説明

消化槽

【課題】有機性廃棄物の消化効率を改善すること。
【解決手段】消化槽1は、汚泥が収容され有機性廃棄物が導入される処理槽本体10を備え、前記処理槽本体10が、汚泥面Cより上方の内部空間の水平方向面積が上方に向かうに従って大きくなるように、形成された消化槽1を提供することにより、確実に消泡できるので、安定して有機性廃棄物の消化反応を行わせ消化ガスを回収することが可能となり、有機性廃棄物の消化効率を改善することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性廃棄物を嫌気的に消化するための消化槽に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、下水汚泥や生ゴミなどの有機性廃棄物は、メタン発酵技術にて嫌気的に消化処理されている。この消化処理を行なうことにより、発生する消化ガスと消化汚泥とが分離される。消化汚泥は消化前の有機性廃棄物より容量が大幅に減量され処理効率がよくなり、消化ガスはバイオ燃料やバイオガスとして有効利用が可能となる。
【0003】
このような消化処理を行なう嫌気性消化処理において、発生した消化ガスを含む気泡が発生すると、気泡を含む水が消化槽内を上がってきて、消化ガスを回収する消化ガス管が閉塞して消化ガス管の圧力が変動し、消化ガスの回収が困難になる場合がある。そのため、消泡剤や水で消泡する必要がある。
【0004】
なお、消化槽内に邪魔板や隔壁を設けて消泡する技術が知られている(特許文献1〜8参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−190986号公報
【特許文献2】特表2008−518753号公報
【特許文献3】特表2010−532246号公報
【特許文献4】特開平05−123691号公報
【特許文献5】特許第3700935号公報
【特許文献6】特許第4162234号公報
【特許文献7】特開昭62−279892号公報
【特許文献8】実開平06−019900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような消化処理において、高負荷処理の際などに発泡の勢いが強いと、消泡し切れずに消化ガス管が閉塞したり、後段の脱硫装置にまで水が到達したりする場合がある。また、発生した消化ガスにより夾雑物が浮上してスカムを形成する場合があるが、スカムが汚泥面を覆ってしまうと、槽上部の消化ガス圧が変動し、発生した消化ガスの回収が困難になる。さらに、消化槽を長時間運転すると槽下部に砂や汚泥が徐々に堆積して消化槽の有効容量が減少し、消化効率が低下する。
【0007】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、有機性廃棄物の消化効率を改善することが可能な消化槽を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る消化槽は、汚泥が収容され有機性廃棄物が導入される処理槽本体を備え、前記処理槽本体が、前記汚泥面より上方の内部空間の水平方向面積が上方ほど大きくなるように、形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る消化槽は、上記の発明において、前記処理槽本体は、前記汚泥面より上方の内部空間の水平方向面積が上方に向かうに従って一旦小さくなる窄み部を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る消化槽は、上記の発明において、前記処理槽本体は、前記汚泥面より下方の内部空間の水平方向面積が、上方に向かうに従って小さくなるように、形成されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る消化槽は、上記の発明において、前記汚泥上部に接続されたスカム除去装置を備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る消化槽は、上記の発明において、前記汚泥上部に発生した泡を検知することが可能なセンサーを備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る消化槽は、上記の発明において、前記処理槽本体内において、前記汚泥上部に発生した泡に向けて散水する散水ノズルを備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る消化槽は、上記の発明において、前記処理槽本体は、前記汚泥面より下方の内部空間の水平方向面積が下方に向かうに従って小さくなるように、形成されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る消化槽は、上記の発明において、前記処理槽本体下部に接続された集砂排出装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、確実に消泡ができ、スカムの形成を抑制できるので、安定して有機性廃棄物の消化反応を行わせ消化ガスを回収することが可能となり、有機性廃棄物の消化効率を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る消化槽の概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明において、各図は本発明の内容を理解でき得る程度に形状、大きさ、および位置関係を概略的に示してあるに過ぎず、従って、本発明は各図で例示された形状、大きさ、および位置関係のみに限定されるものではない。
【0019】
図1は、本実施の形態に係る消化槽の概略構成の垂直方向断面を示す模式図である。図1に示すように、本実施の形態に係る消化槽1は、少なくとも内壁面の垂直方向形状が概略徳利形の処理槽本体10と、処理槽本体10に接続された消化ガス管11、消泡装置12、スカム除去装置13、および集砂排出装置14とを備えて構成される。
【0020】
処理槽本体10は、少なくとも内壁面の垂直方向形状が概略徳利形に形成され、垂直方向中央よりやや上方に徳利の首に相当する窄み部101が形成されている。また、処理槽本体10の下部102は、内部空間の水平方向面積(仮想の水平面Aの面積)が下方に向かうほど小さくなるように、内壁面が曲面で構成される。
【0021】
処理槽本体10の上部には、処理槽本体10内に発生したメタン等の消化ガスを排気する消化ガス管11が接続される。消化ガス管11は、消化の過程または消化工程の完了後に処理槽本体10内の消化ガスを排出するための配管である。消化ガス管11には、手動または自動で開閉する図示しないバルブが設けられており、必要に応じてその流路が開閉される。処理槽本体10から排気されたガスは、たとえば、消化ガス管11を経由して(脱硫装置を含む)ガス精製装置等へ送られてバイオガスに精製された後、図示しないガスタンク等に貯蔵される。
【0022】
消泡装置12は、散水ノズル121と、図示しない泡センサーとを備える。散水ノズル121は、処理槽本体10の窄み部101の直上に、窄み部101に対して水散布が可能に設置される。泡センサーは、窄み部101の中心(内部空間の水平方向面積(仮想の水平面Bの面積)が最小の部位)を含む領域に設置され、気泡の発生と気泡の水中での上昇速度とを検知可能に構成される。消泡装置12は、消化処理により発生する消化ガスを含む気泡を泡センサーが検知すると、散水ノズル121を制御して水散布を行って消泡する。
【0023】
なお、泡センサーとしては、例えば、垂直方向に数箇所の圧力センサーを備え、気泡による空気圧の変化を感知することで実現できる。泡が発生したことと、泡の上昇速度とを統計的に検知できる。あるいは、電磁波などの光センサーを備え、気泡による遮光を感知することによっても実現できる。
【0024】
スカム除去装置13は、処理槽本体10の窄み部101にバルブ13aを介して接続され、消化処理により形成されるスカムを分離除去する。バルブ13aは詰まりに強い偏芯構造をなし、必要に応じてその流路が開閉される。
【0025】
集砂排出装置14は、処理槽本体10の下部102にバルブ14aを介して接続され、消化処理により堆積した砂を分離除去する。バルブ14aは詰まりに強い偏芯構造をなし、必要に応じてその流路が開閉される。
【0026】
このように構成された消化槽1に、処理槽本体10の図示しない投入口から有機性廃棄物が投入され、消化処理が実施される。なお、消化処理の際、汚泥面Cは徳利の首に相当する窄み部101の直下近傍になるように保持される。
【0027】
消化処理によりメタン等の消化ガスが発生すると、汚泥面Cから消化ガスを含む気泡が発生する。消泡装置の泡センサーが気泡の発生と気泡の上昇速度とを検知すると、気泡の上昇速度に応じて散水ノズル121より水が散布され、消泡される。このようにして消化ガスが分離され、消化ガス管11を経由して消化槽本体10から排気される。
【0028】
ここで、消化槽本体10の形状を、汚泥面Cより上方において内部空間の水平方向面積(仮想の水平面Bの面積)が上方に向かうほど大きくなるように構成したため、発生した気泡のバッファ領域として機能して、気泡が一気に発生した場合にも、消泡が間に合わずに消化ガス管11を閉塞することを防止することができる。気泡の上昇速度も上方に向かうほど遅くなるので、確実に消泡できる。
【0029】
また、消化槽本体10に窄み部101を構成して、汚泥面Cの上方に内部空間の水平方向面積(仮想の水平面Bの面積)が一旦小さくなる領域を設けたことにより、汚泥面Cから発生した気泡の密度が大きくなり、少量の気泡でも検出し易い。また、消泡すべき空間の面積が小さいため、水散布面積が小さく、小さい消泡装置で効率よく確実に消泡できる。
【0030】
さらに、汚泥面Cが窄み部10の直下近傍になるようにして、汚泥面Cの面積を下方の内部空間の水平方向面積(仮想の水平面Dの面積)より小さくしたことにより、消化ガスとともに汚泥面Cに上昇した有機性廃棄物が、処理槽本体10内壁面に沿って下方に循環する水流に巻き込まれ易いため、スカムの形成を抑制できる。
【0031】
また、処理槽本体10の底を丸くして、下部102内部空間の水平方向面面積(仮想の水平面Aの面積)を下方ほど小さくしたことにより、砂が、処理槽本体10内壁面に沿って下方に循環する水流に巻き込まれ易く、自重により滑り落ちて下方に集結するため、集砂排出装置14による除去が容易になる。
【0032】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、確実に消泡ができ、スカムの形成を抑制できるので、安定して有機性廃棄物の消化反応を行わせ消化ガスを回収することが可能となり、有機性廃棄物の消化効率が改善される。
【0033】
以上に説明した上記実施の形態は本発明を実施するための例にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、仕様等に応じて種々変形することは本発明の範囲内であり、更に本発明の範囲内において、他の様々な実施の形態が可能であることは上記記載から自明である。例えば各実施の形態に対して適宜例示した変形例は、他の実施の形態に対して適用することも可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0034】
1 消化槽
10 処理槽本体
101 窄み部
102 下部
11 消化ガス管
12 消泡装置
121 散水ノズル
13 スカム除去装置
14 集砂排出装置
A,B,D 内部空間の水平面
C 汚泥面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥が収容され有機性廃棄物が導入される処理槽本体を備え、
前記処理槽本体が、前記汚泥面より上方の内部空間の水平方向面積が上方に向かうに従って大きくなるように、形成されていることを特徴とする消化槽。
【請求項2】
前記処理槽本体は、前記汚泥面より上方の内部空間の水平方向面積が上方に向かうに従って一旦小さくなる窄み部を備えることを特徴とする請求項1に記載の消化槽。
【請求項3】
前記処理槽本体は、前記汚泥面より下方の内部空間の水平方向面積が上方に向かうに従って小さくなるように、形成されていることを特徴とする請求項2に記載の消化槽。
【請求項4】
前記汚泥上部に接続されたスカム除去装置を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の消化槽。
【請求項5】
前記汚泥上部に発生した泡を検知することが可能なセンサーを備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の消化槽。
【請求項6】
前記処理槽本体内において、前記汚泥上部に発生した泡に向けて散水する散水ノズルを備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の消化槽。
【請求項7】
前記処理槽本体は、前記汚泥面より下方の内部空間の水平方向面積が下方に向かうに従って小さくなるように、形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の消化槽。
【請求項8】
前記処理槽本体下部に接続された集砂排出装置を備えることを特徴とする請求項7に記載の消化槽。

【図1】
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【公開番号】特開2012−236126(P2012−236126A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105564(P2011−105564)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(507214083)メタウォーター株式会社 (277)
【Fターム(参考)】