説明

消泡剤組成物含有熱可塑性樹脂水性分散液、及びこれを用いた塗工物

【課題】疎水性シリカや鉱物油と高分子乳化剤とを用いた消泡剤組成物水性分散液を熱可塑性樹脂水性分散液に混合させたときに、混合性を向上させ、十分な消泡効果を得ることを目的とする。
【解決手段】カチオン性高分子乳化剤を含有し、機械乳化分散法によって得られた熱可塑性樹脂水性分散液、及び疎水性シリカ及び鉱物油の少なくとも一方を含有する消泡剤組成物をカチオン性高分子乳化剤によって分散させた消泡剤組成物水性分散液を含有する消泡剤組成物含有熱可塑性樹脂水性分散液を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、消泡剤組成物含有熱可塑性樹脂水性分散液、及びこれを用いた塗工物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、合成樹脂エマルジョンを主体とした塗工用組成物を、紙やフィルム等に塗工する場合、この塗工用組成物が泡立たないように、消泡剤が添加される場合がある。このような消泡剤としては、鉱物油系の消泡剤や、有機系の消泡剤があげられる。この有機系の消泡剤としては、ポリエーテル系消泡剤を用い、これにポリエチレングリコールを含有させた消泡剤組成物(特許文献1)、消泡剤として、炭素数2〜3のオキシアルキレン基及びオキシブチレン基を有する化合物を用いる例(特許文献2)、消泡剤として、無機珪酸微粒子及び炭素数2〜3のオキシアルキレン化合物を用いる例(特許文献3)等が挙げられる。
【0003】
しかし、上記のいずれの消泡剤も、泡立ちを抑制することができるが、分散性が不十分な場合、紙やフィルム等に塗工した場合に、フィッシュアイ状のハジキを生じることがある。このハジキを抑えるため、消泡剤の添加量を少なくすると、消泡効果が不足して、塗工時に泡立ちが生じやすくなる。
【0004】
これに対し、泡立ちと分散性とのバランスをとるため、変性シリコーンタイプの消泡剤を用いることが知られている(特許文献4)。
【0005】
しかし、上記変性シリコーンタイプの消泡剤は、分散性は十分であるものの、消泡性が不十分となる傾向がある。このため、高速で塗工を行おうとすると、泡の巻き込みに起因する塗工ムラ(スジ引き)が発生し、塗工不良が生じるおそれがある。さらに、消泡剤のエマルジョン中の分散状態が悪化し、ハジキが発生することがある。
【0006】
これに対し、分散性を高め、塗工時のハジキを抑え、消泡性を向上させる目的で、消泡剤として、疎水性シリカや鉱物油と高分子乳化剤とを用いた消泡剤組成物を含有する水性分散液を用いることが知られている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−216406号公報
【特許文献2】特開2000−237504号公報
【特許文献3】特公昭50−1475号公報
【特許文献4】特開2007−21316号公報
【特許文献5】特開2009−125613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献5に記載の消泡剤組成物の水性分散液を、機械乳化分散法により得られた熱可塑性樹脂水性分散液に使用する場合、この消泡剤組成物水性分散液と熱可塑性樹脂水性分散液との混合性が不十分なために、凝集が発生したり、十分な消泡効果が得られない場合がある。
【0009】
そこで、この発明は、機械乳化分散法により得られた熱可塑性樹脂水性分散液に、疎水性シリカ、鉱物油及び高分子乳化剤を含む消泡剤組成物の水性分散液を混合させたときに、混合性を向上させ、十分な消泡効果を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、機械乳化分散法によって得られた、カチオン性高分子乳化剤を含有する熱可塑性樹脂水性分散液からなる(A)成分、及び疎水性シリカ及び鉱物油の少なくとも一方を含有する消泡剤をカチオン性高分子乳化剤によって分散させた消泡剤組成物水性分散液からなる(B)成分を混合させることにより、上記課題を解決したのである。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、消泡剤組成物水性分散液に用いられる乳化剤、及び熱可塑性樹脂水性分散液に用いられる乳化剤として、いずれもカチオン性高分子乳化剤を用いるので、混合性が向上し、十分な消泡効果を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明について詳細に説明する。
この発明にかかる消泡剤組成物含有熱可塑性樹脂水性分散液は、所定の熱可塑性樹脂水性分散液((A)成分)、及び所定の消泡剤組成物水性分散液((B)成分)を含有する水性分散液である。
【0013】
[消泡剤組成物含有熱可塑性樹脂水性分散液]
この発明にかかる消泡剤組成物含有熱可塑性樹脂水性分散液は、上記の(A)成分と(B)成分とを混合した水性分散液である。この(A)成分と(B)成分との混合比は、固形分比で、(A)成分100重量部に対し、(B)成分は、0.01重量部以上が好ましく、0.02重量部以上がより好ましい。0.01重量部より少ないと、消泡効果が不十分となりやすい。一方、混合比の上限は、1.0重量部が好ましく、0.5重量部がより好ましい。1.0重量部より多いと、消泡剤組成物含有熱可塑性樹脂水性分散液を塗布して得られるフィルム等の塗工物の外観(ハジキ、フィッシュアイ等)が悪化することがある。
【0014】
[(A)成分]
上記の(A)成分は、カチオン性高分子乳化剤を含有する、機械乳化分散法によって得られた熱可塑性樹脂水性分散液をいう。
【0015】
[機械乳化分散法]
上記機械乳化分散法としては、例えば、押出機中で、熱可塑性樹脂を乳化する方法や、乳化剤水溶液の存在下で、ニーダー、インクロール等で混練したり、ホモジナイザー、ディスパー等で均質化処理を行ったりする方法があげられる。
【0016】
上記押出機としては、単軸、二軸以上の多軸の押出機があるが、混練の程度、速度等から、二軸の押出機が好ましい。
【0017】
この押出機により機械乳化をする方法としては、具体的には、まず、上記押出機に、上記熱可塑性樹脂を投入する。上記押出機に投入する位置は、ホッパーやベント口からでよい。そして、別のベント口から、上記カチオン性高分子乳化剤を投入して混合し、乳化させる。
【0018】
上記押出機のシリンダー温度は、80〜270℃がよい。また、処理時間は、20秒間〜数分間で十分である。
【0019】
[熱可塑性樹脂]
上記熱可塑性樹脂としては、融点が180℃以下の熱可塑性物質、ビカット軟化点(JISK6924−2)が180℃以下のゴム物質、タッキファイヤーの環球法(JIS K−2207)による軟化点が180℃以下の化合物等が挙げられる。
【0020】
上記の熱可塑性樹脂の、融点、ビカット軟化点、又はタッキファイヤーの環球法による軟化点が180℃を越えると、得られる水性分散液のエマルジョン粒子が不定形で粒子径が大きくなり、水性分散液の静置安定性が悪くなる傾向があり、好ましくない。
【0021】
上記融点が180℃以下の熱可塑性物質としては、低密度ポリエチレン等のポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体及びそのエステル、あるいはその塩、エチレン・メタクリル酸共重合体あるいはその塩、エチレン・メタクリル酸エステル共重合体あるいはその塩、エチレン・アクリル酸エチル・無水マレイン酸共重合体、エチレン・プロピレンランダム共重合体等のいわゆるエチレンを主体とした結晶性エチレン系共重合体、プロピレン・ヘキセン共重合体、プロピレン・ブテン共重合体等のプロピレンを主体とした結晶性プロピレン系共重合体、ポリエチレンワックス、エステル系ワックス、カルナバワックス、フィッシャートロプスワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス及びそれらの酸化物、低分子量ポリアミド、脂肪酸アミド等のアミド化合物、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等のハロゲン化ポリオレフィン、不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン等が挙げられる。
【0022】
上記ビカット軟化点が180℃以下のゴム物質としては、ポリブチレン、ポリイソブチレン、エチレン・プロピレン共重合ゴム、ポリブタジエン及びその変性物、エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体ゴム等が挙げられる。
【0023】
上記タッキファイヤーの環球法による軟化点が180℃以下の化合物としては、テルペン及びその誘導体、ロジン及びその誘導体、石油樹脂及びその誘導体、低分子量スチレン系樹脂及びその誘導体等で、上記条件を満たすものを用いればよい。
【0024】
これらの中でも、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エチル・無水マレイン酸共重合体、ハロゲン化ポリオレフィン、不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン、カルナバワックス、エステル系ワックス、テルペン誘導体、ロジン誘導体が適度の極性基をもっているため、特に安定性の良い水性分散液が得られるので好ましい。
【0025】
[カチオン性高分子乳化剤]
上記カチオン性高分子乳化剤は、カチオン性単量体由来の構造単位を有する高分子乳化剤をいい、中でも、カチオン性(メタ)アクリル系共重合体からなるものが好ましい。このカチオン性(メタ)アクリル系共重合体を構成するカチオン性単量体としては、(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキル等があげられる。
【0026】
この(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキルのアルキルアミノ基で置換されるアルキル基は、炭素原子数が1〜6のアルキル基がよく、具体例としては、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノ−2−アミノエチル等が挙げられる。これらは、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して使用しても構わない。
【0027】
上記の(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキル以外のカチオン性単量体としては、N−アミノアルキル(メタ)アクリルアミド類、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0028】
このような単量体から得られるカチオン性高分子乳化剤としては、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート−アルキル(メタ)アクリレート共重合体、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド−アルキル(メタ)アクリレート共重合体等があげられる。
【0029】
これらの中でも、熱可塑性樹脂分散液から得られる皮膜の耐水性の観点から、皮膜に残存しにくい蒸気圧の高い中和剤、例えば、蟻酸、酢酸を用いて中和したジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート−アルキル(メタ)アクリレート共重合体が、カチオン性高分子乳化剤としてより好ましい。
【0030】
中和剤は、カチオン性を示す官能基に対して、60モル%〜150モル%使用することが望ましい。60モル%より少ないと、熱可塑性樹脂水性分散液の安定性が悪くなる傾向があり、150モル%を超えると、熱可塑性樹脂水性分散液の安定性が悪くなる傾向がある。
【0031】
上記カチオン性高分子乳化剤中のカチオン性単量体由来の構造単位の含有量は、共重合性成分として1モル%以上が必要で、2モル%以上が好ましい。1モル%より少ないと、分散安定性が低下する傾向がある。一方、含有割合の上限は85モル%がよく、80モル%が好ましい。85モル%より多いと、分散安定化効果が低下することがある。
【0032】
上記高分子乳化剤を構成する共重合体は、各成分をそれぞれ秤量し、次に、重合器に各成分を個別に添加して重合するか、または各単量体をあらかじめ混合した上で重合器に添加して重合する。これにより、共重合体を製造することができる。この共重合反応は、重合開始剤の存在下に0〜180℃、好ましくは40〜120℃で、0.5〜20時間の条件で行われる。この共重合は、エタノール、イソプロパノール、セルソルブ等の親水性溶媒や水の存在下で行うのが好ましい。
【0033】
上記重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩からなる開始剤、上記過硫酸塩に亜硫酸塩、チオ硫酸塩の還元剤等を併用したレドックス系開始剤、ラウロイルペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド等の有機過酸化物、あるいはこれらと鉄(II)塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩の還元剤等を併用したレドックス系開始剤、2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2′−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド等のアゾ系化合物、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキセン、t−ブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。この重合開始剤の使用量は、使用される単量体全量に対して、0.01〜10重量%が好ましい。
【0034】
なお、熱流動特性を改良するために、連鎖移動剤等を用いて分子量を低減することも可能である。その際には、重合度調節のため、公知の連鎖移動剤であるメルカプタン類、メチルアルコール等の低級アルコールを使用することができる。
【0035】
得られるカチオン性高分子乳化剤の重量平均分子量は、5000以上が好ましく、8000以上がより好ましい。5000より小さいと、安定性が不十分となって、良好な分散液が得られ難くなる場合がある。一方、重量平均分子量の上限は、100000が好ましく、60000がより好ましい。100000より大きいと、水溶性が低下して、やはり分散液の安定性が不十分となる場合がある。
【0036】
上記カチオン性高分子乳化剤の使用量は、得られる熱可塑性樹脂水性分散液の安定性、及び皮膜の耐水性の面で、熱可塑性樹脂100重量部に対し、2〜40重量部が好ましく、より好ましくは3〜20重量部である。2重量部より少ないと、得られる熱可塑性樹脂水性分散液の安定性が低下するおそれがある。一方、40重量部より多いと、得られる皮膜の耐水性が低下するおそれがある。
【0037】
[(B)成分]
上記(B)成分は、特定の消泡剤をカチオン性高分子乳化剤によって分散させた消泡剤組成物水性分散液である。
【0038】
上記消泡剤としては、疎水性シリカと鉱物油との両方を含有する剤が好ましく用いられる。上記鉱物油としては、いわゆる「ミネラルスピリット(出光興産(株))」等の商品名で販売されている炭化水素系のものを使用することができる。
【0039】
上記の疎水性シリカとは、主に親水性シリカを疎水化剤で処理して製造される。例えば、親水性シリカとメチルクロロシランやシランカップリグ剤を反応させて疎水性シリカを得る方法、親水性シリカを高分子量オルガノポリシロキサンで疎水化する方法、親水性シリカをヘキサメチルジシラザン(HMDS)とオルガノポリシロキサンで疎水化する方法等があげられる。
【0040】
さらに、疎水性シリカに鉱物油を配合した消泡剤も、(株)アデカ等の添加剤メーカーから、例えば「アデカネートB−940」等の商品として販売されている。
【0041】
上記消泡剤組成物中の疎水性シリカの含有量は、上記鉱物油100重量部当たり1重量部以上がよく、5重量部以上が好ましい。1重量部より少ないと、消泡効果が不十分となる傾向がある。一方、混合割合の上限は、15重量部がよく、10重量部が好ましい。15重量部より多いと、ハジキが起きやすいという問題点を有する。
【0042】
上記消泡剤組成物には、上記消泡剤組成物水性分散液としたとき、この発明の目的を阻害しない範囲で、上記の疎水性シリカ及び鉱物油以外に、シリコーン系の消泡剤等を添加してもよい。
【0043】
上記カチオン性高分子乳化剤としては、上記したカチオン性高分子乳化剤を用いることができる。
【0044】
上記カチオン性高分子乳化剤の添加量(不揮発分)は、得られる消泡剤組成物水性分散液の安定性の面で、上記消泡剤組成物100重量部当たり、2重量部以上がよく、5重量部以上が好ましい。2重量部より少ないと、消泡剤組成物水性分散液の安定性が低下するおそれがある。一方、添加量の上限は、200重量部がよく、100重量部が好ましい。200重量部より多いと、消泡効果が損なわれるおそれがある。
【0045】
この発明にかかる消泡剤組成物含有熱可塑性樹脂水性分散液には、この発明の効果を阻害しない範囲で、ノニオン界面活性剤やアルコール等を添加することができる。
【0046】
この発明にかかる消泡剤組成物含有熱可塑性樹脂水性分散液は、紙又は樹脂フィルム又は金属箔に塗布され、これを乾燥することにより塗工物を得ることができる。この塗工物は、ヒートシール可能なシート状製品として使用することができる。
【0047】
上記樹脂フィルムとしては、ポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等をあげることができ、また金属箔としては、アルミ箔等をあげることができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例を用いて、この発明をより具体的に説明する。まず、評価方法及び使用した原材料について説明する。
【0049】
<<評価方法>>
<高分子乳化剤の測定方法>
[中和度]
カチオン性高分子乳化剤は、中和に使用した酸性成分(酢酸)のモル数を、重合体中のアルカリ性単量体成分(例えばN,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート等)の合計モル数で除して、百分率(%)で示す。
【0050】
[固形分]
水性分散液約1gを精秤し熱風循環乾燥機にて105℃×3時間乾燥させた後、デシケーターの中で放冷しその重量を測定した。そして、下記の式に従い、固形分を算出した。
固形分(重量%)=(乾燥後の試料の重量/乾燥前の試料の重量)×100
【0051】
[重量平均分子量]
高分子乳化剤の重量平均分子量は、以下の手順に従ってゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法によって測定した。
1)サンプル調整
サンプルを室温で24時間乾燥した後、常温にて5時間減圧乾燥した(真空乾燥機LHV−122(タバイエスペック(株)製)使用)。
得られた重合体サンプルをテトラヒドロフラン(THF)に溶解して0.2重量%溶液として、これを測定試料とした。
2)GPC測定
上記のようにして調製した測定試料を、島津製作所(株)製:GPC−6Aを使用し、下記の条件で測定した。
・流速:1ml/min
・展開溶媒:THF(テトラヒドロフラン)
・カラム:PLゲル10μmミックスB(ポリマー・ラボラトリー社製)
・標準試料:単分散PS(ポリマー・ラボラトリー社製)
・リファレンス:Sumilizer BHT(住友化学(株)製、分子量:220)
・検出器:RI、UV
【0052】
<熱可塑性樹脂水性分散液の測定方法>
[固形分]
水性分散液約1gを精秤し熱風循環乾燥機にて105℃×3時間乾燥させた後、デシケーターの中で放冷しその重量を測定した。そして、下記の式に従い、固形分を算出した。
固形分(重量%)=(乾燥後の試料の重量/乾燥前の試料の重量)×100
【0053】
[粘度]
水性分散液約400gを500mlのポリエチレン製瓶に入れて、蓋をした後、25℃の恒温槽に3時間放置して、温度が25℃になったところで、B型粘度計(TOKI SANGYO Co.製、TV−10M型)で粘度を測定した。
【0054】
[体積平均粒子径]
レーザー回折型粒度分布測定装置(島津社製:SALD−2100)を用いて体積平均粒子径を測定した。
【0055】
<消泡剤組成物の測定方法>
[配合安定性]
得られた消泡剤組成物含有機械乳化分散液を目視し、凝集が見られるか否かで判断する。
○:凝集は見られない。
×:凝集が見られる。
【0056】
[ハジキ]
得られた消泡剤組成物含有機械乳化分散液を、ワイヤーバーにて塗布量8g/m2(dry)となるようにOPPフィルム(コロナ未処理面)(グンゼ(株)製、商品名 シルファンA1、50μ厚、表面張力31dyn/cm)に塗工する。塗工後、目視にて塗工面にフィッシュアイ等のハジキが生じているか否かを判断する。
○:ハジキの発生なし。
×:ハジキの発生あり。
【0057】
[抑泡性]
得られた消泡剤組成物含有機械乳化分散液100g(有姿)を、300gポリカップ(300mlディスポカップ、ポリプロピレン製、上径×下径×高さ φ91mm×φ67mm×96mm)に入れる。そして、ポリカップ中の機械乳化分散液の上面を基準面とし、その高さを測定する。
次に、ディスパー攪拌機で2000rpmにて5分間攪拌した後、直ちに、泡立ちによって上昇した上面の高さを測定する。そして、下記の式で抑泡性を算出する。
抑泡性(倍)=泡立ち後の高さ / 基準面の高さ
【0058】
[消泡性]
抑泡性試験にて泡立ちの後、消泡によって熱可塑性樹脂水性分散液の上面が基準面まで低下する時間を測定する。
【0059】
<原材料>
<カチオン性高分子乳化剤水溶液の製造方法>
冷却器、窒素導入管、攪拌機及びモノマー滴下ロート及び加熱用のジャケットを装備した150L反応器に攪拌下、下記の表1に記した各成分を、この表1に記した量仕込み、窒素置換後、内部温度を80℃まで上昇させた。更に、下記表1に記載の量の重合開始剤(2,2′−アゾビスイソブチロニトリル)を添加して、重合を開始した。温度を80℃に保って4時間重合を継続させた。次いで、得られた共重合体を表1に記載の量の中和剤で中和した後、イソプロパノール(IPA)を留去しながら水を添加して置換し、粘稠なアクリル系共重合体からなるカチオン性高分子乳化剤(RUN1)を得た(収率は97%)。
【0060】
【表1】

【0061】
なお、使用した各成分は、下記の通りである。
・N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート…三洋化成工業(株)製、メタクリレートDMA、以下「DMA」と略する。
・ラウリルメタクリレート…三菱レイヨン(株)製、以下「SLMA」と略する。
・ブチルメタクリレート…三菱レイヨン(株)製、以下、「BMA」と略する。
・イソプロパノール…(株)トクヤマ製:トクソーIPA(登録商標)、以下「IPA」と略する。
【0062】
<熱可塑性樹脂水性分散液((A)成分)>
[EM1作製方法]
エチレン−酢酸ビニル共重合体(三井デュポン(株)製;商品名 エバフレックス220、酢酸ビニル含有量28重量%)70重量部、エチレン−メタクリル酸共重合体(三井デュポン社製;商品名 ニュクレル N1050H、メタクリル酸含有量10重量%)30重量部を混合して、二軸押出機(池貝鉄鋼社製;型式番号PCM45 L/D=30、注入口 2箇所)のホッパーから、100重量部/時間の割合で押出機内に連続的に供給した。次いで、第1の注入口から、高分子乳化剤としてRUN1を固形分換算で10重量部/時間、第2の注入口から水84重量部/時間を連続的に供給し、100℃の温度で押し出して乳白色の熱可塑性樹脂水性分散液を得た。下記の表2に示す固形分濃度になるように、得られた水性分散液に温水を添加して調整した。その結果を表2に示す。
【0063】
[EM2作製方法]
エチレン−酢酸ビニル共重合体(三井デュポン(株)製;商品名 エバフレックス220、酢酸ビニル含有量28重量%)70重量部、エチレン−メタクリル酸共重合体(三井デュポン社製;商品名 ニュクレル N1050H、メタクリル酸含有量10重量%)20重量部、塩素化ポリプロピレン共重合体(東洋紡績製;商品名 ハードレン 13LLP、塩素含有量26重量%)10重量部を混合して、二軸押出機(池貝鉄鋼社製;型式番号PCM45 L/D=30、注入口 2箇所)のホッパーから、100重量部/時間の割合で押出機内に連続的に供給した。次いで、第1の注入口から、高分子乳化剤としてRUN1を固形分換算で10重量部/時間、第2の注入口から水84重量部/時間を連続的に供給し、100℃の温度で押し出して乳白色の熱可塑性樹脂水性分散液を得た。下記の表2に示す固形分濃度になるように、得られた水性分散液に温水を添加して調整した。その結果を表2に示す。
【0064】
【表2】

【0065】
<消泡剤組成物水性分散液((B)成分)>
[消泡剤混合物(DF)の作製]
疎水性シリカ20重量部、鉱物油100重合部、ノニオン系界面活性剤20重量部、及びイオン交換水80重量部を混合し、消泡剤混合物(DF)を調整した。
なお、各成分の銘柄等は下記の通りである。
・疎水性シリカ…旭化成ワッカーシリコーン(株)製、商品名:WACKER HDK H18、オルガノポリシロキサンで疎水化
・鉱物油…出光興産(株)製:ミネラルスピリット
・ノニオン系界面活性剤…ポリオキシエチレンアルキル(C12〜15)エーテル、花王(株)製、エマルゲン1118S−70(70重量%品)
【0066】
[消泡剤組成物水性分散液((B)成分)の作製]
消泡剤混合物として上記DFを用い、カチオン性高分子乳化剤水溶液として上記RUN1を用い、下記表3に示す割合で混合し、消泡剤組成物水性分散液((B)成分)を作製した。
【0067】
(実施例1〜4、比較例1〜3)
(A)成分及び(B)成分を下記表3に示す割合で混合し、消泡剤組成物含有熱可塑性樹脂水性分散液を調整した。
得られた消泡剤組成物含有熱可塑性樹脂水性分散液を用いて、上記の各物性を測定した。その結果を表3に示す。
【0068】
(比較例4)
消泡剤組成物水性分散液に用いる乳化剤として、上記RUN1のかわりに、(株)クラレ製:PVA205(けん化度:約87.0〜89.0mol%、重合度:500)を用いたものを作製し、これと(A)成分とを下記表3に示す割合で混合し、消泡剤組成物含有熱可塑性樹脂水性分散液を調整した。
得られた消泡剤組成物含有熱可塑性樹脂水性分散液を用いて、上記の各物性を測定した。その結果を表3に示す。
【0069】
(比較例5)
消泡剤組成物水性分散液に用いる乳化剤として、上記RUN1に代えて、市販のカチオン性乳化剤であるアンステックス C−200を使用したものを作製し、これと(A)成分とを下記表3に示す割合で混合し、消泡剤組成物含有熱可塑性樹脂水性分散液を調製した。これを用いて、上記の各物性を測定した。その結果を表3に示す。
なお、アンステックス C−200(商品名)は、東邦化学工業(株)製:ポリオキシエチレントリアルキルアンモニウム硝酸塩であり、ポリオキシエチレントリアルキルアンモニウム硝酸塩50%とイソプロピルアルコール20〜25%と水(残部)を含む。
【0070】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)成分及び(B)成分を含有する消泡剤組成物含有熱可塑性樹脂水性分散液。
(A)カチオン性高分子乳化剤を含有し、機械乳化分散法によって得られた熱可塑性樹脂水性分散液。
(B)疎水性シリカ及び鉱物油の少なくとも一方を含有する消泡剤組成物をカチオン性高分子乳化剤によって分散させた消泡剤組成物水性分散液。
【請求項2】
上記(B)成分に用いられるカチオン性高分子乳化剤は、重量平均分子量5000〜100000のカチオン性(メタ)アクリル系共重合体である請求項1に記載の消泡剤組成物含有熱可塑性樹脂水性分散液。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の消泡剤組成物含有熱可塑性樹脂水性分散液を、紙又は樹脂フィルムに塗布、乾燥して得られた塗工物。

【公開番号】特開2012−201738(P2012−201738A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65852(P2011−65852)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000211020)中央理化工業株式会社 (65)
【Fターム(参考)】