物例えばイパモレリン及び第二の量の制酸剤を含むことができる。この医薬組成物は、適宜、製薬上許容しうるキャリアーを含むことができる。このグレリン模倣物と制酸剤は、各々、この医薬組成物中に、治療上有効な量で存在することができる。他の面において、該第一及び第二の量は、一緒に、治療上有効な量を構成することができる。
【0069】
この医薬組成物は、第一の量のグレリン模倣物及び第二の量のオピオイドアンタゴニストを含むことができる。この医薬組成物は、適宜、製薬上許容しうるキャリアーを含むことができる。このグレリン模倣物及びオピオイドアンタゴニストは、各々、この医薬組成物中に、治療上有効な量で存在することができる。第一及び第二の量は、一緒に、治療上有効な量を構成することができる。
【0070】
この医薬組成物は、第一の量のグレリン模倣物及び第二の量のプロトンポンプインヒビターを含むことができる。この医薬組成物は、適宜、製薬上許容しうるキャリアーを含むことができる。このグレリン模倣物及びプロトンポンプインヒビターは、各々、この医薬組成物中で、治療上有効な量で存在することができる。第一の量及び第二の量は、一緒に治療上有効な量を構成することができる。
【0071】
この医薬組成物は、第一の量のグレリン模倣物及び第二の量のモチリンレセプターアゴニストを含むことができる。この医薬組成物は、適宜、製薬上許容しうるキャリアーを含むことができる。このグレリン模倣物及びモチリンレセプターアゴニストは、各々、この医薬組成物中に、治療上有効な量で存在することができる。第一及び第二の量は、一緒に、治療上有効な量を構成することができる。
【0072】
この医薬組成物は、第一の量のグレリン模倣物及び第二の量のドーパミンアンタゴニストを含むことができる。この医薬は、適宜、製薬上許容しうるキャリアーを含むことができる。このグレリン模倣物及びドーパミンアンタゴニストは、各々、この医薬組成物中に、治療上有効な量で存在することができる。第一及び第二の量は、一緒に、治療上有効な量を構成することができる。
【0073】
この医薬組成物は、第一の量のグレリン模倣物及び第二の量のコリンエステラーゼインヒビターを含むことができる。この医薬組成物は、適宜、製薬上許容しうるキャリアーを含むことができる。このグレリン模倣物及びコリンエステラーゼインヒビターは、各々、この医薬組成物中に、治療上有効な量で存在することができる。第一の及び第二の量は、一緒に、治療上有効な量を構成することができる。
【0074】
この医薬組成物は、第一の量のグレリン模倣物及び第二の量のソマトスタチンを含むことができる。この医薬組成物は、適宜、製薬上許容しうるキャリアーを含むことができる。このグレリン模倣物及びソマトスタチンは、各々、この医薬組成物中に、治療上有効な量で存在することができる。第一の及び第二の量は、一緒に、治療上有効な量を構成することができる。
【0075】
この発明は、更に、グレリン模倣化合物の、胃腸系の運動を刺激する(即ち、誘導する)ための医薬の製造のための利用に言及する。
【0076】
患者は、ここで用いる場合、哺乳動物などの動物を指し、霊長類(例えば、ヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ブタ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ラット、マウス又は他のウシ属、ヒツジ様動物、ウマ科、イヌ科、ネコ科、ゲッ歯類又はネズミ科の動物種が含まれるが、これらに限られない。好適具体例において、哺乳動物は、ヒトである。
【0077】
ここで用いる場合、治療すること及び治療は、胃腸系の運動を刺激する(例えば、誘導する)ことを指す。
【0078】
ここで用いる場合、治療上有効な量は、所望の生物学的応答を誘出するのに十分な量を指す。この所望の生物学的応答は、胃腸系の運動を刺激する(例えば、誘導する)ことである。所望の生物学的応答は、オピオイドにより誘発された便秘症を治療するために、それを必要とする患者において、胃腸系の運動を刺激する(例えば、誘導する)ことである。この患者は、術後痛の管理のため又は慢性痛管理のためにオピオイドを使用している者であってよい。
【0079】
所望の生物学的応答は、胃不全麻痺を治療するために、それを必要とする患者において胃腸系の運動を刺激する(例えば、誘導する)ことである。
【0080】
所望の生物学的応答は、胃食道逆流疾患を治療するために、それを必要とする患者において、胃腸系の運動を刺激する(例えば、誘導する)ことである。この胃食道逆流疾患は、夜間の胃食道逆流疾患である。
【0081】
所望の生物学的応答は、過敏性大腸症候群を治療するために、それを必要とする患者において、胃腸系の運動を刺激する(例えば、誘導する)ことである。この過敏性大腸症候群は、便秘優勢の過敏性大腸症候群である。更に別の具体例において、過敏性大腸症候群は、便秘/下痢過敏性大腸症候群である。
【0082】
所望の生物学的応答は、便秘症を治療するために、それを必要とする患者において、胃腸系の運動を刺激する(例えば、誘導する)ことである。
【0083】
所望の生物学的応答は、術後イレウスを治療するために、それを必要とする患者において、胃腸系の運動を刺激する(例えば、誘導する)ことである。
【0084】
医薬組成物
本発明における使用に適した医薬組成物は、意図する目的を達成するために治療上有効な量で活性成分が含有されている組成物を包含する。各投薬形態の個々の投与量中に含まれる活性成分の単位含有量は、それ自身で有効量を構成する必要はないということは、必要な有効量は、複数の投薬単位(カプセル、若しくは錠剤若しくはバイアル又はこれらの組合せ)の投与により達成することができることから、認められよう。加えて、幾つかの投薬レベルにおいては、有効量が、一週間、一ヶ月、3ヶ月、又は6ヶ月の使用後まで何らの測定可能な効果を示しえないということは理解される。有効量の決定は、十分、当業者の能力内にあり、特に、ここに与えた詳細な開示に照らして当業者の能力内にある。任意特定のユーザーについての特定の投与量レベルは、年齢、身体的活動レベル、一般的健康状態、及び胃腸疾患の重篤さを含む様々な因子に依存するであろう。
【0085】
治療上有効な投与量は又、所望の効果を、望ましくない副作用又は許容できない副作用を生じることなく達成するのに必要な量をも指す。この発明のグレリン模倣物例えばイパモレリンの毒性と治療的効力を、細胞培養物又は実験動物における標準的な製薬学的手順によって測定することができる。標準的方法を用いて、試験集団の約50%において効力を示す投薬量、ED50を測定することができる。同様に、集団の50%に望ましくない副作用を生じる投薬量、SD50を測定することができる。副作用と治療効果の間の投与量比は、治療インデックスとして表すことができ、それは、SD50/ED50間の比として表されうる。高い治療インデックスを有するグレリン模倣物(例えば、イパモレリン)即ち低投薬量で有効であり望ましくない副作用を有しない(たとえ有するにしても、非常に高い投与量の場合にだけ有する)ものは、好適である。好適な治療インデックスは、約3より大きく、一層好ましくは、治療インデックスは、10より大きく、最も好ましくは、治療インデックスは、25より大きい(例えば、50より大きい)。その上更に、如何なる投薬レベルにおいても副作用を有しないグレリン模倣物は、一層好適である。最後に、低投薬量で有効であり、如何なる投薬レベルでも副作用を有しないグレリン模倣物が、最も好適である。厳密な配合、投与経路及び投薬量は、所望の効果によって選択することができ、当業者によりなされうる。
【0086】
ある具体例において、これらのグレリン模倣物は、製薬上許容しうる塩として配合される。ここで用いる場合、用語製薬上許容しうる塩は、製薬上許容しうる無毒性の酸(無機酸、有機酸を含む)から製造される、投与されるべき化合物の塩、その溶媒和物、水和物又はクラスレートを指す。かかる無機酸の例は、塩化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸及びリン酸である。適当な有機酸は、例えば、脂肪酸、芳香族酸、カルボン酸及び有機酸のクラスのスルホン酸から選択することができ、その例は、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、樟脳スルホン酸、クエン酸、フマル酸、グルコン酸、イセチオン酸、乳酸、リンゴ酸、粘液酸、酒石酸、パラ−トルエンスルホン酸、グリコール酸、グルクロン酸、マレイン酸、フロ酸、グルタミン酸、安息香酸、アントラニル酸、サリチル酸、フェニル酢酸、マンデル酸、エムボン酸(パモ酸)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、パントテン酸、ベンゼンスルホン酸(ベシル酸塩)、ステアリン酸、スルファニル酸、アルギン酸、ガラクツロン酸などである。
【0087】
この発明のグレリン模倣物は、それらの水和物例えば半水和物、一水和物、二水和物、三水和物、四水和物など及び溶媒和物から製造することができる。
【0088】
グレリン模倣物例えばイパモレリン及びその誘導体並びに任意の同時投与される薬剤を、投与に適当でありうる任意の適当な医薬組成物中に組み込むことができる。かかる組成物は、典型的には、活性な薬剤(例えば、この発明のグレリン模倣物)及び製薬上許容しうるキャリアーを含む。
【0089】
ここで用いる場合、「製薬上許容しうるキャリアー」は、任意のすべての溶媒、分散媒、被覆剤、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤など(医薬投与と適合性のもの)を包含することを意図している。かかる媒質及び薬剤の、医薬的に活性な物質のための利用は、当分野で周知である。如何なる慣用の媒質又は薬剤であっても活性化合物と不適合性である場合を除いて、それらのこれらの組成物における使用は企図される。補助的活性化合物も又、この発明の医薬組成物に組み込むことができる。この医薬組成物の成分の何れに対しても、この発明の因子の溶解度又は浄化値に影響を与えるための改変を行なうことができる。ペプチド分子は又、酵素分解に対する抵抗性を増すために、D−アミノ酸を用いて合成することもできる。幾つかの場合には、この組成物は、一種以上の可溶化剤、防腐剤、及び透過性増進剤と同時投与することができる。
【0090】
グレリン模倣物の投与
治療上有効な量又は投与量は、患者の年齢、性別、及び体重、並びに患者の現時点での健康状態に依存する。当業者は、適当な投薬量を、所望の生物学的応答を達成するために、これらの及び他の因子によって決定することができる。
【0091】
この発明のグレリン模倣物の一日当りの適当な投与量は、約1ng〜約10,000mg、約5ng〜約9,500mg、約10ng〜約9,000mg、約20ng〜約8,500mg、約30ng〜約7,500mg、約40ng〜約7,000mg、約50ng〜約6,500mg、約100ng〜約6,000mg、約200ng〜約5,500mg、約300ng〜約5,000mg、約400ng〜約4,500mg、約500ng〜約4,000mg、約1μg〜約3,500mg、約5μg〜約3,000mg、約10μg〜約2,600mg、約20μg〜約2,575mg、約30μg〜約2,550mg、約40μg〜約2,500mg、約50μg〜約2,475mg、約100μg〜約2,450mg、約200μg〜約2,425mg、約300μg〜約2,000、約400μg〜約1,175mg、約500μg〜約1,150mg、約0.5mg〜約1,125mg、約1mg〜約1,100mg、約1.25mg〜約1,075mg、約1.5mg〜約1,050mg、約2.0mg〜約1,025mg、約2.5mg〜約1,000mg、約3.0mg〜約975mg、約3.5mg〜約950mg、約4.0mg〜約925mg、約4.5mg〜約900mg、約5mg〜約875mg、約10mg〜約850mg、約20mg〜約825mg、約30mg〜約800mg、約40mg〜約775mg、約50mg〜約750mg、約100mg〜約725mg、約200mg〜約700mg、約300mg〜約675mg、約400mg〜約650mg、約500mg、又は約525mg〜約625mgの範囲内であってよい。
【0092】
この発明のグレリン模倣物の、他の適当な一日当りの投与量は、約1ng、約5ng、約10ng、約20ng、約30ng、約40ng、約50ng、約100ng、約200ng、約300ng、約400ng、約500ng、約1μg、約5μg、約10μg、約20μg、約30μg、約40μg、約50μg、約100μg、約200μg、約300μg、約400μg、約500μg(0.5mg)、約1mg、約1.25mg、約1.5mg、約2.0mg、約2.5mg、約3.0mg、約3.5mg、約4.0mg、約4.5mg、約5mg、約10mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約625mg、約650mg、約675mg、約700mg、約725mg、約750mg、約775mg、約800mg、約825mg、約850mg、約875mg、約900mg、約925mg、約950mg、約975mg、約1000mg、約1025mg、約1050mg、約1075mg、約1100mg、約1125mg、約1150mg、約1175mg、約1200mg、約1225mg、約1250mg、約1275mg、約1300mg、約1325mg、約1350mg、約1375mg、約1400mg、約1425mg、約1450mg、約1475mg、約1500mg、約1525mg、約1550mg、約1575mg、約1600mg、約1625mg、約1650mg、約1675mg、約1700mg、約1725mg、約1750mg、約1775mg、約1800mg、約1825mg、約1850mg、約1875mg、約1900mg、約1925mg、約1950mg、約1975mg、約2000mg、約2025mg、約2050mg、約2075mg、約2100mg、約2125mg、約2150mg、約2175mg、約2200mg、約2225mg、約2250mg、約2275mg、約2300mg、約2325mg、約2350mg、約2375mg、約2400mg、約2425mg、約2450mg、約2475mg、約2500mg、約2525mg、約2550mg、約2575mg、約2600mg、約3,000mg、約3,500mg、約4,000mg、約4,500mg、約5,000mg、約5,500mg、約6,000mg、約6,500mg、約7,000mg、約7,500mg、約8,000mg、約8,500mg、約9,000mg、又は約9,500mg以上の投与量を含む。
【0093】
グレリン模倣物の適当な投与量は、一日当たり約0.20mg〜約4000mgの範囲内であってよく、例えば、約1mg〜約4000mg、例えば、約5mg〜約3000mg、例えば、約10mg〜約2400mgであってよい。この投与量は、単回投薬にて投与することもできるし、複数回の投薬(例えば、一日当たり1〜4回)にて投与することもできる。複数回の投薬を用いる場合には、各投薬量は、同じであっても異なってもよい。
【0094】
追加的治療剤例えば緩下剤のための適当な投与量は、グレリン模倣物について上記したものと同じ範囲であってよい。グレリン模倣物及び追加の薬剤の投与量は、同じであっても異なってもよい。追加的薬剤の適当な投与量は、文献中に見出すことができる。
【0095】
この発明の方法における使用のための化合物は、任意の適当な経路例えば経口投与又は非経口投与{例えば、経皮投与、経粘膜投与(例えば、舌下、舌側、(経)頬投与)、膣投与(例えば、経膣的及び膣周囲投与)、鼻(腔内)投与及び直腸(内)投与、皮下投与、筋肉内投与、皮内投与、動脈内投与、静脈内投与、吸入及び局所的投与}による投与のために配合することができる。
【0096】
好適具体例において、この発明の化合物は、静脈内送達用に配合される。他の好適具体例において、この発明の化合物は、経口送達用に配合される。適当な組成物及び投薬形態には、錠剤、カプセル、キャプレッツ、丸薬、ゲルキャップ、トローチ、分散液、懸濁液、溶液、シロップ、顆粒、ビーズ、経皮パッチ、ゲル、粉末、ペレット、マグマ剤、ロゼンジ、クリーム、ペースト、膏剤、ローション、ディスク、坐薬、液体スプレー、乾燥粉末又はエアゾル化配合物が含まれる。
【0097】
これらの化合物が経口投与されるということは好適である。適当な経口投薬形態には、例えば、慣用の手段により、製薬上許容しうる賦形剤例えば結合剤(例えば、ポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、ラクトース、微晶質セルロース又はリン酸カルシウム);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク又はシリカ);崩壊剤(例えば、ナトリウム澱粉グリコレート);又は湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)を用いて製造された錠剤、カプセル又はキャプレッツが含まれる。所望であれば、適当な方法を用いて、これらの錠剤を、例えば、飲み込みやすくするために又は活性成分の遅延された放出を与えるために被覆することができる。経口投与のための液体製剤は、溶液、シロップ又は懸濁液の形態であってよい。液体製剤(例えば、溶液、懸濁液及びシロップ)は又、経口投与に適しており、製薬上許容しうる添加剤例えば懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、メチルセルロース又は水素化した食用脂肪);乳化剤(例えば、レシチン又はアラビアゴム);非水性ビヒクル(例えば、アーモンド油、油性エステル又はエチルアルコール);及び防腐剤(例えば、メチル又はプロピルp−ヒドロキシベンゾエート又はソルビン酸)と共に、慣用の手段により製造することができる。
【0098】
好ましくは、この発明のグレリン模倣物を含む医薬組成物は、胃腸疾患(例えば、胃腸の運動を損なう胃腸管の異常、病気、病状又は損傷)を、胃腸の運動を刺激することにより治療するために用いられる。厳密な配合、投与経路及び投薬量は、所望の効果によって選択することができ、当業者によって為されうる。
【0099】
投薬の間隔は、実験的試験により決定することができる。この発明の一種以上のグレリン模倣物は、正常より10%、約20%、約50%上回るか又は下回る胃腸の運動を維持する養生法を用いて投与することができよう。
【0100】
他の適当な投与方法は、この発明のグレリン模倣物を、移植物により又はグレリン模倣物を発現することのできる細胞系統を、該移植物又は細胞系統がグレリン模倣物を胃腸系の細胞に与えることができるように与えることである。
【0101】
この発明の医薬組成物は、その意図した投与経路と適合するように配合することができる。
【0102】
経口投与は、この発明の医薬組成物の、口を介する摂取、又は食道を含む胃腸系の他の任意の部分を介する摂取による投与又は坐薬投与による投与を指す。非経口投与は、組成物例えばグレリン模倣物を含む組成物の、胃腸管を介した経路(例えば、経口送達)以外の経路による送達を指す。特に、非経口投与は、腸脈内注射、皮下注射、筋肉内注射又は髄内(即ち、鞘内)注射であってよい。非経口投与用製剤は、ガラス又はプラスチック製のアンプル、ディスポーサブル注射器又は多数の投与用小瓶に封入することができる。局所投与は、医薬の、皮膚又は粘膜(鼻、肺及び口(この場合は、経口投与の形態でもありうる)の表面膜を含む)の外表面への適用を指し、それで、薬剤は、皮膚又は粘膜の外表面を横切って、下にある組織に入る。医薬の局所投与は、その薬剤の皮膚及び周囲組織への限られた分布を生じうるか、又は、その薬剤が血流によって治療領域から移動される場合には、その薬剤の全身的分布を生じうる。
【0103】
この発明により企図される局所投与の一形態において、グレリン模倣物は、経皮送達により送達される。経皮送達は、薬剤の、皮膚のバリヤーを横切る拡散を指す。無傷の皮膚を通過する吸収は、活性な薬剤を皮膚への適用の前に油性のビヒクル中に入れること(塗油として知られた方法)及び極微針の使用により増進されうる。受動的局所投与は、活性な薬剤を、緩和剤又は浸透増進剤と共に、直接、治療部位に適用することからなりうる。皮膚を通過する送達を増進させる他の方法は、医薬の投薬量を増すことである。局所投与のための投薬量は、他の経路により投与される投薬量の10倍、100倍又は1000倍まで増大させることができる。
【0104】
経皮送達のための浸透剤は、一般に、当分野で公知であり、例えば、経粘膜投与のために、洗剤、胆汁酸塩、及びフシジン酸誘導体が含まれる。経粘膜投与は、鼻スプレー又は坐薬の利用により達成することができる。吸入による投与のためには、この発明のグレリン模倣物は、適当な噴射剤例えば二酸化炭素などのガスを含んだ加圧容器又波ディスペンサーからのエアゾルスプレーの形態で、又はネブライザーにて送達することができる。経皮投与のためには、この発明のグレリン模倣物を、当分野で一般に知られているように、軟膏、膏薬、ゲル、又はクリーム中に配合することができる。
【0105】
加えて、この発明のグレリン模倣物は、鼻投与又は肺投与法により送達することができる。エーロゾル化した医薬の肺送達は、多くの参考文献に記載されており、それは、Gansslen(1925)Klin. Wochenschr. 4:71に始まり、Laube等、(1993)JAMA 269:2106-21-9; Elliott等、(1987)Aust. Paediatr. J. 23:293-297; Wigley等、(1971)Diabetes 20:552-556. Corthorpe等、(1992)Pharm Res 9:764-768; Govinda(1959)Indian J. Physiol. Pharmacol. 3:161-167; Hastings等、(1992)J.Appl.Physiol. 73:1310-1316; Liu等、(1993)JAMA 269:2106-2109; Nagano等、(1985)Jikeikai Med. J. 32:503-506; Sakr(1992)Int. J. Phar. 86:1-7;及びYoshida等、(1987)Clin.Res. 35:160-166(これらの各々を、参考として、本明細書中に援用する)を含む。乾燥粉末医薬の肺送達は、米国特許第5,254,330号に記載されている。計量された投与量の吸入器は、Lee及びSciara(1976)J. Pharm. Sci. 65:567-572に記載されている。組換えインスリンの気管支内投与は、Schlutiter等(Abstract)(1984)Diabetes 33:75A 及び Kohler等、(1987)Atemw. Lungenkrkr. 13:230-232に簡単に記載されている。様々なポリペプチドの鼻内及び肺送達が、米国特許第5,011,678号及びNagai等、(1984)J. Contr. Rel. 1:15-22に記載されている。
【0106】
注射用途に適した医薬組成物は、当分野で公知であり、例えば、無菌の水溶液(水溶性の場合)又は懸濁液及び、無菌の注射溶液又は分散液を即座に調製するための無菌の粉末が含まれる。この発明のグレリン模倣物の静脈内投与に対して、適当なキャリアーには、例えば、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF, ニュージャージー、Parsippany)又はリン酸緩衝塩溶液(PBS)が含まれる。
【0107】
生理的に許容しうるキャリアーは、医薬(即ち、局所、経口及び非経口)用途に適当であるとしてこの分野で知られている任意のキャリアーであってよい。適当な医薬用キャリアー及び配合物は、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences(19版)(Genarro等、(1995)Mack Publishing Co., ペンシルベニア、Easton)に記載されている。
【0108】
経口投与溶組成物は、一般に、生理的に許容しうる不活性な希釈剤又は食用キャリアーを含む。それらは、ゼラチンカプセルに封入することができ又は錠剤に圧縮することができる。経口治療剤投与のために、この発明のグレリン模倣物は、生理的賦形剤に組み込むことができ、錠剤、トローチ又はカプセルの形態で用いることができる。
【0109】
注射可能な薬物の送達を変える幾つかの系は、治療剤の薬物速度論的特性を変えるために利用することができる(例えば、K. Reddy, 2000, Annals of Pharmacotherapy 34:915-923参照)。薬物送達を、配合の変化(例えば、連続的放出製品、リポソーム)又は薬物分子(例えば、PEG付加(pegylation))への付加によって改変することができる。これらの薬物送達機構の潜在的利点は、増大又は延長された薬理学的活性持続期間、有害な影響の減少、及び増大した患者の従順さ及び生活の質を包含する。注射可能な連続的放出系は、薬物を、制御された、予め決められた様式で送達し、血漿中の薬物濃度の大きな変動を回避することが重要である場合に特に適している。薬物をリポソーム内に封入することは、延長された半減期及び、増大した毛細血管透過性を有する組織(例えば、腫瘍)への増大した分布を生じうる。PEG付加は、この発明のグレリン模倣物と関連してありうる制限(例えば、安定性、半減期、免疫原性)を最少化するために治療用ペプチド又はタンパク質を改変する方法を与える。
【0110】
この発明により、少なくとも一種のグレリン模倣物は、多量体の形成を可能にするために、脂質又は脂質ビヒクル(例えば、ミセル、リポソーム、ミクロスフェア、プロトセル、プロトビオント、リポソーム、コアセルベートなど)と配合することができる。同様に、グレリン模倣物は、PEG付加、架橋、ジスルフィド結合形成、共有架橋結合の形成、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー形成、又は他の確立された方法を利用して、多量体化することができる。これらの多量体化したグレリン模倣物は、医薬組成物中に配合することができ、それらの効果を増大又は増進するために利用することができる。
【0111】
これらのグレリン模倣物は又、直腸送達のために、坐薬(例えば、慣用の坐薬基剤例えばカカオバター及び他のグリセリドを使用)又は保持浣腸の形態で製造することもできる。
【0112】
当業者は、この発明のグレリン模倣物を、局所的な胃腸組織例えば胃、食道、小腸又は結腸(但し、これらに限られない)に一層特異的に送達するために利用することのできる様々な技術が公知であることを認めるだろう。この送達方法は、関心ある組織、送達すべき化合物の性質、及び治療の持続期間などの因子に依存するであろう。
【0113】
一面において、この発明のグレリン模倣物は、グレリン模倣物を急速な身体からの排除に対して防護するキャリアー例えば制御された放出のための配合物(移植物及びマイクロカプセル化送達システムを含む)と共に製造される。これらは、当業者に公知の方法例えば米国特許第4,522,811号に記載された方法に従って製造することができる。
【0114】
このように、本発明の詳細な好適具体例につき記載してきたが、上の段落により規定された発明は、多くの明白な同等物が、本発明の精神又は範囲から離れるることなく可能であるのであるから、上記した特定のものに限定すべきではないということは理解されるべきである。
【実施例】
【0115】
この発明は、今から、下記の非制限的実施例により、更に説明される。
【0116】
イパモレリンの胃運動的効力を、術後イレウスのラットモデルにおいて評価した。これらの研究において、イパモレリンは、腹部手術後の雄ラットに、経口投与され(10mg/kg及び100mg/kg)又は0.01mg/kg〜1.0mg/kgの投与量範囲にわたって単回静脈注射にて投与された。イパモレリンの、胃内容物の排出に対する効果を、ある投与量のフェノールレッドを経口胃管栄養法により投与した直後にイパモレリンを投与することにより、対照用動物と比較して測定した。
【0117】
実施例1.術後イレウスのラットモデルにおけるイパモレリン(10又は100mg/kg)の胃運動的効力
この研究は、イパモレリンの、術後イレウスのラットモデルにおける、10又は100mg/kgの投与量での、単回経口投与後の、潜在的な胃運動的効力を評価した。
【0118】
【表1】
【0119】
方法及び実験デザイン
雄のSprague-Dawley CD(商標)(Crl: CD(商標)(SD))ラット(Rattus norvegicus)を、Charles River Canada Inc.(カナダ国、ケベック、St. Constant在)から得た。これらの動物を実験室の環境に慣らすために、それらの動物を得てから処理の開始まで、9日間を置いた。処理の開始時に、動物は、約7週齢であり、体重は、230〜254gの範囲であった。
【0120】
動物は、個別に、自動給水バルブを備えたステンレス鋼製のワイヤメッシュ底のケージに収容された。各ケージは、プロジェクト、群、動物の数及び性別を示すカラーコード化ケージカードで明確に標識された。各動物は、固有に識別された。動物室の環境及び日長について標的とされた条件は、次のとおりであった:温度22±3℃;湿度50±20%;光周期は12時間の照明と12時間の暗黒。
【0121】
すべての動物は、市販の標準的な認可されたペレット状研究室用食餌(PMI Certified Rodent Chow 5002: PMI Nutrition International Inc.)を自由に摂ることができた(示した手順中を除く)。この食餌は、製造業者によって、汚染物質(例えば、重金属、アフラトキシン、有機リン酸塩、塩素化炭化水素及びPCB)の最大許容濃度について、制御され、日常的に分析されたものであった。軟水化され、逆浸透により精製されて紫外線に曝露された市営水道水が、無制限に与えられた(示した手順中を除く)。食餌材料中には、この研究の結果に影響を与えうる公知の汚染物質は存在しなかったと考えられる。
【0122】
この研究で入手して使用したイパモレリンは、Bachem AG社(スイス国、Bubendorf在)から得た。使用したビヒクルは、注射用の0.9%塩化ナトリウム(Baxter社製)であった。胃内容物の排出レベルを評価するのに用いた胃腸マーカーは、フェノールレッド(Sigma Aldrich社製)であった。
【0123】
適当量の試験品を、注射用0.9%塩化ナトリウム(米国薬局方)に溶解させた。これらの試験品配合物を、要すれば、0.1N/1N塩化水素酸又は0.1N水酸化ナトリウムを用いて、pH7.4〜7.5に調節した。すべての投薬用配合物を、室温に維持し、遮光した。フェノールレッドを、投薬の日に、5mg/mL溶液として脱イオン水で調製して、室温に遮光して保存した。
【0124】
外科的カテーテル法
各動物には、抗生物質ベンザチンペニシリンG及びプロカインペニシリンG(0.1mL)を、外科手術の日に筋肉内注射し、手術の2日後に再び注射した。これらの動物を、イソフルランガスで麻酔してから、手術の準備(大腿部と背面の切開部位の毛剃りを含む)をした。毛剃りした領域を、クロルヘキシジングルコネート(4%)で洗い、次いで、多めのポビドンヨード(10%)を適用した。外科手術前に、及び外科手順の最後に、麻酔下で、低刺激性の眼科用潤滑剤(Tears Naturale(商標)PM)を各眼に投与した。動物を、外科手順の間中、イソフルランガス麻酔下に維持した。
【0125】
右鼠蹊領域に小さな切込みを入れ、大腿静脈を引き出した。この静脈に小さい静脈切開を行って、medical gradeのシリコーンベースのカテーテルを挿入して、そのカテーテルのチップを大静脈中に、ほぼ腎臓のレベルに置いた。このカテーテルは、適当な縫合材料を用いて適所に固定され、皮下を通り、頸のうなじの露出点まで導かれた。この大腿部を、暖かい(約37℃)0.9%塩化ナトリウム注射(米国薬局方)によって洗浄した。この大腿部を、断続的さし縫い縫合により閉じて、露出部位を、巾着縫合糸により閉じた(これは、5〜10日中に又は治癒結果によって除去された)。局所的抗生物質(ポリミキシンB、バシトラシン、ネオマイシン)を、日々、このカテーテル露出部位に最後まで及び大腿部位に必要ないと考えられるまで投与した。
【0126】
ジャケットを、この動物の上に、束縛系を維持するために置いた。0.9%塩化ナトリウム注射(米国薬局方)を予め満たしたカテーテルを、この束縛系を通して送り、ケージの外側に固定されたスイベルに結合した。スイベルの上部は、注入ポンプに接続され、すべての動物は、0.9%塩化ナトリウム注射(米国薬局方)を0.4mL/時の速度で、処理の開始まで連続的に注入された。
【0127】
術後イレウスを誘発する外科手術
すべての処理手順は、各日に処理される各群からのほぼ等しい数の動物を用いて、連続する2日にわたって繰り返された。食餌は、手術前の一晩、動物へ与えられなかった。手術の日に、動物は、イソフルランガスを用いて麻酔され、非刺激性の眼科用潤滑剤(Tears Naturale PM)を各眼に適用した。これらの動物を、全腹部領域の毛を剃ることにより、手術の準備をした。毛剃りした領域を清浄化して、適切に殺菌してから切開した。外科用メスを用いて、腹部を開いて、盲腸の場所を突き止めた。その盲腸を体外に出して約1分間処理した(即ち、両手の間で、食塩溶液をしみ込ませたガーゼ中で、穏やかにたたいた)。その後、この盲腸を、元の位置に戻し、外科手術部位を、吸収性縫合材料(断続的縫合糸)及びステープルを用いて閉じた。次いで、動物を、それらのケージへ戻して、麻酔から回復させた。
【0128】
偽の対照群(グループ1)に割り当てられた動物は、同じ処理手順を受けたが、但し、盲腸は、体外に出されてから処理を受けずに元の位置に戻された。
【0129】
投与量の投与
投薬は、連続した日々に開始し、各群からのほぼ等しい数の動物に、各日に投薬した。投薬前に、これらの動物は、水を取り上げられた。これらの試験/対照用品は、注射器と可撓性の胃管栄養法用チューブを用いる経口胃管栄養法により投与された。これらの動物は、フェノールレッドの経口胃管栄養法による投与に続いて直ちに投薬された。その投与体積は5mL/kg(イパモレリン及びフェノールレッド投与の両方について)であり、実際に投与された投与量は、各動物の直近の体重に基いた。
【0130】
胃腸の評価
モルヒネ注射の約30分後に、すべての動物は、0.4mLのフェノールレッドを経口胃管栄養法により与えられた。対照又は試験品の投与の約30分後に、これらのラットを、安楽死させた。次いで、その胃を、腹壁切開により、あらわにし、迅速に幽門と噴門で結紮して、取り出した。その胃を切り開いて、その内容物を、100mLの0.1N NaOHで抽出した。この抽出物のフェノールレッド含量を、分光器にて、558nmで分光学的にアッセイした。収集後、試料は、分析のために移動させるまで、濡れた氷上に保存した。
【0131】
結果
術後イレウス後に経口投与されたイパモレリンは、胃内容物の排出を、10及び100mg/kgで、対照用動物と比較して、それぞれ、12.4%及び41.6%加速した(但し、統計的有意を達成してはいない)。図1参照。
【0132】
結論
10又は100mg/kgの投与量で経口投与されたイパモレリンは、投与量依存的関係で、術後イレウスのラットモデルにおいて、胃内容物の排出を加速した。
【0133】
実施例2.術後イレウスのラットモデルにおける静脈内投与されたイパモレリン(0.1、0.25又は1.0mg/kg)の胃運動的効力
この研究において、イパモレリンは、留置カテーテルによるゆっくりとした静脈内ボーラス注射として投与された(凡そ100秒間で)。
【0134】
【表2】
【0135】
方法及び実験デザイン
雄のSprague-Dawley CD(商標)(Crl: CD(商標)(SD))ラット(Rattus norvegicus)を、Charles River Canada Inc.(カナダ国、ケベック、St. Constant在)から購入した。これらの動物の購入からカテーテルの外科的移植まで8日間を置き、これらの動物を、物理的及び環境的条件に順応させた。動物への投薬は、処理前の動物の適切な回復を可能にするために、カテーテルの外科的移植の約1週間後から開始した。処理の開始時に、動物は、約10〜12週齢であり、体重は、327〜397gの範囲であった。
【0136】
動物を、個別に、自動給水バルブを備えたステンレス鋼製のワイヤメッシュ底のケージに収容した。各ケージを、プロジェクト、グループ、動物の数及び性別を示すカラーコード化ケージカードを用いて、明確に標識した。各動物は、個別に識別された。動物室の環境及び日長についての標的とした条件は、次の通りであった:温度22±3℃;湿度50±20%;光周期は、12時間の照明と12時間の暗黒であった。
【0137】
すべての動物は、標準的な市販の認可されたペレット状の実験室用食餌(PMI CertifiedRodent Chow 5002: PMI Nutrition International Inc.)を自由に摂取できた。この食餌は、汚染物質(例えば、重金属、アフラトキシン、有機リン酸塩、塩素化炭化水素及びPCB)の最大許容濃度について、製造業者によって、制御され、日常的に分析された。軟水化され、逆浸透により精製され、紫外線にさらされた市営水道水を無制限に与えた(示した手順中を除く)。これらの食餌材料中には、この研究の結果に影響を与える公知の汚染物質はなかったと考えられる。
【0138】
入手されてこの研究で用いられたイパモレリンは、Bachem AGから得られた。用いたビヒクルは、注射用の0.9%塩化ナトリウム(Baxter)であった。胃からの排出のレベルを評価するために用いた胃腸マーカーは、フェノールレッド(Sigma Aldrich)であった。
【0139】
外科的カテーテル法
各動物は、抗生物質ベンザチンペニシリンG及びプロカインペニシリンG(0.1mL)の筋肉内注射を、外科手術の日に受け、術後2日目に再び受けた。これらの動物を、イソフルランガスにより麻酔してから、大腿部及び背側の切開部位の毛剃りなどの外科手術の準備をした。毛剃りした領域を4%クロルヘキシジングルコネートで洗浄してから、多めの10%ポビドンヨードで洗浄した。外科手術の前と該外科手順の最後に、麻酔下で、低刺激性の潤滑性眼科薬剤(Tears Naturale PM)を各眼に投与した。動物を、外科手順の間中、イソフルランガス麻酔下に維持した。
【0140】
右鼠蹊領域に小さい切開を開き、大腿静脈を引き出した。小さい静脈切開を行なって、医用等級のシリコーンベースのカテーテルを挿入した。そのカテーテルのチップは、凡そ腎臓のレベルで大静脈内に置かれた。そのカテーテルは、縫合材で適所に固定され、次いで、皮下を通り、頸部のうなじにある露出点まで導かれた。大腿部を、暖かい(約37℃)0.9%塩化ナトリウム注射液(米国薬局方)で洗浄した。この大腿部を、断続的さし縫い縫合で閉じて、露出部位を、巾着縫合で閉じ、5〜10日後に又は治癒結果に応じて抜糸した。局所的抗生物質(ポリミキシンB、バシトラシン、ネオマイシン)を、カテーテル露出部位に毎日、最後まで、投与し、大腿部には、必要ないと思われるまで投与した。
【0141】
ジャケットを、この動物の上に、束縛系を維持するために置いた。0.9%塩化ナトリウム注射(米国薬局方)を予め満たしたカテーテルを、この束縛系を通して供給し、ケージの外側に固定されたスイベルに結合した。スイベルの上部は、注入ポンプに接続され、すべての動物は、0.9%塩化ナトリウム注射(米国薬局方)を0.4mL/時の速度で、処理の開始まで連続的に注入された。
【0142】
術後イレウスを誘発する外科手術
すべての処理手順は、各日に処理される各群からのほぼ等しい数の動物を用いて、連続する2日にわたって繰り返された。食餌は、手術前の一晩、動物へ与えられなかった。手術の日に、動物は、イソフルランガスを用いて麻酔され、非刺激性の眼科用潤滑剤(Tears Naturale PM)を各眼に適用した。これらの動物を、全腹部領域の毛を剃ることにより、手術の準備をした。毛剃りした領域を清浄化して、適切に殺菌してから切開した。外科用メスを用いて、腹部を開いて、盲腸の場所を突き止めた。その盲腸を体外に出して約1分間処理した(即ち、両手の間で、食塩溶液をしみ込ませたガーゼ中で、穏やかにたたいた)。その後、この盲腸を、元の位置に戻し、外科手術部位を、吸収性縫合材料(断続的縫合糸)及びステープルを用いて閉じた。次いで、動物を、それらのケージへ戻して、麻酔から回復させた。
【0143】
偽物の対照群(グループ1)に割り当てられた動物は、同じ処理手順を受けたが、但し、盲腸は、体外に出されてから処理を受けずに元の位置に戻された。技術的不注意のために、動物No.2001、2009、3001及び4001の盲腸は、食塩溶液を浸透させたガーゼの代わりに注射用無菌水(米国薬局方)で処理されたということに注意されたい。このわずかな逸脱は、この研究の結果又は結果の解釈に何の影響も有しなかったと考えられた。
【0144】
投与量の投与
投薬は、連続した日々に開始し、各群からのほぼ等しい数の動物に、各日に投薬した。これらの試験/対照用品は、留置カテーテルを介してのゆっくりとしたボーラス静脈注射として投与された(凡そ100秒間で)。これらの動物は、フェノールレッドの経口胃管栄養法による投与後直ちに、投与された。その投与量体積は、5mL/kg(イパモレリン及びフェノールレッド投与の両方)であり、実際の投与される投与量は、各動物の直近の体重に基いた。
【0145】
胃腸の評価
フェノールレッドの投与前に、これらの動物は、水を取り上げられた。手術後約30分(イレウス)で、動物は、0.4mLのフェノールレッドを経口胃管栄養法により受けた。次いで、動物に投薬し、約30分後に、安楽死させた。安楽死時に、胃を、腹壁切開により露出させて、幽門と噴門で迅速に結紮して取り出した。この胃を、切り開いて、その内容物を、100mLの0.1N NaOHで抽出した。この抽出物のフェノールレッド含有量を、比色定量法により、分光器で558nmでアッセイした。収集後に、試料を、分析のために移動させるまで、濡れた氷上に貯蔵した。
【0146】
結果
外科手術後に、0.1、0.25及び1.0mg/kgの投与量で静脈内投与されたイパモレリンは、胃内容物の排出を、雄のアルビノラットにおいて、ビヒクル対照及び偽物対照動物と比較して加速した(投与量関係は認められなかったが)。イパモレリンの静脈内投薬(0.1、0.25又は1.0mg/kg)で治療された動物は、胃のフェノールレッド含有量の、ビヒクル対照グループと比較しての低下(それぞれ、85.7%、95.6%及び92.2%)を示した。これらの減少は、0.25及び1.0mg/kg投与量レベルで統計的有意に達した(それぞれ、p≦0.001及びp≦0.01)。図2参照。
【0147】
ビヒクル対照グループの平均の胃フェノールレッド含有量は、偽物対照グループのそれと類似しており、統計的に差がなく、これは、偽物対照グループにおける(予想外の)イレウス又は外科的対照グループにおいて検出可能なイレウスを誘導できないことを反映しうる。従って、偽物対照グループと比較して発現される場合には、イパモレリンの静脈内投薬(0.1、0.25又は1.0mg/kg)で処理された動物は、胃フェノールレッド含有量の減少(それぞれ、87.1%、96.0%及び93.1%)を示し、これは、すべての投与量レベルにおいて統計的に有意であった。図2参照。
【0148】
結論
外科手術後に雄のアルビノラットに、投与量0.1、0.25及び1.0mg/kgで静脈内投与されたイパモレリンは、胃内容物の排出を、偽物及びビヒクル対照動物と比較して有意に加速した。
【0149】
実施例3.術後イレウスのラットモデルにおける静脈内投与されたイパモレリン(0.01、0.03又は0.1mg/kg)の胃運動的効力
この研究において、イパモレリンは、ゆっくりとしたボーラス静脈注射として留置カテーテルを介して、0.01、0.03又は0.1mg/kgの投与量で投与された(凡そ100秒間で)。
【0150】
【表3】
【0151】
雄のSprague-Dawley CD(商標)(Crl: CD(商標)(SD))ラット(Rattus norvegicus)を用いた。これらの動物の購入からカテーテルの外科的移植まで7日間置いて、これらの動物を物理的及び環境的条件に順応させた。これらの動物への投薬を、動物の処理前の適当な回復のために、カテーテルの外科的移植の約1週間後に開始した。治療開始時に、動物は、約10週齢であり、体重は、334〜385gの範囲であった。動物を、個別に、自動給水バルブを備えたステンレス鋼製のワイヤメッシュ底のケージに収容した。動物室の環境及び日長について標的とした条件は、次のとおりであった:
温度:22±3℃;湿度:50±20%;光周期:12時間の照明と12時間の暗黒。
すべての動物を、死亡率及び病気の徴候及び治療に対する反応について1日に2回検査した(但し、到着の日及び検死の日は、1回検査する)。個々の体重を、投薬の前日に、無作為に測定した(投与量計算目的のためにのみ)。
【0152】
外科的カテーテル法
小さい切開を右鼠蹊領域に作り、大腿静脈を引き出した。小さい静脈切開を行なって、医用等級のシリコーンベースのカテーテルを挿入し、そのカテーテルのチップを、大静脈内で、凡そ腎臓のレベルに位置させた。このカテーテルを、適当な縫合材を用いて適所に固定してから、皮下を通り、頸部のうなじの露出点まで導いた。大腿部を、暖かい(約37℃)0.9%塩化ナトリウム注射液(米国薬局方)で洗浄した。この大腿部を、断続的さし縫い縫合を用いて閉じ、露出部位を巾着縫合により閉じて、5〜10日中に又は治癒結果によって抜糸した。局所的抗生物質(ポリミキシンB、バシトラシン、ネオマイシン)を、カテーテル露出部位に、毎日最後まで、投与し、大腿部に、必要ないと考えられるまで投与した。
【0153】
ジャケットを、この動物の上に、束縛系を維持するために置いた。0.9%塩化ナトリウム注射(米国薬局方)を予め満たしたカテーテルを、この束縛系を通して供給し、ケージの外側に固定されたスイベルに結合した。スイベルの上部は、注入ポンプに接続され、すべての動物は、0.9%塩化ナトリウム注射(米国薬局方)を0.4mL/時の速度で、処理の開始まで連続的に注入された。
【0154】
術後イレウスを誘発する外科手術
全治療手順を、各日に処理される各グループからのほぼ等しい数の動物を用いて、2日連続で繰り返した。食餌は、外科手術前の一晩、動物へ与えられなかった。外科手術の日に、動物をイソフルランガスで麻酔し、低刺激性の眼用潤滑剤(Tears Naturale PM)を各眼に適用した。これらの動物を、全腹部領域の毛を剃ることにより、手術の準備をした。毛剃りした領域を清浄化して、適切に殺菌してから切開した。外科用メスを用いて、腹部を開いて、盲腸の場所を突き止めた。その盲腸を体外に出して約1分間処理した(即ち、両手の間で、食塩溶液をしみ込ませたガーゼ中で、穏やかにたたいた)。その後、この盲腸を、元の位置に戻し、外科手術部位を、吸収性縫合材料(断続的縫合糸)及びステープルを用いて閉じた。次いで、動物を、それらのケージへ戻して、麻酔から回復させた。
【0155】
手術なしの対照群(グループ1)に割り当てられた動物は、術後イレウスを誘発するための外科手術を受けなかった。
【0156】
投与量の投与
投薬は、連続した日々に開始し、各群からのほぼ等しい数の動物に、各日に投薬した。これらの試験/対照用品は、留置カテーテルを介してのゆっくりとしたボーラス静脈注射として投与された。これらの動物は、フェノールレッドの経口胃管栄養法による投与後直ちに、投薬された。その投与量体積は、グループ1、2及び5については5mL/kgであり;グループ3については0.5mL/kgであり、グループ4については1.5mL/kgであった。実際の投与される投与量は、各動物の直近の体重に基いた。
【0157】
胃腸の評価
フェノールレッドの投与前に、これらの動物は、水を取り上げられた。手術後約30分(イレウス)で、動物は、0.4mLのフェノールレッドを経口胃管栄養法により受けた。次いで、動物に投薬し、約30分後に、安楽死させた。安楽死時に、胃を、腹壁切開により露出させて、幽門と噴門で迅速に結紮して取り出した。この胃を、切り開いて、その内容物を、100mLの0.1N NaOHで抽出した。この抽出物のフェノールレッド含有量を、比色定量法により、分光器で558nmでアッセイした。収集後に、試料を、分析のために移動させるまで、濡れた氷上に貯蔵した。
【0158】
結果
外科手術後に、0.01、0.03及び0.1mg/kgの投与量で静脈内投与されたイパモレリンは、胃内容物の排出を、雄のアルビノラットにおいて、ビヒクル対照及び無手術対照動物と比較して加速した(投与量関係は認められなかったが)。イパモレリンの静脈内投薬(0.01、0.03又は0.1mg/kg)で治療された動物は、胃のフェノールレッド含有量の、ビヒクル対照グループと比較しての低下を示した。これらの減少は、すべての投与量レベルで統計的有意に達した(0.01及び0.1mg/kgで、p≦0.05及び0.03mg/kgで、p≦0.0)。図3参照。
【0159】
ビヒクル対照グループの平均の胃フェノールレッド含有量は、無手術対照グループのそれと類似しており、統計的に差がなく、これは、外科的対照グループにおいて検出可能なイレウスを誘導できないことを反映しうる。従って、無手術対照グループと比較して表現される場合には、イパモレリンの静脈内投薬(0.01、0.03又は0.1mg/kg)で処理された動物は、胃フェノールレッド含有量の減少を示し、これは、すべての投与量レベルにおいて統計的に有意であった。
【0160】
実施例4.ラットにおける胃イレウスを誘発するモルヒネの効力
この研究の目的は、モルヒネのラットにおいて胃イレウスを誘発する潜在的効力を評価することであった。処理グループを下記に示した。
【0161】
【表4】
【0162】
方法及び実験デザイン
雄のSprague-Dawley CD(商標)(Crl: CD(商標)(SD))ラット(Rattus norvegicus)を、Charles River Canada Inc.(カナダ国、ケベック、St. Constant在)から得た。到着後、すべての動物は、正常な健康状態を保証するために獣医学スタッフの有資格メンバーによる一般的な身体検査にかけられた。すべての動物は、使用のために許容しうると考えられた。動物を受け入れてから処理の開始まで、動物を研究室環境に慣らすために、9日間を置いた。処理の開始時に、動物は、凡そ7週齢であり、体重は、231〜267gの範囲であった。動物の体重が、プロトコールで述べられた範囲の僅かに外側にあったということに留意されたい。この偏りは、この研究の結果又は結果の解釈に影響を有しないと考えられた。
【0163】
動物を、個別に、自動給水バルブを備えたステンレス鋼製ワイヤメッシュ底のケージに収容した。動物室の環境及び日長についての標的とした条件は、次のとおりであった:温度22±3℃;湿度50±20%;光周期は、12時間の照明と12時間の暗黒。
【0164】
すべての動物は、市販の標準的な認可されたペレット状研究室用食餌(PMI Certifie Rodent Chow 5002: PMI Nutrition International Inc.)を自由に摂ることができた(示した手順中を除く)。この食餌は、製造業者によって、汚染物質(例えば、重金属、アフラトキシン、有機リン酸塩、塩素化炭化水素及びPCB)の最大許容濃度について、制御され、日常的に分析されたものであった。これらの分析の結果は、PCS−MTLの科学資料庫に保持される。軟水化され、逆浸透により精製されて紫外線に曝露された市営水道水が、無制限に与えられた(示した手順中を除く)。水の周期的分析は、PCS−MTLの品質保証部門により監査される管理認可分析研究所に下請けされた。これらの分析の結果は、PCS−MTLの科学資料庫に保持される。食餌材料中には、この研究の結果に影響を与えうる公知の汚染物質は存在しなかったと考えられる。
【0165】
これらの投与量配合物は、投与の日に調製した。適当な対照を、所望の濃度を達成するようにビヒクルに溶解させた。硫酸モルヒネ溶液を供給物として用いた。フェノールレッドを、投与の日に、5mg/mL溶液として調製して、使用まで遮光して室温に保存した。
【0166】
投与量の投与
モルヒネ(4mg/kg又は1mg/kg)を、上背部(肩甲骨領域)に、注射器に取り付けた皮下注射針を用いる皮下注射によって投与した。モルヒネを、対照/陽性対照品の投与の約30分前に投与した。投与量体積は、グループ2及び3について、0.1mL/kgであり、グループ4及び5について、0.4mL/kgであった。投与された実際の投与量は、各動物の直近の体重に基いた。
【0167】
胃腸の評価
モルヒネ注射の約30分後に、すべての動物は、0.4mLのフェノールレッドを経口胃管栄養法により与えられた。対照又は試験品の投与の約30分後に、これらのラットを、安楽死させた。次いで、その胃を、腹壁切開により、あらわにし、迅速に幽門と噴門で結紮して、取り出した。その胃を切り開いて、その内容物を、100mLの0.1N NaOHで抽出した。この抽出物のフェノールレッド含量を、分光器にて、558nmで分光学的にアッセイした。収集後、試料は、分析のために移動させるまで、濡れた氷上に保存した。
【0168】
結果
1又は4mg/kgの投与量で皮下投与された場合、モルヒネは、胃内容物の排出を有意に、対照動物と比較して約42%減じる(但し、統計的有意性を達成しない)。胃イレウスを逆転させることで知られる強力な胃運動促進性ペプチドであるグレリンは、1mg/kgのモルヒネへの曝露後に50μg/kgの投与量で静脈内投与された場合、胃内容物の排出を、1mg/kg及び食塩溶液で処理された動物と比較したとき約37%加速し、イレウスを約11%減じた。しかしながら、グレリンは、胃内容物の排出を、4mg/kgのモルヒネを投与されたラットにおいて加速せず、両グループ(食塩溶液対グレリン)は、フェノールレッドの同じ群平均吸光度を示した(それぞれ、2.99及び3.01)。図4参照。
【0169】
結論
雄のアルビノラットに、1又は4mg/kgの投与量で皮下投与されたモルヒネは、類似のレベルの胃イレウスを、非投与量依存性様式で誘発した。グレリンは、胃内容物の排出を加速し、1mg/kgのモルヒネへの曝露後に誘発された胃イレウスを逆転させたが、4mg/kgの投与量のモルヒネを投与されたマウスの胃内容物排出には影響を有しなかった。
【0170】
実施例5.ラットモデルにおける術後イレウスを治療するための、イパモレリンの静脈内注射(1.0、2.5、10mg/kg)の、RC−1139と比較しての胃運動促進的効力
イパモレリンを、術後イレウスのラットモデルにおいて、RC−1139(公知の胃運動促進効力を有するグレリン模倣物)との比較において評価した。この研究において、各薬物は、下記の表に示したように単回静脈注射として投与された。治療グループは、下記のとおりであった。
【0171】
【表5】
【0172】
すべての動物は、死亡率及び不健康の徴候又は治療に対する反応について、毎日2回検査された(動物が一回検査を受けた到着の日及び剖検の日を除く)。個々の体重は、ランダムに及び投与の前の日(投与量計算の目的のみのために)に測定した。2匹の動物が、10mg/kgの投与量でのイパモレリンの投与の直後に死亡したので、グループ4の残りのすべての動物は、0.25mg/kgで投与された。
【0173】
方法及び実験デザイン
雄のSprague-Dawley CD(商標)(Crl: CD(商標)(SD))ラット(Rattus norvegicus)を、複数の治療グループに無作為に分けた。動物を研究室環境に慣らすために、動物の受領と治療の開始の間に、少なくとも5日を置いた。治療の開始時に、動物は、約7週齢で、体重は、205〜272gの範囲であった。
【0174】
最初の投与のための配合物の調製前に、試験的な調製を、2mg/mL(試験品溶液)及び2mg/mL(参照品溶液)で行なって、提示した配合法の適性を確認した。
【0175】
投与のために、配合物を、適当量の試験品又は参照品を注射用0.9%塩化ナトリウム(米国薬局方)溶解させることにより調製した。これらの投与用配合物を、次いで、0.1N/1N塩化水素酸又は、要すれば、0.1N水酸化ナトリウムを用いてpHを7.4〜7.5に調節した。すべての投与用配合物を、0.2μmPVDFフィルターを通して濾過してから使用して、遮光して室温で保存した。
【0176】
フェノールレッドは、投与の日に5mg/mL溶液として脱イオン水中で調製して、遮光して室温で保存した。
【0177】
術後イレウスを誘発するための外科手術
すべての治療手順を、各日に処理される各グループからのほぼ同数の動物を用いて、2日連続で繰り返した。食餌は、外科手術前の一晩、動物へ与えられなかった。外科手術の日に、動物は、イソフルランガスを用いて麻酔され、低刺激性の眼用潤滑剤を各眼に適用された。これらの動物は、全腹部領域の毛を剃ることにより、外科手術の準備をされた。毛剃りした領域を清浄化して、適切に殺菌してから切開した。外科用メスを用いて、腹部を開いて、盲腸の場所を突き止めた。その盲腸を体外に出して約1分間処理した(即ち、両手の間で、食塩溶液をしみ込ませたガーゼ中で、穏やかにたたいた)。その後、この盲腸を、元の位置に戻し、外科手術部位を、吸収性縫合材料(断続的縫合糸)及びステープルを用いて閉じた。次いで、動物を、それらのケージへ戻して、麻酔から回復させた。
【0178】
投与量の投与
動物は、フェノールレッドの経口胃管栄養法による投与の直後に、投薬された。これらの試験品/対照品及び参照品は、静脈注射(凡そ100秒間のゆっくりとしたボーラス注射)により尾静脈に、注射器と適当なゲージの針を用いて投与された。投与量体積は、5mL/kgであり、実際に投与された投与量は、各動物の直近の体重に基いた。
【0179】
胃腸の評価
フェノールレッドの投与前に、これらの動物へは水は与えられなかったことを取り上げられた。手術後約30分で、動物に、0.4mLのフェノールレッドを経口胃管栄養法により与え、その後、試験品を与え、それから、約30分後に、安楽死させた。安楽死時に、胃を、腹壁切開により露出させて、幽門と噴門で迅速に結紮して取り出した。この胃を、切り開いて、その内容物を、100mLの0.1N NaOHで抽出した。この抽出物のフェノールレッド含有量を、比色定量法により、分光器で558nmでアッセイした。収集後に、試料を、分析のために移動させるまで、濡れた氷上に貯蔵した。
【0180】
結果
術後イレウスの誘発後に、0.25、1及び2.5mg/kgの投与量で静脈内投与されたイパモレリンは、胃内容物の排出を、雄のアルビノラットにおいて、対照動物及びRC−1139処理した動物と比較して加速した(投与量関係は認められなかったが)。図5参照。
【0181】
0.25及び2.5mg/kgのイパモレリン投与量は、フェノールレッド含有量の約50及び60%の減少という類似のレベルの効力をそれぞれ示し、1mg/kgの投与量後には、約21%の胃内容物排出が認められた。10mg/kgのRC−1139の投与後のフェノールレッドマーカーの胃含有量は、対照グループのそれよりも約16%低かった。
【0182】
結論
術後イレウスを有する雄のアルビノラットに0.25、1及び2.5mg/kgの投与量で静脈内投与されたイパモレリンは、対照及び参照用動物と比較して、胃内容物排出を加速した。
【0183】
実施例6.健康な志願者への、モルヒネにより誘発された胃内容物排出遅延を逆転させるためのイパモレリンの投与
導入
胃内容物排出の遅延は、術後イレウス、オピエート誘発された大腸機能不全及び胃不全麻痺を含む幾つかの重要な標的適応症において、病因論的役割を演じる。加えて、胃内容物排出の遅延は、吐き気を促進又は悪化させうる。従って、イパモレリンなどの薬剤は、動物モデルにおいて胃内容物排出を促進する示された能力を有し(上記の実施例参照)、低下した運動性により分類される様々なGI疾患において重要な治療的役割を果たすことができる。
【0184】
イパモレリンは、グレリン模倣物である。グレリンは、28アミノ酸のペプチドホルモンであり、主に、胃の酸分泌腺で合成され、一層程度は低いが腎臓及び視床下部などの身体の他の器官においても合成されている。グレリンにより発揮される重要な生理的効果のうちには、胃の運動を調節する能力があり、それは、様々な動物種並びヒトにおいて、強力な胃運動促進効果を示している(上部及び下部GIの両方で)。Masuda 2000, Asakawa 2001, Tack 2006を参照されたい。加えて、ラットモデルにおいて、グレリンは、胃の術後イレウスを解消することが示されている。Trudel 2002参照。
【0185】
このグレリンの胃運動促進活性が消化管への直接的効果により又は迷走神経性コリン作動性ムスカリン作動性経路により間接的に媒介されることは、ありそうなことである。それは、胃において局所的に作用して、迷走神経の求心性ニューロンの興奮(firing)を刺激して胃の運動を刺激する。Peeters 2003参照。様々な疾患におけるグレリンの積極的効果を、グレリンを模倣する薬剤の同定及び開発にによって活用するために、長年にわたって努力がなされてきた。グレリンは、ヒトにおいて例外的に短い半減期(約10分)を有しており、それ故、治療的潜在能力が限られている。イパモレリンは、ヒトにおいて、静脈内治療剤として利用可能な約6時間の半減期を有し、それ故、治療用途に適しているグレリン模倣物である。
【0186】
本研究は、イパモレリンの胃内容物排出に対する効果の評価のための十分立証された、臨床薬理学的モデル(アセトアミノフェンAUC)を採用するようにデザインされた。イパモレリンは、上記の実施例において、ラットモデルにおける胃内容物排出に対する強力な刺激効果を有することが示された。この研究は、これらの発見をヒトに拡張することを意図した。
【0187】
投薬量
この研究のために選択されたイパモレリンの投与量(0.06mg/kg 15分にわたる静脈内点滴)は、以前のフェーズ1の研究で安全であること及び十分許容されることが示されている投与量であった。イパモレリンは、正常食塩溶液中の2当量の酢酸を用いて、0.5mg/mLの無菌溶液として配合された。この無菌溶液を、更に、正常の食塩溶液で希釈して、使用前に投与に適した体積とした。
【0188】
この研究のために選択されたモルヒネの投与量(0.05mg/kg、静脈内ボーラス投与)は、鎮痛用投与量として臨床的に妥当であり、胃内容物排出を正常な志願者において有意に遅延させることが以前に示されている[Yuan 1998]投与量であった。
【0189】
この研究のために選択されたアセトアミノフェンの投与量(1000mg経口懸濁液投与)は、標準的なアセトアミノフェンの売薬の投与量である。この投与量は、以前の胃内容物排出の研究で上首尾に採用されてきており、容易に測定される血漿濃度(>0.2μg/mL)を生じる。
【0190】
この研究デザインは、標準的な、三期の、無作為の、単回投与量の交差研究であった。
この研究は、単回投与量の投与を用いて行なわれ、それは、胃内容物排出のアセトアミノフェンAUCモデルに適していて十分に研究されている。本研究で採用された3つの薬物のすべては、6時間以下の半減期を有しており、それ故、5〜8日の洗浄間隔は、これらの薬物の身体からの完全な排除を保証する。
【0191】
この研究の目的は、静脈内イパモレリンの、オピエートにより誘発された胃内容物排出遅延を逆転させる能力を評価すること並びに静脈内イパモレリンの、オピエートにより誘発された吐き気を逆転させる能力を評価することを含んだ。本発明者等は、イパモレリンがオピエートにより誘発された胃内容物排出遅延を、血漿アセトアミノフェン吸収により評価して逆転させる(イパモレリン投与後のAUC0-60は、偽薬投与後のそれより50%大きい)ことを予測した。
【0192】
研究デザイン
この研究は、単回中心の、二重盲検の、無作為の、単回投与の、三方交差研究として行なわれた。この研究は、下記の処理を比較した:
1.モルヒネ+イパモレリン;
2.モルヒネ対照;及び
3.正常対照
【0193】
胃内容物排出の測定として、アセトアミノフェンAUCの測定のためのアセトアミノフェン投与後、血漿試料を、3時間にわたって得た。モルヒネは、胃内容物排出を有意に遅延させるであろうということが予想され[Yuan 1998];更に、イパモレリンは、胃内容物排出の観察された遅延を逆転させるであろうということが予想された。関心ある第一のパラメーターは、アセトアミノフェン投与後の最初の一時間(AUC0-60)にわたる血漿AUCに反映されるアセトアミノフェンの初期吸収である。更なる関心あるパラメーターは、AUC0-180、CMAX及びTMAXを含む。
【0194】
この研究の薬物は、十分較正された点滴用ポンプ(例えば、Harvardポンプ又は類似品)を介して、15分の期間にわたって投与された。各患者の投与量を、体重に基いて、最大100kg(6mg)まで計算した。次いで、この投与体積を、通常の注射用塩溶液を希釈剤として用いて15mLの全体積まで希釈した。注射器に気泡を(攪拌を容易にするために)引き込んで、その注射器を穏やかに6回逆さにすることにより混合した。
【0195】
モルヒネ投与
モルヒネ(1.0mg/mL)/偽薬を、ゆっくりとしたボーラス注射(30〜60秒)により投与した。次いで、点滴用カテーテルを、3〜5mLの正常食塩溶液で直ちにフラッシュした。
【0196】
アセトアミノフェン投与
アセトアミノフェンの懸濁液(32mg/mL)を投与前によく振盪した。投与すべき投与量は、31mL(992mg)であった。次いで、患者は、追加の150mLの水を与えられて飲んだ。
【0197】
結果
イパモレリンによる治療は、十分許容され、それらの結果は、ヒトにおいてモルヒネに誘発された胃腸運動の遅延を逆転させることを示した。図6参照。
【0198】
実施例7.健康な男性志願者においてモルヒネにより誘発された胃内容物排出遅延におけるイパモレリンの一層低投与量の試験
この研究は、実施例6aのデザインと同じデザインであったが、胃内容物排出のオピエートにより誘発された遅延を逆転させるイパモレリンの一層低い静脈内投与量を評価した。データは、すべての処理を終えた23人の患者について与えられている。この研究の処理は:
(1)未処理(食塩溶液)対照;(2)モルヒネ0.05mg/kg(IV:静脈内投与);及び(3)モルヒネ0.05mg/kg+イパモレリン0.01mg/kg(静脈内投与)及び(4)モルヒネ0.05mg/kg+イパモレリン0.03mg/kg(静脈内投与)。アセトアミノフェンエリキシルを、胃内容物排除の評価を可能にするように、各処理サイクルにおいて経口投与した。これらの処理を、単純盲検の、偽薬対照の、3方交差研究にて施与した(処理の間に5〜8日の洗浄あり)。
【0199】
これらの結果は、モルヒネの投与が、血漿アセトアミノフェンレベルの低下により測定されるうように胃内容物排出を遅延させたことを示している。この効果は、イパモレリンの投与量により逆転され、実施例6で提示したものに匹敵した。データは、図6に示してある。
【0200】
実施例8.イパモレリンを含む様々なグレリン模倣物の、ラットの胃腸運動に対する効果の比較
この研究の目的は、一連のグレリン模倣物の、ラットの胃腸運動(木炭の通過により測定)に対する薬理学的効果を、一般に用いられる胃腸運動促進剤のメトクロプラミド、及び対照と比較して、実験薬剤の単回静脈内点滴後に評価することであった。治療剤グループは、下記のとおりであった:
【0201】
【表6】
【0202】
処理手順:
各投与用配合物を、投与の日に調製した。これらのグレリン模倣物につき、4mg/mLのストック溶液のアリコートを、適当な体積のビヒクルで希釈して、最終的な所望の濃度を達成した。参考品配合物も又、投与の日に、適当量の参考品を適当量のビヒクルと混合して所望の最終濃度を達成することによって調製した。これらの食塩溶液及びメトクロプラミド(1mg/mL)は、供給されたものを使用した。
【0203】
投薬を、連続した日に行ない、凡そ同数の動物が各日に投薬された。食餌は、手術前の一晩、これらの動物へ与えられなかった。各配合物を、注射器と適当なゲージの針を用いる尾静脈への静脈注射により投与した。投与容量は、5mL/kg又は10mL/kgであった(メトクロプラミドだけの場合)。
【0204】
試験品の投与の約30分後に、すべての動物は、3mLの活性炭を経口胃管栄養法により受け、食餌及び水は、その後20分間、動物へ与えられなかった。
【0205】
観察期間の後に、これらのラットを安楽死させ、腹腔を開いて、胃及び小腸を取り出した。木炭の存否を記録した。これらの胃の重量(内容物を伴うか又は伴わない)を測定して、胃内容物排出の指標を得た。これらの小腸を全長にわたって開いて拡張した。木炭の位置を突き止めて、幽門括約筋から木炭の最も近いもの及び遠くの痕跡までの距離、並びに幽門括約筋から盲腸までの全距離を測定した。木炭が移動した距離も又、小腸の全長のパーセンテージとして測定した。
【0206】
結果
メトクロプラミドは、小腸の運動を有意に増大させ、木炭食餌が移動した距離を、対照グループの67.3%からメトクロプラミド処理グループの86.9%まで、29%増大させた。対照的に、メトクロプラミド投与された動物のグループの胃の木炭含有量は、対照グループのそれと有意に異ならなかった。
【0207】
イパモレリンは、胃内容物排出を、対照グループと比較して有意に増大させて、胃に残っている木炭の量を66%減じた。グレリン及びGHRP−6も又、胃に残っている木炭の量を対照グループと比較して有意に減じた(それぞれ、57%及び64%)が、それらの効果は、イパモレリンのそれと有意に異ならなかった。
【0208】
イパモレリンは、明らかに、胃内容物排出の非常に有意(P≦0.001)の増大及び、食塩溶液処理した対照グループと比較して小腸運動の増大に向かう傾向を生じたが、これは、イパモレリンが強力な胃腸運動促進剤であるという見解を支持している。これらの実験の結果は、図7及び8に示してある。
【0209】
実施例9.イパモレリンを含む様々なグレリン模倣物のラットの胃腸運動に対する効果の比較
この研究の目的は、一連のグレリン模倣物のラットの胃腸運動に対する薬理学的効果を(木炭通過の測定によって)、実験薬剤の単回静脈内点滴後に、対照と比較して評価することであった。
【0210】
【表7】
【0211】
処理手順:
投薬を連続した日々に開始し、各グループからのほぼ同数の動物に、各日に投薬した。食餌は、手術前の一晩、これらの動物へ与えられなかった。投与の前に、これらの動物へ水が与えられなかった。これらの試験/参照/陽性対照品を、注射器及び適当なゲージの針を用いて、尾静脈への静脈注射により投与した。投与量体積は、5mL/kgであり、投与される実際の投与量は、各動物の直近の体重に基いた。
【0212】
試験/参考又は陽性対照品の投薬の約30分後に、すべての動物は、3mLの活性炭を経口胃管栄養法により受け、その後、20分間は、食餌及び水は、動物へ与えられなかった。
【0213】
この観察期間の最後に、これらのラットを安楽死させて、腹腔を開いて、胃及び小腸を取り出した。木炭の胃における存否を記録した。これらの胃(内容物を伴うもの及び伴わないもの)を重量測定して、胃内容物排出の指標を得るために記録した。これらの小腸を、全長にわたって開いて拡張した。木炭の位置を突き止め、幽門括約筋から最も近い及び遠くの木炭の痕跡までの距離並びに幽門括約筋から盲腸までの全距離を測定して記録した(すべての距離は、mmで測定された)。胃重量(内容物を含むもの及び含まないもの)に加えて、木炭が移動した距離を、胃内容物排出の指標を得るために、小腸の全長のパーセンテージとして記録した。この20分間の観察期間中に認められた任意の異常な又は普通でない臨床的徴候を記録した。
【0214】
結果
75μモル/kgの単回静脈内投与量で、グレリン及びこの研究で試験した3つのグレリン模倣物(イパモレリン、GHRP−6及びRC−1139アセテート)は、雄のアルビノラットにおいて、独立に投与した場合、胃内容物排出及び小腸通過に対して異なる効果を示した。イパモレリンのみが、胃内容物排出及び小腸通過の測定(木炭の幽門括約筋から近距離及び遠距離の移動)に対してグレリンと類似の促進効果を示した。グレリン、GHRP−6及びイパモレリンは、小腸通過の2つの測定のうちの一つ(木炭の幽門括約筋からの近距離の移動)により、胃内容物排出を生じた。図9、10及び11参照。
【0215】
実施例10.ラットにおける術後イレウスの治療に対するイパモレリンの効力
この研究の目的は、イパモレリンがPOIのラットモデルにおいて結腸通過を加速するかどうかを研究することであった。この評価を行なうために、単回投与量及び複数回投与量の効力の両方を評価した。
【0216】
材料と方法
動物:右頚静脈に移植された留置カテーテルを有する雄の成体のSprague-Dawley ラットを、Charles River社(マサチューセッツ、Wilmington)から得た。これらの動物の初期体重は、250〜270gであった。これらのカテーテルは、環境順化中開存的に維持されて、イパモレリン又はビヒクルの投薬のために利用された。外科手術にかけられず、薬物又はビヒクル処理にかけられない対照ラットの更なるグループであって、結腸通過を測定する染料マーカーの点滴に用いられる留置カテーテルを近位結腸(盲腸から1〜2cm)に移植されて有するグループを購入した。すべてのラットを、制御された条件(25℃、12時間の明暗サイクル)下で、単独で収容し、食餌と水は自由に摂取させた。少なくとも一週間の環境馴化期間が、試験前に与えられた。
【0217】
術後イレウス(POI)の誘発:POIは、「running of the bowel」(Kalff等、1998)に記載された外科手順により誘発された。特に、ラットは、イソフルラン(2〜3%)の吸入により麻酔され、腹部を毛剃りされ、殺菌されて、正中線切開を行なって内蔵を露出させた。小腸及び盲腸を、体外に引き出して5分間、無菌食塩溶液に浸したコットンアプリケーターを用いて精査した。精査の完了後、腸管を食塩溶液に浸したガーゼでカバーして、腹部を、更に10分間開いたままに維持した。結腸通過を研究するために、200μlの非吸収性の染料マーカー(食塩溶液中のトリパンブルー)を近位(盲腸から1cmの距離)の結腸に注入した。次いで、この切開を、絹縫合糸を用いて閉じた。全手順は、25〜30分間続いた。外科手術は、常に、午前6:00〜8:00に行なわれ、これらの動物は、イパモレリン又はビヒクル処理を、明暗サイクルの照明時に受けた。
【0218】
結腸通過時間の測定:実験前に、これらのラットを、20〜22時間にわたって絶食させたが、水は自由に飲ませた。外科的手順の最後に、これらのラットは、染料マーカーの結腸内注射を受けた。この外科手術の後に、これらのラットは、清潔なケージ内に置かれて、予め計ってある量の食事(Purina(商標)rat chow)と水を供給された。結腸通過時間を、外科手術の終りと糞粒中の染料の出現との間の期間として評価した。外科手術及び薬物又はビヒクルによる処理を受けたことのない未経験ラットを、各実験日に、POIを有するラット共に研究した。これらの未経験ラットは、20〜22時間の絶食の後に、結腸に染料マーカーを点滴するために用いられる結腸カテーテルを装着された。これらの動物から集めたデータは、健康な対照への参照として役立った。以前の研究においては、POIを有するラットは、結腸通過時間において、未経験動物と比較して有意の遅延を示した(Zittel等、1998; Greenwood-Van Meerveld, 未公開データ)。
【0219】
累積的糞排出量、食餌摂取量及び体重:糞粒を、外科手術後の最初の48時間中に、3時間間隔及び12時間間隔で計数して重量測定した(実験デザイン参照)。この累積的糞排出量は、手術後の48時間中の糞粒の数を加えることにより評価された。食餌の摂取は、実験デザインに従って、3時間間隔又は12時間間隔で記録され、体重100g当りのgとして規格化された。累積的な食餌の摂取量は、実験の両シリーズにおいて、手術後の48時間にわたって計算された。体重を、毎日午前8:00〜9:00に測定してから、動物を絶食させ、実験の日には、外科手術前及び手術の24時間後及び48時間後に測定した。体重の変化を、外科手術前に測定した絶食した動物の体重と比較しての体重獲得として表した。
【0220】
試験及び対照用品:試験化合物イパモレリン(遊離塩基)を、2モル当量の氷酢酸と混合することにより二酢酸塩に変換した。0.5mg/mlのストック溶液を日々、無菌食塩溶液及び氷酢酸(0.1μl/ml)にて調製して、イパモレリンを溶液(pH3〜4)とした。次いで、この溶液をNaOHを用いて滴定してpH7.0〜7.2とした。更なる希釈を、食塩溶液にて行なった。無菌の食塩溶液を、ビヒクル対照実験において用いた。陽性対照[D−Lys3]−GHRP−6は、Sigma-Aldrich社(ミズーリ、St. Louis在)から購入して、この食塩溶液に溶解させた。試験用及び対照用品の両方を、頚静脈カテーテルを介して、体重100g当たり0.2mlの体積で、ボーラス静脈内点滴として投与した。
【0221】
データ及び統計的解析:これらのデータは、各グループにつき、平均値±SEMとして表した。グループ間の差異を、スチューデントのT検定により、並びに一方向又は二方向ANOVAとその後の随意の多重比較のためのダンネット検定又はボンフェローニ検定によって統計的有意性につき評価した。p<0.05のレベルは、有意であると考えられた。加えて、これらの多重投薬の効果についてのデータは、処理間の線の勾配間の有意な差を測定するために線形回帰分析を用いて評価された。
【0222】
実験デザイン:
実験シリーズ1:POIのラットモデルにおけるイパモレリンの単回投与により誘導される急性の効果を測定する。
・ ラットを、7日間、設備に順応させた;カテーテルの開通性は維持された
・ 0日目:ラットを体重測定して、午前8:00から9:00まで絶食させた
・ 1日目:午前6:00から8:00まで、イソフルラン麻酔下での「腸の運動(runnin)」手術
染料を、手術の最後に、近位の大腸に注入。
イパモレリン又はビヒクルによる単回投与量の処理。
ケージにおける観察(最初の糞粒排出までの時間;手術後3、6、9及び12時間での糞排出量及び食餌の摂取量)。
・ 2日目:午前7:00から8:00まで、手術後24時間での体重、糞排出量、食餌の摂取量
・ 3日目:午前7:00から8:00まで、手術後48時間での体重、糞排出量、食餌の摂取量
イソフルランの過剰投与により安楽死させた。
【0223】
未経験ラットは、絶食させたが、手術はしなかった。体重、大腸通過、糞粒排出量及び食餌摂取量を、POIのラットと同時点で測定した。
グループ(単回投与量処理):
POI+ビヒクル(静脈内投与)n=12
POI+イパモレリン0.1mg/kg(静脈内投与)n=9
POI+イパモレリン1mg/kg(静脈内投与)n=10
POI+GHRP−6 20μg/kg(静脈内投与)n=8
未経験(手術なし、薬物なし)n=14
【0224】
実験シリーズ2:POIのラットモデルにおけるイパモレリンの複数回投与量の効力を測定する。
・ ラットを、7日間、設備に順応させた;カテーテルの開通性は維持された
・ 0日目:ラットを体重測定して、午前8:00から9:00まで絶食させた
・ 1日目:午前6:00から8:00まで、イソフルラン麻酔下での「腸の運動」手術
染料を、手術の最後に、近位の大腸に注入。
イパモレリン又はビヒクルの複数回の投薬(手術終了時における第一の投与量、3時間間隔での、第二、第三及び第四の投与量)。
ケージにおける観察(最初の糞粒排出までの時間;手術後3、6、9及び12時間での糞排出量及び食餌の摂取量)。
・ 2日目:午前7:00から8:00まで、手術後24時間での体重を測定
イパモレリン又はビヒクルの複数回投薬(体重測定時における第一の投与量、3時間間隔での、第二、第三及び第四の投与量)。
ケージにおける観察(手術後24、27、30、33及び36時間での糞排出量及び食餌の摂取量)。
・ 3日目:午前7:00から8:00まで、手術後48時間での体重、糞排出量、食餌の摂取量を測定
イソフルラン過剰投与により安楽死。
【0225】
未経験ラットは、絶食させたが、手術はしなかった。体重、大腸通過、糞粒排出量及び食餌摂取量を、POIのラットと同時点で測定した。未経験ラットは、イパモレリン又はビヒクルの投与中複数回処理されたPOIのラットと異なって、これらの処理をされなかったということに注意されたい。
グループ(複数回投与):
POI+ビヒクル(静脈内投与)n=8
POI+イパモレリン0.01mg/kg(静脈内投与)n=8
POI+イパモレリン0.1mg/kg(静脈内投与)n=8
POI+イパモレリン1mg/kg(静脈内投与)n=7
未経験(手術なし、薬物なし)n=8
【0226】
結果
ラットにおけるPOI:腹部手術の、大腸通過、糞粒排出量、食事摂取量及び体重に対する影響。
「腸の運動」外科手術にかけられたラットと未経験ラットとの間の比較は、外科手術が大腸通過の遅延(図12A)、糞粒排出量の減少(図12B)、食餌摂取量の減少(図12C)及び体重増加量の減少(図12D)を特徴とするPOIの発生を生じることを示した。
【0227】
POIのラットモデル。(A)大腸通過時間(最初の印しのある糞粒排出までの時間として測定)は、未経験ラットと比較して、手術後有意に遅延する。(B)手術後24及び48時間における累積的糞粒排出量は、未経験ラットと比較して減少する。(C)累積的食餌摂取量は、手術後24及び48時間において、未経験ラットと比較して、有意に減少する。(D)体重増加は、手術後、未経験ラットと比較して減少する。データは、12匹のPOIのラットと14匹の未経験ラットからの平均値±SEMである。外科手術にかけられたラットと未経験ラットの間の差の有意性は、スチューデントのt検定を用いて調べた:*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
【0228】
実験シリーズ1:POIのラットモデルにおける、イパモレリンの単回投与量処理により誘導される急性効果を測定する。
実験を、POIのラットで行なって、0.1mg/kg又は1mg/kgのイパモレリンの単回投与量の処理の効力を調べた。イパモレリン又はビヒクルを、外科手術の終了に続いて静脈内点滴により投与した。最初の糞粒排出までの時間(図13)並びに累積的糞粒排出量(図14)、食餌摂取量(図15)及び体重増加(図16)を外科手術後の48時間において測定して、イパモレリンの効力を、イパモレリンの効果をビヒクルの効果と比較することにより評価した。加えて、20μgのGHPR−6(GRLNのアゴニスト、即ち、GHS−R1a)の効力を陽性対照として用いた(Davenport等、2005)。図13に提示した結果は、1mg/kgのイパモレリン又は20μgのGHRP−6の単回術後投与量は、有意に、大腸通過時間を減じたことを示している。
【0229】
しかしながら、イパモレリンもGHRP−6も、外科手術後の最初の48時間後における糞粒排出量(図14)、食餌摂取量(図15)又は体重増加(図16)に有意の効果を有しなかった。
【0230】
まとめると、実験シリーズ1から得られたこれらの結果は、外科手術の最後に与えられた1mg/kgのイパモレリンの単回投与量の処理は、POIのラットにおける48時間の回復過程において、最初の腸運動への時間を減じたが、糞排出量及び食餌摂取量に対する効果を誘導しなかったことを示している。しかしながら、これらの結果は、ラットにおけるイパモレリンの報告された半減期30〜60分(Johansen等、1998)に基いて予想されるものと一致する。
【0231】
実験シリーズ2:POIのラットモデルにおけるイパモレリンの複数回の投与量の効力を測定する。
イパモレリン(0.01、0.1又は1mg/kg、静脈内投与)の複数回投与量の投与量−応答効果を、POIのラットにおいて調べた。その結果は、0.1mg/kg又は1mg/kgのイパモレリンの複数回の投与が、大腸通過の、ビヒクルの効果と比較して、有意の加速を引き起こすことを示した(図17)。
【0232】
イパモレリンの複数回投与量の糞粒排出量に対する効果は、図18に提示してある。イパモレリンの複数回投与量は、累積的糞粒排出量の、ビヒクルと比較しての増加を誘導した。この効果は、0.1mg/kg又は1mg/kgの投与量で有意に達した(図18)。糞排出量は、0.1又は1mg/kg(静脈内投与)の投与量でイパモレリンを受けたラットにおいて、ビヒクルで処理されたラットと比較して、一層高速度(一層低い1/勾配値)で増加した。0.01mg/kgの投与量で、イパモレリンは、有意の効果を示さなかった。加えて、イパモレリンは、増加した食餌摂取量を誘導した(図19)。一層高投与量のイパモレリンにより誘導された食餌摂取量の増加は、体重増加と関係した。図20に示したように、複数回投与の範例に従って投与された1mg/kgのイパモレリンの最高投与量を受けたラットは、外科手術後の最初の48時間において、ビヒクルで処理されたラットと比較して、有意に、一層多くの体重を得た。
【0233】
結論
全体的にみて、これらの結果は、ラットにおいて、外科手術後の最初の48時間におけるイパモレリンの複数回の静脈内投与が大腸通過及び食事摂取量を改善して、体重増加を増大させることを示しており、これは、イパモレリンの外科手術後の静脈内点滴がPOIの患者における症状を改善しうることを示唆している。
【0234】
今や、完全に、本開示を与えたので、当業者は、同様のことを、同等のパラメーター、濃度、及び条件の広い範囲において、この開示の精神及び範囲から離れることなく、過度の実験をせずに行なうことができることを認めるであろう。更に、この開示は、特定の具体例に関して記載されてきたが、更なる改変が可能であることは理解されよう。この出願は、この開示の任意の変形物、利用又は適応をカバーすることを意図しており、それらは、一般に、開示された原理に従い、該開示からのかかる逸脱を包含するものであり、それらは、この開示が属する分野における公知の又は慣習的な実施の内にあり、上に示した必須の事項に適用されうるものである。
【0235】
参考文献
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Masuda Y., Tanaka T., Inomata N, Ohnuma N., Tanaka S., Itoh Z., et al. Ghrelin stimulates gastric acid secretion and motility in rats. Biochem Biophys Res Commun 2000 Oct 5; 276(3):905-8.
Murphy DB., Sutton JA, Prescott L., Murphy MB, Opioid-induced Delay in Gastric Emptying: A Peripheral Mechanism in Humans. Anesthesiology 1997 Oct;(4)765-770.
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Poitras P., Polvino WJ, Rocheleau B. Gastrokinetic effect of ghrelin analog RC-1139 in the rat. Effect of post-operative and on morphine induced ileus. Peptides. 2005 Sep; 26(9):1598-601
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
胃腸系の疾患の治療を必要とする患者において当該疾患を治療する方法であって、該患者に治療上有効な量の下記構造式Iにより表されるグレリン模倣化合物:
【化1】
又はその製薬上許容しうる塩、溶媒和物若しくは水和物を投与することを含む当該方法。
【請求項2】
患者が、手術後の疼痛の管理のためにオピオイドを使用している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
患者が、慢性痛の管理のためにオピオイドを使用している、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
オピオイドが、モルヒネ、コデイン、オキシコドン、ヒドロモルフォン、ヒドロコドン、メタドン、及びフェンタニルよりなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
方法が、上記の患者に、治療上有効な量の緩下剤、末梢作用性オピオイドアンタゴニスト、プロトンポンプインヒビター、H2アンタゴニスト、制酸剤、セロトニンレセプターアゴニスト(純粋又は混合物)、モチリンレセプターアゴニスト、ドーパミンアンタゴニスト、若しくはコリンエステラーゼインヒビター、又はこれらの組合せを投与することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
患者が、ヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
グレリン模倣物が、有効な血漿濃度を達成する仕方で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
胃腸系の疾患が、オピオイドにより誘発された胃腸機能不全である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
胃腸系の疾患が、モルヒネにより誘発された便秘症である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
胃腸系の疾患が、オピオイドにより誘発された便秘症、糖尿病関連の若しくは特発性の胃不全麻痺、胃食道逆流疾患、過敏性大腸症候群、便秘症、又は術後イレウスである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
胃腸系の運動を刺激することを必要とする患者において、該胃腸系の運動を刺激する方法であって、該患者に、治療上有効な量の下記構造式Iにより表されるグレリン模倣化合物:
【化2】
又はその製薬上許容しうる塩、溶媒和物若しくは水和物を投与することを含む当該方法。
【請求項12】
患者が、ヒトである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
患者が、オピオイドにより誘発された便秘症、糖尿病関連の胃不全麻痺、胃食道逆流疾患、過敏性大腸症候群、便秘症、又は術後イレウスを有する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
グレリン模倣物が、有効な血漿濃度を達成する仕方で投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
オピオイドにより誘発される便秘症、糖尿病関連の又は特発性の胃不全麻痺、胃食道逆流疾患、過敏性大腸症候群、便秘症、及び術後イレウスよりなる群から選択される病気又は病状を治療する必要のある患者において、該病気又は病状を治療する方法であって、該患者に、治療上有効な量の、下記構造式Iにより表されるグレリン模倣化合物:
【化3】
又はその製薬上許容しうる塩、溶媒和物若しくは水和物を投与することを含む当該方法。
【請求項16】
患者が、ヒトである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
グレリン模倣物が、有効な血漿濃度を達成する仕方で投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
治療上有効な量の緩下剤、末梢作用性オピオイドアンタゴニスト、プロトンポンプインヒビター、H2アンタゴニスト、制酸剤、セロトニンレセプターアゴニスト、モチリンレセプターアゴニスト、ドーパミンアンタゴニスト、又はコリンエステラーゼインヒビターを投与することを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項1】
胃腸系の疾患の治療を必要とする患者において当該疾患を治療する方法であって、該患者に治療上有効な量の下記構造式Iにより表されるグレリン模倣化合物:
【化1】
又はその製薬上許容しうる塩、溶媒和物若しくは水和物を投与することを含む当該方法。
【請求項2】
患者が、手術後の疼痛の管理のためにオピオイドを使用している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
患者が、慢性痛の管理のためにオピオイドを使用している、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
オピオイドが、モルヒネ、コデイン、オキシコドン、ヒドロモルフォン、ヒドロコドン、メタドン、及びフェンタニルよりなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
方法が、上記の患者に、治療上有効な量の緩下剤、末梢作用性オピオイドアンタゴニスト、プロトンポンプインヒビター、H2アンタゴニスト、制酸剤、セロトニンレセプターアゴニスト(純粋又は混合物)、モチリンレセプターアゴニスト、ドーパミンアンタゴニスト、若しくはコリンエステラーゼインヒビター、又はこれらの組合せを投与することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
患者が、ヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
グレリン模倣物が、有効な血漿濃度を達成する仕方で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
胃腸系の疾患が、オピオイドにより誘発された胃腸機能不全である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
胃腸系の疾患が、モルヒネにより誘発された便秘症である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
胃腸系の疾患が、オピオイドにより誘発された便秘症、糖尿病関連の若しくは特発性の胃不全麻痺、胃食道逆流疾患、過敏性大腸症候群、便秘症、又は術後イレウスである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
胃腸系の運動を刺激することを必要とする患者において、該胃腸系の運動を刺激する方法であって、該患者に、治療上有効な量の下記構造式Iにより表されるグレリン模倣化合物:
【化2】
又はその製薬上許容しうる塩、溶媒和物若しくは水和物を投与することを含む当該方法。
【請求項12】
患者が、ヒトである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
患者が、オピオイドにより誘発された便秘症、糖尿病関連の胃不全麻痺、胃食道逆流疾患、過敏性大腸症候群、便秘症、又は術後イレウスを有する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
グレリン模倣物が、有効な血漿濃度を達成する仕方で投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
オピオイドにより誘発される便秘症、糖尿病関連の又は特発性の胃不全麻痺、胃食道逆流疾患、過敏性大腸症候群、便秘症、及び術後イレウスよりなる群から選択される病気又は病状を治療する必要のある患者において、該病気又は病状を治療する方法であって、該患者に、治療上有効な量の、下記構造式Iにより表されるグレリン模倣化合物:
【化3】
又はその製薬上許容しうる塩、溶媒和物若しくは水和物を投与することを含む当該方法。
【請求項16】
患者が、ヒトである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
グレリン模倣物が、有効な血漿濃度を達成する仕方で投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
治療上有効な量の緩下剤、末梢作用性オピオイドアンタゴニスト、プロトンポンプインヒビター、H2アンタゴニスト、制酸剤、セロトニンレセプターアゴニスト、モチリンレセプターアゴニスト、ドーパミンアンタゴニスト、又はコリンエステラーゼインヒビターを投与することを更に含む、請求項15に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2013−40206(P2013−40206A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−250249(P2012−250249)
【出願日】平成24年11月14日(2012.11.14)
【分割の表示】特願2010−539419(P2010−539419)の分割
【原出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(509227632)ヘルシン セラピューティクス(ユー.エス.),インコーポレイティド (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−250249(P2012−250249)
【出願日】平成24年11月14日(2012.11.14)
【分割の表示】特願2010−539419(P2010−539419)の分割
【原出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(509227632)ヘルシン セラピューティクス(ユー.エス.),インコーポレイティド (6)
【Fターム(参考)】
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