説明

消弧装置

【課題】大電流域における過負荷遮断性能を向上させることができる消弧装置を提供する。
【解決手段】消弧装置17は、磁性体により形成されると共に可動電極を通過可能とした磁性板通路を有する磁性板110と、アークとの接触により消弧性分解ガスを発生する合成樹脂材料により形成されると共に可動電極を通過可能とした消弧部材通路を有する消弧部材120とを可動電極の移動方向に交互に配置し、アークとの接触により消弧性分解ガスを発生する合成樹脂材料により形成されると共に磁性板110と消弧部材120との間に設けられた補助消弧板200を備える。補助消弧板200には、消弧部材120の消弧部材通路の奥溝122a,122bと肉厚壁124とを囲繞する囲繞部が形成される。このため、大電流域においての過負荷遮断性能を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開路時、固定電極と可動電極との間に発生するアークを消弧する消弧装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の消弧装置は、磁性板通路を前端縁に有する複数の磁性板と、消弧部材通路を前端縁に有する複数の消弧部材とを備えている。各磁性板及び各消弧部材は、それぞれ可動電極の移動方向に所定の間隔をおいて交互に配置されている。また、前記磁性板において、前記磁性板通路の後端縁には前記磁性板の後端側へ延出された切欠溝が形成されている。開路時、固定電極から離間した可動電極は磁性板通路及び消弧部材通路を順次通過する。この際、固定電極と可動電極との間に発生したアークは前記磁性板に発生した電磁力により前記磁性板の後端側へ駆動され、前記切欠溝に吸引固定(拘束)される。特に小電流域のアークを消弧装置内に拘束することにより、当該アークと消弧部材から発生する消弧性分解ガスとの接触時間が確保される。この結果、小電流域におけるアークの消弧性能の向上が図られる(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、微小電流域におけるアークの消弧性能を向上させた消弧装置が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。特許文献2に記載の消弧装置では、消弧部材通路の後端側には同消弧部材通路と直交するアーク止壁部及び同アーク止壁部の中央から前記消弧部材の後端側へ延出された切欠奥溝が形成され、同切欠奥溝内の後端部において磁性板の一部を切欠奥溝内及び消弧部材通路内に露出させると共に、消弧部材通路の互いに対向する内側縁にはそれぞれアーク接触壁を突設させ、前記アーク接触壁の後端縁には消弧性分解ガスを逃がす開放口が設けられている。開路時には、固定電極と可動電極との間に発生したアークは前記磁性板に発生した電磁力により前記磁性板の後端側へ駆動され、前記アーク止壁部壁の前端縁周辺に前記磁性板が露出しているアーク固定部に固定される。これにより、消弧性分解ガスの発生が促進されると共に安定する。また、発生した消弧性分解ガスは、前記アーク接触壁の開放口より側方から後方へ円滑に排出される。
【特許文献1】特許第2896322号公報
【特許文献2】特開2005−108463号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、環境への負荷を考慮して上記のような気中タイプの消弧装置を備えた開閉器において、大電流域の遮断性能の向上が求められていた。
しかし、上記特許文献1及び特許文献2に記載の消弧装置では、小電流域における遮断性能の向上を図ったものであり、過負荷遮断電流として例えば1000Aの大電流では1回遮断できる程度の性能であった。このため、大電流域の過負荷遮断性能の更なる向上が求められていた。
【0005】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、大電流域における過負荷遮断性能を向上させることができる消弧装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、磁性体により形成されると共に可動電極を通過可能とした磁性板通路を前端縁に有する磁性板と、絶縁性を有しアークとの接触により消弧性分解ガスを発生する合成樹脂材料により形成されると共に可動電極を通過可能とした消弧部材通路を前端縁に有する消弧部材とが可動電極の移動方向に交互に配置され、開路時には固定電極から離間した可動電極が前記磁性板通路及び消弧部材通路を順次通過させるようにした消弧装置において、絶縁性を有しアークとの接触により消弧性分解ガスを発生する合成樹脂材料により形成されると共に可動電極を通過可能とした補助消弧板通路を前端縁に有する補助消弧板が前記磁性板と前記消弧部材との間に設けられたことをその要旨としている。
【0007】
同構成によれば、磁性板と消弧部材との間に補助消弧板を設けたため、開路時に固定電極と可動電極との間に発生した大電流域のアークは各磁性板通路の可動電極から離間する側となる後端側へ誘導される。この際、アークとの接触により消弧部材から消弧性分解ガスが発生すると共に、補助消弧板からも消弧性分解ガスが発生する。そして、消弧性分解ガスの発生量を増加させることができるため、例えば、1200Aの大電流域の過負荷遮断電流を複数回遮断することができる。よって、大電流域においての遮断性能を向上させることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の消弧装置において、前記消弧部材には、前記消弧部材通路の後端側へ延出された切欠奥溝と、切欠奥溝の互いに対向する内側縁に肉厚壁が形成され、前記補助消弧板の補助消弧板通路には、同切欠奥溝と肉厚壁とを囲繞する囲繞部が形成されることをその要旨としている。
【0009】
同構成によれば、消弧部材の消弧部材通路の後端側へ延出された切欠奥溝と、切欠奥溝の互いに対向する内側縁に肉厚壁を囲繞する囲繞部が補助消弧板の補助消弧板通路に形成される。このため、開路時に固定電極と可動電極との間に発生した大電流域のアークの補助消弧板に対する接触量が多くなり、消弧性分解ガスの発生が促進される。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の消弧装置において、前記補助消弧板は、固定電極の近傍の前記磁性板と前記消弧部材との間に設けられることをその要旨としている。
【0011】
同構成によれば、固定電極の近傍の磁性板と消弧部材との間に補助消弧板が設けられる。このため、開路時に固定電極と可動電極との間に発生した大電流域のアークの発生初期から補助消弧板の消弧性分解ガスが作用して消弧性能を向上させることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の消弧装置において、前記補助消弧板の後端部を前記消弧部材の後端縁よりも後方へ延出することをその要旨としている。
【0013】
同構成によれば、補助消弧板の後端部が消弧部材の後端縁よりも後方へ延出する。このため、開路時に固定電極と可動電極との間に発生した大電流域のアークが磁性板通路の可動電極から離間する側となる後端側へ誘導され、消弧部材の後端より後端側へ引き込まれてアークが上下に繋がってしまうことを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、大電流域における過負荷遮断性能を向上させることができる消弧装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明をダブルブレード型の開閉器の消弧装置に具体化した一実施形態を図1〜図14に従って説明する。
図1に示すように、開閉器10はケース蓋11と本体ケース12とから構成され、本体ケース12の互いに対向する両側壁12a,12bには電源側ブッシング13及び負荷側ブッシング14が3相各相(図1においては1相分のみ示す。)に互いに対向するように貫通支持されている。電源側ブッシング13の内端部(本体ケース12の内部側)には棒状の固定電極15が突設されており、同固定電極15の先端上部には耐弧メタル16が固定されている。また、固定電極15の先端には消弧装置17が固定用金具18を介して固定されている。この消弧装置17については後に詳述する。負荷側ブッシング14の内端部(本体ケース12の内部側)には導電棒19が突設されており、同導電棒19には軸20を介して可動電極21の基端部が回動可能に支持されている。これら固定電極15及び可動電極21は、各相の電極部間、及び本体ケース12間の絶縁を確保するために下方が開口した箱状の絶縁バリア25に覆われている。図2に二点鎖線で示すように、可動電極21は平行平板状の一対の接触刃21a,21bを備えている。
【0016】
一方、図1に示すように、本体ケース12内の下部には、複数のリンク等からなるリンク機構(図示略)を介して本体ケース12の外部の操作ハンドル(図示略)に作動連結された回動軸22が設けられており、当該回動軸22にはレバー23が一体回動可能に固定されている。レバー23の先端には駆動リンク24の一端が回動可能に連結されており、当該駆動リンク24の他端は可動電極21の中央近傍に回動可能に連結されている。従って、前記操作ハンドルが操作されると、可動電極21は前記リンク機構、回動軸22、レバー23及び駆動リンク24を介して軸20を中心に図1に二点鎖線で示す投入位置と同じく実線で示す開放位置との間を移動する。
【0017】
<消弧装置>
次に、前記消弧装置17について詳細に説明する。図3〜図5に示すように、消弧装置17は、磁性体により板状に形成された複数(本実施形態では8枚)の磁性板110と絶縁性及び消弧性を有する合成樹脂材料により板状に形成された複数(本実施形態では9個)の消弧部材120とを備えている。更に、消弧装置17は、絶縁性及び消弧性を有する合成樹脂材料により板状に形成された複数(本実施形態では6枚)の補助消弧板200を備えている。各磁性板110及び各消弧部材120は可動電極21の移動方向に所定の間隔をおいて交互に配置されている。各磁性板110及び各消弧部材120はそれぞれ一対の支持部材130,130間に配置され一括して支持されている。また、6枚の補助消弧板200は、最下段の磁性板110と下から2段目の消弧部材120との間を一番下として各磁性板110と消弧部材120との間に挿入されて、消弧装置17に取り付けられている。以下、支持部材130、磁性板110、消弧部材120及び補助消弧板200の順に説明する。
【0018】
なお、消弧装置17において、可動電極21の配設された側、即ち負荷側ブッシング14が取り付けられた側を前方とし、電源側ブッシング13の取り付けられた側を後方とする。また、固定電極15が突設された側を下方とし、ケース蓋11の取り付けられた側を上方とする。そして、電源側ブッシング13及び負荷側ブッシング14が3相並列に取り付けられた横方向を側方として説明する。
【0019】
<支持部材>
まず、支持部材130について説明する。図3〜図6に示すように、支持部材130は絶縁性を有する合成樹脂材料又は無機材料により一体形成されており、固定電極15に固定用金具18を介して固定される基部131と同基部131に対して斜状をなす支持部132とを備えている。図5及び図6に示すように、支持部132には、2つを1組とする複数組(本実施形態では8組)の磁性板用支持孔133が同支持部132の長手方向において所定間隔毎に形成されている。また、支持部132において、各組の磁性板用支持孔133の上部にはそれぞれ消弧部材用支持孔134が形成されている。各消弧部材用支持孔134と各組の磁性板用支持孔133とは互いに連通している。そして、消弧部材120及び磁性板110の支持部132への組付け作業時において、後述する消弧部材120の係合突部140を消弧部材用支持孔134へ内側から挿入することにより、同時に磁性板110の突起113を支持部材130に固定可能となっている。
【0020】
図3に示すように、基部131の上面には傾斜面131aが形成されている。この傾斜面131aには最下層の消弧部材120の側縁部(後述する張出部129)の下面が密接している。支持部132の後側側面には最下層の消弧部材120の前側側縁部(後述する張出部129の前側側縁部)が密接している。これにより、アークIに曝されることによって消弧部材120から発生する消弧性分解ガスの消弧装置17内からの漏洩が抑制される。
【0021】
また、図6に示すように、基部131の内側面には、絶縁壁135が形成されている。絶縁壁135は両支持部材130,130間に支持された磁性板110及び消弧部材120と平行をなすように形成されている。図13に示すように、絶縁壁135は両支持部材130,130に支持された消弧部材120のうち最下層の消弧部材120の側縁部(後述する張出部129)の一部に重なるように設けられている。これにより、消弧性分解ガスの消弧装置17の両支持部材130,130側への外部漏洩が抑制される。さらに、両支持部材130,130はそれぞれ消弧装置17の前面側(即ち、後述する可動電極通過部αの開口側)に配置されている。よって、両支持部材130,130が消弧装置17の後面側から遠ざかった位置に配置されることにより、当該消弧装置17の後方へ放出された消弧性分解ガスの回り込みによる両支持部材130,130の汚損が抑制される。
【0022】
また、支持部132の側面において、磁性板用支持孔133及び消弧部材用支持孔134の両側には突部136,136が支持部132の長手方向における全長に亘って形成されている。
【0023】
<磁性板>
次に、磁性板110について説明する。図8に示すように、磁性板110は磁性体によりW字板状に形成されている。本実施形態では、磁性体として、フェライト系ステンレス鋼鋼材を使用している。フェライト系ステンレス鋼鋼材は素材自体に防錆効果を有すると共に電磁力の発生に優れる。磁性板110はフェライト系ステンレス鋼鋼材製の板材をプレスにより打ち抜き、この後、焼鈍することにより形成されている。焼鈍とは、鋼を所定温度に加熱した後、ゆっくり冷却することにより、プレス加工時に加えられた磁性板110の残留応力による歪みを除去することである。
【0024】
磁性板110の前端縁(負荷側ブッシング14の取り付けられた側の側縁)には接触刃21a,21bをそれぞれ通過可能とした一対の磁性板通路111a,111bが所定間隔をおいて形成されている。両磁性板通路111a,111bはそれぞれ後端縁(電源側ブッシング13の取り付けられた側の側縁)側へ近づくほど幅(図8における左右方向の長さ)が小さくなるテーパ状に切欠形成されている。磁性板110に発生する電磁力吸引力増大の観点から磁性板通路111a,111bの幅は極力狭くすることが望ましい。
【0025】
両磁性板通路111a,111bの後端縁には前記磁性板の後端側(電源側ブッシング13の取り付けられた側)へ延出された切欠溝112a,112bがそれぞれ形成されている。両切欠溝112a,112bの幅はそれぞれ磁性板通路111a,111bの幅よりも小さくされている。両切欠溝112a,112bはそれぞれ磁性板通路111a,111bと同じ方向に、即ち磁性板110の後端側へ延出されている。両磁性板通路111a,111bと両切欠溝112a,112bとは滑らかに連続している。両切欠溝112a,112bは幅を一定とした平行溝とされている。
【0026】
磁性板110の前端縁寄りの両側縁には、それぞれ一対の突起113,113が形成されている。図6及び図7に示すように、両突起113,113は両支持部材130,130の磁性板用支持孔133にそれぞれ内側から係合している。この状態で、突起113の支持部材130外側面からの突出部分を外方からたがね等で打ち込んで塑性変形させることにより、当該突起113の磁性板用支持孔133からの抜け止めが図られる。
【0027】
<消弧部材>
次に、消弧部材120について説明する。図2及び図4に示すように、消弧部材120は絶縁性を有し、かつアーク熱により消弧性分解ガスを発生する合成樹脂材料(例えば四フッ化エチレン‐パーフルオロビニルエーテル共重合体(PFA)等のフッ素樹脂)によりW字板状に形成されている。従って、消弧部材120はアークとの接触により消弧性分解ガスを発生する。
【0028】
消弧部材120の前端縁(負荷側ブッシング14の取り付けられた側の側縁)には接触刃21a,21bをそれぞれ通過可能とした一対の消弧部材通路121a,121bが所定間隔をおいて形成されている。両消弧部材通路121a,121bの後端縁(電源側ブッシング13の取り付けられた側の側縁)には前記磁性板の後端側へ延出された奥溝122a,122bがそれぞれ形成されている。奥溝122a,122bは消弧部材通路121a,121bと同様に消弧部材120の後端縁側(電源側ブッシング13の取り付けられた側)へ前記切欠溝112a,112bと平行に延びている。また、奥溝122a,122bの幅は消弧部材通路121a,121bの幅よりも小さくされている。奥溝122a,122bは、切欠奥溝を構成する。
【0029】
図9に示すように、消弧部材120の裏面において、消弧部材通路121a,121bの互いに対向する内側縁、即ち消弧部材通路121a,121bと直交する側縁にはそれぞれアーク接触壁123が突設されている。アーク接触壁123の内側面は連続したフラット面123aを形成している。アーク接触壁123(厳密には、アーク接触壁123のフラット面123a)は大電流開放時などにおいて当該大電流アークと接触して消弧性分解ガスを発生するアーク接触部材として機能する。
【0030】
図5、図6及び図9に示すように、各アーク接触壁123の後端縁にはそれぞれ消弧性分解ガスの開放口123bが形成されている。各開放口123bはそれぞれ同列になるように切欠形成されている。消弧部材120がアークに曝されることにより発生した消弧性分解ガスは各開放口123bを通って側方から後方へ逃がされる。
【0031】
また、図9に示すように、消弧部材120の裏面において、奥溝122a,122bの互いに対向する内側縁にはそれぞれブロック状の肉厚壁124が形成されている。各肉厚壁124の前端側側面(消弧部材通路121a,121b側の側面)は消弧部材通路121a,121bに面しており、消弧部材通路121a,121bの中心軸に対して直交するように形成されている。
【0032】
このため、微小電流開放時において当該微小電流域のアークIの消弧部材120の後端側への移動は、肉厚壁124の前端側側面により規制される。即ち、肉厚壁124の前端側側面は、アークIの消弧部材120の後端側への移動を規制するアーク止壁部124aとして機能する。換言すれば、両消弧部材通路121a,121bの後端側にはそれぞれアーク止壁部124aが形成されている。微小電流域のアークIがアーク止壁部124aの付近に滞留することにより、当該アーク止壁部124aはアーク熱により溶け、消弧性分解ガスを発生する。
【0033】
図6に示すように、最下段の消弧部材120の同肉厚壁124は、上方の消弧部材120の肉厚壁124よりも厚く形成されている。また、消弧部材120の裏面からの突出高さも他の消弧部材120の肉厚壁124よりも大きくされている。最下段の消弧部材120は、固定電極15と可動電極21との間に発生したアークによって最も曝されて消耗するが、肉厚壁124を厚く形成したことにより同消耗に耐えられる。また、消弧部材120の裏面からの突出高さを他の肉厚壁124よりも大きくした分だけ、アークと接する面積が増加するため消弧性分解ガスの発生を増加させることができる。
【0034】
図5及び図6に示すように、消弧部材120の表面及び裏面において、各アーク接触壁123のうち最も外側に位置する2つのアーク接触壁123と消弧部材120の外側縁との間にはそれぞれ間隔保持部125が突出するように形成されている。図3及び図7に示すように、この間隔保持部125は、支持部材130,130間において消弧部材120と磁性板110とを交互に積層配置したとき、各磁性板110に当接することにより当該各磁性板110の配置間隔を一定に保持する。
【0035】
また、間隔保持部125の消弧部材120の裏面からの突出長さは、アーク接触壁123の消弧部材120の裏面からの突出長さよりも大きくされている。このため、間隔保持部125は、支持部材130,130間において消弧部材120と磁性板110とを交互に積層配置したとき、アーク接触壁123、消弧部材120の表面及び同じく裏面はそれぞれ磁性板110に接触することはない。そして、アーク接触壁123、消弧部材120の表面及び同じく裏面と磁性板110との間には所定の隙間が形成される。換言すれば、アーク接触壁123と消弧部材120の表面及び裏面とがそれぞれ磁性板110に接触しない程度に間隔保持部125の消弧部材120の表面及び裏面からの突出高さが設定されている。
【0036】
図3及び図7に示すように、各消弧部材120の間隔保持部125は、消弧部材120と磁性板110とを交互に積層配置したときに各消弧部材120間の両側を閉塞して前方及び後方にそれぞれ開口した空隙S(図7参照。)を形成する。
【0037】
図5及び図9に示すように、消弧部材120の裏面において、アーク接触壁123と間隔保持部125と消弧部材120の裏面とにより凹部126が形成されている。これにより消弧部材120の側方(消弧部材通路121a,121bの長手方向に対して直交する方向)における絶縁沿面距離の増大が図られる。
【0038】
加えて、消弧部材120について説明すると、図9に示すように、消弧部材120の奥溝122a,122bは空隙127a,127bを介して消弧装置17の後端側へ開口している。消弧部材120において、肉厚壁124の後端側の部位は各磁性板110の上下方向における絶縁を確保するための上下バリア部128とされている。図10(a)に示すように、上下バリア部128において、アーク接触壁123の後端側には肉厚部128aが形成されている。この肉厚部128aは消弧部材120の後端側へ向かうにつれて肉厚が小さくなるテーパ面128bが形成されている。この構成により、アークによる消耗に対処すると共に消弧性分解ガスの後方への円滑な放出が可能となる。
【0039】
尚、下から2段目、3段目の消弧部材120の上下バリア部128の肉厚部128aは、これらの上方に配置される4段目以降の消弧部材120の肉厚部128aよりも厚く形成されている。また、図12に示すように、最下段の消弧部材120の肉厚部128aは、下から2段目、3段目の消弧部材120の肉厚部128aよりもさらに厚く形成されている。1〜3段目の消弧部材120は、固定電極15に近いためアークに曝されることによる消耗が激しいところ、この想定される消耗度合いに応じて上下バリア部128の厚みを設定することにより、同消耗に耐えられるようになっている。
【0040】
図2及び図3に示すように、各磁性板110及び各消弧部材120を支持部材130,130間に支持した状態において、各上下バリア部128はそれぞれ磁性板110の後端縁から後方へ大きく張り出している。これにより、遮断時の消弧性分解ガスを消弧装置17の後方へ円滑に案内可能となっている。また、金属蒸気等も含まれる消弧性分解ガスの消弧装置17内への戻りが抑制される。このため、消弧性ガスの戻りに起因して磁性板110間の雰囲気が短絡しやすい雰囲気となることが回避される。
【0041】
図2に示すように、消弧部材120の両側縁(電源側ブッシング13及び負荷側ブッシング14が3相並列に取り付けられた横方向の側縁)における後端側にはそれぞれ張出部129が形成されている。磁性板110及び消弧部材120を両支持部材130,130間に支持した状態において、張出部129が磁性板110の両側縁からそれぞれ突出するように当該張出部129の張出し長さが設定されている。各張出部129により消弧装置17における側部の磁性板110と消弧部材120の積層方向の絶縁沿面距離が確保される。
【0042】
消弧部材120の両側縁における前端側にはそれぞれ係合突部140が形成されている。図5に示すように、係合突部140の上面と前記張出部129の上面とはそれぞれほぼ同一平面上に位置するように形成されている。両係合突部140,140はそれぞれ両支持部材130,130の消弧部材用支持孔134に内側から係合している。
【0043】
図11に示すように、係合突部140において、互いに反対側に位置する短側面の上部には側部抜け止め突部141がそれぞれ形成され、互いに反対側(上下)に位置する両長側面のうち、上部に位置する長側面の外側寄りには上部抜け止め突部142が形成されている。そして、側部抜け止め突部141及び上部抜け止め突部142が消弧部材用支持孔134を通過して、当該側部抜け止め突部141及び上部抜け止め突部142が支持部材130(支持部132)の外側面に係合することにより、係合突部140の消弧部材用支持孔134からの抜け止めが図られている。
【0044】
図2に示すように、消弧装置17を消弧部材120及び磁性板110の積層方向において平面視したとき、消弧部材120の奥溝122a,122bと磁性板110の切欠溝112a,112bとの位置関係は次のようになっている。即ち、奥溝122a,122b内には磁性板110の切欠溝112a,112bの全体が位置していると共に、当該奥溝122a,122b内の後端部には磁性板110の一部が露出している。また、両消弧部材通路121a,121bの両消弧部材通路121a,121bの後端側であるとともに、肉厚壁124の前端側側面のアーク止壁部124aには磁性板110が内側に露出している。このため、固定電極15と可動電極21との間に発生したアークIはその遮断電流に応じて磁性板110の各露出部位に拘束される。即ち、大電流域及び小電流域のアークIは両奥溝122a,122b内の後端部に位置(露出)する磁性板110のアーク拘束部γ(後記する)において拘束される。また、微小電流は両消弧部材通路121a,121bの後端部付近に位置(露出)する磁性板110のアーク固定部150に拘束される。
【0045】
尚、図2に示すように、本実施形態において、磁性板通路111a,111b及び消弧部材通路121a,121bの幅と消弧部材120の前端部から磁性板通路111a,111bの露出していない部分までの長さとで囲まれた空間から可動電極通過部αを構成する。磁性板110の切欠溝112a,112bが位置する消弧部材120の奥溝122a,122bの幅と切欠溝112a,112bの平行溝の長さとで囲まれた空間内に露出した磁性板110の部位はアーク誘導部βを構成する。消弧部材120の奥溝122a,122bの幅と磁性板110の切欠溝112a,112bよりも後端側から消弧部材120の奥溝122a,122bの後端側の間の長さとで囲まれた空間内に露出した磁性板110の部位はアーク拘束部γを構成する。
【0046】
<補助消弧板>
次に、補助消弧板200について説明する。図13及び図14に示すように、補助消弧板200は、絶縁性を有し、かつアーク熱により消弧性分解ガスを発生する合成樹脂材料(例えば四フッ化‐ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂)によりU字板状に形成されている。従って、補助消弧板200はアークとの接触により消弧性分解ガスを発生する。これにより、消弧部材120のみに比べ、消弧性分解ガスの発生量を増加させることができる。特に、補助消弧板200を構成するPTFEフッ素樹脂は、消弧部材120を構成するPFAフッ素樹脂よりも消弧性分解ガスが多く発生する。また、PTFEフッ素樹脂の表面は光沢があり、金属蒸気等が付着し難く、表面が汚損し難いため、アークの回り込みが抑制される。
【0047】
補助消弧板200の前端縁(負荷側ブッシング14の取り付けられた側の側縁)には接触刃21a,21bを通過可能とした補助消弧板通路200aが形成されている。補助消弧板通路200aの後端側へ延出された消弧部材120の奥溝122a,122b及び肉厚壁124を囲繞するように囲繞部201が形成されている。
【0048】
詳しくは、囲繞部201は、補助消弧板通路200aの中央に形成された中央突出部201aと、消弧部材120の間隔保持部125を挟むように左右に形成された一対のスリット203,203によって形成された一対の側部突出部202a,202bとから構成される。囲繞部201は、消弧部材120の奥溝122a,122bに対応する2つを1組とする2組の肉厚壁124を組毎に囲繞している。また、中央突出部201a、側部突出部202a,202bの先端、又は先端側の部位は、開放口123bを介して消弧部材通路121a,121bに露出していることにより、アークと接触し易くなっており、消弧性分解ガスがより発生する。
【0049】
加えて、補助消弧板200について説明すると、図5及び図6に示すように、各補助消弧板200の後端縁(電源側ブッシング13の取り付けられた側の側縁)には、後端部204は、それぞれ消弧部材120の後端縁から大きく張り出している。本実施形態では、最下段の補助消弧板200が絶縁バリア25に当接する程度に延出されている。これにより、開路時に固定電極15と可動電極21との間に発生した大電流域のアークがその大電流のために磁性板110に発生する電磁吸引力が過大となり消弧部材120の後端縁より補助消弧板200の後端側へさらに引き込まれ、アークが上下に繋がることを防ぐことができる。
【0050】
また、同後端部204には前側(負荷側ブッシング14の取り付けられた側)へ凹んだ凹部204aが形成されている。図1に示すように、固定電極15及び可動電極21等を覆う絶縁バリア25の内壁と最下段の補助消弧板200の後端部204が当接した場合であれ、発生した消弧性分解ガスは、凹部204aを介して上方へ流れる。これにより、空気の流れを阻害せず、発生した消弧性分解ガスが滞留することによりアークが可動電極21側(前端側)へ押し戻されることを防ぐことができる。
【0051】
図14に示すように、各補助消弧板200の両側縁(電源側ブッシング13及び負荷側ブッシング14が3相並列に取り付けられた横方向の側縁)には左右両側端部205,205が形成されている。左右両側端部205,205は、消弧装置17の左右側方向において消弧部材120の両側縁の張出部129よりも大きく延出するとともに、消弧装置17の前後方向において支持部材130の前端縁よりも前方へ延出している。これにより、磁性板110及び消弧部材120の表面が汚損した際に、開路時に固定電極15と可動電極21との間に発生したアークが絶縁性の低い磁性板110及び消弧部材120の汚損した表面を辿って消弧装置17の側方へ回り込んだり、更に消弧装置17の前方へ回り込んだりした場合であれ、アークが上下に繋がることを防ぐことができる。
【0052】
図13及び図14に示すように、各補助消弧板200の補助消弧板通路200aの内側縁、即ち補助消弧板通路200aと直交する側縁には、支持部材130の突部136に係止される係止爪部206,206がそれぞれ形成されている。磁性板110と消弧部材120との間に消弧装置17の後方から挿入された補助消弧板200は、係止爪部206を支持部材130の突部136に係止させることで抜け止めが図られる。
【0053】
<消弧部材と補助消弧板との位置関係>
図14に示すように、消弧部材120と補助消弧板200との取り付け状態において補助消弧板200の裏側から見たとき、磁性板110と消弧部材120との間に挿入された補助消弧板200と消弧部材120との位置関係は次のようになっている。即ち、消弧部材120の奥溝122a,122b及び肉厚壁124を囲繞するように補助消弧板200の囲繞部201が位置している。中央突出部201aが中央側の2つの肉厚壁124に挟まれた空間に位置し、側部突出部202a,202bの先端部がアーク接触壁123と間隔保持部125とに挟まれた空間に位置し、これら中央突出部201aと側部突出部202a,202bとは開放口123bを介して露出している。このため、中央突出部201aと側部突出部202a,202bとは、消弧部材120の消弧部材通路121a,121bの後端側に駆動されたアークに開放口123bを介して曝され、消弧性分解ガスが発生する。また、補助消弧板200のスリット203には、消弧部材120の間隔保持部125が位置している。このため、補助消弧板200は消弧部材120に対して横ずれせずに取り付けられる。
【0054】
<補助消弧板の取り付け>
補助消弧板200は、補助消弧板通路200aの内側縁に形成された係止爪部206が消弧装置17の後方から磁性板110と消弧部材120との間に挿入されて、上記のように囲繞部201が消弧部材120の空間に一致するように配置される。支持部材130の突部136を乗り越えて係止されることにより取り付けられ、抜け止めされる。補助消弧板200を消弧部材120に挿入する際に、スリット203は間隔保持部125に誘導されて補助消弧板200の挿入は円滑に行われる。
【0055】
<実施形態の作用>
次に、前述のように構成された開閉器10の消弧装置の作用について説明する。
図1に二点鎖線で示す投入状態において、前記操作ハンドルが開路操作されると、回動軸22を中心としてレバー23が時計方向へ回動する。これに伴って、駆動リンク24は上方へ移動され、可動電極21が軸20を中心に時計方向へ回動する。可動電極21が固定電極15から離間すると、当該固定電極15と可動電極21との間、即ち固定電極15と両接触刃21a,21bとの間にはそれぞれアークI(図8参照。)が発生する。
【0056】
図8に示すように、このアーク柱の周囲には磁性板110の存在により片寄った磁束分布が発生する。右ねじの法則及びフレミング左手の法則に基づいて磁性板110に発生する電磁力により、アークIは常に磁性板110の後端側(図8における矢印方向)へ駆動され、両磁性板通路111a,111b(図2参照。)の後端側の切欠溝112a,112bの後端側に集中し固定される。アークIは切欠溝112a,112bの後端側に集中して固定された状態で引き伸ばされると共に各磁性板110により分断され、陽極・陰極降下及び冷却等が有効に作用して、アーク電圧が急激に高められる。可動電極21が図1に実線で示す開放位置まで移動すると、アークは完全に消弧され開路動作が終了となる。閉路時には前述した開路時とは逆の動作が行われる。
【0057】
<大電流アークの遮断>
次に、例えば1200Aのような大電流を遮断する際の消弧装置17の作用を説明する。
【0058】
磁性板110と消弧部材120とが可動電極21の移動方向に交互に配置されていることにより、アークIは消弧部材120の上下バリア部128の上面(表面)及び下面(裏面)、補助消弧板200の後端部204の上面(表面)及び下面(裏面)に接触しながら磁性板110の後端側へさらに駆動される。このとき、アーク熱により消弧部材120のアーク接触壁123、上下バリア部128の上面及び下面、補助消弧板200の囲繞部201、後端部204の上面及び下面からは消弧性分解ガスが発生し、この消弧性分解ガスにより消弧が促進される。
【0059】
即ち、大電流アークはエネルギーが大きく各磁性板110に発生する電磁吸引力も強い。このため、大電流域のアークIはアーク固定部150に固定されることなく、一気に切欠溝112a,112bの後端側、ひいては消弧部材120及び補助消弧板200の後端側へ駆動され、消弧部材120の上面及び下面、補助消弧板200の上面及び下面に積極的に接触する。また、励磁電流及び充電電流等の小電流アークに比べて発生する熱量も多いので、消弧部材120の上面及び下面、補助消弧板200の上面及び下面からの消弧性分解ガス発生量も十分確保される。また、アーク接触壁123及び肉厚壁124も消弧性分解ガスの発生に貢献する。
【0060】
消弧部材120及び補助消弧板200は陰性原子の一種であるフッ素を含む合成樹脂(本実施形態では、消弧部材200はPFA、補助消弧板200はPTFE)により形成されているので、アーク熱により発生した消弧性分解ガスにはアーク中の電子を吸着し易い性質を有する陰性原子の一種であるフッ素原子が含まれている。このフッ素原子がアーク中の電子を吸着することにより消弧性能(電流遮断性能)が高められる。
【0061】
前述したように、消弧部材通路121a,121b内で発生した消弧性分解ガス(即ち、アーク接触壁123から発生した消弧性分解ガス)はアーク接触壁123に案内されながら消弧部材120の後方へ導出される。特に大電流開放時においては、アークIの発生に伴って消弧性分解ガスは主に磁性板110及び消弧部材120の後方へ流れる。この消弧性分解ガスによりアークIが磁性板110及び消弧部材120の後方へ吹き飛ばされ、当該アークIがさらに引き伸ばされる。即ち、磁性板110及び消弧部材120の後方へ流れる消弧性分解ガスによるアーク吹き飛ばし効果により、消弧が促進される。尚、アーク接触壁123の外面はアーク発生部位の陰になるので、消弧性分解ガスに含まれる金属蒸気等が付着し難くなっている。このため、連続した汚損面が形成されることがなく、各磁性板110間の絶縁沿面距離が確保される。
【0062】
図9に矢印で示すように、消弧部材120の後方へ導出されてきた消弧性分解ガスは大きく開口した前記空隙S(図7参照。)を介して消弧装置17の後方へ導かれる。消弧性分解ガスは、消弧部材120の後方だけでなくアーク接触壁123の後端側に形成された開放口123bから側方へ抜け、この後後方に排出される。また、消弧性分解ガスは、補助消弧板200の後端部204に形成された凹部204aから後端部に滞留することなく上方へ排出される。このため、消弧性分解ガスの排出が円滑に行われ、当該消弧性分解ガスが滞留することなく消弧装置17の後方へ円滑に抜けると共に、消弧装置17の内部には新しい雰囲気ガス(空気)が導入される。
【0063】
この結果、消弧装置17の奥溝122a,122bの後方における雰囲気の絶縁抵抗が高まり消弧に寄与する。さらに、新たに導入された雰囲気ガス(空気)により磁性板110が冷却され、消弧が促進される。消弧性能を一旦発揮した消弧性分解ガスは金属蒸気や遊離炭素を含んでおり再点弧の原因となるが、消弧性分解ガスは速やかに磁性板110、消弧部材120及び補助消弧板200の後方へ導出される。そして、消弧装置17の内部の雰囲気が新しい雰囲気ガス(空気)に入れ替わることにより絶縁回復が図られ、再点弧が防止される。
【0064】
また、磁性板110や消弧部材120が金属蒸気等の付着によって汚損した際に、発生したアークが汚損面を伝達して消弧部材120の後端縁より後方や側方へ誘導されるおそれがある。このような場合、補助消弧板200の後端部204は後方へ延出するとともに、側端部205,205は支持部材よりも側方且つ前方へ延出しているため、アークが上下で繋がってしまうことを防ぐことができる。
【0065】
このように、本実施形態の消弧装置17によれば、1200Aの過負荷遮断電流であっても複数回遮断することができ、大電流域においての遮断性能を向上させることができる。
【0066】
<実施形態の効果>
以上、説明した実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)磁性板110と消弧部材120との間に補助消弧板200を設けたため、開路時に固定電極15と可動電極21との間に発生した大電流域のアークは各磁性板通路111a,111bの後端側へ誘導される。この際、アークとの接触により消弧部材120から消弧性分解ガスが発生すると共に、補助消弧板200からも消弧性分解ガスが発生する。そして、消弧性分解ガスの発生量を増加させることができるため、大電流域の過負荷遮断電流が例えば1200Aを複数回遮断することができる。よって、大電流域においての過負荷遮断性能を向上させることができる。
【0067】
(2)補助消弧板200の補助消弧板通路200aには、消弧部材120の切欠奥溝としての奥溝122a,122bと肉厚壁124とを囲繞する囲繞部が形成される。このため、開路時に固定電極15と可動電極21との間に発生した大電流域のアークの補助消弧板200に対する接触量が多くなり、消弧性分解ガスの発生が促進される。
【0068】
(3)固定電極15の近傍の磁性板110と消弧部材120との間に補助消弧板200が設けられる。このため、開路時に固定電極15と可動電極21との間に発生した大電流域のアークの発生初期から補助消弧板200の消弧性分解ガスが作用して消弧性能を向上させることができる。
【0069】
(4)補助消弧板200の後端部204が消弧部材120よりも後方へ延出する。このため、開路時に固定電極15と可動電極21との間に発生した大電流域のアークが磁性板通路111a,111bの後端側へ誘導され、消弧部材120の後端より補助消弧板200の後端側へさらに引き込まれてアークが上下に繋がってしまうことを防ぐことができる。
【0070】
(5)補助消弧板200の後端部204に前側へ凹んだ凹部204aが形成されるため、補助消弧板200の後端部204が絶縁バリア25の近傍まで延出しても、凹部204aによって空気が流れる空間を確保することができる。よって、補助消弧板200の後方へ誘導された消弧性分解ガスは凹部204aを介して例えば上方へ排出されるため、消弧性分解ガスが滞留することでアークが可動電極21側へ押し戻されることを防ぐことができる。
【0071】
(6)補助消弧板200の側端部205,205が消弧部材120よりも側方へ延出する。このため、磁性板110や消弧部材120が金属蒸気等の付着によって汚損したことにより開路時に固定電極15と可動電極21との間に発生した大電流域のアークが磁性板通路111a,111bから側方へ、さらに消弧部材120の側端縁より側方へ誘導されてアークが上下に繋がってしまうことを防ぐことができる。
【0072】
(7)補助消弧板200の側端部205,205が消弧部材120よりも前端側へ延出する。このため、磁性板110や消弧部材120が金属蒸気等の付着によって汚損したことにより開路時に固定電極15と可動電極21との間に発生した大電流域のアークが磁性板通路111a,111bから側方へ、さらに側方から可動電極21側へ誘導され、アークが上下に繋がってしまうことを防ぐことができる。
【0073】
(8)磁性板110と消弧部材120とを可動電極21の移動方向に交互に配置して固定する支持部材130の突部136に係止させる係止爪部206が補助消弧板200に形成されるため、補助消弧板200を取り付けた際に抜け止めすることができる。
【0074】
(9)補助消弧板200を着脱可能に設けたため、要求される遮断性能等に応じて補助消弧板200の枚数や取り付け位置を適宜調節できる。よって、要求される性能の異なる開閉器に幅広く対応することができる。
【0075】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・上記実施形態では、磁性板110、消弧部材120、補助消弧板200をそれぞれ8枚、9個、6枚設けるようにしたが、これらの個数はアークを遮断できるように、要求される遮断性能に応じて適宜変更可能である。
【0076】
・上記実施形態では、消弧装置17をダブルブレード型の開閉器10に採用したが、シングルブレード型の開閉器に採用してもよい。
・上記実施形態では、消弧装置17を固定電極15と可動電極21とが水平方向に対向して配置される開閉器10に採用したが、図16に示されるように、固定電極15と可動電極21とが垂直方向に対向して配置される開閉器30に採用してもよい。
【0077】
・上記実施形態では、補助消弧板200の内側縁には係止爪部206を形成したが、係止爪部206を左右それぞれに複数形成するようにしてもよい。例えば、図15に示されるように、補助消弧板200の補助消弧板通路200aの内側縁に第1係止爪部206aと第2係止爪部206bとを形成する。これら第1係止爪部206aと第2係止爪部206bは、支持部材130の突部136にそれぞれ係止し、支持部材130に取り付けられる。このようにすれば、より確実に取り付け固定される。
【0078】
・上記実施形態では係止爪部206を形成したが、囲繞部201等の他の部分を消弧部材120と係合させることにより補助消弧板200の抜け止めを図るようにした場合には、係止爪部206を省略することもできる。
【0079】
・上記実施形態において、側端部205,205を前端側、即ち前方へ延出したが、要求される遮断性能又は仕様等によっては、前方へ延出しなくともよい。
・上記実施形態において、側端部205,205を消弧部材120の側端縁よりも側方へ延出させたが、要求される遮断性能又は仕様等によっては、図15に示されるように、側方へ延出しなくともよい。
【0080】
・上記実施形態において、補助消弧板200の後端部204に凹部204aを形成したが、後端部204が絶縁バリア25に接触するまで延出しない構成とした場合には、凹部204aを省略した構成を採用してもよい。
【0081】
・上記実施形態では、補助消弧板200を固定電極15の近傍の磁性板110と消弧部材120との間に設けるようにしたが、アークを遮断できるほどに消弧性分解ガスを発生させることができるならば、固定電極15の近傍でなくともよい。
【0082】
・上記実施形態では、補助消弧板200に囲繞部201を形成したが、所望量の消弧性分解ガスを発生させることができるならば、囲繞部201を省略した構成を採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本実施形態における開閉器の正断面図。
【図2】本実施形態における消弧装置の平面図。
【図3】本実施形態における消弧装置の側面図。
【図4】本実施形態における消弧装置のA矢視図。
【図5】本実施形態における消弧装置の分解斜視図。
【図6】本実施形態における消弧装置の分解斜視図。
【図7】本実施形態における消弧装置のB矢視図。
【図8】本実施形態における磁性板の平面図。
【図9】本実施形態における消弧部材の下面図。
【図10】(a)図9の1‐1線断面図、(b)図9の2‐2線断面図。
【図11】図3におけるC部拡大図。
【図12】本実施形態における消弧装置の背面図。
【図13】本実施形態における補助消弧板の平面図。
【図14】本実施形態における消弧部材及び補助消弧板を重ね合わせた下面図。
【図15】別の実施形態における補助消弧板の平面図。
【図16】別の実施形態における開閉器の正断面図。
【符号の説明】
【0084】
10,30…開閉器、11…ケース蓋、12,32…本体ケース、12a,12b…側壁、13…電源側ブッシング、14…負荷側ブッシング、15…固定電極、16…耐弧メタル、17…消弧装置、18…固定用金具、19…導電棒、20…軸、21…可動電極、21a,21b…接触刃、22…回動軸、23…レバー、24…駆動リンク、25…絶縁バリア、110…磁性板、111a,111b…磁性板通路、112a,112b…切欠溝、113…突起、120…消弧部材、121a,121b…消弧部材通路、122a,122b…奥溝、123…アーク接触壁、123a…フラット面、123b…開放口、124…肉厚壁、124a…アーク止壁部、125…間隔保持部、126…凹部、127a,127b…空隙、128…上下バリア、128a…肉厚壁、128b…テーパ面、129…張出部、130…支持部材、131…基部、131a…傾斜面、132…支持部、133…磁性板用支持孔、134…消弧部材用支持孔、135…絶縁壁、136…突部、140…係合突部、141…側部抜け止め部、142…上部抜け止め部、150…アーク固定部、200…補助消弧板、200a…補助消弧板通路、201…囲繞部、201a…中央突出部、202a,202b…側部突出部、203…スリット、204…後端部、204a…凹部、205…側端部、206…係止爪部、206a…第1係止爪部、206b…第2係止爪部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体により形成されると共に可動電極を通過可能とした磁性板通路を前端縁に有する磁性板と、絶縁性を有しアークとの接触により消弧性分解ガスを発生する合成樹脂材料により形成されると共に可動電極を通過可能とした消弧部材通路を前端縁に有する消弧部材とが可動電極の移動方向に交互に配置され、開路時には固定電極から離間した可動電極が前記磁性板通路及び消弧部材通路を順次通過させるようにした消弧装置において、
絶縁性を有しアークとの接触により消弧性分解ガスを発生する合成樹脂材料により形成されると共に可動電極を通過可能とした補助消弧板通路を前端縁に有する補助消弧板が前記磁性板と前記消弧部材との間に設けられた
ことを特徴とする消弧装置。
【請求項2】
請求項1に記載の消弧装置において、
前記消弧部材には、前記消弧部材通路の後端側へ延出された切欠奥溝と、切欠奥溝の互いに対向する内側縁に肉厚壁が形成され、
前記補助消弧板の補助消弧板通路には、同切欠奥溝と肉厚壁とを囲繞する囲繞部が形成される
ことを特徴とする消弧装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の消弧装置において、
前記補助消弧板は、固定電極の近傍の前記磁性板と前記消弧部材との間に設けられる
ことを特徴とする消弧装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の消弧装置において、
前記補助消弧板の後端部は、前記消弧部材の後端縁よりも後方へ延出する
ことを特徴とする消弧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−252369(P2009−252369A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−95161(P2008−95161)
【出願日】平成20年4月1日(2008.4.1)
【出願人】(000102636)エナジーサポート株式会社 (51)
【Fターム(参考)】